(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072513
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】信号機、認識装置、信号システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B61L 5/18 20060101AFI20240521BHJP
G08G 1/07 20060101ALI20240521BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B61L5/18 A
G08G1/07 A
H04N7/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183367
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 一宏
(72)【発明者】
【氏名】水沼 正文
【テーマコード(参考)】
5C054
5H161
5H181
【Fターム(参考)】
5C054EA01
5C054EA05
5C054FC07
5C054FC12
5C054FC15
5C054FF06
5C054HA19
5H161AA01
5H161TT01
5H161TT14
5H161TT16
5H181AA01
5H181AA20
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF35
5H181JJ28
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL20
5H181MB02
(57)【要約】
【課題】無線通信機器を用いる場合に比べて安い費用で、遠隔から信号機の現示種別を認識させる。
【解決手段】取得部111は、撮影部17から所定のフレームレートで撮影された動画を取得する。認識部112は、取得部111が取得した動画からフリッカを抽出し、その周期を特定する。認識部112は、求めたこのフリッカの周期と、既知であるフレームレートと、を用いて、動画においてこのフリッカを生じさせている光源の点滅の周波数を求める。そして、認識部112は、求めた周波数が信号灯器21の点滅に適用されるいずれかの周波数である場合、この周波数で点滅する光源を信号灯器21である、と判定し、この信号灯器21の現示種別を認識する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数であって、現示種別ごとに固有の周波数で点滅する信号機。
【請求項2】
共通の前記周波数で点滅する2以上の光源を有する請求項1に記載の信号機。
【請求項3】
前記2以上の光源は同期して点滅する請求項2に記載の信号機。
【請求項4】
異なる周波数でそれぞれが点滅する2以上の光源を有し、前記周波数はいずれも所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数であり、前記異なる周波数の組合せは現示種別ごとに固有である信号機。
【請求項5】
前記2以上の光源は、色ごとに異なる前記周波数で点滅する請求項4に記載の信号機。
【請求項6】
所定のフレームレートで撮影された動画に含まれる光源により生じるフリッカの周期に基づいて信号機の現示種別を認識する認識装置。
【請求項7】
前記動画に異なる周期のフリッカをそれぞれ生じさせる2以上の光源が含まれる場合、該周期の組合せに基づいて前記現示種別を認識する請求項6に記載の認識装置。
【請求項8】
計測された前記光源への接近速度が認識した前記現示種別により示される範囲内にあるか否かを判定する請求項6に記載の認識装置。
【請求項9】
前記接近速度が前記範囲内にないと判定するときに警告する請求項8に記載の認識装置。
【請求項10】
所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数であって、現示種別ごとに固有の周波数で点滅する信号機と、
前記信号機を前記所定のフレームレートで撮影する撮影装置と、
前記撮影装置が撮影した動画を取得し、該動画に含まれる前記フリッカの周期に基づいて前記信号機の現示種別を認識する認識装置と、
を有する信号システム。
【請求項11】
コンピュータを、
所定のフレームレートで撮影された動画を取得する取得手段と、
前記動画に含まれる光源により生じるフリッカの周期に基づいて信号機の現示種別を認識する認識手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号機の現示種別を認識する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
信号機が有する信号灯器の点灯状態、及びその点灯色は、鉄道車両の運転席に設置されたデジタルビデオカメラ等で撮影された場合に、天候、太陽光等に影響されて認識できないことがある。また、撮影された動画等において、信号灯器が発する光は、例えば、自動車のテールランプ等、信号灯器以外の発光体が発する光と区別できないことがある。
【0003】
そこで、鉄道車両の運転席において、信号灯器の点灯状態・点灯色を認識する方法として、信号灯器の点灯と並行して無線通信を用いる方式が検討されている。
【0004】
しかし、点灯とは別に無線通信を用いる通信システムは、送信側、及び受信側の機器にそれぞれ専用のアンテナ、通信回路等を必要とするため初期費用が増大する。
【0005】
一方、信号機から鉄道車両等へ情報を伝達する方法として、信号灯器が発する光そのものを用いる方法も検討されている。例えば、特許文献1は、固定配置された発光装置に所定の信号を重畳させた光を発光させ、車両側の受光装置でその光を受光してその信号を読出す車両用通信システム、を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、信号灯器が発する光に例えば交通規制に関する情報等の複雑で量の多い情報を重畳する。そのため、この技術は、車両側でこの光を復調可能な状態で取得しなければならず、デジタルビデオカメラ等と比べて時間解像度の高い受光素子を必要とする。また、この技術は、送信側、及び受信側の機器にAM、FM等の変調・復調機器を必要とする。
【0008】
本発明の目的の一つは、無線通信機器を用いる場合に比べて安い費用で、遠隔から信号機の現示種別を認識させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数であって、現示種別ごとに固有の周波数で点滅する信号機、を第1の態様として提供する。
【0010】
第1の態様の信号機によれば、無線通信機器を用いる場合に比べて安い費用で、遠隔地にある装置等に現示種別を認識させることができる。
【0011】
第1の態様の信号機において、共通の前記周波数で点滅する2以上の光源を有する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0012】
第2の態様の信号機によれば、2以上の光源のいずれかが届かなくても、遠隔地にある装置等に共通の現示種別を認識させることができる。
【0013】
第2の態様の信号機において、前記2以上の光源は同期して点滅する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0014】
第3の態様の信号機によれば、2以上の光源の点滅が混ざって連続点灯と誤認識されることを防ぐことができる。
【0015】
本発明は、異なる周波数でそれぞれが点滅する2以上の光源を有し、前記周波数はいずれも所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数であり、前記異なる周波数の組合せは現示種別ごとに固有である信号機、を第4の態様として提供する。
【0016】
第4の態様の信号機によれば、信号機が有する複数の光源が共通の周波数で点滅する場合に比べて、現示種別の情報を多く出力できる。
【0017】
第4の態様の信号機において、前記2以上の光源は、色ごとに異なる前記周波数で点滅する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0018】
第5の態様の信号機によれば、2以上の光源の、それぞれ異なる色を、それぞれ対応する周波数で表すことができる。
【0019】
本発明は、所定のフレームレートで撮影された動画に含まれる光源により生じるフリッカの周期に基づいて信号機の現示種別を認識する認識装置、を第6の態様として提供する。
【0020】
第6の態様の認識装置によれば、無線通信機器を用いる場合に比べて安い費用で、遠隔から信号機の現示種別を認識することができる。
【0021】
第6の態様の認識装置において、前記動画に異なる周期のフリッカをそれぞれ生じさせる2以上の光源が含まれる場合、該周期の組合せに基づいて前記現示種別を認識する、という構成が第7の態様として採用されてもよい。
【0022】
第7の態様の認識装置によれば、共通の周期で変化する複数の光源に比べて、現示種別の情報を多く認識することができる。
【0023】
第6の態様の認識装置において、計測された前記光源への接近速度が認識した前記現示種別により示される範囲内にあるか否かを判定する、という構成が第8の態様として採用されてもよい。
【0024】
第8の態様の認識装置によれば、信号機の現示が示す許容範囲外の速度で車両等が光源に接近しているか否か判定することができる。
【0025】
第8の態様の認識装置において、前記接近速度が前記範囲内にないと判定するときに警告する、という構成が第9の態様として採用されてもよい。
【0026】
第9の態様の認識装置によれば、許容範囲外の速度で車両等が光源に接近しているときにそのことを警告することができる。
【0027】
本発明は、所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数であって、現示種別ごとに固有の周波数で点滅する信号機と、前記信号機を前記所定のフレームレートで撮影する撮影装置と、前記撮影装置が撮影した動画を取得し、該動画に含まれる前記フリッカの周期に基づいて前記信号機の現示種別を認識する認識装置と、を有する信号システム、を第10の態様として提供する。
【0028】
第10の態様の信号システムによれば、無線通信機器を用いる場合に比べて安い費用で、遠隔から信号機の現示種別を認識させることができる。
【0029】
本発明は、コンピュータを、所定のフレームレートで撮影された動画を取得する取得手段と、前記動画に含まれる光源により生じるフリッカの周期に基づいて信号機の現示種別を認識する認識手段、として機能させるためのプログラム、を第11の態様として提供する。
【0030】
第11の態様のプログラムによれば、無線通信機器を用いる場合に比べて安い費用で、遠隔から信号機の現示種別を認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態に係る信号システム9の構成の例を示すブロック図。
【
図7】認識装置1の動作の流れの例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<実施形態>
<信号システムの構成>
図1は、本発明の実施形態に係る信号システム9の構成の例を示すブロック図である。
図1に示す信号システム9は、認識装置1、信号機2、通信回線3、及び管理装置4を有する。これらの構成は、信号システム9において、いずれも複数であってもよいし、1つであってもよい。
【0033】
また、信号システム9は、
図1に示す通り、航法衛星5から発射される信号を利用してもよい。なお、信号システム9は、位置の測定のために少なくとも4機の航法衛星5を利用する。
図1に示す1つの航法衛星5は、信号システム9が利用するこれら複数の航法衛星5を代表して描いたものである。
【0034】
管理装置4は、鉄道車両の運行状況を監視して、線路上の信号機2をダイヤに沿って制御、管理する装置である。管理装置4は、情報処理装置であり、例えば、コンピュータである。管理装置4は、一台の情報処理装置で構成されてもよいが、複数台の情報処理装置が連携することで構成されてもよい。管理装置4は、通信回線3を経由して信号機2を制御する。
【0035】
通信回線3は、有線又は無線により管理装置4と信号機2とを通信可能に接続する回線である。通信回線3は、鉄道の運行管理の安全性を担保する目的から専用回線であることが望ましい。
【0036】
信号機2は、管理装置4と通信回線3経由で通信可能に接続され、管理装置4の制御の下、鉄道車両に向けて指示(現示ともいう)を行う。
【0037】
認識装置1は、遠隔から信号機2を撮影した動画を用いて、この信号機2の現示種別を認識する装置である。現示種別とは、信号機2による現示の種別である。現示種別は、例えば、高速進行、進行、減速、注意、警戒、停止等である。認識装置1は、情報処理装置であり、例えば、スマートフォン、タブレットPC、スレートPC等である。認識装置1は、例えば、鉄道車両に搭載される。
【0038】
<認識装置の構成>
図2は、認識装置1の構成の例を示す図である。認識装置1は、プロセッサ11、メモリ12、通信部13、操作部14、表示部15、警報部16、撮影部17、測位部18、及び慣性計測部19を有する。これらは、バスにより相互に通信可能に接続されている。
【0039】
メモリ12は、プロセッサ11に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)、データ等を記憶する記憶手段である。メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を有する。なお、メモリ12は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。
【0040】
プロセッサ11は、メモリ12からプログラムを読出して実行することにより認識装置1を制御する。プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。また、プロセッサ11は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよいし、FPGAを含んでもよい。また、このプロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又は他のプログラマブル論理デバイスを有し、これらによって制御を行ってもよい。
【0041】
通信部13は、有線又は無線により認識装置1を外部の装置(外部装置ともいう)に通信可能に接続する通信回路である。認識装置1が接続する外部装置は、例えば、鉄道車両の運行を制御する制御装置等である。
【0042】
操作部14は、各種の指示をするための操作ボタン、タッチパネル等の操作子を備える。操作部14は、ユーザから操作を受付けてその操作内容に応じた信号をプロセッサ11に送る。操作部14は、操作子として、キーボード、マウスを備えていてもよい。
【0043】
表示部15は、液晶ディスプレイ等の表示画面を有しており、プロセッサ11の制御の下、画像を表示する。表示画面の上には、操作部14の透明のタッチパネルが重ねて配置されてもよい。
【0044】
警報部16は、認識装置1において危険・異常な状況が検知されたときに、その旨を認識装置1のユーザに伝える機器である。警報部16は、例えば、スピーカ・パトライト(登録商標)等であり、これらが発する音声・光等により、危険・異常な状況をユーザに警告する。
【0045】
撮影部17は、信号機2を含む鉄道沿線の光景を所定のフレームレートで撮影し、動画を生成する機器である。撮影部17は、例えばレンズ、ミラー、プリズム等の光学系、及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の撮像素子を備える。この撮影部17は、例えば、デジタルビデオカメラである。撮影部17により撮影される動画のフレームレートは、例えば、60fps(frame per second)である。
【0046】
測位部18は、全地球航法衛星システム(GNSS: Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システムを構成する受信機である。測位部18は、
図1に示す航法衛星5から発射される信号を用いて自機の位置を測定(すなわち、測位)する。
【0047】
慣性計測部19は、IMU(inertial measurement unit)とも呼ばれ、三次元空間における角速度と加速度を測定する装置である。この慣性計測部19は、例えば、三軸のジャイロスコープ及び三方向の加速度センサを備える。この慣性計測部19は、認識装置1の角速度、及び加速度を測定し、これらの測定値により、認識装置1が搭載されている鉄道車両等の運行速度(以下、単に速度ともいう)を特定する。
【0048】
<信号機の構成>
図3は、信号機2の構成の例を示す図である。
図3に示す信号機2は、三灯式の信号機である。
【0049】
この信号機2は、緑色、黄色、赤色にそれぞれ発光する3つの信号灯器21G、21Y、21R(以下、これらを区別しない場合、単に「信号灯器21」という)を有する。信号灯器21は、レンズを有してもよい。
【0050】
なお、信号機2が有する信号灯器21の数は、上述した3つに限らず、1つ、2つでもよいし、4以上でもよい。つまり、信号機2は、三灯式に限らず、例えば、一灯式、二灯式、四灯式、五灯式、六灯式等でもよい。
【0051】
また、信号機2は、信号灯器21のほかに、筐体20、及び制御盤22を有する。筐体20は、信号灯器21を収容して固定する。
【0052】
制御盤22は、信号灯器21の制御を行うプロセッサ、コントローラを含む。この制御盤22は、信号灯器21のそれぞれを制御して、これらを点灯又は消灯させる。
【0053】
信号機2の現示種別は、信号灯器21のそれぞれの点灯、及び消灯の組合せによって表される。例えば、
図3に示す信号機2は、3つの信号灯器21のうち、灯色が緑色である信号灯器21Gのみを点灯させ、それ以外を消灯させるときに「進行」を現示する。また、
図3に示す信号機2は、信号灯器21Yのみ、信号灯器21Rのみを点灯させたときに、それぞれ「注意」、「停止」を現示する。
【0054】
また、制御盤22は、信号灯器21のうち点灯させる1以上の信号灯器21を、信号機2の現示種別に応じた固有の周波数で点滅させる。この固有の周波数は、認識装置1の撮影部17で撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数帯域から選ばれる。すなわち、この信号機2は、所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数であって、現示種別ごとに固有の周波数で点滅する信号機の例である。
【0055】
図3に示す制御盤22は、それぞれの信号灯器21を点滅させる周波数を、その信号灯器21の色(灯色ともいう)ごとに定める。信号機2の現示種別は、信号灯器21の点灯及び消灯の組合せで決まる。そのため、灯色ごとに固有の周波数で信号灯器21を点滅させれば、それら固有の周波数の組合せによって、信号機2の全体が表現する現示種別が定まるからである。
【0056】
信号灯器21G、21Y、21Rは、それぞれトランス211G、211Y、211R(以下、これらを区別しない場合、単に「トランス211」という)、及び発光ユニット212G、212Y、212R(以下、これらを区別しない場合、単に「発光ユニット212」という)を有する。
【0057】
図4は、信号灯器21の構成の例を示す回路図である。トランス211は、制御盤22から供給される交流100ボルトの灯色信号を変圧し、出力信号を発光ユニット212に供給する。
【0058】
発光ユニット212は、制御盤22の制御の下、現示種別ごとに固有の周波数で点滅する機器である。発光ユニット212は、整流平滑回路2121、無接点リレー2122、光源2123、及び変調部2124を有する。
【0059】
整流平滑回路2121は、トランス211を経た交流電圧を直流電圧に変換する。変調部2124は、制御盤22からの指示に従って、光源2123を点滅させる周波数を示す信号(周波数信号という)を無接点リレー2122に供給する。この周波数信号が示す周波数は、上述した現示種別ごとに固有の周波数である。
【0060】
無接点リレー2122は、変調部2124から受信した周波数信号に応じて回路を開閉する。光源2123は、LED(light emitting diode)等の発光素子を有する。
図4に示す光源2123は、直列に繋げられた発光素子の複数本の列をさらに並列に接続している。並列に接続された発光素子の列の数は例えば6本である。光源2123は、無接点リレー2122により回路が閉じられているときにだけ点灯し、それ以外のとき消灯する。
【0061】
この信号機2が有する3つの信号灯器21は、それぞれ異なる色で点灯する。そして、これら3つの信号灯器21は、点灯時において制御盤22の制御の下、それぞれの色に応じた周波数で光源2123を点滅させる。
【0062】
したがって、この信号機2は、異なる周波数でそれぞれが点滅する2以上の光源を有し、それらの周波数はいずれも所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数であり、それらの異なる周波数の組合せは現示種別ごとに固有である信号機の例である。また、この信号機2が有する3つの信号灯器21は、色ごとに異なる周波数で点滅する2以上の光源の例である。
【0063】
<認識装置の機能的構成>
図5は、認識装置1の機能的構成の例を示す図である。認識装置1のプロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより、取得部111、認識部112、判定部113、及び警告部114として機能する。なお、メモリ12は、
図6において省略されている。
【0064】
取得部111は、撮影部17から所定のフレームレートで撮影された動画を取得する。認識部112は、取得部111が取得した動画から明るさが変動している部分、すなわちフリッカを抽出し、その周期を特定する。
【0065】
図6は、フリッカを説明するための図である。信号灯器21は、制御盤22の指示に従って所定の周波数で点滅している。また、認識装置1の撮影部17は、所定のフレームレートで信号灯器21を撮影している。このとき、信号灯器21の光は、動画においてちらついて見える。この光のちらつきは、フリッカと呼ばれる。フリッカの周波数は、信号灯器21の点滅の周波数、及び撮影部17の撮影のフレームレートがそれぞれ整数で表されるとき、それらの最大公約数で求められる。フリッカの周期は、求めた周波数の逆数である。
【0066】
図6の(a)に示す通り、信号灯器21が108Hzで点滅を繰り返している場合、点滅の周期は約9.26ms(ミリ秒)である。また、撮影部17が60fpsのフレームレートで動画を撮影している場合、この動画のフレーム間の周期は約16.7msである。そして、このとき、信号灯器21の光の強度は、動画においてフリッカとして現れ、108Hzと60Hzとの最大公約数である12Hzで変動する。このフリッカの周期は83.3msである。
【0067】
信号灯器21の点滅の周波数が変わると、フリッカの周期も変わる。例えば、
図6の(b)に示すように、105Hzで点滅させた信号灯器21を、60fpsのフレームレートで撮影すると、この信号灯器21の光は動画において15Hzで変動する。このフリッカの周期は66.7msである。また、
図6の(c)に示すように、102Hzで点滅させた信号灯器21を、60fpsのフレームレートで撮影すると、この信号灯器21の光は動画において6Hzで変動する。このフリッカの周期は166.7msである。
【0068】
したがって認識部112は、取得した動画において明滅している部分、すなわち、フリッカの周期を特定する。そして認識部112は、求めたこのフリッカの周期と、既知であるフレームレートと、を用いて、動画においてこのフリッカを生じさせている光源の点滅の周波数を求める。
【0069】
そして、認識部112は、求めた周波数が信号灯器21の点滅に適用されるいずれかの周波数である場合、この周波数で点滅する光源を信号灯器21である、と判定し、この信号灯器21の現示種別を認識する。
【0070】
したがって、この認識部112として機能するプロセッサ11を有する認識装置1は、所定のフレームレートで撮影された動画に含まれる光源により生じるフリッカの周期に基づいて信号機の現示種別を認識する認識装置の例である。
【0071】
なお、認識部112は、慣性計測部19が計測した認識装置1の速度を用いて、求めたフリッカの周波数を補正してもよい。
【0072】
判定部113は、慣性計測部19が計測した認識装置1の速度と測位部18が測定した認識装置1の位置とを用いて、認識装置1を搭載した鉄道車両が信号機2に接近する速度(以下、接近速度ともいう)を特定する。また、判定部113は、認識部112が認識した信号機2の現示種別に基づいて、その現示種別により示される、鉄道車両に許容される接近速度の範囲を特定する。
【0073】
そして、判定部113は、鉄道車両の信号機2(光源2123を含む)への接近速度が、認識された現示種別により示される範囲内にあるか否かを判定する。すなわち、この判定部113として機能するプロセッサ11を有する認識装置1は、計測された光源への接近速度が認識した現示種別により示される範囲内にあるか否かを判定する認識装置の例である。
【0074】
警告部114は、鉄道車両の信号機2への接近速度が、認識された現示種別により示される範囲内にない、と判定部113が判定した場合に、警報部16を制御して警告する。すなわち、この警告部114として機能するプロセッサ11を有する認識装置1は、計測された光源への接近速度が認識した現示種別により示される範囲内にないと判定するときに警告する認識装置の例である。
【0075】
<認識装置の動作>
<全体の動作>
図7は、認識装置1の動作の流れの例を示すフロー図である。認識装置1のプロセッサ11は、慣性計測部19、及び測位部18を利用して認識装置1を搭載した鉄道車両の信号機2に対する接近速度を計測する(ステップS101)。また、プロセッサ11は、撮影部17から動画を取得する(ステップS102)。
【0076】
動画を取得するとプロセッサ11は、その動画にフリッカがあるか否かを判定する(ステップS103)。動画にフリッカがない、と判定する場合(ステップS103;NO)、プロセッサ11は、処理をステップS101に戻す。
【0077】
一方、動画にフリッカがある、と判定する場合(ステップS103;YES)、プロセッサ11は、そのフリッカの周期を特定する(ステップS104)。
【0078】
そして、プロセッサ11は、特定したフリッカの周期と、撮影部17のフレームレートとから、信号機2において信号灯器21の発する光の点滅の周波数を特定する(ステップS105)。このとき、プロセッサ11は、上述した接近速度を用いて、点滅の周波数を補正してもよい。
【0079】
光の点滅の周波数を特定すると、プロセッサ11は、この周波数に基づいて信号機2の現示種別を認識し(ステップS106)、認識したこの現示種別に応じて表示部15、又は通信部13を介して外部装置へ指示を出す指示処理を行う(ステップS200)。
【0080】
指示処理が終了すると、プロセッサ11は、認識装置1を終了させるための条件(終了条件ともいう)が満たされたか否かを判定する(ステップS107)。終了条件が満たされていない、と判定する場合(ステップS107;NO)、プロセッサ11は、処理をステップS101に戻す。終了条件が満たされた、と判定する場合(ステップS107;YES)、プロセッサ11は、処理を終了する。
【0081】
<指示処理の動作>
図8は、指示処理の動作の流れの例を示すフロー図である。この指示処理は、
図7にステップS200で示した処理である。
図8に示す通り、プロセッサ11は、認識した現示種別が「進行」であるか否かを判定する(ステップS201)。
【0082】
認識した現示種別が「進行」である、と判定する場合(ステップS201;YES)、プロセッサ11は、表示部15により鉄道車両を進行させてよい旨の指示を示す進行表示を行う(ステップS202)。そして、プロセッサ11は、認識装置1を搭載した鉄道車両の信号機2への接近速度が0であるか否か判定する(ステップS203)。
【0083】
接近速度が0である、と判定する場合(ステップS203;YES)、プロセッサ11は、通信部13を介して鉄道車両の制御装置に進行を指示する(ステップS204)。一方、接近速度が0でない、と判定する場合(ステップS203;NO)、プロセッサ11は、ステップS204を行わずにこの指示処理を終了して呼び出し元に制御を返す。
【0084】
ステップS201の判定において、認識した現示種別が「進行」ではない、と判定する場合(ステップS201;NO)、プロセッサ11は、認識した現示種別が「注意」であるか否かを判定する(ステップS205)。
【0085】
認識した現示種別が「注意」である、と判定する場合(ステップS205;NO)、プロセッサ11は、表示部15により鉄道車両を注意して進行させる旨の指示を示す注意表示を行う(ステップS206)。そして、プロセッサ11は、認識装置1を搭載した鉄道車両の信号機2への接近速度が予め決められた閾値を超えているか否か判定する(ステップS207)。
【0086】
接近速度が閾値を超えている、と判定する場合(ステップS207;YES)、プロセッサ11は、通信部13を介して鉄道車両の制御装置に減速を指示する(ステップS208)。一方、接近速度が閾値を超えていない、と判定する場合(ステップS207;NO)、プロセッサ11は、ステップS208を行わずにこの指示処理を終了して呼び出し元に制御を返す。
【0087】
ステップS205の判定において、認識した現示種別が「注意」ではない、と判定する場合(ステップS205;NO)、プロセッサ11は、認識した現示種別が「停止」であるか否かを判定する(ステップS209)。
【0088】
認識した現示種別が「停止」である、と判定する場合(ステップS209;NO)、プロセッサ11は、表示部15により鉄道車両を停止させる旨の指示を示す停止表示を行う(ステップS210)。そして、プロセッサ11は、認識装置1を搭載した鉄道車両の信号機2への接近速度が0であるか否か判定する(ステップS211)。
【0089】
接近速度が0でない、と判定する場合(ステップS211;NO)、プロセッサ11は、通信部13を介して鉄道車両の制御装置に停止を指示する(ステップS212)。一方、接近速度が0である、と判定する場合(ステップS207;YES)、プロセッサ11は、ステップS212を行わずにこの指示処理を終了して呼び出し元に制御を返す。
【0090】
以上、説明した処理を実行することにより、認識装置1は、信号機2の現示種別をこの信号機2を撮影した動画から認識する。この認識装置1は、無線通信回路等の追加の機器を使用せずに、現示種別を認識することができるので、追加の機器を導入する場合に比べて初期費用が抑えられる。
【0091】
また、説明した信号機2は、LED等の光源を指定の周波数で点滅させる回路を導入するだけで認識装置1に現示種別を伝えることができる。そのため、本発明の信号機2は、既設の信号機から製造することができる。
【0092】
また、説明した認識装置1は、汎用のデジタルビデオカメラ等である撮影部17により一般的なフレームレートで撮影された動画から、信号機2の現示種別を認識する。そのため、この認識装置1は、信号灯器が発する光の変調・復調を必要とする機器に比べてコストパフォーマンスに優れる。
【0093】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0094】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0095】
<1>
上述した実施形態において、信号機2の制御盤22は、それぞれの信号灯器21を点滅させる周波数を、その信号灯器21の色ごとに定めていた。しかし、制御盤22は、信号灯器21の色に対応していない周波数でその信号灯器21を点滅させてもよい。
【0096】
例えば、制御盤22は、信号機2の全体が表現する現示種別に対応した固有の周波数で、点灯させる全ての信号灯器21をそれぞれ点滅させてもよい。同時に点灯する2以上の信号灯器21をそれぞれ共通の周波数で点滅させる場合、その共通の周波数が、信号機2の全体が表現する1つの現示種別に対応していれば、それぞれの信号灯器21の灯色に関係なく、周波数から現示種別が定まるからである。
【0097】
<2>
上述した実施形態において、信号機2は、3つの信号灯器21のうち1つのみが点灯する三灯式の信号機であった。しかし、信号機2において、1つの現示をする際に点灯する信号灯器21の数は、1つに限らない。信号機2は、1つの現示をする際に、複数の信号灯器21のうち同時に2つ以上を点灯させてもよい。
【0098】
また、2つ以上の信号灯器21を同時に点灯させることによって1つの現示をする場合、信号機2は、これらの信号灯器21を現示種別に対応する共通の周波数で点灯させてもよい。この場合、この信号機2は、現示種別に対応する共通の周波数で点滅する2以上の光源を有する信号機の例である。
【0099】
2つ以上の信号灯器21を同時に点滅させることで1つの現示種別を表す場合、信号機2は、それらの信号灯器21の点滅を同期させることが望ましい。点滅する信号灯器21が互いに近くにあると、それらの発する光が混ざって撮影され、上述した異なる周期で点滅する一体の光として認識される可能性があるからである。2つ以上の信号灯器21による点滅を同期させる場合、これらの信号灯器21が有する光源2123は、同期して点滅する2以上の光源の例である。
【0100】
<3>
上述した実施形態において、認識装置1は、三灯式の信号機2を撮影した動画から、フリッカの周期を特定し、この信号機2において点滅する1つの信号灯器21の点滅の周波数を特定して、その現示種別を認識していた。しかし、認識装置1は、2以上の信号灯器21を同時に異なる周期で点滅させる信号機2の現示種別を認識することもできる。この場合、認識装置1は、同時に異なる周期で点滅する信号灯器21のそれぞれによって、動画内に発生するフリッカをそれぞれ抽出し、それらフリッカの周期をそれぞれ特定すればよい。認識装置1は、2以上のフリッカの周期から、それぞれ対応する信号灯器21の点滅の周波数を特定し、その周波数の組合せから信号機2の現示種別を認識すればよい。この場合、この認識装置1は、動画に異なる周期のフリッカをそれぞれ生じさせる2以上の光源が含まれる場合、それらの周期の組合せに基づいて現示種別を認識する認識装置の例である。
【0101】
<4>
上述した実施形態、及び変形例で説明した認識装置1、及び信号機2を有する信号システム9は、所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数であって、現示種別ごとに固有の周波数で点滅する信号機と、信号機を所定のフレームレートで撮影する撮影装置と、撮影装置が撮影した動画を取得し、その動画に含まれるフリッカの周期に基づいて信号機の現示種別を認識する認識装置と、を有する信号システムの例である。
【0102】
<5>
上述した実施形態において、プロセッサ11の動作は、1つのプロセッサ11によって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサ11の各動作の順序は上述した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。
【0103】
<6>
また、認識装置1のプロセッサ11によって実行されるプログラムは、磁気テープ及び磁気ディスク等の磁気記録媒体、光ディスク等の光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリ等の、コンピュータ装置が読取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムは、インターネット等の通信回線経由でダウンロードされてもよい。なお、上述したプロセッサ11によって例示した制御手段としてはCPU以外にも種々の装置が適用される場合があり、例えば、専用のプロセッサ等が用いられる。
【0104】
このプロセッサ11によって実行されるプログラムは、コンピュータを、所定のフレームレートで撮影された動画を取得する取得手段と、動画に含まれる光源により生じるフリッカの周期に基づいて信号機の現示種別を認識する認識手段、として機能させるためのプログラムの例である。
【符号の説明】
【0105】
1…認識装置、11…プロセッサ、111…取得部、112…認識部、113…判定部、114…警告部、12…メモリ、13…通信部、14…操作部、15…表示部、16…警報部、17…撮影部、18…測位部、19…慣性計測部、2…信号機、20…筐体、21(21G、21Y、21R)…信号灯器、211(211G、211Y、211R)…トランス、212(212G、212Y、212R)…発光ユニット、2121…整流平滑回路、2122…無接点リレー、2123…光源、2124…変調部、22…制御盤、3…通信回線、4…管理装置、5…航法衛星、9…信号システム。