(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072514
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】信号機、認識装置、信号システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/096 20060101AFI20240521BHJP
B61L 5/18 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G08G1/096 A
B61L5/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183368
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 一宏
(72)【発明者】
【氏名】水沼 正文
【テーマコード(参考)】
5H161
5H181
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161TT01
5H161TT14
5H161TT16
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF27
5H181JJ02
(57)【要約】
【課題】信号機の現示を示す光のみを用いて人の目に認識されずに、遠隔からその現示の残り時間を認識させる。
【解決手段】取得部111は、撮影部17から所定のフレームレートで撮影された動画を取得する。認識部112は、取得部111が取得した動画から明るさが変動している部分、すなわちフリッカを抽出し、その周期を特定する。次に認識部112は、2周期以上のフリッカを分析して、このフリッカの位相の変化を検知する。そして、認識部112は、この位相の切り替わりに基づいて、信号機2の現示の残り時間を認識する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の目の時間分解能よりも短い周期に応じた周波数であって、所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数で光源を点滅させ、現示の残り時間に応じて該光源の点滅の態様を変化させる信号機。
【請求項2】
前記周波数は前記現示の種別ごとに固有の周波数であり、該現示の残り時間に応じて前記点滅の位相を変化させる請求項1に記載の信号機。
【請求項3】
前記周波数は前記現示の種別ごとに固有の周波数であり、該現示の残り時間に応じて前記点滅の前記周波数を変化させる請求項1に記載の信号機。
【請求項4】
光源を点滅させる信号機を所定のフレームレートで撮影した動画に生じているフリッカの変化に基づいて前記信号機の現示の残り時間を認識する認識装置。
【請求項5】
前記フリッカから前記現示の種別を認識し、前記フリッカの前記変化から前記光源が点滅する位相の切り替わりを特定し、該位相の切り替わりに基づいて前記残り時間を認識する請求項4に記載の認識装置。
【請求項6】
前記フリッカから前記現示の種別を認識し、前記フリッカの前記変化から前記光源が点滅する周波数の切り替わりを特定し、該周波数の切り替わりに基づいて前記残り時間を認識する請求項4に記載の認識装置。
【請求項7】
計測された前記光源への接近速度と、認識した前記残り時間とに応じて自装置を搭載した移動体の運転を制御する請求項4に記載の認識装置。
【請求項8】
前記接近速度が前記残り時間から決まる範囲内にないと判定するときに警告する請求項7に記載の認識装置。
【請求項9】
人の目の時間分解能よりも短い周期に応じた周波数であって、所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数で光源を点滅させ、現示の残り時間に応じて該光源の点滅の態様を変化させる信号機と、
前記信号機を前記フレームレートで撮影する撮影装置と、
前記撮影装置が撮影した前記動画を取得し、該動画に生じているフリッカの変化に基づいて前記信号機の現示の残り時間を認識する認識装置と、
を有する信号システム。
【請求項10】
コンピュータを、
所定のフレームレートで信号機を撮影した動画を取得する取得手段と、
前記動画に生じているフリッカの変化に基づいて前記信号機の現示の残り時間を認識する認識手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号機の現示の残り時間を認識する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両、自動車等の移動体の搭乗者は、信号機を見たときに、その時点での現示の種別を認識することができる。しかし、一般に移動体の搭乗者は、信号機を見ただけではその現示があとどれだけ続くのかわからない。
【0003】
信号機の現示の残り時間等の情報をその信号機の光以外を用いて移動体へ伝える技術も検討されている。信号機の光以外を用いて情報を伝える技術は、例えば、信号機の現示の残り時間の情報をその信号機と別に設置された無線送信機から移動体に搭載された無線受信機へ送信する技術等である。しかし、これらの技術は、無線送信機・無線受信機等、特別な設備を必要とするため、コストがかかる。そこで、信号機から移動体に向けて、信号機の光そのものを用いて情報を伝える技術が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、信号機等、道路に設置された発光体から情報を送信する路車間通信システムを開示している。この路車間通信システムは、発光体を構成する、配列された複数個の発光素子のうち所定の輝度パターン形状を構成するために特定した特定発光素子を、上記の情報で変調された光信号として発光させる。そして、この技術において、車両は発光体を撮像した画像から得られる特定発光素子の輝度パターンを上述した所定のパターンと比較し、両者のパターン形状が一致したときに特定発光体を対象発光体として認識し、かつその輝度パターンから得られる光信号を復調して情報を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の、車両に備えられた受信装置は、撮像した画像から対象となる信号灯の点滅を認識し、かつその信号灯から送信されている光信号を受信し、受信した光信号から情報を復調する必要がある。そのため、車両に備えられた撮像装置は、信号灯の点滅を変調された光信号として欠落することなく撮像しなければならない。つまり、この技術は、車両側で光を復調可能な状態で取得しなければならず、デジタルビデオカメラ等と比べて時間解像度の高い受光素子を必要とする。また、この技術は、送信側、及び受信側の機器にAM、FM等の変調・復調機器を必要とする。
【0007】
また、信号灯器が発する光そのものを用いて信号機から移動体へ情報を伝達する場合、人の目から見てその光が情報の有無によって異なって見えると、人の目が認識するその信号機の現示が異なってしまうことがある。つまり、信号灯器が発する光そのものにより情報を伝達する手段は、人の目による見え方に影響を生じさせない必要がある。
【0008】
本発明の目的の一つは、信号機の現示を示す光のみを用いて人の目に認識されずに、遠隔からその現示の残り時間を認識させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、人の目の時間分解能よりも短い周期に応じた周波数であって、所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数で光源を点滅させ、現示の残り時間に応じて該光源の点滅の態様を変化させる信号機、を第1の態様として提供する。
【0010】
第1の態様の信号機によれば、信号機の現示を示す光のみを用いて人の目に認識されずに、遠隔からその現示の残り時間を認識させることができる。
【0011】
第1の態様の信号機において、前記周波数は前記現示の種別ごとに固有の周波数であり、該現示の残り時間に応じて前記点滅の位相を変化させる、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0012】
第2の態様の信号機によれば、点滅の周波数で現示の種別を通知し、その点滅の位相の変化で現示の残り時間を通知する。
【0013】
第1の態様の信号機において、前記周波数は前記現示の種別ごとに固有の周波数であり、該現示の残り時間に応じて前記点滅の前記周波数を変化させる、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0014】
第3の態様の信号機によれば、点滅の周波数で現示の種別を通知し、その周波数の変化で現示の残り時間を通知する。
【0015】
本発明は、光源を点滅させる信号機を所定のフレームレートで撮影した動画に生じているフリッカの変化に基づいて前記信号機の現示の残り時間を認識する認識装置、を第4の態様として提供する。
【0016】
第4の態様の認識装置によれば、人の目が認識できない点滅をする信号機を撮影した動画に生じているフリッカを用いて、遠隔からその信号機の現示の残り時間を認識することができる。
【0017】
第4の態様の認識装置において、前記フリッカから前記現示の種別を認識し、前記フリッカの前記変化から前記光源が点滅する位相の切り替わりを特定し、該位相の切り替わりに基づいて前記残り時間を認識する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0018】
第5の態様の認識装置によれば、信号機を撮影した動画に生じているフリッカから求まるその信号機の点滅の位相が切り替わったことにより、遠隔からその信号機の現示の残り時間を認識することができる。
【0019】
第4の態様の認識装置において、前記フリッカから前記現示の種別を認識し、前記フリッカの前記変化から前記光源が点滅する周波数の切り替わりを特定し、該周波数の切り替わりに基づいて前記残り時間を認識する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0020】
第6の態様の認識装置によれば、信号機を撮影した動画に生じているフリッカから求まるその信号機の点滅の周波数が切り替わったことにより、遠隔からその信号機の現示の残り時間を認識することができる。
【0021】
第4の態様の認識装置において、計測された前記光源への接近速度と、認識した前記残り時間とに応じて自装置を搭載した移動体の運転を制御する、という構成が第7の態様として採用されてもよい。
【0022】
第7の態様の認識装置によれば、移動体の光源への接近速度を、信号機の現示の残り時間に応じた速度に調整することができる。
【0023】
第7の態様の認識装置において、前記接近速度が前記残り時間から決まる範囲内にないと判定するときに警告する、という構成が第8の態様として採用されてもよい。
【0024】
第8の態様の認識装置によれば、移動体の光源への接近速度が信号機の現示の残り時間に応じた範囲内にないときに警告することができる。
【0025】
本発明は、人の目の時間分解能よりも短い周期に応じた周波数であって、所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数で光源を点滅させ、現示の残り時間に応じて該光源の点滅の態様を変化させる信号機と、前記信号機を前記フレームレートで撮影する撮影装置と、前記撮影装置が撮影した前記動画を取得し、該動画に生じているフリッカの変化に基づいて前記信号機の現示の残り時間を認識する認識装置と、を有する信号システム、を第9の態様として提供する。
【0026】
第9の態様の信号システムによれば、信号機の現示を示す光のみを用いて人の目に認識されずに、遠隔からその現示の残り時間を認識させることができる。
【0027】
本発明は、コンピュータを、所定のフレームレートで信号機を撮影した動画を取得する取得手段と、前記動画に生じているフリッカの変化に基づいて前記信号機の現示の残り時間を認識する認識手段、として機能させるためのプログラム、を第10の態様として提供する。
【0028】
第10の態様のプログラムによれば、人の目が認識できない点滅をする信号機を撮影した動画に生じているフリッカを用いて、遠隔からその信号機の現示の残り時間を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係る信号システム9の構成の例を示すブロック図。
【
図8】認識装置1の動作の流れの例を示すフロー図。
【
図10】現示の残り時間に応じて周波数自体を変化させる態様を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<実施形態>
<信号システムの構成>
図1は、本発明の実施形態に係る信号システム9の構成の例を示すブロック図である。
図1に示す信号システム9は、認識装置1、信号機2、通信回線3、及び管理装置4を有する。これらの構成は、信号システム9において、いずれも複数であってもよいし、1つであってもよい。
【0031】
また、信号システム9は、
図1に示す通り、航法衛星5から発射される信号を利用してもよい。なお、信号システム9は、位置の測定のために少なくとも4機の航法衛星5を利用する。
図1に示す1つの航法衛星5は、信号システム9が利用するこれら複数の航法衛星5を代表して描いたものである。
【0032】
管理装置4は、信号機2を制御、管理する装置である。管理装置4は、情報処理装置であり、例えば、コンピュータである。管理装置4は、一台の情報処理装置で構成されてもよいが、複数台の情報処理装置が連携することで構成されてもよい。
図1に示す管理装置4は、通信回線3を経由して信号機2を制御する。
【0033】
通信回線3は、有線又は無線により管理装置4と信号機2とを通信可能に接続する回線である。通信回線3は、鉄道、公道等の安全性を担保する目的から専用回線であることが望ましい。
【0034】
信号機2は、管理装置4と通信回線3経由で通信可能に接続され、管理装置4の制御の下、移動体に向けて指示(現示ともいう)を行う。また、この信号機2は、人の目の時間分解能よりも短い周期に応じた周波数で光源を点滅させる。そして、信号機2は、現示の残り時間に応じて光源の点滅の態様を変化させる。
【0035】
ここで「人の目の時間分解能」とは、約50ms(ミリ秒)から約100ms程度といわれている。この時間よりも短い周期で点滅する光は、人が見ると連続して点灯しているように知覚される。約50msに応じた周波数は約20Hzであるので、人の目の時間分解能よりも短い周期に応じた周波数は、例えば約20Hzを超える周波数である。この周波数で点滅するため、信号機2の光源の点滅は、人にとって連続点灯と認識され、点滅として認識されない。
【0036】
なお、現示自体を表すための点滅は、上述した人に認識されない周波数の点滅と区別される。現示自体を表すための点滅は、例えば、人が認識できる1Hzの点滅である。この点滅は、例えば、黄色の信号灯器を0.5秒ずつ繰り返し点灯、消灯させるといったものである。この場合、信号機2は、0.5秒の点灯の期間に、例えば、108Hzといった人が認識できない周波数で光源を点滅させて、現示の残り時間を表す。
【0037】
認識装置1は、遠隔から信号機2を撮影した動画を用いて、この信号機2の現示の残り時間を認識する装置である。認識装置1は、情報処理装置であり、例えば、スマートフォン、タブレットPC、スレートPC等である。認識装置1は、例えば、移動体に搭載される。
【0038】
なお、認識装置1は、上述した動画を用いて、信号機2の現示種別を認識してもよい。現示種別とは、信号機2による現示の種別である。現示種別は、例えば、進め、止まれ等である。
【0039】
<認識装置の構成>
図2は、認識装置1の構成の例を示す図である。認識装置1は、プロセッサ11、メモリ12、通信部13、操作部14、表示部15、警報部16、撮影部17、測位部18、及び慣性計測部19を有する。これらは、バスにより相互に通信可能に接続されている。
【0040】
メモリ12は、プロセッサ11に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)、データ等を記憶する記憶手段である。メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を有する。なお、メモリ12は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。
【0041】
プロセッサ11は、メモリ12からプログラムを読出して実行することにより認識装置1を制御する。プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。また、プロセッサ11は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよいし、FPGAを含んでもよい。また、このプロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又は他のプログラマブル論理デバイスを有し、これらによって制御を行ってもよい。
【0042】
通信部13は、有線又は無線により認識装置1を外部の装置(外部装置ともいう)に通信可能に接続する通信回路である。認識装置1が接続する外部装置は、例えば、移動体の運転を制御する制御装置等である。
【0043】
操作部14は、各種の指示をするための操作ボタン、タッチパネル等の操作子を備える。操作部14は、ユーザから操作を受付けてその操作内容に応じた信号をプロセッサ11に送る。操作部14は、操作子として、キーボード、マウスを備えていてもよい。
【0044】
表示部15は、液晶ディスプレイ等の表示画面を有しており、プロセッサ11の制御の下、画像を表示する。表示画面の上には、操作部14の透明のタッチパネルが重ねて配置されてもよい。
【0045】
警報部16は、認識装置1において危険・異常な状況が検知されたときに、その旨を認識装置1のユーザに伝える機器である。警報部16は、例えば、スピーカ・回転灯等であり、これらが発する音声・光等により、危険・異常な状況をユーザに警告する。
【0046】
撮影部17は、信号機2を含む光景を所定のフレームレートで撮影し、動画を生成する機器である。撮影部17は、例えばレンズ、ミラー、プリズム等の光学系、及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の撮像素子を備える。この撮影部17は、例えば、デジタルビデオカメラである。撮影部17により撮影される動画のフレームレートは、例えば、60fps(frame per second)である。
【0047】
測位部18は、全地球航法衛星システム(GNSS: Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システムを構成する受信機である。測位部18は、
図1に示す航法衛星5から発射される信号を用いて自機の位置を測定(すなわち、測位)する。
【0048】
慣性計測部19は、IMU(inertial measurement unit)とも呼ばれ、三次元空間における角速度と加速度を測定する装置である。この慣性計測部19は、例えば、三軸のジャイロスコープ及び三方向の加速度センサを備える。この慣性計測部19は、認識装置1の角速度、及び加速度を測定し、これらの測定値により、認識装置1が搭載されている移動体等の速度を特定する。
【0049】
<信号機の構成>
図3は、信号機2の構成の例を示す図である。
図3に示す信号機2は、矢印が表された信号灯器を含む矢印式の信号機である。
【0050】
この信号機2は、緑色、黄色、赤色にそれぞれ発光する3つの信号灯器21G、21Y、21R、及び、左折矢印、直進矢印、右折矢印がそれぞれ緑色に発光する3つの信号灯器21A、21B、21C(以下、これらを区別しない場合、単に「信号灯器21」という)、計6つの信号灯器21を有する。
【0051】
これらの信号灯器21は、光源として、例えば、LED(light emitting diode)等の発光素子を有する。信号灯器21は、レンズ等の光学系を有してもよい。なお、信号機2が有する信号灯器21の数は、上述した6つに限らず、5以下でもよいし、7以上でもよい。
【0052】
また、信号機2は、信号灯器21のほかに、この信号灯器21を制御する制御盤22を有する。この制御盤22は、信号制御部221、灯器開閉部222、及び変調部223を有する。
【0053】
信号制御部221は、灯器開閉部222、及び変調部223を介して信号灯器21を制御するプロセッサである。信号制御部221は、例えば、CPUである。なお、信号制御部221は、FPGA、ASIC等のプログラマブル論理デバイスを含んでもよいし、プログラマブル論理デバイスのみで構成されてもよい。
【0054】
信号制御部221は、灯器開閉部222に制御信号Oを送信する。制御信号Oは、現示の種別を指定する制御信号である。また、信号制御部221は、変調部223に制御信号Tを送信する。制御信号Tは、現示の残り時間を指定する制御信号である。
【0055】
灯器開閉部222は、信号制御部221から制御信号Oを受信し、この制御信号Oに応じて信号線の回路を開閉する。例えば、
図3に示す灯器開閉部222は、6本の信号線G、Y、R、A、B、Cで、それぞれ信号灯器21G、21Y、21R、21A、21B、21Cに接続している。灯器開閉部222が信号制御部221から受信した制御信号Oに応じて、信号線Rの回路のみを閉じると、信号灯器21のうち、信号灯器21Rのみが点灯する。また、灯器開閉部222が制御信号Oに応じて、信号線G及び信号線Aの2つの回路のみを閉じると、信号灯器21のうち、信号灯器21G及び信号灯器21Aの2つのみが点灯する。信号機2の現示種別は、信号灯器21のそれぞれの点灯、及び消灯の組合せによって表される。
【0056】
変調部223は、灯器開閉部222と信号灯器21とを接続する信号線の途中に設置された機器である。変調部223は、信号制御部221から制御信号Tを受信し、この制御信号Tが示す現示の残り時間に応じて、回路が閉じた信号線を伝播する点灯信号を変調する。この変調により、点灯信号は信号灯器21を決められた周波数で点滅させる。この周波数は、上述した人が認識できない周波数である。また、この周波数は、認識装置1の撮影部17で撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数帯域から選ばれる。すなわち、この信号機2は、人の目の時間分解能よりも短い周期に応じた周波数であって、所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数で光源を点滅させる信号機の例である。
【0057】
図3に示す制御盤22の信号制御部221は、それぞれの信号灯器21を点滅させる周波数を、その信号灯器21の色(灯色ともいう)ごとに定める。信号機2の現示種別は、信号灯器21の点灯及び消灯の組合せで決まる。そのため、信号機2は、灯色ごとに固有の周波数で信号灯器21を点滅させることで、それら固有の周波数の組合せに応じた現示種別を表現する。
【0058】
そして、
図3に示す制御盤22の変調部223は、信号制御部221から受信した制御信号Tが示す現示の残り時間に応じて、点滅させていた信号灯器21のその点滅の態様を変化させる。この変調部223は、現示の残り時間に応じて点滅の周波数を変えずに、点滅の位相を変化させる。つまり、この変調部223を有する信号機2は、現示の残り時間に応じて光源の点滅の態様を変化させる信号機の例である。
【0059】
また、この場合の信号機2は、人の目の時間分解能よりも短い周期に応じた周波数、かつ、所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数であって、現示の種別ごとに固有の周波数で光源を点滅させ、現示の残り時間に応じて点滅の位相を変化させる信号機の例である。
【0060】
<認識装置の機能的構成>
図4は、認識装置1の機能的構成の例を示す図である。認識装置1のプロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより、取得部111、認識部112、判定部113、及び警告部114として機能する。なお、メモリ12は、
図5において省略されている。
【0061】
取得部111は、撮影部17から所定のフレームレートで撮影された動画を取得する。認識部112は、取得部111が取得した動画から明るさが変動している部分、すなわちフリッカを抽出し、その周期を特定する。
【0062】
図5は、フリッカを説明するための図である。信号灯器21は、制御盤22の指示に従って所定の周波数で点滅している。また、認識装置1の撮影部17は、所定のフレームレートで信号灯器21を撮影している。このとき、信号灯器21の光は、動画においてちらついて見える。この光のちらつきは、フリッカと呼ばれる。フリッカの周波数は、信号灯器21の点滅の周波数、及び撮影部17の撮影のフレームレートがそれぞれ整数で表されるとき、それらの最大公約数で求められる。フリッカの周期は、求めた周波数の逆数である。
【0063】
図5の(a)に示す通り、信号灯器21が108Hzで点滅を繰り返している場合、点滅の周期は約9.26ms(ミリ秒)である。また、撮影部17が60fpsのフレームレートで動画を撮影している場合、この動画のフレーム間の周期は約16.7msである。そして、このとき、信号灯器21の光は、動画においてフリッカとして現れ、108Hzと60Hzとの最大公約数である12Hzで変動する。このフリッカの周期は約83.3msである。
【0064】
信号灯器21の点滅の周波数が変わると、フリッカの周期も変わる。例えば、
図5の(b)に示すように、105Hzで点滅させた信号灯器21を、60fpsのフレームレートで撮影すると、この信号灯器21の光は動画において15Hzで変動する。このフリッカの周期は約66.7msである。また、
図5の(c)に示すように、102Hzで点滅させた信号灯器21を、60fpsのフレームレートで撮影すると、この信号灯器21の光は動画において6Hzで変動する。このフリッカの周期は約166.7msである。
【0065】
認識部112は、取得した動画において明滅している部分、すなわち、フリッカの周期を特定する。そして認識部112は、求めたこのフリッカの周期と、既知であるフレームレートと、を用いて、動画においてこのフリッカを生じさせている光源の点滅の周波数を求める。
【0066】
そして、認識部112は、求めた周波数が信号灯器21の点滅に適用されるいずれかの周波数である場合、この周波数で点滅する光源を信号灯器21である、と判定し、この信号灯器21の現示種別を認識する。
【0067】
したがって、この認識部112として機能するプロセッサ11を有する認識装置1は、所定のフレームレートで撮影された動画に含まれる光源により生じるフリッカから(具体的には、そのフリッカの周期に基づいて)信号機の現示種別を認識する認識装置の例である。
【0068】
なお、認識部112は、慣性計測部19が計測した認識装置1の速度を用いて、求めたフリッカの周波数を補正してもよい。
【0069】
次に認識部112は、2周期以上のフリッカを分析して、このフリッカの変化を検知する。この実施形態において、この認識部112は、フリッカの位相の変化を検知する。
【0070】
図6は、フリッカの位相の変化を説明するための図である。
図6の(a)には、信号機2が信号灯器21を102Hzで点滅させ、かつ、認識装置1の撮影部17がこの信号灯器21を60fpsのフレームレートで撮影していることが示されている。このとき、信号灯器21の光は、撮影された動画において6Hzのフリッカを生じさせる。このフリッカの周期Tfは約166.7msであり、60fpsのフレームレートにおける10フレームに相当する。
【0071】
ここで、信号機2の制御盤22において、変調部223は、信号制御部221から制御信号Tを受信すると、
図6の(b)に示す通り、信号灯器21が10フレーム目に相当する点滅を取り消して、次のフリッカの周期の1フレーム目に相当する点滅を前倒しで行うように点灯信号を変調する。この変調は、「位相シフト」とも呼ばれる。この位相シフトを行うことにより、フリッカの周期Tfは、一時的に約150msに短縮される。短縮されたこの周期Tfは、60fpsのフレームレートにおける9フレームに相当する。
【0072】
図7は、位相シフトの詳細を説明するための図である。102Hzで点滅する信号灯器21は、約9.804msの周期で点灯と消灯とを繰り返している。この点灯及び消灯のそれぞれの期間が等しい場合、
図7の(a)に示す通り、1周期における点灯の時間は約4.902msである。上述した通り、102Hzで点滅する信号灯器21は、60fpsのフレームレートにおける10フレームに相当する周期Tf、つまり約166.7msで動画にフリッカを生じさせている。したがって、この信号灯器21は、フリッカの9フレーム目に相当する期間で2回目に点灯してから約2.941msが経過したときに10フレーム目に進む。
【0073】
このとき、信号機2の制御盤22は、信号灯器21に位相シフトを指示する。位相シフトが指示されると信号灯器21は、10フレーム目の点滅を取り消して、次の1フレーム目に相当する点滅を前倒しで行う。その結果、信号灯器21は、
図7の(b)に示す通り、9フレーム目に相当する点滅をした直後に、次周期のフリッカにおける1フレーム目に相当する点滅をする。このとき、フレーム間のつなぎ目は、約7.843msにわたる期間の点灯になる。
【0074】
この位相シフトが行われると、この信号灯器21を有する信号機2を60fpsで撮影した動画には、フリッカの位相の切り替わりが生じる。認識装置1のプロセッサ11によって実現する上述した認識部112は、この動画からこの位相の切り替わりを特定する。そして、この認識部112は、特定した位相の切り替わりに基づいて、信号機2の現示の残り時間を認識する。
【0075】
例えば、信号機2の制御盤22において、信号制御部221が変調部223に現示の残り時間が閾値未満になったことを示す制御信号Tを送信すると、変調部223は、この制御信号Tに応じた位相シフトをする。このときの位相シフトの大きさは取り消された点滅期間に相当するフレーム数で示される。つまり、10フレーム目に相当する点滅のみを取り消した場合、位相シフトの大きさは1フレーム分である。変調部223は、例えば、上述した制御信号Tを受信すると、フリッカの2周期分の期間にわたって、位相シフトを行わず、その直後の1周期のフリッカに対して1フレーム分の点滅を取り消す位相シフトを行う。その結果、信号灯器21を撮影した動画には、60fpsのフレームレートにおける10フレームに相当する周期のフリッカが2回だけ続いた後に、9フレームに相当する周期のフリッカが1回だけ生じ、これが繰り返される。
【0076】
認識部112は、上述した動画から周期がフレーム数に換算して10→10→9→10→10→9…と続くフリッカの変化を特定する。そして、この認識部112は、特定したこのフリッカの変化から、信号機2において1フレーム分の点滅を取り消す位相シフトが行われていることを特定する。認識部112は、特定した位相シフトの大きさが1フレーム分であることから、これに予め対応づけられている現示の残り時間を認識する。
【0077】
なお、位相シフトの大きさは複数あってもよい。位相シフトの大きさは、例えば、大きいほど短い残り時間を示していてもよい。
【0078】
したがって、この認識部112として機能するプロセッサ11を有する認識装置1は、所定のフレームレートで信号機を撮影した動画に生じているフリッカの変化に基づいて信号機の現示の残り時間を認識する認識装置の例である。
【0079】
また、上述した実施形態における認識装置1は、所定のフレームレートで信号機を撮影した動画に生じているフリッカから現示の種別を認識し、このフリッカの変化から光源が点滅する位相の切り替わりを特定し、この位相の切り替わりに基づいて残り時間を認識する認識装置の例である。
【0080】
図4に示した判定部113は、慣性計測部19が計測した認識装置1の速度と測位部18が測定した認識装置1の位置とを用いて、認識装置1を搭載した移動体が信号機2に接近する速度(以下、接近速度ともいう)を特定する。また、判定部113は、認識部112が認識した信号機2の現示種別に基づいて、その現示種別により示される、移動体に許容される接近速度の範囲を特定する。
【0081】
そして、判定部113は、移動体の信号機2への接近速度が、認識された現示種別により示される範囲内にあるか否かを判定し、その判定結果を表示部15に表示する。
【0082】
また、判定部113は、特定した移動体の信号機2への接近速度と、認識部112が認識した現示の残り時間とに基づいて、移動体の運転を制御してもよい。この場合、判定部113は、通信部13を介して移動体の運転を制御する制御装置に制御信号を送る。
【0083】
すなわち、この判定部113として機能するプロセッサ11を有する認識装置1は、計測された光源への接近速度と、認識した残り時間とに応じて自装置を搭載した移動体の運転を制御する認識装置の例である。
【0084】
警告部114は、移動体の信号機2への接近速度が、認識された現示の残り時間の範囲内にない、と判定部113が判定した場合に、警報部16を制御して警告する。すなわち、この警告部114として機能するプロセッサ11を有する認識装置1は、移動体の信号機への接近速度が認識された現示の残り時間から決まる範囲内にないと判定するときに警告する認識装置の例である。
【0085】
<認識装置の動作>
<全体の動作>
図8は、認識装置1の動作の流れの例を示すフロー図である。認識装置1のプロセッサ11は、慣性計測部19、及び測位部18を利用して認識装置1を搭載した移動体の信号機2に対する接近速度を計測する(ステップS101)。また、プロセッサ11は、撮影部17から動画を取得する(ステップS102)。
【0086】
動画を取得するとプロセッサ11は、その動画にフリッカがあるか否かを判定する(ステップS103)。動画にフリッカがない、と判定する場合(ステップS103;NO)、プロセッサ11は、処理をステップS101に戻す。
【0087】
一方、動画にフリッカがある、と判定する場合(ステップS103;YES)、プロセッサ11は、そのフリッカの周期を特定する(ステップS104)。
【0088】
そして、プロセッサ11は、特定したフリッカの周期と、撮影部17のフレームレートとから、信号機2において信号灯器21の発する光の点滅の周波数を特定する(ステップS105)。このとき、プロセッサ11は、上述した接近速度を用いて、点滅の周波数を補正してもよい。
【0089】
光の点滅の周波数を特定すると、プロセッサ11は、この周波数に基づいて信号機2の現示種別を認識し(ステップS106)、認識したこの現示種別に応じて表示部15、又は通信部13を介して外部装置へ指示を出す指示処理を行う(ステップS200)。
【0090】
指示処理が終了すると、プロセッサ11は、認識装置1を終了させるための条件(終了条件ともいう)が満たされたか否かを判定する(ステップS107)。終了条件が満たされていない、と判定する場合(ステップS107;NO)、プロセッサ11は、処理をステップS101に戻す。終了条件が満たされた、と判定する場合(ステップS107;YES)、プロセッサ11は、処理を終了する。
【0091】
<指示処理の動作>
図9は、指示処理の動作の流れの例を示すフロー図である。この指示処理は、
図8にステップS200で示した処理である。
図9に示す通り、プロセッサ11は、認識した現示種別が「進行」、「右折」、「直進」、「左折」のいずれかであるか否かを判定する(ステップS201)。
【0092】
「進行」は、例えば、信号灯器21Gのみを灯火させる現示であり、移動体に進行を許可する現示種別である。また、「右折」、「直進」、「左折」は、例えば、信号灯器21Rとともに、それぞれ信号灯器21A、21B、21Cを灯火させる現示であり、いずれも矢印の方向への進行を移動体に許可する現示種別である。これらの現示種別は、総称して「進行許可」と呼ばれる。
【0093】
認識した現示種別が「進行許可」のいずれかである、と判定する場合(ステップS201;YES)、プロセッサ11は、表示部15により移動体を進行させてよい旨の指示を示す進行表示を行う(ステップS202)。
【0094】
次に、プロセッサ11は、複数周期にわたってフリッカを分析して、その変化を検知し、そのフリッカの変化から現示の残り時間を特定する(ステップS221)。そして、プロセッサ11は、特定したその残り時間を表示部15に表示させる(ステップS222)。
【0095】
次に、プロセッサ11は、認識装置1を搭載した移動体の信号機2への接近速度が0であるか否か判定する(ステップS203)。
【0096】
接近速度が0である、と判定する場合(ステップS203;YES)、プロセッサ11は、通信部13を介して移動体の制御装置に進行を指示する(ステップS204)。一方、接近速度が0でない、と判定する場合(ステップS203;NO)、プロセッサ11は、ステップS204を行わずにこの指示処理を終了して呼び出し元に制御を返す。
【0097】
ステップS201の判定において、認識した現示種別が「進行許可」ではない、と判定する場合(ステップS201;NO)、プロセッサ11は、認識した現示種別が「停止指示」であるか否かを判定する(ステップS205)。
【0098】
「停止指示」は、例えば、信号灯器21Yのみを灯火させる現示である。この「停止指示」は、移動体を原則として停止させる指示であって、例外として安全に停止できない場合に停止せずに進行することを移動体に許可する指示である。
【0099】
認識した現示種別が「停止指示」である、と判定する場合(ステップS205;NO)、プロセッサ11は、表示部15により原則として移動体を停止させる旨の指示を表示する(ステップS206)。そして、プロセッサ11は、認識装置1を搭載した移動体の信号機2への接近速度が予め決められた閾値を超えているか否か判定する(ステップS207)。
【0100】
接近速度が閾値を超えている、と判定する場合(ステップS207;YES)、プロセッサ11は、通信部13を介して移動体の制御装置に減速を指示する(ステップS208)。一方、接近速度が閾値を超えていない、と判定する場合(ステップS207;NO)、プロセッサ11は、ステップS208を行わずにこの指示処理を終了して呼び出し元に制御を返す。
【0101】
ステップS205の判定において、認識した現示種別が「停止指示」ではない、と判定する場合(ステップS205;NO)、プロセッサ11は、認識した現示種別が「停止命令」であるか否かを判定する(ステップS209)。
【0102】
「停止命令」は、例えば、信号灯器21Rのみを灯火させる現示である。この「停止命令」は、移動体を停止させる命令である。
【0103】
認識した現示種別が「停止命令」である、と判定する場合(ステップS209;NO)、プロセッサ11は、表示部15により移動体を停止させる旨の命令を表示する(ステップS210)。
【0104】
次に、プロセッサ11は、複数周期にわたってフリッカを分析して、その変化を検知し、そのフリッカの変化から現示の残り時間を特定する(ステップS231)。そして、プロセッサ11は、特定したその残り時間を表示部15に表示させる(ステップS232)。
【0105】
次に、プロセッサ11は、認識装置1を搭載した移動体の信号機2への接近速度が0であるか否か判定する(ステップS211)。
【0106】
接近速度が0でない、と判定する場合(ステップS211;NO)、プロセッサ11は、通信部13を介して移動体の制御装置に停止を指示する(ステップS212)。一方、接近速度が0である、と判定する場合(ステップS207;YES)、プロセッサ11は、ステップS212を行わずにこの指示処理を終了して呼び出し元に制御を返す。
【0107】
以上、説明した処理を実行することにより、認識装置1は、信号機2の現示の残り時間をこの信号機2を撮影した動画から認識する。この認識装置1は、無線通信回路等の追加の機器を使用せずに、現示の残り時間を認識することができるので、追加の機器を導入する場合に比べて初期費用が抑えられる。
【0108】
また、説明した信号機2は、LED等の光源を指定の周波数で点滅させる回路を導入するだけで認識装置1に現示の残り時間を伝えることができる。そのため、本発明の信号機2は、既設の信号機から製造することができる。
【0109】
また、説明した認識装置1は、汎用のデジタルビデオカメラ等である撮影部17により一般的なフレームレートで撮影された動画から、信号機2の現示の残り時間を認識する。そのため、この認識装置1は、信号灯器が発する光の変調・復調を必要とする機器に比べてコストパフォーマンスに優れる。
【0110】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0111】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0112】
<1>
上述した実施形態において、信号機2の制御盤22は、それぞれの信号灯器21を点滅させる周波数を、その信号灯器21の色ごとに定めていた。しかし、制御盤22は、信号灯器21の色に対応していない周波数でその信号灯器21を点滅させてもよい。
【0113】
例えば、制御盤22は、信号機2の全体が表現する現示種別に対応した固有の周波数で、点灯させる全ての信号灯器21をそれぞれ点滅させてもよい。同時に点灯する2以上の信号灯器21をそれぞれ共通の周波数で点滅させる場合、その共通の周波数が、信号機2の全体が表現する1つの現示種別に対応していれば、それぞれの信号灯器21の灯色に関係なく、周波数から現示種別が定まるからである。
【0114】
<2>
上述した実施形態において、認識装置1は、信号機2を撮影した動画から、フリッカの周期を特定し、この信号機2において点滅する1つの信号灯器21の点滅の周波数を特定して、その現示種別を認識していた。しかし、認識装置1は、2以上の信号灯器21を同時に異なる周期で点滅させる信号機2の現示種別を認識することもできる。この場合、認識装置1は、同時に異なる周期で点滅する信号灯器21のそれぞれによって、動画内に発生するフリッカをそれぞれ抽出し、それらフリッカの周期をそれぞれ特定すればよい。認識装置1は、2以上のフリッカの周期から、それぞれ対応する信号灯器21の点滅の周波数を特定し、その周波数の組合せから信号機2の現示種別を認識すればよい。
【0115】
<3>
上述した実施形態において、信号機2は現示種別ごとに固有の周波数で信号灯器21を点滅させていたが、現示種別を点滅の周波数で表現しなくてもよい。信号機2は、信号灯器21の点灯の波長のみによって、認識装置1に現示種別を通知してもよい。この場合、認識装置1は、点灯の波長を特定して、その波長に予め対応付けられた現示種別を認識すればよい。
【0116】
また、この場合、認識装置1は、連続して点灯する信号灯器21が点滅しはじめたことを、動画に発生するフリッカの変化として検知し、この検知結果に基づいて、現示の残り時間を認識してもよい。なお、本発明における「点滅の態様の変化」は、点滅の周期、位相等の変化だけでなく、点滅せずに連続点灯を続ける状態から点滅する状態への変化も含む。すなわち、フリッカの変化は、フリッカが発生していない状況からフリッカが発生したときを含む。
【0117】
<4>
上述した実施形態において、信号機2の制御盤22における変調部223は、位相シフトによって現示の残り時間を表現していたが、光源の点滅の位相以外を用いて現示の残り時間を表現してもよい。例えば、変調部223は、光源を点滅させる周波数自体を変化させることで現示の残り時間を表現してもよい。
【0118】
図10は、現示の残り時間に応じて周波数自体を変化させる態様を説明する図である。信号機2の制御盤22における変調部223は、信号制御部221から上述した制御信号Tを受信すると、この制御信号Tが示す現示の残り時間に応じて、例えば、信号灯器21の点滅の位相を変えることなく、その周波数自体を108Hzから105Hzに変化させる。つまり、この信号機2は、現示の残り時間に応じて点滅の周波数を変化させる信号機の例である。
【0119】
認識装置1の撮影部17は、60fpsのフレームレートで信号機2を撮影している。信号機2において、信号灯器21の点滅の周波数が108Hzから105Hzに変化すると、撮影部17によって撮影された動画に生じるフリッカの周波数は12Hzから15Hzに変化する。
図10に示す例では、フリッカの周期Tfは、12Hzに対応する約83.3msから、15Hzに対応する約66.7msに切り替わる。この切り替わりの後、信号機2は、105Hzで信号灯器21を点滅させ続ける。
【0120】
認識装置1のプロセッサ11は、このフリッカの周期Tfの変化、すなわち、フリッカの周波数の切り替わりを特定する。そして、プロセッサ11は、特定したフリッカの周波数の切り替わりに基づいて、それに予め対応付けられた現示の残り時間を認識する。
【0121】
すなわち、この認識装置1は、フリッカから現示の種別を認識し、フリッカの変化から光源が点滅する周波数の切り替わりを特定し、その周波数の切り替わりに基づいて残り時間を認識する認識装置の例である。
【0122】
<5>
上述した実施形態、及び変形例で説明した認識装置1、及び信号機2を有する信号システム9は、人の目の時間分解能よりも短い周期に応じた周波数であって、所定のフレームレートで撮影された動画においてフリッカを生じさせる周波数で光源を点滅させ、現示の残り時間に応じてその光源の点滅の態様を変化させる信号機と、信号機を所定のフレームレートで撮影する撮影装置と、撮影装置が撮影した動画を取得し、その動画に生じているフリッカの変化に基づいて信号機の現示の残り時間を認識する認識装置と、を有する信号システムの例である。
【0123】
<6>
上述した実施形態において、プロセッサ11の動作は、1つのプロセッサ11によって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサ11の各動作の順序は上述した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。
【0124】
<7>
また、認識装置1のプロセッサ11によって実行されるプログラムは、磁気テープ及び磁気ディスク等の磁気記録媒体、光ディスク等の光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリ等の、コンピュータ装置が読取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムは、インターネット等の通信回線経由でダウンロードされてもよい。なお、上述したプロセッサ11によって例示した制御手段としてはCPU以外にも種々の装置が適用される場合があり、例えば、専用のプロセッサ等が用いられる。
【0125】
このプロセッサ11によって実行されるプログラムは、コンピュータを、所定のフレームレートで信号機を撮影した動画を取得する取得手段と、この動画に生じているフリッカの変化に基づいて信号機の現示の残り時間を認識する認識手段、として機能させるためのプログラムの例である。
【符号の説明】
【0126】
1…認識装置、11…プロセッサ、111…取得部、112…認識部、113…判定部、114…警告部、12…メモリ、13…通信部、14…操作部、15…表示部、16…警報部、17…撮影部、18…測位部、19…慣性計測部、2…信号機、21(21G、21Y、21R、21A、21B、21C)…信号灯器、22…制御盤、221…信号制御部、222…灯器開閉部、223…変調部、3…通信回線、4…管理装置、5…航法衛星、9…信号システム。