(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072442
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】耐火物原料の製造方法および溶銑収容容器用の耐火物
(51)【国際特許分類】
C04B 35/622 20060101AFI20240521BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C04B35/622 040
F27D1/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183260
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】松永 久宏
(72)【発明者】
【氏名】冨谷 尚士
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 亮磨
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051AA06
4K051BB02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】使用済耐火物から高品質の耐火物原料を回収する技術を提供する。
【解決手段】溶銑収容容器で発生した使用済耐火物を回収する回収工程と、回収した使用済耐火物中の不純物の一部を除去する除去工程と、除去工程前、または、除去工程後の使用済耐火物を破砕する破砕工程と、を有して、耐火物原料を製造するにあたり、除去工程では、耐火物原料中の不純物の合計含有量が7質量%以下となるよう不純物を除去し、さらに、任意選択的に、(1)粒径1mm以下の耐火物原料中の不純物の合計含有量が3.5質量%以下となるよう前記不純物を除去すること、(2)粒径1mm超3mm以下の耐火物原料中の不純物の合計含有量が4.5質量%以下となるよう不純物を除去すること、(3)粒径3mm超の耐火物原料中の不純物の合計含有量が6質量%以下となるよう不純物を除去すること、から選ばれる少なくとも一の処理が選択される、耐火物原料の製造方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶銑収容容器で発生した使用済耐火物を回収する回収工程と、
前記回収工程で回収した前記使用済耐火物中の不純物の少なくとも一部を除去する除去工程と、
前記除去工程前、または前記除去工程後の前記使用済耐火物を破砕する破砕工程と、
を有して、耐火物原料を製造するにあたり、
前記除去工程では、除去手段を用いて前記耐火物原料中の前記不純物の合計含有量が7質量%以下となるよう前記不純物を除去し、
さらに、任意選択的に、
(1)粒径1mm以下の前記耐火物原料中の前記不純物の合計含有量が3.5質量%以下となるよう前記不純物を除去すること、
(2)粒径1mm超3mm以下の前記耐火物原料中の前記不純物の合計含有量が4.5質量%以下となるよう前記不純物を除去すること、
(3)粒径3mm超の前記耐火物原料中の前記不純物の合計含有量が6質量%以下となるよう前記不純物を除去すること、
から選ばれる少なくとも一の処理が選択される、耐火物原料の製造方法。
【請求項2】
前記除去工程では、前記破砕工程前に、前記使用済耐火物を前記除去手段としての目開きサイズが8mm以上の篩に通して篩上を回収することにより、前記不純物を除去する処理を含む、請求項1に記載の耐火物原料の製造方法。
【請求項3】
前記溶銑収容容器は、アルミナ、炭化珪素、およびカーボンを含む内張り耐火物と、内張り耐火物の外側に設けられた永久耐火物と、を備え、
前記回収工程では、前記使用済耐火物として前記内張り耐火物と前記永久耐火物とを混在した状態で回収する、請求項1に記載の耐火物原料の製造方法。
【請求項4】
前記破砕工程後に、さらに、前記耐火物原料を乾燥させる乾燥工程を有する、請求項1に記載の耐火物原料の製造方法。
【請求項5】
前記破砕工程と同時に、前記耐火物原料中の金属鉄の少なくとも一部を除去する選別工程をさらに有する、請求項1に記載の耐火物原料の製造方法。
【請求項6】
前記選別工程では、磁束密度0.3T以下の磁力によって前記金属鉄を磁力選別することにより、前記耐火物原料中の前記金属鉄を除去する、請求項5に記載の耐火物原料の製造方法。
【請求項7】
溶銑収容容器から回収した耐火物原料を配合して形成された溶銑収容容器用の耐火物であって、
前記回収耐火物原料は、溶銑収容容器で発生した使用済耐火物を再利用することによって製造され、かつ不純物の合計含有量が7質量%以下であり、
さらに、任意選択的に、
(1)粒径1mm以下の前記耐火物原料中の前記不純物の合計含有量が3.5質量%以下であること、
(2)粒径1mm超3mm以下の前記耐火物原料中の前記不純物の合計含有量が4.5質量%以下であること、
(3)粒径3mm超の前記耐火物原料中の前記不純物の合計含有量が6質量%以下であること、
から選ばれる少なくとも一の組成を有する、溶銑収容容器用の耐火物。
【請求項8】
前記耐火物原料が60質量%超で配合されている、請求項7に記載の溶銑収容容器用の耐火物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶銑収容容器で発生した使用済耐火物を再利用した耐火物原料の製造方法および溶銑収容容器用の耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所では、製銑工程や製鋼工程での溶解処理、および、溶解物の搬送処理工程において、数多くの耐火物が各設備に使用される。高温下での長期間にわたる設備の稼動に伴い耐火物の損傷が進み、安定した操業が不可能と判断された場合、稼動設備に使用されている耐火物は解体されて耐火物屑となる。これらの耐火物屑は使用用途が少なく、産業廃棄物として処理される。近年では、耐火物屑の発生量を抑制することが要求されており、耐火物屑を有効活用することが必要となる。
【0003】
ここで、たとえば特許文献1には、溶銑予備処理容器で発生した使用済耐火物を再利用して製造した耐火物原料(以下、リサイクル原料ともいう)を配合した耐火物が開示されている。また、特許文献2には、使用済耐火物を回収して再利用する耐火物の再利用方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018- 62459号公報
【特許文献2】特開2003- 83683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、リサイクル原料やバージン原料の粒度分布、全耐火物原料中の遊離炭素量を最適化することにより、リサイクル原料を配合した耐火物の耐用性を向上させている。また、特許文献2に記載の技術では、使用済耐火物を種類毎に分別したり色彩選別したりすることによって、再生された耐火物材料の品質を高めている。しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の技術では、リサイクル原料に含まれる不純物の許容量について何ら考慮されておらず、耐火物の原料や耐火物の品質の観点から改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、リサイクル原料に含まれる不純物の量を調整することにより、リサイクル原料を配合して形成した耐火物の品質を高めることができる耐火物原料の製造方法および溶銑収容容器用の耐火物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる耐火物原料の製造方法は、溶銑収容容器で発生した使用済耐火物を回収する回収工程と、前記回収工程で回収した前記使用済耐火物中の不純物の少なくとも一部を除去する除去工程と、前記除去工程前、または前記除去工程後の前記使用済耐火物を破砕する破砕工程と、を有して、耐火物原料を製造するにあたり、前記除去工程では、除去手段を用いて前記耐火物原料中の前記不純物の合計含有量が7質量%以下となるよう前記不純物を除去し、さらに、任意選択的に、(1)粒径1mm以下の前記耐火物原料中の前記不純物の合計含有量が3.5質量%以下となるよう前記不純物を除去すること、(2)粒径1mm超3mm以下の前記耐火物原料中の前記不純物の合計含有量が4.5質量%以下となるよう前記不純物を除去すること、(3)粒径3mm超の前記耐火物原料中の前記不純物の合計含有量が6質量%以下となるよう前記不純物を除去すること、から選ばれる少なくとも一の処理が選択されることを特徴とする。
【0008】
なお、本発明にかかる耐火物原料の製造方法は、
(a)前記除去工程では、前記破砕工程前に、前記使用済耐火物を前記除去手段としての目開きサイズが8mm以上の篩に通して篩上を回収することにより、前記不純物を除去する処理を含むこと、
(b)前記溶銑収容容器は、アルミナ、炭化珪素、およびカーボンを含む内張り耐火物と、内張り耐火物の外側に設けられた永久耐火物と、を備え、前記回収工程では、前記使用済耐火物として前記内張り耐火物と前記永久耐火物とを混在した状態で回収すること、
(c)前記破砕工程後に、さらに、前記耐火物原料を乾燥させる乾燥工程を有すること、
(d)前記破砕工程と同時に、前記耐火物原料中の金属鉄の少なくとも一部を除去する選別工程をさらに有すること、
(e)前記選別工程では、磁束密度0.3T以下の磁力によって前記金属鉄を磁力選別することにより、前記耐火物原料中の前記金属鉄を除去すること、
などがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【0009】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる溶銑収容容器用の耐火物は、溶銑収容容器から回収した耐火物原料を配合して形成された溶銑収容容器用の耐火物であって、前記回収耐火物原料は、溶銑収容容器で発生した使用済耐火物を再利用することによって製造され、かつ不純物の合計含有量が7質量%以下であり、さらに、任意選択的に、(1)粒径1mm以下の前記耐火物原料中の前記不純物の合計含有量が3.5質量%以下であること、(2)粒径1mm超3mm以下の前記耐火物原料中の前記不純物の合計含有量が4.5質量%以下であること、(3)粒径3mm超の前記耐火物原料中の前記不純物の合計含有量が6質量%以下であること、から選ばれる少なくとも一の組成を有することを特徴とする。
【0010】
なお、本発明にかかる溶銑収容容器用の耐火物は、前記耐火物原料が60質量%超で配合されていることがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶銑収容容器から回収した耐火物原料中の不純物の合計含有量を7質量%以下とすることで、回収した耐火物原料の品質を高めることができ、その耐火物原料を配合して形成した耐火物の耐用性をバージンれんがと同等とすることができる。これにより、従来よりも耐火物におけるリサイクル原料の配合率を高めることができ、使用済耐火物の発生量を大幅に削減できるため、産廃処理費用を大幅に抑制することができる。特に、使用済耐火物が大量に発生する製鉄所において、使用済耐火物を利用した耐火物を使用することは、耐火物原料費削減に大きな効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる溶銑収容容器の耐火物の構成を示す縦断面および拡大模式図である。
【
図2】上記実施形態にかかる耐火物原料の製造方法の一例を示すフロー図である。
【
図3】本発明の他の実施形態にかかる溶銑収容容器用の耐火物の製造方法の一例を示すフロー図である。
【
図4】耐火物の溶損試験方法に用いる試験装置の概要を示す模式図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は内張り耐火物の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
(溶銑収容容器)
本実施形態の耐火物は、溶銑収容容器用、特に溶銑予備処理容器用の耐火物である。ここで、溶銑予備処理容器とは、鉄鋼製造プロセスの溶銑予備処理工程において溶銑を保持・精錬するための容器であり、代表例としては溶銑鍋が挙げられる。
図1に示すように、溶銑予備処理容器(溶銑鍋)1は、鉄皮2を有しており、鉄皮2の内側に永久耐火物3が設けられ、永久耐火物3の内側に内張り耐火物4が設けられている。そして、溶銑5を収容して保持している。本実施形態の耐火物は、溶銑収容容器として、混銑車や装入鍋にも適用可能である。
【0015】
本実施形態の溶銑予備処理容器の内張り耐火物には、アルミナ、炭化珪素、およびカーボンを含むアルミナ・炭化珪素・カーボン質耐火物が使用されており、ろう石を含む場合もある。永久耐火物には、ろう石れんがが使用されている。内張り耐火物は、溶銑の撹拌による摩耗、受銑と溶銑払出しの繰り返しに伴う急激な温度変化など、非常に過酷な操業条件下で使用される。このため、安定した操業を行うためにも、過酷な条件に耐える耐用性の高い耐火物を使用することが好ましい。
【0016】
(耐火物)
本実施形態の耐火物は、上記の溶銑予備処理容器で発生した使用済耐火物を再利用することによって製造された耐火物原料(以下、リサイクル原料ともいう)を配合して形成されている。本実施形態のリサイクル原料は、不純物の合計含有量が7質量%以下であり、さらに、任意選択的に、(1)粒径1mm以下のリサイクル原料中の不純物の合計含有量が3.5質量%以下であること、(2)粒径1mm超3mm以下のリサイクル原料中の不純物の合計含有量が4.5質量%以下であること、(3)粒径3mm超のリサイクル原料中の不純物の合計含有量が6質量%以下であることから選ばれる一の組成を有することを特徴とする。ここで、「不純物」とは、「耐火物の特性に影響を与える耐火物原料以外の成分」を指し、具体的にはMgOやCaO等である。
【0017】
上述したように、本実施形態では、骨材原料と微粉原料とを併せたリサイクル原料全体中の不純物(MgOとCaO)の合計含有量を7質量%以下とすることにより、リサイクル原料全体の純度が高くなる。このため、リサイクル原料を配合して形成した耐火物(以下、リサイクルれんがともいう)の耐溶損性をバージンれんがと同等とすることができる。一方、リサイクル原料中の不純物(MgOとCaO)の合計含有量が7質量%超の場合、リサイクル原料全体の純度が低くなる。この場合、マトリックス中に浸潤したスラグがリサイクル原料の内部まで浸透し、リサイクルれんがの耐溶損性はバージンれんがと比較して大幅に劣る。好ましくは、リサイクル原料中の不純物の合計含有量が6質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0018】
さらに、本実施形態では、粒径1mm以下のリサイクル原料中の不純物(MgOとCaO)の合計含有量を3.5質量%以下とすれば、れんが組織において最も溶損し易い部位であるマトリックス中に存在する微粉となるリサイクル原料の純度が高くなるので好ましい。上記構成とすることにより、リサイクルれんがはバージンれんがと同等の耐溶損性を維持することができる。
【0019】
また、本実施形態では、粒径1mm超3mm以下のリサイクル原料中の不純物(MgOとCaO)の合計含有量を4.5質量%以下とすれば、骨材となるリサイクル原料の純度が高くなるので好ましい。上記構成とすることにより、マトリックス中に浸潤したスラグとリサイクル原料が接触しても、スラグはリサイクル原料の内部まで浸透せず、リサイクルれんがはバージンれんがと同等の耐溶損性を維持することができる。
【0020】
また、本実施形態では、粒径3mm超のリサイクル原料中の不純物(MgOとCaO)の合計含有量を6質量%以下とすれば、粒径1mm超3mm以下のリサイクル原料の場合と同様に、骨材となるリサイクル原料の純度が高くなるので好ましい。上記構成とすることにより、マトリックス中に浸潤したスラグとリサイクル原料が接触しても、スラグはリサイクル原料の内部まで浸透せず、リサイクルれんがの耐溶損性はバージンれんがと同等となる。なお、耐火物原料の粒径は、5mm以下とすることが好ましい。本明細書中で「粒径Nmm以下」とは、目開きNmmの篩の篩下を意味し、「粒径Nmm超」とは、目開きNmmの篩の篩上を意味する。用いる篩は、たとえば、JIS Z8801-1:2019に定める標準篩を用いることができる。
【0021】
上述したように、本実施形態では、リサイクル原料中の不純物の合計含有量を調整することで、リサイクル原料を高純度とすることができ、品質を高めることができる。このため、従来よりもリサイクルれんがにおけるリサイクル原料の配合率を高めることができる。具体的には、リサイクル原料を60質量%超の高配合率で配合した場合であってもバージンれんがと同等の耐スポール性と耐食性を両立することが可能となる。また、リサイクル原料の配合率を60質量%超とすることで、産業廃棄物として処理される耐火物屑の発生量をゼロにすることができる。好ましくは、リサイクル原料を70質量%以上配合することである。
【0022】
(耐火物原料の製造方法)
図2に耐火物原料の製造方法、すなわち使用済耐火物の解体から分級までの工程(以下、リサイクル原料化ともいう)をフロー図で示す。リサイクル原料化の工程は、主に回収工程S11と、除去工程(篩掛け工程)S12と、破砕工程S13と、選別工程S14と、乾燥工程S15と、分級工程S16と、を有する。
【0023】
回収工程S11では、溶銑予備処理容器で発生した使用済耐火物を解体し、回収する。ここで、本実施形態では、溶銑予備処理容器の内張り耐火物と永久耐火物の双方が混在した状態で使用済耐火物として回収する。このように、回収工程S11において内張り耐火物と永久耐火物を一緒に解体・回収することで、内張り耐火物と永久耐火物とを分別回収する場合に比べて短時間で回収することができ、作業人数や作業工数を削減することができる。一方、内張り耐火物と永久耐火物とを分別回収すれば、リサイクル原料の品質は向上する。なお、回収工程S11において、地金やスラグなどは、除去することが好ましい。
【0024】
図2の例では、除去工程(篩掛け工程)S12として、回収工程S11で回収した使用済耐火物中の不純物(MgOとCaO)の少なくとも一部を除去する。具体的には、使用済耐火物を除去手段の一例である篩に通して篩上を回収することにより、細かい不純物(MgOとCaO)を除去する。このとき、篩の目開きサイズは8mm以上であることが好ましい。このように、使用済耐火物中の細かい不純物(MgOとCaO)を除去することにより、リサイクル原料中の不純物の合計含有量を上述のように調整することができ、リサイクル原料を高純度とすることができる。一方、目開きサイズを53mm超えとすると、篩下に有用な使用済耐火物が含まれ、総合的なリサイクル率が低下するおそれがある。したがって、目開きサイズの上限を53mm程度とすることが好ましい。なお、
図2の例では、篩を用いて使用済耐火物中の不純物を除去したが、不純物を除去する除去手段は篩に限らず、たとえば流水によって不純物を選別する手段等の他の除去手段を用いて不純物を除去してもよい。
【0025】
図2の例では、破砕工程S13として、不純物(MgOとCaO)を除去した後の前記使用済耐火物を破砕して耐火物原料(リサイクル原料)とする。使用済耐火物の破砕には、たとえば、ハンマークラッシャーやジョークラッシャーのほか、湿式破砕機を用いることができる。このとき、リサイクル原料の粒径が、おおよそ10mm以下程度になるように破砕する。好ましくは、5mm以下程度に破砕する。なお、上記実施形態では、除去工程S12で使用済耐火物中の不純物を除去した後で、破砕工程S13で使用済耐火物を破砕したが、破砕工程S13を粗破砕処理と微粉砕処理に分け、使用済耐火物を粗破砕処理した後に、除去工程S12で使用済耐火物中の不純物を除去し、次いで、所定の粒径に微粉砕処理する構成としてもよい。
【0026】
選別工程(磁力選別工程)S14では、リサイクル原料中の金属鉄(地金)の少なくとも一部を除去する。なお、本実施形態において、選別工程S14は破砕工程S13と同時に行われる。すなわち、使用済耐火物を破砕しながら磁力選別によって金属鉄を除去する。特に粗破砕処理と同時に行うことが好ましい。金属鉄は耐火物の特性に影響を与える成分ではないため「不純物」には相当しないが、使用済耐火物中の金属鉄の含有量が多すぎると破砕時に破砕機の刃の劣化速度が速くなり、刃の交換頻度が増加するため、選別工程S14で耐火物中の金属鉄を除去することが好ましい。具体的には、本実施形態では、磁力によって金属鉄を磁力選別する。このとき、磁束密度を0.3T(3000G)以下とすることが好ましい。磁束密度0.3T以下の磁力を用いて金属鉄を選別した場合と、磁束密度0.3T超の磁力を用いて金属鉄を選別した場合では、分級工程後のリサイクル原料中に含まれる金属鉄の量は同等であるが、磁束密度を0.3T以下とすることで、リサイクル原料中の金属鉄以外の磁着物が除去されてしまうことを抑制することができる。金属鉄以外の磁着物として、マグネタイトやマグヘマタイト等の鉄酸化物があげられる。これらの酸化物は、単独で、または、他の有用な成分に混合して存在し、磁着物をして除去されることで有用成分のリサイクル率を下げるおそれがある。
【0027】
乾燥工程S15では、破砕・磁力選別を経たリサイクル原料を乾燥する。特に破砕工程で湿式破砕機を用いた場合には必須となる。そして、分級工程S16では、リサイクル原料を通常のバージン原料と同様に粒径別に分級する。具体的には、リサイクル原料を粒径1mm以下、粒径1mm超3mm以下、粒径3mm超にそれぞれ分級する。分級にはそれぞれの目開きの篩を用いることができる。以上の工程によってリサイクル原料を製造する(S17)。
【0028】
(耐火物の製造方法)
本実施形態の耐火物(リサイクルれんが)は、
図3にフロー図で示す工程によって形成される。すなわち、上述した製造方法によって製造したリサイクル原料、その他のバージン原料等の耐火物原料、バインダー、および金属粉末等を配合し、これらを混練工程S21で混練するとともに成形工程S22で成形し、成形物とする。ここで、金属粉末としては、たとえば金属Siや金属Al等の公知の金属粉末を用いることができる。また、バインダーとしては、たとえばフェノールレジン(主剤)に加えてヘキサミン(硬化剤)等の公知のバインダーを用いることができる。バインダーの添加量は、たとえばフェノールレジン(主剤)およびヘキサミン(硬化剤)の場合では、通常、耐火物原料に対する外掛けでフェノールレジンを3質量%程度、ヘキサミンを0.3質量%程度とすることができる。その後乾燥工程S23でその成形物の乾燥を行なう。そして、加工工程S24で所望の大きさ・形状のれんがに加工することにより、リサイクル原料からリサイクルれんがを形成することができる(S25)。
【実施例0029】
(実施例1)
溶銑予備処理容器の内張り耐火物にはアルミナ・炭化珪素・カーボン質れんがを使用し、永久耐火物にはろう石れんがを使用した。そして、上記実施形態で説明したリサイクル原料化工程(
図2)に準拠してリサイクル原料を製造した。
【0030】
表1に発明例のリサイクル原料(試料No.1-1~1-5)と比較例のリサイクル原料(試料No.1-6)について、粒径1mm以下、粒径1mm超3mm以下、粒径3mm超のリサイクル原料の化学成分組成をそれぞれ示す。組成は、リサイクル原料全体に対する質量百分率で表す。試料No.1-1~1-5の通り、リサイクル原料化工程に準拠して製造したリサイクル原料、すなわち除去工程で篩上を回収したリサイクル原料中のMgO量は0.5質量%から3.1質量%、CaO量は0.9質量%から3.9質量%の範囲内であり、MgOとCaOの合計含有量は1.4質量%から7.0質量%の範囲内に収まっていた。一方、試料No.1-6の通り、リサイクル原料化工程に示す除去工程(篩掛け)を実施しなかった場合、リサイクル原料中のMgOとCaOの合計含有量は7.0質量%超であった。これらのことから、
図2の製造工程に準拠してリサイクル原料を製造すれば、リサイクル原料全体のMgOとCaOの合計含有量を7質量%以下に抑制できることが分かった。
【0031】
【0032】
表2に除去工程の篩下の化学成分組成を示す。試料No.1-1~1-5および1-7に示す通り、篩の目開きサイズを大きくすると、篩下のMgO量、CaO量が増えるが、有用な成分であるアルミナ(Al2O3)量も増える。そこで、53mm以下の目開きの篩を用いることで、篩下のアルミナの含有量を50%以下とすることができ、有用な成分であるアルミナの廃棄率を低減でき、リサイクル性が向上することがわかる。
【0033】
【0034】
(実施例2)
次に、目開きサイズの異なる篩を用いて篩掛けを行い、除去工程における篩の目開きサイズがリサイクル原料中のMgO量ならびにCaO量に及ぼす影響を調べた。目開きサイズの異なる篩を用いて不純物の除去工程を行い、その後、篩上の使用済耐火物を、破砕・磁力選別、乾燥し、分級工程で粒径1mm以下、粒径1mm超3mm以下、粒径3mm超にそれぞれ分級した結果を表3に示す。表3中の成分組成は、分級した耐火物原料に対する質量百分率で表す。
【0035】
【0036】
分級工程後の粒径1mm以下のリサイクル原料において、試料No.2-1の通り、破砕工程前の除去工程で目開きサイズが31.5mmの篩を用いた場合、MgOとCaOの合計含有量は3.5質量%以下となった。また、試料No.2-2~2-4の通り、破砕工程前の除去工程で目開きサイズが31.5mm未満の篩を用いた場合、MgOとCaOの合計含有量は3.5質量%超となった。
【0037】
分級工程後の粒径1mm超3mm以下のリサイクル原料において、試料No.3-1および3-2の通り、破砕工程前の除去工程で目開きサイズが26.5mm以上の篩を用いた場合、MgOとCaOの合計含有量は4.5質量%以下となった。また、試料No.3-3~3-4の通り、破砕工程前の除去工程で目開きサイズが26.5mm未満の篩を用いた場合、MgOとCaOの合計含有量は4.5質量%超となった。
【0038】
分級工程後の粒径3mm超のリサイクル原料において、試料No.4-1~4-3の通り、破砕工程前の除去工程で目開きサイズが22.4mm以上の篩を用いた場合、MgOとCaOの合計含有量は6質量%以下となった。また、試料No.4-4の通り、破砕工程前の除去工程で目開きサイズが22.4mm未満の篩を用いた場合、MgOとCaOの合計含有量は6質量%超となった。
【0039】
これらのことから、破砕工程前の除去工程で目開きサイズが31.5mm以上の篩を用いると、粒径1mm以下のリサイクル原料中のMgOとCaOの合計含有量を3.5質量%以下に抑制できることがわかる。同じく目開きサイズが26.5mm以上の篩を用いると、粒径1mm超3mm以下のリサイクル原料中のMgOとCaOの合計含有量を4.5質量%以下に抑制できることがわかる。同じく目開きサイズが22.4mm以上の篩を用いると粒径3mm超のリサイクル原料中のMgOとCaOの合計含有量を6質量%以下に抑制できることがわかる。破砕工程前の除去工程で篩の目開きサイズを大きくすると、粒径1mm以下のリサイクル原料、粒径1mm超3mm以下のリサイクル原料、粒径3mm超のリサイクル原料中のMgOとCaOの合計含有量を低減でき、リサイクル原料の純度を更に高められることが分かった。
【0040】
(実施例3)
次に、試料No.1-1~1-6に示すリサイクル原料を用いて表4の通り配合し、
図3に示した製造フローに準拠してリサイクルれんがを製作した後、耐溶損性を評価した。耐溶損性の評価は、
図4に示す高周波誘導炉10を用いた内張り分け法により行った。高周波誘導炉10の内張り耐火物として試料41を底板13の上に八角形断面の容器となるように施工(
図4(b))し、溶銑5とスラグ11を収容、保持した。誘導コイル12に通電し、溶銑の試験温度を1650℃、温度保持時間を4時間として表5に示す合成スラグを1時間毎に投入し、冷却後に試料41の溶損量を測定した後、バージンれんが(試料No.5-0)の溶損量を100として溶損指数を求め、表4に併せて示す。その結果、試料No.5-1~5-5のリサイクルれんがは実機で使用しても問題無い耐溶損性を有したが、試料No.5-6のリサイクルれんがはバージンれんがと比較して大幅に耐溶損性が劣っており、実機での使用は不可と判断された。
【0041】
【0042】
【0043】
これらのことから、リサイクル原料全体の不純物(MgOとCaO)の合計含有量が7質量%以下であるリサイクル原料を配合したリサイクルれんがの耐溶損性は、バージンれんがと同等の耐溶損性を維持できることがわかった。
【0044】
(実施例4)
次に、リサイクル原料の配合量がリサイクルれんがの耐用性に及ぼす影響を調べた。試料No.1-1に示すリサイクル原料を用いて表6の通り配合し、前記と同様の方法で耐溶損性を評価した。試料No.6-4~6-7の通り、リサイクル原料の配合量が60質量%超であるリサイクルれんがは、リサイクル原料の配合量が60質量%以下であるリサイクルれんが、ならびにバージンれんがと同等の耐溶損性を有し、かつ製造したリサイクル原料を全て使い切り産廃排出量ゼロを実現できた。一方、試料No.6-1~6-3の通り、バージンれんが、およびリサイクル原料の配合量が60質量%以下であるリサイクルれんがにおいては、製造したリサイクル原料を全て使い切れず、産廃排出量ゼロを実現できなかった。
【0045】
【0046】
これらのことから、リサイクルれんがにおけるリサイクル原料の配合量を60質量%超とすると、製造したリサイクル原料を全て使い切ることができ、産廃排出量ゼロを実現できることが分かった。
【0047】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述により本発明は限定されることはない。本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。