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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072458
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】車両用外装部材
(51)【国際特許分類】
   B62D 37/02 20060101AFI20240521BHJP
   B29C 65/56 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B62D37/02 C
B29C65/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183284
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茂樹
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AH17
4F211TA06
(57)【要約】
【課題】荷重がかかる部分に対する樹脂材料の流れをコントロールする構造により、破損の発生を抑制する車両用外装部材を提供すること。
【解決手段】車両用外装部材は、第一パネルと第二パネルとが接合される。第二パネルは、車両に取り付けるための締結部材を取付可能な取付部2と、樹脂材料が注入されたゲート部3と、第一パネル側に突出する樹脂流動支援部4を備える。取付部2は、座面部5と開口部6を備える。座面部5は、一方向が開放されるU字状に形成される。座面部5のうち、開放される側の端部を先端部7とし、先端部7の反対側の端部を閉端部8とする。樹脂流動支援部4は、ゲート部3から、少なくともゲート部3から遠い側の先端部7である第一先端部7aまでの間に形成される。例として、先端位置4aは第一先端部7aに隣接する位置まで形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一パネルと第二パネルとが接合された車両用外装部材であって、
前記第二パネルは、
車両に取り付けるための締結部材を取付可能な取付部と、
樹脂材料が注入されたゲート部と、
前記第一パネル側に突出する樹脂流動支援部を備え、
前記取付部は、座面部と開口部を備え、
前記座面部は、一方向が開放されるU字状に形成され、
前記座面部のうち、開放される側の端部を先端部とし、前記先端部の反対側の端部を閉端部とし、
前記樹脂流動支援部は、
前記ゲート部から、少なくとも前記ゲート部から遠い側の前記先端部である第一先端部までの間に形成される車両用外装部材。
【請求項2】
前記樹脂流動支援部は、
さらに、前記取付部における前記閉端部の側の少なくとも一部から前記第一先端部までの間において、前記取付部に隣接して形成される請求項1に記載の車両用外装部材。
【請求項3】
前記樹脂流動支援部は、前記ゲート部から近い側の前記先端部である第二先端部とは離間して形成される請求項1又は2に記載の車両用外装部材。
【請求項4】
前記第一先端部と、前記ゲート部から近い側の前記先端部である第二先端部とを結ぶ直線の垂線であって、前記第一先端部と前記第二先端部との間の先端部中心を通る直線を先端部中心線とし、
前記樹脂流動支援部は、前記ゲート部から、さらに前記第一先端部と前記先端部中心線との間にまで延長して形成される請求項2に記載の車両用外装部材。
【請求項5】
第一パネルと第二パネルとが接合された車両用外装部材であって、
前記第二パネルは、
車両に取り付けるための締結部材を取付可能な取付部と、
樹脂材料が注入されたゲート部と、
前記第一パネル側に突出する樹脂流動支援部を備え、
前記取付部は、U字状開口縁をなす開口部を有し、
前記樹脂流動支援部は、
前記取付部における前記U字状開口縁のうち、前記ゲート部から遠い側の第一開口縁における該取付部に隣接するように形成される車両用外装部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取り付け可能な車両用外装部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポイラー等の車両用外装部材が提案されている。例えば、特許文献1の記載によれば、ルーフスポイラは、樹脂製のアッパ部材とロア部材を組み付けることにより構成され、アウタパネルに固定される。ロア部材はアウタパネルに向かって突出する当て部を有し、この当て部は中空をなして車幅方向に広がる当接壁部を有し、当接壁部がアウタパネルに当たる。
【0003】
また、ルーフスポイラは、通常はクリップ固定部及び締め付け固定部で自重を受けている。リアゲートを閉める際や洗車の際等には、ルーフスポイラの上面部に下向きの荷重が作用する。このとき、当て部の第1及び第2当接壁部がアウタパネルの屈曲部に当接し、荷重はリアゲートに伝達される。すなわち、クリップ固定部及び締め付け固定部にかかる荷重は分散されるので、ルーフスポイラはリアゲートに安定して支持される、と記載されている。
【0004】
これによれば、車体との安定した当接状態を得ることができるとともに、成形性を改善させた車両用スポイラーを提供することができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-172186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来例には、以下の課題が想定される。クリップ固定部及び締め付け固定部にかかる荷重は分散される、と記載されているが一定程度の荷重がかかることは避けられない。特に、スポイラーは通常、樹脂材料による射出成形によって製造される。樹脂材料による射出成形の場合、リブ、穴等の種々の形状が形成されるため樹脂材料の流れが複雑となり、材料同士が合流する部分にウエルドラインと呼ばれる線状跡が発生する場合がある。ウエルドラインが発生する部分は、他の部分に比べて強度が低下する。特に、クリップ固定部及び締め付け固定部は、穴及びリブ構造が組合わされているため、周辺にウエルドラインが発生しやすい。すると、クリップ固定部又は締め付け固定部は、特に荷重がかかる部分の周辺にウエルドラインが発生すると、破損しやすいという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、従来の課題を解決するもので、荷重がかかる部分に対する樹脂材料の流れをコントロールする構造により、破損の発生を抑制する車両用外装部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様に係る車両用外装部材は、第一パネルと第二パネルとが接合され、前記第二パネルは、車両に取り付けるための締結部材を取付可能な取付部と、樹脂材料が注入されたゲート部と、前記第一パネル側に突出する樹脂流動支援部を備え、前記取付部は、座面部と開口部を備え、前記座面部は、一方向が開放されるU字状に形成され、前記座面部のうち、開放される側の端部を先端部とし、前記先端部の反対側の端部を閉端部とし、前記樹脂流動支援部は、前記ゲート部から、少なくとも前記ゲート部から遠い側の前記先端部である第一先端部までの間に形成される。
【0009】
これによれば、車両用外装部材は、樹脂流動支援部がゲート部から、少なくともゲート部から離れた側の先端部である第一先端部までの間に形成される。樹脂材料は、樹脂流動支援部が形成されるゲート部から第一先端部までの間において流れが速くなるので、ウエルドラインは座面部から離間した位置に発生することが想定される。よって、車両用外装部材は座面部の強度低下を抑制し、破損の発生を低減することができる。
【0010】
また、前記車両用外装部材は、前記樹脂流動支援部がさらに、前記取付部における前記閉端部の側の少なくとも一部から前記第一先端部までの間において、前記取付部に隣接して形成されてもよい。
【0011】
この場合、樹脂流動支援部は、取付部における閉端部の側の少なくとも一部から第一先端部までの間において、取付部に隣接して形成されるので、ウエルドラインは座面部からより離間した位置に発生することが想定される。よって、車両用外装部材は座面部の強度低下を抑制し、破損の発生を低減することができる。
【0012】
また、前記車両用外装部材は、前記樹脂流動支援部が、前記ゲート部から近い側の前記先端部である第二先端部とは離間して形成されてもよい。
【0013】
この場合、樹脂流動支援部は、第二先端部とは離間して形成されるので、ウエルドラインは第二先端部から離間した位置に発生することが想定される。よって、車両用外装部材は座面部の強度低下を抑制し、破損の発生を低減することができる。
【0014】
また、前記車両用外装部材は、前記第一先端部と、前記ゲート部から近い側の前記先端部である第二先端部とを結ぶ直線の垂線であって、前記第一先端部と前記第二先端部との間の先端部中心を通る直線を先端部中心線とし、前記樹脂流動支援部は、前記ゲート部から、さらに前記第一先端部と前記先端部中心線との間にまで延長して形成されてもよい。
【0015】
この場合、樹脂流動支援部は、ゲート部から、さらに第一先端部と先端部中心線との間にまで連続して形成される。よって、車両用外装部材は、座面部の第一先端部と第二先端部から離間した位置でウエルドラインの発生が想定されるので、より座面部の強度低下を抑制し、破損の発生を低減することができる。
【0016】
本発明の第二の態様に係る車両用外装部材は、第一パネルと第二パネルとが接合され、前記第二パネルは、車両に取り付けるための締結部材を取付可能な取付部と、樹脂材料が注入されたゲート部と、前記第一パネル側に突出する樹脂流動支援部を備え、前記取付部は、U字状開口縁をなす開口部を有し、前記樹脂流動支援部は、前記取付部における前記U字状開口縁のうち、前記ゲート部から遠い側の第一開口縁における該取付部に隣接するように形成される。
【0017】
これによれば、車両用外装部材は、樹脂流動支援部が取付部におけるU字状開口縁のうち、ゲート部から遠い側の第一開口縁における取付部に隣接するように形成されるので、ウエルドラインの発生が想定される位置を、第一開口縁から離間した位置にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の車両用外装部材1において、第二パネル12を下側から見た図である。
図2図1における断面I-Iを示す断面図である。
図3】本発明の第一の態様に係る車両用外装部材1を示し、図1におけるA部詳細図であり、ゲート部3と取付部2とが第一の位置関係の場合を示し、座面部5が第一象限と第二象限にあり、ゲート部3が第四象限にある場合を示す。
図4】本発明の第一の態様に係る車両用外装部材1を示し、図1におけるA部詳細図であり、ゲート部3と取付部2とが第二の位置関係の場合を示し、座面部5が第一象限と第二象限にあり、ゲート部3が第一象限にある場合を示す。
図5図3における断面II-IIを示す断面図であり、(a)は樹脂流動支援部4の断面が半円形状の場合を示し、(b)は樹脂流動支援部4の断面が矩形状の場合を示す。
図6図3における断面III-IIIを示す断面図の第一例であり、締結部材が取り付けられた状態を示す。
図7図3における断面IV-IVを示す断面図の第一例であり、締結部材が取り付けられた状態を示す。
図8図3における断面III-IIIを示す断面図の第二例であり、締結部材が取り付けられた状態を示す。
図9図3における断面III-IIIを示す断面図の第三例であり、締結部材が取り付けられた状態を示す。
図10図1におけるA部詳細図であり、ゲート部3と取付部2とが第三の位置関係の場合を示し、座面部5が第一象限と第二象限にあり、ゲート部3が第三象限と第四象限との境界上にある場合を示す。
図11】本発明の第二の態様に係る車両用外装部材1を示し、図3に対応する図である。
図12】従来例を示し、図1におけるA部詳細図に対応し、樹脂流動支援部4を有しない場合のウエルドライン発生の予想範囲Wを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明を具現化した車両用外装部材1を説明する。なお、発明を実施するための形態、及び参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。本発明はこれらに限定されるものではない。図面に記載されている構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0020】
<第一の態様に係る車両用外装部材1の説明>
図1から図10までを参照して、本発明の第一の態様に係る車両用外装部材1を説明する。車両用外装部材1は、車両20に取り付け可能であり、例として自動車のスポイラー、バンパー、アウターガーニッシュ等である。図1は、車両用外装部材1が例としてスポイラーの場合を示し、車両20に取り付けたときの方向に合わせて前後方向と左右方向を定義する。また、図2は車両用外装部材1の一例であるスポイラーが、車両20に取り付けられた状態の断面を示し、前後方向と上下方向を定義する。
【0021】
車両用外装部材1は、第一パネル11と第二パネル12とが接合される。第二パネル12は、車両20に取り付けるための締結部材を取付可能な取付部2と、樹脂材料が注入されたゲート部3と、第一パネル11側に突出する樹脂流動支援部4を備える。
【0022】
図3等に示すように、取付部2は、座面部5と開口部6を備える。座面部5は、一方向が開放されるU字状に形成される。座面部5のうち、開放される側の端部を先端部7とし、先端部7の反対側の端部を閉端部8とする。樹脂流動支援部4は、ゲート部3から、少なくともゲート部3から遠い側の先端部7である第一先端部7aまでの間に形成される。図3に示す例では、樹脂流動支援部4の先端位置4aは、第一先端部7aに隣接する位置まで形成される。
【0023】
図5に示すように、樹脂流動支援部4は第二パネル12から第一パネル11の側に突出して形成され、図5(a)に示すように断面形状が円弧状の場合と、図5(b)に示すように断面形状が矩形状の場合がある。樹脂流動支援部4の断面形状はこれらの例に限らず他の形状でもよい。
【0024】
また、樹脂流動支援部4は、さらに、取付部2における閉端部8の側の少なくとも一部から第一先端部7aまでの間において、取付部2に隣接して形成される。図3及び図4に示す例では、樹脂流動支援部4は、閉端部8の側の一部から第一先端部7aにまで取付部2に隣接して形成される。
【0025】
また、樹脂流動支援部4は、ゲート部3から近い側の先端部7である第二先端部7bとは離間して形成される。図3及び図4に示す例では、樹脂流動支援部4は、ゲート部3から、座面部5における第二先端部7bから閉端部8までの周縁からは離間して形成される。
【0026】
また、図3及び図4に示すように、第一先端部7aと、ゲート部3から近い側の先端部7である第二先端部7bとを結ぶ直線の垂線であって、第一先端部7aと第二先端部7bとの間の先端部中心7cを通る直線を先端部中心線L1とする。樹脂流動支援部4は、ゲート部3から、さらに第一先端部7aと先端部中心線L1との間にまで延長して形成されることがより望ましい。詳細は後述するが、図3及び図4に示すように、樹脂流動支援部4の先端は、仮想線で示すように先端位置4aから先端位置4bまでの間に形成されることがより望ましい。
【0027】
<樹脂流動支援部4が形成されない場合の説明>
ここで、図12を参照して車両用外装部材1に樹脂流動支援部4が形成されない場合を説明する。図12は、図3において樹脂流動支援部4が形成されない場合を示す。図12に示す例の車両用外装部材30は、取付部32が座面部35と開口部36を備え、座面部35は一方向が開放されるU字状に形成される。ゲート部33から樹脂が流動すると、ウエルドラインは予想範囲Wの座面部35に発生することが想定される。すなわち、図12のように樹脂流動支援部4が形成されないと、取付部32に取り付けられた締結部材に応力が加わったときに、座面部35が破損する恐れがある。
【0028】
<ゲート部3の位置と樹脂流動支援部4の経路との関係説明>
次に、図3及び図4を参照して、ゲート部3の位置と樹脂流動支援部4の経路の関係を詳細に説明する。図3等に示すように、先端部中心7cを中心とし、縦線である先端部中心線L1と横中心線L2によって第一象限から第四象限までの四つの領域に区分する。座面部5は、図示の下側が開放されるU字状に形成される。開口部6はU字状に形成される座面部5の内側と、横中心線L2を跨いで図示の下側にまで広がって形成される。座面部5及び開口部6は、第一象限と第二象限とにまたがって形成され、さらに開口部6の一部は第三象限と第四象限にまで広がって形成される。
【0029】
図3に示す例では、樹脂流動支援部4が、ゲート部3から始まり、第二先端部7bから閉端部8までは座面部5から離間して形成される。樹脂流動支援部4は、先端部中心線L1を過ぎた辺りから閉端部8に近接し、第一先端部7aまでの間は座面部5に隣接して形成される。樹脂流動支援部4は、少なくとも閉端部8から第一先端部7aまでの間の途中までは座面部5に隣接して形成される。ウエルドラインは、樹脂流動支援部4の先端からさらに樹脂流動方向の先に発生するので、座面部5から離間した位置に発生することが想定される。
【0030】
図3に示すように、樹脂流動支援部4は、第一先端部7aに隣接する位置である先端位置4aにまで形成されることが望ましい。このとき、ウエルドラインは予想範囲W1に発生することが想定される。また仮に、樹脂流動支援部4がさらに先端位置4bにまで形成されたとき、ウエルドラインは予想範囲W2に発生することが想定される。樹脂流動支援部4は、第一先端部7aに隣接する位置である先端位置4aと先端部中心線L1の位置である先端位置4bの間にまで延長して形成されることがより望ましい。このとき、ウエルドラインは予想範囲Wに発生することが想定される。
【0031】
次に、図4を参照して、ゲート部3が第一象限に位置する場合を説明する。仮に樹脂流動支援部4が形成されない場合、図示しないがウエルドラインは第二象限、又は第二象限と第三象限との境目辺りに発生することが想定される。このときも、ウエルドラインは座面部5又は座面部5に隣接した位置に発生する恐れがある。また、ゲート部3が第一象限のうち横中心線L2と閉端部8との間に位置するとき、ウエルドラインは座面部5に発生しやすい。この場合、樹脂流動支援部4が形成されることによってウエルドラインの位置が調整されるので、特に効果が大きい。
【0032】
図4に示す例では、樹脂流動支援部4はゲート部3から閉端部8に向かって直線的に形成され、その先は図3に示す場合と同様に形成される。ウエルドラインの発生が想定される位置も図3に示す例と同様である。
【0033】
以上説明した例は、ゲート部3の位置が第四象限の場合と第一象限の場合である。ゲート部3が第三象限に位置する場合は、第四象限に位置する場合に対して、樹脂流動支援部4が先端部中心線L1と対称位置に形成される。また、ゲート部3が第二象限に位置する場合は、第一象限に位置する場合に対して、樹脂流動支援部4が先端部中心線L1と対称位置に形成される。
【0034】
また、図4に示す例に対して座面部5及び開口部6が横中心線L2に対して対称の場合、図3の例と同様となる。
【0035】
<取付部2の説明>
次に、車両用外装部材1における取付部2について説明する。図6及び図7は、座面部5が、取り付けられる車両20の側に突出する場合を示す。他の例は後述する。締結部材であるボルト21は、図3に示す座面部5のうちの開放される側、すなわち図示の下から上に向かって挿入され、図6及び図7に示す状態となる。ボルト21は溝21aが形成され、座面部5に挿入される。ボルト21は、溝21aが座面部5に案内され、ボルト上面21dが支持部13に案内されて、閉端部8に向かって図7の上側まで挿入される。ボルト21のネジ部21bは車両20の側に突出し、ボルト設置面21cが車両20を挟んでナット22によって締結される。
【0036】
図6に示す例では、樹脂流動支援部4は、座面部5を形成する壁部5aが屈折する部分を基部10とし、第一パネル11の側に突出して形成される。なお、図6及び図7に示す例は、ボルト21が一体で形成されているが、複数の部材を組み合わせて形成してもよい。
【0037】
次に、図8及び図9を参照して、座面部5及び開口部6において他の例を説明する。図8は、座面部5が第一パネル11の側に突出する例を示す。座面部5が第一パネル11の側に突出する量は、ボルト21を装着したときにボルト設置面21cが第二パネル設置面9と同一平面上になるよう設定される。車両用外装部材1は、ボルト設置面21cとナット22とが車両20を挟んだ状態で車両20に締結される。図8に示す例では、樹脂流動支援部4は、座面部5の壁部5aの基部10から第一パネル11の側に突出して形成される。
【0038】
図9に示す例は、座面部5が平面で形成される。図6に示す例と同様に、ボルト21は第二パネル12から車両20の側に突出した状態となる。樹脂流動支援部4は、ボルト21と接触しない程度に近接した位置を基部10として、第一パネル11の側に突出して形成される。車両用外装部材1は、ボルト設置面21cとナット22とが車両20を挟んだ状態で車両20に締結される。
【0039】
次に、図10を参照して、ゲート部3が先端部中心線L1上にある場合を説明する。樹脂流動支援部4は、ゲート部3から閉端部8までは座面部5から離間した経路を通る。閉端部8と先端部中心線L1とが交わる位置からは、第一象限側及び第二象限側へと分岐し、座面部5の周縁部を通って二つの先端部7へと連続して形成される。図10に示すように、樹脂流動支援部4の先端は、先端位置4aから先端位置4bまでの間に形成される。
【0040】
図示において第一象限の座面部5の周縁部に形成される樹脂流動支援部4と、第二象限の座面部5の周縁部に形成される樹脂流動支援部4とは、先端部中心線L1に対して対称でもよいし、対象でなくてもよい。ウエルドラインが発生すると想定される位置は、樹脂流動支援部4の先端が先端位置4aのときは予想範囲W1であり、先端位置4bのときは予想範囲W2である。第一象限に形成される樹脂流動支援部4と第二象限に形成される樹脂流動支援部4とによると、ウエルドラインが発生すると想定される位置はW1とW2とを加えた予想範囲Wである。
【0041】
<第一の態様に係る車両用外装部材1の効果>
以上説明した本発明の第一の態様に係る車両用外装部材1によれば、以下の効果を奏する。図3等に示すように、車両用外装部材1は、樹脂流動支援部4がゲート部3から、少なくともゲート部3から離れた側の先端部7である第一先端部7aまでの間に形成される。樹脂材料は、樹脂流動支援部4が形成されるゲート部3から第一先端部7aまでの間において流れが速くなるので、ウエルドラインを座面部5から離間した位置に発生させることができる。よって、車両用外装部材1は座面部5の強度低下を抑制し、破損の発生を低減することができる。
【0042】
また、樹脂流動支援部4は、取付部2における閉端部8の側の少なくとも一部から第一先端部7aまでの間において、取付部2に隣接して形成されるので、ウエルドラインを座面部5からより離間した位置に発生させることができる。
【0043】
また、樹脂流動支援部4は、ゲート部3から近い側の先端部7である第二先端部7bとは離間して形成されるので、ウエルドラインを第二先端部7bから離間した位置に発生させることができる。
【0044】
また、樹脂流動支援部4は、ゲート部3から、さらに第一先端部7aと先端部中心線L1との間にまで連続して形成されてもよい。この場合、車両用外装部材1は、座面部5の第一先端部7aと第二先端部7bから離間した位置でウエルドラインの発生が想定されるので、より座面部5の強度低下を抑制し、破損の発生を低減することができる。
【0045】
<第二の態様に係る車両用外装部材1の説明>
次に、本発明の第二の態様に係る車両用外装部材1を説明する。図11に示す例は、第一の態様に係る車両用外装部材1の図3に対応する図である。車両用外装部材1は、第一の態様と同様に、第一パネル11と第二パネル12とが接合されて形成される。第二パネル12は、車両20に取り付けるための締結部材を取付可能な取付部2と、樹脂材料が注入されたゲート部3と、第一パネル11側に突出する樹脂流動支援部4を備える。取付部2は、U字状開口縁17をなす開口部16を有する。樹脂流動支援部4は、取付部2におけるU字状開口縁17のうち、ゲート部3から遠い側の第一開口縁17aにおける取付部2に隣接するように形成される。
【0046】
U字状開口縁17は、図11に示すように座面部5の周縁に形成される。第一開口縁17aは、U字状開口縁17のうち第二象限に形成される略直線部分4tの範囲である。また、第二開口縁17bは、先端部中心線L1において第一開口縁17aと対称の部分である。
【0047】
なお、樹脂流動支援部4は、ゲート部3から、取付部2におけるU字状開口縁17のうち、ゲート部3から遠い側の第一開口縁17aにおける取付部2に隣接するように連続して形成されてもよい。
【0048】
また、図示しないが第一の態様と同様に、樹脂流動支援部4の先端は図3に示すように先端位置4aまで形成されてもよいし、先端位置4bまで形成されてもよい。図11は、ゲート部3が第四象限の場合を示すが、図4と同様にゲート部3が第一象限にあってもよい。
【0049】
<第二の態様に係る車両用外装部材1の効果>
以上説明した本発明の第二の態様に係る車両用外装部材1によれば、以下の効果を奏する。車両用外装部材1は、樹脂流動支援部4が取付部2におけるU字状開口縁17のうち、ゲート部3から遠い側の第一開口縁17aにおける取付部2に隣接するように形成される。よって、ウエルドラインの発生が想定される位置を、第一開口縁17aから離間した位置にすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 車両用外装部材
2 取付部
3 ゲート部
4 樹脂流動支援部
5 座面部
6 開口部
7 先端部
7a 第一先端部
7b 第二先端部
7c 先端部中心
8 閉端部
11 第一パネル
12 第二パネル
16 開口部
17 U字状開口縁
17a 第一開口縁
20 車両
L1 先端部中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12