(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072496
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】排水装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/232 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
E03C1/232
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183340
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】中島 一彰
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA02
2D061DC02
2D061DE11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ボウル部にオーバーフロー孔が形成された洗面器が有する種々の問題を解決することが可能な排水装置及び洗面器を提供する。
【解決手段】排水装置1は、排水口112に取り付けられる第1筒状体10と、第1筒状体10の内側に設けられる第2筒状体20と、第2筒状体20の内側に設けられ、排水管120に連通する水栓部材30と、を含む。水栓部材30は、第2筒状体20の開口26を閉栓することが可能である。第1筒状体10と第2筒状体20との間には流路60が設けられる。流路60には、流路60内の圧力に抗う抵抗力を付与する抵抗手段40が設けられている。流路60内の圧力が所定値を超えると、流路60内の水が排水管120に排水される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口に取り付けられる第1筒状体と、
前記第1筒状体の内側に設けられる第2筒状体と、
前記第2筒状体の内側に設けられ、排水管に連通する水栓部材と、
を含み、
前記水栓部材は、前記第2筒状体の内側を閉栓することが可能であり、
前記第1筒状体と前記第2筒状体との間には流路が設けられ、
前記流路には、該流路内の圧力に抗う抵抗力を付与する抵抗手段が設けられており、
前記流路内の圧力が所定値を超えると、前記流路内の水が前記排水管に排水されるように構成されている、
排水装置。
【請求項2】
前記抵抗手段は、前記所定値を変更可能に構成されている
請求項1に記載の排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、オーバーフロー孔が形成されたボウル部と、オーバーフロー孔に連通するオーバーフロー流路が形成されたオーバーフロー部と、を備える洗面器が開示されている。オーバーフロー部は、ボウル部の後方に膨らむように、ボウル部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボウル部にオーバーフロー孔が形成された洗面器は、衛生面の問題、美観性の問題、製造工程上の問題等、種々の問題をかかえている。衛生面の問題は、例えば、オーバーフロー孔から害虫が侵入することによるものである。美観性の問題は、例えば、オーバーフロー部がボウル部の後方において膨らむことによるものである。製造工程上の問題は、オーバーフロー流路のように空洞を有するボウルは排泥製法で製作されることが一般的であるが、排泥製法は工程数が多く、洗面器の重量も大きいことによるものである。また、オーバーフローの機能がない洗面器がすでに設置されている場合、オーバーフローの機能を有する洗面器に変更しようとすると、洗面器の取り替えを要するといった問題もある。
【0005】
本開示は、上述の種々の問題を解決することが可能な排水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る排水装置は、排水口に取り付けられる第1筒状体と、第1筒状体の内側に設けられる第2筒状体と、第2筒状体の内側に設けられ、排水管に連通する水栓部材と、を含む。水栓部材は、第2筒状体の内側を閉栓することが可能である。第1筒状体と第2筒状体との間には流路が設けられている。この流路には、流路内の圧力に抗う抵抗力を付与する抵抗手段が設けられている。流路内の圧力が所定値を超えると、流路内の水が排水管に排水される。
【0007】
上記排水装置によると、吐水された状態で第2筒状体の内側が閉栓されたとしても、吐水された水は、第1筒状体と第2筒状体との間に設けられた流路に浸入する。この流路内の圧力が所定値を超えると、流路内の水が排水管に排水される。このような排水装置を用いると、ボウル部から水が溢れ出すことを抑制でき、オーバーフロー孔が不要となり、上述の種々の問題を解決することが可能となる。また、オーバーフローの機能を有しない既設の洗面器であっても、上記の排水装置を取り付けるだけで、オーバーフローの機能を持たせることが可能となる。
【0008】
抵抗手段は、所定値を変更可能に構成されていてもよい。流路内の水が排水管に排水されるようになるための所定値を変えることで、ボウル部に水を溜めることができる水位を調節することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、上述の種々の問題を解決することが可能な排水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本開示の排水装置の一例を示す分解斜視図である。
【
図3】本開示の排水装置が排水口に取り付けられたときの一例を示す部分縦断面図である。
【
図4】(A)は、流路内の圧力が所定値を超えると、流路内の水が排水管に排水されるようになる態様の第1変形例を示す図である。(B)は、(A)に示されるA部の詳細である。
【
図5】流路内の圧力が所定値を超えると、流路内の水が排水管に排水されるようになる態様の第2変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下で参照する
図1~
図3において、同一の部材には、同じ符号が付されている。なお、この明細書において、上方向は図面上の上方向、下方向は図面上の下方向を意味する。
【0012】
図1は、本開示の洗面器100の周辺を示す概略図である。洗面器100は、洗面ボウル110と、排水装置1とを含む。洗面ボウル110は、底部に排水口112を有する。排水装置1は、洗面ボウル110が有する排水口112に取り付けられる。吐水ハンドル130が操作されると、吐水管132から水が吐水される。吐水された水は、排水装置1が取り付けられた排水口112から排水される。
【0013】
先ず、
図2を参照して、本開示の排水装置1に含まれる各種部材の形状等について説明する。
図2は、本開示の排水装置1の一例を示す分解斜視図である。
【0014】
排水装置1は、少なくとも、第1筒状体10と、第2筒状体20と、水栓部材30とを含む。本実施の形態では、第2筒状体20と水栓部材30とが別体で構成されているが、第2筒状体20と水栓部材30とが一体で構成されていてもよい。
【0015】
第1筒状体10は、例えばステンレス製の円筒状の部材である。第1筒状体10の径は、排水口112(
図1参照)の径よりも僅かに小さい。第1筒状体10は、円筒軸方向における上方側の端部に、周方向にわたって第1顎部12を有する。第1筒状体10は、円筒状の部位(以下「円筒部」と称する)に、第1上部開口14及び第1下部開口16を有する。第1上部開口14と第1下部開口16とは、鉛直方向に沿って上下に並んでいる。本実施の形態において、第1筒状体10は、円筒部の周方向に、第1上部開口14及び第1下部開口16をそれぞれ1つずつ有する。ただし、第1筒状体10が円筒部に有する第1上部開口14及び第1下部開口16の数は、1つずつに限定されない。
【0016】
第2筒状体20は、例えばステンレス製の円筒状の部材であり、第1筒状体10に内挿される。第2筒状体20は、円筒軸方向における上方側の端部に、周方向にわたって第2顎部22を有する。第2筒状体20は、円筒部に、第2開口部24を有する。この第2開口部24は、第1下部開口16と径がほぼ同じであり、第2筒状体20が第1筒状体10に内挿されたときに、第1下部開口16と対向する。本実施の形態において、第2筒状体20は、円筒部の周方向に1つの第2開口部24を有する。ただし、第2筒状体20が円筒部に有する開口部24の数は、1つに限定されない。
【0017】
水栓部材30は、排水栓32と、軸部34と、捕捉部36とを有する。排水栓32は、例えばステンレス製の円板状の部材である。排水栓32は、第2筒状体20の円筒軸方向における一方の端部側の開口26を閉栓することで、第2筒状体20の径方向内側を閉栓することができる。排水栓32は、下方側の面の中心部に、軸部34を嵌合するための嵌合部(不図示)を有する。
【0018】
軸部34は、例えばステンレス製の直棒状の部材である。軸部34の上方側の端部は、排水栓32に対して直交するように、排水栓32が有する嵌合部に嵌合される。軸部34は、下方側の端部に当接する図示しない機構により、上下方向に移動可能である。軸部34の上下方向への移動に伴って、水栓部材30の全体が上下方向に移動する。
【0019】
捕捉部36は、例えば樹脂製であり、軸部34を中心とする円形状の部材である。捕捉部36は、毛髪やゴミ等が排水管120(後述の
図3参照)に流れ出てしまうことを抑制できる多数の孔を有する。捕捉部36は、捕捉部36の外周面と第2筒状体20の内周面との間から毛髪やゴミ等が流れ出ないように、捕捉部36の外周面と第2筒状体20の内周面とが当接しつつ上下に移動可能である。
【0020】
排水装置1は、第1筒状体10に第2筒状体20が内挿され、第2筒状体20の径方向内側に水栓部材30が配置された状態で、洗面ボウル110の排水口112に取り付けられる。ただし、排水口112に排水装置1を取り付けることができれば、特定の取付手順に限定されない。例えば、第1筒状体10を洗面ボウル110の排水口112に取り付けた後、第1筒状体10に第2筒状体20を内挿し、第2筒状体20の径方向内側に水栓部材30を配置させてもよい。また、第2筒状体20が内挿された第1筒状体10を洗面ボウル110の排水口112に取り付けた後、第2筒状体20の径方向内側に水栓部材30を配置させてもよい。いずれの取付手順であっても、排水装置1を、排水口112に容易に取り付けることができる。
【0021】
排水装置1は、さらに、抵抗手段40を含む。抵抗手段40は、洗面ボウル110の排水口112に排水装置1を取り付けた後、第1筒状体10に取り付けられる。抵抗手段40の端部には、操作部50が設けられている。抵抗手段40及び操作部50については、
図3を参照して後述する。
【0022】
なお、第1筒状体10、第2筒状体20、排水栓32、及び軸部34は、ステンレス製に限定されず、他の金属製又は樹脂製等であってもよい。また、捕捉部36は、樹脂製に限定されず、ステンレス等の金属製であってもよい。ただし、第1筒状体10、第2筒状体20、排水栓32、軸部34、及び捕捉部36は、いずれも、例えば錆びにくく、メンテナンス性に優れた材質であることが好ましい。
【0023】
次に、
図3を参照して、本開示の抵抗手段40について説明する。
図3は、排水装置1が洗面ボウル110の排水口112に取り付けられたときの一例を示す縦断面図である。この
図3は、水栓部材30については断面図ではなく側面図として示される部分縦断面図である。なお、本来、水をシールすべき部位にシール部材が設けられるが、
図3において、便宜上、シール部材の図示を省略している。
【0024】
図3に示されるように、排水口112に排水装置1が取り付けられた状態において、第1筒状体10と第2筒状体20との間に間隙が形成される。この間隙は、水が浸入できる流路60を形成する。第1顎部12と第2顎部22との間の間隙が、流路60への浸入口62である。
【0025】
流路60には、抵抗手段40が設けられている。この抵抗手段40は、例えば、円筒状のシェル41と、弁42と、シェル41に内挿されるコイルバネ43とを含む。弁42は、コイルバネ43の
図3の紙面左側端部に取り付けられている。シェル41は、シェル41の軸方向が第1筒状体10の軸方向と直交するように、第1上部開口14に接続されている。
【0026】
コイルバネ43は、流路60内の圧力に抗う方向に向けて、弁42に対して付勢するように設けられている。本実施の形態において、流路60内の圧力に抗う方向は、
図3の紙面左方向が相当する。流路60内の圧力は、流路60内に水が浸入している場合、水圧が相当する。
【0027】
抵抗手段40と第1下部開口16との間には、バイパス管46が設けられている。このバイパス管46は、流路60の内部と排水管120の内部とを連通させることが可能な配管である。バイパス管46の一方の端部47は、抵抗手段40のシェル41に接続されている。バイパス管46の他方の端部48は、第1筒状体10の第1下部開口16に接続されている。第1下部開口16は、第2開口部24とで1つの開口を形成しており、バイパス管46の一方の端部47から排水管120まで連通している。流路60内に水が浸入していないとき、流路60とバイパス管46とは連通していない。
【0028】
次に、本開示の排水装置1の作用について、
図3を参照して説明する。
図3において、水栓部材30は、二点鎖線で示される第1位置と、実線で示される第2位置との間を移動可能である。
【0029】
洗面ボウル110は、排水口112が排水管120と連通するように配置される。排水装置1が洗面ボウル110の排水口112に取り付けられると、第2筒状体20の開口26と排水管120とが連通する。第2筒状体20の開口26から浸入した水は、第2筒状体20の径方向内側の空間を通って、排水管120に排水される。なお、排水装置1が排水口112に取り付けられた状態において、第1顎部12と排水口112との間は塞がれる。
【0030】
水栓部材30は、上述のとおり、軸部34が上下方向に移動すると、水栓部材30の全体が上下方向に移動する。ただし、第1筒状体10及び第2筒状体20、及び抵抗手段40は、水栓部材30の上下方向への移動にともなって移動しない。
【0031】
水栓部材30が上方に向けて移動すると、第2筒状体20の開口26が開栓される。上述の第1位置では、開口26が開栓されている。開口26が開栓されているとき、吐水管132(
図1参照)から吐水された水は、流路60に流れ込んだ水を除いて、開口26を通って排水管120に排水される。開口26が開栓されているときに開口26を通って排水管120に排水される水の量は、設置場所に応じて異なるが、吐水管132から吐水される水の量よりも大きいことが好ましい。吐水管132から吐水される水の量は、最大吐水量とすることもできるし、所定の設計基準に基づく吐水量とすることもできる。
【0032】
水栓部材30が下方に向けて移動して上述の第2位置に到達すると、開口26が排水栓32によって塞がれ、開口26が閉栓される。開口26が閉栓されているとき、吐水された水は、洗面ボウル110に溜められる。
【0033】
流路60への浸入口62は常に開放されており、開口26が閉栓されていたとしても、吐水された水は、流路60内に浸入する。洗面ボウル110に水が溜まっていないとき、流路60と排水管120とが連通していないため、開口26が閉栓されると、吐水された水を洗面ボウル110に溜めることができる。
【0034】
弁42に対して作用する水圧は、洗面ボウル110に溜まった水の水位に応じて変化する。洗面ボウル110に水を溜め始めた当初は水位が低いため、弁42に対して作用する水圧が小さく、弁42が
図3の紙面右方向に向けて移動しない。そのため、洗面ボウル110に水が溜まりやすい。
【0035】
第2筒状体20の開口26が閉栓された状態で洗面ボウル110に水が溜まると、弁42に対して、
図3の紙面右方向に向けた水圧が作用する。弁42に対して紙面右方向に向けて作用する水圧よりも、弁42に対して作用する
図3の紙面左方向に向けたコイルバネ43の付勢力の方が大きいとき、弁42は移動しない。弁42に対して紙面右方向に向けて作用する水圧が、弁42に対して
図3の紙面左方向に向けて作用するコイルバネ43の付勢力よりも大きくなると、弁42は
図3の紙面右方向に向けて移動する。
【0036】
洗面ボウル110に溜まった水の水位が高くなり、バイパス管46の一方の端部47とシェル41とが接続される部位まで弁42が移動すると、流路60とバイパス管46とが連通する。流路60とバイパス管46とが連通すると、第1下部開口16と第2開口部24とで形成される開口を介して、流路60と排水管120とが連通する。流路60と排水管120とが連通すると、流路60内の水は、バイパス管46を通って排水管120に排水されるようになる。
【0037】
なお、第1筒状体10の第1下部開口16と、第2筒状体20の第2開口部24とが対向することは必須でない。例えば、第2筒状体20の下端部よりも下方において、バイパス管46の他方の端部48と、第1筒状体10の第1下部開口16とを接続するようにしてもよい。この場合、流路60とバイパス管46とが連通すると、第2筒状体20の下端部よりも下方において、流路60と排水管120とが連通する。よって、このような場合であっても、流路60内の水は、バイパス管46を通って排水管120に排水されるようになる。
【0038】
このように、本開示の排水装置1によると、第2筒状体20の開口26を閉栓して吐水が開始された当初は、流路60とバイパス管46(すなわち排水管120)とが連通していないため、洗面ボウル110に水が溜まりやすい。洗面ボウル110に溜まった水の水位が高くなると、弁42に対して作用する水圧が大きくなる。洗面ボウル110に溜まった水の水位が所定の水位に達し、弁42に対して作用する水圧が所定値を超えると、バイパス管46の一方の端部47とシェル41とが接続される部位まで弁42が移動する。バイパス管46の一方の端部47とシェル41とが接続される部位まで弁42が移動すると、流路60とバイパス管46とが連通する。よって、第2筒状体20の開口26が閉栓されていたとしても、洗面ボウル110から水が溢れ出てしまうことを抑制できる。
【0039】
上記の「所定値」は、流路60とバイパス管46とが連通していない状態から、流路60とバイパス管46とが連通する状態に変化する圧力値である。この圧力値は、洗面器100の利用者の所望に応じて、または洗面器100の設置場所等に応じて異なるが、洗面ボウル110から水が溢れ出ない値であることが好ましい。
【0040】
ところで、洗面ボウルにオーバーフロー孔を有する場合、オーバーフロー孔から害虫が侵入するおそれがあり、衛生面において改善の余地がある。また、オーバーフロー孔を有する洗面ボウルは、オーバーフロー孔から浸入した水の流路を確保するために後方が膨らんでしまう。特に、ベッセルタイプの場合、美観が要求されるため、洗面ボウルの後方が膨らまないようにする等、改善の余地がある。また、オーバーフロー孔を有する洗面ボウルは排泥製法で製作されることが一般的であるが、排泥製法は工程数が多く、洗面器の重量も大きいため製造に困難を伴う。本開示の排水装置1を洗面ボウルの排水口に取り付けると、洗面ボウルがオーバーフロー孔を有する必要がないため、洗面ボウルにオーバーフロー孔を有する洗面器がかかえる種々の問題が解決される。上述のとおり、排水装置1は、洗面ボウル110の排水口112に容易に取り付けることができるため、メンテナンス性にも優れ、清潔を保つことができる。また、特に、洗面ボウルがオーバーフロー孔を有していなければ洗面ボウルの後方が膨らむことがないため、ベッセルタイプであっても美観を損なわない。また、ガラス製の洗面ボウルは美観に優れるが、ガラス線の洗面ボウルにオーバーフロー孔を設けることは難しい。本開示の排水装置1は、このようなガラス製の洗面ボウルの排水口に取り付けることもできる。
【0041】
また、例えばオーバーフローの機能がない洗面器がすでに設置されている場合、オーバーフローの機能を有する洗面器に変更しようとすると、洗面器の取り替えを要する。この点、本開示の排水装置1は、排水口112に取り付けるだけの簡単な構成であり、既設の洗面器に取り付けられている排水装置と容易に取り替えることができる。よって、洗面器を取り替えることなく、オーバーフローの機能がない洗面器を、オーバーフローの機能を有する洗面器に変更することができる。
【0042】
なお、流路60に浸入して排水される水の量は、第1筒状体10と第2筒状体20との間隙の大きさ、バイパス管46から排出される水の量等に応じて決まる。開口26が閉栓されているときに流路60に浸入して排水される水の量は、吐水管132から吐水される水の量に応じて決められる。よって、第1筒状体10と第2筒状体20との間隙の大きさ、バイパス管46から排出される水の量等は、設置場所の吐水量に応じて決められる。
【0043】
本開示の抵抗手段40は、さらに、上記の「所定値」を変更することができる操作部50を含んでいてもよい。例えば、本実施の形態において、抵抗手段40は、流路60内の圧力に抗う方向に向けて弁42に対する付勢力を調整する抵抗力調整部44と、抵抗力調整部44を操作する操作部50とを含んでいる。
【0044】
抵抗力調整部44は、コイルバネ43を押圧することができる部材であり、コイルバネ43に対して弁42の反対側(
図3の紙面右側)に設けられている。例えば、シェル41は、
図3の紙面右側の端部に雌ネジが形成されている。抵抗力調整部44は、シェル41に形成された雌ネジと螺合する雄ネジが形成されている。操作部50は、抵抗力調整部44の端部(
図3の紙面右側の端部)に設けられている。
【0045】
操作部50を例えば時計方向に回転させる操作を行うと、抵抗力調整部44がコイルバネ43を押圧する方向(
図3の紙面左方向)に向けて移動する。抵抗力調整部44がコイルバネ43を押圧する方向に向けて移動すると、弁42に対して作用する付勢力が大きくなる。よって、流路60とバイパス管46とが連通していない状態から、流路60とバイパス管46とが連通するようになるまでの圧力値を大きくすることができる。
【0046】
一方、操作部50を例えば反時計方向に回転させる操作を行うと、抵抗力調整部44がコイルバネ43を押圧する方向と反対方向(
図3の紙面右方向)に向けて移動する。抵抗力調整部44がコイルバネ43を押圧する方向と反対方向に向けて移動すると、弁42に対して作用する付勢力が小さくなる。よって、流路60とバイパス管46とが連通していない状態から、流路60とバイパス管46とが連通するようになるまでの圧力値を小さくすることができる。
【0047】
このように、操作部50を操作することで、流路60とバイパス管46とが連通するようになるまでの圧力値を、操作部50の操作前と比べて変更するができる。すなわち、操作部50を操作することで、洗面ボウル110に水を溜める際の水位を調節することが可能となる。
【0048】
以上説明したように、本開示の排水装置1に含まれる抵抗手段40はコイルバネ43を有する。そして、このコイルバネ43が、流路60内の水圧に抗う方向に向けて弁42に対して付勢力を付与している。ただし、抵抗手段40は、コイルバネ43を有することは必須でなく、弁42に対して付勢する機能を有するものを有していればよい。例えば、流路60内の水圧を検知する圧力センサと、この圧力センサにより検知された水圧に応じて弁42を移動させる機構と、この機構を制御する制御部とを備えるようにしてもよい。
【0049】
また、本開示の排水装置1は、流路60に、流路60内の圧力に抗う方向に向けて弁42に対して付勢力を付与する抵抗手段40を設けている。また、本開示の排水装置1は、流路60と排水管120とを連通させることが可能なバイパス管46を備えている。そして、流路60内の水圧が所定値を超えると、流路60と排水管120とが連通するようにしている。ただし、流路60内の水圧が所定値を超えたときに流路60と排水管120とが連通すれば、本開示において説明した排水装置1に限定されない。
【0050】
(変形例)
以下、本開示の排水装置1の変形例について、
図4及び
図5を参照して説明する。以下に説明する変形例は、流路60内の圧力が所定値を超えると、流路60内の水が排水管120に排水されるようになる態様の変形例である。以下に説明する変形例において、上述の排水装置1が備える各種構成と共通する構成については説明を省略する。また、とくに言及しない構成については、
図4及び
図5において、参照符号の図示を省略する。
【0051】
(第1変形例)
図4(A)は、流路60内の圧力が所定値を超えると、流路60内の水が排水管120に排水されるようになる態様の第1変形例を示す図である。
図4(B)は、
図4(A)に示されるA部の詳細である。なお、
図4(A)及び(B)において、便宜上、洗面ボウル110については、厚みがあらわれるようには示しておらず、内側の面のみを示している。
【0052】
変形例1の排水装置1Aは、抵抗力付与管70を備えている。この抵抗力付与管70は、洗面ボウル110に溜められた水の水位が上がったときに、流路60内の圧力に抗う抵抗力を、水頭圧によって付与するようにしたものである。
【0053】
抵抗力付与管70は、一方の端部71が第1筒状体10の第1上部開口14に接続されている。抵抗力付与管70は、他方の端部77が第1筒状体10の第1下部開口16に接続されている。抵抗力付与管70の一方の端部71と他方の端部77との間には、ヘッド部74が設けられている。この第1変形例において、ヘッド部74を基準として、一方の端部71側の配管を「上流側配管」と称し、他方の端部77側の配管を「下流側配管」と称する。
【0054】
抵抗力付与管70は、上流側配管として、上流側水平部72と立上部73とを有する。上流側水平部72は、一方の端部71から水平方向に伸びる配管である。立上部73は、上流側水平部72からヘッド部74に向けて上方向に向けて伸びる配管である。
【0055】
抵抗力付与管70は、下流側配管として、立下部75と下流側水平部76とを有する。立下部75は、ヘッド部74から下方向に向けて伸びる配管である。下流側水平部76は、立下部75から他方の端部77に向けて水平方向に伸びる配管である。
【0056】
この第1変形例において、第1上部開口14の高さを基準高さとして、ヘッド部74に水位が到達したときの水位を「限界水位H」と称する。
図4に示される高さHが「限界水位H」に相当する。また、水位が限界水位Hに到達したときの抵抗力付与管70内の水圧を「限界圧」と称する。この限界圧は、流路60内の水が排水管120に排水されるようになるときの圧力値に相当する。
【0057】
第1変形例では、抵抗力付与管70内の水位が限界水位Hに到達するまで、洗面ボウル110内に水を溜めることができる。そして、水位が限界水位Hに到達すると、水がヘッド部74を超えて立下部75を流れる。すなわち、流路60内の水圧が限界圧に達すると、水がヘッド部74を超えて他方の端部77に向けて流れる。他方の端部77に向けて流れた水は、第1下部開口16及び第2開口部24を通って、排水管120に排水される。よって、第2筒状体20の開口26が閉栓されていたとしても、洗面ボウル110から水が溢れ出てしまうことを抑制できる。
【0058】
第1変形例の抵抗力付与管70は、例えば、ヘッド部74の高さを変更できるように構成されていてもよい。ヘッド部74の高さを変更することにより、限界水位Hを変更することができる。ヘッド部74の高さは、例えば、立上部73及び立下部75のそれぞれに伸縮継手78を設けることで、変更することができる。また、ヘッド部74の高さは、伸縮継手78に限らず、立上部73の一部及び立下部75の一部を、長さが異なる配管に交換できるようにした場合にも、変更することができる。
【0059】
このように、ヘッド部74の高さを変更できるようにすることで、ヘッド部74の高さを変更する前と比べて、限界圧を変更することが可能となる。すなわち、ヘッド部74の高さを変更することで、限界水位Hを調節することが可能となる。
【0060】
(第2変形例)
図5は、流路60内の圧力が所定値を超えると、流路60内の水が排水管120に排水されるようになる態様の第2変形例を示す図である。
【0061】
変形例2の排水装置1Bが
図3に示される排水装置1と異なる点は、第1筒状体10Bが第1下部開口16を有しない点、第2筒状体20Bの第2開口部24Bが第1上部開口14Bと対向する点である。
【0062】
また、抵抗手段40Bが
図3に示される抵抗手段40と異なる点は、
図3に示されるバイパス管46に接続される開口がシェル41Bに形成されていない点、弁42Bが第2筒状体20Bの径方向内側から第2開口部24Bを塞ぐように設けられている点、コイルバネ43Bが弁42Bに対して
図5の紙面右方向に向けて付勢している点、である。この第2変形例において、流路60内の圧力に抗う方向は、
図5の紙面左方向が相当し、
図3に示される方向とは反対方向である。
【0063】
洗面ボウル110に水を溜め始めた当初は水位が低いため、弁42Bに対して作用する水圧が小さく、弁42Bが
図3の紙面左方向に向けて移動しない。弁42Bは、コイルバネ43Bの
図5の紙面左側端部に取り付けられており、弁42Bに対して
図5の紙面右方向に向けてコイルバネ43Bによって付勢されているからである。よって、第2開口部24Bが弁42Bによって塞がれ、洗面ボウル110に水が溜まりやすい。
【0064】
第2筒状体20Bの開口26Bが閉栓された状態で洗面ボウル110に水が溜まると、弁42Bに対して、
図5の紙面左方向に向けた水圧が作用する。弁42Bに対して紙面左方向に向けて作用する水圧よりも、弁42Bに対して作用する
図5の紙面右方向に向けたコイルバネ43Bの付勢力の方が大きいとき、弁42Bは第2開口部24Bを塞いだ状態である。弁42Bに対して紙面左方向に向けて作用する水圧が、弁42Bに対して
図5の紙面右方向に向けて作用するコイルバネ43Bの付勢力よりも大きくなると、弁42Bは
図5の紙面左方向に向けて移動する。
【0065】
洗面ボウル110に溜まった水の水位が高くなり、弁42Bが
図5の紙面左方向に向けて移動すると、第2開口部24Bが開き、流路60と第2筒状体20Bの径方向内側(すなわち排水管120)とが連通する。流路60と排水管120とが連通すると、流路60内の水が第2開口部24Bを通って排水管120に排水されるようになる。
【0066】
このように、第2変形例の排水装置1Bによると、第2筒状体20Bの開口26Bを閉栓して吐水が開始された当初は、流路60と排水管120とが連通していないため、洗面ボウル110に水が溜まりやすい。洗面ボウル110に溜まった水の水位が高くなると、弁42Bに対して作用する水圧が大きくなる。洗面ボウル110に溜まった水の水位が所定の水位に達し、弁42Bに対して作用する水圧が所定値を超えると、弁42Bが
図5の紙面左方向に向けて移動する。そして、流路60内の水が第2開口部24Bを通って排水管120に排水されるようになる。よって、第2筒状体20Bの開口26Bが閉栓されていたとしても、洗面ボウル110から水が溢れ出てしまうことを抑制できる。
【0067】
上記の「所定値」は、弁42Bが第2開口部24Bを塞いでいる状態から、第2開口部24Bが開いて流路60と排水管120とが連通する状態に変化する圧力値である。
【0068】
第2変形例の抵抗手段40Bは、さらに、上記の「所定値」を変更することができる操作部50Bを含んでいてもよい。例えば、第2変形例において、抵抗手段40Bは、流路60内の圧力に抗う方向に向けて弁42Bに対する付勢力を調整する抵抗力調整部44Bと、抵抗力調整部44Bを操作する操作部50Bとを含んでいる。
【0069】
抵抗力調整部44B及び操作部50Bが
図3に示される抵抗力調整部44及び操作部50と異なる点は、弁42Bに対して作用する付勢力を大きくするために操作部50Bを回転させる方向である。
【0070】
すなわち、この第2変形例では、操作部50Bを例えば時計方向に回転させる操作を行うと、抵抗力調整部44Bが
図5の紙面左方向に向けて移動する。操作部50Bを時計方向に回転させる操作を行ったときに抵抗力調整部44Bが移動する方向は、
図3に示される抵抗力調整部44及び操作部50と同様である。ただし、この第2変形例では、抵抗力調整部44Bが
図5の紙面左方向に向けて移動すると、弁42Bに対して作用する付勢力が小さくなる。よって、流路60と排水管120とが連通していない状態から、流路60と排水管120とが連通するようになるまでの圧力値を小さくすることができる。
【0071】
操作部50Bを例えば反時計方向に回転させる操作を行うと、抵抗力調整部44Bが
図5の紙面右方向に向けて移動する。抵抗力調整部44Bが
図5の紙面右方向に向けて移動すると、弁42Bに対して作用する付勢力が大きくなる。よって、流路60と排水管120とが連通していない状態から、流路60と排水管120とが連通するようになるまでの圧力値を大きくすることができる。
【0072】
このように、操作部50Bを操作することで、流路60と排水管120とが連通するようになるまでの圧力値を、操作部50Bの操作前と比べて変更するができる。すなわち、操作部50Bを操作することで、洗面ボウル110に水を溜める際の水位を調節することが可能となる。
【0073】
本開示の排水装置1,1A,1Bの取り付け箇所は、洗面ボウル110の排水口112に限定されず、浴槽の排水口、台所のシンクの排水口、及びトイレの水槽に設けられた排水口等に取り付けることもできる。このような場合であっても、洗面ボウル110に本開示の排水装置1,1A,1Bが取り付けられた場合と同様の作用効果を奏すると考えられる。
【0074】
今回開示された実施の形態及び変形例は全ての点で例示であり、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の基本的な範囲は、上記の実施の形態及び変形例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
10 第1筒状体
20 第2筒状体
30 水栓部材
40、40B 抵抗手段
60 流路
70 抵抗力付与管
120 排水管