(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072462
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】排気口部材
(51)【国際特許分類】
F23L 17/14 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
F23L17/14 H
F23L17/14 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183289
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】長濱 智弘
(72)【発明者】
【氏名】中越 貴章
(57)【要約】
【課題】排気口部材の排気口から外部へのドレンの飛散を抑制する。
【解決手段】燃焼排ガスが流入する流入口811と、燃焼排ガスを外部に排出する排気口77と、流入口811から排気口77に向かって燃焼排ガスが流れる排気通路Pと、排気通路Pの下流端に位置する下流端排気通路Pzと下流端排気通路Pzを画成する隔壁781を介して隣接する空間部9とを有する排気口部材7であって、空間部9は、空間部9の上流側に、排気通路Pから空間部9に燃焼排ガスが流入する上流側開口部90を有し、空間部9は、上流側開口部90以外で閉塞している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置される燃焼装置に設けられる排気口部材であって、
前記燃焼装置で生成される燃焼排ガスが流入する流入口と、前記燃焼装置の外装ケースの外方に位置し、前記燃焼排ガスを外部に排出する排気口と、前記流入口から前記排気口に向かって前記燃焼排ガスが流れる排気通路と、前記排気通路の下流端に位置する下流端排気通路と前記下流端排気通路を画成する隔壁を介して隣接する空間部と、を有し、
前記空間部は、前記空間部の上流側に、前記排気通路から前記空間部に前記燃焼排ガスが流入する上流側開口部を有し、
前記空間部は、前記上流側開口部以外で閉塞している排気口部材。
【請求項2】
請求項1に記載の排気口部材において、
前記排気通路は、前後方向に延び、前端に前記排気口を有し、
前記空間部は、前記下流端排気通路の上方に、前記下流端排気通路と前記下流端排気通路を画成する上隔壁を介して隣接する上空間部からなり、
前記上空間部は、前記上空間部の上流側に、前記排気通路から前記上空間部に前記燃焼排ガスが流入する前記上流側開口部を有し、
前記上空間部は、前記上流側開口部以外で閉塞している排気口部材。
【請求項3】
請求項2に記載の排気口部材において、
前記上隔壁は、前記排気口に向かって上方に傾斜している排気口部材。
【請求項4】
請求項2に記載の排気口部材において、
前記上空間部の通路断面積は、前記下流端排気通路の通路断面積以上である排気口部材。
【請求項5】
請求項2に記載の排気口部材において、
前記排気口の周縁の上隔壁は、前記下流端排気通路が前記排気口の開口上縁部で上方に広がるように、前記開口上縁部から後方に向かって凹む凹部を有する排気口部材。
【請求項6】
請求項2に記載の排気口部材において、
前記排気通路は、上下方向に延びる第1排気通路と、前後方向に延びる第2排気通路とが接続されて構成され、
前記第1排気通路は、下端に前記流入口を有し、上端に第1開口を有しており、
前記第2排気通路は、前記第1排気通路の前記第1開口と連通する第2開口を有し、前端に前記排気口を有しており、
前記第2排気通路は、前記第1排気通路と前記第2排気通路との接続部から後方に向かって膨出する膨出部を有する排気口部材。
【請求項7】
請求項1に記載の排気口部材において、
前記排気通路は、前記外装ケースから外方に延びており、
前記空間部は、前記下流端排気通路の全周を囲繞するように、前記下流端排気通路と前記下流端排気通路を画成する周隔壁を介して隣接する周囲空間部からなり、
前記周囲空間部は、前記周囲空間部の上流側に、前記排気通路から前記周囲空間部に前記燃焼排ガスが流入する前記上流側開口部を有し、
前記周囲空間部は、前記上流側開口部以外で閉塞している排気口部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に設置される燃焼装置の外装ケース内から燃焼排ガスを外部に排出する排気口部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス燃焼装置では、バーナの燃焼により燃焼排ガスが生成され、この燃焼排ガスによって燃焼筐内の顕熱熱交換器及び潜熱熱交換器が加熱される。そして、顕熱及び潜熱が回収された後の燃焼排ガスは、外装ケース内から排気口部材を通って外部に排出される。通常、屋外にある排気口部材から外部に排気される燃焼排ガスの温度は排気口部材の温度よりも高い。そのため、排気口部材内を流れる燃焼排ガスが排気口部材の内壁面(排気口部材内の排気通路を形成する面)に接触すると、燃焼排ガスが露点以下に冷却されて酸性のドレンが発生し、排気口部材の先端部である排気口から外部にドレンが飛散する。
【0003】
上記のような排気口部材内でのドレンの発生を防止するため、排気口部材を外筒と内筒とからなる二重構造の排気筒から形成し、外筒と内筒との間に断熱層である空気層を設けることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、外気温が低いときには、外筒だけでなく、内筒も冷却される。そのため、特許文献1のような排気通路と独立して設けられた空気層を外筒と内筒との間に設けるだけでは、内筒の温度が上昇してない燃焼運転初期においてドレンの発生を防止することができず、排気口から外部にドレンが飛散しやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するものであり、本発明の目的は、燃焼運転初期における排気口からのドレンの飛散を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の第1の態様によれば、
屋外に設置される燃焼装置の外装ケース内から燃焼排ガスを外部に排出する排気口部材であって、
前記燃焼排ガスが流入する流入口と、前記外装ケースの外方に位置し、前記燃焼排ガスを外部に排出する排気口と、前記流入口から前記排気口に向かって前記燃焼排ガスが流れる排気通路と、前記排気通路の下流端に位置する下流端排気通路と前記下流端排気通路を画成する隔壁を介して隣接する空間部と、を有し
前記空間部は、前記空間部の上流側に、前記排気通路から前記空間部に前記燃焼排ガスが流入する上流側開口部を有し、
前記空間部は、前記上流側開口部以外で閉塞している排気口部材が提供される。
【0008】
上記第1の態様によれば、燃焼排ガスの一部が下流端排気通路と隣接する空間部に流入するから、下流端排気通路を画成する隔壁を加熱することができる。このため、排気口部材の内部が冷却されているときでも、上記隔壁の内壁面の温度を短時間で上昇させることができる。これにより、燃焼運転初期における排気口部材内でのドレンの発生を低減することができ、排気口からのドレンの飛散を抑制することができる。
【0009】
本技術の第2の態様によれば、上記第1の態様の排気口部材において、
前記排気通路は、前後方向に延び、前端に前記排気口を有し、
前記空間部は、前記下流端排気通路の上方に、前記下流端排気通路と前記下流端排気通路を画成する上隔壁を介して隣接する上空間部からなり、
前記上空間部は、前記上空間部の上流側に、前記排気通路から前記上空間部に前記燃焼排ガスが流入する前記上流側開口部を有し、
前記上空間部は、前記上流側開口部以外で閉塞している。
【0010】
上記第2の態様の排気口部材によれば、燃焼排ガスの一部が下流端排気通路の上方に隣接する上空間部に流入するから、下流端排気通路を画成する上隔壁を加熱することができる。このため、燃焼排ガスが接触してドレンが発生しやすい下流端排気通路を画成する上隔壁が冷却されているときでも、上記上隔壁の内壁面の温度を短時間で上昇させることができる。これにより、排気口からのドレンの飛散を抑制することができる。
【0011】
本技術の第3の態様によれば、上記第2の態様の排気口部材において、
前記上隔壁は、前記排気口に向かって上方に傾斜する。
【0012】
上記第3の態様の排気口部材によれば、上隔壁が排気口に向かって上方に傾斜しているから、上隔壁の面積を大きくすることができ、上隔壁の内壁面の温度をより短時間で上昇させることができる。また、上記第3の態様の排気口部材によれば、燃焼排ガスが上隔壁の内壁面と接触して発生するドレンを排気通路の上流側に戻すことができる。これにより、排気口からのドレンの飛散をさらに抑制することができる。
【0013】
本技術の第4の態様によれば、上記第2または第3の態様の排気口部材において、
前記上空間部の通路断面積は、前記下流端排気通路の通路断面積以上である。
【0014】
上記第4の態様の排気口部材によれば、上空間部の通路断面積が隣接する下流端排気通路の通路断面積以上であるから、上空間部に燃焼排ガスが円滑に流入する。このため、上隔壁の内壁面の温度をより短時間で上昇させることができる。これにより、排気口からのドレンの飛散をさらに抑制することができる。
【0015】
本技術の第5の態様によれば、上記第2~第4の態様のいずれか1つの排気口部材において、
前記排気口の周縁の上隔壁は、前記下流端排気通路が前記排気口の開口上縁部で上方に広がるように、前記開口上縁部から後方に向かって凹む凹部を有する。
【0016】
上記第5の態様の排気口部材によれば、排気口の開口上縁部近傍の上隔壁の面積を大きくすることができる。従って、外気で最も冷却される排気口の開口上縁部に繋がる上壁部の内壁面の温度をより短時間で上昇させることができる。また、上記第5の態様の排気口部材によれば、上隔壁に沿って流れる燃焼排ガスが外気で最も冷却される排気口の開口上縁部に接触し難い。これにより、排気口からのドレンの飛散をさらに抑制することができる。
【0017】
本技術の第6の態様によれば、上記第2~第5の態様のいずれか1つの排気口部材において、
前記排気通路は、上下方向に延びる第1排気通路と、前後方向に延びる第2排気通路とが接続されて構成され、
前記第1排気通路は、下端に前記流入口を有し、上端に第1開口を有しており、
前記第2排気通路は、前記第1排気通路の前記第1開口と連通する第2開口を有し、前端に前記排気口を有しており、
前記第2排気通路は、前記第1排気通路と前記第2排気通路との接続部から後方に向かって膨出する膨出部を有する。
【0018】
上記第6の態様の排気口部材によれば、上下方向に延びる第1排気通路と前後方向に延びる第2排気通路とによって屈曲した排気通路が形成されるから、燃焼排ガスが流入口から排気口に向かって直線的に流れるのを防止することができる。また、上記第6の態様の排気口部材によれば、屈曲した排気通路が形成されているから、第2排気通路内を流れる燃焼排ガスの流速を抑えることができる。また、上記第6の態様の排気口部材によれば、第1排気通路から第2排気通路に流出する燃焼排ガスの一部が膨出部に流入するから、さらに第2排気通路内を流れる燃焼排ガスの流速を抑えることができる。従って、上空間部に燃焼排ガスを円滑に流入させることができ、排気口部材の内部が冷却されているときでも、上記上隔壁の内壁面の温度を短時間で上昇させることができる。これにより、排気口からのドレンの飛散をさらに抑制することができる。
【0019】
本技術の第7の態様によれば、上記第1の態様の排気口部材において、
前記排気通路は、前記外装ケースから外方に延びており、
前記空間部は、前記下流端排気通路の全周を囲繞するように、前記下流端排気通路と前記下流端排気通路を画成する周隔壁を介して隣接する周囲空間部からなり、
前記周囲空間部は、前記周囲空間部の上流側に、前記排気通路から前記周囲空間部内に前記燃焼排ガスが流入する前記上流側開口部を有し、
前記周囲空間部は、前記上流側開口部以外で閉塞している。
【0020】
上記第7の態様の排気口部材によれば、燃焼排ガスの一部が下流端排気通路の全周を囲繞する周囲空間部に流入するから、下流端排気通路を画成する周隔壁を加熱することができる。このため、外気によって排気口部材の内部が冷却されているときでも、上記周隔壁の内壁面の温度を短時間で上昇させることができる。これにより、排気口からのドレンの飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る燃焼装置を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態1に係る燃焼装置を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態1に係る燃焼装置を示す要部概略断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態1に係る排気口部材の本体部を後方から見た要部概略断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態1に係る排気口部材の排気通路形成部を示す概略斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態1に係る排気口部材を示す要部概略拡大断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態2に係る燃焼装置を示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態2に係る排気口部材を示す要部概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る排気口部材を説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施の形態の排気口部材7が適用される給湯器である燃焼装置1000は、屋外に設置される。燃焼装置1000は、外装ケース100と、外装ケース100内に収容された燃焼装置本体1とを有する。
【0023】
外装ケース100は、前方に開放する前方開放部103を有する矩形箱状のケース本体101と、前方開放部103を閉塞する前カバー102とを備える。なお、本明細書では、前カバー102が設けられている側を正面側とし、正面側から見たときに、外装ケース100の奥行方向を前後方向、外装ケース100の幅方向を左右方向、外装ケース100の高さ方向を上下方向という。ケース本体101及び前カバー102はそれぞれ、板金を成形して形成される。ケース本体101は、上板110、下板111、左板112、右板113、及び後板114を有する。
【0024】
図2及び
図3に示すように、燃焼装置本体1は、燃料ガスと空気との混合気を下向きに噴出して燃焼させ、燃焼排ガスを生成するバーナ2と、バーナ2の燃焼空間を囲うバーナ2の下側の燃焼筐3と、燃焼筐3から排出される燃焼排ガスが流れる排気ダクト4とを有する。
【0025】
バーナ2は、下向きに開口する箱形のバーナボディ21と、バーナボディ21の下向きの開口面を覆う燃焼板22とを備えている。バーナボディ21の上部には、側方に開口する流入口23が設けられており、ファン26から流入口23を介して混合気がバーナボディ21内に供給され、この混合気が燃焼板22に設けた混合気噴出部24から下向きに噴出して全一次燃焼する。なお、燃焼板22は、中央部に大きな開口部を有しており、この開口部に耐熱繊維の織布24aを装着するとともに、その上に多数の分布孔を形成した分布板24bを重ね合わせて、織布24aと分布板24bとにより混合気噴出部24を構成している。
【0026】
燃焼筐3は、上端部がバーナボディ21の下面周縁部に締結される上下両面が開放された上部筐31と、上部筐31の下端部に締結される上板部33aを有する上下両面が閉塞された下部筐33とで構成されている。下部筐33の上板部33aの前部には、上部筐31の内部空間と下部筐33の内部空間とを連通させる通気口34が設けられている。さらに、燃焼筐3の下部筐33の後面には、燃焼排ガスの流出口35が開設されている。従って、燃焼排ガスは、上部筐31から通気口34と下部筐33と流出口35とを介して排気ダクト4に流れる。
【0027】
熱交換器30は、上部筐31内に配置した、複数の吸熱フィン301aとこれら吸熱フィン301aを貫通する複数本の吸熱パイプ301bとからなるフィンアンドチューブ型の主熱交換器(顕熱熱交換器)301と、下部筐33内に配置した、左右方向に蛇行して延びる上下複数本の吸熱パイプ302bからなる副熱交換器(潜熱熱交換器)302とを備えている。水が副熱交換器302で加熱された後、主熱交換器でさらに加熱され、設定温度の湯水となって、給湯端末(図示せず)に供給される。
【0028】
排気ダクト4は、樹脂製であり、流出口35に接続される下部前面のダクト流入口41を有する上下方向に長手の起立ダクト部42と、起立ダクト部42の上端から前方に屈曲し、ケース本体101の上板110に形成された後述する給排気用開口120に向かって上方に延びる屈曲部43とを備えている。
【0029】
ケース本体101の上板110の前後左右中央部には給排気用開口120が開設され、ケース本体101の上板110の左方領域には給気用開口121が開設されている。給排気用開口120の上方には、後述する排気口部材7を接続可能な排気接続部50と、排気接続部50を囲う第1給気接続部51とが設けられている。また、給気用開口121の上方には、第2給気接続部57が設けられている。排気接続部50及び第1給気接続部51はそれぞれ、上下に開放している。
【0030】
排気接続部50は、上下方向に延びる筒体からなる。排気接続部50の下端は、排気ダクト4の屈曲部43の上面に立設した状態で、排気ダクト4の屈曲部43の上端と接続されている。排気接続部50の上端は、排気口部材7と接続される。
【0031】
排気ダクト4の屈曲部43の上端開口は下方から排気接続部50に臨んでおり、排気接続部50は排気ダクト4と連通している。第2給気接続部57は下方に開放しており、第2給気接続部57の上面には、蓋部材58が装着されている。図示しないが、2本管方式の給気管を使用する場合、蓋部材58を取外した状態で第2給気接続部57に給気管が接続される。なお、第1給気接続部51から外部の空気が外装ケース100内に供給される場合、第2給気接続部57を設けなくてもよい。
【0032】
ケース本体101の上板110の下面には、第1及び第2給気接続部51,57に連通する給気ボックス60が設けられている。図示しないが、給気ボックス60の底板の右前部には、第1及び第2給気接続部51,57のうちの任意の給気接続部から流入した空気を外装ケース100の内部空間に供給する供給口が開設されている。
【0033】
ケース本体101の上板110の上方には、上板110全体を覆う排気口部材7が配設されている。
図4は、排気口部材7の本体部70の前部を後方から見た左右方向断面図であり、
図5は、排気口部材7の排気通路形成部80の概略斜視図であり、
図6は、排気口部材7の前後方向要部拡大断面図である。
図3~
図6に示すように、排気口部材7は、排気口部材7の外郭を形成する略矩形箱状の本体部70と、本体部70内に収容される略T字状の排気通路形成部80とを有する。本体部70は、本体前壁71、本体後壁72、本体左壁73、本体右壁74、及び本体上壁75を有し、下方に開放している。本体部70及び排気通路形成部80は、樹脂製である。
【0034】
本体前壁71は、本体上壁75の前端から前方に向かって下方に傾斜する傾斜部710と、傾斜部710の下端から下方に垂下し、上方に折り返す折り返し部711と、折り返し部711の前方に設けられた前カバー部712とを有する。本体前壁71の傾斜部710には、左右方向に扁平な排気口77が開設されている。本体左右壁73,74の下部にはそれぞれ、前後方向に扁平な空気導入口73a,74aが開設されている。排気口77は、排気通路形成部80によって形成される排気通路Pや排気接続部50を介して外装ケース100内の排気ダクト4と連通している。燃焼運転でファン26を作動させると、外部の空気が空気導入口73a,74aや排気口部材7の本体部70とケース本体101の上板110との間の隙間を通って排気口部材7内に取り込まれる。そして、取り込まれた空気は、第1給気接続部51を介して、外装ケース100内に供給される。また、排気ダクト4から流出する燃焼排ガスは、排気通路形成部80によって形成される排気通路Pを通って外装ケース100の外方に位置する排気口77から外部に排出される。
【0035】
排気口77の周縁には、本体前壁71の傾斜部710の後面から後方に延びる左右方向に扁平な下流端筒部78が形成されている。従って、下流端筒部78の周壁が、排気通路Pの下流端に位置する下流端排気通路Pzを画成する。下流端筒部78は、上下方向で対向する上壁部781及び下壁部782と、上下壁部781,782の左端を接続する左壁部783と、上下壁部781,782の右端を接続する右壁部784とを有する。
【0036】
下流端筒部78の上壁部781は、排気口77の開口上縁部770から後方に延びる短い平板状の第1上壁部781aと、第1上壁部781aの後端から下方に延びる縦壁部781bと、縦壁部781bの下端から後方に延びる平板状の第2上壁部781cとを有する。このため、排気口77の周縁の上壁部781には、下流端排気通路Pzが排気口77の開口上縁部770で上方向に広がるように、排気口77の開口上縁部770から後方に凹む凹部781dが形成されている。また、第1及び第2上壁部781a,781cの内壁面は、略同一角度で排気口77に向かって上方に傾斜している。図示しないが、第1上壁部781a及び縦壁部781bはそれぞれ、排気口77の左右方向全体に亘って形成されている。第2上壁部781cは、排気口77よりも左右方向で広がって形成されている。
【0037】
下流端筒部78の下壁部782は、排気口77の開口下縁部771よりも下方の本体前壁71の傾斜部710の後面から後方に延びている。下壁部782の後端は、上下方向で第2上壁部781cの後端に略対向している。また、下壁部782の内壁面は、第1及び第2上壁部781a,781cの内壁面と略同一角度で排気口77に向かって上方に傾斜している。下壁部782と左右壁部783,784とを接続する両角部の外方にはそれぞれ、本体前壁71の傾斜部710の後面から後方に延びる半円弧状の支持部713が形成されている。また、下流端筒部78の第2上壁部781c及び下壁部782は、左右方向の幅が排気口77の左右方向の幅よりも大きく、本体左右壁73,74間の幅よりも小さくなるように形成されている。このため、下流端筒部78と、本体上壁75、本体左右壁73,74、及び支持部713との間には、一定の大きさの環状の隙間714が形成されている。この環状の隙間714には、後述する排気通路形成部80の第2筒部82の筒先端部が挿入される。
【0038】
また、本体前壁71の傾斜部710には、排気口77の開口下縁部771よりも下方で、下流端筒部78の下壁部782よりも上方の本体前壁71の傾斜部710の後面から後方に延びる平板状の下ガイド部79が形成されている。下ガイド部79の内壁面は、下壁部782の内壁面と略同一角度で排気口77に向かって上方に傾斜している。また、下ガイド部79は、前後方向の長さが、下流端筒部78の下壁部782の前後方向の長さよりも短くなるように形成されている。また、下ガイド部79は、左右方向の幅が排気口77の左右方向の幅よりも大きく、下流端筒部78の下壁部782の左右方向の幅よりも小さくなるように形成されている。このため、下ガイド部79と下流端筒部78との間には上下左右に一定の大きさの隙間が形成されている。
【0039】
排気通路形成部80は、本体部70の内部空間の前後左右中央部で、上下方向に延びる円筒形状の第1筒部81と、第1筒部81の上端に連結された左右方向に扁平な略矩形状の第2筒部82とを有する。第1筒部81は、上端に、第2筒部82と連通する第1上開口部(以下、「第1開口」という)810を有し、下端に、排気接続部50を介して外装ケース100内から燃焼排ガスが流入する第1下開口部811(以下、「流入口811」という)を有する。第1筒部81の下端部は、既述した排気接続部50に内嵌される。第1筒部81の下端部と排気接続部50の上端部との間には環状パッキンが介設されており、第1筒部81と排気接続部50とは、気密に接続される。
【0040】
第2筒部82は、上下に対向する上側壁部820及び下側壁部821と、上側壁部820及び下側壁部821の左端を接続する左側壁部822と、上側壁部820及び下側壁部821の右端を接続する右側壁部823と、上下左右側壁部820~823の後端を接続する後側壁部824とを有する。第2筒部82は、前端に、前方に開口する左右方向に扁平な挿入口830を有する。第2筒部82の後端は、閉塞している。また、第2筒部82の下側壁部821は、前後左右中央部に第1筒部81の第1開口810と連通する第2下開口部(以下、「第2開口」という)831を有する。第2筒部82の挿入口830には、既述した本体部70の下流端筒部78が挿入される。また、第2筒部82の筒先端部は、既述した本体部70の排気口77の周縁の後方に形成された環状の隙間714に挿入される。
【0041】
図示しないが、第2筒部82は、本体部70の下流端筒部78が第2筒部82の挿入口830に挿入されると、第2筒部82の筒先端部の左右側壁部822,823及び下側壁部821がそれぞれ、下流端筒部78の左右壁部783,784及び下壁部782に略密に外嵌するように形成されている。また、第2筒部82は、本体部70の下流端筒部78が第2筒部82の挿入口830に挿入されると、第2筒部82の筒先端部の上側壁部820が、下流端筒部78の上壁部781よりも上方の本体部70の本体上壁75近傍に位置するように形成されている。また、第2筒部82の筒先端部には、挿入口830の開口周縁から外方に延びる鍔部832が形成されている。この鍔部832は、本体部70の下流端筒部78が第2筒部82の挿入口830に挿入されると、本体部70の排気口77の周縁の本体前壁71の傾斜部710の後面に環状パッキンを介して気密状態で当接する。このため、本体部70の下流端筒部78が第2筒部82の挿入口830に最終位置まで挿入されると、第2筒部82の筒先端部の上側壁部820と下流端筒部78の上壁部781との間には、後方に開口する開口部90(以下、「上流側開口部90」という)を有する空間部9(以下、「上空間部9」という)が形成される。また、この上空間部9は、上流側開口部90以外で閉塞している。また、本体部70と排気通路形成部80とは、上空間部9の通路断面積が本体部70の下流端筒部78によって画成される下流端排気通路Pzの通路断面積以上となるように形成されている(例えば、上空間部9の通路断面積/下流端排気通路Pzの通路断面積:1~2倍)。また、第2筒部82の下側壁部821は、第2筒部82の筒先端部の下側壁部821が下流端筒部78の下壁部782の下方に配設されたとき、第2筒部82の筒先端部よりも後方の下側壁部821の内壁面が下流端筒部78の下壁部782の内壁面と略面一となるように形成されている。第2筒部82の上下側壁部820,821の外壁面には、補強用のリブが形成されている。
【0042】
また、第2筒部82の下側壁部821は、第1筒部81が接続されている第2開口831が最も低くなるように、第2開口831に向かって下方に傾斜している。これにより、第2筒部82内でドレンが発生しても、ドレンが第2開口831に向かって流れ、ドレンを第1筒部81から排気ダクト4に戻すことができる。
【0043】
排気口部材7を燃焼装置1000に設置する場合、本体部70と排気通路形成部80とが接続された排気口部材7を外装ケース100の上方に配置させ、排気通路形成部80の第1筒部81の下端部を排気接続部50に環状パッキンを介して内嵌させる。燃焼運転でファン26を作動させると、排気ダクト4と連通する排気接続部50から第1筒部81に流出する燃焼排ガスは、第1筒部81内を上方に流れ、第2筒部82内に流入する。そして、第2筒部82内に流入した燃焼排ガスは、第2筒部82内を前方に流れ、排気口77から外部に排出される。また、第1筒部81の上端は第2筒部82の下側壁部821の前後左右中央部に接続されているため、第2筒部82は、第1筒部81と第2筒部82との接続部826よりも後方に膨出する膨出部827を有する。そのため、第1筒部81から第2筒部82に流出する燃焼排ガスの一部は、膨出部827に流入しながら、前方に向かって流れる。従って、排気口部材7内には、第1筒部81によって形成される上下方向に延びる第1排気通路P1と、第2筒部82によって形成される前後方向に延びる第2排気通路P2とが接続された略T字状に屈曲した排気通路Pが形成される。
【0044】
また、
図6に示すように、下流端筒部78の上壁部781と第2筒部82の筒先端部の上側壁部820との間に形成される上空間部9は、上流側開口部90を介して第2排気通路P2と連通している。このため、第2排気通路P2を前方に流れる燃焼排ガスの一部は、上空間部9に流入する。また、既述したように、この上空間部9は、本体前壁71と、下流端筒部78の上壁部781と、第2筒部82の筒先端部の上側壁部820及び左右側壁部822,823とによって、上流側開口部90以外で閉塞している。このため、上空間部9内を流動する燃焼排ガスによって、下流端排気通路Pzを画成する下流端筒部78の上壁部781が加熱される。
【0045】
本実施の形態によれば、燃焼排ガスの一部が下流端排気通路Pzの上方に隣接する上空間部9に流入するから、下流端排気通路Pzを画成する上壁部781(上隔壁)を加熱することができる。このため、排気口部材7の内部が冷却されているときでも、上記上壁部781の内壁面の温度を短時間で上昇させることができる。また、本実施の形態によれば、上空間部9は上流側開口部90以外で閉塞しているから、上空間部9内で発生するドレンが排気口77に向かって流れるのを防止することができる。これにより、燃焼運転初期における排気口部材7内でのドレンの発生を低減することができ、排気口77からのドレンの飛散を抑制することができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、本体部70の下流端筒部78の上壁部781が排気口77に向かって上方に傾斜しているから、上壁部781の面積を大きくすることができ、上壁部781の内壁面の温度をより短時間で上昇させることができる。また、本実施の形態によれば、燃焼排ガスが上壁部781の内壁面と接触して発生するドレンを排気通路Pの上流側に戻すことができる。これにより、排気口77からのドレンの飛散を抑制することができる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、上空間部9の通路断面積が隣接する下流端排気通路Pzの通路断面積以上であるから、上空間部9に燃焼排ガスが円滑に流入する。このため、上壁部781の内壁面の温度をより短時間で上昇させることができる。これにより、排気口77からのドレンの飛散をさらに抑制することができる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、上壁部781には、下流端排気通路Pzが排気口77の開口上縁部770で上方に広がるように、開口上縁部770から後方に凹む凹部781dが形成されているから、上壁部781の面積を大きくすることができる。従って、外気で最も冷却される排気口77の開口上縁部770に繋がる上壁部781の内壁面の温度をより短時間で上昇させることができる。また、上壁部781に沿って流れる燃焼排ガスが外気で最も冷却される排気口77の開口上縁部770に接触し難い。これにより、排気口77からのドレンの飛散をさらに抑制することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、上下方向に延びる第1排気通路P1と前後方向に延びる第2排気通路P2とによって屈曲した排気通路Pが形成されるから、燃焼排ガスが流入口811から排気口77に向かって直線的に流れるのを防止することができる。また、本実施の形態によれば、屈曲した排気通路Pが形成されているから、第2排気通路P2内を流れる燃焼排ガスの流速を抑えることができる。また、本実施の形態によれば、第1排気通路P1から第2排気通路P2に流出する燃焼排ガスの一部が膨出部827に流入するから、さらに第2排気通路P2内を流れる燃焼排ガスの流速を抑えることができる。このため、上空間部9に燃焼排ガスを円滑に流入させることができる。従って、排気口部材7の内部が冷却されているときでも、上記上壁部781の内壁面の温度を短時間で上昇させることができる。また、燃焼排ガスが第1筒部81及び第2筒部82の内壁面に接触する時間を長くすることができるから、排気口部材7の内部が冷却されているとき、排気口77よりも上流側の排気通路P内でドレンを発生させることができ、発生させたドレンを排気ダクト4に戻すことができる。これにより、排気口77からのドレンの飛散を抑制することができる。
【0050】
なお、排気口部材7は、下向き燃焼式の燃焼装置だけでなく、上向き燃焼式の燃焼装置にも適用することができる。また、空間部は、下流端排気通路Pzの上方だけでなく、下方にも設けてもよい。
【0051】
(実施の形態2)
図7に示すように、本実施の形態の排気口部材7aが適用される燃焼装置2000は、外装ケース100aと、外装ケース100a内に収容された燃焼装置本体1aとを有する。外装ケース100aは、前方開放部103aを有する矩形箱状のケース本体101aと、前方開放部103aを閉塞する前カバー102aとを備える。前カバー102aの左右中央上部には、排気口部材挿通口50aが開設されている。排気口部材挿通口50aには、排気口部材7aが挿通される。燃焼装置本体1aは、燃料ガスと空気との混合気を上向きに噴出して燃焼させ、燃焼排ガスを生成するバーナ2aと、バーナ2aの燃焼空間を囲うバーナ2aの上側の燃焼筐3aと、燃焼筐3aから排出される燃焼排ガスが流れる排気ダクト4aとを有する。燃焼筐3a内には熱交換器が収容されている。バーナ2aの下方には、ファン26aが接続されている。
【0052】
排気口部材7aは、外装ケース100aから外方(前方)に突出している。排気口部材7aは、樹脂製である。排気口部材7aは、左右方向に扁平な円筒形状を有する。
図8に示すように、排気口部材7aは、前壁部71aと、前壁部71aの周縁から後方に延びる左右方向に扁平な外筒周壁部72aとを有し、前後に開放している。前壁部71aの中央部には、外装ケース100aの前方に位置し、前方に開口する左右方向に扁平な排気口77aが開設されている。排気口部材7aの後端は、排気ダクト4aの前端と接続されている。排気ダクト4aの前端開口部40aの周縁から外方に張り出す外周フランジに、排気口部材7の後端開口部811a(以下、「流入口811a」という)の周縁から外方に張り出す外周フランジが接続されると、排気口部材7a内を前後方向に燃焼排ガスが流れる排気通路Pが形成される。
【0053】
排気口部材7aは、排気口77aの開口周縁から外筒周壁部72aの略半分の位置まで後方に延びる左右方向に扁平な内筒周壁部78aを有する。従って、内筒周壁部78aが、排気通路Pの下流端に位置する下流端排気通路Pzを画成する。内筒周壁部78aは、外筒周壁部72aによって全周が囲繞されている。また、内筒周壁部78aと外筒周壁部72aとの間には、後方に開口する開口部90a(以下、「上流側開口部90a」という)を有する環状の空間部9a(以下、「周囲空間部9a」という)が形成されている。また、周囲空間部9aは、上流側開口部90a以外で閉塞している。このため、燃焼排ガスの一部が上流側開口部90aから周囲空間部9a内に流入し、燃焼排ガスが周囲空間部9a内を流動することによって、内筒周壁部78aが加熱される。また、排気口部材7aは、周囲空間部9aの通路断面積が内筒周壁部78aによって画成される下流端排気通路Pzの通路断面積以上となるように形成されている。
【0054】
本実施の形態によれば、排気ダクト4aから流入口811aを介して排気口部材7aに流出する燃焼排ガスの一部が下流端排気通路Pzの全周を囲繞する周囲空間部9aに流入するから、下流端排気通路Pzを画成する内筒周壁部78a(周隔壁)を加熱することができる。このため、外気によって排気口部材7aの内部が冷却されているときでも、上記内筒周壁部78aの内壁面の温度を短時間で上昇させることができる。また、本実施の形態によれば、周囲空間部9aは上流側開口部90a以外で閉塞しているから、周囲空間部9a内で発生するドレンが排気口77aに向かって流れるのを防止することができる。また、周囲空間部9aの通路断面積は、下流端排気通路Pzの通路断面積以上であるから、燃焼排ガスを円滑に周囲空間部9aに流入させることができる。これにより、排気口77aからのドレンの飛散を抑制することができる。
【0055】
なお、排気口部材7aは、上向き燃焼式の燃焼装置だけでなく、下向き燃焼式の燃焼装置にも適用することができる。また、排気口部材7aは、排気通路Pが外装ケース100aから上方に延びるように設けられてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 燃焼装置本体
7 排気口部材
781 上壁部
77 排気口
770 開口上縁部
810 第1上開口部
811 流入口
826 接続部
827 膨出部
831 第2下開口部
9 上空間部
90 上流側開口部
P 排気通路
P1 第1排気通路
P2 第2排気通路
Pz 下流端排気通路
1000 燃焼装置