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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007247
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/14 20060101AFI20240111BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240111BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20240111BHJP
   B41J 11/06 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B41J11/14
B41J2/01 451
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J11/42
B41J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108620
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広信
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB13
2C056EB36
2C056EC12
2C056EC35
2C056FA02
2C056FA10
2C056HA06
2C056HA27
2C056HA44
2C058AB10
2C058AC07
2C058AC11
2C058AC12
2C058AE02
2C058AF31
2C058DA11
2C058DC09
2C058DC20
(57)【要約】
【課題】記録媒体の高さの誤検知を抑制する。
【解決手段】印刷装置は、記録媒体の支持台と略平行に延びる回動軸62と、回動軸62と略平行に延びる平坦面61aを備えるとともに回動軸62周りに回動する回動体61と、回動体61とともに回動し支持台上の記録媒体に接触する検出体63と、検出体63が予め定められた初期位置に位置している状態において平坦面61aに面接触する板バネ64と、検出体63が初期位置に位置しているかどうかを検知するセンサ66と、支持台を記録ヘッドに対して上下方向に移動させる移動装置と、を備える。回動軸62は、平坦面61aの法線方向X視において平坦面61aの内方R1を通過している。板バネ64は、検出体63が初期位置に位置している状態において平坦面61aを押している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に向かってインクを吐出する記録ヘッドと、
記録媒体を支持する支持面を備え、前記記録ヘッドの下方に設けられた支持台と、
前記支持面よりも上方に設けられ、前記支持面と略平行に延びる回動軸と、
前記回動軸と略平行に延びる平坦面を備えるとともに、前記回動軸周りに回動する回動体と、
前記回動体とともに回動し、前記支持台上の前記記録媒体に接触する検出体と、
前記検出体が予め定められた初期位置に位置している状態において前記平坦面に面接触する板バネと、
前記検出体が前記初期位置に位置しているかどうかを検知するセンサと、
前記支持台を前記記録ヘッドに対して上下方向に移動させる移動装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記移動装置を制御して、前記支持台を前記記録ヘッドに対して上方に移動させる移動制御部と、
前記検出体が前記初期位置から移動したことを前記センサが検知したときの前記支持台の上下方向の位置に基づいて前記支持台の上限位置を登録する高さ登録部と、を備え、
前記回動軸は、前記平坦面の法線方向視において前記平坦面の内方を通過しており、
前記板バネは、前記検出体が前記初期位置に位置している状態において前記平坦面を押している、印刷装置。
【請求項2】
前記回動体は、前記回動軸の軸方向視において、前記回動軸を中心とする円形から前記平坦面が切り欠かれた形状に形成されている、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記回動体は、平板状の形状を有している、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記回動体は、前記回動軸の軸方向に関して前記支持台の一方の外方に配置され、
前記検出体は、前記軸方向の長さが前記支持台よりも長く、前記軸方向の一端が前記支持台の前記一方の外方において前記回動体に連結されるとともに、前記軸方向の他端が前記支持台の他方の外方に位置している、
請求項1~3のいずれか一つに記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な厚さの記録媒体に対応可能な印刷装置が知られている。このような印刷装置の中には、記録媒体の支持台が上下方向に移動するように構成された印刷装置が含まれる。かかる印刷装置の一部のものは、記録媒体の高さを測定する機構を有し、記録媒体と記録ヘッドとが接触しない範囲でしか支持台を上下方向に移動できないように構成されている。例えば、特許文献1には、記録媒体を支持するテーブルと、テーブルを上下方向および前後方向に移動させる移動機構と、左右方向に延び記録媒体に接触する板状の検出部材と、検出部材を前後方向に揺動可能に支持する固定部材と、検出部材が傾いたことを検知するセンサと、検出部材と壁面とに係合されたバネ(コイルスプリング)と、を備えた印刷装置が開示されている。特許文献1に開示された印刷装置では、テーブルを前後方向に移動させているときに検出部材が記録媒体に接触すると、検出部材が回動する。検出部材の回動は、センサによって検出される。これにより、記録媒体が検出部材の下端以上の高さにあることが検出される。
【0003】
なお、本明細書の説明においては、支持台に載置された記録媒体が上下方向の所定の位置にあるときの支持台の上下方向位置を求めることを「記録媒体の高さを検出する」とも言い、その支持台の上下方向位置を登録することを「記録媒体の高さを登録する」とも言う。
【0004】
特許文献1によれば、検出部材に係合されたコイルスプリングは、検出部材を初期状態に戻すものであるとともに、振動により検出部材が回動してしまうのを防止するものである、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-001004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているように、例えば記録ヘッドの走行等に起因する印刷装置の振動によって記録媒体の検出体が揺動すると、記録媒体の高さの誤検出が発生し得る。コイルスプリングで検出部材に張力を付与することによって、上記したような検出体の揺動を抑制することはできる。ただし、コイルスプリングは、初期状態では、検出部材の揺動方向の両側(前方および後方)に掛かる荷重をバランスさせることにより検出部材を中立位置に静止させているため、検出体の揺動を防止する機能は高くない。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録媒体の高さの誤検出が発生しにくい印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示する印刷装置は、下方に向かってインクを吐出する記録ヘッドと、記録媒体を支持する支持面を備え前記記録ヘッドの下方に設けられた支持台と、前記支持面よりも上方に設けられ前記支持面と略平行に延びる回動軸と、前記回動軸と略平行に延びる平坦面を備えるとともに前記回動軸周りに回動する回動体と、前記回動体とともに回動し前記支持台上の前記記録媒体に接触する検出体と、前記検出体が予め定められた初期位置に位置している状態において前記平坦面に面接触する板バネと、前記検出体が前記初期位置に位置しているかどうかを検知するセンサと、前記支持台を前記記録ヘッドに対して上下方向に移動させる移動装置と、制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記移動装置を制御して前記支持台を前記記録ヘッドに対して上方に移動させる移動制御部と、前記検出体が前記初期位置から移動したことを前記センサが検知したときの前記支持台の上下方向の位置に基づいて前記支持台の上限位置を登録する高さ登録部と、を備えている。前記回動軸は、前記平坦面の法線方向視において前記平坦面の内方を通過している。前記板バネは、前記検出体が前記初期位置に位置している状態において前記平坦面を押している。
【0009】
上記印刷装置によれば、検出体ともに回動軸周りに回動する回動体は、板バネに面接触した平坦面を備え、平坦面は初期位置において板バネに押されている。回動軸が平坦面の法線方向視において平坦面の内方を通過しているため、板バネに押されていても回動体は回転せず、初期位置に静止する。この初期位置においても板バネによって回動体の平坦面に加えられている力により、回動体および検出体の揺動が効果的に抑制される。その結果、記録媒体の高さの誤検出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るプリンタを示す斜視図である。
図2】フロントカバーを開けた状態のプリンタを示す正面図である。
図3】接触検知装置の模式的な正面図である。
図4】接触検知装置の模式的な右側面図である。
図5】プリンタのブロック図である。
図6】回動体が初期位置から移動した状態の接触検知装置の右側面図である。
図7】他の形状の回動体を備えた接触検知装置の模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
[インクジェットプリンタの構成]
図1は、一実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタと呼ぶ。)10を示す斜視図である。以下の説明では、特に断らない限り、プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。主走査方向Yは左右方向である。符号Xは、副走査方向を示している。副走査方向Xは前後方向である。符号Zは、上下方向を示している。主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向Zは、互いに直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0013】
本実施形態では、プリンタ10は、インクジェット方式のプリンタである。本実施形態において、「インクジェット方式」とは、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式または圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む従来公知の各種の手法によるインクジェット式のことをいう。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、箱状に形成されている。本実施形態では、プリンタ10は、ケース11と、フロントカバー12とを備えている。図2は、フロントカバー12を開けた状態のプリンタ10を示す正面図である。図2に示すように、ケース11の前部には、開口が形成されている。フロントカバー12は、ケース11の開口を開閉自在に設けられている。ここでは、フロントカバー12は、後端を軸に回転可能なように、ケース11に支持されている。フロントカバー12には、窓部12aが設けられている。窓部12aは、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。ユーザーは、窓部12aを通じてケース11の内部空間を視認することが可能である。
【0015】
図2に示すように、プリンタ10の内部空間には、フラットベッド20と、ベッド移動装置25と、キャリッジ30と、キャリッジ移動装置35と、記録ヘッド40と、光照射装置50と、接触検知装置60と、制御装置100(図1参照)とが設けられている。
【0016】
フラットベッド20は、記録媒体5を支持する支持台である。フラットベッド20は、記録ヘッド40の下方に設けられている。実施形態に係るプリンタ10は、いわゆる、フラットベッドタイプのプリンタである。フラットベッド20は、略水平に設けられている。フラットベッド20は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びている。フラットベッド20は、上下方向Zに向いている。フラットベッド20の上面は、記録媒体5を支持する支持面20aを構成している。記録媒体5の形状は特に限定されず、平板状の他、様々な立体形状を有していてもよい。また、記録媒体5の材質も特に限定されず、記録媒体5は、例えば、木、金属、ガラス、紙、布などであってもよい。フラットベッド20は、ケース11の内部空間において、主走査方向Yのほぼ中央に配置されている。
【0017】
フラットベッド20の下方には、ベッド移動装置25が配置されている。ベッド移動装置25は、フラットベッド20を記録ヘッド40に対して上下方向Zに移動させる装置である。ここでは、ベッド移動装置25は、上下方向Zの他、副走査方向Xにもフラットベッド20を移動させる。フラットベッド20は、ベッド移動装置25によって下方から支持されている。ベッド移動装置25は、副走査方向移動装置25Xと、上下方向移動装置25Zとを備えている。上下方向移動装置25Zは、フラットベッド20を支持して上下方向Zに移動させる。上下方向移動装置25Zは、副走査方向移動装置25Xによって下方から支持されている。副走査方向移動装置25Xは、上下方向移動装置25Zを支持して副走査方向Xに移動させる。ただし、ベッド移動装置25の構成は限定されない。例えば、副走査方向移動装置25Xと上下方向移動装置25Zとは、上下の位置関係が逆でもよい。
【0018】
キャリッジ30は、記録ヘッド40および光照射装置50を搭載している。キャリッジ30は、フラットベッド20の上方に設けられている。キャリッジ30は、キャリッジ移動装置35によって主走査方向Yに移動される。キャリッジ移動装置35は、ガイドレール36と、ベルト37と、図示しない左右のプーリと、キャリッジモータ38(図5参照)とを備えている。
【0019】
図2に示すように、ガイドレール36は、主走査方向Yに延びている。キャリッジ30は、ガイドレール36に摺動自在に係合している。キャリッジ30には無端状のベルト37が固定されている。ベルト37は、ガイドレール36の右側および左側に設けられたプーリ(図示省略)に巻き掛けられている。一方のプーリにはキャリッジモータ38が取り付けられている。キャリッジモータ38が駆動するとプーリが回転し、ベルト37が走行する。それにより、キャリッジ30がガイドレール36に沿って主走査方向Yに移動する。
【0020】
図2に示すように、記録ヘッド40は、キャリッジ30の下面に設けられている。記録ヘッド40は、フラットベッド20の上方に設けられている。記録ヘッド40は、下方に向かってインクを吐出するように構成されている。記録ヘッド40は、複数のインクヘッド41~43を備えている。図示は省略するが、複数のインクヘッド41~43は、いずれも副走査方向Xに延びている。複数のインクヘッド41~43は、それぞれ、フラットベッド20に向かってインクを吐出する複数のノズルを有している。インクヘッド41~43のそれぞれにおいて、複数のノズルは副走査方向Xに並んで配置されている。
【0021】
本実施形態では、記録ヘッド40のノズルから吐出されるインクは、光硬化性のインクである。光硬化性インクは、ここでは、紫外線を照射されると硬化する紫外線硬化型のインクである。光硬化性インクの成分、特性等は特に限定されない。
【0022】
光照射装置50は、記録ヘッド40の左方に設けられている。光照射装置50は、光硬化性インクを硬化させる光をフラットベッド20に向かって照射する。光照射装置50は、例えば複数の紫外線照射LEDからなる光源(図示せず)を有している。光照射装置50には、下方に向かって開口し、光源が生成する光を透過させる照射口(図示せず)が設けられている。
【0023】
図2に示すように、本実施形態に係るプリンタ10は、記録媒体5の高さを検出する接触検知装置60を備えている。なお、前述したように、本明細書の説明においては、支持台(ここでは、フラットベッド20)に載置された記録媒体5が上下方向の所定の位置にあるときの支持台の上下方向位置を求めることを「記録媒体5の高さを検出する」とも言う。また、その支持台の上下方向位置を登録することを「記録媒体5の高さを登録する」とも言う。フラットベッド20に載置された記録媒体5が上下方向の所定位置にあるときのフラットベッド20の上下方向位置は、記録媒体5の厚さに応じて変動する。記録媒体5と記録ヘッド40との接触を防止するためには、フラットベッド20に載置された記録媒体5が記録ヘッド40よりも少し下方にあるときのフラットベッド20の上下方向位置を検出し、登録しておくことが好ましい。
【0024】
図3は、接触検知装置60の模式的な正面図である。図4は、接触検知装置60の模式的な右側面図である。図3および図4に示すように、接触検知装置60は、回動体61と、回動軸62と、検出板63と、板バネ64と、被検知板65と、センサ66と、を備えている。
【0025】
回動軸62は、回動体61および検出板63の回動軸である。図3に示すように、回動軸62は、フラットベッド20の支持面20aよりも上方に設けられ、支持面20aと略平行に延びている。ここでは、回動軸62は、主走査方向Y(フラットベッド20の移動方向である副走査方向Xに直交する方向)に延びている。回動軸62は、フラットベッド20の右方および左方に設けられた一対のフレーム13に回転可能に支持されている。一対のフレーム13は、いずれも、副走査方向Xおよび上下方向Zに延びている。回動軸62は、ここでは、右側のフレーム13に支持された回動軸と、左側のフレーム13に支持された回動軸とに分かれている。ただし、回動軸62は、右側のフレーム13と左側のフレーム13との間に架け渡された1本の回動軸であってもよい。
【0026】
回動体61は、回動軸62周りに回動する。ここでは、回動体61は、副走査方向Xに回動する。図4に示すように、本実施形態では、回動体61は、回動軸62の軸方向視(主走査方向Y視)において、回動軸62を中心とする円形から平坦面61aが切り欠かれた形状に形成されている。平坦面61aは、回動軸62と略平行に延びている。平坦面61aは、接触検知装置60に記録媒体5等が接触していない状態では、上下方向Zに延びている。平坦面61aの延びる方向は、回動体61が回動すると上下方向Zから傾斜する。以下、平坦面61aが上下方向Zに延びているときの回動体61および検出板63の位置を初期位置とも呼ぶ。ただし、平坦面61aは、回動体61および検出板63が初期位置にある状態、すなわち接触検知装置60に記録媒体5等が接触していない状態において、上下方向Z以外の方向に延びていてもよい。例えば、平坦面61aは、回動体61および検出板63が初期位置にある状態において、前後方向(副走査方向X)に延びていてもよい。なお、平坦面61aは、回動軸62と「略平行」に延びているが、ここでの「略平行」とは、例えば、10度以内のずれを含むものである。
【0027】
図3に示すように、回動体61は、回動軸62の軸方向(ここでは、主走査方向Y)に関して、フラットベッド20の一方の外方に配置されている。ここでは、回動体61は、フラットベッド20よりも右方に配置されている。後述するように、記録媒体5を検出する検出板63は主走査方向Yに長いが、回動体61の主走査方向Yの厚さは薄い。回動体61は、切り欠かれた平坦面61aを有する、薄い円板状の部材である。
【0028】
検出板63は、フラットベッド20上の記録媒体5に接触する部材であり、回動体61とともに回動する。検出板63は、ここでは、回動体61に固定されている。ただし、検出板63は、回動体61とともに回動すればよく、例えば、回動軸62に固定されていてもよい。検出板63は、フラットベッド20の支持面20aよりも上方に配置されている。検出板63は、主走査方向Yに長い平板状の部材である。検出板63は、回動軸62の軸方向(主走査方向Y)の長さがフラットベッド20よりも長い。検出板63の右端は、フラットベッド20の右方において回動体61に連結(他の部材を介した間接的な連結でもよい)されている。検出板63の左端は、フラットベッド20の左方に位置している。検出板63の左端は、ここでは、左側の回動軸62によって支持されている。検出板63は、主走査方向Yに関して、フラットベッド20の全体にわたるように設けられている。検出板63は、フラットベッド20上に載置されフラットベッド20とともに副走査方向に移動する記録媒体5と接触すると、記録媒体5に押されて副走査方向Xに回動する。
【0029】
板バネ64は、回動体61および検出板63の揺動を抑制するための部材である。板バネ64は、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びる平板状の弾性体である。板バネ64は、副走査方向Xに撓ませると、撓ませた方向と逆方向の復元力を生じる。図4に示すように、板バネ64は、検出板63が初期位置に位置している状態において回動体61の平坦面61aに面接触している。板バネ64は、回動体61の平坦面61aに面接触できる弾性体のことを意味し、板バネ64の主走査方向Yの幅は特に限定されない。板バネ64の弾性力は、フラットベッド20とともに移動する記録媒体5に検出板63が押されると、撓む程度の弾性力である。
【0030】
本実施形態では、板バネ64は、検出板63が初期位置に位置している状態において平坦面61aを押している(図4に力F1で示す)。回動軸62は、平坦面61aの法線方向視(初期位置では、副走査方向X視)において平坦面61aの内方(図4に範囲R1で示す)を通過している。そのため、板バネ64によって押されているにもかかわらず、回動体61は初期位置から回転せず、初期位置に静止している。
【0031】
被検知板65は、回動体61に固定され、回動体61とともに回動する。被検知板65は、ここでは、回動体61の下端部に接続され、そこから下方に延びている。ただし、被検知板65の位置や伸長方向は特に限定されない。被検知板65は、検出板63が回動したことを検出するためのものである。センサ66は、被検知板65が初期位置に位置しているかどうかを検知することにより、検出板63が初期位置に位置しているかどうかを検知する。検出板63が初期位置にない場合には、検出板63は、記録媒体5等の物体によって押され傾いている。
【0032】
センサ66の種類は限定されないが、ここでは、フォトインタラプタである。ただし、センサ66は、例えば、接触式のリミットスイッチ等であってもよい。センサ66は、投光器66aと受光器66bとを備えている。投光器66aと受光器66bとは、ここでは、上下方向Zに向かい合っている。回動体61が初期位置にあるとき、被検知板65は、投光器66aと受光器66bとの間に位置し、投光器66aが照射する光を遮っている。このとき、受光器66bは、投光器66aが照射する光を受光しない。回動体61が初期位置から移動すると、被検知板65は、投光器66aと受光器66bとの間から離脱する。それにより、投光器66aが照射する光が受光器66bに到達する。センサ66は、受光器66bの受光の有無により回動体61および検出板63が初期位置に位置しているかどうかを判別する。なお、センサ66は、回動体61または検出板63が初期位置にあるかどうかを、被検知板65を介さずに検知してもよい。
【0033】
図5は、プリンタ10のブロック図である。図5に示すように、制御装置100は、副走査方向移動装置25Xと、上下方向移動装置25Zと、キャリッジモータ38と、複数のインクヘッド41~43と、光照射装置50とに電気的に接続され、それらの動作を制御している。また、制御装置100は、センサ66に電気的に接続され、センサ66が送信する信号を受信している。制御装置100は、例えば、プリンタ10に接続されたコンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという。)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置100の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。また、各部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。制御装置100の構成は特に限定されない。
【0034】
図5に示すように、制御装置100は、信号受信部110と、媒体高さ登録部120とを備えている。なお、制御装置100は、例えば、印刷動作を制御する制御部などの他の制御部を備えていてもよいが、ここでは説明および図示を省略する。
【0035】
信号受信部110は、センサ66からの信号を受信するように構成されている。信号受信部110がセンサ66からの信号を受信することにより、検出板63が初期位置に位置しているかどうかが判別される。
【0036】
媒体高さ登録部120では、記録媒体5が記録ヘッド40に接触しないように、記録媒体5の高さが登録される。図5に示すように、媒体高さ登録部120は、第1移動制御部121と、第2移動制御部122と、高さ登録部123とを備えている。
【0037】
第1移動制御部121は、上下方向移動装置25Zを制御して、フラットベッド20を記録ヘッド40に対して上方に移動させる。より詳しくは、第1移動制御部121は、上下方向移動装置25Zを制御して、記録媒体5を支持したフラットベッド20を、最も低い位置から間欠的に上方に移動させる。フラットベッド20の1回の上昇距離は、好適には、5mm~10mmである。ただし、フラットベッド20の1回の上昇距離は特に限定されるわけではない。
【0038】
第2移動制御部122は、第1移動制御部121の制御によりフラットベッド20が上方に移動されるたびに、副走査方向移動装置25Xを制御して、フラットベッド20を前方に移動させる。第1移動制御部121および第2移動制御部122の制御により、フラットベッド20は、「上昇」、「前方への移動」、および「後方への戻り動作」のセットを反復する。
【0039】
高さ登録部123は、検出板63が初期位置から移動したことをセンサ66が検知したときのフラットベッド20の上下方向Zの位置に基づいてフラットベッド20の上限位置を登録する。詳しくは、フラットベッド20が副走査方向Xに移動中に検出板63が傾いたことが検知されると、プリンタ10はフラットベッド20を停止させる。続いて、検出板63が初期位置に戻ったことがセンサ66によって検知されるまで、フラットベッド20が下降される。この後、フラットベッド20は再び副走査方向Xに移動される。そして、上記と同様の検出が繰り返されて記録媒体5の最高点の高さが求められる。このときのフラットベッド20の上下方向の位置を、検出板63の下端位置と記録ヘッド40の下端位置との高さの差で補正した位置が、フラットベッド20の上限位置である。
【0040】
ただし、上限位置の求め方は、検出板63が初期位置から移動したことをセンサ66が検知したときのフラットベッド20の上下方向Zの位置に基づく限りにおいて限定されない。例えば、上限位置は、検出板63が初期位置から移動したことをセンサ66が検知したときのフラットベッド20の上下方向Zの位置よりも所定の距離だけ下方の位置とされてもよい。
【0041】
本実施形態では、プリンタ10は、印刷中、上記のようにして求められた上限位置以上にフラットベッド20を上昇させることを制御上禁止する。ただし、制御上のフラットベッド20の上昇禁止位置は、必ずしも上限位置に一致させる必要はない。制御上のフラットベッド20の上昇禁止位置は、例えば、上限位置よりも下方に設定されてもよい。
【0042】
[検出板の揺動の抑制]
以下では、本実施形態に係るプリンタ10によって検出板63の揺動が抑制できる仕組みについて説明する。
【0043】
従来の技術のように、検出部材の揺動をコイルスプリングの張力によって抑制しようとしても、コイルスプリングは、初期状態では、検出部材の揺動方向の両側(例えば、前方および後方)に掛かる荷重をバランスさせることにより検出部材を中立位置に保持している。そのため、コイルスプリングの張力を利用した接触検知装置では、検出部材の揺動を抑える効果が弱い。また、検出部材を初期位置に戻す効果も弱い。そのため、回動軸と検出部材との間の摩擦などにより、検出部材が初期位置に戻らない不具合も発生しやすい。
【0044】
それに対し、本実施形態に係るプリンタ10では、検出板63ともに回動軸62周りに回動する回動体61は、板バネ64に面接触した平坦面61aを備え、かつ、平坦面61aは初期位置において板バネ64に押されている。この初期位置においても回動体61の平坦面61aに加えられている力F1(図4参照)により、回動体61および検出板63の揺動が効果的に抑制される。その結果、記録媒体5の高さの誤検出を抑制することができる。
【0045】
上記は、回動体61の傾きがわずかであっても力F1以上の力で回動体61の回動が押し戻されることを意味する。図6は、回動体61が初期位置から移動した状態の接触検知装置60の右側面図である。なお、図6では大きな角度に図示してあるが、回動体61の回動角は、プリンタ10の振動などに起因するわずかな角度である。図6に示すように、板バネ64は、検出板63が回動し初期位置から移動すると、平坦面61aの外縁部61bを押す。これにより、回動体61の回動を押し戻す力F2が発生する。力F2は、力F1よりも大きく、かつ、回動体61を初期位置に向かって回動させようとする力である。そのため、回動体61が揺動しても、揺動角は抑制される。また、揺動の収束も早くなりやすい。
【0046】
[実施形態の他の作用効果]
本実施形態では、回動体61は、回動軸62の軸方向視(ここでは主走査方向Y視)において、回動軸62を中心とする円形から平坦面61aが切り欠かれた形状に形成されている。かかる構成によれば、回動体61を円柱状の材料から製作できるため、回動体61の製作が容易である。なお、後でいくつかの変形例を挙げるが、回動体61の形状は、円柱状に限定されるわけではない。
【0047】
本実施形態では、回動体61は、回動軸62の軸方向に関してフラットベッド20の一方の外方に配置されている。ここでは、回動体61は、主走査方向Yに関してフラットベッド20の右方に配置されている。また、検出板63は、回動軸62の軸方向の長さがフラットベッド20よりも長く、回動軸62の軸方向の一端がフラットベッド20の一方の外方において回動体61に連結されるとともに、回動軸62の軸方向の他端がフラットベッド20の他方の外方に位置している。ここでは、フラットベッド20の外方で回動体61に連結された検出板63の端部は右端であるが、左端でもよい。回動体61が配置されているのはフラットベッド20の右方であるが、フラットベッド20の左方であってもよい。かかる構成によれば、主走査方向Yに関して、検出板63がフラットベッド20の全体にわたるように設けられているため、記録媒体5がフラットベッド20上のどのような位置にあっても記録媒体5の高さを検出することができる。かつ、回動体61がフラットベッド20の外方に配置されているため、回動体61の形状や大きさの自由度が高い。例えば、回動体61の主走査方向Yの長さ(厚さ)は、検出板63の主走査方向Yの長さよりずっと小さくてもよい。また、例えば、回動体61の直径は、検出板63の高さよりも大きくてもよい。
【0048】
[他の実施形態]
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、本発明のインクジェットプリンタは、上記した実施形態には限定されない。
【0049】
例えば、上記した実施形態では、回動体61は、一部が切り欠かれた円板状の形状を有していた。しかし、回動体61は、他の形状を有していてもよい。図7は、他の形状の回動体61を備えた接触検知装置60の模式的な側面図である。図7に示すように、この態様に係る回動体61は、平板状の形状を有している。この回動体61では、平坦面61aは、平板状の回動体61の1面である。かかる構成によれば、平板状の材料から回動体61を製作できるため、回動体61の製作が容易である。
【0050】
なお、回動体61の平坦面61aは、図7に二点鎖線で示すように、中間の一部が欠落していてもよい(欠落部をハッチングで示す)。回動軸62は、平坦面61aの法線方向視において、間欠的に存在する平坦面61aの内方を通過していてもよい。
【0051】
上記した実施形態では、フラットベッド20が副走査方向Xおよび上下方向Zに移動したが、それには限定されない。記録媒体の支持台と記録ヘッドとの位置関係は相対的なものであり、位置関係を変化させる際に支持台と記録ヘッドとのうちのいずれを移動させるかは限定されない。支持台と記録ヘッドとの位置関係を変化させる移動装置は、支持台および記録ヘッドのうちの少なくとも一方を移動させることにより支持台を記録ヘッドに対して移動させるように構成されていればよく、それ以上限定されない。例えば、移動装置は、記録ヘッドを上下方向、および、回動体の回動軸の軸方向と直交する方向に移動させるように構成されていてもよい。
【0052】
その他、特に言及がない限り、実施形態は本発明を限定しない。
【符号の説明】
【0053】
5 記録媒体
10 プリンタ(印刷装置)
20 フラットベッド(支持台)
25 ベッド移動装置(移動装置)
25X 副走査方向移動装置
25Z 上下方向移動装置
40 記録ヘッド
60 接触検知装置
61 回動体
61a 平坦面
62 回動軸
63 検出板(検出体)
64 板バネ
66 センサ
100 制御装置
121 第1移動制御部(移動制御部)
122 第2移動制御部
123 高さ登録部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7