(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072491
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】シリンダ及び昇降装置
(51)【国際特許分類】
F15B 15/14 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
F15B15/14 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183334
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】393011692
【氏名又は名称】和光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】阿部 聖太
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA02
3H081AA03
3H081CC29
3H081DD13
3H081HH10
(57)【要約】
【課題】 構造の複雑化、大型化を伴うことなく、簡易かつ安価にストローク調整を行うことが可能なシリンダ及び当該シリンダを用いた昇降装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 シリンダチューブとロッドと前記ロッドに嵌合するスペーサを有するシリンダであって、前記スペーサは、相互に重ね合わせた複数のカラーを有し、前記カラーは、2つの通孔と、前記2つの通孔の対称軸上の位置から前記カラーの外縁に延びる前記対称軸に対して傾斜した切欠通路であって、前記ロッドが移動可能な幅寸法の切欠通路を有し、前記複数のカラーの少なくとも2枚が表裏逆向きであり、前記2つの通孔に通した2本のボルトにより前記複数のカラーの相互間の位置が固定されている、シリンダとした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、ロッドと、前記ロッドに嵌合するスペーサを有するシリンダであって、
前記スペーサは、相互に重ね合わせた複数のカラーを有し、
前記カラーは、2つの通孔と、前記2つの通孔の対称軸上の位置から前記カラーの外縁に延びる前記対称軸に対して傾斜した切欠通路であって、前記ロッドが移動可能な幅寸法の切欠通路を有し、
前記複数のカラーの少なくとも2枚が表裏逆向きであり、
前記2つの通孔に通した2本のボルトにより前記複数のカラーの相互間の位置が固定されている、シリンダ。
【請求項2】
前記ロッドの先端に設けた係合部材に対して回転不能のナットプレートと、
前記2つの通孔に対応する配置の前記ナットプレート上の2つの固定孔と、
をさらに備え、
前記2本のボルトが前記2つの通孔及び前記2つの固定孔のそれぞれに挿通されている、請求項1のシリンダ。
【請求項3】
請求項1又は2のシリンダと、
第1ベース軸及び第2ベース軸を有するベースと、
第1ワーク軸及び第2ワーク軸を有するワーク部材と、
前記第1ベース軸及び第1ワーク軸に両端が軸支される第1アームと、
前記第2ベース軸及び第2ワーク軸に両端が軸支される第2アームを有し、
前記シリンダの両端が、前記第1、第2ベース軸、前記第1及び第2ワーク軸のうちの対角位置の2軸に軸支されている、昇降装置。
【請求項4】
シリンダのロッドのストローク調整用のスペーサであって、
前記スペーサは、相互に重ね合わせた複数のカラーを有し、
前記カラーは、2つの通孔と、前記2つの通孔の対称軸上の位置から前記カラーの外縁に延びる前記対称軸に対して傾斜した切欠通路であって、前記ロッドが移動可能な幅寸法の切欠通路を有し、
前記複数のカラーの少なくとも2枚の表裏が逆向きであり、
前記2つの通孔に通した2本のボルトにより前記複数のカラーの相互間の位置が固定されている、スペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストローク調整が可能なシリンダ及び当該シリンダを用いる昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダは、様々な目的、用途の下で様々な環境下で対象物の移動等に使用されるが、目的、用途、環境等に応じて必要なシリンダストローク(ロッドの可動域/以下、単に「ストローク」)は異なっている。一方、シリンダのストロークは、シリンダの規格(構造やサイズ)によって個々に定まっているため、必要とするストロークに応じて複数種類のシリンダが必要となる問題がある。
【0003】
このため、シリンダ組み立ての際にロッド外周にリング状のスペーサを嵌めておくか、使用時に必要に応じてロッド外周に割入のセットカラーを後付けすることでストローク調整が行われる場合があった。しかし、前者の場合はスペーサの付け外しに際してシリンダの分解が必要なために手数が掛かり、後者は架装時でも付け外しは容易である利点はあるが、セットカラーが非常に高額である問題がある。
【0004】
他の手法として、特許文献1は、シリンダチューブ内で進退可能な可動ストッパを内蔵することでストローク調整を可能にしたシリンダを開示するが、特許文献1では、シリンダの構造複雑化、大型化、及び/又は、高コスト化等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、構造の複雑化、大型化を伴うことなく、簡易かつ安価にストローク調整を行うことが可能なシリンダ及び当該シリンダを用いた昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願には、
シリンダチューブとロッドと前記ロッドに嵌合したスペーサを有するシリンダであって、
前記スペーサは、相互に重ね合わせた複数のカラーを有し、
前記カラーは、2つの通孔と、前記2つの通孔の対称軸上の位置から前記カラーの外縁に延びる前記対称軸に対して傾斜した切欠通路であって、前記ロッドが移動可能な幅寸法の切欠通路を有し、
前記複数のカラーの少なくとも2枚が表裏逆向きであり、
前記2つの通孔に通した2本のボルトにより前記複数のカラーの相互間の位置が固定されている、シリンダが開示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の1実施形態に係るシリンダ10を示す。
【
図2】(a)はシリンダ10のカラー21を示す。(b)は本発明の原理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の1実施形態のシリンダ10を示す。シリンダ10は、油圧シリンダ、空気圧シリンダ等の流体圧シリンダであり得る。シリンダ10は、シリンダチューブ11と、シリンダチューブ11に対して進退動するロッド12を有する。シリンダ10のストロークは、ロッド12の前進側端位置から後退側端位置の間の距離であるため、同一規格のシリンダ10であればストロークは一定である。図中20は、ストローク調整用のスペーサであり、11a,12aは、後述のベース31や作業アーム34等に設けた支軸に係合するための係合部材である。
【0010】
図2(a)は、スペーサを構成するカラー21を示す。カラー21は、2つの通孔22と、当該通孔22の対称軸S上の位置Cからカラー21の外縁Eに向けて延在する対称軸Sに対して傾斜した切欠通路23を有する。切欠通路23は直線状でよい。
図2(a)では、傾斜角度はθで示され、切欠通路23の延在方向はDで示されている。切欠通路23は、ロッド12が切欠通路23の延在方向Dに沿って移動可能な幅寸法(ロッド径と同じかそれよりわずかに大きい幅寸法)を有する。カラー21は、ステンレス等の硬質金属で形成できる。
【0011】
図1に示すように、スペーサ20は、ロッド12に切欠通路23を嵌合して重ね合わせた複数のカラー21を有する。複数のカラー21のうちの少なくとも1枚は表裏方向が逆向きである。複数のカラー21は、ボルト13で締め付けられて相互間の位置及び/又は角度が固定される。
【0012】
図2(b)は、本発明の原理を示す。表向きのカラー21aが実線で、裏向きのカラー21bが破線で示されている。図のように、表裏逆向きのカラー21a,21bで切欠通路23の延在方向D1,D2が相違するため、位置Cから離れるに従い切欠通路23の幅が狭くなる。よって、ロッド12の抜け落ち防止及び/又はロッド12とスペーサ20の位置関係の固定が可能である。表裏のカラー21の枚数比や順序は任意である。1枚毎に交互に表裏逆向きにし、あるいは、前端及び後端の2枚のカラー21をそれ以外のカラー21と表裏逆向きにするとロッド12の保持安定性が向上すると考えられる。
【0013】
上記シリンダ10では、カラー21の枚数(又は、個々のカラー21の厚み)を調整するのみで容易にストローク調整が可能である。カラー21は何枚でも追加できるので調整幅を大きくでき、利便性が高い。ストローク調整の際にシリンダの分解等が不要であり、シリンダの複雑化、大型化を回避できる。割入のセットカラーと異なり、カラー21は形状単純で加工容易であり、低価格化が可能である。
【0014】
シリンダ10では、スペーサ20の回転による他の部材との干渉を防ぐため、スペーサ20の回転止機能を有することが更に好ましい。
図1のシリンダ10では、カラー21の通孔22に対応する固定孔25を有するナットプレート24が係合部材12aに固定されており、通孔22及び固定孔25に通したボルト13で各カラー21とナットプレート24を固定することでスペーサ20の回転が防止される。
【0015】
図3は、本発明の1実施形態の昇降装置30を示す。昇降装置30は、例えば、消防車や車椅子用バンなどの車載用途で使用可能である。昇降装置30は、ベース(スライダ)31、アッパーアーム32、ローワーアーム33及び作業アーム(ワーク部材)34で構成される4節リンクと、当該4節リンクを駆動するシリンダ10を有する。ベース31の上下位置に支軸31a,31bが設けられ、作業アーム34の上下位置に支軸34a,34bが設けられている。アッパーアーム32の両端は支軸31a及び支軸34aで回転可能に軸支され、ローワーアーム33の両端は支軸31b及び支軸34bで回転可能に軸支されている。シリンダ10の両端は4節リンクの対角位置の支軸(例えば、支軸31bと支軸34a)で回転可能に軸支されている。
【0016】
4節リンクは、車両フロア等に設置される軌道35上にスライド可能に搭載され得る。昇降装置30は、作業アーム34の先端に、荷物積載等のためのプラットフォーム36を有し得る。
【0017】
図4は、昇降装置30の動作を示す。軌道35上でベース31を駆動することで
図4(a)~(c)のように4節リンクが前後動し、シリンダ10の駆動により
図4(d)~(f)のようにプラットフォーム36が昇降(及び/又は前後動)する。
【0018】
本発明の昇降装置30では、スペーサ20によりシリンダ10のストローク調整が可能であるため、プラットフォーム36の昇降範囲及び/又は前後動範囲(
図4(d)~(f))を容易に調整可能である。よって、様々な車種、用途、目的等に幅広く対応することが可能である。
【符号の説明】
【0019】
10・・・シリンダ
11・・・シリンダチューブ
12・・・ロッド
11a,12a・・・係合部材
13・・・ボルト
20・・・スペーサ
21,21a,21b・・・カラー
22・・・通孔
23・・・切欠通路
24・・・ナットプレート
25・・・固定孔
30・・・昇降装置
31・・・ベース
32・・・アッパーアーム
33・・・ローワーアーム
34・・・作業アーム
35・・・軌道
36・・・プラットフォーム
31a,31b,34a,34b・・・支軸
D,D1,D2・・・切欠通路の延在方向
E・・・カラーの外縁
S・・・対称軸