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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072482
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】炊飯器用蓋ヒンジ機構
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
A47J27/00 103P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183316
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】592245432
【氏名又は名称】スタッフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】山本 正己
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA02
4B055BA56
4B055CA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】蓋部の全開時において蓋部の下端部と本体部との間に十分な隙間を確保し蓋部の下端部周辺における本体部の清掃性を向上させた炊飯器用蓋ヒンジ機構を提供する。
【解決手段】固定フレーム51に左・右ラック57L,57Rをそれぞれ設ける。可動フレーム52に軸受け部52b、ばね係止逆L形片52cをそれぞれ形成する。軸受け部52bに回転軸58と左・右ピニオン軸59L,59Rをそれぞれ設け、回転軸58に左・右歯車55L,55Rを、左・右ピニオン軸59L,59Rに左・右ピニオンギヤ56L,56Rを左・右歯車55L,55Rと左・右ラック57L,57Rの双方に噛合するように、それぞれ設ける。蓋連結フレーム53を左・右回動フレーム54L,54Rを介して回転軸58に係止する。左・右第1トーションばね61L,61Rを回転軸58を介して一端を可動フレーム52に係止し、他端を蓋連結フレーム53に係止する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱機構を有する本体部(10)を閉じる蓋部(30)を、弾性部材(60L、60R、61L、61R)の復元力(F1、F2)によって回転軸(58)を中心に回転させる炊飯器用蓋ヒンジ機構(50)であって、
前記蓋部(30)は、前記復元力(F1、F2)によって前記回転軸(58)を前記本体部(10)に対し上方に相対移動させる軸駆動部(50A)を備える
ことを特徴とする炊飯器用蓋ヒンジ機構。
【請求項2】
請求項1に記載の炊飯器用蓋ヒンジ機構において、
前記軸駆動部(50A)は、前記回転軸(58)に回転同期した第1歯車(55L、55R)と、前記本体部(10)に対し静止したラック(57L、57R)と、前記第1歯車(55L,55R)と前記ラック(57L、57R)の双方に常時噛合した第2歯車(56L、56R)とを有する
ことを特徴とする炊飯器用蓋ヒンジ機構。
【請求項3】
請求項1に記載の炊飯器用蓋ヒンジ機構において、
前記軸駆動部(50A)は、前記本体部(10)に対し一体化された固定フレーム(51)と、前記蓋部(20)に対し一体化され前記固定フレーム(51)に対し上方に相対移動可能な可動フレーム(52)とを有する
ことを特徴とする炊飯器用蓋ヒンジ機構。
【請求項4】
請求項3に記載の炊飯器用蓋ヒンジ機構において、
前記固定フレーム(51)は前記可動フレーム(52)の移動を規制する規制部材(51a)を有すると共に、前記可動フレーム(52)は前記規制部材(51a)に係合する切欠き(52a)を有する
ことを特徴とする炊飯器用蓋ヒンジ機構
【請求項5】
請求項3に記載の炊飯器用蓋ヒンジ機構において、
前記可動フレーム(52)は前記弾性部材(61L、61R)の一端を係止する切欠き(52d)を有すると共に、前記固定フレーム(51)は前記弾性部材(61L、61R)を通過させる切欠き(51b)を有する
ことを特徴とする炊飯器用蓋ヒンジ機構。
【請求項6】
請求項1に記載の炊飯器用蓋ヒンジ機構において、
前記可動フレーム(52)は前記弾性部材(60L、60R)に挿通しながらの該弾性部材(61L、61R)の一端を係止させる部位(52c)を有すると共に、前記固定フレーム(51)は前記弾性部材(60L、60R)の他端を係止させる部位(51c)を有する
ことを特徴とする炊飯器用蓋ヒンジ機構。
【請求項7】
請求項2に記載の炊飯器用蓋ヒンジ機構において、
前記可動フレーム(52)は前記回転軸(58)を回転自在に支持すると共に前記第2歯車(56L、56R)に係る軸(59L、59R)を支持する軸受け部(52b)を有する
ことを特徴とする炊飯器用蓋ヒンジ機構。
【請求項8】
請求項1に記載の炊飯器用蓋ヒンジ機構において、
前記回転軸(58)の全部または一部の断面は、矩形の両端が円弧に成形された矩形軸である
ことを特徴とする炊飯器用蓋ヒンジ機構。
【請求項9】
請求項1に記載の炊飯器用蓋ヒンジ機構において、
前記蓋部(30)には前記弾性部材(61L、61R)の他端を係止させる蓋連結フレーム(53)が固定されると共に、前記回転軸(58)には前記蓋連結フレーム(53)に一体化しながら該回転軸(58)と前記蓋連結フレーム(53)を回転同期させる回動フレーム(54L、54R)が係止されている
ことを特徴とする炊飯器用蓋ヒンジ機構。
【請求項10】
請求項9に記載の炊飯器用蓋ヒンジ機構において、
前記回転軸(58)には、前記回動フレーム(54L、54R)又は前記蓋連結フレーム(53)が当接する他の弾性部材(62L、62R)が係止されている
ことを特徴とする炊飯器用蓋ヒンジ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯器用蓋ヒンジ機構に関し、より詳細には蓋部の全開時において蓋部の下端部と本体部との間に十分な隙間を確保し蓋部の下端部周辺における本体部の清掃性を向上させた炊飯器用蓋ヒンジ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
図7及び図8は、従来の炊飯器、従来の炊飯器用蓋ヒンジ機構をそれぞれ示す説明図である。図8に示されるように、従来の炊飯器用蓋ヒンジ機構は、本体部に一体化される固定フレームと、その固定フレームに回転自在に支持される回転軸と、蓋部に一体化され回転軸と回転同期した回動フレームと、回転軸に巻き掛けられると共に一端を固定フレームに係止され、他端を蓋部に係止されたトーションばねとから構成されている。従って、図7に示されるように蓋ロック機構が解除されると、トーションばねの弾性力により蓋部が回転軸を中心に開くようになる。
【0003】
図8に示されるように、蓋部の全開時においては、蓋部の下端部は本体部の内部に入り込むようになっている。そのため、蓋部の下端部と本体部との間に、人の指が入る隙間は殆ど無く、蓋ヒンジ機構周辺の本体部を清掃することが出来なかった。また、蓋ヒンジ機構周辺に水分、ご飯粒が侵入する場合、最終的には本体部の内部に侵入することになるため、これらを除去することが難しく衛生上あまり好ましくなかった。
【0004】
ところで、炊飯器用蓋ヒンジ機構として、蓋部の回動を制動するロータリーダンパーを備えた蓋ヒンジ機構が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。この蓋ヒンジ機構では、蓋部の回転軸を回転自在に支持する2つの軸受け部の外周にラック歯がそれぞれ形成され、そのラック歯に噛合する歯車の回転軸にロータリーダンパーがそれぞれ取り付けられている。従って、蓋部がトーションばねによって開かれる際に、歯車が回転し、歯車の回転を止めるような制動力をロータリーダンパーが発生する。これにより、蓋部の開閉動作が円滑化されることとされている。同様に、ヒンジ軸にロータリーダンパーを直に接続した蓋ヒンジ機構も知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
また、トーションばねが巻かれたヒンジ軸の下方に、ブレーキゴムが巻かれたブレーキ軸を別個独立に設けた蓋ヒンジ機構が知られている(例えば、特許文献3を参照。)。この蓋ヒンジ機構では、蓋部がトーションばねによって開かれる際に、蓋部の下端部がブレーキゴムに当接し、これにより蓋部の開動作が円滑化されることとされている。
【0006】
また、蓋がトーションばねによって開かれる際に、摩擦板が蓋の回転に制動をかけるように構成された蓋ヒンジ機構が知られている(例えば、特許文献4を参照。)。この蓋ヒンジ機構では、斜め長穴に回転自在に設置されたピニオンギヤがドライブギヤに常時噛合している一方、そのピニオンギヤの軸に固定されたウォームホイールがウォーム軸に噛合可能に構成されている。また、ウォーム軸には摩擦板が固定されている。そして、蓋部の開動作によってドライブギヤがピニオンギヤを回転駆動して、ピニオンギヤの軸が斜め長穴を摺動することになる。そして、ウォームホイールがウォーム軸に噛合することになる。ウォーム軸が回転されることにより、摩擦板が拡開してケース内壁に接触して摩擦力が発生する。この摩擦力によって蓋部の開動作に対し制動力がかけられることになる。他方、蓋部の閉動作の際は、ドライブギヤがピニオンギヤを逆方向に回転駆動して、ピニオンギヤの軸が斜め長穴を逆方向に摺動する。そして、ウォームホイールがウォーム軸に非係合状態となる。これにより、摩擦板はケース内壁に接触しなくなり摩擦力が発生することはなくなる。これにより蓋部の閉動作が円滑化されることとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-7264号公報
【特許文献2】特開2005-211322号公報
【特許文献3】特開平5-115353号公報
【特許文献4】特開平7-171053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献に記された蓋ヒンジ機構は何れも蓋部の全開時において、蓋部の下端部は本体部の内部に入り込むようになっている。そのため、蓋部の下端部と本体部との間に、人の指が入る隙間は殆ど無く、蓋ヒンジ機構周辺の本体部を清掃することが出来ないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであり、その目的は、蓋部の全開時において蓋部の下端部と本体部との間に十分な隙間を確保し蓋部の下端部周辺における本体部の清掃性を向上させた炊飯器用蓋ヒンジ機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る炊飯器用蓋ヒンジ機構は、加熱機構を有する本体部(10)を閉じる蓋部(30)を、弾性部材(60L、60R、61L、61R)の復元力(F1、F2)によって回転軸(58)を中心に回転させる炊飯器用蓋ヒンジ機構(50)であって、前記蓋部(30)は、前記復元力(F1、F2)によって前記回転軸(58)を前記本体部(10)に対し上方に相対移動させる軸駆動部(50A)を備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成では、蓋部(30)の全開時に、前記蓋部(30)の下端部と前記本体部(10)の上端部との間に隙間が形成されるようになる。
うになる。
【0012】
本発明に係る炊飯器用蓋ヒンジ機構の第2の特徴は、前記軸駆動部(50A)は、前記回転軸(58)に回転同期した第1歯車(55L、55R)と、前記本体部(10)に対し静止したラック(57L、57R)と、前記第1歯車(55L,55R)と前記ラック(57L、57R)の双方に常時噛合した第2歯車(56L、56R)とを有することである。
【0013】
上記構成では、弾性部材(61L、61R)の復元力(F1)によって蓋部(30)が開き、第1歯車(55L、55R)が回転駆動される場合、第2歯車(56L、56R)は第1歯車(55L、55R)とは逆方向に回転し、ラック(57L、57R)に沿って上方に移動し、回転軸(58)は本体部(10)に対し上方に相対移動することになる。
【0014】
或いは、弾性部材(60L、60R)の復元力(F2)によって第2歯車(56L、56R)が回転駆動される場合、第2歯車(56L、56R)はラック(57L、57R)に沿って上方に移動し、回転軸(58)を本体部(10)に対し上方に相対移動させながら、第1歯車(55L、55R)を第2歯車(56L、56R)とは逆方向に回転させ、蓋部(30)が開くことになる。
【0015】
本発明に係る炊飯器用蓋ヒンジ機構の第3の特徴は、前記軸駆動部(50A)は、前記本体部(10)に対し一体化された固定フレーム(51)と、前記蓋部(20)に対し一体化され前記固定フレーム(51)に対し上方に相対移動可能な可動フレーム(52)とを有することである。
【0016】
上記構成では、固定フレーム(51)に対しラック(57L、57R)を取り付けることが可能となる。可動フレーム(52)には回転軸(58)、第1歯車(55L、55R)、第2歯車(56L、56R)を取り付けることが可能となる。
【0017】
本発明に係る炊飯器用蓋ヒンジ機構の第4の特徴は、前記固定フレーム(51)は前記可動フレーム(52)の移動を規制する規制部材(51a)を有すると共に、前記可動フレーム(52)は前記規制部材(51a)に係合する切欠き(52a)を有することである。
【0018】
上記構成では、可動フレーム(52)を固定フレーム(51)に対し相対移動(スライド移動)させること、すなわち、蓋部(30)の回転と共に蓋部(30)を本体部(10)に対し上方に相対移動(スライド移動)させることが可能となる。
【0019】
本発明に係る炊飯器用蓋ヒンジ機構の第5の特徴は、前記可動フレーム(52)は前記弾性部材(61L、61R)の一端を係止する切欠き(52d)を有すると共に、前記固定フレーム(51)は前記弾性部材(61L、61R)を通過させる切欠き(51b)を有することである。
【0020】
上記構成では、前記弾性部材(61L、61R)の復元力(F1)によって可動フレーム(52)を固定フレーム(51)に対し相対移動(スライド移動)させること、すなわち、蓋部(30)の回転と共に蓋部(30)を本体部(10)に対し上方に相対移動(スライド移動)させることが可能となる。
【0021】
本発明に係る炊飯器用蓋ヒンジ機構の第6の特徴は、前記可動フレーム(52)は前記弾性部材(60L、60R)に挿通しながらの該弾性部材(61L、61R)の一端を係止させる部位(52c)を有すると共に、前記固定フレーム(51)は前記弾性部材(60L、60R)の他端を係止させる部位(51c)を有することである。
【0022】
上記構成では、前記弾性部材(60L、60R)の復元力(F2)によって可動フレーム(52)を固定フレーム(51)に対し相対移動(スライド移動)させること、すなわち、蓋部(30)を本体部(10)に対し上方に相対移動(スライド移動)させながら蓋部(30)を回転軸(58)の回りに回転させることが可能となる。
【0023】
本発明に係る炊飯器用蓋ヒンジ機構の第7の特徴は、前記可動フレーム(52)は前記回転軸(58)を回転自在に支持すると共に前記第2歯車(56L、56R)に係る軸(59L、59R)を支持する軸受け部(52b)を有することである。
【0024】
上記構成では、蓋部(30)の本体部(10)に対する相対移動と、蓋部(30)の回転軸(58)を中心とした回転運動を同時に行うことが可能となる。
【0025】
本発明に係る炊飯器用蓋ヒンジ機構の第8の特徴は、前記回転軸(58)の全部または一部の断面は、矩形の両端が円弧に成形された矩形軸であることである。
【0026】
上記構成では、回転軸(58)に係止される第1歯車(55L、55R)を回転軸(58)に回転同期させることが可能となる。
【0027】
本発明に係る炊飯器用蓋ヒンジ機構の第9の特徴は、前記蓋部(30)には前記弾性部材(61L、61R)の他端を係止させる蓋連結フレーム(53)が固定されると共に、前記回転軸(58)には前記蓋連結フレーム(53)に一体化しながら該回転軸(58)と前記蓋連結フレーム(53)を回転同期させる回動フレーム(54L、54R)が係止されていることである。
【0028】
上記構成では、蓋部(30)と回転軸(58)を回転同期させることが可能となる。
【0029】
本発明に係る炊飯器用蓋ヒンジ機構の第10の特徴は、前記回転軸(58)には、前記回動フレーム(54L、54R)又は前記蓋連結フレーム(53)が当接する他の弾性部材(62L、62R)が係止されていることである。
【0030】
上記構成では、蓋部(30)の全開時における本体部(10)に対する衝撃を好適に緩和・吸収することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の炊飯器用蓋ヒンジ機構によれば、蓋が開くと同時に蓋部が本体部に対し上方に相対移動し、蓋の全開時において蓋部の下端部と本体部との間に十分な隙間を確保し蓋部の下端部周辺における本体部の清掃性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】蓋部が閉じた状態における本発明に係る炊飯器を示す正面図である。
図2】蓋部が開いた状態における本発明に係る炊飯器を示す正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る蓋ヒンジ機構を示す斜視説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る蓋ヒンジ機構の軸駆動部を示す斜視説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る蓋ヒンジ機構の正面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る蓋ヒンジ機構の動作を示す説明図である。
図7】従来の炊飯器を示す説明図である。
図8】従来の炊飯器用蓋ヒンジ機構を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0034】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る蓋ヒンジ機構50が組み込まれた炊飯器100を示す説明図である。図1は蓋部30が閉じた状態における本発明に係る炊飯器100を示す正面図である。図2は蓋部30が開いた状態における本発明に係る炊飯器100を示す正面図である。なお、蓋ヒンジ機構50の詳細については図3から図6を参照しながら後述する。
【0035】
図1に示されるように、本体部10は固定フレーム51に一体化され、蓋部30は蓋ヒンジ機構50の蓋連結フレーム53に一体化されている。なお、詳細については後述するが、蓋連結フレーム53は、左・右回動フレーム54L,54R(図3)を介して回転軸58に回転同期し、回転軸58は固定フレーム51に対しスライド移動可能な可動フレーム52(図2)に回転自在に取り付けられている。
【0036】
図2に示されるように、蓋部30と本体部10との間の蓋ロック機構(図示せず)が解除される場合、蓋部30は回転軸58を中心にして自動的に開くと同時に、可動フレーム52が上方に固定フレーム51に沿って上方に移動量dだけスライド移動して蓋部30の下端部と本体部10との間に隙間が形成されるようになっている。隙間が形成されることにより、蓋ヒンジ機構50の周辺部における本体部10の清掃性を向上させることが可能となる。
【0037】
なお、回転軸58には蓋部30の全開時の回転トルク(衝撃)を吸収するための左・右トーションばね62L,62R(図3)が両端にそれぞれ設けられている。その衝撃緩和機構については図6を参照しながら後述する。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態に係る蓋ヒンジ機構50を示す斜視説明図である。図4は、蓋ヒンジ機構50の軸駆動部50Aを示す斜視説明図である。図5は、蓋ヒンジ機構50の正面図である。なお、図3及び図5は蓋部30が全閉状態における図1のA矢視方向から見た蓋ヒンジ機構50の斜視図、正面図である。一方、図4は蓋部30が全開状態における図2のA矢視方向から見た蓋ヒンジ機構50の駆動部の斜視図である。
【0039】
図3に示されるように、この蓋ヒンジ機構50は、炊飯器100の本体部10に固定されながら可動フレーム52をスライド移動可能に支持する固定フレーム51と、左・右歯車55L,55Rおよび左・右ピニオンギヤ56L,56Rが取り付けられた可動フレーム52と、炊飯器100の蓋部30に固定される蓋連結フレーム53と、蓋連結フレーム53を回転軸58の回転に同期連動させる左・右回動フレーム54L,54Rと、左・右第1トーションばね61L,61Rの弾性力を回転トルクとして伝達する左・右歯車55L,55Rと、左・右歯車55L,55Rと左・右ラック57L,57Rの双方にそれぞれ噛み合う左・右ピニオンギヤ56L,56Rと、回転トルクを推力に変換する左・右ラック57L,57Rと、蓋部30の回転中心となる回転軸58と、左・右ピニオンギヤ56L,56Rを回転自在に支持する左・右ピニオン軸59L,59Rと、可動フレーム52を上方にそれぞれ押し上げる左・右コイルばね60L,60Rと、蓋部30を回転させる左・右第1トーションばね61L,61Rと、蓋部30が全開になる時の衝撃を吸収する左・右第2トーションばね62L,62Rと、左・右第2トーションばね62L,62の回転軸58からの脱軸(抜け)を防止するCリング63とを具備して構成されている。以下、各構成について更に説明する。
【0040】
固定フレーム51は、両側部・下部がそれぞれ垂直に折り曲げられた板形状を成している。下部の水平片51cは左・右コイルばね60L,60Rを自由状態で支持している。
【0041】
図4に示されるように、固定フレーム51の背面部には可動フレーム52の切欠き52a(3箇所)に係合するストッパーピン51aがナット(図示せず)によって取り付けられている。従って、可動フレーム52はストッパーピン51aに沿って固定フレーム51に対し上下にスライド移動することになる。可動フレーム52の固定フレーム51に対する移動量d(図2)はストッパーピン51aと切欠き52aによって規定されることになる。
【0042】
固定フレーム51の背面部には左・右第1トーションばね61L,61Rの一端が通過するためのばね通過切欠き51bが左右にそれぞれ形成されている。因みに、左・右第1トーションばね61L,61Rの他端は、蓋連結フレーム53にそれぞれ係止されている。
【0043】
図4に示されるように、可動フレーム52は上部に回転軸58を回転自在に支持すると共に左・右ピニオン軸59L,59Rを支持するための2つの軸受け部52bがそれぞれ形成され、且つ下部には左・右コイルばね60L,60Rが通される2つのばね係止逆L形片52cがそれぞれ形成されている。
【0044】
図3に示されるように、蓋連結フレーム53は両端部が垂直下方に折り曲げられ、且つ長辺部の一方が垂直上方に折曲げられた板形状を成している。両端部の折曲げ部(垂直片53b)はネジ(図示せず)によって蓋部30に一体化される。
【0045】
図5に示されるように、左・右回動フレーム54L,54Rは、一端が蓋連結フレーム53にそれぞれ固定され他端が回転軸58にそれぞれ係止されている。なお、回転軸58が貫通する左・右回動フレーム54L,54Rの各貫通穴の形状については、矩形の両端に円弧が結合した形状を成している。因みに、図4に示されるように、回転軸58の左・右回動フレーム54L,54Rを貫通する部位の断面も矩形の両端に円弧が結合した形状を成している。従って、左・右回動フレーム54L,54Rは、回転に関し回転軸58に同期している。
【0046】
図4に示されるように、左・右歯車55L,55Rは、例えば平歯車を使用することができる。なお、左・右歯車55L,55Rは左・右ピニオンギヤ56L,56Rに噛み合う歯車であれば良く、歯面が軸に平行な平歯車に限定されず、歯面が軸に対し傾斜した歯車であっても良い。また、回転軸58が各貫通する左・右歯車55L,55Rの貫通穴の形状については、矩形の両端に円弧が結合した形状を成している。従って、左・右歯車55L,55Rは、回転に関し回転軸58に同期している。
【0047】
図5に示されるように、左・右ピニオンギヤ56L,56Rは、左・右ピニオン軸59L,59Rに対し回転自在に支持されている。左・右ピニオンギヤ56L,56Rは、左・右歯車55L,55Rから伝達される回転トルクの回転方向を逆向きに変換して左・右ラック57L,57Rに伝達する。従って、図5に示されるように、蓋部30が開いて蓋連結フレーム53が図上手前に回転する場合、左・右歯車55L,55Rは図上下向き矢印の通り回転する。その結果、左・右ピニオンギヤ56L,56Rは、図上上向き矢印の通り回転することになる。左・右ラック57L,57Rは固定フレーム51に固定されているため、左・右ピニオンギヤ56L,56Rは左・右ラック57L,57R上を図上上向きに回転移動する。これにより、可動フレーム52が図上上向きに固定フレーム51に対しスライド移動することになる。
【0048】
図5に示されるように、左・右ラック57L,57Rは、ラック固定ねじ57aによって固定フレーム51に固定されている。従って、左・右ラック57L,57Rは本体部10に対し常に不動状態である。
【0049】
図4に示されるように、回転軸58は、可動フレーム52の左右の軸受け部52bによって回転自在に支持されている。回転軸58の断面形状について、左右の軸受け部52bによって挟まれた区間における断面形状は円形であるのに対し、その外側の区間における断面形状は、矩形の両側に円弧が組み合わされた形状である。従って、回転軸58は左右の軸受け部52bに対し回転自在である一方、左・右回動フレーム54L,54Rおよび左・右歯車55L,55Rに対しては回転同期している。
【0050】
図5に示されるように、左・右ピニオン軸59L,59Rは、一方の端部に雄ねじが各々形成され、軸固定ナット59の雌ねじによって可動フレーム52の軸受け部52bにそれぞれ締結固定されている。また、左・右ピニオン軸59L,59Rの他端には、左・右ピニオンギヤ56L,56Rの軸方向の移動を規制するCリング59bがそれぞれ取り付けられている。
【0051】
図5に示されるように、左・右コイルばね60L,60Rは、自由状態で固定フレーム51の水平片51cに置かれている。縦方向の伸縮については「固定フレーム51の水平片51c」と「ばね係止逆L形片52cの水平部」によって規制されている。また、横方向の移動については「ばね係止逆L形片52cの垂直部」によって規制されている。
【0052】
左・右第1トーションばね61L,61Rは、蓋部30を開く方向に付勢されている。左・右第1トーションばね61L,61Rは、可動フレーム52の左右の軸受け部52bの間に回転軸58を介して取り付けられている。一方の端部は可動フレーム52のばね係止切欠き52dに、他方の端部は蓋連結フレーム53にそれぞれ係止されている。
【0053】
左・右第2トーションばね62L,62Rは、左・右歯車55L,55Rの外側に回転軸58を介して取り付けられている。2つのCリング63によって横方向の移動はそれぞれ規制されている。一方の端部は左・右ピニオン軸59L,59Rにそれぞれ係止している。他方の端部は、蓋部30が開く際に左・右回動フレーム54L,54Rの左・右コの字片54La,54Raにそれぞれ係合し、これにより蓋部30の全開による衝撃を緩和するようになっている。
【0054】
図6は、本発明の蓋ヒンジ機構50の動作を示す説明図である。図6(a)は蓋部30が全閉時の蓋ヒンジ機構50の動作を示し、同(b)は蓋部30が全開時の蓋ヒンジ機構50の動作を示している。
【0055】
図6(a)に示されるように、左・右第1トーションばね61L,61Rは、蓋ロック機構(図示せず)によって圧縮された状態で、一端が可動フレーム52のばね係止切欠き52d(図4)に係止しながら、他端が蓋連結フレーム53の水平片53aに係止している。この場合、蓋連結フレーム53は左・右第1トーションばね61L,61Rから図上時計方向に回転しようとする付勢トルクF1を受けている。
【0056】
同様に、左・右コイルばね60L,60Rも蓋ロック機構(図示せず)によって圧縮された状態で、一端が可動フレーム52のばね係止逆L形片52cに係止しながら、他端が固定フレーム51の水平片51c(図3)に係止している。この場合、可動フレーム52は左・右コイルばね60L,60Rから図上上向きに移動しようとする付勢力F2を受けている。
【0057】
今、蓋ロック機構(図示せず)が解除される場合、蓋連結フレーム53は付勢トルクF1によって図上時計方向に回転させられる。蓋連結フレーム53と回転軸58は左回動フレーム54Lによって互いに回転同期している。そのため、回転軸58に一体に(相対回転不能に)固定された左・右歯車55L,55Rについても図上時計方向に回転させられることになる。
【0058】
左・右歯車55L,55Rは、左・右ピニオンギヤ56L,56Rに常時噛み合っている。左・右ピニオンギヤ56L,56Rは、左・右ピニオン軸59L,59Rに回転自在に取り付けられている一方、左・右ピニオンギヤ56L,56Rは左・右ラック57L,57Rに常時噛み合っている。その結果、左・右ピニオンギヤ56L,56Rは、噛み合っている左・右ラック57L,57Rを図上下向きに移動させようとする。しかし、左・右ラック57L,57Rは不動であるため、左・右ピニオンギヤ56L,56Rは左・右ラック57L,57Rに噛み合いながら図上上向きに移動するようになる。
【0059】
その結果、図6(b)に示されるように、蓋連結フレーム53は回転軸58を中心に図上時計方向に回転すると共に、可動フレーム52は固定フレーム51に対し図上上向きにスライド移動する。そして、可動フレーム52は固定フレーム51に対し図上上向きにスライド移動し続けるが、可動フレーム52の切欠き52a(図4)が固定フレーム51のストッパーピン51a(図4)に引っ掛かる。これにより、可動フレーム52の固定フレーム51に対するスライド移動は停止するようになる。
【0060】
可動フレーム52が停止することにより、蓋連結フレーム53の回転速度は急激にゼロになる。そのため、蓋連結フレーム53に回転を持続させようする慣性トルク(衝撃力)が発生する。しかし、左・右第2トーションばね62L,62Rが縮むことにより、その衝撃力を好適に吸収するようになる。
【0061】
図6(b)に示されるように、蓋部30は、回転角度θだけ回転し、上方に移動量dだけ移動して停止する。その結果、図2に示されるように、蓋部30の下端部と本体部10との間に隙間が形成され、蓋ヒンジ機構50の周辺部における本体部10の清掃性が好適に向上するようになる。
【0062】
以上の通り、図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る蓋ヒンジ機構50について説明してきたが、本発明の実施形態は上記だけに限定されることはない。すなわち、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲内において種々の修正・変更を加えることが可能である。例えば、左・右第1トーションばね61L,61R並びに左・右コイルばね60L,60Rについては、必ずしも2つ必要ではなく、左・右第1トーションばね61L,61R或いは左・右コイルばね60L,60Rのどちらか一方が有れば足りる。なお、左・右コイルばね60L,60Rのみ有する場合は、左・右ピニオンギヤ56L,56Rはドライブギヤ(駆動ギヤ)となり、左・右歯車55L,55Rはドリブンギヤ(被動ギヤ)となる。
【0063】
また、回転軸58は、全体的に断面が矩形の両端に円弧が組み合わされた形状であっても良い。また、蓋連結フレーム53が左・右第2トーションばね62L,62Rに当接して蓋部30の全開時の衝撃を吸収するようにしても良い。
【符号の説明】
【0064】
10 本体部
30 蓋部
50 蓋ヒンジ機構
50A 軸駆動部
51 固定フレーム
51a ストッパーピン
51b ばね通過切欠き
51c 水平片
52 可動フレーム
52a 切欠き
52b 軸受け部
52c ばね係止逆L形片
52d ばね係止切欠き
53 蓋連結フレーム
53a 水平片
53b 垂直片
54L 左回動フレーム
54La 左コの字片
54R 右回動フレーム
54Ra 右コの字片
55L 左歯車
55R 右歯車
56L 左ピニオンギヤ
56R 右ピニオンギヤ
57a ラック固定ねじ
57L 左ラック
57R 右ラック
58 回転軸
59a 軸固定ナット
59L 左ピニオン軸
59R 右ピニオン軸
60L 左コイルばね
60R 右コイルばね
61L 左第1トーションばね
61R 右第1トーションばね
62L 左第2トーションばね
62R 右第2トーションばね
63 Cリング
100 炊飯器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8