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  • 特開-化粧シート及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072453
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】化粧シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 33/00 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
B32B33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183277
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】栗原 正幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 雄一
(72)【発明者】
【氏名】村田 大輔
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA20E
4F100AH07E
4F100AK01D
4F100AK03D
4F100AK45E
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AK51E
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100CA05E
4F100CA07E
4F100CA23E
4F100DD07E
4F100EH23D
4F100EH46C
4F100EH46E
4F100EJ08C
4F100EJ08E
4F100EJ42C
4F100EJ42E
4F100GB07
4F100GB81
4F100HB00
4F100HB00B
4F100HB31B
4F100JB05E
4F100JL11C
4F100JN01D
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】意匠性、耐傷性、耐汚染性、および耐候性のいずれの性能にも優れた化粧シートを提供する。
【解決手段】化粧シート10は、基材11と、基材11の一面に形成された絵柄層12と、絵柄層12の基材11とは反対側の面に形成された接着層13と、接着層13の絵柄層12とは反対側の面に形成された透明樹脂層14と、透明樹脂層14の接着層13とは反対側の面に形成された表面保護層15と、を備え、表面保護層15は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、カルボジイミド系硬化剤、およびフィラーを含有する材料で形成され、表面保護層15の表面粗さは、ISO25178に準拠して測定された算術平均高さSaで0.20μm以上0.80μm以下の範囲内である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一面に形成された絵柄層と、
前記絵柄層の前記基材とは反対側の面に形成された接着層と、
前記接着層の前記絵柄層とは反対側の面に形成された透明樹脂層と、
前記透明樹脂層の前記接着層とは反対側の面に形成された表面保護層と、
を備え、
前記表面保護層は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、カルボジイミド系硬化剤、およびフィラーを含有する材料で形成され、
前記表面保護層の表面粗さは、ISO25178に準拠して測定された算術平均高さSaで0.20μm以上0.80μm以下の範囲内である化粧シート。
【請求項2】
前記表面保護層の厚さは2.0μm以上15μm以下の範囲内である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記フィラーはシリカ粒子である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記フィラーの平均粒子径(D50)は、1μm以上9μm以下の範囲内である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記表面保護層は紫外線吸収剤を含有する請求項1に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記紫外線吸収剤はトリアジン骨格を有する化合物である請求項5に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記表面保護層は光安定剤を含有する請求項1に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記光安定剤はNOR型骨格を有する化合物である請求項7に記載の化粧シート。
【請求項9】
前記表面保護層は水性組成物から形成されたものである請求項1に記載の化粧シート。
【請求項10】
前記透明樹脂層はオレフィン系樹脂で形成されている請求項1に記載の化粧シート。
【請求項11】
前記接着層はポリウレタン樹脂で形成されている請求項1に記載の化粧シート。
【請求項12】
基材の一面に絵柄層を形成する絵柄層形成工程と、
前記絵柄層の前記基材とは反対側の面に接着層を形成する接着層形成工程と、
前記接着層の前記絵柄層とは反対側の面に透明樹脂層を形成する透明樹脂層形成工程と、
前記透明樹脂層の前記接着層とは反対側の面に表面保護層を形成する表面保護層形成工程と、
を有し、
前記表面保護層形成工程では、
ポリカーボネート系ウレタン樹脂、カルボジイミド系硬化剤、およびフィラーを含有する材料を用い、
前記表面保護層の表面粗さが、ISO 25178に準拠して測定された算術平均高さSaで0.20μm以上0.80μm以下の範囲内となるようにする化粧シートの製造方法。
【請求項13】
前記表面保護層形成工程では、
水、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、カルボジイミド系硬化剤、およびフィラーを含有する水性組成物を、前記透明樹脂層の前記接着層とは反対側の面に塗工して、乾燥、硬化することにより、前記表面保護層を形成する請求項12に記載の化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の内外装や建具、家具等の表面等に使用される化粧シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧シートは、近年の使用環境の多様化に伴い、高機能化への要望が強くなってきている。一般的に、耐傷性、耐汚染性、耐候性等のすべての物性の高機能化を、一層の保護層(絵柄層の基材とは反対側の面に接着されている透明樹脂層)で一括して図ることは困難である。そのため、透明樹脂層の絵柄層とは反対側の面に更なる保護層(表面保護層、トップコート層)を設けて高機能化を図ることが行われている。
表面保護層の光沢を調整して化粧シートに意匠性を付与する場合、フィラー等の光沢調整剤を添加することが一般的である(例えば、特許文献1を参照)また、表面保護層に耐候性を付与する場合、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候剤を添加することが一般的である(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-30999号公報
【特許文献2】特開2019-30998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の化粧シートにおいて、光沢を下げるために表面保護層への光沢調整剤の添加量を多くすると、化粧シートの耐傷性や耐汚染性が損なわれて実使用上問題が発生する可能性がある。また、耐候性を高めるために表面保護層への耐候剤の添加量を多くすると、同様に化粧シートの耐傷性や耐汚染性が損なわれる可能性がある。
つまり、従来技術では、化粧シートの物性において、意匠性を保持しつつ、耐傷性、耐汚染性、耐候性も良好にすることは困難である。
【0005】
本発明の課題は、意匠性、耐傷性、耐汚染性、および耐候性のいずれの性能にも優れた化粧シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第一態様は下記の構成(1)~(3)を有する化粧シートを提供する。
(1)基材と、前記基材の一面に形成された絵柄層と、前記絵柄層の前記基材とは反対側の面に形成された接着層と、前記接着層の前記絵柄層とは反対側の面に形成された透明樹脂層と、前記透明樹脂層の前記接着層とは反対側の面に形成された表面保護層と、を備える。
(2)前記表面保護層は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、カルボジイミド系硬化剤、およびフィラーを含有する材料で形成されている。
(3)前記表面保護層の表面粗さは、ISO 25178に準拠して測定された算術平均高さSaで0.20μm以上0.80μm以下の範囲内である。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第二態様は、下記の構成(11)(12)を有する化粧シートの製造方法を提供する。
(11)基材の一面に絵柄層を形成する絵柄層形成工程と、前記絵柄層の前記基材とは反対側の面に接着層を形成する接着層形成工程と、前記接着層の前記絵柄層とは反対側の面に透明樹脂層を形成する透明樹脂層形成工程と、前記透明樹脂層の前記接着層とは反対側の面に表面保護層を形成する表面保護層形成工程と、を有する。
(12)前記表面保護層形成工程では、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、カルボジイミド系硬化剤、およびフィラーを含有する材料を用い、前記表面保護層の表面粗さが、ISO25178に準拠して測定された算術平均高さSaで0.20μm以上0.80μm以下の範囲内となるようにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、意匠性、耐傷性、耐汚染性、および耐候性のいずれの性能にも優れた化粧シートを得ることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の化粧シートの層構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔好適な態様〕
第一態様の化粧シートは、前記表面保護層の厚さが2.0μm以上15μm以下の範囲内であることが好ましい。
第一態様の化粧シートは、前記フィラーがシリカ粒子であることが好ましい。
前記フィラーの平均粒子径(D50)は、1μm以上9μm以下の範囲内であることが好ましい。「D50」は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径である。
【0011】
第一態様の化粧シートは、前記表面保護層が紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
前記紫外線吸収剤は、トリアジン骨格を有する化合物であることが好ましい。
第一態様の化粧シートは、前記表面保護層が光安定剤を含有することが好ましい。
前記光安定剤は、NOR型骨格を有する化合物であることが好ましい。
第一態様の化粧シートは、前記表面保護層が水性組成物から形成されたものであることが好ましい。
第一態様の化粧シートは、前記透明樹脂層がオレフィン系樹脂で形成されていることが好ましい。
第一態様の化粧シートは、前記接着層がポリウレタン樹脂で形成されていることが好ましい。
【0012】
第二態様の化粧シートの製造方法において、前記表面保護層形成工程では、水、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、カルボジイミド系硬化剤、およびフィラーを含有する水性組成物を、前記透明樹脂層の前記接着層とは反対側の面に塗工して、乾燥、硬化することにより、前記表面保護層を形成することが好ましい。
上記水性組成物(例えば、水性エマルションタイプのポリカーボネート系ウレタン樹脂を用いた組成物)を用いることで、分子量の高い被膜を容易に形成することができるため、表面保護層の表面硬度の向上を図ることができると共に、耐汚染性の向上も図ることができる。
【0013】
〔実施形態〕
本発明に係る化粧シート及びその製造方法の実施形態を、図面に基づいて以下に説明する。なお、以下の図面の記載は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚さや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
本発明の実施形態を図1に基づいて説明する。
〈化粧シートの全体構成〉
図1に示すように、この実施形態の化粧シート10は、板状の基材11と、基材11の一面(厚さ方向で互いに反対側となる二面の一方の面)に形成された絵柄層12と、絵柄層12の基材11とは反対側の面に形成された接着層13と、接着層13の絵柄層12とは反対側の面に形成された透明樹脂層14と、透明樹脂層14の接着層とは反対側の面に形成された表面保護層15と、基材11の絵柄層12とは反対側の面に形成されたプライマー層19を備えている。つまり、化粧シート10は、基材11の表面に、絵柄層12、接着層13、透明樹脂層14、表面保護層15がこの順に積層され、基材11の裏面にプライマー層19が形成されたものである。
【0015】
化粧シート10は、全体の厚さが45μm以上250μm以下の範囲内であることが好ましい。化粧シート10全体の厚さが45μm未満であると、強度が不十分となって、製造中に損傷する可能性がある。250μmを超えると、化粧シート10全体の柔軟性が不十分となって、割れや白化等が生じる可能性がある。
【0016】
〈基材11〉
基材11を形成する材料としては、樹脂、樹脂の発泡体、ゴム、紙、不織布、合成紙、金属箔等から任意に選択することができるが、樹脂が好適である。樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができ、これらの共重合物、複数樹脂の混錬、複数層の積層物を適用することも可能である。特に、ポリオレフィン樹脂が好適であり、中でも、ポリエチレンが最適である。
【0017】
基材11がポリオレフィン系樹脂を含む、すなわち、ポリオレフィン以外の樹脂も含む、又は、ポリオレフィンのみからなる場合、廃棄時における有害なガス等の発生を低減することができる。基材11が、ポリエチレンを含む、又は、ポリエチレンのみからなる場合、廃棄時における有害なガス等の発生をさらに低減することができる。
基材11は、隣接層との密着性を向上させるため、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施しておくことも可能である。
基材11は、製造作業性やコスト等を考慮すると、厚さが、20μm以上150μm以下の範囲内であると好ましく、50μm以上100μm以下の範囲内であるとより好ましい。
【0018】
〈絵柄層12〉
絵柄層12は、インキにより絵柄が形成されている層であり、基材11にインキを用いて印刷されている。
絵柄層12を形成するインキは、バインダーを含んでいる。バインダーとしては、例えば、硝化綿、セルロース、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独若しくは各変性物の中から適宜選定して用いることができる。バインダーは、水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれも適用可能であり、また、一液タイプや、硬化剤を使用する二液タイプのいずれも適用可能である。
【0019】
絵柄層12は、例えば、ウレタン系のインキを用いて、イソシアネート系の硬化剤で硬化させることによって形成することも可能である。ウレタン系のインキの硬化に用いる硬化剤は、特に限定されるものではなく、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びその水添物、あるいはジフェニルメタンジイソシアネート及びその水添物などを含む市販の硬化剤から適宜選択して用いることができる。さらに、光硬化性等のインキを使用して、紫外線や電子線等を照射することにより硬化させるようにすることも可能である。
【0020】
絵柄層12は、上述したバインダー以外にも、通常のインキに含まれている顔料,染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤等を含有することも可能である。汎用性の高い顔料としては、例えば、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等を挙げることができる。
【0021】
上述したインキは、光安定剤を含有していると、インキの光劣化から生じる化粧シート10自体の劣化が抑制され、化粧シート10の寿命を長くすることができるので、好ましい。光安定剤は、インキ全体の質量に対して1質量%以上5質量%以下の範囲内の含有量であると、インキの光劣化から生じる化粧シート10自体の劣化を効果的に抑制することができるので、好ましい。
【0022】
絵柄層12の形成方法は、特に限定されるものではない。絵柄層12は、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷など通常の印刷方法を用いて形成することができる。
絵柄層12は、製造作業性やコスト等を考慮すると、厚さが、0.5μm以上10μm以下の範囲内であると好ましく、1.0μm以上5μm以下の範囲内であるとより好ましい。
【0023】
〈接着層13〉
接着層13は、絵柄層12と透明樹脂層14との接着性を高めるために形成された層である。
接着層13を構成する材料は、例えば、ウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ポリエステル系等の樹脂材料から、絵柄層12と透明樹脂層14との密着性に優れた材料を適宜選択して、インキ化して用いることができる。接着層13を構成する材料として特に好ましい材料は、ポリウレタン樹脂(ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂等)である。
接着層13の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、グラビアコート、マイクログラビアコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコートなど通常の塗布方法を適用して形成することができる。
接着層13は、製造作業性やコスト等を考慮すると、厚さが、1μm以上20μm以下の範囲内であると好ましく、1μm以上3μm以下の範囲内であるとより好ましい。
【0024】
〈透明樹脂層14〉
透明樹脂層14は、化粧シート10全体の強度(機械的な強度)等を向上させるために形成された層である。
透明樹脂層14は、ポリプロピレンを主成分とする層である。ここで「ポリプロピレンを主成分とする」とは、ポリプロピレンの質量が、透明樹脂層14全体の質量の50質量%以上を占めている状態を意味している。透明樹脂層14は、主成分であるポリプロピレンとともにそれ以外の樹脂成分(副成分)を含有することが可能である。この副成分としては、主成分として用いたポリプロピレン以外のオレフィン系樹脂が好適に挙げられる。
【0025】
透明樹脂層14に副成分として含有可能なオレフィン系樹脂としては、ポリエチレンやポリブテン等はもちろんのこと、α-オレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等のように、エチレン又はα-オレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものを挙げることができる。
【0026】
特に、透明樹脂層14を構成する樹脂材料として、高結晶性のポリプロピレンを適用すると、化粧シート10の表面強度を向上させることができて好ましい。つまり、透明樹脂層14は、高結晶性のポリプロピレンを主成分とする層であると好ましい。
【0027】
透明樹脂層14は、耐候剤として紫外線吸収剤および光安定剤を含有することが可能である。紫外線吸収剤としては、トリアジン骨格を有する化合物を用いることが好ましい。光安定剤としては、NOR型骨格を有する化合物を用いることが好ましい。
具体的には、紫外線吸収剤としてベンゾフェノン系等を挙げることができ、光安定剤として、ヒンダードアミン系等を挙げることができる。ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤は、透明樹脂層14全体の質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下の範囲内の添加量であると好ましい。ヒンダードアミン系の光安定剤は、透明樹脂層14全体の質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下の範囲内の添加量であると好ましい。
【0028】
透明樹脂層14は、さらに、熱安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び光沢調整剤等の各種添加剤を必要に応じて含有することも可能である。熱安定剤としては、フェノール系、硫黄系、リン系、ヒドラジン系等を挙げることができる。これらの添加剤は、一般的な組み合わせで適宜添加されて含有される。
透明樹脂層14の形成方法は、特に限定されるものではない。透明樹脂層14は、カレンダ成膜や押出成膜など通常の方法を用いて形成することができる。その中でも、透明樹脂層14の形成方法としては、押し出し成型が好ましい。押し出し成型であれば、透明樹脂層14を均一に成膜することができる。
【0029】
透明樹脂層14の表面に凹凸を形成することにより、化粧シートに意匠性を付与することも可能である。表面に凹凸を形成する方法としては、例えば、透明樹脂層14を押し出し成型した後に熱エンボス加工を施す方法や、押し出し成型時に凹凸を設けた冷却ロールを用いて押し出し成型と同時にエンボス加工を施す方法等を挙げることができる。
透明樹脂層14は、製造作業性やコスト等を考慮すると、厚さが、20μm以上200μm以下の範囲内であると好ましく、70μm以上100μm以下の範囲内であるとより好ましい。
【0030】
〈表面保護層15〉
表面保護層15は、化粧シート10に、耐傷性、耐汚染性、耐候性、意匠性等の各種の機能を付与するために形成された層である。
表面保護層15は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂とカルボジイミド系硬化剤との反応生成物を主成分としている。つまり、ポリカーボネート系ウレタン樹脂とカルボジイミド系硬化剤との反応生成物が、表面保護層15の50質量%以上を占めている。表面保護層15は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂とカルボジイミド系硬化剤とを熱により架橋反応させて硬化させることにより形成することができる。
【0031】
表面保護層15は、主成分とするポリカーボネート系ウレタン樹脂とカルボジイミド系硬化剤との反応生成物以外に、例えば、他の熱硬化性樹脂を含有することも可能である。他の熱硬化性樹脂としては、例えば、カルボキシ基を含む樹脂とカルボジイミド系硬化剤とを熱により架橋反応させて硬化させることにより形成されるものが挙げられる。カルボキシ基を含むポリマーは、特に限定されるものではないが、例えば、各種のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂等のポリカーボネート系ウレタン樹脂以外を挙げることができる。このようなカルボキシ基を含む樹脂もさらに含有させることにより、例えば、分子構造の伸張等による機械特性的特徴をさらに付与することも可能となる。
【0032】
ポリカーボネート系ウレタン樹脂は、ガラス転移温度が80℃以上、酸価が10mgKOH/g以上であると好ましい。ガラス転移温度が80℃未満であると、表面保護層15の表面硬度が低くなり易く、耐傷性能の低下を生じるおそれがある。酸価が10mgKOH/g未満であると、硬化後の架橋密度が低くなり易く、耐傷性や耐汚染性の低下を生じるおそれがある。
【0033】
ポリカーボネート系ウレタン樹脂は、水に対してエマルション化されて水性組成物となる水性エマルションタイプであると好ましい。ポリカーボネート系ウレタン樹脂が水性エマルションタイプの水性組成物であると、分子量の高い被膜を容易に形成することができ、表面保護層15の表面硬度の向上を図ることができると共に、耐汚染性の向上を図ることができる。
【0034】
カルボジイミド系硬化剤としては、特に制限されないが、例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-N’-エチルカルボジイミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-N'-エチルカルボジイミドメチオジド、N-tert-ブチル-N’-エチルカルボジイミド、N-シクロヘキシル-N’-(2-モルホリノエチル)カルボジイミドメソ-p-トルエンスルホネート、N,N’-ジ-tert-ブチルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-トリルカルボジイミド等を挙げることができる。これらのカルボジイミド系硬化剤は、1種単独、又は、2種以上を組み合わせて使用することが可能である。
【0035】
カルボジイミド系硬化剤は、適切な添加量であれば、耐傷性、耐汚染性、耐候性を向上させることができる。しかしながら、硬化剤の添加量が多過ぎてしまうと、表面保護層15の脆化を引き起こし易くなってしまうおそれがある。このため、硬化剤は、表面保護層15中の樹脂成分100質量部に対して40質量部以下であると好ましく、1質量部以上20質量部以下であるとより好ましい。
【0036】
表面保護層15は、光沢調整剤(光散乱剤)としてフィラーを含有する。フィラーとしては、例えば、アクリルビーズ、シリコーンビーズ等の有機フィラー、アルミナ、シリカ等の無機フィラー等を挙げることができる。特に、無機フィラーのシリカ粒子であると、耐傷性を向上させることができるので好ましい。シリカ粒子は、他材料と比較して良好な耐傷性を示すが、これはシリカ粒子が適度な硬度を有することに起因していると考えられる。シリカ粒子は、粒子径(D50)が1μm以上9μm以下であることが好ましい。粒子径が9μmを超えると、粒子の欠落が生じ易くなるおそれがあるので好ましくない。粒子径が1μm未満であると、艶を落とす機能が低下するため好ましくない。
【0037】
フィラーとしてシリカ粒子を使用する場合、1mL/g以上の細孔容積を有するものであると好ましい。シリカ粒子は、細孔容積が大きいと(具体的には1mL/g以上)、耐傷性に優れる傾向を示す。これはバインダー樹脂成分がシリカ粒子の細孔へ含侵することが大きく影響していると考えられる。細孔容積が大きいシリカ粒子は、艶を落とす機能も大きく、必要添加量を減ずる効果も大きい。
【0038】
フィラーは、表面保護層15全体の質量に対して、1質量%以上30質量%以下の範囲内で含有されていると好ましい。つまり、細孔容積が1mL/g以上のシリカ粒子を光沢調整剤として添加する場合には、表面保護層15全体の質量に対して、1質量%以上30質量%以下の範囲内となるように添加することが好ましい。1質量%未満であると、艶を落とす機能が低下するため好ましくなく、30質量%を超えると、粒子の欠落が生じ易くなるおそれがあるため好ましくない。また、2質量%以上20質量%以下の範囲内となるように添加することがさらに好ましい。
【0039】
フィラーとしてシリカ粒子を使用する場合、100mL/100g以上200mL/100g以下の給油量であると好ましい。シリカ粒子は、給油量が大きいと(具体的には100mL/100g以上200mL/100g以下)、耐傷性に優れる傾向を示す。これはバインダー樹脂成分とシリカ粒子の表面との親和性が高まることが影響していると考えられる。給油量が大きいシリカ粒子は、艶を落とす機能も大きく、必要添加量を減ずる効果も大きい。
【0040】
そのため、給油量が100mL/100g以上200mL/100g以下のシリカ粒子を光沢調整剤として添加する場合には、表面保護層15全体の質量に対して、1質量%以上30質量%以下の範囲内となるように添加すると好ましく、2質量%以上20質量%以下の範囲内となるように添加するとさらに好ましい。
【0041】
表面保護層15は、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候剤を必要に応じて含有することも可能である。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等を挙げることができる。光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系等を挙げることができる。耐候剤は、一般的に、紫外線吸収剤や光安定剤等が任意に組み合わせられて含有される。
表面保護層15に含有させる紫外線吸収剤としては、トリアジン骨格を有する化合物からなる紫外線吸収剤(以下、単に「トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤」とも称する)が好ましい。表面保護層15に含有させる光安定剤としては、NOR型骨格を有する化合物からなる光安定剤(以下、単に「NOR型骨格を有する光安定剤」とも称する)が好ましい。
【0042】
表面保護層15は、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤が、表面保護層15全体の質量に対して、1質量%以上15質量%以下の範囲内で含有されていると好ましく、3質量%以上6質量%以下の範囲内で含有されているとより好ましい。表面保護層15は、NOR型骨格を有する光安定剤が、表面保護層15全体の質量に対して、1質量%以上10質量%以下の範囲内で含有されていると好ましく、3質量%以上6質量%以下の範囲内で含有されているとより好ましい。トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤やNOR型骨格を有する光安定剤が、上記数値範囲内で含有されていると、耐傷性や耐汚染性等の表面保護層15が有する基本的機能を維持しつつ、耐候性をより向上させることができる。
【0043】
表面保護層15は、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤が、NOR型骨格を有する光安定剤よりも多く含有されていると好ましく、特に、1.5倍以上3倍以下の範囲内で含有されているとより好ましい。トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤が、上記数値範囲内で含有されていると、耐傷性や耐汚染性等の表面保護層15が有する基本的機能を維持しつつ、耐候性をより向上させることができる。
【0044】
表面保護層15は、ポリエチレン系ワックス等の滑剤を必要に応じて含有することも可能である。ここで「ポリエチレン系ワックス」とは、分子量が数万以下の低分子量ポリエチレンを意味する。また、「ワックス」とは、「(1)常温で固体または半固体のもので、融点が40℃以上あり、(2)加熱すると分解することなく溶けて、粘度の低いもの」を意味する。
【0045】
ポリエチレン系ワックスとしては、例えば、三洋化成工業株式会社製「サンワックス(登録商標)」シリーズや、三井化学株式会社製「ハイワックス(商品名)」シリーズを用いることができる。表面保護層15は、ポリエチレン系ワックスが、表面保護層15全体の質量に対して、1質量%以上10質量%以下の範囲内で含有されていると好ましく、3質量%以上6質量%以下の範囲内で含有されているとより好ましい。ポリエチレン系ワックスが、上記数値範囲内で含有されていると、耐傷性等の表面保護層15が有する基本的機能を維持しつつ、耐汚染性をより向上させることができる。
【0046】
表面保護層15は、銀担持リン酸塩等の抗菌剤を必要に応じて含有することも可能である。リン酸塩は、公知のものであれば特に限定されるものではないが、銀、チタン、セリウム、ジルコニウム、ゲルマニウム、カリウム、アルミニウムおよびガリウムからなる群から選択される少なくとも一種の金属を含むものであると好ましい。これらの金属は、その同位体を適用することも可能である。特に、銀であると、抗菌能力の観点から好ましい。リン酸塩の製造方法としては、公知の方法が用いられる。抗菌剤は、1×10-4質量%以上20質量%以下の範囲内で表面保護層15に含有される。
【0047】
表面保護層15は、さらに他の各種機能を備えるため、例えば、熱安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、防カビ剤等の各種添加剤を含有することも可能である。
表面保護層15は、例えば、前述の材料を塗液化して、グラビアコート、マイクログラビアコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコート等の一般的な手段で塗布した後、熱硬化や紫外線硬化等、材料に適合した手段で硬化させることにより形成することができる。つまり、表面保護層15は水性組成物から形成することができる。なお、水性組成物から形成する方法以外の表面保護層15の形成方法としては、前述の材料をアルコールや有機溶媒により希釈して形成する方法が挙げられる。
【0048】
表面保護層15の厚さは、製造作業性やコスト等を考慮すると、1.0μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましく、2.0μm以上15μm以下の範囲内であることがより好ましい。
そして、表面保護層15は、表面粗さ測定におけるISO 25178の算術平均高さSaが、0.20μm以上0.80μm以下である。算術平均高さSaは、測定領域の表面の平均面に対する各点の高さの差の絶対値の平均を表すパラメータである。すなわち、表面保護層15表面の凹凸形状における高さ成分を面全体の平均として評価したものであり、数値が大きいほど面の凹凸の高さ成分が大きいことを意味する。
【0049】
表面保護層15の算術平均高さSaは、0.20μm以上0.80μm以下である必要がある。表面保護層15の算術平均高さSaが0.20μmより小さいと、化粧シートの光沢が高くなるために意匠性が低下し、0.80μmより大きいと耐傷性や耐汚染性が低下する。表面保護層15の算術平均高さSaは、意匠性、耐傷性、耐汚染性の観点から、0.30μm以上0.60μm以下であることが好ましい。
算術平均高さSaを0.20μm以上0.80μm以下にする方法としては、フィラーの粒子径や含有比率の調整、表面保護層15の厚さなどが挙げられる。
【0050】
〈プライマー層19〉
プライマー層19は、化粧シート10を被接着物に対して接着させるために付与するものである。プライマー層19を構成する材料は、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ポリエステル系などの樹脂材料から、被接着物との密着性に優れた材料を適宜選択して適用することができる。
【0051】
〈化粧シートの製造方法〉
次に、上述した本実施形態に係る化粧シート10の製造方法について説明する。
化粧シート10は、絵柄層形成工程、接着層形成工程、透明樹脂層形成工程、表面保護層形成工程をこの順に行うことにより製造する。
絵柄層形成工程では、基材11の一面に絵柄層12を印刷により形成する。接着層形成工程では、絵柄層12の上(基材11とは反対側の面)にポリウレタン樹脂を塗布して接着層13を形成する。透明樹脂層形成工程では、接着層13の上(絵柄層12とは反対側の面)にポリプロピレンを主成分とする樹脂組成物を、押し出し成型により形成する。
表面保護層形成工程では、透明樹脂層14の上(接着層13とは反対側の面)に、水、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、カルボジイミド系硬化剤、およびフィラーを含有する水性組成物を、塗工、乾燥、硬化することにより、表面保護層15を形成する。
【0052】
そして、表面保護層形成工程においては、「表面保護層15の表面粗さが、ISO 25178に準拠して測定された算術平均高さSaで0.20μm以上0.80μm以下の範囲内」となるように、上記水性組成物に含有するフィラーの粒子径やフィラーの含有率、あるいは形成する表面保護層15の厚さを制御する。
【0053】
なお、透明樹脂層形成工程においては、透明樹脂層14の表面が濡れ指数60dyne以上となるように、透明樹脂層14の表面を処理しておくと好ましい。なお、透明樹脂層14の表面の濡れ指数は、所謂「濡れ試薬」を用いて確認することができる。
また、接着層形成工程や表面保護層形成工程においては、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等の印刷方法を適用して層を形成することが可能である。
【0054】
このようにして製造された化粧シート10は、表面保護層15が、一態様の構成(ポリカーボネート系ウレタン樹脂、カルボジイミド系硬化剤、フィラーを含有する材料で形成されていると共に、前記算術平均高さSaが0.20μm以上0.80μm以下であること)を満たすため、これを満たさない表面保護層15を有する化粧シートと比較して、意匠性を保持しつつ、耐傷性、耐汚染性、耐候性も良好にすることが可能になる。
【実施例0055】
以下、具体的な実施例、比較例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
[化粧シートの作製]
《表面保護層用材料》
表面保護層用の材料として、以下のものを用意した。
・ウレタン樹脂(水性エマルションタイプ)
ポリカーボネート系-1:三井化学株式会社製ポリカーボネート系ウレタン樹脂「タケラック(登録商標) W-6010(品番)」
ポリカーボネート系-2:三井化学株式会社製ポリカーボネート系ウレタン樹脂「タケラック(登録商標) WS-4000(品番)」
ポリエーテル系:三井化学株式会社製ポリエーテル系ウレタン樹脂「タケラック(登録商標) W-6061(品番)」
【0056】
・硬化剤
カルボジイミド系-1:日清紡ケミカル株式会社製硬化剤「カルボジライト(登録商標) SV-02(品番)」
カルボジイミド系-2:日清紡ケミカル株式会社製カルボジイミド系硬化剤「カルボジライト(登録商標) V-04(品番)」
エポキシ系:ナガセケムテック製エポキシ系硬化剤「デナコール(登録商標)EX-810(品番)」
【0057】
・フィラー
平均粒子径(D50)が5μmであるシリカ粒子:水澤化学工業株式会社製「ミズカシル(登録商標) P-803(品番)」
平均粒子径(D50)が3μmであるシリカ粒子:水澤化学工業株式会社製「ミズカシル(登録商標) P-603(品番)」
平均粒子径(D50)が6μmであるアクリルビーズ:根上工業株式会社製「アートパール SE-006T」
平均粒子径(D50)が6μmであるウレタンビーズ:根上工業株式会社製「アートパール C-800T」
【0058】
・紫外線吸収剤
トリアジン骨格を有する化合物からなる紫外線吸収剤:BASFジャパン株式会社製「チヌビン(登録商標) 400DW(品番)」
・光安定剤
NOR骨格を有する化合物からなる光安定剤:BASFジャパン株式会社製「チヌビン(登録商標) 123DW(品番)」
【0059】
《表面保護層形成用水性組成物の調製》
No.1~No.28のサンプル毎に、上記いずれかの水性エマルションタイプのウレタン樹脂100質量部、上記いずれかの硬化剤10質量部、上記いずれかのフィラー0~15質量部、上記紫外線吸収剤0または1質量部、上記光安定剤0または1質量部の割合で、表面保護層形成用の水性組成物を調製した。各サンプルの組成を表1に示す。
【0060】
《透明樹脂層用材料》
透明樹脂層用の材料として、以下のものを用意した。
・樹脂
高結晶性ポリプロピレン樹脂(PP):株式会社プライムポリマー製「プライムポリプロ E-100GV」
高密度ポリエチレン樹脂(PE):株式会社プライムポリマー製「ハイゼックス 5000S」
・紫外線吸収剤
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤:BASFジャパン株式会社製「Chimassorb 81」
・光安定剤
ヒンダードアミン系光安定剤:BASFジャパン株式会社製「Tinuvin 152」
【0061】
《透明樹脂層形成用組成物の調製》
上記高結晶性ポリプロピレン樹脂に上記紫外線吸収剤を0.5質量%、上記光安定剤を0.5質量%の割合で混合することにより、No.1~No.15、No.17~No.28の各サンプル用の透明樹脂層形成用組成物1を得た。
上記高密度ポリエチレン樹脂に上記紫外線吸収剤を0.5質量%、上記光安定剤を0.5質量%の割合で混合することにより、No.16用の透明樹脂層形成用組成物2を得た。
《接着層用材料》
ドライラミネート用接着剤(一液型ポリウレタン樹脂):三井化学株式会社製「タケラック(登録商標) A540(品番)」
【0062】
《その他の材料》
基材11として、隠蔽性のある55μmのポリエチレンシートを用意した。
絵柄層12の材料として、二液硬化型ウレタンインキ(東洋インキ株式会社製「V180(品番)」)を用意した。
プライマー層の材料として、二液硬化型ウレタンインキ(東洋インキ株式会社製「V180(品番)」)を用意した。
【0063】
《化粧シートの作製》
先ず、基材11の一面に、上記二液硬化型ウレタンインキをグラビア印刷法で印刷することにより、厚さ3μmの絵柄層12を形成した。
次に、基材11の他面に、上記二液硬化型ウレタンインキをグラビアコーティング法で塗工し、乾燥、硬化することにより、厚さ3μmのプライマー層19を形成した。
次に、絵柄層12の上に、上記ドライラミネート用接着剤をグラビアコーティング法で塗工し、乾燥、硬化することにより、厚さ2μmの接着層13を形成した。
次に、接着層13の上に、上記透明樹脂層形成用組成物1または2を押出しラミネート法で付着させることにより、厚さ70μmの透明樹脂層14を形成した。
次に、透明樹脂層14の上に、上記表面保護層形成用の水性組成物をグラビアコーティング法で塗工し、乾燥、硬化することにより、厚さ1.5~15.0μmの表面保護層15を形成した。
【0064】
[物性測定]
〈算術平均高さSa〉
《測定方法》
得られた各サンプルの化粧シート10について、表面保護層15の表面粗さを以下の方法で測定した。
先ず、レーザー顕微鏡(オリンパス(株)製:OLS-4000)を用いて、「ISO 25178」に準拠した方法により、算術平均粗さ(Sa)を測定した。具体的には、倍率が20倍の対物レンズを用い、幅方向3箇所で測定した。次に、得られた各3個の測定値から平均値を算出して、その値を各サンプルの算術平均粗さ(Sa)とした。
【0065】
[試験内容]
〈意匠性試験〉
得られた各サンプルの化粧シート10について、以下の方法で意匠性を評価した。
《試験方法》
グロス計(村上色彩技術研究所社製:GMX-102)を用いて、「JIS Z8741:1997」に準拠した方法により、測定角度60度における光沢度を測定した。
《評価基準》
測定した光沢度に基づいて、以下のように評価した。
◎:3~10
〇:2~3あるいは10~15
×:2より小さい、あるいは15より大きい
【0066】
〈耐傷性試験〉
《試験方法》
得られた各サンプルの化粧シート10について、米国BYK-Gardner社製ホフマンスクラッチハードネステスターにより、スクラッチ硬度試験を行って耐傷性を確認した。すなわち、各サンプルに対して100gから1000gまでの荷重を100g刻みで順次加えていき、目視観察してサンプルにスクラッチ傷が発生したときの荷重を求めた。
《評価基準》
スクラッチ傷が発生したときの荷重に基づいて、以下のように評価した。
◎:500g荷重以上
〇:200g荷重以上400g荷重以下
×:100g荷重
【0067】
〈耐汚染性試験〉
《試験方法》
得られた各サンプルの化粧シート10の表面に試薬(1%水酸化ナトリウム水溶液)を滴下して24時間放置した後、各サンプルの表面状態を目視観察した。
《評価基準》
目視観察した結果に基づいて、以下のように評価した。
◎:痕跡なし
〇:わずかに痕跡あるが、問題のない程度である。
×:溶解に伴う明確な痕跡あり
【0068】
〈耐候性試験〉
《試験方法》
得られた各サンプルの化粧シート10について、株式会社東洋精機製作所製促進耐候性試験機「アトラス・ウエザオメータ(登録商標) Ci4000(品番)」を用い、下記の条件で耐候性試験を行って、試験後の各サンプルの状態を目視観察した。
《試験条件》
・照射光:キセノンアークランプ180W
・降雨時間:12分
・降雨周期:120分サイクル
・試験時間:500時間
【0069】
《評価基準》
目視観察した結果に基づいて、以下のように評価した。
◎:試験前後で変化なし。
〇:試験後のサンプルに白化箇所が一部に確認されたが、問題のない程度である。
×:試験後のサンプルに剥離箇所が確認、又は、白化箇所が広範囲で確認された。
[試験結果]
上記試験の結果を化粧シートの構成(異なる部分)とともに、表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1の結果から以下のことが分かる。
表面保護層が、本発明の第一態様の構成(A:ポリカーボネート系ウレタン樹脂、カルボジイミド系硬化剤、およびフィラーを含有する材料で形成されていることと、B:Saが0.20μm以上0.80μm以下の範囲内であることの両方)を満たすサンプル(実施例)は、意匠性、耐傷性、耐汚染性、耐候性のすべてが合格の判定(〇か◎)であったのに対し、AおよびBの少なくともいずれかを満たさないサンプル(比較例)は、意匠性、耐傷性、耐汚染性、耐候性の少なくとも何れかが不合格の判定(×)であった。
【0072】
本発明の第一態様の構成を満たすサンプルのうち、No.6とNo.15~No.17は、表面保護層に対する紫外線吸収剤および/または光安定剤の添加の有無のみが異なる例であるが、紫外線吸収剤および光安定剤の両方が添加されているNo.6は、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくともいずれかが添加されていないNo.15~No.17よりも耐候性に優れているものとなった。
【0073】
また、No.6とNo.10~No.12は表面保護層の膜厚のみが異なる例であるが、膜厚が1.5μmであるNo.10ではSaが0.95μmとなってBを満たさず、膜厚が2.0μmであるNo.11ではSaが0.76μm、膜厚が7.0μmであるNo.6ではSaが0.47μm、膜厚が15.0μmであるNo.12ではSaが0.23μmとなって、それぞれBを満たしている。つまり、表面保護層が、ポリカーボネート系-1のウレタン樹脂とカルボジイミド系-1の硬化剤を用い、フィラーとしてシリカ粒子(5μm)を5質量部含有するものである場合、表面保護層の厚さを2.0μm以上15μm以下の範囲内にすることで、表面保護層のSaを0.20μm以上0.80μm以下の範囲内にすることができる。
【0074】
以上の結果から、本発明によれば、意匠性、耐傷性、耐汚染性、および耐候性のいずれの性能にも優れた化粧シートが得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の化粧シートおよび本発明の方法で得られた化粧シートは、意匠性、耐傷性、耐汚染性、および耐候性のいずれの性能にも優れたものとなることが期待できるため、建築物の内外装や建具、家具等の表面等に使用すると好適であり、産業上、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 化粧シート
11 基材
12 絵柄層
13 接着層
14 透明樹脂層
15 表面保護層
19 プライマー層
図1