IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

<>
  • 特開-逆止弁 図1
  • 特開-逆止弁 図2
  • 特開-逆止弁 図3
  • 特開-逆止弁 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000725
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】逆止弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/06 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
F16K15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099588
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岩本 夏輝
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和毅
(72)【発明者】
【氏名】久保 利賀剛
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 一志
【テーマコード(参考)】
3H058
【Fターム(参考)】
3H058AA05
3H058BB02
3H058CA14
3H058CB12
3H058CD05
3H058EE05
3H058EE18
(57)【要約】
【課題】開弁動作の応答性を向上させることができる逆止弁を提供する。
【解決手段】逆止弁15は、周壁を貫通する横孔41Eを有する筒状のハウジング41と、ハウジング41の軸方向の端部に設けられる弁座42と、ハウジング41の内部に軸方向へ移動可能に収容されるとともに、弁座42に着座するように常時付勢される弁体43と、を有している。弁体43が弁座42から離れる方向へ移動することによって、ガスの入口となる第1の開口部δ1と、ガスの出口となる第2の開口部δ2とが形成される。第1の開口部δ1は、弁座42と弁体43の先端部との間の隙間であって、弁体43の先端部によって開閉される。第2の開口部δ2は、横孔41Eのハウジング41の内部に露出する一部であって、弁体43の外周面によって開閉される。弁体43の位置に関わらず、第2の開口部δ2の開口面積が第1の開口部δ1の開口面積よりも狭くなるように構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの流路に設けられる逆止弁であって、
周壁を貫通する横孔を有する筒状のハウジングと、
前記ハウジングの軸方向の端部に設けられる弁座と、
前記ハウジングの内部に軸方向へ移動可能に収容されるとともに、前記弁座に着座するように常時付勢される弁体と、を有し、
前記弁体が前記弁座から離れる方向へ移動することによって、前記ガスの入口となる第1の開口部と、前記ガスの出口となる第2の開口部とが形成されるように構成され、
前記第1の開口部は、前記弁座と前記弁体の先端部との間の隙間であって、前記弁体の先端部によって開閉されるように構成され、
前記第2の開口部は、前記ハウジングの内部に露出する前記横孔の一部であって、前記弁体の外周面によって開閉されるように構成され、
前記弁体の位置に関わらず、前記第2の開口部の開口面積が前記第1の開口部の開口面積よりも狭くなるように構成される逆止弁。
【請求項2】
前記弁体の先端部は、先端に向かって細くなるテーパ面を有し、
前記弁体の移動に伴い、前記テーパ面が前記横孔に対して径方向にオーバーラップすることにより、前記第2の開口部が形成されるように構成され、
前記弁体が前記弁座から離れる方向へ移動するとき、前記第1の開口部が前記第2の開口部よりも先に開くように構成される請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記第2の開口部が形成され始めてから前記第2の開口部の開口面積が最大となるまでの期間、前記テーパ面を仮想的に延長した延長面が前記横孔の内周面と交わらないように、前記横孔のサイズが設定される請求項2に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記弁体が前記弁座に着座するように前記弁体を常時付勢する付勢部材を有し、
前記第2の開口部を通過した後の前記ガスが、ガスタンクへ供給されるように構成されるとともに、前記弁体の先端部と反対側の端部である基端部に、前記第2の開口部を通過した後の前記ガスの圧力が作用するように構成される請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の逆止弁。
【請求項5】
前記ガスは、高圧の水素ガスであって、前記第2の開口部を通過した後の前記水素ガスが、燃料電池自動車のガスタンクへ供給されるように構成される請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の逆止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池自動車などに搭載されるガスタンクには、ガスタンクの内部に貯蔵される高圧の水素ガスの給排を制御するための弁装置が取り付けられている。たとえば、特許文献1の弁装置は、ガスタンクの内外を連通するガス流路が形成されたボディを備えている。ガス流路は、外部の供給元、たとえば水素ステーションの水素タンクから供給される水素ガスをガスタンクに充填するための充填路を含む。充填路には、水素ガスが逆流することを防止する逆止弁が設けられている。
【0003】
水素ガスの充填時、外部から供給される水素ガスの圧力によって、コイルばねなどの付勢部材の付勢力に抗して弁体が弁座から離れる。これにより、逆止弁が開状態となる。開状態の逆止弁を通過する水素ガスが、充填路を介して、ガスタンクに充填される。水素ガスの充填完了時、ガスタンクの内部の水素ガスの圧力、および付勢部材の付勢力によって、弁体が付勢されることにより、弁体の頭部が弁座の弁孔を閉塞する。これにより、逆止弁が閉状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-071685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、燃料電池自動車には、水素ガスの充填時間の短縮が求められる。充填時間は、逆止弁の開弁動作の応答性の影響を受ける。充填時間を短縮するため、逆止弁の開弁動作の応答性を向上させることが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し得る逆止弁は、ガスの流路に設けられる。逆止弁は、周壁を貫通する横孔を有する筒状のハウジングと、前記ハウジングの軸方向の端部に設けられる弁座と、前記ハウジングの内部に軸方向へ移動可能に収容されるとともに、前記弁座に着座するように常時付勢される弁体と、を有している。前記弁体が前記弁座から離れる方向へ移動することによって、前記ガスの入口となる第1の開口部と、前記ガスの出口となる第2の開口部とが形成されるように構成される。前記第1の開口部は、前記弁座と前記弁体の先端部との間の隙間であって、前記弁体の先端部によって開閉されるように構成される。前記第2の開口部は、前記ハウジングの内部に露出する前記横孔の一部であって、前記弁体の外周面によって開閉されるように構成される。前記弁体の位置に関わらず、前記第2の開口部の開口面積が前記第1の開口部の開口面積よりも狭くなるように構成される。
【0007】
この構成によれば、ガスが第2の開口部を通過する際、第2の開口部が絞りとして機能することにより、ガスに圧力損失が発生する。このため、第2の開口部に対する上流のガスの圧力が、第2の開口部に対する下流のガスの圧力よりも高くなる。したがって、第1の開口部から供給されるガスが、第2の開口部を介して横孔に円滑に流れ込むことにより、減圧弁の開弁動作の応答性が向上する。
【0008】
上記の逆止弁において、前記弁体の先端部は、先端に向かって細くなるテーパ面を有していてもよい。この場合、前記弁体の移動に伴い、前記テーパ面が前記横孔に対して径方向にオーバーラップすることにより、前記第2の開口部が形成されるように構成されてもよい。また、前記弁体が前記弁座から離れる方向へ移動するとき、前記第1の開口部が前記第2の開口部よりも先に開くように構成されてもよい。
【0009】
この構成によれば、第1の開口部が開き始めたとき、第2の開口部が閉じた状態でガスが第1の開口部からハウジングの内部に流入することにより、ガスの圧力を受ける弁体の領域の面積である受圧面積が増加する。このため、弁体に作用する弁座から離れる方向の荷重が増加する。したがって、弁体を、ガスの圧力によって、弁座から離れる方向へ円滑に移動させることができる。テーパ面が横孔に対して径方向にオーバーラップする位置まで、弁体が円滑に移動することにより、第2の開口部を適切に開口させることができる。
【0010】
上記の逆止弁において、前記第2の開口部が形成され始めてから前記第2の開口部の開口面積が最大となるまでの期間、前記テーパ面を仮想的に延長した延長面が前記横孔の内周面と交わらないように、前記横孔のサイズが設定されてもよい。
【0011】
この構成によれば、第1の開口部から供給されるガスは、弁体のテーパ面に案内されながら第2の開口部を介して横孔に流入する。このとき、ガスは、横孔に延長面に沿った方向に流入する。第2の開口部が形成され始めてから第2の開口部の開口面積が最大となるまでの期間、延長面が横孔の内周面と交わらないように、横孔のサイズが設定される。このため、延長面に沿って横孔に流入するガスが、横孔の内周面に突き当たることが抑制される。したがって、横孔に流入するガスを、横孔から円滑に流出させることができる。
【0012】
上記の逆止弁において、前記第2の開口部を通過した後の前記ガスが、ガスタンクへ供給されるように構成されてもよい。この場合、前記弁体の先端部と反対側の端部である基端部に、前記第2の開口部を通過した後の前記ガスの圧力が作用するように構成されてもよい。
【0013】
この構成によれば、たとえばガスタンクへのガスの充填が完了して、ガスの供給源からガスタンクへのガスの供給が停止されると、逆止弁の一次側の圧力と、逆止弁の二次側の圧力とが均衡した状態となる。一次側の圧力は、第2の開口部に対する上流側のガスの圧力である。二次側の圧力は、第2の開口部に対する下流側のガスの圧力である。このため、弁体が付勢部材の付勢力により弁座に着座する方向へ移動し、やがて弁体の先端部が弁座に着座する。弁体の先端部は、付勢部材の付勢力により、弁座に押し付けられた状態に維持される。したがって、ガスタンクの気密性が確保される。
【0014】
上記の逆止弁において、前記ガスは、高圧の水素ガスであって、前記第2の開口部を通過した後の前記水素ガスが、燃料電池自動車のガスタンクへ供給されるように構成されてもよい。
【0015】
この構成によれば、減圧弁の開弁動作の応答性が向上することにより、ガスタンクへの水素ガスの充填時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の逆止弁によれば、開弁動作の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】逆止弁の一実施の形態が使用される弁アセンブリの断面図である。
図2図1の弁アセンブリにおける閉状態の逆止弁近傍の断面図である。
図3図1の弁アセンブリにおける微小開状態の逆止弁近傍の拡大断面図である。
図4図1の弁アセンブリにおける開状態の逆止弁近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、逆止弁の一実施の形態を説明する。逆止弁は、たとえば弁アセンブリに組み込まれる。
<弁アセンブリ>
図1に示すように、弁アセンブリ1は、たとえば燃料電池自動車のガスタンク2に装着される。また、弁アセンブリ1は、図示しない配管を介して外部機器3に接続される。外部機器3は、自動車に搭載される燃料電池、および水素ステーションなどの水素ガスの供給源を含む。ガスタンク2は、たとえば72.5MPa程度の高圧の水素ガスを貯蔵する。弁アセンブリ1は、ガスタンク2に充填される水素ガスおよびガスタンク2から送出される水素ガスの流通を制御する。
【0019】
弁アセンブリ1は、ボディ11と、ボディ11に組み付けられる複数の弁サブアセンブリとを有している。複数の弁サブアセンブリは、たとえば手動弁12、複合弁13、安全弁14および逆止弁15を含む。弁アセンブリ1は、先の配管を接続するための継手16を有していてもよい。
【0020】
ボディ11は、金属製である。ボディ11は、たとえば、本体11Aと、本体11Aから側方へ突出する突出部11Bとを有している。また、ボディ11は、複数の取付穴を有している。複数の取付穴は、継手16を取り付けるための継手用取付穴21と、手動弁12を取り付けるための手動弁用取付穴22と、安全弁14および逆止弁15を取り付けるための統合取付穴23と、複合弁13を取り付けるための複合弁用取付穴24とを含む。
【0021】
継手用取付穴21は、突出部11Bと反対側の本体11Aの側面に開口している。手動弁用取付穴22は、本体11Aの第1の端面に開口している。統合取付穴23は、突出部11Bの先端面に開口している。複合弁用取付穴24は、本体11Aの第2の端面に開口している。第2の端面は、本体11Aの軸方向において、第1の端面と反対側の本体11Aの面である。継手用取付穴21、手動弁用取付穴22、統合取付穴23は、および複合弁用取付穴24は、たとえば丸穴である。丸穴とは、穴の軸方向に直交する方向に円形の断面形状を有する穴のことである。
【0022】
統合取付穴23は、安全弁14が取り付けられる安全弁用取付穴23Aと、逆止弁15が取り付けられる逆止弁用取付穴23Bとを有している。安全弁用取付穴23Aおよび逆止弁用取付穴23Bは、突出部11Bの突出方向に並んでいる。安全弁用取付穴23Aと逆止弁用取付穴23Bとは、互いに連通している。安全弁用取付穴23Aは突出部11Bの先端側に位置し、逆止弁用取付穴23Bは突出部11Bの基端側に位置している。安全弁用取付穴23Aは、突出部11Bの先端面に開口している。
【0023】
ボディ11は、水素ガスが流通するガス流路30を有している。ガス流路30は、ガスタンク2に接続される第1の流路31と、継手16を介して外部機器3に接続される第2の流路32とを含む。
【0024】
第1の流路31は、充填路31Aと、送出路31Bとを有している。充填路31Aは、統合取付穴23をガスタンク2と連通する。充填路31Aは、統合取付穴23の逆止弁用取付穴23Bの内周面に開口している。送出路31Bは、複合弁用取付穴24をガスタンク2と連通する。送出路31Bは、複合弁用取付穴24の内周面に開口している。
【0025】
第2の流路32は、第1の部分32Aと、第2の部分32Bと、第3の部分32Cとを有している。第1の部分32Aは、手動弁用取付穴22と複合弁用取付穴24とを連通する部分である。第1の部分32Aは、本体11Aの軸方向に延びている。第2の部分32Bは、継手用取付穴21と第1の部分32Aとを連通する部分である。第2の部分32Bは、本体11Aの軸方向に対して直交する方向に延びている。第3の部分32Cは、統合取付穴23と第1の部分32Aとを連通する部分である。第3の部分32Cは、本体11Aの軸方向に対して直交する方向に延びている。
【0026】
継手16は、円柱状である。継手16は、たとえば、継手用取付穴21にねじ込まれることにより、継手用取付穴21に取り付けられている。継手16は、継手通路16Aを有している。継手通路16Aは、第2の流路32の第2の部分32Bと連通している。継手16は、外部機器3から延びる図示しない配管が連結される部分である。第2の流路32は、配管を介して、外部機器3に接続される。
【0027】
手動弁12は、手動弁用取付穴22に取り付けられている。手動弁12は、第2の流路32の第2の部分32Bと、第2の流路32の第1の部分32Aとの間の水素ガスの流通を制御する。手動弁12は、手動操作により、閉状態と開状態とを切り替えることが可能である。閉状態は、第2の部分32Bと第1の部分32Aとの間の水素ガスの流通が遮断される状態である。開状態は、第2の部分32Bと第1の部分32Aとの間の水素ガスの流通が許容される状態である。
【0028】
安全弁14は、安全弁用取付穴23Aに取り付けられている。安全弁14は、ガスタンク2内の水素ガスの圧力が過大な圧力に達することを抑制するためのものである。安全弁14は、安全弁14の温度に応じて、閉状態と開状態とが切り替わる。安全弁14の温度がしきい値温度以下である場合、安全弁14は閉状態に維持される。閉状態は、安全弁14の流入口に流入する水素ガスを外部に放出しない状態である。安全弁14の温度がしきい値温度を超えると、安全弁14の内部に設けられた可溶性金属製の栓体が溶出することにより、安全弁14は不可逆的に閉状態から開状態へ遷移することが可能となる。開状態は、安全弁14の流入口に流入する水素ガスを外部に放出する状態である。しきい値温度は、たとえば、ガスタンク2内の水素ガスの圧力が過大であるとされる圧力に達するときの安全弁14の温度を基準として設定される。
【0029】
逆止弁15は、逆止弁用取付穴23Bに取り付けられている。逆止弁15は、ガスタンク2内に充填された水素ガスの逆流を防止するためのものである。逆止弁15は、第1の流路31の充填路31Aから第2の流路32の第3の部分32Cへの水素ガスの流通を規制するとともに、第3の部分32Cから充填路31Aへの水素ガスの流通を許容する。逆止弁15は、安全弁14とは異なる態様で水素ガスの流通を制御する。
【0030】
複合弁13は、複合弁用取付穴24に取り付けられている。複合弁13は、電磁弁の機能、および逆止弁の機能を有している。
複合弁13は、電磁弁の機能により、第1の流路31の送出路31Bと、第2の流路32の第1の部分32Aとの間の水素ガスの流通を制御する。複合弁13の電磁弁機能部は、通電されることにより開弁する。すなわち、第1の流路31の送出路31Bと、第2の流路32の第1の部分32Aとの間の水素ガスの流通が許容される。複合弁13の電磁弁機能部は、通電が遮断されることにより閉弁する。すなわち、第1の流路31の送出路31Bと、第2の流路32の第1の部分32Aとの間の水素ガスの流通が遮断される。電磁弁機能部は、電磁弁として機能する複合弁13の部分である。
【0031】
複合弁13は、逆止弁の機能により、第1の流路31の送出路31Bから第2の流路32の第1の部分32Aへの水素ガスの流通を許容するとともに、第2の流路32の第1の部分32Aから第1の流路31の送出路31Bへの水素ガスの流通を規制する。
【0032】
<逆止弁15>
つぎに、逆止弁15の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、逆止弁15は、ハウジング41を有している。ハウジング41は、第1の端部が閉塞した筒状である。ハウジング41は、筒状部41Aと、筒状部41Aの第1の端部に設けられた端壁部41Bとを有している。筒状部41Aの内部は、筒状部41Aの第2の端部に開口した収容穴41Cとして構成されている。第2の端部は、筒状部41Aの軸方向において、第1の端部と反対側の筒状部41Aの端部である。第2の端部は、第1の端部よりも上流に位置している。
【0033】
収容穴41Cの第2の端部には、拡径穴部41Dが設けられている。拡径穴部41Dの内径は、収容穴41Cの第1の端部側の部分の内径よりも大きくなるように設定されている。筒状部41Aの外径は、第2の端部を除いて、逆止弁用取付穴23Bの内径よりも小さくなるように設定されている。筒状部41Aの第2の端部の外径は、逆止弁用取付穴23Bの内径とほぼ同じ、またはそれより若干小さくなるように設定されている。
【0034】
筒状部41Aは、1つ以上の横孔41Eを有している。筒状部41Aは、たとえば、周方向に等間隔に位置する6つの横孔41Eを有している。横孔41Eは、筒状部41Aの軸方向において、第1の端部よりも第2の端部に近い位置に設けられている。横孔41Eは、筒状部41Aの軸方向に延びる長孔である。横孔41Eは、筒状部41Aの周壁を厚み方向に貫通している。
【0035】
端壁部41Bは、ねじ部41Fを有している。ねじ部41Fの外周面には、雄ねじが設けられている。ねじ部41Fは、端壁部41Bの第1の端部に設けられている。第1の端部は、ハウジング41の軸方向において、筒状部41Aと反対側の端壁部41Bの端部である。端壁部41Bの外径は、ねじ部41Fを除いて逆止弁用取付穴23Bの内径よりも小さくなるように設定されている。端壁部41Bにおけるねじ部41F以外の部分の外径は、筒状部41Aの外径と同じであってもよい。
【0036】
ハウジング41は、筒状部41Aを逆止弁用取付穴23Bに挿入しつつ、ねじ部41Fを逆止弁用取付穴23Bにねじ込むことにより、逆止弁用取付穴23Bの内部に取り付けられる。ハウジング41は、軸方向の移動が規制された状態に維持される。ハウジング41を逆止弁用取付穴23Bに装着することにより、逆止弁用取付穴23Bの内周面とハウジング41の外周面との間に、筒状の空間S1が形成される。空間S1は、第1の流路31の充填路31Aと連通している。
【0037】
端壁部41Bは、連通路41Gを有している。連通路41Gは、第1の流路31の充填路31Aを、空間S1を介して、安全弁用取付穴23A内の安全弁14と連通させるための通路である。
【0038】
連通路41Gは、軸方向に延びる縦通路41Hと、軸方向に対して直交する方向に延びる1つ以上の横通路41Iとを有している。連通路41Gは、たとえば、周方向に等間隔に位置する4つの横通路41Iを有している。横通路41Iの第1の端部は、端壁部41Bの外周面に開口している。横通路41Iの第2の端部は、縦通路41Hの第1の端部に寄った位置に開口している。縦通路41Hの第2の端部は、安全弁用取付穴23Aに開口している。第2の端部は、第1の端部と反対側の縦通路41Hの端部である。
【0039】
端壁部41Bは、背圧孔41Jを有している。背圧孔41Jは、収容穴41Cを連通路41Gと連通させるため貫通孔である。背圧孔41Jは、ハウジング41の軸方向に延びている。また、端壁部41Bは、図示しない工具と嵌合する1つ以上の工具穴41Kを有している。工具穴41Kは、たとえば、軸方向において、筒状部41Aと反対側に開口している。端壁部41Bが複数の工具穴41Kを有する場合、工具穴41Kは、たとえば、等角度間隔で縦通路41Hの周囲に設けられる。
【0040】
逆止弁15は、弁座42を有している。弁座42は、たとえば合成樹脂製の円筒である。弁座42は、ハウジング41の拡径穴部41Dの内部に装着されている。ハウジング41が逆止弁用取付穴23Bの内部に固定された状態において、弁座42は、逆止弁用取付穴23Bの内端面とハウジング41とによって、軸方向に挟み込まれている。これにより、逆止弁用取付穴23Bの内端面とハウジング41との間が、弁座42によって密封される。弁座42は、軸方向に貫通した弁口42Aを有している。弁口42Aの内周面は、テーパ面42Bを有している。テーパ面42Bの内径は、拡径穴部41Dの内端面に向かって徐々に増加する。
【0041】
逆止弁15は、弁体43を有している。弁体43は、たとえば金属製である。弁体43は、たとえば円柱状であって、ハウジング41の収容穴41Cの内部に収容されている。弁体43は、軸方向に移動可能である。弁体43は、弁座42の弁口42Aを開閉可能に構成されている。弁体43は、先端部と基端部とを有している。先端部は、軸方向において、弁座42側に位置する弁体43の端部である。基端部は、軸方向において、弁座42の反対側に位置する弁体43の端部である。弁体43の先端部は、テーパ面43Aを有している。弁体43の先端部の外径は、先端に向かって徐々に減少する。弁体43のテーパ面43Aを除いた円柱部分の外径は、収容穴41Cの内径と同程度である。弁体43のテーパ面43Aを除いた円柱部分の外周面は、収容穴41Cの内周面に対して軸方向に摺動する。
【0042】
逆止弁15は、付勢部材44を有している。付勢部材44は、たとえば圧縮コイルばねである。付勢部材44は、ハウジング41の収容穴41Cの内部に収容されている。付勢部材44は、弁体43とハウジング41の端壁部41Bとの間に介在されている。付勢部材44は、弁体43を閉弁方向へ付勢する付勢力を発生する。閉弁方向は、水素ガスの流れの上流方向であって、端壁部41Bから離れる方向である。
【0043】
逆止弁15は、閉状態と開状態との間で切り替わる。閉状態は、弁体43の先端部が弁座42に着座している状態であって、弁口42Aが閉じている状態である。逆止弁15が閉状態であるとき、第1の流路31の充填路31Aと、第2の流路32の第3の部分32Cとの間の水素ガスの流通が遮断される。開状態は、弁体43の先端部が弁座42から離れている状態、すなわち弁口42Aが開いている状態である。逆止弁15が開状態であるとき、第1の流路31の充填路31Aと、第2の流路32の第3の部分32Cとの間の水素ガスの流通が許容される。
【0044】
<水素ガス充填時の弁アセンブリ1の動作>
つぎに、ガスタンク2に水素ガスを充填する際の弁アセンブリ1の動作について説明する。この場合、外部機器3である水素ガスの供給源から延びる配管が、継手16に接続される。水素ガスが継手16を介して供給される前の初期状態において、弁体43は、付勢部材44の付勢力により弁体43の先端部が弁座42に押し付けられた閉状態に維持される。
【0045】
さて、水素ガスの供給源から継手16を介して水素ガスが供給されると、水素ガスは第2の流路32の第2の部分32B、第1の部分32A、および第3の部分32Cを介して、逆止弁15に流入する。弁体43の先端面が水素ガスの圧力を受けることにより、弁体43が、付勢部材44の付勢力に抗して、開弁方向へ移動する。開弁方向は、水素ガスの流れの下流方向であって、弁座42から離れる方向である。弁体43の先端部が弁座42から離隔することにより、逆止弁15が開状態となる。その結果、第2の流路32の第3の部分32Cが、ハウジング41の横孔41Eおよび空間S1を介して、第1の流路31の充填路31Aと連通する。これにより、水素ガスが、充填路31Aを介して、ガスタンク2に流入する。
【0046】
このとき、供給源からの水素ガスは、空間S1および連通路41Gを介して、安全弁14の流入口に流入する。しかし、安全弁14の温度が、しきい値温度を超える高温に達していなければ、安全弁14は閉状態に維持される。このため、安全弁14の温度が、しきい値温度を超える高温に達していない場合、水素ガスが、安全弁14を介して外部に放出されることはない。
【0047】
また、供給源からの水素ガスは、第2の流路32の第2の部分32Bおよび第1の部分32Aを介して、複合弁13にも流入する。しかし、複合弁13は、逆止弁の機能により、第2の流路32の第1の部分32Aから第1の流路31の送出路31Bへの水素ガスの流通を規制する。すなわち、複合弁13は閉状態に維持される。このため、水素ガスが、第1の流路31の送出路31Bを介して、ガスタンク2に流入することはない。
【0048】
ガスタンク2への水素ガスの充填が完了すると、水素ガスの供給源側の弁が閉じられることにより、水素ガスの供給源からガスタンク2への水素ガスの供給が停止される。このとき、逆止弁15の一次側の圧力と、逆止弁15の二次側の圧力とが均衡した状態となる。一次側の圧力は、弁体43の先端部が受ける水素ガスの圧力、すなわち第2の開口部δ2に対する上流側のガスの圧力である。二次側の圧力は、第2の開口部δ2に対する下流側の水素ガスの圧力である。このため、弁体43が付勢部材44の付勢力により閉弁方向へ移動し、やがて弁体43の先端部が弁座42に着座する。これにより、弁座42の弁口42Aが、弁体43の先端部によって再び密封される。弁体43の先端部は、付勢部材44の付勢力により、弁座42に押し付けられた状態に維持される。したがって、ガスタンク2の気密性が確保される。
【0049】
<水素ガス送出時の弁アセンブリ1の動作>
つぎに、ガスタンク2から水素ガスを送り出す際の弁アセンブリ1の動作について説明する。この場合、外部機器3である燃料電池から延びる配管が継手16に接続される。
【0050】
ガスタンク2内の水素ガスは、第1の流路31の送出路31Bを介して、複合弁13に流入する。水素ガスの送出時、複合弁13の電磁弁機能部は、通電されることにより開弁する。これにより、第1の流路31の送出路31Bと、第2の流路32の第1の部分32Aとの間の水素ガスの流通が許容される。水素ガスは、第2の流路32の第1の部分32A、および第2の部分32B、および継手通路16Aを介して、外部機器3である燃料電池に供給される。
【0051】
このとき、ガスタンク2内の水素ガスは、第1の流路31の充填路31Aを介して、逆止弁15にも流入する。水素ガスは、空間S1、連通路41G、および背圧孔41Jを介して、収容穴41Cの内部に流入する。付勢部材44の付勢力に加え、弁体43の基端部が水素ガスの圧力を受けることにより、弁体43の先端部が弁座42に押し付けられる。すなわち、逆止弁15が閉状態に維持される。このため、水素ガスが、第2の流路32の第1の部分32A、第3の部分32C、および逆止弁15を介して、ガスタンク2に逆流することが防止される。
【0052】
また、ガスタンク2内の水素ガスは、第1の流路31の充填路31A、空間S1、および連通路41Gを介して、安全弁14の流入口に流入する。しかし、安全弁14の温度が、しきい値温度を超える高温に達していなければ、安全弁14は閉状態に維持される。このため、安全弁14の温度が、しきい値温度を超える高温に達していない場合、水素ガスが、外部に放出されることはない。
【0053】
<安全弁14の高温時>
つぎに、安全弁14の温度がしきい値温度を超える高温に達した場合の弁アセンブリ1の動作について説明する。
【0054】
ガスタンク2の温度が何らかの原因で上昇し、安全弁14の温度がしきい値温度を超える高温に達した場合、安全弁14が閉状態から開状態へ遷移することが可能となる。ガスタンク2内の水素ガスは、第1の流路31の充填路31A、空間S1、および連通路41Gを介して、安全弁14の流入口に流入する。この流入する水素ガスの圧力によって、安全弁14が開弁する。安全弁14に流入する水素ガスが、開状態の安全弁14を介して外部に放出されることにより、ガスタンク2の温度上昇に伴いガスタンク2の圧力が過大な圧力に達することが抑制される。
【0055】
<逆止弁15の補足説明>
つぎに、逆止弁15の構成について補足説明する。
ガスタンク2への水素ガスの充填時間は、逆止弁15の開弁動作の応答性の影響を受ける。充填時間を短縮するため、逆止弁15の開弁動作の応答性を向上させることが要求される。このため、本実施の形態では、つぎの構成を採用している。
【0056】
図2に示すように、逆止弁15が閉状態であるとき、ハウジング41の横孔41Eの開口面積が「0」となるように、弁体43の形状、弁体43に対する横孔41Eの位置、および横孔41Eのサイズが設定されている。開口面積は、ハウジング41の収容穴41Cに露出する横孔41Eの部分の面積である。逆止弁15が閉状態であるとき、ハウジング41の横孔41Eが、弁体43の外周面により塞がれる。
【0057】
図3に示すように、逆止弁15が微小開状態であるときにおいても、ハウジング41の横孔41Eの開口面積が「0」となるように、弁体43に対する横孔41Eの位置、および横孔41Eのサイズが設定されている。微小開状態は、弁体43の先端部が弁座42から微小距離だけ離れた状態である。弁座42と弁体43の先端部との間には、微小な隙間である第1の開口部δ1が形成されている。第1の開口部δ1は、たとえば、弁座42のテーパ面42Bと弁体43のテーパ面43Aとの間の環状の隙間である。第1の開口部δ1は、水素ガスの入口として機能する。
【0058】
なお、逆止弁15が微小開状態であるとき、ハウジング41の横孔41Eは、弁体43の円柱部分の外周面によって、内側から塞がれた状態に維持される。
図4に示すように、逆止弁15が開状態であるとき、弁体43の先端部が弁座42から離隔している。離隔距離は、逆止弁が微小開状態であるときの離隔距離よりも長い。開状態は、弁体43の基端部がハウジング41の端壁部41Bに対して軸方向に当接した状態である。逆止弁15が開状態であるときの第1の開口部δ1の開口面積は、逆止弁15が微小開状態であるときの第1の開口部δ1の開口面積よりも広い。また、逆止弁15が開状態であるとき、ハウジング41の横孔41Eの一部が収容穴41Cに開口することにより、第2の開口部δ2が形成されている。逆止弁15が開状態であるとき、第2の開口部δ2の開口面積が最大となる。第2の開口部δ2は、横孔41Eと同じ数だけ存在する。第2の開口部δ2は、水素ガスの出口として機能する。
【0059】
弁体43の位置に関わらず、第1の開口部δ1の開口面積である第1の開口面積A1と、第2の開口部δ2の開口面積である第2の開口面積A2とが、次式(1)を満足するように設定される。
【0060】
A1>N・A2 …(1)
ただし、「N」は、横孔41Eの数である。「・」は、乗算を示す。「N・A2」は、第2の開口面積A2の総和である。
【0061】
次式(2)に示されるように、弁座42の弁口42Aの開口面積である弁口開口面積A0も、弁体43の位置に関わらず、第2の開口面積A2の総和「N・A2」よりも広くなるように設定される。
【0062】
A0>N・A2 …(2)
次式(3)に示されるように、弁口開口面積A0は、一例として、逆止弁15が開状態であるときの第2の開口面積A2の総和「N・A2」よりも広くなるように設定される。
【0063】
A0>A1 …(3)
逆止弁15が、図2に示される閉状態に維持されているときも、先の式(1)~(3)が成立する。また、逆止弁15が、図3に示される微小開状態から図4に示される開状態へ遷移するまでの期間においても、先の式(1)~(3)が成立する。
【0064】
なお、弁体43に対する横孔41Eの位置、および横孔41Eのサイズは、第2の開口部δ2が形成され始めてから第2の開口面積A2が最大となるまでの期間、弁体43のテーパ面43Aを延長した延長面L1が、横孔41Eの内周面と交わらないように設定されている。横孔41Eの内周面は、端壁部41Bに近い側の横孔41Eの端部の内周面の一部である。逆止弁15が開状態であるとき、第2の開口面積A2が最大となる。このとき、延長面L1は、端壁部41Bに近い側の横孔41Eの端部において、横孔41Eの内周面とハウジング41の外周面とから形成される角部と接触する。
【0065】
<逆止弁15の作用>
このように構成した逆止弁15は、つぎの作用を奏する。
図3に示すように、ガスタンク2への水素ガスの充填時、逆止弁15に流入する水素ガスの圧力により、弁体43が、付勢部材44の付勢力に抗して、開弁方向へ移動し始める。これに伴い、弁体43の先端部が弁座42から離れることにより、第1の開口部δ1が形成され始め、弁口42Aの密封が解除される。しかし、弁体43が移動し始めた段階である微小開状態において、横孔41Eが依然として弁体43の外周面によって閉塞された状態に維持される。このため、水素ガスは、第1の開口部δ1を介して、導入空間S2に流入するものの、横孔41Eには流入しない。導入空間S2は、ハウジング41の内周面と、弁座42と、弁体43のテーパ面43Aとによって囲まれる空間である。
【0066】
横孔41Eが弁体43の外周面によって閉塞された状態で水素ガスが導入空間S2に流入することにより、弁体43の受圧径が第1の受圧径φ1から第2の受圧径φ2へ増加する。受圧径は、水素ガスの圧力を受ける弁体43の領域の直径である。第1の受圧径φ1は、逆止弁15が閉状態であるときの弁体43の受圧径であって、弁体43の先端面の直径と同じである。第2の受圧径φ2は、逆止弁15が微小開状態であるときの弁体43の受圧径であって、弁体43の最大外径と同じである。最大外径は、弁体43のテーパ面43Aを除いた円柱部分の外径である。
【0067】
受圧径が増加することは、受圧面積が増加することでもある。受圧面積は、水素ガスの圧力を受ける弁体43の領域の面積である。すなわち、受圧径により、弁体43に作用する開弁方向の荷重が決まる。逆止弁15が閉状態から微小開状態に遷移したとき、弁体43の受圧径が第1の受圧径φ1から第2の受圧径φ2へ増加することにより、弁体43に作用する開弁方向の荷重が増加する。したがって、弁体43が、水素ガスの圧力によって、開弁方向へ円滑に移動する。
【0068】
第1の開口部δ1が形成され始めた段階において、第1の開口部δ1の開口面積である第1の開口面積A1は、弁口42Aの開口面積である弁口開口面積A0よりも狭い。このため、弁口42Aを通過した水素ガスが第1の開口部δ1に流入する際、第1の開口部δ1が絞りとして機能することにより、水素ガスには圧力損失が発生する。このため、水素ガスの圧力が低下する。次式(4)に示されるように、第1の開口部δ1を通過した後の水素ガスの圧力P1は、第1の開口部δ1を通過する前の水素ガスの圧力P0よりも低くなる。
【0069】
P0>P1 …(4)
水素ガスが第1の開口部δ1を通過する際に発生する圧力損失により、第1の開口部δ1を通過する前の水素ガスの圧力P0と、第1の開口部δ1を通過した後の水素ガスの圧力P1との差が大きくなりやすい。このため、弁口42Aを通過した水素ガスが、第1の開口部δ1を介して、導入空間S2に円滑に流入する。
【0070】
図4に示すように、水素ガスの圧力により、弁体43がさらに開弁方向へ移動する。弁体43のテーパ面43Aが横孔41Eに達した以降、テーパ面43Aが横孔41Eに対して径方向にオーバーラップすることにより、第2の開口部δ2が形成される。これにより、横孔41Eの閉塞が開放されるとともに、導入空間S2と横孔41Eの内部とが、第2の開口部δ2を介して連通する。このため、水素ガスは、横孔41E、空間S1、および充填路31Aを介して、ガスタンク2に供給される。
【0071】
第2の開口部δ2が形成され始めた段階において、第2の開口部δ2の開口面積である第2の開口面積A2の総和は、第1の開口部δ1の開口面積である第1の開口面積A1よりも狭い。このため、水素ガスが第1の開口部δ1を経由して第2の開口部δ2に流入する際、第2の開口部δ2が絞りとして機能することにより、水素ガスには圧力損失が発生する。このため、水素ガスの圧力が低下する。次式(5)に示されるように、第2の開口部δ2を通過した後の水素ガスの圧力P2は、第2の開口部δ2を通過する前の水素ガスの圧力P1よりも低くなる。
【0072】
P1>P2 …(5)
水素ガスが第2の開口部δ2を通過する際に発生する圧力損失により、第2の開口部δ2を通過する前の水素ガスの圧力P1と、第2の開口部δ2を通過した後の水素ガスの圧力P2との差が大きくなりやすい。このため、導入空間S2に流入する水素ガスが、第2の開口部δ2を介して、横孔41Eに円滑に流入する。
【0073】
弁体43が開弁方向へ移動するにつれて、第2の開口部δ2の開口面積である第2の開口面積A2が徐々に増加する。第2の開口面積A2の増加に伴い、導入空間S2から横孔41Eに流入する水素ガスの流量が増大する。
【0074】
弁体43の開弁方向への移動は、弁体43の基端部がハウジング41の端壁部41Bに対して軸方向に当接することにより規制される。このとき、第2の開口面積A2が最大となる。第2の開口面積A2が最大となる逆止弁15の状態が、逆止弁15の全開状態である。逆止弁15が全開状態となった場合であれ、第2の開口面積A2の総和は、第1の開口部δ1の開口面積である第1の開口面積A1よりも狭い。
【0075】
したがって、水素ガスが第2の開口部δ2を通過する際に圧力損失が発生する。この圧力損失により、第2の開口部δ2を通過する前の水素ガスの圧力P1と、第2の開口部δ2を通過した後の水素ガスの圧力P2との差が大きくなりやすい。このため、導入空間S2に流入する水素ガスが、第2の開口部δ2を介して、横孔41Eに円滑に流入する。
【0076】
また、弁体43の基端部は、水素ガスの圧力によって、ハウジング41の端壁部41Bと軸方向に当接した状態に維持される。すなわち、逆止弁15は、第2の開口面積A2が最大となる全開状態に維持される。このため、第2の開口部δ2を介して横孔41Eに流入する水素ガスの流量が確保される。
【0077】
また、第1の開口部δ1から供給される水素ガスは、弁体43のテーパ面43Aに案内されながら第2の開口部δ2を介して横孔41Eに流入する。このとき、水素ガスは、横孔41Eに延長面L1に沿った方向に流入する。ここで、第2の開口部δ2が形成され始めてから第2の開口面積A2が最大となるまでの期間、横孔41Eのサイズは、弁体43のテーパ面43Aを仮想的に延長した延長面L1が、横孔41Eの内周面と交わらないように設定されている。横孔41Eの内周面は、端壁部41Bに近い側の横孔41Eの端部の内周面の一部である。このため、延長面L1に沿って横孔41Eに流入する水素ガスが、横孔41Eの内周面に突き当たることが抑制される。すなわち、横孔41Eに流入する水素ガスの流れを妨げるものが存在しないため、横孔41Eに流入する水素ガスが空間S1に円滑に流出する。
【0078】
以上のように、逆止弁15は、第2の開口部δ2に対する上流の水素ガスの圧力P0,P1が、第2の開口部δ2に対する下流の水素ガスの圧力P2よりも高くなる。この圧力差を意図的に発生させることによって、逆止弁15の開弁動作の応答性が向上する。たとえば、ガスタンク2に水素ガスを充填する際、水素ガスが逆止弁15に流入してから、逆止弁15から流出するまでに要する時間、すなわちタイムラグを短縮することができる。したがって、ガスタンク2への水素ガスの充填時間を短縮することができる。
【0079】
<比較例>
ちなみに、第2の開口部δ2の開口面積である第2の開口面積A2が、第1の開口部δ1の開口面積である第1の開口面積A1よりも広くなるように、第1の開口面積A1および第2の開口面積A2を設定した場合、つぎのことが懸念される。
【0080】
すなわち、水素ガスが第1の開口部δ1を経由して第2の開口部δ2に流入する際、第2の開口部δ2が絞りとして機能しないため、水素ガスに圧力損失が発生しない。このため、第2の開口部δ2を通過した後の水素ガスの圧力P2は、第2の開口部δ2を通過する前の水素ガスの圧力P1と同程度となる。すなわち、第2の開口部δ2を通過する前の水素ガスの圧力P1と、第2の開口部δ2を通過した後の水素ガスの圧力P2との差が発生しにくい。したがって、逆止弁15の開弁動作に必要とされる応答性が確保できないおそれがある。
【0081】
<実施の形態の効果>
本実施の形態は、以下の効果を奏する。
(1)弁体43の位置に関わらず、第2の開口部δ2の開口面積である第2の開口面積A2が、第1の開口部δ1の開口面積である第1の開口面積A1よりも狭くなるように、逆止弁15の各部が構成されている。水素ガスの出口である第2の開口部δ2の開口面積が、水素ガスの入口である第1の開口部δ1の開口面積よりも狭いため、水素ガスが第2の開口部δ2を通過する際、第2の開口部δ2が絞りとして機能する。これにより、水素ガスが第2の開口部δ2を通過する際、水素ガスに圧力損失が発生する。このため、第2の開口部δ2に対する上流の水素ガスの圧力P1が、第2の開口部δ2に対する下流の水素ガスの圧力P2よりも高くなる。したがって、第1の開口部δ1から供給される水素ガスが、第2の開口部δ2を介して、横孔41Eに円滑に流れ込むことにより、逆止弁15の開弁動作の応答性が向上する。また、逆止弁15の開弁動作の応答性が向上することにより、ガスタンク2への水素ガスの充填時間を短縮することができる。
【0082】
(2)弁体43が弁座42から離れる方向へ移動するとき、第1の開口部δ1が第2の開口部δ2よりも先に開く。このため、第1の開口部δ1が開き始めたとき、第2の開口部δ2が閉じた状態で水素ガスが第1の開口部δ1からハウジング41の内部、すなわち導入空間S2に流入することにより、弁体43の受圧面積が増加する。このため、弁体43に作用する弁座42から離れる方向の荷重が増加する。したがって、弁体43を、水素ガスの圧力によって、弁座42から離れる方向へ円滑に移動させることができる。テーパ面43Aが横孔41Eに対して径方向にオーバーラップする位置まで、弁体43が円滑に移動することにより、第2の開口部δ2を適切に開口させることができる。
【0083】
(3)第2の開口部δ2が形成され始めてから第2の開口面積A2が最大となるまでの期間、横孔41Eのサイズは、弁体43のテーパ面43Aを仮想的に延長した延長面L1が、横孔41Eの内周面と交わらないように設定されている。横孔41Eの内周面は、端壁部41Bに近い側の横孔41Eの端部の内周面の一部である。このため、延長面L1に沿って横孔41Eに流入する水素ガスが、横孔41Eの内周面に突き当たることが抑制される。すなわち、横孔41Eに流入する水素ガスの流れを妨げるものが存在しないため、横孔41Eに流入する水素ガスを空間S1から円滑に流出させることができる。したがって、水素ガスをガスタンク2に速やかに充填することができる。
【0084】
(4)第2の開口部δ2を通過した後の水素ガスは、ガスタンク2へ供給される。また、弁体43の先端部と反対側の端部である基端部には、第2の開口部δ2を通過した後の水素ガスの圧力が作用する。このため、ガスタンク2へのガスの充填が完了して、ガスの供給源からガスタンク2へのガスの供給が停止されると、逆止弁15の一次側の圧力と、逆止弁15の二次側の圧力とが均衡した状態となる。このため、弁体43が付勢部材44の付勢力により弁座42に着座する方向へ移動し、やがて弁体43の先端部が弁座42に着座する。弁体43の先端部は、付勢部材44の付勢力により、弁座42に押し付けられた状態に維持される。したがって、ガスタンク2の気密性が確保される。
【0085】
(5)ボディ11の統合取付穴23は、単一の穴であって、安全弁用取付穴23Aと、逆止弁用取付穴23Bとを有している。安全弁用取付穴23Aおよび逆止弁用取付穴23Bは、同軸上に位置している。このため、安全弁用取付穴23Aと逆止弁用取付穴23Bとが、互いに独立した穴である場合に比べて、ボディ11の構造を簡素化することができる。また、ボディ11の加工時間を短縮することができる。
【0086】
(6)逆止弁15は、部分組立品である。部分組立品は、特定の機能部分を構成する部品を一体に扱えるように組み立てたものである。すなわち、逆止弁15を個別に取り扱うことができる。このため、逆止弁15をボディ11に取り付ける際、安全弁用取付穴23Aを介して、逆止弁15を逆止弁用取付穴23Bに簡単に取り付けることができる。また、逆止弁15を交換する際、安全弁用取付穴23Aを介して、逆止弁15を逆止弁用取付穴23Bから簡単に取り外すことができる。ちなみに、安全弁14も部分組立品であって、個別に取り扱うことができる。
【0087】
(7)逆止弁15のハウジング41の外周面と、逆止弁用取付穴23Bの内周面との間には、水素ガスの流路として機能する空間Sが形成されている。逆止弁15に流入する水素ガスは、ハウジング41の横孔41Eを介して、空間Sに流出する。空間Sに流入する水素ガスは、充填路31Aを介してガスタンク2へ供給されるとともに、連通路41Gを介して安全弁14の流入口に流入する。すなわち、空間Sに流入する水素ガスは、ハウジング41の外周面に沿って軸方向に流れる。このため、水素ガスの流通に伴う騒音および振動の発生が抑制される。
【0088】
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・ハウジング41の横孔41Eに、たとえばメッシュ状部材を設けることにより、第2の開口部δ2の開口面積を調節するようにしてもよい。メッシュ状部材がハウジング41の収容穴41Cに露出する分だけ、第2の開口部δ2の開口面積が減少する。また、メッシュ状部材がハウジング41の収容穴41Cに露出する分だけ、水素ガスの圧力損失が増加する。
【0089】
・製品仕様などによっては、弁体43が弁座42から離れる方向である開弁方向へ移動するとき、第1の開口部δ1と第2の開口部δ2とが同じタイミングで開くように、逆止弁15の各部を構成してもよい。
【0090】
・弁アセンブリ1は、高圧の水素ガスに限らず、水素ガス以外のガスの流通を制御するようにしてもよい。
・逆止弁15を、弁アセンブリ1を構成する複数の弁サブアセンブリの一つではなく、独立した弁装置として構築してもよい。この場合、逆止弁15は、空間Sを閉じた空間として構成してもよい。また、逆止弁15は、ボディ11を有して構成するようにしてもよい。ただし、ボディ11の形状およびサイズは、適宜調節される。また、ハウジング41は、縦通路41Hの開口を塞ぐように構成される。
【符号の説明】
【0091】
2…ガスタンク
15…逆止弁
31…第1の流路(ガスの流路)
32…第2の流路(ガスの流路)
41…ハウジング
41E…横孔
42…弁座
43…弁体
43A…テーパ面
44…付勢部材
L1…延長面
δ1…第1の開口部
δ2…第2の開口部
図1
図2
図3
図4