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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072470
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20240521BHJP
   C23F 1/02 20060101ALI20240521BHJP
   C23F 1/08 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H01L21/306 Z
C23F1/02
C23F1/08 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183297
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】森田 康生
【テーマコード(参考)】
4K057
5F043
【Fターム(参考)】
4K057WA20
4K057WB01
4K057WB11
4K057WM20
4K057WN01
5F043AA26
5F043BB18
5F043DD30
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE32
5F043EE36
5F043GG10
(57)【要約】
【課題】対象領域に付着した、ルテニウムを含む導電膜を容易に除去する。
【解決手段】基板処理装置は、ルテニウムを含む導電膜93が少なくとも周縁部に設けられた基板9を保持する基板保持部と、ルテニウムよりも貴な金属により形成される貴金属部51を有し、周縁部上の導電膜93において所定の対象領域911に隣接した隣接領域に貴金属部51を接触させる貴金属部接触機構と、導電膜93の対象領域911に電解液71を供給することにより、電解液71が対象領域911と貴金属部51とに接触する状態を形成する電解液供給部とを備える。これにより、対象領域911に付着した、ルテニウムを含む導電膜93を、ガルバニック腐食を利用して容易に除去することができる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置であって、
ルテニウムを含む導電膜が少なくとも周縁部に設けられた基板を保持する基板保持部と、
ルテニウムよりも貴な金属により形成される貴金属部を有し、前記周縁部上の前記導電膜において所定の対象領域に隣接した隣接領域に前記貴金属部を接触させる貴金属部接触機構と、
前記導電膜の前記対象領域に電解液を供給することにより、前記電解液が前記対象領域と前記貴金属部とに接触する状態を形成する電解液供給部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記対象領域への供給前の前記電解液に酸素を溶解させる酸素溶解部をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記基板が円板状であり、前記導電膜が前記基板の一の主面に広がっており、
前記貴金属部接触機構が、直径が前記基板よりも小さく、かつ、少なくとも表面が前記貴金属部である円板部材を有し、前記円板部材の中心が前記基板の中心に一致する状態で、前記円板部材を前記基板の前記主面に接触させることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記基板が円板状であり、
前記貴金属部接触機構が、少なくとも表面が前記貴金属部であるローラを有し、前記基板の前記周縁部に前記ローラを接触させ、
前記周縁部と前記ローラとが接触した状態を維持しつつ、前記基板の中心を中心として前記基板が前記ローラに対して相対的に回転することを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記貴金属部が弾性部材の表面に設けられたシート状であり、
前記貴金属部接触機構が、前記隣接領域に前記貴金属部を接触させる際に、前記弾性部材の前記表面が前記基板に沿って変形することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記貴金属部がメッシュ状であり、前記導電膜の前記対象領域がメッシュ開口に対向する領域であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理装置であって、
前記貴金属部が多孔質部材の表面に設けられ、前記多孔質部材の気孔を介して前記メッシュ開口に前記電解液が供給されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
基板処理方法であって、
ルテニウムを含む導電膜が少なくとも周縁部に設けられた基板を準備する工程と、
ルテニウムよりも貴な金属により形成される貴金属部を、前記周縁部上の前記導電膜において所定の対象領域に隣接した隣接領域に接触させる工程と、
前記導電膜の前記対象領域に電解液を供給することにより、前記電解液が前記対象領域と前記貴金属部とに接触する状態を形成する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の製造工程では、基板に対して様々な処理が施される。例えば、基板の主面に導電膜を形成した後に、当該基板のベベル部等に付着した導電膜を除去する処理が行われる。なお、特許文献1では、基板上の金属部の溶解を抑制する基板処理方法が開示されている。当該方法では、処理液に溶解している酸素を減少させて低酸素処理液が生成され、第1金属部と、第1金属部よりも貴である第2金属部とが主面上で接触する基板に、低酸素処理液を供給して当該主面の処理が行われる。これにより、第2金属部における酸素還元反応が抑制され、第1金属部の溶解が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-192708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、基板上のデバイスの微細化等に伴い、導電膜の材料としてルテニウム(Ru)が注目されている。ルテニウムは、塩酸や水酸化ナトリウムのような酸またはアルカリの水溶液中に単に浸漬するだけでは除去することが難しい。したがって、ベベル部等の所定領域に付着した、ルテニウムを含む導電膜を容易に除去する手法が求められている。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、所定領域に付着した、ルテニウムを含む導電膜を容易に除去することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様1は、基板処理装置であって、ルテニウムを含む導電膜が少なくとも周縁部に設けられた基板を保持する基板保持部と、ルテニウムよりも貴な金属により形成される貴金属部を有し、前記周縁部上の前記導電膜において所定の対象領域に隣接した隣接領域に前記貴金属部を接触させる貴金属部接触機構と、前記導電膜の前記対象領域に電解液を供給することにより、前記電解液が前記対象領域と前記貴金属部とに接触する状態を形成する電解液供給部とを備える。
【0007】
本発明の態様2は、態様1の基板処理装置であって、前記対象領域への供給前の前記電解液に酸素を溶解させる酸素溶解部をさらに備える。
【0008】
本発明の態様3は、態様1または2の基板処理装置であって、前記基板が円板状であり、前記導電膜が前記基板の一の主面に広がっており、前記貴金属部接触機構が、直径が前記基板よりも小さく、かつ、少なくとも表面が前記貴金属部である円板部材を有し、前記円板部材の中心が前記基板の中心に一致する状態で、前記円板部材を前記基板の前記主面に接触させる。
【0009】
本発明の態様4は、態様1または2(態様1ないし3のいずれか1つであってもよい。)の基板処理装置であって、前記基板が円板状であり、前記貴金属部接触機構が、少なくとも表面が前記貴金属部であるローラを有し、前記基板の前記周縁部に前記ローラを接触させ、前記周縁部と前記ローラとが接触した状態を維持しつつ、前記基板の中心を中心として前記基板が前記ローラに対して相対的に回転する。
【0010】
本発明の態様5は、態様1または2(態様1ないし4のいずれか1つであってもよい。)の基板処理装置であって、前記貴金属部が弾性部材の表面に設けられたシート状であり、前記貴金属部接触機構が、前記隣接領域に前記貴金属部を接触させる際に、前記弾性部材の前記表面が前記基板に沿って変形する。
【0011】
本発明の態様6は、態様1または2(態様1ないし5のいずれか1つであってもよい。)の基板処理装置であって、前記貴金属部がメッシュ状であり、前記導電膜の前記対象領域がメッシュ開口に対向する領域である。
【0012】
本発明の態様7は、態様6の基板処理装置であって、前記貴金属部が多孔質部材の表面に設けられ、前記多孔質部材の気孔を介して前記メッシュ開口に前記電解液が供給される。
【0013】
本発明の態様8は、基板処理方法であって、ルテニウムを含む導電膜が少なくとも周縁部に設けられた基板を準備する工程と、ルテニウムよりも貴な金属により形成される貴金属部を、前記周縁部上の前記導電膜において所定の対象領域に隣接した隣接領域に接触させる工程と、前記導電膜の前記対象領域に電解液を供給することにより、前記電解液が前記対象領域と前記貴金属部とに接触する状態を形成する工程とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、対象領域に付着した、ルテニウムを含む導電膜を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】基板処理システムのレイアウトを示す図である。
図2】第1の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
図3】基板および貴金属部接触機構を示す平面図である。
図4】円板案内部を示す断面図である。
図5】基板処理装置における基板の処理の流れを示す図である。
図6】基板の処理を説明するための図である。
図7】基板の周縁部近傍を示す図である。
図8】ガルバニック腐食を説明するための図である。
図9】円板案内部を示す断面図である。
図10】円板部材の他の例を示す図である。
図11】第2の実施の形態に係る貴金属部接触機構を示す図である。
図12】基板および貴金属部接触機構を示す平面図である。
図13】ローラの他の例を示す図である。
図14】ローラの他の例を示す図である。
図15】複数のローラの配置を示す図である。
図16】第3の実施の形態に係る貴金属部接触機構を示す図である。
図17】基板および貴金属部接触機構を示す平面図である。
図18】クランプ部を示す図である。
図19】基板および貴金属部接触機構を示す平面図である。
図20】貴金属シートの他の例を示す図である。
図21】基板処理装置の他の例を示す図である。
図22】基板および弾性部材を示す平面図である。
図23】基板の周縁部近傍を示す図である。
図24A】貴金属シートおよび導電膜を示す図である。
図24B】貴金属シートおよび導電膜を示す図である。
図25】基板処理装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、基板処理システム10のレイアウトを示す図である。基板処理システム10は、円板状の半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)を処理するシステムである。基板処理システム10は、インデクサブロック101と、インデクサブロック101に結合された処理ブロック102とを備える。
【0017】
インデクサブロック101は、キャリア保持部104と、インデクサロボット105と、IR移動機構106とを備える。キャリア保持部104は、それぞれが複数枚の基板9を収容可能な複数のキャリア107を保持する。複数のキャリア107(例えば、FOUP)は、所定のキャリア配列方向に配列された状態でキャリア保持部104に保持される。IR移動機構106は、キャリア配列方向にインデクサロボット105を移動させる。インデクサロボット105は、基板9をキャリア107から搬出する搬出動作、および、キャリア107に基板9を搬入する搬入動作を行う。基板9は、インデクサロボット105によって水平な姿勢で搬送される。
【0018】
処理ブロック102は、基板9を処理する複数(例えば、4つ以上)の処理ユニット108と、センターロボット109とを備える。複数の処理ユニット108は、平面視において、センターロボット109を取り囲むように配置される。複数の処理ユニット108では、基板9に対する様々な処理が施される。後述する基板処理装置は、複数の処理ユニット108のうちの1つである。センターロボット109は、インデクサロボット105との間で基板9の受け渡しを行う。また、センターロボット109は、処理ユニット108に基板9を搬入する搬入動作、および、基板9を処理ユニット108から搬出する搬出動作を行う。センターロボット109は、複数の処理ユニット108間での基板9の搬送も行う。基板9は、センターロボット109によって水平な姿勢で搬送される。
【0019】
図2は、第1の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す図である。図2では、基板処理装置1の構成の一部を、所定の中心軸J1を含む面における断面にて示す。基板処理装置1は、基板9を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板9の周縁部に対してエッチングを行う。基板9の周縁部は、エッジ端面(apex)、ベベル部、並びに、後述の上面91および下面92におけるベベル部近傍の部位を含む。
【0020】
基板処理装置1は、スピンチャック2と、処理液供給ユニット3と、カップ部4と、貴金属部接触機構6と、ハウジング11と、制御部19とを備える。スピンチャック2、処理液供給ユニット3の一部、カップ部4、貴金属部接触機構6等は、ハウジング11の内部空間に収容される。ハウジング11の天蓋部には、当該内部空間にガスを供給して下方に流れる気流(いわゆる、ダウンフロー)を形成する気流形成部12が設けられる。気流形成部12としては、例えば、FFU(ファン・フィルタ・ユニット)が利用される。制御部19は、ハウジング11の外部に配置され、基板処理装置1の各構成を制御する。制御部19は、例えば、CPU、メモリ等を有するコンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される。制御部19の一部または全部が、プログラマブルロジックコントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)等により実現されてもよい。
【0021】
図2に示すスピンチャック2は、チャック部21と、基板回転機構22とを備える。チャック部21は、略円板状であり、水平状態の基板9を下側から保持する。チャック部21は、例えば、バキュームチャックであり、基板9の下側の主面(以下、「下面92」とも呼ぶ。)の中央部に接触して吸着する。典型的には、チャック部21の直径は、基板9の直径よりも小さい。
【0022】
基板9の上側の主面(以下、「上面91」とも呼ぶ。)には、導電性を有する膜である導電膜93が設けられる。導電膜93は、基板9の上面91の略全体に広がり、基板9の周縁部にも付着する。図2では、導電膜93を太線にて示す。導電膜93は、ルテニウム(Ru)を含む。導電膜93は、ルテニウムを含む膜であればよく、ルテニウムの単体の膜以外に、ルテニウムの化合物を含む膜であってもよい。本実施の形態では、導電膜93の略全体がルテニウムの単体により形成される。
【0023】
基板回転機構22は、チャック部21の下方に配置される。基板回転機構22は、上下方向に略平行に延びる中心軸J1を中心として、基板9をチャック部21と共に回転させる。基板回転機構22は、シャフト221と、モータ222とを備える。シャフト221は、中心軸J1を中心とする略円柱状または略円筒状の部材である。シャフト221は、上下方向に延び、チャック部21の下面中央部に接続される。モータ222は、シャフト221を回転させる電動回転式モータである。なお、基板回転機構22は、他の構造を有するモータ(例えば、中空モータ等)であってもよい。
【0024】
処理液供給ユニット3は、基板9に対して処理液を供給して、基板9に対する液処理を行う。処理液は、後述の洗浄液および電解液を含む。処理液供給ユニット3は、ノズル31と、洗浄液供給源32と、電解液タンク33と、酸素溶解部34とを備える。ノズル31は、図示省略のノズル移動機構により支持される。当該ノズル移動機構は、例えば、モータおよびボールねじ等を有し、基板9の上方の供給位置と、基板9よりも径方向(中心軸J1を中心とする径方向)外側の退避位置との間で、ノズル31を略水平に移動する。
【0025】
ノズル31は、弁321が設けられた洗浄液ラインを介して洗浄液供給源32に接続される。洗浄液供給源32は、ノズル31に洗浄液を供給する。洗浄液は、例えば、DIW(脱イオン水)等の純水である。洗浄液は、IPA等の有機溶剤や、他の種類の液体であってもよい。ノズル31は、電解液ラインを介して電解液タンク33にも接続される。電解液ラインには、酸素溶解部34および弁331が設けられる。電解液タンク33には、電解液が貯溜される。電解液タンク33は、ノズル31に電解液を供給する。電解液は、例えば、塩化水素(HCl)または塩化アンモニウム(NHCl)等を溶質として含む水溶液である。当該溶質の濃度は、例えば、5wt%以上であり、好ましくは、10wt%以上である。当該溶質の濃度の上限は、特に限定されないが、例えば、25wt%である。後述するように、電解液は、酸性であることが好ましい。電解液は、導電性を向上する添加剤を含んでもよい。当該添加剤の一例は、塩化アンモニウム等である。
【0026】
酸素溶解部34は、電解液タンク33とノズル31との間において、ノズル31への供給直前の電解液に酸素を溶解させる。一例では、電解液中に酸素の気泡を供給することにより、酸素が溶解した電解液が得られる。電解液への酸素の溶解は、他の手法により行われてもよい。電解液の酸素濃度は、例えば、5ppm以上であり、好ましくは、10ppm以上である。電解液の酸素濃度の上限は、特に限定されないが、例えば、15ppmである。
【0027】
カップ部4は、カップ41と、図示省略のカップ昇降機構とを備える。カップ41は、中心軸J1を中心とする環状の部材である。カップ41は、基板9およびチャック部21の周囲において、周方向(中心軸J1を中心とする周方向)の全周に亘って配置され、基板9およびチャック部21の側方および下方を覆う。カップ41は、回転中の基板9から周囲に向かって飛散する処理液等の液体を受ける受液容器である。カップ41の内側面は、例えば撥水性材料により形成される。カップ41は、基板9の回転および静止に関わらず、周方向において静止している。カップ41の底部には、カップ41にて受けられた処理液等をハウジング11の外部へと排出する排液ポート(図示省略)が設けられる。
【0028】
カップ昇降機構は、カップ41をチャック部21に対して相対的に上下方向に移動する。カップ昇降機構は、例えば、モータまたはエアシリンダ等を駆動源として有する。カップ41は、カップ昇降機構により、図2に示す基板9の周囲の位置である処理位置と、当該処理位置よりも下側の退避位置との間で上下方向に移動可能である。カップ部4は、径方向に積層される複数のカップ41を備えてもよい。カップ部4が複数のカップ41を備える場合、複数のカップ41はそれぞれ独立して上下方向に移動可能であり、基板9から飛散する処理液の種類に合わせて、複数のカップ41が切り替えられて処理液の受液に使用される。
【0029】
図3は、基板9および貴金属部接触機構6の一部を示す平面図である。図2および図3に示すように、貴金属部接触機構6は、円板部材51と、複数の円板案内部61と、円板搬送部62とを備える。円板部材51は、基板9の直径よりも小さい直径を有する円板状の部材である。図2では、円板搬送部62により円板部材51を保持した状態を示し、図3では、円板部材51を基板9の上面91に載置した状態を示す。円板部材51は、ルテニウムよりも貴な金属(後述の電解液71中における自然電位がルテニウムよりも貴な金属)により形成される貴金属部である。当該金属は、例えば、金(Au)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属である。
【0030】
複数の円板案内部61は、基板9の周囲において周方向に等角度間隔にて配置される。図3の例では、6個の円板案内部61が60度間隔にて配列される。円板案内部61の詳細については後述する。図2に示す円板搬送部62は、円板チャック部621と、円板移動機構(図示省略)とを備える。円板チャック部621は、例えば、バキュームチャックであり、円板部材51の上面の中央部に接触して吸着する。円板移動機構は、例えば、モータおよびボールねじ等を有し、円板チャック部621を上下方向および径方向に移動可能である。ハウジング11内には、円板部材51を収容する収容部が設けられており、円板搬送部62は、当該収容部から円板部材51を取り出して、基板9の上面91の上方へと搬送する。
【0031】
図4は、1つの円板案内部61の構成を示す図であり、図3中の矢印IV-IVの位置における基板9および円板案内部61の断面を示す。以下、1つの円板案内部61に注目して円板案内部61の構造を説明するが、他の円板案内部61も、同じ構造を有する。円板案内部61は、アーム部611と、基板支持部613と、案内部材615と、位置調整機構617とを備える。アーム部611は、径方向(図4中の横方向)に延びる部材であり、アーム移動機構(図示省略)により支持される。アーム移動機構は、例えば、モータおよびボールねじ等を有し、アーム部611を、径方向(アーム部611の長手方向)および上下方向に移動可能である。アーム部611において径方向内側(すなわち、基板9側)の端部612の下面には、位置調整機構617を介して案内部材615が取り付けられる。位置調整機構617は、例えば、モータおよびボールねじ等を有し、案内部材615を径方向に移動可能である。案内部材615において径方向内方を向く面は、上側から下方に向かうに従って径方向内側に位置する傾斜面616である。後述するように、円板部材51を基板9の上面91に接触させる際には、傾斜面616により円板部材51が案内される。
【0032】
アーム部611の下面において、位置調整機構617に対して径方向外側に隣接した位置には、基板支持部613が取り付けられる。基板支持部613は、L字状の部材であり、アーム部611の下面から下方に延びる第1部位と、第1部位の先端から径方向内方に延びる第2部位とを有する。第2部位の先端面(径方向内側の端面)には、径方向外方に向かって窪む切欠部614が設けられる。基板9の周縁部に対するエッチング時には、切欠部614が基板9の周縁部に接触する。
【0033】
次に、基板処理装置1における基板9の処理の流れについて、図5を参照しつつ説明する。基板9の処理では、制御部19により各構成が制御される。まず、基板処理装置1に基板9が搬入され、チャック部21上に載置される(ステップS11)。これにより、導電膜93が設けられた基板9が準備される。このとき、ノズル31、複数の円板案内部61および円板チャック部621は、基板9の搬出入を阻害しない退避位置に配置される。
【0034】
基板9が搬入されると、アーム移動機構がアーム部611を移動することにより、複数の円板案内部61が基板9の周囲(すなわち、径方向外側)に配置される。チャック部21による真空吸着を解除した状態で、複数の円板案内部61のうち、一部の円板案内部61の基板支持部613が、基板9の周縁部に接触する。6個の円板案内部61が設けられる図3の例では、周方向に1つ置きに配置される3個の円板案内部61(すなわち、120度間隔にて配置される3個の円板案内部61)において、基板支持部613の切欠部614(図4参照)が基板9の周縁部に接触する。以下の説明では、上記3個の円板案内部61の集合を「第1円板案内部群」といい、残りの3個の円板案内部61の集合を「第2円板案内部群」という。このとき、第1円板案内部群の複数の円板案内部61では、基板支持部613が基板9の周縁部を径方向内方に略同じ力で押すことにより、基板9の中心と中心軸J1とが平面視において略一致する。このようにして、基板9のセンタリングが行われるとともに、第1円板案内部群により基板9が保持される(ステップS12)。
【0035】
続いて、ノズル31が基板9の上方の供給位置に配置され、基板9の上面91の中央部に洗浄液が供給される。洗浄液は基板9の上面91全体に広がり、基板9の前洗浄が行われる(ステップS13)。基板9の前洗浄が所定の時間行われると、ノズル31からの洗浄液の供給が停止される。なお、基板9の前洗浄は省略されてもよい。ノズル31が退避位置に移動した後、円板搬送部62により円板部材51が、基板9の上面91の上方に搬送される。円板部材51は、上面91に近接する位置まで下降した後、円板チャック部621による円板部材51の真空吸着が解除される。
【0036】
このとき、第1円板案内部群の各円板案内部61では、図4に示すように、位置調整機構617により案内部材615の傾斜面616の下端位置が、基板9の外縁よりも僅かに径方向内側に配置されている。詳細には、第1円板案内部群の3個の円板案内部61では、径方向における傾斜面616の下端位置は略同じであり、円板部材51の半径よりも僅かに大きい。円板チャック部621から離れた円板部材51は、当該3個の円板案内部61における傾斜面616に案内され、基板9の中心と円板部材51の中心とが平面視において略一致した状態で、基板9の上面91上に載置される。このようにして、貴金属部である円板部材51が、上面91に設けられた導電膜93と接触する(ステップS14)。基板9の導電膜93では、円板部材51の外側の領域のみが円板部材51から露出する。後述するように、導電膜93において円板部材51の外側の領域が、エッチングの対象となる領域であるため、以下、当該領域を「対象領域」という。
【0037】
円板チャック部621が基板9の上方から退避した後、ノズル31が基板9の上方の供給位置に配置される。このとき、ノズル31は、円板部材51の上面に対向する。そして、図6に示すように、ノズル31から円板部材51の上面に向けて電解液71が連続的に吐出される。電解液71は、円板部材51の上面の全体に広がり、図7に示すように、円板部材51の外縁から径方向外側に流れる。電解液71は、基板9上の導電膜93において円板部材51から露出した対象領域911に流れ込み、基板9の外縁からカップ41内に流れ落ちる。このようにして、対象領域911に電解液71が供給される(ステップS15)。実際には、電解液71は、基板9のエッジ端面90を伝って下面92側にも回り込み、周縁部のほぼ全体が電解液71に覆われる。既述のように、ノズル31から電解液71が連続的に吐出されるため、円板部材51の上面、および、導電膜93の対象領域911に電解液71が接触した状態が維持される。
【0038】
ここで、ガルバニック腐食(すなわち、異種金属接触腐食)について説明する。図8は、ガルバニック腐食を説明するための図である。図8では、第1金属81と、第1金属81よりも貴な第2金属82とが界面83にて互いに接触し、さらに、電解液71が界面83の近傍において第1金属81および第2金属82の双方に接触する。この場合、第1金属81と第2金属82との自然電位の差により、図8中に矢印A1にて示すように、第1金属81と第2金属82との間で電解液71を介してガルバニック電流が流れ、図8中に矢印A2にて示すように、第1金属81と第2金属82との間で界面83を介して電子電流が流れる。これにより、界面83の近傍において、相対的に卑な第1金属81が電解液71に溶解する、すなわち、腐食(エッチング)される。図8では、第1金属81においてエッチングされた領域に平行斜線を付す。
【0039】
詳細には、第2金属82の表面では、電解液71中の酸素および水、並びに、第2金属82中の電子により、式(1)に示すカソード反応が発生する。また、第1金属81の表面では、式(2)に示すように、第1金属81がイオンとなって電解液71中に溶出し、電子が第2金属82に供給されるアノード反応が発生する。実際には、第1金属81と第2金属82との間の自然電位の差が大きいほど、第1金属81のエッチングが加速される。なお、貴な第2金属82についてはエッチングが抑制される(実質的に、エッチングは生じない)。式2および図8中では、便宜上、第1金属81を「Me」と表している。
【0040】
1/2O+HO+2e→2OH ・・・(1)
Me→Men++ne ・・・(2)
図7の例では、導電膜93と、貴金属部である円板部材51とが基板9の上面91にて互いに接触し、さらに電解液71が円板部材51の外縁近傍において導電膜93および円板部材51の双方に接触する。したがって、円板部材51の外縁近傍において、電解液71に接触する導電膜93の部位、すなわち、対象領域911における導電膜93が電解液71に溶解し、エッチングされる。実際には、電解液71に接触する導電膜93の領域のうち、貴金属部(円板部材51)に近い位置ほどエッチングされやすくなる。したがって、導電膜93において、エッチング対象の対象領域911に対して隣接した隣接領域が、貴金属部と接触することが重要となる。図7の例では、導電膜93において対象領域911に隣接した隣接領域は、円板部材51の外縁部と接触する領域である。なお、ルテニウムにより形成される導電膜93では、上記式(2)は、(Ru→Ru3++3e)と表される。
【0041】
ガルバニック腐食を利用したエッチングでは、貴金属部の表面で発生するカソード反応量に対応して、ルテニウムのアノード反応(導電膜93のエッチング反応)が発生する。円板部材51の下面全体が導電膜93に接触する図6の例では、両者の電解液71との接触面積がそれぞれ大きいため、カソード反応量が増大し、それにともなってアノード反応量も増大することで、対象領域911における導電膜93のエッチングレートが高くなる。また、酸素溶解部34により、ノズル31への供給直前の電解液71に酸素が溶解されるため、式(1)のカソード反応が促進され、エッチングレートがさらに高くなる。
【0042】
ところで、電解液がアルカリ性である場合、水酸化物イオン(OH)が生じにくくなる。したがって、カソード反応を促進してエッチングレートを向上するには、電解液71が酸性であることが好ましい。また、電解液71が導電性を向上する添加剤を含む場合、ガルバニック電流が流れやすくなり、エッチングレートが向上する。したがって、電解液71が、このような添加剤を含むことが好ましい。
【0043】
図4に示すように、第1円板案内部群の各円板案内部61では、基板支持部613の切欠部614が基板9の周縁部に接触するため、接触部分において導電膜93のエッチングが阻害される。そこで、貴金属部接触機構6では、電解液71の供給開始から所定時間経過後に、基板9を保持する円板案内部61が、第1円板案内部群から第2円板案内部群に切り替えられる。具体的には、第1円板案内部群の複数の円板案内部61により基板9を保持した状態で、第2円板案内部群に含まれる複数の円板案内部61の基板支持部613が、基板9の周縁部に接触する。その後、第1円板案内部群の円板案内部61の基板支持部613が、基板9の周縁部から離れる。これにより、第1円板案内部群の円板案内部61と接触していた導電膜93の部位に対するエッチングが進行する。複数の円板案内部61は、エッチングの際に基板9を保持する基板保持部である。なお、第1円板案内部群と第2円板案内部群との間で、基板9を保持する円板案内部61を切り替える動作は、複数回行われてもよい。
【0044】
電解液71の吐出開始から所定の時間が経過すると、ノズル31において電解液71の吐出が停止される。ノズル31が退避した後、円板搬送部62の円板チャック部621(図2参照)が、基板9の上方に配置される。円板チャック部621が下降し、円板部材51に接触すると、真空吸着により円板部材51が円板チャック部621に保持される。円板チャック部621および円板部材51は上昇し、その後、退避位置に移動する。このようにして、円板部材51が基板9の導電膜93から離される(ステップS16)。
【0045】
続いて、第2円板案内部群(第1円板案内部群であってもよい。)に保持された基板9が、チャック部21に移載され、真空吸着によりチャック部21に保持される。複数の円板案内部61は、基板9から離れ、退避位置に配置される。その後、基板回転機構22により基板9がチャック部21と共にゆっくりと回転する。図6に示すように、基板9の周縁部の上方には撮像部18が設けられており、基板9の周縁部の画像が全周に亘って取得される。周縁部の画像は、制御部19に入力され、周縁部の状態が確認される(ステップS17)。具体的には、対象領域911の全体において導電膜93が除去されているか否かが確認される。対象領域911における導電膜93の有無は、周知の検査アルゴリズムにより取得可能である。
【0046】
対象領域911に導電膜93が残存する場合には(ステップS18)、エッチングが不十分であるため、上記ステップS14~S17が繰り返される。対象領域911の全体において導電膜93が除去されると(ステップS18)、ノズル31が基板9の上方の供給位置に配置される。そして、ノズル31から基板9の上面91の中央部に向けて洗浄液が供給される。また、基板回転機構22により基板9が所定の回転速度で回転される。これにより、洗浄液が基板9の上面91全体に広がり、基板9の周縁部に付着している電解液71等を洗い流す後洗浄が行われる(ステップS19)。洗浄液は、基板9の回転による遠心力によって基板9の周縁部から径方向外方へと飛散し、カップ41により回収される。
【0047】
基板9に対する後洗浄が所定の時間行われると、ノズル31からの洗浄液の供給が停止される。その後、基板9の回転速度がさらに増大され、基板9上の洗浄液が振り切られて除去される。すなわち、基板9の乾燥処理が行われる(ステップS20)。基板9の乾燥処理が終了すると、基板9の回転が停止され、基板9が基板処理装置1から搬出される(ステップS21)。なお、上記処理では、基板9の上面91の導電膜93が、中央部から周縁部に亘って連続していることが好ましいため、上記処理は、CMP処理等、中央部の導電膜93を除去する処理の前に行われる。
【0048】
ところで、円板部材51を利用する上記エッチングでは、円板部材51の外縁から径方向外方に離れるに従って、導電膜93がエッチングされにくくなる。したがって、周縁部において導電膜93を除去すべき径方向の幅が大きい場合には、直径が僅かに異なる複数の円板部材51が用いられる。具体的には、まず、直径が最も大きい第1円板部材51が基板9の上面91に載置され、第1円板部材51の外縁近傍における導電膜93の対象領域に対してエッチングが行われる(ステップS14~S17)。
【0049】
当該対象領域に対するエッチングが完了すると(ステップS18)、直径が2番目に大きい第2円板部材51が基板9の上面91に載置され、第2円板部材51の外縁近傍における導電膜93の対象領域に対してエッチングが行われる(ステップS14~S17)。このとき、第2円板部材51を用いたステップS14では、図9に示すように、位置調整機構617により案内部材615の傾斜面616の下端位置が、第2円板部材51の直径に合わせて、第1円板部材51の使用時の位置(図9中に二点鎖線にて示す位置)よりも径方向内側に配置される。これにより、基板9の中心と第2円板部材51の中心とが平面視において略一致した状態で、第2円板部材51が基板9の上面91に載置される。
【0050】
以上のように、直径が異なる複数の円板部材51を準備し、直径が小さくなる順に当該複数の円板部材51を用いてエッチングを行うことにより、周縁部において導電膜93を除去する径方向の幅をある程度調整することが可能となる。なお、円板部材51は、必ずしも全体が、ルテニウムよりも貴な金属により形成される(すなわち、円板部材51の全体が貴金属部である)必要はなく、図10のように、例えば、円板部材51の本体511が、柔らかい樹脂により形成され、当該貴な金属により形成されるめっき層512が、貴金属部として本体511の表面に設けられてもよい。このように、円板部材51では、少なくとも表面が貴金属部であればよい。
【0051】
以上に説明したように、第1の実施の形態に係る基板処理装置1では、貴金属部接触機構6が、ルテニウムよりも貴な金属により形成される貴金属部(上記では、円板部材51)を有し、基板9の周縁部上の導電膜93において所定の対象領域911に隣接した隣接領域に貴金属部を接触させる。そして、電解液供給部である処理液供給ユニット3が、導電膜93の対象領域911に電解液71を供給することにより、電解液71が対象領域911と貴金属部とに接触する状態が形成される。その結果、対象領域911に付着した、ルテニウムを含む導電膜93を、ガルバニック腐食を利用して容易に除去することができる。
【0052】
具体的には、貴金属部接触機構6が、直径が基板9よりも小さく、かつ、少なくとも表面が貴金属部である円板部材51を有する。そして、円板部材51の中心が基板9の中心に一致する状態で、貴金属部接触機構6が、円板部材51を基板9の上面91に接触させる。これにより、円板部材51と導電膜93、電解液71との接触面積をそれぞれ大きくしてガルバニック腐食を促進させることができ、導電膜93を効率よく除去することができる。
【0053】
好ましい基板処理装置1では、対象領域911への供給前の電解液71に酸素を溶解させる酸素溶解部34が設けられる。これにより、ガルバニック腐食を促進させて導電膜93をさらに効率よく除去することができる。
【0054】
上記基板処理方法は、導電膜93が設けられた基板9を準備する工程(ステップS11)と、周縁部上の導電膜93において所定の対象領域911に隣接した隣接領域に貴金属部を接触させる工程(ステップS14)と、導電膜93の対象領域911に電解液71を供給することにより、電解液71が対象領域911と貴金属部とに接触する状態を形成する工程(ステップS15)とを含む。これにより、対象領域911に付着した、ルテニウムを含む導電膜93を容易に除去することができる。
【0055】
また、ガルバニック腐食を利用する上記手法では、貴金属部については腐食が進行せず、消費されないため、貴金属部を交換する必要が無い。したがって、安価な電解液71を交換するだけで導電膜93のエッチングを繰り返すことができ、ランニングコストを削減することができる。さらに、円板部材51を用いる上記手法は、エッチングの際に基板9を回転する必要がないため、複数の基板9を一度に処理するバッチ処理方式を採用することも可能であり、この場合、スループットを大幅に向上することが可能となる。
【0056】
図11および図12は、第2の実施の形態に係る基板処理装置1aにおける貴金属部接触機構6aの構成を示す図である。図11では、貴金属部接触機構6aの1つのローラ支持ユニット63を示し、図12では、平面視した基板9および貴金属部接触機構6aの一部を示す。基板処理装置1aでは、図2の基板処理装置1における円板部材51に代えて、複数のローラ53が用いられる。また、貴金属部接触機構6aの構成が図2と相違し、処理液供給ユニット3が複数の電解液ノズル31aをさらに有する。基板処理装置1aの他の構成は、基板処理装置1と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0057】
図12に示すように、貴金属部接触機構6aは、複数のローラ支持ユニット63を備える。複数のローラ支持ユニット63は、基板9の周囲において周方向に等角度間隔にて配置される。図12の例では、8個のローラ支持ユニット63が45度間隔にて配列される。図11に示すように、各ローラ支持ユニット63は、アーム部631と、複数のローラ昇降機構633と、複数のローラ位置調整機構635と、複数のローラ支持部637とを備える。アーム部631は、径方向(図11中の横方向)に延びる部材であり、アーム移動機構(図示省略)により支持される。アーム移動機構は、例えば、モータおよびボールねじ等を有し、アーム部631を径方向(アーム部631の長手方向)および上下方向に移動可能である。
【0058】
アーム部631において径方向内側(基板9側)の端部には、径方向に略垂直な方向に広がる支持プレート632が固定される。支持プレート632の上部および下部のそれぞれには、ローラ昇降機構633が設けられる。各ローラ昇降機構633は、例えば、モータおよびボールねじ等を有し、径方向に延びる支持ブロック634を上下方向に移動可能である。支持ブロック634には、ローラ位置調整機構635が設けられる。ローラ位置調整機構635は、例えば、モータおよびボールねじ等を有し、ローラ支持部637を径方向に移動可能である。ローラ支持部637は、径方向に略平行な軸を中心としてローラ53を回転可能に支持する。
【0059】
後述する基板9の処理では、上側に位置する支持ブロック634と、下側に位置する支持ブロック634との間に基板9の周縁部が配置される。また、上側の支持ブロック634の下側にローラ53が配置され、下側の支持ブロック634の上側にローラ53が配置される。上側の支持ブロック634に支持されるローラ53は、基板9の上面91に対向するため、以下、当該ローラ53を「上面ローラ53」ともいう。下側の支持ブロック634に支持されるローラ53は、基板9の下面92に対向するため、以下、当該ローラ53を「下面ローラ53」ともいう。
【0060】
アーム部631の支持プレート632の中央には、他のローラ支持部637が取り付けられる。ローラ支持部637は、上下方向に略平行な軸を中心としてローラ53を回転可能に支持する。当該ローラは、基板9のエッジ端面90(apex)に対向するため、以下、当該ローラ53を「端面ローラ53」ともいう。
【0061】
例えば、各ローラ53の本体は、柔らかい樹脂により形成され、当該本体の表面に、ルテニウムよりも貴な金属の層が貴金属部として設けられる。当該金属の層は、例えば、めっきにより形成される。当該金属の層は、ローラ53の本体に嵌め込まれるリングであってもよい。また、ローラ53の全体が、当該貴な金属により形成されてもよい。このように、ローラ53は、少なくとも表面が貴金属部であればよい。軸方向におけるローラ53の幅は、例えば1~2cmである。
【0062】
上側の支持ブロック634および下側の支持ブロック634のそれぞれには、図示省略のノズル支持部を介して電解液ノズル31aが固定される。各電解液ノズル31aには、電解液タンク33(図2参照)から電解液71が供給される。当該電解液71は、好ましくは、酸素溶解部34により酸素が溶解されたものである。上側の支持ブロック634に固定された上側の電解液ノズル31aは、上面ローラ53よりも径方向内側に配置され、上面ローラ53と基板9の上面91とが接触する位置近傍に向けて電解液71を吐出する。下側の支持ブロック634に固定された下側の電解液ノズル31aは、下面ローラ53よりも径方向内側に配置され、下面ローラ53と基板9の下面92とが接触する位置近傍に向けて電解液71を吐出する。
【0063】
基板処理装置1aにおける基板9の処理では、まず、基板処理装置1aに基板9が搬入され、チャック部21上に載置される(図5:ステップS11)。また、アーム移動機構がアーム部631を移動することにより、複数のローラ支持ユニット63が基板9の周囲(すなわち、径方向外側)に配置される。チャック部21による真空吸着を解除した状態で、複数のローラ支持ユニット63に設けられる端面ローラ53が、基板9のエッジ端面90に接触する。これにより、基板9のセンタリングが行われる(ステップS12)。このとき、上面ローラ53は、基板9の上面91から離れており、下面ローラ53も下面92から離れている。基板9のセンタリング後、真空吸着により基板9がチャック部21に保持される。また、端面ローラ53が、基板9の周縁部から径方向外方に離れる。
【0064】
続いて、基板回転機構22による基板9の回転が開始される。また、ノズル31(図2参照)が基板9の上方の供給位置に配置される。そして、ノズル31から基板9の上面91の中央部に向けて洗浄液が供給される。これにより、洗浄液が基板9の上面91全体に広がり、基板9に付着している不要物を洗い流す前洗浄が行われる(ステップS13)。洗浄液は、基板9の回転による遠心力によって基板9の周縁部から径方向外方へと飛散し、カップ41により回収される。
【0065】
洗浄液の供給開始から所定の時間が経過すると、洗浄液の供給が停止され、基板9の回転も停止される。アーム移動機構がアーム部631を径方向内方に移動することにより、複数のローラ支持ユニット63の端面ローラ53が、基板9の周縁部に接触する。また、各ローラ支持ユニット63では、ローラ位置調整機構635により上面ローラ53の径方向位置が調整された後、ローラ昇降機構633により上面ローラ53が基板9に向けて下降する。同様に、下面ローラ53の径方向位置が調整された後、下面ローラ53が基板9に向けて上昇する。これにより、上面ローラ53および下面ローラ53が、基板9の周縁部における上面91および下面92にそれぞれ接触する。このようにして、貴金属部である各ローラ53の表面が導電膜93に接触する(ステップS14)。
【0066】
各ローラ53が導電膜93に接触すると、基板9の回転が開始される。これにより、上面ローラ53、下面ローラ53および端面ローラ53が、従動回転する。また、各ローラ支持ユニット63では、2つの電解液ノズル31aから基板9の周縁部に向けて電解液71が吐出される(ステップS15)。基板9の上面91では、上面ローラ53と導電膜93との接触位置の近傍に電解液71が付着し、周方向および径方向における当該接触位置の近傍(ベベル部を含む。以下同様。)において、導電膜93がエッチングされる。また、基板9の下面92では、下面ローラ53と導電膜93との接触位置の近傍に電解液71が付着し、周方向および径方向における当該接触位置の近傍において、導電膜93がエッチングされる。さらに、基板9のエッジ端面90では、端面ローラ53と導電膜93との接触位置の近傍に電解液71が付着し、周方向および径方向における当該接触位置の近傍において、導電膜93がエッチングされる。
【0067】
以上のように、基板処理装置1aでは、周縁部上の導電膜93において、上記接触位置に隣接した領域がエッチング対象の対象領域であり、接触位置にて貴金属部(ローラ53の表面)が導電膜93に接触し、かつ、電解液71が対象領域と貴金属部とに接触することにより、対象領域の導電膜93がエッチングされる。実際には、基板9の回転により、上面ローラ53、下面ローラ53および端面ローラ53と基板9との接触位置が周方向に基板9に対して相対的に移動するため、基板9の周縁部が全周に亘ってエッチングされる。なお、基板処理装置1aでは、チャック部21が、エッチングの際に基板9を保持する基板保持部である。
【0068】
本実施の形態では、図5のステップS17における周縁部の状態の確認が、導電膜93のエッチングに並行して行われる。具体的には、基板9の周縁部の上方には撮像部18(図6参照)が設けられており、導電膜93のエッチングに並行して、回転する基板9の周縁部の画像が取得される。これにより、全周に亘って導電膜93が除去されているか否かが確認される。全周に亘って導電膜93が除去されていることが確認されると(すなわち、エッチングの終点が検知されると)(ステップS18)、電解液ノズル31aから基板9の周縁部への電解液71の供給が停止される。また、ローラ昇降機構633がローラ53を基板9から離れる方向に移動させ、上面ローラ53および下面ローラ53が、基板9の周縁部から離される。さらに、アーム部631を径方向外方に移動することにより、端面ローラ53も基板9の周縁部から離される。このように、基板処理装置1aでは、ステップS18においてエッチングの終点が検知された後、貴金属部が基板9の周縁部から離される(ステップS16)。
【0069】
その後、ノズル31から基板9の上面91の中央部に向けて洗浄液が供給され、基板9の周縁部に付着している電解液71等を洗い流す後洗浄が行われる(ステップS19)。このとき、洗浄液は、基板9の外縁を伝って下面92側にも回り込み、周縁部のほぼ全体が洗浄される。基板9の周縁部に向けて洗浄液を吐出するノズルが別途設けられてもよい。基板9に対する後洗浄が所定の時間行われると、基板9の乾燥処理が行われる(ステップS20)。基板9の乾燥処理が終了すると、基板9の回転が停止され、基板9が基板処理装置1aから搬出される(ステップS21)。
【0070】
以上に説明したように、第2の実施の形態に係る基板処理装置1aでは、貴金属部接触機構6aが、少なくとも表面が貴金属部であるローラ53を有し、基板9の周縁部にローラ53を接触させる。また、周縁部とローラ53とが接触した状態を維持しつつ、基板9の中心を中心として基板9がローラ53に対して回転する。そして、周縁部とローラ53との接触位置近傍に電解液71を供給することにより、接触位置に隣接した対象領域とローラ53の表面とに電解液71が接触する状態が維持される。これにより、ルテニウムを含む導電膜93を、基板9の周縁部の全周に亘って効率よく除去することができる。なお、基板処理装置1aでは、図2の基板処理装置1と同様に、ノズル31から基板9の上面91の中央部に向けて電解液71が供給されてもよい。
【0071】
また、基板処理装置1aでは、上面ローラ53および下面ローラ53のそれぞれについて、ローラ位置調整機構635により径方向位置が調整可能であることにより、上面91および下面92の周縁部において、導電膜93を除去すべき幅を自在に変更することができる。なお、基板9の表面にスクラッチが発生することを防止するため、上面ローラ53が基板9に接触している際には、ローラ位置調整機構635による上面ローラ53の移動は行われない(下面ローラ53において同様)。
【0072】
図11の例では、円筒状の外周面を有するローラ53が用いられるが、図13に示すように、ローラ53の外周面が、基板9の周縁部に倣った形状であってもよい。図13の例では、上面ローラ53の外周面が、直径が一定である円筒面と、径方向外方に向かって直径が漸次増大する円錐台面とを有する。当該円筒面は、基板9の上面91に接触し、当該円錐台面は、上面91側のベベル部(上面91とエッジ端面90とを接続する領域)の一部に接触する。下面ローラ53の外周面も、直径が一定である円筒面と、径方向外方に向かって直径が漸次増大する円錐台面とを有する。当該円筒面は、基板9の下面92に接触し、当該円錐台面は、下面92側のベベル部(下面92とエッジ端面90とを接続する領域)の一部に接触する。
【0073】
また、端面ローラ53の外周面は、直径が一定である円筒面と、上方に向かって直径が漸次増大する上側円錐台面と、下方に向かって直径が漸次増大する下側円錐台面とを有する。当該円筒面は、基板9のエッジ端面90に接触し、当該上側円錐台面は、上面91側のベベル部の一部に接触し、当該下側円錐台面は、下面92側のベベル部の一部に接触する。図13の例では、基板9のベベル部に対してローラ53を接触させることができ、ベベル部における導電膜93をより確実に除去(エッチング)することが可能である。
【0074】
また、図14に示すように、円筒状の外周面を有するローラ53が、基板9の上面91側のベベル部に接触してもよい。さらに、図15に示すように、上面ローラ53a、図14のローラ53b(上面91側のベベル部に接触するローラ)、端面ローラ53cが、基板9の外縁に沿って周方向に配列されてもよい。基板9の回転により、各ローラ53a~53cと基板9との接触位置が周方向に基板9に対して相対的に移動するため、上面91の周縁部、上面91側のベベル部、および、エッジ端面90の導電膜93を、全周に亘ってエッチングすることが可能である。もちろん、下面92側のベベル部に接触するローラ53、および、下面ローラ53が設けられてもよい。
【0075】
図16および図17は、第3の実施の形態に係る基板処理装置1bにおける貴金属部接触機構6bの構成を示す図である。図16では、貴金属部接触機構6bの1つのクランプ部65を示し、図17では、平面視した基板9および貴金属部接触機構6bの一部を示す。
【0076】
図17に示すように、貴金属部接触機構6bは、複数のクランプ部65を備える。複数のクランプ部65は、基板9の周囲において周方向に等角度間隔にて配置される。図17の例では、12個のクランプ部65が30度間隔にて配列される。図16に示すように、各クランプ部65は、アーム部651と、2本の把持爪653とを備える。アーム部651は、径方向に延びる部材であり、アーム移動機構(図示省略)により、例えばアーム部651の長手方向および上下方向に移動可能である。2本の把持爪653は、アーム部651における径方向内側(基板9側)の端部に取り付けられる。
【0077】
2本の把持爪653の一端は、ジョイント654により互いに接続され、2本の把持爪653がなす角度が、例えば、エアシリンダ等を駆動源として有する機構により変更可能である。本実施の形態では、2本の把持爪653がなす角度が、比較的大きい第1角度(図16中に実線にて示す。)と、比較的小さい第2角度(図16中に二点鎖線にて示す。)とに変更可能である。
【0078】
2本の把持爪653の間には、弾性部材55が設けられる。弾性部材55は、例えば、多孔質の部材(スポンジ等)であり、好ましくは、耐薬品性を有する樹脂(例えば、PVA等)により形成される。弾性部材55は、比較的柔らかく、容易に弾性変形可能である。図16のように、上下方向および径方向に垂直な方向から見た弾性部材55の形状は、凹部551の開口が径方向内方を向くU字状である。弾性部材55は、2本の把持爪653の間に挟まれた状態で、部分的に2本の把持爪653に固定される。弾性部材55の凹部551の内面全体には、貴金属シート553が固定(例えば、接着)される。貴金属シート553は、ルテニウムよりも貴な金属のシート(箔)であり、貴金属部である。
【0079】
基板処理装置1bにおける基板9の処理では、図5のステップS11~S13の処理は、基板処理装置1aと略同じである。なお、ステップS12における基板9のセンタリングは、例えば、基板処理装置1,1aと同様に、基板9の周囲において周方向に配列された複数の部材が基板9の周縁部に接触することにより行われる。基板9のセンタリングは、公知の他の手法により行われてもよい。
【0080】
前洗浄が完了し、基板9の回転が停止されると、アーム移動機構がアーム部651を移動することにより、複数のクランプ部65が基板9の周囲(すなわち、径方向外側)に配置される。その後、各アーム部651が径方向内方に移動する。このとき、図16に示すように、2本の把持爪653がなす角度が第1角度であり、弾性部材55の凹部551内に基板9の周縁部が配置された状態となる。すなわち、基板9の周縁部の周囲が、隙間を空けて貴金属シート553により覆われる。
【0081】
続いて、基板9の上方に配置されたノズル31から基板9の上面91の中央部に向けて電解液71が供給される(ステップS15)。電解液71は、基板9の上面91全体に広がり、弾性部材55の凹部551の内面と基板9の周縁部との間にも入り込む。その後、図18に示すように、各クランプ部65において、2本の把持爪653のなす角度が第2角度に変更される。これにより、弾性部材55が圧縮されて、凹部551の内面が基板9の周縁部に倣って変形する。また、凹部551の内面の貴金属シート553が、基板9の周縁部の導電膜93に接触する(ステップS14)。本実施の形態では、ステップS15の後に、または、ステップS15に並行して、ステップS14が行われる。
【0082】
このとき、貴金属シート553に皺が寄るため、貴金属シート553と導電膜93との間には、多数の微小な隙間が形成される。また、当該隙間には電解液71が入り込む。したがって、周縁部上の導電膜93において、貴金属シート553と接触する領域に隣接した領域に電解液71が供給され、電解液71が当該領域と貴金属シート553とに接触する。その結果、当該領域において導電膜93がエッチングされる。換言すると、エッチング対象の対象領域に隣接した隣接領域に貴金属シート553が接触し、電解液71が対象領域と貴金属シート553とに接触することにより、対象領域において導電膜93がエッチングされる。このとき、導電膜93において貴金属シート553が接触している領域(すなわち、隣接領域)はエッチングされない。なお、基板9の表面にスクラッチが発生することを防止するため、貴金属シート553が基板9に接触している間、基板9の回転は行われない。
【0083】
2本の把持爪653の角度が第2角度に変更された後、所定の時間が経過すると、2本の把持爪653の角度が第1角度に戻され、貴金属シート553が導電膜93から離される(ステップS16)。続いて、基板回転機構22により基板9がチャック部21と共にゆっくりと回転し、撮像部18により基板9の周縁部の画像が全周に亘って取得される。これにより、全周に亘って導電膜93が除去されているか否かが確認される(ステップS17)。ここでは、貴金属シート553が接触していた領域や、弾性部材55に挟まれない領域では、導電膜93が残存するため(ステップS18)、上記ステップS14~S17(正確には、ステップS15,S14,S16,S17の順序)が繰り返される。このとき、図19に示すように、複数のクランプ部65に対する基板9の回転角が、直前のステップS14,S15の際における回転角と異なる。したがって、導電膜93がエッチングされる周方向位置が、前回のステップS14,S15と相違する。図19では、基板9に対する複数のクランプ部65の周方向位置を、図17と相違させることにより、複数のクランプ部65に対する基板9の回転角が図17図19とで異なることを示す。
【0084】
基板処理装置1bでは、ステップS17において、全周に亘って導電膜93が除去されているか否かを確認しつつ、ステップS14~S16が繰り返される(ステップS18)。全周に亘って導電膜93が除去されていることが確認されると(ステップS18)、複数のクランプ部65が基板9の周囲から離れ、基板9の後洗浄が行われる(ステップS19)。基板9の乾燥処理が終了後(ステップS20)、基板9が基板処理装置1から搬出される(ステップS21)。
【0085】
以上に説明したように、第3の実施の形態に係る基板処理装置1bでは、貴金属部接触機構6bが、弾性部材55の表面に設けられたシート状の貴金属部(上記では、貴金属シート553)を有する。そして、導電膜93(実際には、導電膜93の上記隣接領域)に貴金属部を接触させる際に、弾性部材55を圧縮することにより、弾性部材55の表面が基板9に沿って変形する。これにより、貴金属部を基板9の周縁部の形状に容易に倣わせることができ、周縁部における導電膜93を適切に除去することができる。なお、図11と同様に、電解液ノズル31aから弾性部材55に向けて電解液71が供給されてもよい。
【0086】
図20は、貴金属シートの他の例を示す図である。図20の貴金属シート554はメッシュ状であり、一例では、金属線(図20では、金属線の部分に平行斜線を付す。)を格子状に配置したものである。当該金属線は、ルテニウムよりも貴な金属の線であり、貴金属部である。上記の例と同様に、貴金属シート554は、弾性部材55の凹部551の内面に固定される。貴金属シート554における金属線の線幅(線径)は、例えば1mmであり、互いに隣接する金属線間の隙間の幅も、例えば1mmである。既述のように、弾性部材55は、スポンジ等の多孔質部材であり、多数の気孔を有する。弾性部材55における気孔の大部分は開気孔であり、外部と連通する。貴金属シート554において、金属線間に囲まれた領域であるメッシュ開口555では、弾性部材55の気孔が露出する。
【0087】
ステップS14の処理において、貴金属シート554を導電膜93に接触させる際には、上記と同様に、弾性部材55がクランプ部65により圧縮される(図18参照)。このとき、貴金属シート554における金属線が導電膜93に接触し、導電膜93においてメッシュ開口555に対向する領域(後述するように、エッチング対象の対象領域である。)は、金属線に接触しない。また、ステップS15における電解液71の供給では、貴金属シート554が導電膜93に接触した状態で、ノズル31から基板9の上面91の中央部に電解液71が供給される、または、電解液ノズル31aから基板9の周縁部に電解液71が供給される。電解液71は、基板9の周縁部において弾性部材55の気孔内に染み込み、凹部551の内面から染み出す。したがって、導電膜93においてメッシュ開口555に対向する対象領域に電解液71が供給される。対象領域に隣接した隣接領域には、貴金属シート554の金属線が接触しており、当該電解液71は、対象領域と金属線(貴金属部)に接触する状態となる。これにより、対象領域において導電膜93がエッチングされる。
【0088】
以上のように、図20の例では、貴金属部がメッシュ状であり、導電膜93の対象領域が、各メッシュ開口555に対向する領域である。これにより、多数のメッシュ開口555に対向する多数の対象領域を同時にエッチングすることができ、導電膜93を効率よく除去することができる。また、貴金属部が多孔質部材(上記では、弾性部材55)の表面に設けられ、多孔質部材の気孔を介してメッシュ開口555に電解液71が供給される。これにより、対象領域への電解液71の供給を容易に行うことができる。
【0089】
図21および図22は、基板処理装置1bの他の例を示す図であり、基板9の周囲の構成のみを示す。図22では、後述の上側弾性部材57および基板9のみを示す。図21および図22の例では、円環板状の2つの弾性部材57が用いられる。上記の弾性部材55と同様に、各弾性部材57は、多孔質の部材(スポンジ等)である。例えば、2つの弾性部材57は、ほぼ同じ形状および大きさを有する。弾性部材57の内径は基板9の直径よりも小さく、弾性部材57の外径は基板9の直径よりも大きい。基板9の直径が300mmである場合に、例えば、周縁部において外縁から5mmの範囲の導電膜93を除去するときには、弾性部材57の内径は290mmであり、外径は310mmである。導電膜93のエッチングでは、2つの弾性部材57の間に基板9の周縁部が挟まれる。以下、上面91側の弾性部材57を「上側弾性部材57」といい、下面92側の弾性部材57を「下側弾性部材57」という。
【0090】
下側弾性部材57の上面の全体には、メッシュ状の貴金属シート554が設けられる。貴金属シート554は、下側弾性部材57の上面と同じ形状であり、円環状である。図20の例と同様に、貴金属シート554の金属線は、貴金属部である。下側弾性部材57の下面は、下側支持部671に固定される。下側支持部671は、円板状の支持本体と、支持本体の外縁部から上方に突出する環状突出部とを有する。下側弾性部材57は、環状突出部の上面に取り付けられる。
【0091】
上側弾性部材57の下面の全体には、メッシュ状の貴金属シート554が設けられる。貴金属シート554は、上側弾性部材57の下面と同じ形状であり、円環状である。上側弾性部材57の上面は、上側支持部672に固定される。上側支持部672は、円板状の支持本体と、支持本体の外縁部から下方に突出する環状突出部とを有する。上側弾性部材57は、環状突出部の下面に取り付けられる。上側支持部672は、例えば、モータおよびボールねじ等を有する支持部移動機構67により、上下方向に移動可能である。また、上側支持部672において、支持本体の中央部には、ノズル31が設けられる。
【0092】
導電膜93のエッチングを行う際には、上側支持部672が基板9から上方に離れた状態で、下側弾性部材57の上面に基板9が載置される。下側弾性部材57および下側支持部671は、エッチングの際に基板9を保持する基板保持部である。基板9の下面92の周縁部は、下側弾性部材57の貴金属シート554に接触する。このとき、公知のセンタリング手法により、基板9の中心と下側弾性部材57の中心とが平面視において略一致する。続いて、支持部移動機構67により上側支持部672が下降し、上側弾性部材57の貴金属シート554が、基板9の上面91の周縁部に接触する。図23に示すように、上側弾性部材57の下面、および、下側弾性部材57の上面が、基板9に沿って弾性変形する。これにより、基板9の周縁部が、上側弾性部材57の貴金属シート554、および、下側弾性部材57の貴金属シート554により覆われる。支持部移動機構67は、貴金属部を導電膜93に接触させる貴金属部接触機構6cを構成する。
【0093】
続いて、上側支持部672に設けられたノズル31から電解液71が基板9の上面91に向けて吐出される。電解液71は、基板9の上面91を径方向外方に広がり、周縁部において上側弾性部材57の気孔に染み込む。電解液71は、上側弾性部材57の下面において貴金属シート554のメッシュ開口555に到達し、基板9の上面91においてメッシュ開口555に対向する領域(対象領域)に電解液71が供給される。これにより、当該領域において導電膜93がエッチングされる。また、電解液71は、基板9の外側においてメッシュ開口555を介して下側弾性部材57の気孔に入り込み、下側弾性部材57の全体に広がる。これにより、基板9の下面92において貴金属シート554(下側弾性部材57の貴金属シート554)のメッシュ開口555に対向する領域にも電解液71が供給され、当該領域において導電膜93がエッチングされる。
【0094】
図24Aは、貴金属シート554および導電膜93を示す図である。図24Aでは、上段に貴金属シート554を示し、下段にエッチング後の導電膜93を示す(後述の図24Bにおいて同様)。図24Aに示すように、導電膜93において貴金属シート554の金属線に接触する領域は、電解液71に接触しにくいため、ほとんどエッチングされない。
【0095】
そこで、電解液71の供給から所定時間経過後に、基板9に対する、上側弾性部材57および下側弾性部材57の回転位置が変更される。例えば、上側支持部672が基板9から上方に移動した後、図示省略の機構により、基板9の上面が真空吸着により保持され、基板9が上昇した後、僅かに回転される。その後、下側弾性部材57の上面に基板9が載置される。当該機構が退避した後、上側支持部672が下降し、上側弾性部材57が基板9の上面に接触する。これにより、図24Bに示すように、導電膜93において貴金属シート554の金属線に接触する領域が、図24Aの位置からずれる。そして、上記処理と同様に、基板9上に電解液71が供給され、周縁部において導電膜93のエッチングが行われる。上記動作を繰り返すことにより、上側弾性部材57および下側弾性部材57に対向する領域の全体において導電膜93を除去することが可能となる。なお、基板9の周囲に設けられたノズルから上側弾性部材57および下側弾性部材57に向けて電解液71が吐出されてもよい。
【0096】
上記基板処理装置1,1a,1bおよび基板処理方法では様々な変形が可能である。
【0097】
上記第1ないし第3の実施の形態に係る手法は、適宜組み合わされてもよい。図25の例では、端面ローラ53の上部に円錐台状の案内部531が設けられ、案内部531により円板部材51が案内されて基板9の上面91に載置される。そして、基板9の上面91の周縁部では、主として円板部材51を用いて導電膜93がエッチングされ、エッジ端面90およびベベル部については、主として端面ローラ53を用いて導電膜93がエッチングされる。
【0098】
第2の実施の形態において、ローラ53の本体が、弾性部材により形成され、当該本体の表面にメッシュ状の貴金属シートが設けられてもよい。また、第1の実施の形態において、基板9の上面91全体の導電膜93が除去されてもよい。この場合、例えば、円板部材51の本体が多孔質の部材により形成され、表面にメッシュ状の貴金属シートが設けられる。また、円板部材51の直径が、基板9の直径よりも大きくされ、円板部材51の外縁部が、基板9の周縁部に沿って変形することにより、貴金属シートがベベル部に接触する。
【0099】
上記第2の実施の形態において、基板9を回転することなく、基板9の周囲に配置された複数のローラ53(ローラ支持ユニット63)が中心軸J1を中心として回転してもよい。すなわち、基板9は、基板9の中心を中心としてローラ53に対して相対的に回転すればよい。
【0100】
貴金属部(ローラ53、貴金属シート554等)が基板9の周縁部のみに接触する上記第2および第3の実施の形態では、基板9の中央部において導電膜93が存在しなくてもよい。すなわち、基板9では、ルテニウムを含む導電膜93が少なくとも周縁部に設けられていればよい。
【0101】
基板処理装置1,1a,1bにおいて処理が行われる基板は半導体基板には限定されず、ガラス基板や他の基板であってもよい。また、基板の形状は、円板状以外であってもよい。
【0102】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0103】
1,1a,1b 基板処理装置
3 処理液供給ユニット
6,6a~6c 貴金属部接触機構
9 基板
21 チャック部
34 酸素溶解部
51 円板部材
53,53a~53c ローラ
55,57 弾性部材
61 円板案内部
71 電解液
91 (基板の)上面
93 導電膜
553,554 貴金属シート
555 メッシュ開口
671 下側支持部
911 対象領域
S11~S21 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24A
図24B
図25