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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072501
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 7/06 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
H02P7/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183347
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】薄衣 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】桜井 友博
(72)【発明者】
【氏名】田村 光広
(72)【発明者】
【氏名】鍬田 理沙
【テーマコード(参考)】
5H571
【Fターム(参考)】
5H571AA03
5H571EE02
5H571FF06
5H571GG04
5H571HA01
5H571JJ03
5H571JJ13
5H571JJ16
5H571JJ17
5H571JJ25
5H571JJ26
5H571LL01
5H571LL22
5H571LL33
5H571MM18
(57)【要約】
【課題】可動部又は当接対象物の変形を極力抑制できるようにした制御装置を提供する。
【解決手段】モータ電流検出部42は、正の電源電圧で動作すると共にモータ31の電流を検出する。当接検出部44は、モータドライバ41によりモータを所定方向に回転してモータにかかるトルクが限界値に達しないように予め定められた電流閾値をモータの電流が超えることで扉とストッパとが当接すると見做す。制御器40は、当接検出部の検出結果に基づいてモータドライバの駆動を停止する。制御器は、当接検出部により当接を検出した場合にモータドライバによりモータの駆動を停止する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動するモータドライバ(41)と、前記モータの回転に連動する可動軸(33)を備え前記モータにかかるトルクが限界値に至るまで可動可能にする可動部(14~18)を備えるサーボ機構(20)と、前記サーボ機構の前記可動部の絶対位置検出用に前記可動部の可動軸(33)に連動した抵抗値を取得するポテンショメータ(34)と、前記モータの電流及び前記ポテンショメータの抵抗値に基づいて前記ポテンショメータの抵抗値を校正する校正演算部(46)と、を備えた制御システムを構成する制御装置であって、
正の電源電圧で動作すると共に前記モータの電流を検出するモータ電流検出部(42)と、
前記モータドライバにより前記モータを所定方向に回転して前記モータにかかるトルクが前記限界値に達しないように予め定められた電流閾値(It)を前記モータの電流が超えることで前記可動部と当接対象物とが当接すると見做す当接検出部(44;144、40a)と、
前記当接検出部の検出結果に基づいて前記モータドライバの駆動を停止する制御器(40)と、を備え、
前記制御器は、前記当接検出部により当接と見做された場合に前記モータドライバにより前記モータの駆動を停止する制御装置。
【請求項2】
前記モータの電流には、前記可動軸のトルクに比例した定常電流に前記モータのブラシが整流子に接触又は非接触する際に発生するサージパルスが重畳しており、
前記モータの電流は、前記定常電流が前記モータの反転始動時のトルクに依存して反転始動時の初期に変化する際に正値の方向に増加するように変化し、前記可動部が前記当接対象物から離間する際の反発力の影響が前記モータの反転始動時トルクの影響より大きくなると重畳した前記サージパルスを含めて負値に変化する特性を備えており、
前記モータ電流検出部は、前記サージパルスが予め定められた正値の閾値(+Vref;+Vref1、+Vref2)に達することを検出するサージ検出部(43)を備え、
前記校正演算部は、前記サージ検出部の検出結果から前記モータの回転数を計算し、前記回転数から前記可動軸の機械角と比例関係にある前記ポテンショメータの理想抵抗値を算出し、前記理想抵抗値を用いて前記ポテンショメータにより検出される前記抵抗値を校正するように構成され、
前記当接検出部は、前記モータの電流に重畳される前記サージパルスの検出時に当該サージパルスが前記正値の閾値に達するように前記電流閾値が設定された状態で前記可動部と前記当接対象物とが当接すると見做されるか検出する請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記サージ検出部(343b)は、前記モータの出力の前記定常電流に重畳される負方向に変化する前記サージパルスを検出する請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
前記サージ検出部(343a、343b)は、前記モータの電流に応じた値を複数の互いに異なる正の閾値(+Vref1、+Vref2)と比較することで前記モータの出力の定常電流に重畳される正方向及び負方向に変化する前記サージパルスを検出する請求項2記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願にかかる出願人は、特許文献1記載のモータ制御装置を提案している。このモータ制御装置によれば、サーボ機構の可動軸と同軸で回転するポテンショメータの軸部の絶対位置情報を取得するために抵抗値を読み取っており、これにより、サーボモータの停止角度を検出している。ポテンショメータは、製造工程上の問題から回転の絶対位置に対する抵抗値の線形性が悪い。そこで、校正部を設けることで抵抗値の線形性を校正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-040471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポテンショメータを校正するときには、モータに連動してサーボ機構の可動部を当接対象物に当接させる。しかし、可動部が当接対象物に当接してトルクが限界値となるまでモータを駆動してしまうと、可動部又は当接対象物が変形してしまうため好ましくない。
本開示の目的は、可動部又は当接対象物の変形を極力抑制できるようにした制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明によれば、制御システムは、モータドライバと、サーボ機構と、ポテンショメータと、校正演算部と、を備える。モータドライバは、モータを駆動する。サーボ機構は、モータの回転に連動する可動軸を備えモータにかかるトルクが限界値に至るまで可動可能にする可動部を備える。ポテンショメータは、サーボ機構の可動部の絶対位置検出用に可動部の可動軸に連動した抵抗値を取得する。校正演算部は、モータの電流及びポテンショメータの抵抗値に基づいてポテンショメータの抵抗値を校正する。
【0006】
モータ電流検出部は、正の電源電圧で動作すると共にモータの電流を検出する。当接検出部は、モータドライバによりモータを所定方向に回転してモータにかかるトルクが限界値に達しないように予め定められた電流閾値をモータの電流が超えることで可動部と当接対象物とが当接すると見做している。
【0007】
制御器は、当接検出部の検出結果に基づいてモータドライバの駆動を停止する。請求項1記載の発明によれば、制御器は、当接検出部により当接と見做された場合にモータドライバによりモータの駆動を停止している。このため、サーボ機構の可動部又は当接対象物の変形量を、電流閾値の電流がモータに流されたときのモータのトルクによる変形量以下に制限できる。これにより、可動部又は当接対象物の変形を極力抑制できる。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、モータの電流には、可動軸のトルクに比例した定常電流にモータのブラシが整流子に接触又は非接触する際に発生するサージパルスが重畳している。モータの電流は、定常電流がモータの反転始動時のトルクに依存して反転始動時の初期に変化する際に正値の方向に増加するように変化する。可動部が当接対象物から離間する際の反発力の影響がモータの反転始動時トルクの影響より大きくなると、モータの電流は、重畳したサージパルスを含めて負値に変化する特性を備えている。モータ電流検出部は、サージパルスが予め定められた正値の閾値に達することを検出するサージ検出部を備えている。
【0009】
校正演算部は、サージ検出部の検出結果からモータの回転数を計算し、回転数から可動軸の機械角と比例関係にあるポテンショメータの理想抵抗値を算出し、理想抵抗値を用いてポテンショメータにより検出される抵抗値を校正するように構成される。
【0010】
例えば、可動部が当接対象物から離間する際の反発力の影響がモータの反転始動時トルクの影響より大きくなると、重畳したサージパルスを含めて負値に変化する特性を備えている。このため、重畳されるサージパルスがサージ検出部の正値の閾値に達しないと、当該サージパルスを検出できない。校正演算部が、サージ検出部の検出結果からモータの回転数を計算したとしても、モータ回転数を精度よく検出できなくなり、回転数から可動軸の機械角と比例関係にあるポテンショメータの理想抵抗値を算出しても、精度良く算出できない。
【0011】
そこで、請求項2記載の発明によれば、当接検出部は、モータの電流に重畳されるサージパルスの検出時に当該サージパルスが正値の閾値に達するように電流閾値が設定された状態で可動部と当接対象物とが当接すると見做されるか検出する。このため、モータが反転始動したときであっても、可動部が当接対象物から離間する際の反発力の影響がモータの反転始動時トルクの影響以下となり、モータの電流は、少なくとも重畳したサージパルスがゼロ以上の正値の範囲で変化し、サージパルスの検出時に正値の閾値に達するようになる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、サージパルスが正値の閾値に達することから、サージパルスを正確に検出できるようになる。このため、校正演算部がモータの回転数を極力正確に検出できる。校正演算部が、回転数から可動軸の機械角と比例関係にあるポテンショメータの理想抵抗値を精度よく算出でき、理想抵抗値を用いてポテンショメータにより検出される抵抗値のずれを極力正確に校正できる。
【0013】
請求項3記載の発明のように、サージ検出部は、モータの出力の定常電流に重畳される負方向に変化するサージパルスを検出するとよく、請求項4記載の発明のように、サージ検出部は、モータの電流に応じた値を複数の互いに異なる正の閾値と比較することでモータの出力の定常電流に重畳される正方向及び負方向に変化するサージパルスを検出するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車両用の空調装置の内部構造を表す模式図
図2】扉の開閉機構の概略図とモータの内部構造図
図3】第1実施形態における制御システムを概略的に示す図
図4】制御システムの具体例を示す電気的構成図
図5】モータ電流が限界値に達した場合のモータ電流変化と限界値未満の閾値に抑えた場合のモータ電流変化を比較して示す図
図6】サージ検出部が正の閾値と比較した比較結果を例示する図
図7】扉又はストッパの変形時の状態説明図
図8】校正処理を概略的に示すフローチャート
図9】逆回転方向に位置するストッパでの当接検出方法の説明図
図10】扉とストッパが当接する付近のモータ電流と駆動指令信号を示す図
図11】補正前、補正後のポテンショメータの抵抗値を例示した図
図12】第2実施形態について逆回転方向に位置するストッパへの当接検出方法の説明図
図13】扉とストッパが当接する付近のモータ電流と駆動指令信号を示す図
図14】第3実施形態について制御システムの具体例を示す電気的構成図
図15】サージ検出部が複数の正の閾値と比較した比較結果を例示する図
図16】サージパルスの負方向変化が大きいことを説明する図
図17】第4実施形態について逆回転方向に位置するストッパへの当接検出方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、制御装置の幾つかの実施形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態では、各実施形態で同一又は類似に構成には同一又は類似の符号を付して説明を省略することがある。特に、各実施形態の間で十の位と一の位に同一の符号を付した場合には、同一又は類似の構成としていることに留意する。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態について図1から図11を参照しながら説明する。車両用の空調装置1は、車両に搭載される空調に関する制御システムを構成しており、車室内の暖房運転、冷房運転、除湿運転などを行い、車室内の温度を調整する。空調装置1は、空気経路が形成されるケース2を備える。内気導入口3と外気導入口4とがケース2に空気の取込口として形成されている。
【0017】
ケース2には、車両のフロントウィンドウに空調風を吹き出すデフロスタ吹き出し口5が形成されている。ケース2には、前席の上部に空調風を吹き出すフェイス吹き出し口6が形成されている。ケース2には、前席の下部に空調風を吹き出すフット吹き出し口7が形成されている。
【0018】
空調装置1は、送風機11、蒸発器12、ヒータコア13を備える。送風機11は、ケース2内に空気を流す。蒸発器12には冷媒が流れている。蒸発器12は冷媒が気化する際の気化熱を生じて空気を冷却する熱交換器として用いられる。ヒータコア13は、内部に高温のエンジン冷却水が流れており、エンジン冷却水の熱を用いて周囲の空気を加熱する熱交換器として用いられる。
【0019】
空調装置1は、内気導入口3と外気導入口4とを開閉するための内外気切り替え扉14を備える。内外気切り替え扉14は、内気導入口3や外気導入口4から空調ケース2内部に導入される空気の量を調整する扉でありフラップ装置とも称される。内外気切り替え扉14は、内気導入口3を開いて外気導入口4を閉じることで空調風を車内で循環させる内気モードを実現する。内外気切り替え扉14は、内気導入口3を閉じて外気導入口4を開くことで空調風を車外から取り込む外気モードを実現する。
【0020】
空調装置1は、空調風の温度を調整するための空気混合扉15を備える。空気混合扉15は、蒸発器12よりも空気の流れの下流で且つヒータコア13よりも上流に設置されている。空気混合扉15の開度を制御することで、ヒータコア13を通過して加熱される空気量を調整できる。
【0021】
空調装置1は、デフロスタ扉16、フェイス扉17、及び、フット扉18を備える。デフロスタ扉16は、デフロスタ吹き出し口5からの空調風の吹き出しの有無や吹出し量を調整する。フェイス扉17は、フェイス吹き出し口6からの空調風の吹き出しの有無や吹き出し量を調整する。フット扉18は、フット吹き出し口7からの空調風の吹き出しの有無や吹き出し量を調整する。
【0022】
空調装置1は、吹き出し口モードとして複数のモードを備えている。デフロスタ扉16、フェイス扉17、フット扉18はモードを切り替える扉であり、指示されたモードに応じてデフロスタ扉16、フェイス扉17、フット扉18が回動する。
【0023】
前述した内外気切り替え扉14、空気混合扉15、デフロスタ扉16、フェイス扉17、及び、フット扉18は何れも樹脂により成形されている。内外気切り替え扉14は、内気導入口3が閉じている状態から外気導入口4が閉じている状態までの範囲を回動可能である。
【0024】
例えば、図2に模式的に示すように、内外気切り替え扉14は、内気導入口3を閉じるとストッパA3に当接し、外気導入口4を閉じるときにはストッパA4に当接する。このとき、内外気切り替え扉14は、内気導入口3又は外気導入口4が閉まりきるまでの範囲で回動可能である。ストッパA3及びA4は樹脂により構成され、本開示の当接対象物相当を示す。
【0025】
その他、空気混合扉15、デフロスタ扉16、フェイス扉17、フット扉18は、当該扉15~18が開ききった状態からストッパ(図示せず)に当接して閉まりきるまで開閉可能な範囲で回動する。これらの動作は、内外気切り替え扉14と同様の動作となるため図示やその説明を省略する。デフロスタ扉16とフェイス扉17とフット扉18とを1つの連続する扉で構成してもよい。例えば、円弧面状に形成された扉板部を回動させて各吹き出し口を開閉するロータリ扉を採用してもよい。
【0026】
扉14~18は、サーボ機構20により扉板部の角度が調整される可動部として構成される。空気の流量は、各扉14~18の角度により変化する。このため、扉14~18の角度は、できるだけ高精度に位置制御することが望ましい。
【0027】
サーボ機構20に扉14~18が取付けられている。図2には、サーボ機構20に内外気切り替え扉14が取り付けられ、内気導入口3と外気導入口4とを開閉する構造を例示している。以下では、内外気切り替え扉14の開閉駆動を例示して説明すると共に、当該内外気切り替え扉14を「扉14」と略して説明する。
【0028】
図2に示すように、サーボ機構20はアクチュエータ23を備える。アクチュエータ23は、モータ31と減速部32と可動軸33と、図3に示すポテンショメータ34とにより構成される。モータ31は、制御装置22の制御対象となるブラシ付きのDCモータ、サーボモータによる。
【0029】
モータ31は、界磁極として機能する永久磁石を有する固定子31bを備えている。モータ31は、界磁極の内周にエアギャップを有して回転子31cを備えている。モータ31は、回転子31cに整流子31dを備えている。整流子31dは、コンミテータとも称される。
【0030】
モータ31は、整流子31dと接触して整流子31dに電流を流すためのブラシ31eを備えている。モータ31は、回転駆動することで、ブラシ31eと接触する整流子31dが絶えず切り換わるように構成されている。可動部となる扉14は可動軸33を一体に構成している。可動軸33は、モータ31の回転子31cの回転に連動し、扉14はモータ31にかかるトルクが限界値に至るまで可動可能になっている。
【0031】
減速部32は、ウォームギア32a及び歯車32bなどを組合せて構成されており、モータ31の回転を減速させる。減速部32は、アクチュエータ23として必要なトルクや回転数を調整できる。可動軸33は、固定部材33aに対し回転可能に支持されている。可動軸33は、減速部32に連動しており扉14を回転自在に支持している。これにより、モータ31が、減速部32を介して可動軸33を回転駆動することで扉14を所望の回転位置に駆動できる。
【0032】
可動軸33の回転角度とモータ31の絶対位置は所定の減衰比に応じて依存、比例関係となる。例えば、可動軸33の回転角度<<モータ31の回転角度となる。
【0033】
図3に示すポテンショメータ34は、サーボ機構20による扉14の絶対位置検出用に設けられ、扉14の可動軸33の回転位置を計測するための装置である。ポテンショメータ34は、扉14の可動軸33の回転位置に応じて抵抗値が変化する可変抵抗器であり、可動軸33の回転位置に連関した検出値として抵抗値を取得する。
【0034】
ポテンショメータ34には所定の電圧が印加されており、ポテンショメータ34の抵抗値の変化を電圧の変化として取得できる。ポテンショメータ34を用いることで、可動軸33の回転位置が現在どの位置にあるかを計測できる。ポテンショメータ34は、エンコーダなどの回転位置検出センサに比べて、低コストで回転位置を検出しやすい。
【0035】
ポテンショメータ34は、例えば、図2に示すモータ31の出力軸部31aと同軸の回転軸に対して周方向に沿って連続して設けられた抵抗膜と、抵抗膜の上を摺動する接続端子とを備えた構成である。ポテンショメータ34の抵抗膜に電圧を印加することで、抵抗膜において段階的に電圧降下が引き起こされる。これにより、接続端子が抵抗膜のどの位置と接触しているかをポテンショメータ34の電圧の大きさによって検出できる。ポテンショメータ34の電圧の大きさから接続端子の回転位置を取得することができる。
【0036】
空調装置1は、図3に示す制御装置22を備える。図4に制御装置22の具体例を示している。制御装置22は、制御器40、モータドライバ41、モータ電流検出部42、及び校正演算部46を備える。
【0037】
モータドライバ41は、図示しないが、例えば正の電源電圧の供給を受けて動作するHブリッジ回路により構成され、制御器40から入力されるパルス状の駆動指令信号S11に基づいてモータ31を駆動する。モータドライバ41は、正の直流電源電圧をモータ31に印加するタイミングを制御することでモータ31の駆動状態と非駆動状態とを切り替える。モータドライバ41は、駆動指令信号S11が与えられている間、モータ31を駆動し、駆動指令信号S11が与えられていない場合にはモータ31の駆動を停止する。
【0038】
制御装置22の制御器40は、ポテンショメータ34を用いて位置情報を取得した位置情報に基づいてモータドライバ41によりモータ31の回動を制御する。位置情報は、可動軸33と連動しているポテンショメータ34がどの回動位置にあるかを示す絶対位置情報である。ただし、ポテンショメータ34には、部品としての許容公差が存在するが、理想的な値に対して実際の値にはずれを生じている。
【0039】
例えば、可変抵抗器であるポテンショメータ34の抵抗膜のばらつきによって電圧と回転位置との関係を示す特性マップが理想的な特性マップに対してずれることになる。したがって、可動軸33のより正確な位置を把握するためには、ポテンショメータ34の抵抗値のばらつきを補正することが重要である。
【0040】
モータ電流検出部42は、正の電源電圧で動作する回路により構成され、モータ31に供給される電流を検出する。モータ電流検出部42は、サージ検出部43及び当接検出部44を備える。
【0041】
サージ検出部43は、モータ31の電流の変動を検出する。より詳細には、サージ検出部43は、モータ31のブラシ31eと整流子31dの接触又は非接触が切り替わるときの変化を検出することでサージパルスPを検出する。
【0042】
当接検出部44は、扉14がストッパA4に当接又は当接する直前であることを判定する壁当たり判定部として用いられるものである。当接検出部44は、モータ31の電流を検出することで、当接状態、当接直前状態、又は非当接状態を検出するための構成である。当接検出部44は、当接検出信号S13を制御器40に出力する。
【0043】
制御器40は、サージ検出部43により生成されたサージパルスPについて図示しないワンショット回路等により所定の幅のパルスとされたパルス信号S12を入力する。制御器40は、例えばカウンタ40a等を通じてそのパルス信号S12からモータ31の回転量や回転速度等の回転情報を検出する。制御器40は、その回転情報に基づいてモータ31の回転位置を例えばレジスタ等のメモリ40bに記憶される目標停止位置に一致させるように、モータドライバ41に駆動指令信号S11を入力させることでモータ31の回転量や回転方向等を制御する。
【0044】
モータ31が回転駆動している間、ブラシ31eと整流子31dとの接触が絶えず切り替えられる。サージ検出部43によりブラシ31eと整流子31dの接触の切り替え時に発生するサージパルスPを検出することによって当該検出を開始した位置からのモータ31の回転数を取得できる。モータ31の回転数は可動軸33の回転移動量と連動している。このため、サージ検出部43がサージパルスPを検出することで、可動軸33が回転した機械角を計測できる。ポテンショメータ34の理想抵抗値は可動軸33の機械角と比例関係にある。
【0045】
校正演算部46は、ポテンショメータ34の抵抗値のばらつきを校正するために構成される。校正演算部46は制御器40と同様にマイコンにより構成されている。校正演算部46は、制御器40の一部の機能として構成されていてもよいが、図3及び図4に示したように制御器40とは別体のハードウェアにより構成されており、制御器40との間で同期させて動作させてもよい。本実施形態にかかる機能を理解しやすくするため、制御器40と校正演算部46とを機能的に分けて図示している。前述したように、ポテンショメータ34は理想的な値に対して実際の値にはずれを生じているため、校正演算部46は、モータ電流検出部42による検出電流に基づいてポテンショメータ34の抵抗値を校正する。
【0046】
校正演算部46が、ポテンショメータ34の抵抗値を校正するときには、制御器40がモータドライバ41により扉14を一方のストッパA4に当接させるように可動軸33の回転角度を基準位置まで変化させる。その後、制御器40がモータ31を反転駆動して扉14を他方のストッパA3に当接させるように可動軸33の回転角度を変化させる。
【0047】
校正演算部46は、これらの可動軸33の回転角度の間のモータ31の電流の変化をモータ電流検出部42により検出した検出結果に基づいて、ポテンショメータ34によって検出される抵抗値を校正する。より具体的には、校正演算部46は、サージ検出部43のサージパルスPをカウントしてモータ31の回転数を計算し、当該回転数に連動する可動軸33の機械角からポテンショメータ34の理想抵抗値を算出する。校正演算部46は、この理想抵抗値を用いてポテンショメータ34により検出される抵抗値を校正する。
【0048】
図3の構成の具体例>
図3の構成の具体例を図4に例示している。モータ電流検出部42は、モータ31の電流を電圧変換する抵抗50、サージ検出部143及び増幅器144により構成される。図3に示すサージ検出部43はサージ検出部143により構成できる。サージ検出部143は、バンドパスフィルタ51、増幅器52、及びコンパレータ53を縦続接続して構成されており、コンパレータ53の出力を図示しないワンショット回路等により波形成形した上でパルス信号S12を出力する。
【0049】
ここでのバンドパスフィルタ51は、抵抗50により検出されたモータ31の電流から比較的低周波数帯の定常電流TEの成分を減衰させる微分回路により構成されているものでハイパス特性を備える。このため、バンドパスフィルタ51に限らずハイパスフィルタにより構成しても良い。増幅器52は、サージパルスPの成分を増幅しコンパレータ53に入力させる。コンパレータ53は、正の電源電圧VCCを用いて構成されている。
【0050】
コンパレータ53は、所定の参照閾値である正値の閾値+Vrefを入力して増幅器52の出力と比較し、サージパルスPが予め定められた正値の閾値+Vrefに達したタイミングを検出する。このとき検出するタイミングは、正値の閾値+Vrefを正方向に変化したタイミングであっても負方向に変化したタイミングであってもよい。本実施形態では、正方向の変化を検出するために正値の閾値+Vrefを設定した例を挙げて説明する。サージ検出部143は、所定の正値の閾値+Vrefに基づいて2値化し図示しないワンショット回路等により波形成形した上でパルス信号S12を出力する。
【0051】
図3に示す当接検出部44は、図4に示したように増幅器144及び制御器40内のA/D変換器40cにより構成できる。増幅器144は、モータ31の電流に比例した電圧をアナログ増幅し、制御器40にフィードバックする。制御器40は、カウンタ40a、レジスタや揮発性及び不揮発性のメモリ40b、及びA/D変換器40cなどを備えた制御ロジック回路により構成される。制御器40は、増幅器144の出力アナログ電圧をデジタル変換する。制御器40は、デジタル値を所定の閾値と比較することで、扉14がストッパA4に当接したか否か又は当接する直前であるか否かを判定する。
【0052】
<本実施形態にかかる課題の説明>
図5にモータ電流検出部42により検出されるモータ31の定常電流TEの変化を比較例と共に示している。本実施形態の電流変化を実線により示しており、比較例の電流変化を破線により示している。
【0053】
図6に、図5に示す電流の一部期間Taの中のサージパルスPを含む波形を示している。モータ31の電流は、図5に示す定常電流TEと、図6に示すサージパルスPとに分離できる。定常電流TEは、可動軸33にかかるトルクに比例する電流値になる。サージパルスPは、定常電流TEに重畳しており、脈動するリップル成分に対しブラシ31eが整流子31dに接触・非接触する際の切り替え時に生じるサージとなる。
【0054】
図7に示すように、ポテンショメータ34の抵抗値の校正を開始するときには、モータ31が回動し、扉14が正回転方向に回転してストッパA4に当接する。正回転方向は、本開示の所定方向に相当する。扉14がストッパA4に当接すると扉14にかかるトルクが高くなることからモータ31の電流も上昇する。しかし、図5のタイミングt2に示すように、モータ31にかかるトルクが限界値になることが想定される電流の限界値It1になると、モータ31は回転を停止する。
【0055】
このような場合、扉14及びストッパA4が、樹脂により構成されているため、扉14にかかるトルクの影響から、図7の矢印に示すように、扉14及びストッパA4に物理的な力がかかる。この力が強力に働く場合、扉14又はストッパA4に変形を生じる。
【0056】
このように変形を生じた位置から、モータ31が駆動方向を反転すると、定常電流TEは、モータ31が反転始動時に変化する際に正値の方向に対し反転始動時のトルクに比例して増加するように変化する。
【0057】
扉14は、ストッパA4から離間する際に反発力を強く生じ、可動軸33に反発力の影響を強く生じる。図5のタイミングt2以降、モータ31を正回転方向とは逆の逆回転方向に反転させる際に、モータ電流検出部42は、前述の定常電流TEに加えて、前記の反発力に基づく電流の変化を加えて検出する。したがって、モータ電流検出部42は、モータ31の反転時トルクに依存すると共に、扉14がストッパA4から反発する際の反発力に依存して変化する電流を検出する。
【0058】
図5のタイミングt2において、モータ31のトルクの限度まで扉14がストッパA4に押さえつけるように力を働かせると、扉14がストッパA4から離間する際の反発力の影響がモータ31の反転始動時トルクの影響より大きくなる。この際、モータ電流検出部42は、タイミングt3から一旦は正に変化する電流を検出するものの、図5に期間T中の電流変化を破線で示すように、その後に正値から負値に変化する電流を入力する。
【0059】
言い換えると、扉14がストッパA4に押し込まれた際に樹脂変形によるエネルギーが加わっており、この反発によるエネルギーの影響が所定より大きくなるとモータ31の電流は正値から負値に変化し、モータ電流検出部42はこの電流を入力する。
【0060】
モータ電流検出部42が、正の電源電圧VCCで動作する回路により構成されていると、正値から負値に変化する定常電流TEと同時に定常電流TEに重畳したサージパルスP、を検出できなくなってしまう。このようなときには、モータ31の回転数を精度よく検出できなくなるため好ましくない。
【0061】
<本実施形態の動作>
そこで、本実施形態では、モータ31にかかるトルクが限界値に達しないように限界値It1より低く予め定められた電流閾値Itを制御器40の中の不揮発性メモリ(メモリ40b)に保存して設定している。制御器40は、電流閾値Itを用いて図5のタイミングt1においてモータドライバ41の駆動を停止する。電流閾値Itは、定常電流TEに重畳される正方向又は負方向に変化するサージパルスPを検出可能な程度に定めると良い。ここでは実験やシミュレーションを繰り返して得られた値を予め設定する。
【0062】
制御器40は、増幅器144により増幅されたモータ31の電流に相当する電圧をアナログ入力し、A/D変換器40cによりデジタル変換されたデジタル値が電流閾値Itを超えたか否かを判定する。制御器40は、モータ31の電流が電流閾値Itを超えることで扉14とストッパA4とが当接すると見做す。すると、制御器40は、モータドライバ41によりモータ31の駆動を停止する。これにより、扉14又はストッパA4に変形を極力生じないようにできる。
【0063】
<校正処理>
次に、ポテンショメータ34の抵抗値の校正の流れについて図8を含めて説明する。制御器40は、図8のS1において駆動指令信号S11を出力することでモータドライバ41を駆動してモータ31を駆動する。これにより、サーボ機構20により扉14を正回転方向で基準位置まで回転させる。
【0064】
制御器40は、前述したようにモータ31の電流が電流閾値Itとなるまで可動軸33の回転位置を変化させる。モータ31の電流が電流閾値Itに達すると扉14とストッパA4が当接したと見做される。これにより、図8のS2に示すように、扉14及びストッパA4が当接する直前の位置を判定して可動軸33を回転させて停止できる。図8のS2では、扉14又はストッパA4が変形してもその変形量を許容範囲に制限するように可動軸33を回転させて停止させてもよい。
【0065】
次に、制御器40は、図5及び図9のタイミングt3において駆動指令信号S11を出力することで扉14を逆回転方向に動作開始させる。校正演算部46は、図8のS4において、サージ検出部43により検出されるサージパルスPの発生タイミングを内部のメモリ40bに記録させる。校正演算部46は、そのタイミングの1又は複数の周期に同期してポテンショメータ34の抵抗値を取得し、内部のメモリ40bに記録させる。サージパルスPの発生回数がモータ31の回転数に連動して変化する。これにより、校正演算部46は、サージパルスPの発生回数、すなわちモータ31の回転数と、ポテンショメータ34の抵抗値とを紐付けてメモリ40bに記憶させることができる。
【0066】
図9にモータ31の電流変化を示すように、モータ31の電流は反転始動時のトルクの一時的な増加に伴い一時的に上昇するが、回転継続することで低下する。このとき、先に説明したように、モータ31の電流が電流閾値Itとなったときにモータ31の駆動を停止しているため、ストッパA4の反発力の影響が小さく、モータ31の定常電流TEは正値から負値に至らないように変化する。モータ電流検出部42は、正値で継続している定常電流TEを検出できる。なおここでは、定常電流TEが正値で継続する形態を示しているが、厳密には、サージ検出部43により定常電流TEに重畳されるサージパルスPが正値の閾値+Vrefに達して検出されればよいため、定常電流TEが瞬間的に負値に達していても良い。
【0067】
図6に示すように、サージ検出部43のバンドパスフィルタ51は定常電流TEの成分を除去し、定常電流TEの成分に重畳したサージパルスPを抽出する。増幅器52はパルス成分を増幅し、コンパレータ53がサージパルスPを正値の閾値+Vrefと比較した結果を矩形状のパルス信号S12として出力する。これにより、サージパルスPを逃すことなく検出できる。
【0068】
図6に示すように、サージパルスPは、定常電流TEの正方向にも負方向にも突出するパルスとなるが、閾値+Vrefを適切に設定することで正方向に変化するサージパルスPを検出できる。なお、コンパレータ53の比較基準を変更すれば、負方向に変化するサージパルスPを検出することもできる。
【0069】
定常電流TEが一旦低下した後、扉14が逆回転方向側のストッパA3に当接すると、モータ31にかかるトルクが上昇するため、図9の期間T1においてモータ31の定常電流TEも再度上昇する。制御器40は、当接検出部44を通じて検出されるモータ31の電流が予め定められた所定の電流閾値It2まで上昇したか否かを検出することで、扉14が、逆回転方向側のストッパA3に当接したと見做されるか否かを検出する。
【0070】
制御器40は、図9のタイミングt4において扉14がストッパA3に当接したことを検出すると、駆動指令信号S11の出力を停止しモータドライバ41を停止させてモータ31を停止させる。ここまで、校正演算部46は、補正前のポテンショメータ34の抵抗値の特性を図11の左上図のようにモータ31の回転数に紐づけてメモリ40bに記憶させることができる。
【0071】
図10にモータ31を停止するタイミング近辺の挙動を拡大して図示している。図10のタイミングt4においてモータ31の電流が電流閾値It2以上に上昇すると、制御器40は、空調装置1の処理時間を経てタイミングt5において駆動指令信号S11の出力を停止することとなる。
【0072】
校正演算部46は、駆動指令信号S11を駆動としてから駆動指令信号S11の出力を停止するまでの間の理想抵抗値を算出する。扉14の回転角度はストッパA4とストッパA3との間に制限されているため、可動軸33の機械角の変化も制限されることとなる。
【0073】
校正演算部46は、可動軸33の機械角の制限範囲の中で最初の回転位置から最後の回転位置まで回転するまでのモータ31の出力軸部31aの回転数を計算する。校正演算部46は、図8のS6において計算された回転数から可動軸33の機械角と比例関係にあるポテンショメータ34の理想抵抗値を算出する。図11の右上図に示すように、理想抵抗値は、可動軸33が最初の回転位置から最後の回転位置まで回転するまで線形的に変化する線形特性として導出できる。
【0074】
校正演算部46は、理想抵抗値を用いてポテンショメータ34により検出された抵抗値を校正する。この際、校正演算部46は、図8のS7において理想抵抗値とポテンショメータ34の抵抗値の実測値との差から補正値を算出する。校正演算部46は、ポテンショメータ34の抵抗値を実測しているため、線形的な理想抵抗値に対してどの程度ずれているか計算できる。そして、校正演算部46は、図8のS8において、理想抵抗値に対するずれの値を補正値としてメモリ40bに記憶することでマッピングする。
【0075】
これにより、校正演算部46は、ポテンショメータ34の抵抗値の実測値に補正値を加減算して線形性を校正できる。校正演算部46は、補正値を加減算した抵抗値をメモリ40bに記憶させてもよい。校正演算部46は、ポテンショメータ34の抵抗値の補正値を求めることができるため、モータ31の回転数に対する校正後の抵抗値は、概ね理想抵抗値に近い線形特性となる。これにより、制御器40は、実際にポテンショメータ34の抵抗値を使用する際に、校正後の補正値や補正された抵抗値をメモリ40bから読み出して使用することで、ポテンショメータ34の補正後の抵抗値からモータ31の回転位置を極力正確に求めることができる。
【0076】
<第1実施形態のまとめ>
以上説明したように、本実施形態によれば、当接検出部44が、モータ31にかかるトルクが限界値に達しないように予め定められた電流閾値Itをモータ31の電流が超えることで扉14とストッパA4とが当接すると見做している。制御器40は、当接検出部44により当接と見做された場合にモータドライバ41によりモータ31の駆動を停止している。
【0077】
電流閾値Itは、モータ31のトルクの限界値から定まる電流閾値It1未満に設定されている。このため、扉14、ストッパA4の変形量を、電流閾値Itの電流がモータ31に流されたときのモータ31のトルクにより生じる変形量に制限できる。この結果、扉14又はストッパA4に極力変形を生じないようにできる。なお、扉14、ストッパA4の変形量がゼロに調整されるように電流閾値Itが設定されていてもよい。
【0078】
<比較例>
例えば、扉14がストッパA4から離間する際の反発力の影響がモータ31の反転始動時トルクの影響より大きくなると、図5の期間Tの破線に示したように、モータ31の電流は重畳したサージパルスPを含めて負値に変化する特性を備えている。このため、モータ31の電流に重畳されるサージパルスPが、サージ検出部143の正値の閾値に達しなくなり当該サージパルスPを検出できない。この場合、校正演算部46が、サージ検出部143の検出結果からモータ31の回転数を計算したとしても、モータ回転数を精度よく検出できなくなる。校正演算部46が、回転数から可動軸33の機械角と比例関係にあるポテンショメータ34の理想抵抗値を算出しても、精度良く算出できない。
【0079】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、モータ31の電流に含まれるサージパルスPが、検出時に少なくとも正値の閾値+Vrefに達するようにモータ31の電流閾値Itが設定されている。例えば、モータ31の電流閾値Itは、サーボ機構20の回転軸33を逆方向に回転して扉14がストッパA4から離間する際に電流が負電流とならないように設定されている。当接検出部44は、この状態で扉14とストッパA4とが当接すると見做されるか検出する。このため、モータ31が反転始動したときであっても扉14がストッパA4から離間する際の反発力の影響がモータ31の反転始動時トルクの影響以下となる。モータ31の電流は、少なくとも重畳したサージパルスPがゼロ以上の正値の範囲まで変化し、サージパルスPの検出時に正値の閾値に達するようになる。
【0080】
前述に例示したように、サージ検出部143が、正の電源電圧VCCで動作するコンパレータ53を備えており、サージパルスPが予め定められた正値の閾値+Vrefに達することを検出する。このため、モータ31の定常電流TEに重畳するサージパルスPを逃すことなく検出できる。これにより、モータ31の回転数を極力正確に検出できる。校正演算部46が、回転数から可動軸33の機械角と比例関係にあるポテンショメータ34の理想抵抗値を精度よく算出でき、理想抵抗値を用いてポテンショメータ34により検出される抵抗値のずれを極力正確に校正できる。この結果、校正の精度を高めることができる。
【0081】
<校正処理の変形例>
前述では図8のS4においてサージパルスPの発生タイミングに同期してポテンショメータ34の抵抗値を記録するようにしたが、これに限られるものではない。ポテンショメータ34の抵抗値を取得するタイミングは、サージパルスPの発生タイミングに同期しなくてもよい。校正演算部46がタイマを内蔵していれば、タイマを用いてポテンショメータ34の抵抗値を取得するタイミングを周期的に設定してもよい。つまり、ポテンショメータ34の抵抗値の取得タイミングをサージパルスPに関係なく設定しても良い。
【0082】
このときも校正演算部46は図8と同様に処理を実行するが、S4においては下記のように処理を実行するとよい。校正演算部46は、扉14がこれらのストッパA4からストッパA3まで回転するときのモータ31の回転数を、扉14が最初のストッパA4の位置から動作し始めたタイミングからの相対位置としてステップ的に計算する。校正演算部46は、内蔵のタイマにより検出を開始した位置からの時間の情報を取得し、どのタイミングで検出したモータ31の回転数であるかを時間情報に紐づけてメモリ40bに記憶させる。
【0083】
校正演算部46は、このモータ31の回転数の情報と並行してポテンショメータ34の抵抗値をステップ的に絶対位置情報として取得する。校正演算部46は、内蔵のタイマにより検出を開始した位置からの時間の情報を取得し、どのタイミングで検出したポテンショメータ34の抵抗値であるかを時間情報に紐付けてメモリ40bに記憶させる。
【0084】
校正演算部46は、図8のS5~S6において理想抵抗値を算出した後、S7~S8において理想抵抗値と実測値の差から補正値を算出し、メモリ40bに記録するとよい。これにより、上記実施形態と同様に校正できるようになる。したがって、図8のS4においては、サージパルスPを検出しなくてもポテンショメータ34の抵抗値を記録できる。
【0085】
(第2実施形態)
第2実施形態について図12及び図13を参照しながら説明する。第1実施形態では、モータ31の電流の変化が電流閾値It2に達することで、扉14がストッパA3に当接したことを検出する、すなわち当接と見做す形態を示したが、これに限定されるものではない。
【0086】
図12に示すように、モータ31の電流の微分値を算出し、この微分値の変化が電流微分閾値It3に達することで、扉14がストッパA3に当接したこと検出する、すなわち当接したと見做すようにしてもよい。
【0087】
図13にモータ31を停止するタイミング近辺の挙動を拡大して図示している。図13のタイミングt6においてモータ31の電流が電流微分閾値It3以上に上昇すると、制御器40は、システムの処理時間を経て、タイミングt7において駆動指令信号S11の出力を停止する。本実施形態によっても前述実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0088】
(第3実施形態)
第3実施形態について図14から図16を参照しながら説明する。図14に示す空調装置301は、制御装置322を備えている。制御装置322はモータ電流検出部342を備え、モータ電流検出部342は複数(例えば二つ)のサージ検出部343a、343bを備えている。サージ検出部343a、343bは、それぞれバンドパスフィルタ51、増幅器52、コンパレータ53を備えている。校正演算部346は、デジタルフィルタの機能を備える。デジタルフィルタは、サージパルスPを検出する際に当該サージパルスPが概ね同時タイミングで正方向及び負方向に変化しても1パルスとして認識するために設けられるフィルタを示す。空調装置301のその他の構成は、コンパレータ53の閾値+Vref1、+Vref2の設定値以外同様であるため、その説明を省略する。
【0089】
閾値+Vref1及び+Vref2は、+Vref1>+Vref2の関係性を備えている。閾値+Vref1及び+Vref2は、それぞれ図15に示すように、増幅器52の出力に含まれるサージパルスPを検出するための閾値として設定されている。図16に示すように、整流子31dがブラシ31eとの間で接触、非接触の変化を生じるたびに、モータ31の電流はその向きを変更する。ブラシ31eと整流子31dとが離間して電流を流さなくなると瞬時に電流が減少し、モータ31の電流は負方向の変化が大きくなる。
【0090】
ブラシ31e付きのモータ31が継続して回転する最中、ブラシ31eと整流子31dが接触している期間と、ブラシ31eが整流子31dから離間している期間とを比較すると、離間している期間の方が圧倒的に短い。したがって、モータ31の電流は、正方向に変化する傾きより負方向に変化する傾きの方が大きくなる。
【0091】
図14に示すバンドパスフィルタ51は、定常電流TEの成分を減衰させると共にこの電流の傾きを微分回路によりサージパルスPとして通過し、増幅器52はサージパルスPを増幅する。このとき、負方向に変化するサージパルスPがより強調して出力される。したがって、正方向に変化するサージパルスPよりも、負方向に変化するサージパルスPを検出した方がより検出しやすくなると考えられる。
【0092】
本実施形態の構成では、図15に示すように、サージ検出部343aのコンパレータ53は、増幅器52の出力を第1の正の閾値+Vref1と比較することで定常電流TEに重畳される正方向に変化するサージパルスPを検出している。サージ検出部343bのコンパレータ53は、増幅器52の出力を第2の正の閾値+Vref2と比較することで定常電流TEに重畳される負方向に変化するサージパルスPを検出している。サージ検出部343bが、負方向に変化するサージパルスPを検出しているため、より信頼性よくサージパルスPを検出できる。校正演算部46は、デジタルフィルタの機能により、サージパルスPが概ね同時タイミングで正方向及び負方向に変化しても1パルスとして認識する。この結果、サージパルスPの発生タイミングを信頼性良く検出できる。
【0093】
本実施形態によれば、サージ検出部343a、343bが、モータ31の電流に応じた値を複数の互いに異なる正の閾値+Vref1、+Vref2と比較する。サージ検出部343a、343bは、モータ31の出力の定常電流TEに重畳される正方向及び負方向に変化するサージパルスPを検出する。このため、サージ検出部343a、343bが、それぞれ正の両閾値+Vref1、+Vref2と比較することで、サージパルスPの検出信頼性を高めることができる。例えば、サージパルスPが、正方向又は負方向にオフセットを生じたり、何らかの影響で振れ幅が小さくなったとしても、少なくとも正方向又は負方向に変動する何れかのサージパルスPを極力検出できるようになる。これにより、モータ31の回転数を極力正確に算出でき、校正の精度を高めることができる。
【0094】
(第4実施形態)
第4実施形態について図4及び図17を参照しながら説明する。図4に示すカウンタ40aは、サージ検出部43の後段のワンショットパルス回路の出力に接続されている。校正演算部46は、カウンタ40aのカウント結果に基づいてサージ検出部43の出力に応じて扉14がストッパA3に当接したか否かを判定する。
【0095】
図17に示すように、制御器40が駆動指令信号S11を出力開始してから、サージ検出部43によりサージパルスPが検出されると、カウンタ40aがサージパルスPのパルス信号S12をカウントする。校正演算部46は、カウンタ40aのカウント値を入力し当該カウント値が所定のカウント閾値に達したことを検出することで、扉14がストッパA3に当接するタイミングを検出する。このように構成しても、モータ31の回転数を極力正確に算出でき、ポテンショメータ34の抵抗値の校正の精度を高めることができる。
【0096】
(他の実施形態)
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができ、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
前述の変形例で説明したが、サージパルスPを検出する必要がなければ、モータ31は、ブラシ31e付きのモータに限らずブラシレスモータを適用しても良い。
【0097】
制御器40は、扉14がストッパA4に当接すると見做すことを検出するための電流閾値Itを所定の範囲でスイープして電流閾値Itを動的に変化させて学習して自動的に設定するようにしても良い。この場合、制御器40は、定常電流TEに重畳されるサージパルスPが正値の閾値+Vref1又は正値の閾値+Vref2にまで変化したか否かを判定し、当該判定条件を満たす電流閾値Itを導出して自動的に設定すると良い。
【0098】
可動部として扉14~18を適用したが、扉14~18以外でも様々に可動する可動体であれば適用でき、空調装置1、301、401以外でも各種の制御システムに適用できる。
【0099】
本発明は、前述した実施形態に準拠して記述したが、本発明は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0100】
図面中、1、301、401は空調装置(制御システム)、14は内外気切り替え扉(可動部)、15は空気混合扉(可動部)、16はデフロスタ扉(可動部)、17はフェイス扉(可動部)、18はフット扉(可動部)、20はサーボ機構、22、322は制御装置、31はモータ、33は可動軸、34はポテンショメータ、40は制御器、41はモータドライバ、42はモータ電流検出部、44は当接検出部、144は増幅器(当接検出部)、40aはA/D変換器(当接検出部)、46は校正演算部、A3及びA4はストッパ(当接対象物)、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17