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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072445
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】車両の側部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20240521BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20240521BHJP
   B62D 25/06 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B62D25/08 L
B62D25/04 D
B62D25/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183266
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】村岡 修二
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英貴
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB55
3D203BB56
3D203BB57
3D203BC10
3D203BC15
3D203CA52
3D203CB04
(57)【要約】
【課題】リアホイルハウス回りの車体剛性部材の板厚を減少させた場合でも車両走行時におけるリアサスペンションからの入力荷重に対して車体剛性を確保すること。
【解決手段】リアフレーム4に設けられダンパートップ41tを固定するサスペンションハウジング45と、サスペンションハウジング45の上方に位置するリアホイルハウス5と、リアホイルハウス5の車両上方に位置する窓部材7と、窓部材7の車両下方で該窓部材7を支持する窓支持部材6と、を備え、窓支持部材6は窓部材7に沿って設けられるフランジ部81と、フランジ部81から車幅方向内側に延びる上面部61と、を有し、サスペンションハウジング45と窓支持部材6とを車両上下方向に連結する連結部材10が、上面部61に車両上方から重ね合わせて車両上下方向に固定される上面固定部16を有する構成とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアフレームに設けられるとともにリアサスペンションのダンパートップを固定するサスペンションハウジングと、
前記サスペンションハウジングの上方に位置するリアホイルハウスと、
前記リアホイルハウスの車両上方に位置する窓部材と、
前記窓部材の車両下方で該窓部材を支持する窓支持部材と、を備え、
前記窓支持部材は前記窓部材に沿って設けられるフランジ部と、
前記フランジ部から車幅方向内側に延びる上面部と、を有し、
前記サスペンションハウジングと前記窓支持部材とを車両上下方向に連結する連結部材が、
前記上面部に車両上方から重ね合わせて車両上下方向に固定される上面固定部を有することを特徴とする
車両の側部車体構造。
【請求項2】
前記連結部材は前記サスペンションハウジングにおける、前記ダンパートップの中心部より前部と前記上面部とを連結する第1連結部材であり、
前記サスペンションハウジングにおける、前記ダンパートップの前記中心部より後部とリア開口上側角部とを連結する第2連結部材が、前記リア開口上側角部の下面部に車両下方から重ね合わせて車両上下方向に固定される下面固定部を有することを特徴とする
請求項1に記載の車両の側部車体構造。
【請求項3】
前記第1連結部材と前記第2連結部材との間を車両前後方向につなぐ第3連結部材を備えた
請求項2に記載の車両の側部車体構造。
【請求項4】
前記第3連結部材は前記リアホイルハウスと接合された
請求項3に記載の車両の側部車体構造。
【請求項5】
前記上面部は車幅方向内側ほど車両下方に傾斜する傾斜部を有し、前記連結部材は前記傾斜部に接合された
請求項1に記載の車両の側部車体構造。
【請求項6】
前記フランジ部と前記上面部との間において車幅方向に延びるビードを備えた
請求項1に記載の車両の側部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、リアフレームに設けられダンパートップを固定するサスペンションハウジングと、サスペンションハウジングの上方に位置するリアホイルハウスとを備えた車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に例示するように、車両走行時におけるリアサスペンションからの入力荷重を車両上下方向の上方に備えた中間ピラー(Cピラー)に伝達する伝達部材としてのインナレインを車両の側部に設けた構造が知られている。
【0003】
ところで、近年、車体のさらなる軽量化およびコスト低減を目的として例えば、リアホイルハウス回りの車体剛性部材の板厚を減少させることが求められている。
【0004】
しかし、特許文献1のインナレインは、車両上下方向の上端部を除く大部分がリアホイルハウスに接合されるとともに、リアホイルハウスより車両上方への延出部分が縦壁状のサイドパネルに車幅方向に接合された構成である。
【0005】
このような特許文献1の構造において、リアホイルハウス回りの車体剛性部材を薄肉化した場合、リアサスペンションからの車両上下方向の入力荷重に対してインナレインが湾曲変形するなど車体剛性が悪化するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-138589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、リアホイルハウス回りの車体剛性部材の板厚を減少させた場合でも車両走行時におけるリアサスペンションからの入力荷重に対して車体剛性を確保することができる車両の側部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の車両の側部車体構造は、リアフレームに設けられるとともにリアサスペンションのダンパートップを固定するサスペンションハウジングと、前記サスペンションハウジングの上方に位置するリアホイルハウスと、前記リアホイルハウスの車両上方に位置する窓部材と、前記窓部材の車両下方で該窓部材を支持する窓支持部材と、を備え、前記窓支持部材は前記窓部材に沿って設けられるフランジ部と、前記フランジ部から車幅方向内側に延びる上面部と、を有し、前記サスペンションハウジングと前記窓支持部材とを車両上下方向に連結する連結部材が、前記上面部に車両上方から重ね合わせて車両上下方向に固定される上面固定部を有することを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、前記上面部に対して車両上下方向に固定する前記上面固定部により、前記上面部が前記連結部材からの車両上下方向の入力荷重による変形を抑え込むとともに、前記窓部材に荷重を伝達できる。
【0010】
従って、前記リアホイルハウス回りの車体剛性部材の板厚を減少させた場合でも車両走行時における前記リアサスペンションからの入力荷重に対して車体剛性を確保することができる。すなわち、車体の軽量化およびコスト低減と、リアサスペンションからの入力荷重に対する車体剛性の確保とを両立することができる。
【0011】
この発明の態様として、前記連結部材は前記サスペンションハウジングにおける、前記ダンパートップの中心部より前部と前記上面部とを連結する第1連結部材であり、前記サスペンションハウジングにおける、前記ダンパートップの前記中心部より後部とリア開口上側角部とを連結する第2連結部材が、前記リア開口上側角部の下面部に車両下方から重ね合わせて車両上下方向に固定される下面固定部を有することを特徴とする。
【0012】
前記構成によれば、前記第2連結部材が前記ダンパートップの中心部より後部と前記リア開口上側角部に連結されるとともに、前記第2連結部材に前記下面固定部を有するため、前記リアサスペンションからの車両上下方向の入力荷重に対して、前記ダンパートップの中心部より後部と前記リア開口上側角部の下面部との間で車両上下方向に突っ張ることができる。
従って、上述した前記第1連結部材と、前記第2連結部材とが協働して前記リアサスペンションからの車両上下方向の入力荷重による変形を抑えることができる。
【0013】
ここで、前記リア開口上側角部の前記下面部とは、車体におけるリア開口の上側角部を構成する鋼板等の部材の下面部を含む。
また、前記リア開口上側角部の前記下面部は、車両下方向と一致する方向を臨む姿勢で配置されているに限らず、例えば、前傾した姿勢など車両下方向成分を有する姿勢で配置されていればよい。
【0014】
またこの発明の態様として、前記第1連結部材と前記第2連結部材との間を車両前後方向につなぐ第3連結部材を備えてもよい。
前記構成によれば、前記第1連結部材と前記第2連結部材の車両前後方向の相対変位を前記第3連結部材によって抑制することで、前記リアサスペンションからの車両上下方向の入力荷重を、前記第1連結部材を介して窓部材へと、前記第2連結部材を介して前記リア開口上側角部へと、何れも車両上方へとダイレクトに伝達できる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記第3連結部材は前記リアホイルハウスと接合されてもよい。
前記構成によれば、前記第3連結部材は前記第1連結部材と前記第2連結部材に加えてリアホイルハウスにも接合されるため、第1連結部材と第2連結部材の車両前後方向の相対変位をより一層抑制することができる。
従って、前記リアサスペンションからの車両上下方向の入力荷重を、前記第1連結部材と前記第2連結部材とによって車両上方へとダイレクトに伝達できる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記上面部は車幅方向内側ほど車両下方に傾斜する傾斜部を有し、前記連結部材は前記傾斜部に接合してもよい。
前記構成によれば、車両製造時に溶接ガンで前記上面部と前記連結部材とを溶接する際に、車幅方向の内外両側から前記上面部と前記連結部材との溶接部を挟持して溶接するが、その際に、溶接ガンが例えば、ルーフレールやリアホイルハウスと干渉することがなく確実に溶接することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記フランジ部と前記上面部との間において車幅方向に延びるビードを備えてもよい。
前記構成によれば、前記リアサスペンションから前記上面部に入力された車両上下方向の荷重を、前記上面部の車幅方向外側に位置する前記フランジ部へ前記ビードを介してスムーズに伝達することができる。
【発明の効果】
【0018】
前記構成によれば、リアホイルハウス回りの車体剛性部材の板厚を減少させた場合でも車両走行時におけるリアサスペンションからの入力荷重に対して車体剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の車両の側部車体構造を車室側かつ車両前方から視た斜視図
図2】本実施形態の車両の側部車体構造を図1に対してさらに車両前方から視た要部拡大図
図3】本実施形態の車両の側部車体構造の要部を車室側から視た側面図
図4図1のA-A線矢視に沿った要部を示す矢視端面図
図5図1のB-B線矢視に沿った要部を示す矢視端面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
なお、本実施形態の車両Vの側面は、略左右対称形状であるため、車両Vの右側の構造に基づいて説明する。図中、矢印Fは車両前方、矢印Uは車両上方、矢印OUTは車幅方向外側(車室外側)、矢印INは車幅方向内側(車室側)を夫々示すものとする。また、図中、「×」印は主要なスポット溶接個所を示す。
【0021】
本実施形態の車両Vは、ドアハッチバックタイプの自動車であり、図1に示すように、車体後部に車室から後方に向けて開口するリア開口2を備え、リア開口2には、はね上げ式のリアゲート(図示省略)を備えている。本発明の側部車体構造は、このような車両Vの後部において適用されている。
【0022】
まず、本実施形態の側部車体構造1の説明に先立って側部車体構造1の上部について説明する。
図1に示すように、本実施形態の側部車体構造1の上部は、車体のルーフ部の左右両側の縁辺に位置するルーフレール71と、該ルーフレール71の後方に位置するリアピラー73と、車体のルーフ部の後端に位置するリアヘッダ72とを備えている。
【0023】
ルーフレール71はルーフサイドレールとも称し、車体のルーフ部の左右両側の縁辺に沿って車両前後方向に延び、内部に該ルーフレール71の延在方向に沿って延びる閉断面71sが構成されている。
【0024】
リアピラー73は、リア開口2の左右各側の縁辺に沿って車両の下方かつ後方へ延び、内部に該リアピラー73の延在方向に沿って延びる閉断面73sが構成されている。リアヘッダ72は、リア開口2の上辺に沿って車幅方向に延びている。
【0025】
また図1に示すように、リア開口2の開口縁部における、左右夫々に対応する上側には、リア開口上側角部76を有している。一方、ルーフレール71の後下端とリアピラー73の前上端とリアヘッダ72の車幅方向外端とには、互いに結合された結合部75を有している。上述したリア開口上側角部76は、結合部75の後部およびリアピラー73の上部に位置する。
【0026】
リアピラー73および結合部75には、リアピラー73の車両上下方向の中間部から車両前方ほど車両上方へ位置するように傾斜して延びる下面部を有している。これに伴って、リア開口上側角部76にも車両前方ほど上方へ位置するように傾斜して延びる下面部77を有している。
【0027】
続いて本実施形態の側部車体構造1について説明する。
図1に示すように、本実施形態の側部車体構造1は、車室の床面を構成するフロアパネル3の車幅方向両外側に配置されたリアフレーム4と、該リアフレーム4の車幅方向の外側において後輪が収容された一対のリアホイルハウス5と、車体後部の側面を構成するサイドパネル6と、車体後部の側面に形成されたクォータウインドウ開口8に備えたクォータウインドウ7と、該クォータウインドウ開口8の前縁辺に沿って車両上下方向に延びる中間ピラー9と、を備えている。
【0028】
リアフレーム4はリアサイドフレームとも称し、内部に車両前後方向に延びる閉断面4sが構成されている。リアフレーム4の上部には、リアサスペンションに備えたダンパー41の上端に位置する頂部41t、すなわちダンパートップ41tを固定するサスペンションハウジング45が設けられている。
【0029】
サスペンションハウジング45はアルミダイカスト等によって形成され、リアフレーム4の上部とリアホイルハウス5との間に跨ってダンパートップ41tの周辺を上方から覆うように設けられ、該ダンパートップ41tの周辺を補強する補強部材としての機能も兼ねている。
【0030】
リアホイルハウス5は、サイドパネル6に対して車幅方向内側に膨出するホイルハウスインナ51(図1参照)と、車幅方向外側に膨出するホイルハウスアウタ52(図4図5参照)とを有している。サイドパネル6は、リアホイルハウス5の上方に位置し、ホイルハウスインナ51とホイルハウスアウタ52との各上端部は、サイドパネル6の下端部と共に接合されている。
【0031】
図1に示すように、サイドパネル6は、該サイドパネル6の前側かつ上側のコーナー部に上述したクォータウインドウ開口8が形成されている。すなわち、サイドパネル6には、クォータウインドウ開口8の開口縁部における後縁辺および下縁辺が形成されている。
【0032】
中間ピラー9は、サイドパネル6の側からルーフレール71の側へクォータウインドウ開口8の前縁辺に沿って車両上下方向に延びている。
すなわち、中間ピラー9によってクォータウインドウ開口8の前縁辺が形成されている。さらに、上述したルーフレール71の後側部分71rによってクォータウインドウ開口8の上縁辺が形成されている。
【0033】
なお、中間ピラー9における、車幅方向内側に位置する中間ピラーインナレインの下側部分91dと、サイドパネル6とは、同じパネル部材で一体に成形されている。同様に、ルーフレール71における、車幅方向内側に位置するルーフレールインナレイン71aと、中間ピラーインナレインの上側部分91uとは、同じパネル部材で一体に成形されている。
【0034】
また図1図2図4図5に示すように、上述したクォータウインドウ開口8の開口縁部には、全周に亘ってフランジ部81が形成され、該フランジ部81にクォータウインドウ7が接合されている。クォータウインドウ7と、サイドパネル6のフランジ部81との間には、接着材92が介在し、接着材92にて両部材7,6が接合されている。なお、フランジ部81は、サイドパネル6の車幅方向内面65よりも車幅方向外側に位置する。
【0035】
詳しくは、図1中のA-A断面においては図4に示すように、車幅方向外側に位置するキャブサイドアウタパネル93の上端に位置するフランジ部93uと、車幅方向内側に位置するサイドパネル6の下縁フランジ部81dとが中間ピラーアウタレイン94の上端に位置するフランジ部94uを挟み込むように重ね合わされている。そして、これら3枚のフランジ部93u,94u,81dがスポット溶接等により接合された状態で接着材92を介してクォータウインドウ7に接合されている。
なお、キャブサイドアウタパネル93は、車両側部の意匠面を形成するアウタパネルであり、中間ピラーアウタレイン94は、Cピラーレインとも称し、クォータウインドウ開口8の前縁辺を形成するとともにドア開口7の後縁辺の上部を形成すべく車両上下方向に延びる車体剛性部材である。
【0036】
上述したサイドパネル6は、クォータウインドウ7の下方で該クォータウインドウ7を支持する窓支持部材を兼ねている。
詳しくは、上述したサイドパネル6のクォータウインドウ開口8の下部には、クォータウインドウ開口8の開口縁部に沿って設けられるフランジ部81のうち、下縁辺に沿って設けられる下縁フランジ部81dと、下縁フランジ部81dの下端から車幅方向内面まで車幅方向内側へ延びる段状の上面部61とを有している。
【0037】
下縁フランジ部81dと上面部61との間には、車幅方向に延びるビード62を備えている。ビード62は、下縁フランジ部81dおよび上面部61の車両前後方向に沿って複数(当例では4つ)が略等間隔に配設されている。
【0038】
ビード62は、下縁フランジ部81dの下端部から車幅方向内方に突出するとともに、上面部61の車幅方向外端部から車両上方に突出し、下縁フランジ部81dと上面部61とのコーナー部に亘って車幅方向に連続して延びている。
【0039】
図1図2図4図5に示すように、上面部61は、クォータウインドウ開口8の下縁辺の略全長に亘って車両前後方向に形成されるとともに、車幅方向内側ほど下方に位置するように傾斜して形成されている。
【0040】
上面部61の車両前後方向の中間領域に対して若干前側部位には、上面部61の他の部位64(図4参照)よりも急峻に傾斜する傾斜部63(図5参照)が形成されている。傾斜部63は、車両前後方向の全長に亘って車幅方向内側へ直線状に傾斜するため、略平坦な傾斜面状に形成されている。
【0041】
なお、図4は、図1のA-A線矢視に沿った要部を示す矢視端面図であって、上面部61における、傾斜部63以外の他の部位64において車両上下方向に切断した端面図を示す。図5は、図1のB-B線矢視に沿った要部を示す矢視端面図であって、上面部61における、傾斜部63において車両上下方向に切断した端面図を示す。
【0042】
また図1図3に示すように、上述した本実施形態の側部車体構造1には、サスペンションハウジング45とサイドパネル6とを車両上下方向に連結する第1連結部材10と、サスペンションハウジング45とリア開口上側角部76とを車両上下方向に連結する第2連結部材20と、第1連結部材10と第2連結部材20との間を車両前後方向につなぐ第3連結部材30を備えている。
【0043】
図1に示すように、第1連結部材10は、サスペンションハウジング45における、ダンパートップ41tの中心部より前部45fと、サイドパネル6のクォータウインドウ開口8の下部に位置する上面部61とを連結する。
【0044】
詳しくは、第1連結部材10の下端は、サスペンションハウジング45の前部45fの上端に接合されている。すなわち、第1連結部材10は、サスペンションハウジング45を介してリアフレーム4に接合されている。
【0045】
なお図1に示すように、車両Vの床面の車両前後方向における、サスペンションのダンパートップ41tの中心部より前部45fに対応する位置には、フロアパネル3を前後各側に仕切るように車幅方向に延びるクロスメンバ91が設けられている。そして、クロスメンバ91の車幅方向外端と第1連結部材10の下端とは、サスペンションハウジング45を介して互いに接合されている。
【0046】
図1図3に示すように、第1連結部材10は、車両上下方向の上端部を除く略全長に亘って、車両前後方向に延びる前端フランジ部11と、該前端フランジ部11の後端から車幅方向内側へ延びる前面部12と、前面部12の車幅方向内端から車両後方へ延びる内面部13と、該内面部13の後端から車幅方向外側へ延びる後面部14(図3参照)と、該後面部14の車幅方向外端から車両後方へ延びる後端フランジ部15とを備え、車幅方向外側へ開口する、換言すると車幅方向内側へ膨出するハット形状に形成されている。
【0047】
そして図1図3に示すように、第1連結部材10は、サスペンションハウジング45の前部45fと上面部61との間において、前端フランジ部11および後端フランジ部15がホイルハウスインナ51およびサイドパネル6に車幅方向内側から接合され、図1図3図5に示すように、これらホイルハウスインナ51およびサイドパネル6との間において車両上下方向に連続して延びる閉断面10sが構成されている。
【0048】
図1図2に示すように、第1連結部材10の上端部には、内面部13の上端から上方かつ車幅方向外側へ向けてフランジ状に突出する上端フランジ部16が形成されている。図2図5中の上端フランジ部16において「×」印で示したように、第1連結部材10の上端フランジ部16は、上面部61における傾斜部63に車両上方から重ね合わせて車両上下方向にスポット溶接等により固定されている。
【0049】
本実施形態において図1図2図5に示すように、傾斜部63は上述したように、車両上下方向に対して車幅方向内側を臨む姿勢で配置されている。このような傾斜部63と、該傾斜部63に重ね合わせる上端フランジ部16とは、傾斜部63に対して直交する方向にスポット溶接されるため、車両上下方向に沿った方向にスポット溶接されている。また、上端フランジ部16と傾斜部63とは、車両前後方向に沿って複数箇所に亘って固定されている。
【0050】
図1に示すように、第2連結部材20は、サスペンションハウジング45における、ダンパートップ41tの中心部より後部45rと、リア開口上側角部76の下面部77とを連結する。
詳しくは、第2連結部材20の下端は、サスペンションハウジング45の後部45rの上端に接合されている。すなわち、第2連結部材20は、サスペンションハウジング45を介してリアフレーム4に接合されている。
【0051】
図1図3に示すように、第2連結部材20は、車両上下方向の上端部を除く略全長に亘って、車両前後方向に延びる前端フランジ部21と、該前端フランジ部21の後端から車幅方向内側へ延びる前面部22と、該前面部22の車幅方向内端から車両後方へ延びる内面部23と、該内面部23の後端から車幅方向外側へ延びる後面部24(図3参照)と、該後面部24の車幅方向外端から車両後方へ延びる後端フランジ部25とを備え、車幅方向外側へ開口する、換言すると車幅方向内側へ膨出するハット形状に形成されている。
【0052】
そして、第2連結部材20は、サスペンションハウジング45とリア開口上側角部76との間において、前端フランジ部21および後端フランジ部25がホイルハウスインナ51およびサイドパネル6に車幅方向内側から接合され、これらホイルハウスインナ51およびサイドパネル6との間において車両上下方向に連続して延びる閉断面20sが構成されている。
【0053】
図1図2に示すように、第2連結部材20の上端部には、上端フランジ部26がフランジ状に突出形成されている。
具体的には図2に示すように、第2連結部材20の上端フランジ部26は、第2連結部材20の内面部23の上端から車両上方かつ車幅方向内側へ向けて突出する部分261と、第2連結部材20の前面部22の上端から上方かつ前方へ突出する部分262と、第2連結部材20の後面部24(図3参照)の上端から上方かつ後方へ突出する部分263とが一体に形成されている。
【0054】
また、図2中の上端フランジ部26およびその周辺に示す「×」印のうち、上端フランジ部26においてに示す「×」印で示したように、第2連結部材20の上端フランジ部26は、リア開口上側角部76の下面部77に車両上方から重ね合わせて車両上下方向にスポット溶接等により固定されている。
【0055】
詳しくは、リア開口上側角部76の下面部77は、上述したように車両上下方向に対して車両前方を臨む姿勢で配置されている。このような下面部77と、該下面部77に重ね合わせる上端フランジ部26とは、下面部77に対して直交する方向にスポット溶接されるため、車両上下方向に沿った方向にスポット溶接される。また本実施形態において、上端フランジ部26と下面部77とは、車両前後方向および車幅方向に沿って複数箇所に亘ってスポット溶接等により固定されている。
【0056】
ここで図1図2に示すように、リア開口上側角部76の下面部77は、サスペンションハウジング45の後部45rよりも車両後方に位置する。さらに、サスペンションハウジング45の後部45rの鉛直上方部位かつ、リア開口上側角部76の下面部77の下側近傍部位には、クォータウインドウ開口8が形成されている。このような車体側部のレイアウトにおいて、第2連結部材20は、サスペンションハウジング45の後部45rからクォータウインドウ開口8を迂回しながらも、クォータウインドウ開口8に対して車両後方側で極力近接するように車両上方程車両後方へ延びている。
【0057】
これにより、第2連結部材20の上部は、図2中の領域Xで囲んだ部分が示すように、前端フランジ部21がクォータウインドウ開口8の後端を車両上下方向に跨ぐように車両上方へ延びている。すなわち、第2連結部材20の上部における、クォータウインドウ開口8の後端を跨ぐ前端フランジ部21は、サイドパネル6に溶接等で接合されない状態で車両上方へ延びている。
【0058】
しかし図2に示すように、本実施形態においては、第2連結部材20の上部における前端フランジ部21の上方近傍に位置する上端フランジ部26が、上述したように、リア開口上側角部76の下面部77に車両下方から突き当たるようにしっかりと接合されている。このため、第2連結部材20は、上部の前端フランジ部21がサイドパネル6に溶接等により接合されていない状態であっても車体に対する強固な接合状態を確保できる。さらに本実施形態の車体側部は、サスペンションハウジング45の上方にクォータウインドウ開口8が設けられた構成であるものの、第2連結部材20がクォータウインドウ開口8に対して車両後方側で近接させて車両上下方向に極力沿うように備えることで、ダンパー41からの車両上下方向の入力荷重を車両上方へと効率よく伝達、分散させることができる。
【0059】
従って、第2連結部材20は、車体側部に対する強固な接合状態を確保しつつ、車両走行時におけるリアサスペンションからの入力荷重に対して車体剛性を確保することができる。
【0060】
図1図3に示すように、第3連結部材30は、第1連結部材10と第2連結部材20との間において車両前後方向に延びて、両部材10,20を、該両部材10,20の車両上下方向の途中部分において車両前後方向につなぐ。
【0061】
詳しくは図3に示すように、第3連結部材30は、車両上下方向を臨む本体面部31と、本体面部31の車幅方向内端から下方へ突出する車幅内面部32と、本体面部31の車幅方向外端から上方へ突出する車幅外端フランジ部33と、本体面部31の前端から上方へ突出する本体面側前端フランジ部34と、本体面部31の後端から上方へ突出する本体面側後端フランジ部35と、車幅内面部32の前端から前方へ突出する内面側前端フランジ部36と、車幅内面部32の後端から後方へ突出する内面側後端フランジ部37と、を備えている。
【0062】
車幅外端フランジ部33の前端と本体面側前端フランジ部34の車幅方向外端、本体面側前端フランジ部34の車幅方向内端と内面側前端フランジ部36の後端、車幅外端フランジ部33の後端と本体面側後端フランジ部35の車幅方向外端、および、本体面側後端フランジ部35の車幅方向内端と内面側後端フランジ部37の前端は、互いに連続して一体に形成されている。
【0063】
図3中の第3連結部材30において「×」印で示したように、第3連結部材30の車幅外端フランジ部33はホイルハウスインナ51に、第3連結部材30の内面側前端フランジ部36は第1連結部材10の内面部13に、第3連結部材30の内面側後端フランジ部37は第2連結部材20の内面部23に、夫々スポット溶接等で車幅方向に接合固定されている。
【0064】
さらに、第3連結部材30の本体面側前端フランジ部34は第1連結部材10の後面部14に、第3連結部材30の本体面側後端フランジ部35は第2連結部材20の前面部22に、夫々スポット溶接等で車両前後方向に接合固定されている。
【0065】
また、第3連結部材30は、本体面部31と車幅内面部32との間において車両前後方向に延びる稜線38が形成されている。この稜線38は、第1連結部材10と第2連結部材20との間において車両前後方向の全長に亘って連続して延びている。さらに稜線38は、車両前後方向の中間部に対して両側が徐々に上方へ向くように延びている。
【0066】
そして、第3連結部材30の車両前後方向に延びる稜線38は、前端が、第1連結部材10の後面部14と内面部13との間において車両上下方向に延びる稜線17と連続するとともに、後端が、第2連結部材20の前面部22と内面部23との間において車両上下方向に延びる稜線27と連続する。
【0067】
上述した本実施形態の車両Vの側部車体構造は、図1に示すように、リアフレーム4に設けられダンパートップ41tを固定するサスペンションハウジング45と、サスペンションハウジング45の上方に位置するリアホイルハウス5と、リアホイルハウス5の車両上方に位置する窓部材としてのクォータウインドウ7と、クォータウインドウ7の車両下方で該クォータウインドウ7を支持する窓支持部材としてのサイドパネル6と、を備え、図1図2に示すように、サイドパネル6はクォータウインドウ7の下縁辺に沿って設けられる下縁フランジ部81dと、該下縁フランジ部81dから車幅方向内側に延びる上面部61と、を有し、図1図2図5に示すように、サスペンションハウジング45とサイドパネル6とを車両上下方向に連結する第1連結部材10が、上面部61に車両上方から重ね合わせて車両上下方向に固定される上面固定部としての上端フランジ部16を有することを特徴とする。
【0068】
前記構成によれば、上面部61に対して車両上下方向に固定する上面固定部により、上面部61が第1連結部材10からの車両上下方向の入力荷重による変形を抑え込むとともに、下縁フランジ部81dを介してクォータウインドウ7に荷重を伝達できる。
【0069】
従って例えば、リアホイルハウス5や、リアホイルハウス5の周辺に位置するサイドパネル6を形成する車体剛性部材の板厚を減少させた場合でも車両走行時におけるリアサスペンションからの入力荷重に対して車体剛性を確保することができる。すなわち、車体の軽量化およびコスト低減と、リアサスペンションからの入力荷重に対する車体剛性の確保とを両立することができる。
【0070】
この発明の態様として、図1に示すように、第1連結部材10はサスペンションハウジング45における、ダンパートップ41tの中心部より前部45fと上面部61とを連結している。また図1図2に示すように、サスペンションハウジング45における、ダンパートップ41tの中心部より後部45rとリア開口上側角部76とを車両上下方向に連結する第2連結部材20を備え、第2連結部材20がリア開口上側角部76の下面部77に車両下方から重ね合わせて車両上下方向に固定される下面固定部としての上端フランジ部26を有することを特徴とする。
【0071】
前記構成によれば、ダンパー41からの車両上下方向の入力荷重に対して、ダンパートップ41tの中心部より後部45rと、リア開口上側角部76の下面部77との間で車両上下方向に突っ張ることができる。
従って、上述した第1連結部材10と、第2連結部材20とが協働してリアサスペンションのダンパー41からの車両上下方向の入力荷重による変形を抑えることができる。
【0072】
この発明の態様として、図1図3に示すように、第1連結部材10と第2連結部材20との間を車両前後方向につなぐ第3連結部材30を備えたものである。
【0073】
前記構成によれば、第1連結部材10と第2連結部材20の車両前後方向の相対変位を第3連結部材30によって抑制できる。このため、ダンパー41からの車両上下方向への入力荷重を、第1連結部材10を介してクォータウインドウ7へと、第2連結部材20を介してリア開口上側角部76へと、何れも効率よく伝達できる。
【0074】
この発明の態様として、図2図3等に示すように、第3連結部材30はリアホイルハウス5と接合されたものである。
【0075】
前記構成によれば、第3連結部材30は第1連結部材10と第2連結部材20とを繋ぐだけでなく、これら部材10,20の車両前後方向の間においてリアホイルハウス5に対して車幅方向内側から接合されるため、第1連結部材10と第2連結部材20の車両前後方向の相対変位をより一層抑制することができる。
【0076】
従って、ダンパー41からの上下方向への入力荷重を、第1連結部材10と第2連結部材20とによって車両上方へとダイレクトに伝達できる。
【0077】
この発明の態様として、図1図2図5に示すように、上面部61は車幅方向内側ほど車両下方に傾斜する傾斜部63を有し、第1連結部材10の上端フランジ部16は傾斜部63に接合されたものである。
【0078】
前記構成によれば、車両製造時に不図示の溶接ガンで上面部61と、第1連結部材10の上端フランジ部16とを溶接する際に、上面部61と第1連結部材10との溶接部を車幅方向の内外両側から挟持してスポット溶接するが、その際、上述したように上面部61を車両上下方向に対して車幅方向内側を臨むように傾斜させたことに対応して溶接ガンを車両上下方向に対して傾けた姿勢として溶接できる。
【0079】
従って、溶接部に対して車両上下方向の各側に設けられたルーフレール71やリアホイルハウス5に対して溶接ガンが干渉することがなく上端フランジ部16と傾斜部63とを確実にスポット溶接することができる。
【0080】
この発明の態様として、図1図2に示すように、下縁フランジ部81dと上面部61との間において車幅方向に延びるビード62を備えたものである。
【0081】
前記構成によれば、ダンパー41から上面部61に入力された車両上下方向の荷重を、上面部61の車幅方向外側に位置する下縁フランジ部81dへとビード62を介してスムーズに伝達することができる。
従って、ダンパー41から上面部61に入力された車両上下方向の荷重をクォータウインドウ7にスムーズに伝達することができる。
【0082】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、窓支持部材はサイドパネル6に対応し、以下同様に、
窓部材はクォータウインドウ7に対応し、
フランジ部は下縁フランジ部81dに対応し、
上面固定部は上端フランジ部16に対応し、
下面固定部は上端フランジ部26に対応するが、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0083】
例えば、上述した実施形態においては、ハッチバックタイプの乗用車の例を説明したが、本発明は、車体後部にトランク開口が設けられるとともにトランクリッドを備えたセダンタイプの乗用車など、車両タイプに拘らず適用することが可能である。
【0084】
本実施形態のリアサスペンションに備えたダンパー41は、リアフレーム4に設けられたサスペンションハウジング45に固定されているが、本発明のダンパーは、このようにサスペンションハウジング45を介してリアフレーム4に取り付けられた構成に限らず、サスペンションハウジング45を介さずにリアフレーム4に直接取り付けられた構成であってもよい。その場合、リアフレーム4におけるダンパートップの取り付け箇所周辺に補強部材を適宜備えてもよい。
【符号の説明】
【0085】
V…車両
1…側部車体構造
4…リアフレーム
5…リアホイルハウス
6…サイドパネル
7…クォータウインドウ
10…第1連結部材
16…第1連結部材の上端フランジ部
20…第2連結部材
26…第2連結部材の上端フランジ部
30…第3連結部材
41t…ダンパートップ
45…サスペンションハウジング
45f…サスペンションハウジングにおける、ダンパートップの中心部より前部
45r…サスペンションハウジングにおける、ダンパートップの中心部より後部
61…上面部
62…ビード
63…傾斜部
76…リア開口上側角部
81d…下縁フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5