(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072526
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ブレーキキャリパ
(51)【国際特許分類】
F16D 65/02 20060101AFI20240521BHJP
F16D 55/227 20060101ALI20240521BHJP
F16J 3/04 20060101ALI20240521BHJP
F16J 15/52 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
F16D65/02 N
F16D55/227 106B
F16D65/02 R
F16J3/04 C
F16J15/52 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183384
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 将樹
(72)【発明者】
【氏名】小池 正人
【テーマコード(参考)】
3J043
3J045
3J058
【Fターム(参考)】
3J043AA03
3J043CB13
3J043DA09
3J043DA20
3J043FA05
3J043FB07
3J045CB14
3J045CB30
3J045EA10
3J058AA48
3J058AA63
3J058AA69
3J058BA25
3J058BA55
3J058CC84
3J058DE07
3J058FA06
(57)【要約】
【課題】一例として、ピンの摺動抵抗の増加を抑制可能なブレーキキャリパを得る。
【解決手段】実施形態に係るブレーキキャリパは、一例として、表面を有し、前記表面から第1の方向に窪んだ穴が設けられた、第1の部材と、第2の部材と、前記第2の部材に設けられ、前記穴に部分的に収容され、外周面を有する、ピンと、前記穴に嵌め込まれて前記第1の部材に取り付けられるとともに前記穴の内部において前記外周面を囲む嵌合部と、前記嵌合部に接続されて前記穴の外において前記外周面を覆うとともに伸縮可能な伸縮部と、を有し、前記外周面から離間した、ブーツと、前記穴の内部に配置された外筒と、前記外筒と前記外周面との間に配置されるとともに前記ピンが前記第1の方向と第2の方向とに移動可能に前記外周面を支持する複数のボールと、を有するリニアブッシュと、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンを、第1の方向と、前記第1の方向の反対の第2の方向と、に移動可能に保持するキャリパボディと、前記キャリパボディを前記第1の方向と前記第2の方向とに移動可能に保持するマウントと、のうち一方であって、表面を有し、前記表面から前記第1の方向に窪んだ穴が設けられた、第1の部材と、
前記キャリパボディと前記マウントとのうち他方である、第2の部材と、
前記第2の部材に設けられ、前記穴に部分的に収容され、前記穴の内部において当該穴の内周面に囲まれるとともに当該内周面に向く外周面を有する、ピンと、
前記穴に嵌め込まれて前記第1の部材に取り付けられるとともに前記穴の内部において前記外周面を囲む嵌合部と、前記嵌合部に接続されて前記穴の外において前記外周面を覆うとともに前記マウントに対する前記キャリパボディの移動に応じて伸縮する伸縮部と、を有し、前記外周面から離間した、ブーツと、
前記穴の内部に配置された外筒と、前記外筒と前記外周面との間に配置されるとともに前記ピンが前記第1の方向と前記第2の方向とに移動可能に前記外周面を支持する複数のボールと、を有するリニアブッシュと、
を備えるブレーキキャリパ。
【請求項2】
前記嵌合部の少なくとも一部と前記外周面との間に位置して当該嵌合部に取り付けられ、前記外周面を囲み、前記ブーツよりも剛性が高い、筒、
をさらに備え、
前記嵌合部の少なくとも一部は、前記第1の部材と前記筒との間で圧縮される、
請求項1のブレーキキャリパ。
【請求項3】
前記外筒は、前記筒の内側に位置し、当該筒に取り付けられた、
請求項2のブレーキキャリパ。
【請求項4】
前記外筒は、前記嵌合部と前記外周面との間に配置され、前記嵌合部に支持される、
請求項1又は請求項2のブレーキキャリパ。
【請求項5】
前記外筒は、前記穴の内部において前記第1の部材に取り付けられた、
請求項1又は請求項2のブレーキキャリパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ブレーキキャリパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスクブレーキは、例えば、ブレーキパッドと、当該ブレーキパッドをディスクロータに押しつけるピストンと、当該ピストンを保持するブレーキキャリパとを有する。例えば、浮動型のブレーキキャリパは、ピストンを往復運動可能に保持するキャリパボディと、当該キャリパボディを移動可能に車体に取り付けるマウントと、を有する。
【0003】
キャリパボディとマウントとの相対的な移動をガイドするため、キャリパボディにピンが設けられることがある。ピンは、マウントに設けられた穴に挿入されており、キャリパボディ及びマウントの相対的な移動時に穴の内部で摺動する。ピンは、ブーツによって液密に覆われ、保護される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、例えばゴムで作られたブーツが、ピンの外周面に接触する。このため、時間経過によりブーツが外周面に貼り付いたり、ブーツと外周面との間の潤滑が不足したりすることで、ピンとブーツとの間の摺動抵抗が増加してしまうことがある。
【0006】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたものであり、ピンの摺動抵抗の増加を抑制可能なブレーキキャリパを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るブレーキキャリパは、一例として、ピストンを、第1の方向と、前記第1の方向の反対の第2の方向と、に移動可能に保持するキャリパボディと、前記キャリパボディを前記第1の方向と前記第2の方向とに移動可能に保持するマウントと、のうち一方であって、表面を有し、前記表面から前記第1の方向に窪んだ穴が設けられた、第1の部材と、前記キャリパボディと前記マウントとのうち他方である、第2の部材と、前記第2の部材に設けられ、前記穴に部分的に収容され、前記穴の内部において当該穴の内周面に囲まれるとともに当該内周面に向く外周面を有する、ピンと、前記穴に嵌め込まれて前記第1の部材に取り付けられるとともに前記穴の内部において前記外周面を囲む嵌合部と、前記嵌合部に接続されて前記穴の外において前記外周面を覆うとともに前記マウントに対する前記キャリパボディの移動に応じて伸縮する伸縮部と、を有し、前記外周面から離間した、ブーツと、前記穴の内部に配置された外筒と、前記外筒と前記外周面との間に配置されるとともに前記ピンが前記第1の方向と前記第2の方向とに移動可能に前記外周面を支持する複数のボールと、を有するリニアブッシュと、を備える。よって、一例としては、ブレーキキャリパは、一般的に合成ゴムのような材料で作られるブーツとピンの外周面との接触を抑制しながら、リニアブッシュによってピンをガイドすることができる。従って、ブレーキキャリパは、時間経過によりブーツが外周面に貼り付いたり、ブーツと外周面との間の潤滑が不足したりすることによる、ピンとブーツとの間の摺動抵抗の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態のディスクブレーキを概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態のディスクブレーキの一部を示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態のディスクブレーキの一部を
図1のF3-F3線に沿って概略的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態のブレーキキャリパの一部を
図1のF4-F4線に沿って示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態のブレーキキャリパの一部を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係るブレーキキャリパの一部を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態のリニアブッシュの近傍におけるブレーキキャリパの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、
図1乃至
図5を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0010】
図1は、第1の実施形態のディスクブレーキ10を概略的に示す斜視図である。本実施形態のディスクブレーキ10は、浮動型のディスクブレーキである。なお、ディスクブレーキ10は、他の種類のディスクブレーキであっても良い。ディスクブレーキ10は、ディスクロータ11と、ブレーキキャリパ12とを有する。
【0011】
ディスクロータ11は、回転軸Axrまわりに回転可能な円盤状に形成される。回転軸Axrは、例えば、ディスクブレーキ10が搭載される車両1の車軸の中心軸である。なお、回転軸Axrは、この例に限られない。
【0012】
本明細書において、便宜上、回転軸Axrに沿う方向が軸方向と定義される。軸方向は、回転軸Axrに沿う第1の方向D1と、当該第1の方向D1の反対の第2の方向D2とを含む。なお、第1の方向D1及び第2の方向D2は、回転軸Axrに沿う方向に限られない。
【0013】
図2は、第1の実施形態のディスクブレーキ10の一部を示す断面図である。
図2に示すように、ディスクロータ11は、車輪を支持するハブ13に固定される。ハブ13は、車両1の車体に支持されたサスペンションのナックル14に、回転可能に支持される。ディスクロータ11は、ハブ13及び車輪と一体的に、回転軸Axrまわりに回転する。
【0014】
ディスクロータ11は、二つの側面11aを有する。側面11aは、略平坦に形成され、軸方向に向く。言い換えると、回転軸Axrは、側面11aと直交する方向に延びている。二つの側面11aは、互いに反対側に位置する。
【0015】
図3は、第1の実施形態のディスクブレーキ10の一部を
図1のF3-F3線に沿って概略的に示す断面図である。ブレーキキャリパ12は、
図3に示す二つのブレーキパッド21、ピストン22、及び可動部品23と、
図1に示す固定部品24及び二つのブーツ25と、を有する。
【0016】
図3に示すように、ブレーキパッド21は、可動部品23に、軸方向に移動可能に保持される。二つのブレーキパッド21は、軸方向に間隔を介して並べられる。二つのブレーキパッド21の間に、ディスクロータ11が配置される。ディスクブレーキ10は、ブレーキパッド21をディスクロータ11の側面11aに押し付けることで、ディスクロータ11及び車輪を制動する。
【0017】
ピストン22は、軸方向に延びる略円柱状に形成される。なお、ピストン22の形状は、この例に限られない。また、ピストン22の数は、一つに限らず、二つ以上であっても良い。
【0018】
可動部品23は、
図3に示すキャリパボディ31と、
図1に示す二つのピン32及び二つのボルト33と、を有する。キャリパボディ31は、第2の部材の一例である。なお、ピン32及びボルト33の数は、二つに限らず、一つでも良いし、三つ以上であっても良い。
【0019】
キャリパボディ31は、
図3に示す保持部41、爪部42、及び接続部43と、
図1に示す二つの取付部44と、を有する。保持部41、爪部42、接続部43、及び取付部44は、一体に形成される。なお、保持部41、爪部42、接続部43、及び取付部44のうち少なくとも一部が、他の部分とは別の部品であっても良い。
【0020】
図3に示すように、保持部41に、第1の方向D1に向かって開口するシリンダ室45が設けられる。ピストン22が、軸方向に往復運動可能にシリンダ室45に収容される。保持部41は、ピストン22を、第1の方向D1と第2の方向D2とに移動可能に保持する。
【0021】
保持部41に、ピストンシール47が取り付けられる。ピストンシール47は、例えば、合成ゴムによって略円環状に形成される。ピストンシール47は、ピストン22と保持部41との間の隙間を液密にシールする。
【0022】
爪部42は、保持部41から第1の方向D1に離間している。保持部41に保持されたピストン22と、爪部42と、の間にディスクロータ11及び二つのブレーキパッド21が配置される。接続部43は、保持部41と爪部42とを互いに接続する。
【0023】
例えば、車両1の運転手がブレーキペダルを踏み込む制動操作を行うと、シリンダ室45に作動油が供給され、シリンダ室45における油圧が上昇する。当該油圧により、ピストン22は、第1の方向D1に移動し、一方のブレーキパッド21をディスクロータ11の一方の側面11aに押し付ける。
【0024】
ピストン22が一方のブレーキパッド21をディスクロータ11に押し付けると、反力により、可動部品23が第2の方向D2に移動する。これにより、爪部42が他方のブレーキパッド21をディスクロータ11の他方の側面11aに押し付ける。ディスクブレーキ10は、二つのブレーキパッド21をディスクロータ11に押し付けることで、制動力を生じさせる。
【0025】
図1に示すように、取付部44は、保持部41から、軸方向と略直交する方向に突出する。二つの取付部44は、保持部41から互いに反対方向に突出する。なお、取付部44は、この例に限られない。
【0026】
図4は、第1の実施形態のブレーキキャリパ12の一部を
図1のF4-F4線に沿って示す断面図である。
図4に示すように、取付部44は、二つの側面44a,44bを有する。側面44aは、略平坦に形成され、第1の方向D1に向く。側面44bは、略平坦に形成され、第2の方向D2に向く。さらに、取付部44に、貫通孔44cが設けられる。貫通孔44cは、略軸方向に取付部44を貫通し、二つの側面44a,44bに開口する。
【0027】
二つのピン32のそれぞれは、対応する取付部44の側面44aから第1の方向D1に突出するように、例えばボルト33によって対応する取付部44に取り付けられる。このように、ピン32は、キャリパボディ31に設けられる。なお、ピン32は、キャリパボディ31と一体に形成されても良い。
【0028】
ピン32は、例えば、金属により作られる。二つのピン32はそれぞれ、軸方向に延びる略円柱状に形成される。言い換えると、二つのピン32は、回転軸Axrと略平行に延びている。なお、ピン32の材料及び形状は、この例に限られない。また、二つのピン32の形状は、互いに異なっていても良い。
【0029】
本明細書において、便宜上、径方向及び周方向が定義される。径方向は、ピン32の中心軸Axcと直交する方向である。周方向は、中心軸Axcまわりに回転する方向である。また、ピン32が軸方向に延びているため、軸方向は、回転軸Axrに沿う方向であるとともに、中心軸Axcに沿う方向でもある。
【0030】
なお、ピン32が円柱状と異なる形状を有したとしても、中心軸Axc、軸方向、径方向、及び周方向は定義され得る。ピン32が円柱状と異なる場合、軸方向は、ピストン22が移動可能な方向であり、第1の方向D1と第2の方向D2とを含む。径方向は、第1の方向D1及び第2の方向D2と直交する方向であって、ピン32の内側に向く方向(径方向の内側)とピン32の外側に向く方向(径方向の外側)とを含む。
【0031】
二つのピン32のそれぞれは、基部51と摺動部52とを有する。基部51及び摺動部52は、軸方向に延びる略円柱状に形成される。基部51の直径は、摺動部52の直径よりも大きい。基部51及び摺動部52は、中心軸Axc上に同心に配置される。
【0032】
基部51は、第1の端面51aと、第1の外周面51bとを有する。第1の端面51aは、第2の方向D2における基部51の端部に設けられる。第1の端面51aは、略平坦に形成され、第2の方向D2に向く。また、第1の端面51aは、第2の方向D2におけるピン32の端部でもある。第1の外周面51bは、軸方向に延びる略円筒状に形成され、径方向の外側に向く。基部51は、直径が互いに異なる複数の第1の外周面51bを有しても良い。
【0033】
第1の端面51aは、取付部44の側面44aに当接する。なお、第1の端面51aと側面44aとの間に、他の部材が介在しても良い。第1の端面51aに、ネジ穴55が設けられる。ネジ穴55は、取付部44の貫通孔44cと連通する。ボルト33は、貫通孔44cを通ってネジ穴55に嵌め込まれることで、ピン32を取付部44に取り付ける。
【0034】
第1の外周面51bに、取付溝56が設けられる。取付溝56は、第1の外周面51bから、径方向の内側に窪む。取付溝56は、周方向における、第1の外周面51bの全周に亘って設けられる。
【0035】
摺動部52は、基部51から第1の方向D1に突出している。軸方向において、摺動部52は、基部51よりも長い。摺動部52は、第2の端面52aと第2の外周面52bとを有する。第2の外周面52bは、外周面の一例である。
【0036】
第2の端面52aは、第1の方向D1における摺動部52の端部に設けられる。第2の端面52aは、略平坦に形成され、第1の方向D1に向く。また、第2の端面52aは、第1の方向D1におけるピン32の端部でもある。
【0037】
第2の外周面52bは、軸方向(第1の方向D1及び第2の方向D2)に延びる略円筒状に形成され、径方向の外側に向く。第2の外周面52bの中心軸は、中心軸Axcと一致する。このため、周方向は、第2の外周面52bに沿ってピン32のまわりを回る方向であり、第2の外周面52bの中心軸の周方向でもある。
【0038】
固定部品24は、マウント60を有する。マウント60は、第1の部材の一例である。マウント60は、ナックル14に固定される。言い換えると、マウント60は、車両1の車体に固定される。
【0039】
マウント60は、キャリパボディ31を軸方向(第1の方向D1及び第2の方向D2)に移動可能に保持する。このため、キャリパボディ31を含む可動部品23は、上述のように、シリンダ室45の油圧によって移動することができる。
【0040】
マウント60は、外面61を有する。外面61は、表面の一例である。外面61は、間隔を介して、取付部44の側面44aに向く。なお、外面61は、マウント60の全体の外面のうちの一部である。マウント60に、外面61に開口するガイド穴62が設けられる。ガイド穴62は、穴の一例である。
【0041】
ガイド穴62は、外面61から第1の方向D1に窪んだ有底の穴である。言い換えると、ガイド穴62は、軸方向に延びている。なお、ガイド穴62は、マウント60を貫通しても良い。ガイド穴62は、略円形の断面を有する。ガイド穴62は、基部51及び摺動部52と同心に、中心軸Axc上に設けられる。
【0042】
マウント60は、ガイド穴62の内周面62a及び底面62bをさらに有する。内周面62a及び底面62bは、ガイド穴62を形成(規定、区画)する。内周面62aは、外面61から第1の方向D1に延びる略円柱状に形成され、径方向の内側に向く。言い換えると、内周面62aは、中心軸Axcに向く。
【0043】
底面62bは、外面61から第1の方向D1に離間した位置に設けられる。内周面62aは、底面62bの縁と、外面61におけるガイド穴62の縁と、に接続される。内周面62aの直径は、摺動部52の第2の外周面52bの直径よりも大きい。
【0044】
ピン32の基部51は、ガイド穴62の外に位置する。一方、ピン32の摺動部52は、対応するガイド穴62に部分的に収容(挿入)されている。このため、摺動部52の第2の端面52aは、ガイド穴62の内部に位置し、ガイド穴62の底面62bに向く。
【0045】
第2の外周面52bは、ガイド穴62の内部においては、ガイド穴62の内周面62aに囲まれ、当該内周面62aに向く。第2の外周面52bは、内周面62aから離間している。なお、第2の外周面52bが、内周面62aに一時的に接触しても良い。
【0046】
内周面62aに、取付溝65が設けられる。取付溝65は、ガイド穴62の一部である。取付溝65は、内周面62aから、径方向の外側に窪む。取付溝65は、周方向における、内周面62aの全周に亘って設けられる。取付溝65は、外面61の近傍に位置する。
【0047】
二つのブーツ25はそれぞれ、対応するピン32を覆うとともに、第2の外周面52bと内周面62aとの間の隙間を塞ぐ。これにより、ブーツ25は、水分や塵埃が、摺動部52に付着したり、ガイド穴62に侵入したりすることを抑制し、ひいては摺動部52が錆びることを抑制できる。
【0048】
ブーツ25は、例えば、合成ゴムのような弾性変形可能な材料(エラストマー)により作られる。なお、ブーツ25は、他の材料により作られても良い。ブーツ25は、第1の嵌合部71と、第2の嵌合部72と、伸縮部73とを有する。第1の嵌合部71は、嵌合部の一例である。
【0049】
第1の嵌合部71は、例えば、第1の方向D1におけるブーツ25の端部に設けられる。第1の嵌合部71は、中心軸Axcまわりに設けられた略円環状に形成される。なお、第1の嵌合部71の位置及び形状は、この例に限られない。
【0050】
図5は、第1の実施形態のブレーキキャリパ12の一部を示す断面図である。
図5に示すように、第1の嵌合部71は、外面71aと内面71bとを有する。外面71a及び内面71bは、中心軸Axcまわりに設けられた略円筒状の曲面である。外面71aは、径方向の外側に向く。内面71bは、外面71aの反対側に位置し、径方向の内側に向く。
【0051】
第1の嵌合部71は、ガイド穴62に嵌め込まれ、マウント60に取り付けられる。例えば、第1の嵌合部71は、取付溝65に嵌め込まれる。これにより、マウント60は、第1の嵌合部71が軸方向に移動することを制限するように、第1の嵌合部71を保持する。
【0052】
第1の嵌合部71が取付溝65から取り外されて外力を受けない自然状態において、第1の嵌合部71の外面71aの直径は、取付溝65の底面65aの直径よりも大きい。このため、第1の嵌合部71が取付溝65に取り付けられることで、第1の嵌合部71の外面71aが、取付溝65の底面65aに液密に接触する。底面65aは、中心軸Axcまわりに設けられて径方向の内側に向く、略円筒状の曲面である。
【0053】
ピン32の摺動部52が、第1の嵌合部71の内側に配置される。このため、第1の嵌合部71は、マウント60と第2の外周面52bとの間に位置する。第1の嵌合部71の内面71bの直径は、第2の外周面52bの直径よりも大きい。第1の嵌合部71は、ガイド穴62の内部において第2の外周面52bを囲むとともに、第2の外周面52bから離間している。なお、第1の嵌合部71は、例えば一時的に第2の外周面52bに接触しても良い。
【0054】
図4に示すように、第2の嵌合部72は、例えば、第2の方向D2におけるブーツ25の端部に設けられる。第2の嵌合部72は、中心軸Axcまわりに設けれた略円環状に形成される。なお、第2の嵌合部72の位置及び形状は、この例に限られない。
【0055】
第2の嵌合部72は、可動部品23に取り付けられる。例えば、第2の嵌合部72は、ピン32の取付溝56に嵌め込まれる。これにより、第2の嵌合部72の内側に、ピン32の基部51が配置される。第2の嵌合部72は、例えば、取付溝56の底面56aに液密に接触する。
【0056】
ピン32は、第2の嵌合部72が軸方向に移動することを制限するように、第2の嵌合部72を保持する。このため、第2の嵌合部72は、キャリパボディ31及びピン32を含む可動部品23と一体的に、固定部品24に対して第1の方向D1と第2の方向D2とに移動することができる。第2の嵌合部72は、ガイド穴62の外に位置し、マウント60の外面61から第2の方向D2に離間している。
【0057】
伸縮部73は、第1の嵌合部71と第2の嵌合部72との間に設けられる。第1の方向D1における伸縮部73の端部は、第1の嵌合部71に接続される。さらに、第2の方向D2における伸縮部73の端部は、第2の嵌合部72に接続される。なお、伸縮部73は、他の部分を介して第1の嵌合部71に接続されても良いし、他の部分を介して第2の嵌合部72に接続されても良い。
【0058】
伸縮部73の内側に、ピン32が配置される。伸縮部73は、ガイド穴62の外において、摺動部52の第2の外周面52bを覆う。基部51は、伸縮部73に覆われずに露出していても良い。さらに、ガイド穴62の内部において、伸縮部73が第2の外周面52bをさらに覆っていても良い。
【0059】
エラストマーで作られたブーツ25の伸縮部73は、弾性変形することができる。例えば、伸縮部73は、軸方向に伸縮するように弾性変形することができる。本実施形態の伸縮部73は、例えば、ベローズであり、軸方向に伸縮自在に形成される。
【0060】
上述のように、ディスクブレーキ10による制動時、ピストン22がブレーキパッド21をディスクロータ11に押し付けると、反力により、可動部品23が第2の方向D2に移動する。このため、キャリパボディ31及びピン32を含む可動部品23が、マウント60に対して第2の方向D2へ移動する。
【0061】
可動部品23が第2の方向D2へ移動することで、基部51に取り付けられた第2の嵌合部72も、第1の嵌合部71に対して相対的に第2の方向D2へ移動する。このため、第1の嵌合部71と第2の嵌合部72との間の距離が伸び、伸縮部73が軸方向に伸びる。
【0062】
一方、車両1の運転手が制動操作を解除すると、シリンダ室45における油圧が低下する。油圧の低下に伴って、可動部品23を第2の方向D2へ移動させる反力も解除される。このため、キャリパボディ31及びピン32を含む可動部品23がマウント60に対して第1の方向D1へ移動する。
【0063】
可動部品23が第1の方向D1へ移動することで、基部51に取り付けられた第2の嵌合部72も、第1の嵌合部71に対して相対的に第1の方向D1へ移動する。このため、第1の嵌合部71と第2の嵌合部72との間の距離が縮み、伸縮部73が軸方向に縮む。このように、マウント60に対するキャリパボディ31の移動に応じて、伸縮部73が伸縮する。
【0064】
図5に示すように、ブレーキキャリパ12は、二つのブーツ25に対応する二つの筒状部材81及び二つのリニアブッシュ82をさらに有する。筒状部材81は、筒の一例である。
【0065】
筒状部材81は、中心軸Axcまわりに設けれた略円筒状に形成される。筒状部材81は、例えば、金属で作られる。筒状部材81の剛性は、ブーツ25の剛性よりも高い。なお、筒状部材81は、他の材料で作られても良いし、他の形状に形成されても良い。
【0066】
二つの筒状部材81のそれぞれは、外面81aと内面81bとを有する。外面81a及び内面81bは、中心軸Axcまわりに設けられた略円筒状の曲面である。外面81aは、径方向の外側に向く。内面81bは、外面81aの反対側に位置し、径方向の内側に向く。
【0067】
外面81aの直径は、ガイド穴62の内周面62aの直径よりも大きく、取付溝65の底面65aの直径よりも小さい。内面81bの直径は、ガイド穴62の内周面62aの直径よりも大きい。
【0068】
二つの筒状部材81のそれぞれは、対応する第1の嵌合部71の内側に嵌め込まれる。このため、筒状部材81の外面81aは、第1の嵌合部71の内面71bに接触する。筒状部材81は、例えば、加硫接着(焼き付け)によりブーツ25と一体に成形され、第1の嵌合部71に取り付けられる。なお、筒状部材81は、接着又は圧入のような他の方法により第1の嵌合部71に取り付けられても良い。
【0069】
ピン32の摺動部52は、筒状部材81の内側を通って軸方向に延びている。このため、筒状部材81は、第1の嵌合部71の少なくとも一部と、摺動部52の第2の外周面52bとの間に位置して、第2の外周面52bを囲む。筒状部材81は、第2の外周面52bから離間している。
【0070】
筒状部材81の外面81aは、当該筒状部材81よりも剛性が低い第1の嵌合部71を支持する。このため、第1の嵌合部71の少なくとも一部は、マウント60の取付溝65の底面65aと、筒状部材81の外面81aとの間で圧縮され、底面65aに液密に接触する。
【0071】
リニアブッシュ82は、例えば、特開2003-139135号公報に開示されるリニアブッシュのうち軌道軸を除く構成と同様の構成を有する。なお、リニアブッシュ82は、この例に限られない。二つのリニアブッシュ82のそれぞれは、外筒91と、保持器92と、複数のボール93とを有する。
【0072】
外筒91及び保持器92は、例えば、中心軸Axcまわりに設けれた略円筒状に形成される。外筒91、保持器92、及びボール93は、金属で作られ、ブーツ25よりも剛性が高い。なお、外筒91、保持器92、及びボール93は、他の材料で作られても良いし、他の形状に形成されても良い。
【0073】
外筒91は、外面91aと内面91bとを有する。外面91a及び内面91bは、中心軸Axcまわりに設けられた略円筒状の曲面である。外面91aは、径方向の外側に向く。内面91bは、外面91aの反対側に位置し、径方向の内側に向く。
【0074】
外筒91は、対応する筒状部材81の内側に、例えば圧入により嵌め込まれる。言い換えると、外筒91は、筒状部材81の内側に位置し、当該筒状部材81に取り付けられている。このため、外筒91の外面91aは、筒状部材81の内面81bに接触する。なお、外筒91は、接着のような他の方法により筒状部材81に取り付けられても良い。筒状部材81の内側に嵌め込まれた外筒91は、ガイド穴62の内部に配置される。
【0075】
ピン32の摺動部52は、外筒91の内側を通って軸方向に延びている。内面91bの直径は、ガイド穴62の内周面62aの直径よりも大きい。このため、内面91bは、摺動部52の第2の外周面52bから離間している。
【0076】
外筒91は、第1の嵌合部71と摺動部52の第2の外周面52bとの間に配置される。さらに、外筒91は、筒状部材81を介して、第1の嵌合部71に支持される。圧縮された第1の嵌合部71は、復元力により、筒状部材81及び外筒91の中心を中心軸Axcと一致させるように、筒状部材81及び外筒91を支持する。
【0077】
保持器92は、外面92aと内面92bとを有する。外面92a及び内面92bは、中心軸Axcまわりに設けられた略円筒状の曲面である。外面92aは、径方向の外側に向く。内面92bは、外面92aの反対側に位置し、径方向の内側に向く。
【0078】
保持器92は、外筒91の内側に嵌め込まれる。このため、保持器92の外面92aは、外筒91の内面91bに接触する。なお、保持器92は、接着のような他の方法により外筒91に取り付けられても良い。
【0079】
保持器92に、複数のスリット95が設けられる。本実施形態では、保持器92に、三つ以上のスリット95が設けられる。複数のスリット95は、周方向に互いに離間している。複数のスリット95のそれぞれは、外面92a及び内面92bに開口する。例えば、複数のスリット95のそれぞれは、一方の直線状の部分95aと、他方の直線状の部分と、二つの円弧状の部分とを有する。
【0080】
一方の直線状の部分95aは、外面92a及び内面92bに開口するとともに、軸方向に延びている。一方の直線状の部分95aは、他方の直線状の部分から周方向に離間している。他方の直線状の部分は、外面92aに開口するとともに軸方向に延びている。一方の直線状の部分95aの両端と他方の直線状の部分の両端とは、二つの円弧状の部分によって互いに接続される。このように、スリット95は、無端状に形成される。
【0081】
複数のボール93は、複数のスリット95に収容される。このため、複数のボール93は、外筒91の内面91bと摺動部52の第2の外周面52bとの間に配置される。複数のスリット95のそれぞれにおいて、複数のボール93は、無端状に並べられる。
【0082】
複数のボール93は、無端状のスリット95において循環するように転動できる。一方の直線状の部分95aに配置された複数のボール93の一部は、内面92bから突出している。保持器92は、複数のボール93が保持器92の内側へ脱落することを防止するように複数のボール93を支持する。
【0083】
ボール93の径方向の外側における頂点は、外筒91の内面91bに支持される。なお、ボール93の径方向の外側における頂点は、例えば、外筒91の内面91bから突出した突起に支持されても良いし、保持器92に支持されても良い。
【0084】
直線状の部分95aに配置されたボール93の径方向の内側における頂点は、摺動部52の第2の外周面52bに当接する。これにより、直線状の部分95aに配置されたボール93は、第2の外周面52bを支持する。他方の直線状の部分及び二つの円弧状の部分に配置された複数のボール93は、第2の外周面52bから離間している。
【0085】
ピン32が第1の方向D1又は第2の方向D2へ移動すると、第2の外周面52bを支持する複数のボール93が転動する。これにより、ピン32は、リニアブッシュ82に対して相対的に第1の方向D1又は第2の方向D2へ滑らかに移動することができる。すなわち、複数のボール93は、ピン32が第1の方向D1と第2の方向D2とに移動可能に第2の外周面52bを支持する。
【0086】
複数のボール93に支持されることで、摺動部52の第2の外周面52bは、ブーツ25から離間した位置に保持される。なお、ピン32の基部51は、第2の嵌合部72のようなブーツ25の一部に接触する。さらに、第2の外周面52bは、一時的にブーツ25に接触しても良い。
【0087】
リニアブッシュ82は、転動可能な複数のボール93により第2の外周面52bを支持することで、ピン32を軸方向にガイドする。ピン32が軸方向に移動するときの抵抗(摺動抵抗)は、例えば、ピン32が複数のボール93ではなく樹脂ブッシュに支持される場合の摩擦よりも小さい。
【0088】
以上説明された第1の実施形態に係るブレーキキャリパ12において、ブーツ25は、ピン32の第2の外周面52bから離間している。リニアブッシュ82は、外筒91と、複数のボール93とを有する。外筒91は、ガイド穴62の内部に配置される。複数のボール93は、外筒91と第2の外周面52bとの間に配置されるとともに、ピン32が第1の方向D1と第2の方向D2とに移動可能に第2の外周面52bを支持する。これにより、ブレーキキャリパ12は、一般的に合成ゴムのような材料で作られるブーツ25とピン32の第2の外周面52bとの接触を抑制しながら、リニアブッシュ82によってピン32をガイドすることができる。従って、ブレーキキャリパ12は、時間経過によりブーツ25が第2の外周面52bに貼り付いたり、ブーツ25と第2の外周面52bとの間の潤滑が不足したりすることによる、ピン32とブーツ25との間の摺動抵抗の増加と、当該摺動抵抗による引き摺りトルクの増加とを抑制できる。さらに、ブレーキキャリパ12は、リニアブッシュ82の複数のボール93によりピン32の第2の外周面52bを支持するため、ピン32の摺動抵抗を低減できる。
【0089】
筒状部材81は、第1の嵌合部71の少なくとも一部と第2の外周面52bとの間に位置して当該第1の嵌合部71に取り付けられ、第2の外周面52bを囲み、ブーツ25よりも剛性が高い。第1の嵌合部71の少なくとも一部は、マウント60と筒状部材81との間で圧縮される。これにより、筒状部材81は、ブーツ25の第1の嵌合部71とマウント60との間の面圧を増大させることができる。従って、ブレーキキャリパ12は、第1の嵌合部71とマウント60との間をより確実にシールすることができ、塵埃や水分がガイド穴62の内部へ侵入してしまうことを抑制できる。
【0090】
外筒91は、筒状部材81の内側に位置し、当該筒状部材81に取り付けられる。筒状部材81の剛性が高いため、リニアブッシュ82の取付が容易となる。また、筒状部材81は、例えば加硫接着により第1の嵌合部71に取り付けられることができる。しかし、もしリニアブッシュ82の外筒91が筒状部材81の代わりに加硫接着により第1の嵌合部71に取り付けられるとすると、リニアブッシュ82が加硫接着における熱及び圧力により変形してしまう虞がある。リニアブッシュ82は、筒状部材81を介して第1の嵌合部71に取り付けられることで、第1の嵌合部71に容易に固定されることができる。
【0091】
外筒91は、第1の嵌合部71と第2の外周面52bとの間に配置され、第1の嵌合部71に支持される。これにより、リニアブッシュ82は、第1の嵌合部71を弾性変形させることでピン32の中心軸Axcと直交する方向に若干移動することができる。従って、ブレーキキャリパ12は、ピン32がマウント60に対して径方向に若干移動したとしても、ピン32及びリニアブッシュ82に作用する荷重を軽減することができる。
【0092】
第1の実施形態において、外筒91は、筒状部材81を介して第1の嵌合部71に支持される。しかし、外筒91は、直接的に第1の嵌合部71の内側に嵌め込まれても良い。この場合、外筒91が筒の一例となり得る。
【0093】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について、
図6及び
図7を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0094】
図6は、第2の実施形態に係るブレーキキャリパ12の一部を示す断面図である。
図7は、第2の実施形態のリニアブッシュ82の近傍におけるブレーキキャリパ12の一部を示す断面図である。
【0095】
図7に示すように、第2の実施形態の固定部品24は、マウント60の代わりにマウント200を有する。マウント200は、以下に記載される点を除き、第1の実施形態のマウント60と実質的に等しい。
【0096】
マウント200の内周面62aに、嵌合溝201が設けられる。嵌合溝201は、ガイド穴62の一部である。嵌合溝201は、内周面62aから、径方向の外側に窪む。嵌合溝201は、周方向における内周面62aの全周に亘って設けられる。嵌合溝201は、取付溝65に隣接する。取付溝65は、外面61と嵌合溝201との間に位置する。
【0097】
マウント200は、嵌合溝201の底面201aを有する。底面201aは、中心軸Axcまわりに設けられた略円筒状に形成され、径方向の内側に向く。底面201aの直径は、取付溝65の底面65aの直径よりも小さく、ガイド穴62の内周面62aの直径よりも大きい。
【0098】
第2の実施形態のリニアブッシュ82は、筒状部材81の内側ではなく、嵌合溝201に配置される。外筒91は、嵌合溝201に、例えば圧入により嵌め込まれる。すなわち、外筒91は、ガイド穴62の内部においてマウント60に取り付けられる。外筒91の外面91aは、嵌合溝201の底面201aに接触する。
【0099】
以上説明された第2の実施形態のブレーキキャリパ12において、外筒91は、ガイド穴62の内部においてマウント60に取り付けられる。これにより、ブレーキキャリパ12は、ピン32がマウント60に対して径方向に移動することを抑制できる。
【0100】
以上説明された少なくとも一つの実施形態に係るブレーキキャリパは、一例として、ピストンを、第1の方向と、前記第1の方向の反対の第2の方向と、に移動可能に保持するキャリパボディと、前記キャリパボディを前記第1の方向と前記第2の方向とに移動可能に保持するマウントと、のうち一方であって、表面を有し、前記表面から前記第1の方向に窪んだ穴が設けられた、第1の部材と、前記キャリパボディと前記マウントとのうち他方である、第2の部材と、前記第2の部材に設けられ、前記穴に部分的に収容され、前記穴の内部において当該穴の内周面に囲まれるとともに当該内周面に向く外周面を有する、ピンと、前記穴に嵌め込まれて前記第1の部材に取り付けられるとともに前記穴の内部において前記外周面を囲む嵌合部と、前記嵌合部に接続されて前記穴の外において前記外周面を覆うとともに前記マウントに対する前記キャリパボディの移動に応じて伸縮する伸縮部と、を有し、前記外周面から離間した、ブーツと、前記穴の内部に配置された外筒と、前記外筒と前記外周面との間に配置されるとともに前記ピンが前記第1の方向と前記第2の方向とに移動可能に前記外周面を支持する複数のボールと、を有するリニアブッシュと、を備える。よって、一例としては、ブレーキキャリパは、一般的に合成ゴムのような材料で作られるブーツとピンの外周面との接触を抑制しながら、リニアブッシュによってピンをガイドすることができる。従って、ブレーキキャリパは、時間経過によりブーツが外周面に貼り付いたり、ブーツと外周面との間の潤滑が不足したりすることによる、ピンとブーツとの間の摺動抵抗の増加と、当該摺動抵抗による引き摺りトルクの増加とを抑制できる。さらに、ブレーキキャリパは、リニアブッシュの複数のボールによりピンの外周面を支持するため、ピンの摺動抵抗を低減できる。
【0101】
上記ブレーキキャリパは、一例として、前記嵌合部の少なくとも一部と前記外周面との間に位置して当該嵌合部に取り付けられ、前記外周面を囲み、前記ブーツよりも剛性が高い、筒、をさらに備え、前記嵌合部の少なくとも一部は、前記第1の部材と前記筒との間で圧縮される。よって、一例としては、筒は、ブーツの嵌合部と第1の部材との間の面圧を増大させることができる。従って、ブレーキキャリパは、嵌合部と第1の部材との間をより確実にシールすることができ、塵埃や水分が穴の内部へ侵入してしまうことを抑制できる。
【0102】
上記ブレーキキャリパでは、一例として、前記外筒は、前記筒の内側に位置し、当該筒に取り付けられる。よって、一例としては、筒の剛性が高いため、リニアブッシュの取付が容易となる。また、筒は、例えば加硫接着により嵌合部に取り付けられることができる。しかし、もしリニアブッシュの外筒が筒として加硫接着により嵌合部に取り付けられるとすると、加硫接着における熱及び圧力により変形してしまう虞がある。リニアブッシュは、筒を介して嵌合部に取り付けられることで、嵌合部に容易に固定されることができる。
【0103】
上記ブレーキキャリパでは、一例として、前記外筒は、前記嵌合部と前記外周面との間に配置され、前記嵌合部に支持される。よって、一例としては、リニアブッシュは、嵌合部を弾性変形させることでピンの中心軸と直交する方向に若干移動することができる。従って、ブレーキキャリパは、ピンが第1の部材に対して第1の方向及び第2の方向と直交する方向に若干移動したとしても、ピン及びリニアブッシュに作用する荷重を軽減することができる。
【0104】
上記ブレーキキャリパでは、一例として、前記外筒は、前記穴の内部において前記第1の部材に取り付けられる。よって、一例としては、ブレーキキャリパは、ピンが第1の部材に対して第1の方向及び第2の方向と直交する方向に移動することを抑制できる。
【0105】
以上の説明において、抑制は、例えば、事象、作用、若しくは影響の発生を防ぐこと、又は事象、作用、若しくは影響の度合いを低減させること、として定義される。また、以上の説明において、制限は、例えば、移動若しくは回転を防ぐこと、又は移動若しくは回転を所定の範囲内で許容するとともに当該所定の範囲を超えた移動若しくは回転を防ぐこと、として定義される。
【0106】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各実施形態や各変形例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0107】
12…ブレーキキャリパ、22…ピストン、25…ブーツ、31…キャリパボディ(第2の部材)、32…ピン、52b…第2の外周面(外周面)、60,200…マウント(第1の部材)、61…外面(表面)、62…ガイド穴(穴)、62a…内周面、71…第1の嵌合部(嵌合部)、73…伸縮部、81…筒状部材(筒)、82…リニアブッシュ、91…外筒、93…ボール、D1…第1の方向、D2…第2の方向。