(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072444
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】車両の上部車体構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/04 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
B62D25/04 C
B62D25/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183265
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】村岡 修二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須賀 太一
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB55
3D203BB56
3D203BB62
3D203BB64
3D203CA57
(57)【要約】
【課題】質量、コストを極力増大させることがなく、車両走行時におけるルーフレールの断面変形を抑制すること。
【解決手段】ピラーインナ33とピラーアウタ32とで構成され車両上下方向に延びるピラーレイン31と、ルーフレールアウタ12とルーフレールインナ13とで車両前後方向に延びる閉断面11sが形成されるルーフレール11と、を備え、ルーフレールアウタ12は、ルーフレールインナ13の上端131に接合される上端フランジ部121と、上端フランジ部121の下方かつ車幅方向外方に位置する側面部122と、を有し、ピラーアウタ32のルーフレール11の閉断面11s内に位置する上端部34が、側面部122に固定される外側本体フランジ部35と、ルーフレールインナ13に固定される内側固定部36と、外側本体フランジ部35と内側固定部36との間を車両上下方向に沿って直線状に連結する本体部37と、を有する構成とした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピラーインナレインとピラーアウタレインとで構成され車両上下方向に延びるピラーレインと、
ルーフレールアウタレインとルーフレールインナレインとで車両前後方向に延びる閉断面が形成されるルーフレールと、を備え、
前記ルーフレールアウタレインは、前記ルーフレールインナレインの上端に接合される上側フランジ部と、
前記上側フランジ部の下方かつ車幅方向外方に位置する側面部と、を有し、
前記ピラーアウタレインの前記ルーフレールの閉断面内に位置する上端部が、前記側面部に固定される外側固定部と、前記ルーフレールインナレインに固定される内側固定部と、前記外側固定部と前記内側固定部との間を車両上下方向に沿って直線状に連結する本体部と、を有することを特徴とする
車両の上部車体構造。
【請求項2】
前記ピラーアウタレインは、
前記ルーフレールの下方に位置するリアホイルハウスから前記ルーフレールの前記閉断面内まで上方へ延びるとともに車両前後方向に臨む縦壁部を有する
請求項1に記載の車両の上部車体構造。
【請求項3】
前記縦壁部の上端は、前記本体部に角部を介して連結された
請求項2に記載の車両の上部車体構造。
【請求項4】
前記縦壁部は前記ルーフレールアウタレインの前記側面部と固定された
請求項2又は請求項3に記載の車両の上部車体構造。
【請求項5】
前記外側固定部は、前記本体部に沿って車両前後方向に延びる外側本体フランジ部で形成され、
前記外側本体フランジ部は、車両前後方向に沿って複数箇所において前記側面部に固定され、
前記縦壁部には、前記縦壁部に沿って車両上下方向に延びる外側縦壁フランジ部が形成され、前記外側縦壁フランジ部は、車両上下方向に沿って複数箇所において前記側面部に固定され、
前記外側本体フランジ部と前記外側縦壁フランジ部は、互いに連続して形成された
請求項2に記載の車両の上部車体構造。
【請求項6】
前記内側固定部は、前記本体部に沿って車両前後方向に延びるとともに、車両前後方向に沿って複数箇所において前記ルーフレールインナレインに固定され、
前記内側固定部の後端と前記縦壁部の車幅方向内端とは角部を介して連結された
請求項5に記載の車両の上部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車両上下方向に延びるピラー部材と、車両前後方向に延びるルーフレールとを備え、ルーフレールに対してピラー部材の上部が接合された車両の上部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車室に対して上方に位置するルーフの車幅方向の両端部には、ルーフレールが車両前後方向に沿って延びている。ルーフレールは、ルーフレールアウタレインとルーフレールインナレインとで車両前後方向に延びる閉断面が形成される車体骨格部材である。このようなルーフレールの車両前後方向の途中部には、ピラー部材の上部が下方から接合されている。
【0003】
車両走行時にルーフレールは、ピラー部材の上部との接合部において、ルーフレール上端部が車幅方向に内倒れするように揺動する際、ルーフレールアウタとルーフレールインナとが近接、離間する相対変位する挙動を示す断面変形が生じるおそれがある。
【0004】
このような課題に対して、特許文献1に例示するようにルーフレールの閉断面の下側領域に、該下側領域の角部を補強する補強部材や充填剤を設け、ルーフレールの上述した断面変形を抑制し、車体剛性を向上させる構造が知られている。
【0005】
しかし、特許文献1の補強部材や充填剤は、ルーフレールの閉断面の下側領域のみに部分的に設けられるため、例えば、閉断面の略全体に亘って設けられる節部材と比較して軽量化できる一方で、補強のために別体の部材を設ける必要があり、組立工程の煩雑化やコストの増大が生じてしまうことから、さらなる改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、質量、コストを極力増大させることがなく、車両走行時におけるルーフレールの断面変形を抑制できる車両の上部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の車両の上部車体構造は、ピラーインナレインとピラーアウタレインとで構成され車両上下方向に延びるピラーレインと、ルーフレールアウタレインとルーフレールインナレインとで車両前後方向に延びる閉断面が形成されるルーフレールと、を備え、前記ルーフレールアウタレインは、前記ルーフレールインナレインの上端に接合される上側フランジ部と、前記上側フランジ部の下方かつ車幅方向外方に位置する側面部と、を有し、前記ピラーアウタレインの前記ルーフレールの閉断面内に位置する上端部が、前記側面部に固定される外側固定部と、前記ルーフレールインナレインに固定される内側固定部と、前記外側固定部と前記内側固定部との間を車両上下方向に沿って直線状に連結する本体部と、を有することを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、車両走行時に、ルーフレールの上端部が車幅方向に内倒れし、ルーフレールが断面変形しようとするが、本体部が側面部とルーフレールインナレインとを車両上下方向に沿って直線状に固定し、ルーフレールインナレインとルーフレールアウタレインとを上下に連結することで、ルーフレールの上端部が車幅方向の内側に曲げ変形する挙動を引張る作用で抑制でき、閉断面の上部領域も含めて補強部材を備えずとも、ルーフレールの断面変形を抑制できる。
従って、質量、コストを増大させることがなく、ルーフレールの断面変形を抑制できる。
【0010】
ここで、上述した車両上下方向に沿って直線状に連結する本体部とは、車両の上下方向に完全に平行でなくてもよく、好ましくは本体部と水平方向のなす角度が90度から45度の間にあればよい。
【0011】
この発明の態様として、前記ピラーアウタレインは、前記ルーフレールの下方に位置するリアホイルハウスから前記ルーフレールの前記閉断面内まで上方へ延びるとともに車両前後方向に臨む縦壁部を有してもよい。
【0012】
前記構成によれば、前記ピラーアウタレインは、前記リアホイルハウスから前記ルーフレールの前記閉断面内まで上方へ延びるとともに、車両前後方向を臨む縦壁部を有するため、サスペンションから入力される荷重を前記リアホイルハウスから前記ルーフレールへ効率よく分散伝達することができる。
【0013】
さらに、縦壁部は、前記ルーフレールの前記閉断面内において車両前後方向に臨むため、前記ルーフレールの閉断面を車両前後方向に仕切る節として機能し、走行時における前記ルーフレールの上述した断面変形を効率よく抑制できる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記縦壁部の上端は、前記本体部に角部を介して連結されてもよい。
前記構成によれば、前記縦壁部と前記本体部とが協働してルーフレールの上端部の上述した引張り作用を高めることができる。従って、車両走行時における前記ルーフレールの断面変形の抑制に寄与することができる。
また、前記縦壁部と前記本体部とは稜線としての角部を介して連結されるため、互いの強度を相互に高めることができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記縦壁部は前記ルーフレールアウタレインの前記側面部と固定されてもよい。
このように、前記縦壁部は前記ルーフレールアウタレインの前記上端フランジ部ではなく、前記側面部と固定することで、前記縦壁部と前記本体部とが協働して前記ルーフレールの上端部の引張り作用を高めることができるため、車両走行時に前記ルーフレールアウタレインと前記ルーフレールインナレインとが互いに離間したり、近接したりする変形を効果的に抑制することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記外側固定部は、前記本体部に沿って車両前後方向に延びる外側本体フランジ部で形成され、前記外側本体フランジ部は、車両前後方向に沿って複数箇所において前記側面部に固定され、前記縦壁部には、前記縦壁部に沿って車両上下方向に延びる外側縦壁フランジ部が形成され、前記外側縦壁フランジ部は、車両上下方向に沿って複数箇所において前記側面部に固定され、前記外側本体フランジ部と前記外側縦壁フランジ部は、互いに連続して形成されてもよい。
【0017】
前記構成によれば、前記外側本体フランジ部を前記側面部に対して車両前後方向に沿って複数箇所で固定するとともに、前記外側縦壁フランジ部を前記側面部に対して車両上下方向に沿って複数の固定箇所で固定し、さらに、前記外側本体フランジ部と前記外側縦壁フランジ部とは互いに連続して形成されるため、車両走行時に前記ルーフレールアウタレインと前記ルーフレールインナレインとが互いに離間したり、近接したりする変形を効果的に抑制することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記内側固定部は、前記本体部に沿って車両前後方向に延びるとともに、車両前後方向に沿って複数箇所において前記ルーフレールインナレインに固定され、前記内側固定部の後端と前記縦壁部の車幅方向内端とは角部を介して連結されてもよい。
【0019】
前記構成によれば、前記内側固定部を前記ルーフレールインナレインに対して車両前後方向に沿って複数の固定箇所で固定することで、前記ピラーアウタレインの前記上端部を前記ルーフレールインナレインに対してしっかりと固定できる。
【0020】
よって、前記ピラーアウタレインの前記上端部は、前記内側固定部と上述した外側本体フランジ部とによって、前記ルーフレールインナレインと前記ルーフレールアウタレインとをしっかりと繋ぐことができるため、前記ルーフレールの閉断面内を車幅方向に仕切る節としての効果を高めることができる。
【0021】
さらに、前記縦壁部の車幅方向内端は角部を介して前記内側固定部の後端と連結されるため、前記縦壁部についても前記ルーフレールインナレインに対して車両前後方向に沿って複数の固定箇所で固定することができる。
【0022】
よって、前記縦壁部は、前記内側固定部と上述した外側縦壁フランジ部とによって、前記ルーフレールインナレインと前記ルーフレールアウタレインとをしっかりと繋ぐことができるため、前記ルーフレールの閉断面内を車両前後方向に仕切る節としての効果を高めることができる。
さらにまた、前記内側固定部と前記縦壁部とは稜線としての角部を介して互いに連結されるため、強度を相互に高めあうことができる。
【発明の効果】
【0023】
前記構成によれば、質量、コストを極力増大させることがなく、車両走行時におけるルーフレールの断面変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態の車両上部構造を備えた車体後部の要部を示す左側面図
【
図2】
図1に示す車両上部構造の要部をルーフレールアウタの一部を仮想線で示した拡大図
【
図3】本実施形態の車両上部構造の要部を車両の右側、前側かつ下側から視た斜視図
【
図4】
図2のA-A線矢視に沿った要部を示す断面図
【
図5】
図2のB-B線矢視に沿った要部を示す断面図
【
図6】
図2のC-C線矢視に沿った要部を示す断面図
【
図7】
図2のD-D線矢視に沿った要部を示す断面図
【
図8】
図2のE-E線矢視に沿った要部を示す断面図
【
図9】
図2のF-F線矢視に沿った要部を示す断面図
【
図10】
図2のG-G線矢視に沿った要部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
なお、本実施形態の車両の上部車体構造1は、略左右対称形状であるため、車両上部の右側の構造に基づいて説明する。図中、矢印Fは車両前方、矢印Uは車両上方、矢印OUTは車幅方向外側(車室外側)、矢印INは車幅方向内側(車室側)を夫々示すものとする。また、図中、「×」印は主要なスポット溶接個所を示す。
【0026】
本実施形態の車両Vは、ドアハッチバックタイプの自動車であり、このような自動車に適用される上部車体構造1は、
図1に示すように、車体のルーフパネル2の左右両側の縁辺に、該縁辺に沿って車両前後方向に延びるルーフレール11と、車両側面のドア開口7およびクォーターウインドウ開口8の間において車両上下方向に延びる中間ピラー31とを備えている。
【0027】
中間ピラー31は、
図1~
図3に示すように、上端部34(
図2、
図3参照)がルーフレール11に連結され、車両側面視でT字形状の連結部Jが形成されている。中間ピラー31については後で説明する。
【0028】
ルーフレール11は、連結部Jよりも後方部位11rによってクォーターウインドウ開口8の上縁辺を形成するとともに、連結部Jよりも前方部位11fによってドア開口7の上縁辺を形成する。
【0029】
また
図1に示すように、上部車体構造1の下方には、後輪(図示省略)を車両上方から収容するリアホイルハウス4と車両後部の側壁を成すリアサイドパネル5を備えている。
【0030】
リアホイルハウス4は、車幅方向外側へ張り出した膨出部42が設けられたホイルハウスアウタ41と、車幅方向内側に張り出したホイルハウスインナ43(
図7参照)とを有している。
【0031】
リアサイドパネル5は、リアホイルハウス4と、ルーフレール11の後方部位11rとの間に備え、下端がリアホイルハウス4の上端に接合されている。リアサイドパネル5は、クォーターウインドウ開口8の周縁における後縁辺および下縁辺を形成している。
【0032】
ルーフレール11はルーフサイドレールとも称し、
図2~
図10に示すように、車体上部の車幅方向の両端部において車両前後方向に延びる閉断面11sを構成する車体剛性部材であり、
図1に示すように、後端がリアピラー6の前端に接合されている。
【0033】
リアピラー6はDピラーとも称し、
図1に示すように、車両後部において車両前後方向に開口するリア開口(図示省略)の左右両側の縁辺に沿ってルーフレール11の後端から車両の下方かつ後方へ延びる閉断面6sが内部に構成された車体剛性部材である。
【0034】
図2~
図10に示すように、ルーフレール11は、車幅方向外側に位置するルーフレールアウタレイン12(以下、「ルーフレールアウタ12」と略記する)と、車幅方向内側に位置するルーフレールインナレイン13(以下、「ルーフレールインナ13」と略記する)を備えている。
なお、
図2、
図3では、ルーフレールアウタ12における、連結部Jおよび連結部Jよりも後方部位11rに位置するパネル部材を仮想線で示している。
【0035】
図1、
図10等に示すように、ルーフレールアウタ12の連結部Jよりも後方部位11rについては、上端フランジ部121と、該上端フランジ部121の下方かつ車幅方向外方へ延びる側面部122と、側面部122の下端から下方へ延出する下端フランジ部123とで、車両前後方向の直交断面が車幅方向外側へ若干膨出する弧形状に形成されている。
【0036】
図1~
図5等に示すように、ルーフレールアウタ12の連結部Jよりも前方部位11fについては、上端フランジ部121と、該上端フランジ部121の下方かつ車幅方向外方へ延びる側面部122と、側面部122の下端から車幅方向内側へ延びる下面部124と、下面部124の車幅方向内端から下方へ延びる下端フランジ部123とで、車両前後方向の直交断面の上側部分が弧形状かつ下側部分が段付き凸形状となるように車幅方向外側へ突出して形成されている。
【0037】
図2~
図4等に示すように、ルーフレールインナ13は、上端フランジ部131と、該上端フランジ部131の下方かつ車幅方向外方へ延びる側面部132と、側面部132の下端から下方へ延出する下端フランジ部133とで、車両前後方向の直交断面が車幅方向内側へ若干膨出して形成されている。
【0038】
ルーフレール11は、ルーフレールアウタ12とルーフレールインナ13とにおける上端フランジ部121,131同士が接合されるとともに(
図10参照)、下端フランジ部123,133同士が接合されることにより(
図7参照)、両部材12,13の間に上述した閉断面11sが構成されている。
なお、
図4~
図6に示すように、ルーフレールアウタ12の上端フランジ部121の上方にはルーフパネル2の車幅方向外端21が位置し、ルーフレールアウタ12の上端フランジ部121とルーフパネル2の車幅方向外端21とは、図示省略するが、車体側部の意匠を形成するキャブサイドアウタパネルの上端を介して互いに接合されている。また、ルーフレールアウタ12の下端フランジ部133は、ルーフレールインナ13の車両前後方向における、連結部J以外の部位において形成されている。
【0039】
図1、
図6~
図8に示すように、連結部Jにおけるルーフレールインナ13の下端部とルーフレールアウタ12の下端部との間には、閉断面11sが下方へ向けて開口する開口部20が形成されている。そして、ルーフレールインナ13の前方部位11fに有する下面部124は、後端が開口部20の前側縁部20fに位置するまで中間ピラー31の前端部よりも後方へ連続して形成されている。
【0040】
図1~
図6に示すように、中間ピラー31はCピラーとも称し、クォーターウインドウ開口8の前縁辺を形成するとともにドア開口7の後縁辺の上部を形成する。
中間ピラー31は、車幅方向の外側に位置するピラーアウタレイン32(以下「ピラーアウタ32」と略記する)と、車幅方向内側に位置するピラーインナレイン33(以下「ピラーインナ33」と略記する)(
図4~
図6参照)とを備えている。ピラーアウタ32とピラーインナ33は、各前縁において車両前方へ突出する前端フランジ部321,331(
図2、
図4参照)が、各後縁に後方へ突出する後端フランジ部322,332(
図2参照)が、何れも車両上下方向の略全長に亘って形成されている。
【0041】
そして
図4~
図6に示すように、中間ピラー31は、前端フランジ部321,331同士と後端フランジ部322,332同士を夫々重ね合わせてスポット溶接等で溶接することでピラーアウタ32とピラーインナ33が一体に形成されている。
なお同図に示すように本実施形態において、ピラーインナ33とルーフレールインナ13とは同じパネル部材により一体に成形されている。
【0042】
図1に示すように、ピラーアウタ32は中間ピラー31の下端、すなわちクォーターウインドウ開口8の前縁辺の下端よりも下方へ連続して延設されている。
詳しくは、ピラーアウタ32は、上部32Uが中間ピラーアウタレイン(32U)として形成されるとともに、中間ピラー31よりも下部32Dが、リアサイドパネル5を経てホイルハウスアウタ41まで下方へ延設されている。ピラーアウタ32の下端部は、ホイルハウスアウタ41の膨出部42の側面視アーチ形状の上面44における、頂部44aより若干前側位置に接合されている。
【0043】
また
図1に示すように、ピラーアウタ32の下部32Dは、車両上下方向に延び、車両上下方向の直交断面が車幅方向内側へ開口する、換言すると車幅方向外側へ膨出するハット形状に形成され、前端フランジ部321および後端フランジ部322がリアサイドパネル5およびホイルハウスアウタ41に対して車幅方向外側から接合されている。これにより、ピラーアウタ32の下部32Dの内部には、車両上下方向に延びる閉断面32Dsが構成されている。
【0044】
図2、
図3に示すように、ピラーアウタ32の上部32U、すなわち中間ピラーアウタレイン(32U)は、前記後端フランジ部322と、該後端フランジ部322の前端から車幅方向内側へ延びる縦壁部50と、該縦壁部50の車幅方向内端から車両前側へと延びる側面部324と、側面部324の前端から前方へ延びる前記前端フランジ部321とを備えている。
【0045】
図2~
図10に示すように、連結部Jにおいて、ピラーアウタ32には上端部34が設けられている。上端部34は、ルーフレール11の下端よりも上方向へ延出するとともに、ルーフレール11の閉断面11s内に位置する。
【0046】
図2、
図3に示すように、上端部34は、ピラーアウタ32の該上端部34よりも下部と比して車両前後方向に幅広に形成されている。これに伴ってピラーアウタ32の上部32Uにおける、上端部34の付け根部分は、上方向ほど徐々に車両前後方向に拡幅して形成されている。これにより、クォーターウインドウ開口8の前方かつ上方の角部8Cと、ドア開口7の後方かつ上方の角部7Cは共にコーナーRが形成されている。
【0047】
また
図1~
図6に示すように、ピラーアウタ32における縦壁部50は、ピラーアウタ32の少なくとも上部32U、すなわち中間ピラーアウタレイン(32U)において上端部34を含めて車両上下方向の略全長に亘って連続して形成されている。
【0048】
さらに
図2、
図3、
図6~
図8に示すように、縦壁部50は、ルーフレール11の閉断面11s内に位置する上端部34に至るまで上方向へルーフレール11の連結部Jに設けた開口部20(
図2、
図3、
図6、
図7参照)を通じて延びている。
図6等に示すように、縦壁部50は、閉断面11s内において車両前後方向を臨むように配置される。
【0049】
図2、
図3、
図5等に示すように、ピラーアウタ32の上端部34は、該上端部34の上端において上方程車幅方向内側に延びる外側本体フランジ部35と、上端部34の下端(基端部)において上方程車幅方向内側に延びる内側固定部36と、外側本体フランジ部35の車幅方向外端と内側固定部36の車幅方向内端との間においてこれら各端部を連結する本体部37とを備えて一体に形成されている。
【0050】
図2~
図6、
図10に示すように、外側本体フランジ部35は、本体部37の上端に沿って上端部34の車両前後方向の全長に亘って形成されている。
図2、
図3、
図5、
図7に示すように、内側固定部36は、本体部37の下端に沿って車両前後方向に形成されている。
【0051】
図2~
図6、
図8、
図9に示すように、本体部37は、上方程若干車幅方向内側に位置するように車両上下方向に対して若干傾斜した姿勢で車両上下方向に沿って延びている。当例では
図4~
図7に示すように、本体部37は、車両上下方向と略一致する方向、すなわち水平方向とのなす角度が45度~90度の範囲における80度となる方向に延びている。さらに、本体部37は、車両上下方向の途中部分に屈曲部を有さずに車両上下方向において略直線状に延びている。
【0052】
図2、
図3に示すように、ピラーアウタ32の外側本体フランジ部35は、ルーフレールアウタ12の側面部122に閉断面11s内から重合されている。そして
図2、
図3中において細字の「×」印にて示すように、側面部122と外側本体フランジ部35は、互いの重合部分において車両前後方向に沿って複数箇所(当例では5箇所)においてスポット溶接等により接合固定される。なお、
図2、
図3中の細字の「×」印は、ルーフレール11と中間ピラー31との連結部Jにおける、ルーフレールアウタ12とピラーアウタ32との2枚のパネル部材の重合部分のスポット溶接個所を示す。
【0053】
一方、
図2~
図5、
図7に示すように、ピラーアウタ32の内側固定部36は、ルーフレールアウタ12およびルーフレールインナ13に挟み込むようにして重合されている。そして
図2、
図3中において太字の「×」にて示すように、これら3枚のパネルは、内側固定部36が位置する重合部分において車両前後方向に沿って複数箇所においてスポット溶接等により接合される。なお、
図2、
図3中の太字の「×」印は、ルーフレールアウタ12とピラーアウタ32とルーフレールインナ13(またはピラーインナ33)との3枚のパネル部材の重合部分のスポット溶接個所を示す(
図4、
図5、
図7参照)。
【0054】
図4~
図6、
図8、
図9に示すように、ピラーアウタ32の上端部34の本体部37は、閉断面11s内において車幅方向を臨むように配置される。よって、ピラーアウタ32の上端部34は、ルーフレール11の閉断面11sを本体部37によって車幅方向に仕切るようにルーフレールアウタ12とルーフレールインナ13とを繋いでいる。
【0055】
また
図2~
図10に示すように、上端部34に位置する縦壁部50は、本体部37に対して縦壁状に形成された縦壁本体部51(
図2~
図9参照)と、該縦壁本体部51の車幅方向外端から車両後方へ突出する外側縦壁フランジ部52(
図2、
図3、
図7~
図10参照)とを有している。
【0056】
図2、
図3、
図8、
図9に示すように、車両上下方向に延びる縦壁本体部51の上端と、車両前後方向に延びる本体部37の後端とは、閉断面11s内において車両上下方向に延びる角部53を介して一体に連結されている。すなわち、縦壁本体部51と本体部37とは車両上下方向の直交断面視において角部53を介して連続して設けられている。
【0057】
図2、
図3に示すように、外側縦壁フランジ部52は、縦壁本体部51の車幅方向外端に沿って車両上下方向に延びるとともに、車両上下方向に沿って複数箇所においてルーフレールアウタ12の側面部122に閉断面11s側から重合されている(
図7、
図8参照)。そして
図2、
図3中において細字の「×」印にて示すように、側面部122と外側縦壁フランジ部52は、互いの重合部分において車両上下方向に沿って複数箇所(当例では4箇所)においてスポット溶接等により接合固定される。
【0058】
図2、
図3に示すように、外側本体フランジ部35の後端と外側縦壁フランジ部52の上端とは、一体に連結されている。すなわち、外側本体フランジ部35と外側縦壁フランジ部52とは、L字状を成すように連続して形成されている。
【0059】
なお、外側本体フランジ部35と外側縦壁フランジ部52との角部に位置するスポット溶接個所は、外側本体フランジ部35と側面部122との溶接個所と、外側縦壁フランジ部52と側面部122との溶接個所との双方の溶接個所を兼ねている。
このように、外側本体フランジ部35と外側縦壁フランジ部52との角部にスポット溶接個所を設定することで、極力少ない溶接個所で側面部122に対して強固に接合できる。
【0060】
また同図に示すように、外側縦壁フランジ部52の下端とピラーアウタ32の後端フランジ部322の上端とは、車両上下方向に連続して一体に形成されている。
【0061】
さらにまた
図2、
図3、
図7に示すように、縦壁本体部51の車幅方向内端は、車両前後方向に延びる内側固定部36の後端と角部54を介して一体に連結されている。すなわち、縦壁本体部51と内側固定部36とは車両上下方向の直交断面視において角部54を介して連続して設けられている。
【0062】
上述した本実施形態の車両の上部車体構造1は、
図1~
図4等に示すように、ピラーインナ33(
図4参照)とピラーアウタ32とで構成され車両上下方向に延びるピラーレインとしての中間ピラー31と、ルーフレールアウタ12とルーフレールインナ13とで車両前後方向に延びる閉断面11sが形成されるルーフレール11と、を備え、
図4~
図6等に示すように、ルーフレールアウタ12は、ルーフレールインナ13の上端フランジ部131に接合される上端フランジ部121と、上端フランジ部121の下方かつ車幅方向外方に位置する側面部122と、を有し、
図2~
図6等に示すように、ピラーアウタ32のルーフレール11の閉断面11s内に位置する上端部34が、側面部122に固定される外側本体フランジ部35と、ルーフレールインナ13に固定される内側固定部36と、外側本体フランジ部35と内側固定部36との間を車両上下方向に沿って直線状に連結する本体部37と、を有することを特徴とする。
【0063】
前記構成によれば、ルーフレールアウタ12の側面部122とルーフレールインナ13とをルーフレール11の閉断面11s内において、曲げ部分を有することがなく車両上下方向に沿って直線状に延びる本体部37によって繋ぐため、車両走行時にルーフレール11の上端部、すなわち上端フランジ部121,131が車幅方向へ内倒れしようとしても、該上端部(121,131)をピラーアウタ32の上端部34によって車幅方向外側へ引っ張ろうとする引張り作用により、上端部(121,131)の内倒れによるルーフレール11の断面変形を抑制することができる。
【0064】
特に、ピラーアウタ32の上端部34における外側本体フランジ部35は、ルーフレール11の上端フランジ部121,131に挟み込むように固定するのではなく側面部122に固定することで、車両走行時にルーフレールアウタ12とルーフレールインナ13とが互いに離間したり、近接したりする変形についても効果的に抑制することができる。
【0065】
また上述したように、本体部37は、ルーフレール11の閉断面11s内において、例えば、ルーフレールインナ13の側から、ルーフレールアウタ12の側面部122よりも車両上方向に位置する上端フランジ部121まで車両上方向へ延ばしたり、曲げ部分を有したりする従来の構成と比して質量、コストを抑制することができる。
従って、質量、コストを増大させることがなく、ルーフレール11の断面変形を抑制できる。
【0066】
この発明の態様として、
図2~
図9に示すように、ピラーアウタ32は、ホイルハウスアウタ41からルーフレール11の閉断面11s内まで車両上方向へ延びるとともに、閉断面11s内において車両前後方向に臨む縦壁部50を有するものである。
【0067】
前記構成によれば、ピラーアウタ32は、リアサスペンションから入力される荷重をホイルハウスアウタ41(
図1参照)からルーフレール11へ効率よく分散伝達することができる。
【0068】
さらに、ルーフレール11の閉断面11sにおいて車両前後方向に臨む縦壁部50は、ルーフレールアウタ12とルーフレールインナ13とを繋ぐため、ルーフレール11の閉断面11sを車両前後方向に仕切る節として、ルーフレールインナ13とルーフレールアウタ12とを面で繋ぐ機能を果たすことができる。よって、車両走行時におけるルーフレール11の上述した断面変形を効率よく抑制できる。
【0069】
この発明の態様として、
図2、
図3、
図8、
図9に示すように、縦壁部50の上端は、本体部37に角部53を介して連結されたものである。
前記構成によれば、縦壁部50と本体部37とが協働してルーフレール11の上端部(121,131)の上述した引張り作用を高めることができる。従って、車両走行時におけるルーフレール11の断面変形の抑制に寄与することができる。
また、縦壁部50と本体部37とは稜線としての角部53を介して連結されるため、互いの強度を相互に高めることができる。
【0070】
この発明の態様として、
図2、
図3、
図7~
図9に示すように、縦壁部50は、外側縦壁フランジ部52がルーフレールアウタ12の側面部122と固定されたものである。
このように、縦壁部50は本体部37と同様にルーフレールアウタ12の上端フランジ部121ではなく側面部122と固定することで、縦壁部50と本体部37とが協働してルーフレール11の上端部(121,131)の引張り作用を高めることができる。従って、車両走行時にルーフレールアウタ12とルーフレールインナ13とが互いに離間したり、近接したりする変形を効果的に抑制することができる。
【0071】
この発明の態様として、
図2、
図3に示すように、上端部34に備えた外側本体フランジ部35は、本体部37の上端に沿って車両前後方向に延びるとともに、車両前後方向に沿って複数箇所において側面部122に固定され、縦壁部50には、縦壁部50の車幅方向外端に沿って車両上下方向に延びる外側縦壁フランジ部52が形成され、外側縦壁フランジ部52は、車両上下方向に沿って複数箇所において側面部122に固定され、外側本体フランジ部35と外側縦壁フランジ部52は、互いに連続して形成されたものである。
【0072】
このように、外側本体フランジ部35と外側縦壁フランジ部52とは共に、側面部122に対して複数の固定箇所で強固に固定されるとともに、互いに連続して形成されることで、車両走行時にルーフレールアウタ12とルーフレールインナ13とが互いに離間したり、近接したりする変形を効果的に抑制することができる。
【0073】
この発明の態様として
図2、
図3、
図7に示すように、内側固定部36は、本体部37の下端に沿って車両前後方向に延びるとともに、車両前後方向に沿って複数箇所においてルーフレールインナ13に固定され、内側固定部36の後端と縦壁部50の車幅方向内端とは角部54を介して連結されたものである。
【0074】
前記構成によれば、内側固定部36をルーフレールインナ13に対して車両前後方向に沿って複数の固定箇所で固定することで、ピラーアウタレイン32の上端部34をルーフレールインナ13に対してしっかりと固定できる。
【0075】
よって、ピラーアウタレイン32の上端部34は、内側固定部36と上述した外側本体フランジ部35とによって、ルーフレールインナ13とルーフレールアウタ12とをしっかりと繋ぐことができるため、ルーフレール11の閉断面11s内を車幅方向に仕切る節としての効果を高めることができる。
【0076】
さらに、縦壁部50の車幅方向内端は角部54を介して内側固定部36の後端と連結されるため、縦壁部50についてもルーフレールインナ13に対して車両前後方向に沿って複数の固定箇所で固定することができる。
【0077】
よって、縦壁部50は、内側固定部36と上述した外側縦壁フランジ部52とによって、ルーフレールインナ13とルーフレールアウタ12とをしっかりと繋ぐことができるため、ルーフレール11の閉断面11s内を車両前後方向に仕切る節としての効果を高めることができる。
また、内側固定部36と縦壁部50とは稜線としての角部54を介して互いに連結されるため、相互に強度を高めあうことができる。
【0078】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、ピラーレインは中間ピラー31に対応し、同様にルーフレールインナの上端は上端フランジ部131に対応し、ルーフレールアウタレインの上側フランジ部は上端フランジ部121に対応するが、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0079】
例えば、上述した実施形態においては、ハッチバックタイプの乗用車の例を説明したが、本発明は、車体後部にトランク開口が設けられるとともにトランクリッドを備えたセダンタイプの乗用車など、車両タイプに拘らず適用することが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…車両の上部車体構造
4…リアホイルハウス
10…車両前後方向に延びる閉断面
11…ルーフレール
12…ルーフレールアウタレイン
13…ルーフレールインナレイン
31…中間ピラー
32…ピラーアウタレイン
33…ピラーインナレイン
34…ピラーアウタの上端部
35…外側本体フランジ部
36…内側固定部
37…本体部
41…ホイルハウスアウタ
50…縦壁部
52…外側縦壁フランジ部
53…車両上下方向に延びる角部
54…内側固定部と縦壁部との角部
121…ルーフレールアウタの上端フランジ部
122…ルーフレールアウタの側面部
131…ルーフレールインナの上端フランジ部