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特開2024-72475光調整装置、レーザ加工装置、光調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072475
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】光調整装置、レーザ加工装置、光調整方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20240521BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20240521BHJP
   G02F 1/33 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/382
G02F1/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183304
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】遠入 尚亮
【テーマコード(参考)】
2K102
4E168
【Fターム(参考)】
2K102AA30
2K102BA01
2K102BA07
2K102BA21
2K102BC07
2K102BD10
2K102DA01
2K102DC08
2K102EA21
2K102EA25
2K102EB02
2K102EB10
2K102EB20
2K102EB22
2K102EB24
4E168AD11
4E168CB04
4E168DA23
4E168DA44
4E168EA02
4E168EA06
4E168EA15
4E168EA19
4E168EA24
4E168EA25
(57)【要約】
【課題】それぞれに光学素子を経た複数の光の状態を適切に調整できる光調整装置等を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置は、第1レーザ光MP1に対して第1光学的処理を施す第1音響光学素子34の温度を調整する第1調温部と、第2レーザ光MP2に対して第2光学的処理を施す第2音響光学素子44の温度を調整する第2調温部と、第1音響光学素子34を経た第1レーザ光MP1の第1測定結果を取得する第1ビームセンサ36と、第2音響光学素子44を経た第2レーザ光MP2の第2測定結果を取得する第2ビームセンサ46と、第1測定結果と第2測定結果の比較に基づいて、第1調温部および第2調温部の少なくともいずれかを制御する温度制御部63と、第1音響光学素子34を経た第1レーザ光MP1を第1被加工物に照射する第1加工部と、第2音響光学素子44を経た第2レーザ光MP2を第2被加工物に照射する第2加工部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光に対して第1光学的処理を施す第1光学素子の温度を調整する第1調温部と、
第2光に対して第2光学的処理を施す第2光学素子の温度を調整する第2調温部と、
前記第1光学素子を経た前記第1光の第1測定結果および前記第2光学素子を経た前記第2光の第2測定結果を取得する測定部と、
前記第1測定結果と前記第2測定結果の比較に基づいて、前記第1調温部および前記第2調温部の少なくともいずれかを制御する温度制御部と、
を備える光調整装置。
【請求項2】
前記第1調温部および前記第2調温部は、それぞれ前記第1光学素子および前記第2光学素子に冷媒を供給し、
前記温度制御部は、前記第1調温部および前記第2調温部の少なくともいずれかによる前記冷媒の供給量を制御する、
請求項1に記載の光調整装置。
【請求項3】
前記温度制御部は、前記第1調温部および前記第2調温部の少なくともいずれかによる前記冷媒の供給量を制御する流量制御弁を備える、請求項2に記載の光調整装置。
【請求項4】
前記冷媒を供給する冷媒供給源と、
前記冷媒供給源からの前記冷媒を、少なくとも前記第1光学素子および前記第2光学素子に向けて分割する冷媒分割部と、
を更に備える請求項2または3に記載の光調整装置。
【請求項5】
前記測定部は、前記第1光学素子を経た前記第1光の第1断面に関する前記第1測定結果と、前記第2光学素子を経た前記第2光の第2断面に関する前記第2測定結果を取得し、
前記温度制御部は、前記第1断面と前記第2断面の差を低減するように、前記第1調温部および前記第2調温部の少なくともいずれかを制御する、
請求項1から3のいずれかに記載の光調整装置。
【請求項6】
光源と、
前記光源からの光を、少なくとも前記第1光と前記第2光に分割する光分割部と、
を更に備える請求項1から3のいずれかに記載の光調整装置。
【請求項7】
前記第1光学的処理および前記第2光学的処理は、同じ光学的処理である、請求項1から3のいずれかに記載の光調整装置。
【請求項8】
前記第1光学素子および前記第2光学素子は、それぞれ前記第1光および前記第2光から第1光パルスおよび第2光パルスを切り出す音響光学素子である、請求項7に記載の光調整装置。
【請求項9】
第1レーザ光に対して第1光学的処理を施す第1光学素子の温度を調整する第1調温部と、
第2レーザ光に対して第2光学的処理を施す第2光学素子の温度を調整する第2調温部と、
前記第1光学素子を経た前記第1レーザ光の第1測定結果および前記第2光学素子を経た前記第2レーザ光の第2測定結果を取得する測定部と、
前記第1測定結果と前記第2測定結果の比較に基づいて、前記第1調温部および前記第2調温部の少なくともいずれかを制御する温度制御部と、
前記第1光学素子を経た前記第1レーザ光を第1被加工物に照射する第1加工部と、
前記第2光学素子を経た前記第2レーザ光を第2被加工物に照射する第2加工部と、
を備えるレーザ加工装置。
【請求項10】
第1光に対して第1光学的処理を施す第1光学素子の温度を調整する第1調温ステップと、
第2光に対して第2光学的処理を施す第2光学素子の温度を調整する第2調温ステップと、
前記第1光学素子を経た前記第1光の第1測定結果を取得する第1測定ステップと、
前記第2光学素子を経た前記第2光の第2測定結果を取得する第2測定ステップと、
前記第1測定結果と前記第2測定結果の比較に基づいて、前記第1調温ステップおよび前記第2調温ステップの少なくともいずれかを制御する温度制御ステップと、
を備える光調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光調整装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多波長のレーザ光に対して各種の光学的処理を施すコリメータレンズ、回折格子、集光レンズ等の光学素子を個別に冷却する冷却装置が開示されている。各光学素子には温度の許容範囲が予め定められており、当該各光学素子に併設される温度センサの測定温度が当該許容範囲を外れないように、各冷却装置による冷却温度が適応的に制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-81994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、温度センサによる各光学素子の測定温度に基づいて、各冷却装置による冷却温度が制御されるが、各光学素子の温度が予め定められた許容範囲に収まっていたとしても、当該各光学素子を経た光が所望の状態になっているとは限らない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、それぞれに光学素子を経た複数の光の状態を適切に調整できる光調整装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光調整装置は、第1光に対して第1光学的処理を施す第1光学素子の温度を調整する第1調温部と、第2光に対して第2光学的処理を施す第2光学素子の温度を調整する第2調温部と、第1光学素子を経た第1光の第1測定結果および第2光学素子を経た第2光の第2測定結果を取得する測定部と、第1測定結果と第2測定結果の比較に基づいて、第1調温部および第2調温部の少なくともいずれかを制御する温度制御部と、を備える。
【0007】
この態様では、第1光学素子を経た第1光の第1測定結果と、第2光学素子を経た第2光の第2測定結果の比較に基づいて、第1調温部および第2調温部の少なくともいずれかが制御される。このように、第1測定結果および第2測定結果の一方を他方のリファレンスとして利用することで、各測定結果が所望の関係となるように各光学素子の温度を各調温部によって適切に調整できる。
【0008】
本発明の別の態様は、レーザ加工装置である。この装置は、第1レーザ光に対して第1光学的処理を施す第1光学素子の温度を調整する第1調温部と、第2レーザ光に対して第2光学的処理を施す第2光学素子の温度を調整する第2調温部と、第1光学素子を経た第1レーザ光の第1測定結果および第2光学素子を経た第2レーザ光の第2測定結果を取得する測定部と、第1測定結果と第2測定結果の比較に基づいて、第1調温部および第2調温部の少なくともいずれかを制御する温度制御部と、第1光学素子を経た第1レーザ光を第1被加工物に照射する第1加工部と、第2光学素子を経た第2レーザ光を第2被加工物に照射する第2加工部と、を備える。
【0009】
本発明の更に別の態様は、光調整方法である。この方法は、第1光に対して第1光学的処理を施す第1光学素子の温度を調整する第1調温ステップと、第2光に対して第2光学的処理を施す第2光学素子の温度を調整する第2調温ステップと、第1光学素子を経た第1光の第1測定結果を取得する第1測定ステップと、第2光学素子を経た第2光の第2測定結果を取得する第2測定ステップと、第1測定結果と第2測定結果の比較に基づいて、第1調温ステップおよび第2調温ステップの少なくともいずれかを制御する温度制御ステップと、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、それぞれに光学素子を経た複数の光の状態を適切に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】光調整装置および/またはレーザ加工装置の構成を模式的に示す。
図2】パルスレーザビームの1パルス分の強度波形の一例を示す。
図3】光調整装置を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態とも表される)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る光調整装置および/またはレーザ加工装置の構成を模式的に示す。このレーザ加工装置は、レーザ光源10からのレーザ光を照射して、ステージ50上に載置された被加工物33、43を加工する装置であり、例えば、レーザ光によって被加工物33、43に穴を開けるレーザドリルである。本実施形態では、二つの異なる被加工物33(第1被加工物)、43(第2被加工物)に対して、第1加工経路MP1を通る第1レーザ光、第2加工経路MP2を通る第2レーザ光をそれぞれ照射し、実質的に同じ加工処理を施す例について具体的に説明する。但し、本発明に係るレーザ加工装置は、例えば、二つの異なる被加工物33、43に対して、互いに異なる加工処理を施してもよいし、一つの被加工物(第1被加工物としての被加工物33と、第2被加工物としての被加工物43が、一体的に形成されたものとも解釈できる)の異なる部分に対して、実質的に同じまたは互いに異なる加工処理を施してもよい。
【0015】
レーザ光源10は、制御装置55から受け取った発振指令信号S0に応じて、レーザ発振してパルスレーザビームPLBを発する。具体的には、発振指令信号S0の立上りに応じてレーザ光源10はレーザ発振を開始し、発振指令信号S0の立下りに応じてレーザ光源10はレーザ発振を終了する。発振指令信号S0は、数マイクロ秒~数十マイクロ秒程度のパルス幅で、制御装置55によって間欠的に生成される。この結果、(非零の)発振指令信号S0によってレーザ光源10が発光する発光期間と、発振指令信号S0が与えられずにレーザ光源10が発光しない休止期間が交互に繰り返されることで、例えば数kHz程度の周波数でレーザ発振するレーザ光源10からパルス状のパルスレーザビームPLBが出力される。
【0016】
図2は、パルスレーザビームPLBの1パルス分の強度波形の一例を示す。模式的に示されるように、発光期間Teの間のパルスレーザビームPLBの強度は必ずしも一定ではない。典型的には、発光開始直後(不図示の発振指令信号S0の立上り直後)に強度が急激に上がり、発光終了後(不図示の発振指令信号S0の立下り後)に強度が緩やかに下がる。
【0017】
レーザ光源10は、レーザ光を出力可能な任意のタイプの光源でよいが、本実施形態では、例えば、炭酸ガス(二酸化炭素)を媒質として赤外線領域のパルスレーザビームPLBを出力する炭酸ガスレーザ(CO2レーザ)が利用される。なお、レーザ加工装置における加工の目的に照らして適切な場合、レーザ光源10は、図2に示されるようなパルス波としてのパルスレーザビームPLBを出力するものに限らず、連続波を出力するものでもよい。また、本発明に係る光調整装置は、レーザ加工装置に限られない任意の光出力装置に適用可能であるが、この場合の光源としてはレーザ光源10に限らず、光出力装置の目的に合った非レーザ光を出力する任意のタイプの(非レーザ)光源でもよい。
【0018】
レーザ光源10から出力されたパルスレーザビームPLBは、光学系11に入射する。光学系11は、パルスレーザビームPLBに対して任意の光学的処理を施すために、レンズ、ミラー、プリズム、アパーチャ(開口)、各種の光学変調素子等の一または複数の光学素子を含む。例えば、光学系11は、レーザ光源10から出射されたパルスレーザビームPLBを所定のサイズ(径)に調整するビームエキスパンダでもよい。ビームエキスパンダは、典型的には、パルスレーザビームPLBの経路(光路)上に直列に配置される複数の凸レンズおよび/または凹レンズを含む。
【0019】
光学系11を経たパルスレーザビームPLBは、光分割部としてのビームスプリッタ20に入射する。ビームスプリッタ20は、パルスレーザビームPLBを、第1被加工物としての被加工物33の加工処理のための第1加工経路MP1と、第2被加工物としての被加工物43の加工処理のための第2加工経路MP2の、少なくとも二つの加工経路に分割する。以下では、第1加工経路MP1に沿って被加工物33に照射されるレーザ光を第1レーザ光MP1または第1光MP1とも表し、第2加工経路MP2に沿って被加工物43に照射されるレーザ光を第2レーザ光MP2または第2光MP2とも表す。ビームスプリッタ20は任意の方式でよいが、例えば、パルスレーザビームPLBに含まれるs偏光とp偏光を分割する偏光ビームスプリッタ(PBS: Polarizing Beam Splitter)でもよい。この場合、s偏光およびp偏光の一方が第1レーザ光MP1となり、s偏光およびp偏光の他方が第2レーザ光MP2となる。
【0020】
ビームスプリッタ20によってパルスレーザビームPLBから分割された第1レーザ光MP1、第2レーザ光MP2は、それぞれの照射対象または加工対象である被加工物33、43に向かう。図1の例では、ビームスプリッタ20によって分割された第1レーザ光MP1を被加工物33に向けるミラー30が設けられる。また、ビームスプリッタ20によって分割された第2レーザ光MP2は、そのまま被加工物43に向かうため、ミラー30のような追加的なミラーを設ける必要はない。
【0021】
ミラー30によって被加工物33に向けられた第1レーザ光MP1は、第1光学素子としての第1音響光学素子34に入射する。第1音響光学素子34は、第1光としての第1レーザ光MP1から第1光パルスを切り出す。具体的には、制御装置55から印加される第1パルス切出信号S1(電圧)に応じて、第1音響光学素子34を構成する強誘電性の結晶の格子定数が変化する結果、第1音響光学素子34の屈折率が変化する。図1の例では、第1音響光学素子34に第1パルス切出信号S1が加えられている間は、当該第1パルス切出信号S1に応じた屈折率に基づいて、第1レーザ光MP1が被加工物33に向かって直進し、第1音響光学素子34に第1パルス切出信号S1が加えられていない間は、第1音響光学素子34の本来の屈折率に基づいて、第1レーザ光MP1が被加工物33から逸れた方向に進んで第1ビームダンパ35に照射される(吸収される)。
【0022】
図2に模式的に示されるように、切出開始時刻Tonに、第1パルス切出信号S1の第1音響光学素子34への印加が開始し、パルスレーザビームPLB(第1レーザ光MP1)からの第1光パルスPの切出しが開始する。続いて、切出終了時刻Toffに、第1パルス切出信号S1の第1音響光学素子34への印加が終了し、パルスレーザビームPLB(第1レーザ光MP1)からの第1光パルスPの切出しが終了する。この結果、パルスレーザビームPLB(第1レーザ光MP1)から切り出された第1光パルスPが、被加工物33に向かう。一方、パルスレーザビームPLB(第1レーザ光MP1)のうち第1光パルスP以外の前後の部分は、第1ビームダンパ35に吸収される。ここで、第1光パルスPの強度が略一定となるように、切出開始時刻Tonおよび切出終了時刻Toffは、発光期間TeにおけるパルスレーザビームPLBの立上り中および直後と立下り中および直前の期間を避けて設定されるのが好ましい。
【0023】
ビームスプリッタ20によって被加工物43に向けられた第2レーザ光MP2は、第2光学素子としての第2音響光学素子44に入射する。第2音響光学素子44は、第2光としての第2レーザ光MP2から第2光パルスを切り出す。具体的には、制御装置55から印加される第2パルス切出信号S2(電圧)に応じて、第2音響光学素子44を構成する強誘電性の結晶の格子定数が変化する結果、第2音響光学素子44の屈折率が変化する。図1の例では、第2音響光学素子44に第2パルス切出信号S2が加えられている間は、当該第2パルス切出信号S2に応じた屈折率に基づいて、第2レーザ光MP2が被加工物43に向かって直進し、第2音響光学素子44に第2パルス切出信号S2が加えられていない間は、第2音響光学素子44の本来の屈折率に基づいて、第2レーザ光MP2が被加工物43から逸れた方向に進んで第2ビームダンパ45に照射される(吸収される)。
【0024】
パルスレーザビームPLB(第2レーザ光MP2)からの第2光パルスPの切出しは、図2に関して前述したパルスレーザビームPLB(第1レーザ光MP1)からの第1光パルスPの切出しと同様に行われる。
【0025】
以上のように、第1光学素子としての第1音響光学素子34が第1レーザ光MP1に対して施す第1光学的処理と、第2光学素子としての第2音響光学素子44が第2レーザ光MP2に対して施す第2光学的処理は、実質的に同じであるのが好ましい。但し、第1光学素子および第2光学素子は、音響光学素子34および44に限らず、任意の実質的に同じ光学的処理を施すものでもよい。例えば、後述する第1ビームスキャナ31および第2ビームスキャナ41を、本発明における第1光学素子および第2光学素子としてもよい。また、第1光学素子および第2光学素子は、必ずしも同じ光学的処理を施すものでなくてもよい。例えば、前述のミラー30を本発明における第1光学素子とし、前述のビームスプリッタ20を本発明における第2光学素子としてもよい。
【0026】
図1に模式的に示されるように、第1音響光学素子34の後段には、当該第1音響光学素子34によって切り出された第1光パルスを測定する第1測定部としての第1ビームセンサ36が設けられる。同様に、第2音響光学素子44の後段には、当該第2音響光学素子44によって切り出された第2光パルスを測定する第2測定部としての第2ビームセンサ46が設けられる。第1ビームセンサ36は、第1光学素子としての第1音響光学素子34を経た第1光MP1の第1測定結果を取得し、第2ビームセンサ46は、第2光学素子としての第2音響光学素子44を経た第2光MP2の第2測定結果を取得する。なお、図1では便宜的に、第1ビームセンサ36および第2ビームセンサ46を別体として示しているが、後述するように、これらは単一のセンサ(測定部)として構成されてもよい。
【0027】
第1ビームセンサ36および第2ビームセンサ46は、測定対象としての第1光MP1および第2光MP2が、照射対象または加工対象としての第1被加工物33および第2被加工物43に照射されていない非照射期間または非加工期間に、第1測定結果および第2測定結果を取得するのが好ましい。このような非照射期間または非加工期間としては、レーザ加工装置が被加工物33、43の加工を開始する前の準備期間またはセットアップ期間や、レーザ加工装置が被加工物33、43の交換を行う交換期間またはスイッチング期間が例示される。
【0028】
なお、第1ビームセンサ36および第2ビームセンサ46は、測定対象としての第1光MP1および第2光MP2が、照射対象または加工対象としての第1被加工物33および第2被加工物43に照射されている照射期間または加工期間に、第1測定結果および第2測定結果をリアルタイムで取得してもよい。この場合、第1被加工物33および第2被加工物43に照射される前の第1光MP1および第2光MP2の一部を抽出して、第1ビームセンサ36および第2ビームセンサ46に提供する光抽出部が設けられるのが好ましい。例えば、光抽出部として機能しうる第1fθレンズ32および第2fθレンズ42によって、第1被加工物33および第2被加工物43に照射される前の第1光MP1および第2光MP2の一部を抽出して、第1ビームセンサ36および第2ビームセンサ46に提供してもよい。この場合の第1ビームセンサ36および第2ビームセンサ46は、例えば、ステージ50に取り付けられる不図示の単一の電力測定装置(パワーメータ)として構成できる。
【0029】
第1ビームセンサ36および第2ビームセンサ46が取得する第1測定結果および第2測定結果は、それぞれの測定対象としての第1光MP1および第2光MP2を直接的または間接的に比較可能なものであればよい。例えば、第1ビームセンサ36は、第1光学素子としての第1音響光学素子34を経た第1光MP1(第1光パルス)の第1断面に関する第1測定結果を取得し、第2ビームセンサ46は、第2光学素子としての第2音響光学素子44を経た第2光MP2(第2光パルス)の第2断面に関する第2測定結果を取得する。ここで、第1光MP1および/または第2光MP2の断面に関する測定結果としては、当該第1光MP1および/または当該第2光MP2の断面の径(ビーム径)、サイズ(ビームサイズ)、形状(ビーム形状)、プロファイル(ビームプロファイル)、強度分布(ビーム強度分布)等が例示される。
【0030】
第1光MP1および第2光MP2が第1被加工物33および第2被加工物43に対して実質的に同じ加工処理を施す本実施形態では、第1ビームセンサ36によって取得される第1光MP1の第1断面に関する第1測定結果と、第2ビームセンサ46によって取得される第2光MP2の第2断面に関する第2測定結果が、実質的に等しくなるのが好ましい。そこで、本実施形態では、後述するように、第1測定結果と第2測定結果の差が低減されるように、第1音響光学素子34および/または第2音響光学素子44の温度が適切に調整される。
【0031】
第1音響光学素子34によって切り出された第1光パルス(第1レーザ光MP1)は、第1ビームスキャナ31に入射する。第1ビームスキャナ31は、第1光パルス(第1レーザ光MP1)を水平面等の二次元平面またはXY平面(図1における上下方向を法線方向(Z軸方向)とする平面)内で走査(スキャン)する。第1ビームスキャナ31は、例えば、ガルバノスキャナによって構成される。詳細な図示は省略するが、第1ビームスキャナ31を構成するガルバノスキャナは、第1光パルス(第1レーザ光MP1)を反射可能なガルバノミラーと、当該ガルバノミラーを一または複数の任意の回転軸の周りに回転駆動するモータを備える。このモータは、制御装置55からの第1走査信号G1に応じてガルバノミラーを回転駆動し、第1光パルス(第1レーザ光MP1)をXY平面内の任意の位置(すなわち、第1被加工物33上の任意の位置)に照射する。
【0032】
なお、以上のような第1被加工物33に対する第1光パルス(第1レーザ光MP1)の二次元走査は、第1ビームスキャナ31に加えてまたは代えて、ステージ50によって行われてもよい。例えば、第1ビームスキャナ31が第1光パルス(第1レーザ光MP1)のX軸方向(例えば、図1における左右方向)の走査を担い、Y軸方向(例えば、図1における紙面に垂直な方向)に駆動可能なステージ50がY軸方向の走査を担ってもよい。また、ステージ50がX軸方向およびY軸方向に駆動可能である場合、ステージ50のみで二次元走査を実現できるため、第1ビームスキャナ31(および第2ビームスキャナ41)を設けなくてもよい。
【0033】
第2音響光学素子44によって切り出された第2光パルス(第2レーザ光MP2)は、第2ビームスキャナ41に入射する。第2ビームスキャナ41は、第2光パルス(第2レーザ光MP2)をXY平面内で走査(スキャン)する。第2ビームスキャナ41は、例えば、第1ビームスキャナ31と同様に、ガルバノスキャナによって構成される。このガルバノスキャナのモータは、制御装置55からの第2走査信号G2に応じてガルバノミラーを回転駆動し、第2光パルス(第2レーザ光MP2)をXY平面内の任意の位置(すなわち、第2被加工物43上の任意の位置)に照射する。第1レーザ光MP1および第2レーザ光MP2が第1被加工物33および第2被加工物43に対して実質的に同じ加工処理を施す本実施形態では、第1ビームスキャナ31に与えられる第1走査信号G1と、第2ビームスキャナ41に与えられる第2走査信号G2は実質的に等しい。
【0034】
第1fθレンズ32および第2fθレンズ42は、第1ビームスキャナ31および第2ビームスキャナ41によって一次元または二次元に走査(スキャン)された第1光パルス(第1レーザ光MP1)および第2光パルス(第2レーザ光MP2)を、照射対象または加工対象の第1被加工物33および第2被加工物43の任意の位置にそれぞれ集光して穴開け等の加工を行う。以上のように、第1ビームスキャナ31および第1fθレンズ32は、第1光学素子としての第1音響光学素子34を経た第1レーザ光MP1を第1被加工物33に照射する第1加工部を構成する。また、第2ビームスキャナ41および第2fθレンズ42は、第2光学素子としての第2音響光学素子44を経た第2レーザ光MP2を第2被加工物43に照射する第2加工部を構成する。
【0035】
表示装置56は、レーザ加工装置の操作者や管理者に対して、レーザ加工装置および/または制御装置55に関する各種の情報を表示する。入力装置57は、レーザ加工装置の操作者や管理者からの、レーザ加工装置および/または制御装置55に対する各種の入力(例えば、レーザ加工のための各種の制御パラメータ)を受け付ける。表示装置56および入力装置57は、タッチパネルとして一体的に構成されてもよい。
【0036】
図3は、図1のレーザ加工装置に設けられる本実施形態に係る光調整装置60を模式的に示す。光調整装置60は、主に、第1光学素子としての第1音響光学素子34と、第2光学素子としての第2音響光学素子44の温度を適切に制御することによって、第1光としての第1レーザ光MP1と、第2光としての第2レーザ光MP2を適切に調整する。この目的のために、光調整装置60は、第1光学素子としての第1音響光学素子34の温度を調整する第1調温部と、第2光学素子としての第2音響光学素子44の温度を調整する第2調温部を備える。図3の例における第1調温部および第2調温部は、それぞれ第1音響光学素子34および第2音響光学素子44に冷却水等の冷媒を供給する第1冷却路B1および第2冷却路B2である。
【0037】
第1冷却路B1および第2冷却路B2に供給される冷媒は、好ましくは単一の冷媒供給源64から供給される。冷媒供給源64からの冷媒は、冷媒分割部65において、少なくとも第1音響光学素子34向けの第1冷却路B1と、第2音響光学素子44向けの第2冷却路B2に分割される。このように、主に第1音響光学素子34および第2音響光学素子44を冷却するために、互いに異なる第1冷却路B1および第2冷却路B2が形成される。
【0038】
主に第1音響光学素子34向けの第1冷却路B1の任意の箇所には、当該第1冷却路B1における冷媒の供給量または流量を制御または調整可能な第1流量制御弁61が設けられる。同様に、主に第2音響光学素子44向けの第2冷却路B2の任意の箇所には、当該第2冷却路B2における冷媒の供給量または流量を制御または調整可能な第2流量制御弁62が設けられる。後述するように、温度制御部63が第1流量制御弁61および第2流量制御弁62を個別に制御することによって、第1冷却路B1および第2冷却路B2における冷媒の流量が個別に制御される。この結果、第1音響光学素子34および第2音響光学素子44の温度が個別に調整される。なお、第1冷却路B1および第2冷却路B2における冷媒の相対的な流量を制御する(すなわち、第1音響光学素子34および第2音響光学素子44の相対的な温度を制御する)目的では、第1流量制御弁61および第2流量制御弁62のいずれかが設けられていればよい。
【0039】
図3の例では、主に第1音響光学素子34向けの第1冷却路B1に、他の冷却対象としての第1ビームスキャナ31が配置されてもよい。同様に、主に第2音響光学素子44向けの第2冷却路B2に、他の冷却対象としての第2ビームスキャナ41が配置されてもよい。但し、後述する第1ビームセンサ36および第2ビームセンサ46によって測定される第1レーザ光MP1および第2レーザ光MP2の断面の特性(径、サイズ、形状、プロファイル、強度分布等)への寄与が大きい第1音響光学素子34および第2音響光学素子44を、それぞれ第1冷却路B1および第2冷却路B2の最上流に配置するのが好ましい。この場合、第1ビームスキャナ31や第2ビームスキャナ41等の他の光学素子によって温められる前の比較的低温の冷媒によって、第1音響光学素子34および第2音響光学素子44を効果的に冷却できる。
【0040】
第1冷却路B1および第2冷却路B2は、下流側において一つの冷却路に合流してもよい。そして、合流後の一つの冷却路には、レーザ加工装置における他の光学素子(光学系11、ビームスプリッタ20、ミラー30等)が配置されてもよい。なお、上記と同様に、第1音響光学素子34および第2音響光学素子44を効果的に冷却するために、これらの他の光学素子は第1冷却路B1および第2冷却路B2の下流側に配置されるのが好ましい。このように、レーザ加工装置における各種の光学素子が、好ましくは単一の冷媒供給源64から供給される冷媒によって効率的に冷却される。特に、最上流(あるいは冷媒供給源64の直後)に配置される第1音響光学素子34および第2音響光学素子44が効果的に冷却される。レーザ加工装置における各種の光学素子を冷却した後の冷媒は冷媒供給源64に還流されてもよく、必要に応じて再冷却された上で再び使用されてもよい。
【0041】
温度制御部63は、第1ビームセンサ36による第1測定結果と、第2ビームセンサ46による第2測定結果の比較に基づいて、第1調温部および第2調温部の少なくともいずれかを制御する。図3の例では、温度制御部63が、第1流量制御弁61および第2流量制御弁62の少なくともいずれかを制御することによって、第1冷却路B1および第2冷却路B2の少なくともいずれかにおける冷媒の供給量または流量を制御する。
【0042】
温度制御部63は、第1ビームセンサ36による第1測定結果から認識される第1レーザ光MP1の第1断面と、第2ビームセンサ46による第2測定結果から認識される第2レーザ光MP2の第2断面の差を低減するように、第1調温部(第1流量制御弁61)および第2調温部(第2流量制御弁62)の少なくともいずれかを制御する。例えば、第1レーザ光MP1および第2レーザ光MP2が第1被加工物33および第2被加工物43に対して実質的に同じ加工処理を施す本実施形態では、第1ビームセンサ36による第1測定結果から認識される第1レーザ光MP1の第1断面の特性(径、サイズ、形状、プロファイル、強度分布等)と、第2ビームセンサ46による第2測定結果から認識される第2レーザ光MP2の第2断面の対応する特性の差が最小化されるように、第1調温部(第1流量制御弁61)および第2調温部(第2流量制御弁62)の少なくともいずれかが制御される。
【0043】
以上のような本実施形態では、第1音響光学素子34(第1光学素子)を経た第1光MP1の第1測定結果と、第2音響光学素子44(第2光学素子)を経た第2光MP2の第2測定結果の比較に基づいて、第1調温部および第2調温部の少なくともいずれかが制御される。このように、第1測定結果および第2測定結果の一方を他方のリファレンスとして利用することで、各測定結果が所望の関係となるように各光学素子の温度を各調温部によって適切に調整できる。
【0044】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0045】
以上の実施形態では、温度制御部63が、第1ビームセンサ36からの第1測定結果と、第2ビームセンサ46からの第2測定結果に基づいて、第1調温部(第1流量制御弁61)および/または第2調温部(第2流量制御弁62)を制御したが、第1音響光学素子34や第2音響光学素子44の温度を測定可能な温度センサが設けられる場合には、これらの温度測定結果を第1測定結果および第2測定結果に加えて、第1調温部および/または第2調温部の制御において考慮してもよい。
【0046】
以上の実施形態では、第1調温部および第2調温部が、個別に冷媒の流量を制御可能な第1冷却路B1および第2冷却路B2によって構成されたが、例えば、第1音響光学素子34を直接的に冷却可能な冷却素子によって第1調温部を構成し、第2音響光学素子44を直接的に冷却可能な冷却素子によって第2調温部を構成してもよい。このような場合でも、温度制御部63は、第1ビームセンサ36からの第1測定結果と、第2ビームセンサ46からの第2測定結果に基づいて、第1音響光学素子34および/または第2音響光学素子44の温度を個別に制御できる。
【0047】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0048】
10 レーザ光源、20 ビームスプリッタ、33 第1被加工物、34 第1音響光学素子、36 第1ビームセンサ、43 第2被加工物、44 第2音響光学素子、46 第2ビームセンサ、60 光調整装置、61 第1流量制御弁、62 第2流量制御弁、63 温度制御部、64 冷媒供給源、65 冷媒分割部、B1 第1冷却路、B2 第2冷却路、MP1 第1レーザ光、MP2 第2レーザ光。
図1
図2
図3