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特開2024-72531情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072531
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/28 20190101AFI20240521BHJP
【FI】
G06F16/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183394
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147164
【弁理士】
【氏名又は名称】向山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】唱 爽
(72)【発明者】
【氏名】浅井 達哉
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 弘治
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175EA03
(57)【要約】
【課題】特定の属性を持つ対象に向けた改善案の策定を支援する。
【解決手段】複数の組合せデータを取得し、複数の選択肢のそれぞれについて、複数の組合せデータのどの選択肢を選択したかを示す情報を、当該選択肢を選択したか否かを示す情報に変換した変換データを生成し、複数の選択肢のそれぞれについて、変換データに基づいて、1以上の属性のうちの当該選択肢を選択することに対して所定基準以上の相関を有する属性および当該属性の値の条件である属性条件を特定し、複数の選択肢のそれぞれについての属性条件に基づいて、異なる2以上の選択肢の属性条件において共通する属性条件を特定し、共通する属性条件に合致する変換データを用いた、1以上の属性および選択肢の間の因果分析の結果に基づき、選択肢の選択結果を改善させる改善案を生成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
それぞれが対象者についての1以上の属性を示す情報と、複数の選択肢の中からの対象者がどの選択肢を選択したかを示す情報と、を含む複数の組合せデータを取得し、
前記複数の選択肢のそれぞれについて、前記複数の組合せデータの前記どの選択肢を選択したかを示す情報を、当該選択肢を選択したか否かを示す情報に変換した変換データを生成し、
前記複数の選択肢のそれぞれについて、前記変換データに基づいて、前記1以上の属性のうちの当該選択肢を選択することに対して所定基準以上の相関を有する属性および当該属性の値の条件である属性条件を特定し、
前記複数の選択肢のそれぞれについての属性条件に基づいて、異なる2以上の選択肢の属性条件において共通する属性条件を特定し、
前記共通する属性条件に合致する前記変換データを用いた、前記1以上の属性および前記選択肢の間の因果分析の結果に基づき、前記異なる2以上の選択肢のいずれか、かつ、前記共通する属性条件に合致する対象者に対する、前記選択肢の選択結果を改善させる改善案を決定する、
処理を実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項2】
前記属性条件を特定する処理は、前記変換データに対する分類処理を実行することで、前記1以上の属性のうちの当該選択肢を選択することに対して所定基準以上の相関を有する属性および当該属性の値の条件である属性条件を特定する、
ことを特徴とする請求項1記載の情報処理プログラム。
【請求項3】
前記複数の組合せデータは、複数の対象者それぞれについての前記1以上の属性を示す情報に基づくシミュレーションにより生成され、
前記コンピュータに、
前記改善案に基づいたデータ値の変更が行われた前記複数の対象者それぞれについての前記1以上の属性を示す情報に基づくシミュレーションの結果を出力し、
前記シミュレーションの結果についての良否判断を受信し、かつ、受信した前記良否判断が、シミュレーション結果が良くない旨の判断結果であった場合、判断結果に対応する前記シミュレーションにより生成された前記複数の組合せデータに基づいて、前記変換データを生成する処理、前記属性条件を特定する処理、前記共通する属性条件を特定する処理、および前記改善案を生成する処理を行う、
処理をさらに実行させることを特徴とする請求項1記載の情報処理プログラム。
【請求項4】
前記決定する処理は、
前記因果分析の結果に基づいて、前記1以上の属性の中から、前記複数の選択肢に含まれる特定の選択肢との因果関係を有する属性を特定し、
特定した前記因果関係を有する属性を改善させる改善案を決定する
処理を含むことを特徴とする請求項1記載の情報処理プログラム。
【請求項5】
前記因果分析は複数の因果分析アルゴリズムを用いて実行され、
前記複数の因果分析アルゴリズムのうち、2以上の所定の数の因果分析アルゴリズムを用いた因果分析において前記特定の選択肢との因果関係を有する属性と判定された属性を、前記特定の選択肢との因果関係を有する属性として特定する、
ことを特徴とする請求項4記載の情報処理プログラム。
【請求項6】
コンピュータが、
それぞれが対象者についての1以上の属性を示す情報と、複数の選択肢の中からの対象者がどの選択肢を選択したかを示す情報と、を含む複数の組合せデータを取得し、
前記複数の選択肢のそれぞれについて、前記複数の組合せデータの前記どの選択肢を選択したかを示す情報を、当該選択肢を選択したか否かを示す情報に変換した変換データを生成し、
前記複数の選択肢のそれぞれについて、前記変換データに基づいて、前記1以上の属性のうちの当該選択肢を選択することに対して所定基準以上の相関を有する属性および当該属性の値の条件である属性条件を特定し、
前記複数の選択肢のそれぞれについての属性条件に基づいて、異なる2以上の選択肢の属性条件において共通する属性条件を特定し、
前記共通する属性条件に合致する前記変換データを用いた、前記1以上の属性および前記選択肢の間の因果分析の結果に基づき、前記異なる2以上の選択肢のいずれか、かつ、前記共通する属性条件に合致する対象者に対する、前記選択肢の選択結果を改善させる改善案を決定する、
処理を実行することを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
それぞれが対象者についての1以上の属性を示す情報と、複数の選択肢の中からの対象者がどの選択肢を選択したかを示す情報と、を含む複数の組合せデータを取得し、
前記複数の選択肢のそれぞれについて、前記複数の組合せデータの前記どの選択肢を選択したかを示す情報を、当該選択肢を選択したか否かを示す情報に変換した変換データを生成する変換部と、
前記複数の選択肢のそれぞれについて、前記変換データに基づいて、前記1以上の属性のうちの当該選択肢を選択することに対して所定基準以上の相関を有する属性および当該属性の値の条件である属性条件を特定する第1特定部と、
前記複数の選択肢のそれぞれについての属性条件に基づいて、異なる2以上の選択肢の属性条件において共通する属性条件を特定する第2特定部と、
前記共通する属性条件に合致する前記変換データを用いた、前記1以上の属性および前記選択肢の間の因果分析の結果に基づき、前記異なる2以上の選択肢のいずれか、かつ、前記共通する属性条件に合致する対象者に対する、前記選択肢の選択結果を改善させる改善案を決定する決定部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人口の高齢化が様々な国で進んでいる。人口の高齢化に伴い、LTC(Long Term Care)サービス等と呼ばれる、高齢者の療養のためのサービス(以降、介護サービスと記載することがある)を必要とする人口も増加している。このような状況に対応するため、国や自治体などでは、高齢者に提供する介護サービスの整備を行っている。
【0003】
従来技術においては、例えば下記非特許文献1のように、シミュレーション技術を用いて、介護サービスの提供計画の改善(例えば、介護サービスの利用における公平性の改善)を図る試みがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-046888号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Shuang C., Wei Y., and Hiroshi D. “Care providers, access to care, and the Long-term Care Nursing Insurance in China: an Agent-based simulation”. Social Science & Medicine, vol.244, pp.112667, 2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した先行技術においては、介護サービスの提供計画の改善を図るために、シミュレーションとシミュレーションの結果の評価が、シミュレーションの条件を変えながら繰り返し行われる。シミュレーションと評価を通して得られる改善案は、評価者の分野特有の知識(ドメイン知識)に基づく案であり、現実には、高齢者(被介護者)全般に対する改善案であることがほとんどである。
【0007】
しかしながら、現実には、被介護者のおかれている状況は一律ではなく、高齢者全般に対する改善案のみでは、介護サービスの提供計画の改善にとって十分とはいえない。その一方で、特定の属性を持つ対象に向けた改善案を、評価者の試行錯誤によって策定することは容易ではない。
【0008】
なお、上述した問題は、介護サービスの提供計画のみならず、複数の人に対する支援施策の検討および改善や、会社、自治体といった組織や集団における福利厚生の整備などでも発生しうる問題である。
【0009】
1つの側面によれば、特定の属性を持つ対象に向けた改善案の策定を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様では、コンピュータに、それぞれが対象者についての1以上の属性を示す情報と、複数の選択肢の中からの対象者がどの選択肢を選択したかを示す情報と、を含む複数の組合せデータを取得し、複数の選択肢のそれぞれについて、複数の組合せデータのどの選択肢を選択したかを示す情報を、当該選択肢を選択したか否かを示す情報に変換した変換データを生成し、複数の選択肢のそれぞれについて、変換データに基づいて、1以上の属性のうちの当該選択肢を選択することに対して所定基準以上の相関を有する属性および当該属性の値の条件である属性条件を特定し、複数の選択肢のそれぞれについての属性条件に基づいて、異なる2以上の選択肢の属性条件において共通する属性条件を特定し、共通する属性条件に合致する変換データを用いた、1以上の属性および選択肢の間の因果分析の結果に基づき、異なる2以上の選択肢のいずれか、かつ、共通する属性条件に合致する対象者に対する、選択肢の選択結果を改善させる改善案を決定する、処理を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
1つの側面によれば、特定の属性を持つ対象に向けた改善案の策定を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】情報処理装置1の機能ブロック図を示す。
図2】記憶部20についての機能ブロック図を示す。
図3】被介護者データ記憶部21に記憶されるデータの一例を示す。
図4】情報処理装置1が実行する一連の処理を示すフローチャートを示す。
図5】結果データの一例を示す。
図6A】変換処理により生成される変換データ230-1を示す。
図6B】変換処理により生成される変換データ230-2を示す。
図6C】変換処理により生成される変換データ230-3を示す。
図7】情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施する実施例について、図面とともに説明をする。なお、本実施例は、発明を実現する態様の一つであり、実施例中の各処理の内容や実行順序等については、発明を実現できる範囲内で適宜変更可能である。
【0014】
〔機能ブロック〕
図1は本実施例の情報処理装置1の機能ブロック図である。なお、情報処理装置1は、例えば、PC(Personal Computer)、やサーバ装置などの情報処理装置である。図1に示すように、情報処理装置1は、機能部として、処理部10と記憶部20を備える。
【0015】
処理部10は、シミュレーション処理部11、変換部12、分類部13、グループ選択部14、因果分析部15、ポリシー決定部16、出力部17を備える。シミュレーション処理部11は、後述するシミュレーション処理を実行する。変換部12、分類部13、グループ選択部14、因果分析部15、ポリシー決定部16は、後述するポリシー決定処理を実行する。出力部17は、各種データの出力を行う。各機能部が実行する処理の詳細、およびシミュレーション処理、ポリシー決定処理の詳細については後述する。
【0016】
図2は、記憶部20についての機能ブロック図である。図2に示すように、記憶部20は、被介護者データ記憶部21、シミュレーションデータ記憶部22、変換データ記憶部23、共通グループデータ記憶部24、ポリシー記憶部25を有する。
【0017】
被介護者データ記憶部21は、シミュレーション処理部11が実行するシミュレーションで用いられるデータを記憶する。シミュレーションデータ記憶部22は、シミュレーション処理部11が実行するシミュレーションで用いられる種々の設定情報や、シミュレーション結果等を記憶する。変換データ記憶部23、共通グループデータ記憶部24、ポリシー記憶部25は、後述するポリシー決定処理で生成、利用される種々のデータを記憶する。
【0018】
図3は、被介護者データ記憶部21に記憶されるデータの一例を示す図である。被介護者データ210は、シミュレーションの対象となる複数の被介護者のそれぞれについて、被介護者の属性を示すデータである。図3に示す、被介護者データ210は、例えば、データ項目として、ID(Identifier)、年齢、性別、介護者、婚姻状況、ADL(Activities of Daily Living)、収入のデータ項目を含むテーブル形式のデータである。
【0019】
被介護者データ210において、IDは、被介護者のそれぞれを一意に識別可能な識別情報である。年齢は被介護者の年齢を示す情報である。性別は被介護者の性別を示す情報である。介護者は、被介護者を介護する人の有無や誰が被介護者を介護するのかを示す情報である。婚姻状況は、被介護者が既婚状態であるか未婚状態であるかを示す情報である。
【0020】
ADLは、被介護者のADLについての評価を示す情報である。ここで、ADLとは被介護者が日常生活を送るために必要な基本的な活動を指す。図3中のデータ項目としてのADLは、例えば、被介護者のADLについての評価を、活動の困難性が高いほど数値が大きくなるような値で示したデータ項目である。収入は、被介護者の属する世帯の世帯収入を示す情報である。
【0021】
なお、図3の被介護者データ210に含まれるデータ項目は一例であり、データ項目については適宜増減があっても構わない。例えば、図3に示されるデータ項目の他に、被介護者の保険の加入状況や、被介護者の健康状態、被介護者の居住地、同居の有無などの情報もデータ項目としてあり得る。被介護者データ210は現実の複数の被介護者の属性を示すデータであってもよいし、実際の人口比率や高齢者についての調査結果などの統計情報に基づいて生成された仮想的なデータであってもよい。
【0022】
〔情報処理装置1が実行する処理の説明〕
図4は、本実施例の情報処理装置1が実行する一連の処理を示すフローチャートである。図4に沿って説明をすると、まずシミュレーション処理部11は、シミュレーション処理を実行する(S401)。本実施例では、前述の非特許文献1に開示されるABM(Agent-based Modelling)を用いたシミュレーション手法を利用する。
【0023】
シミュレーション処理の結果、被介護者データ210のデータ行それぞれに対して、介護サービスの選択結果を示す情報が対応付けられたデータが生成される。以降、このシミュレーション処理の結果生成される、被介護者データ210のデータ行それぞれに対して介護サービスの選択結果を示す情報が対応付けられたデータを「結果データ」と記載することがある。シミュレーション処理部11は、生成された結果データを、シミュレーションデータ記憶部22に記憶する。
【0024】
図5は、結果データの一例を示す図である。図5の結果データ220は、前述の被介護者データ210に対して、選択結果2201のデータ項目を対応付けたテーブル形式のデータである。選択結果2201は、シミュレーション処理によって決定された、被介護者それぞれについての介護サービスの選択結果を示す情報である。
【0025】
図4の説明に戻る。シミュレーション処理部11は、ステップS401で実行したシミュレーションの結果を、出力部17を介して出力する(S402)。例えば、シミュレーション処理部11は、後述する表示装置78の表示画面にシミュレーションの結果を表示する。シミュレーションの結果としては、例えば、年齢や世帯収入ごとの介護サービスの利用割合などの、介護サービス利用の公平性を評価する指標が出力される。介護サービス利用の公平性を評価する指標としては、例えば、特定の介護サービスについて、着目する属性(例えば収入)と、介護サービスの累積利用回数との関係をグラフ表示で出力したデータが挙げられる。なお、累積利用回数に代えて介護サービスの利用頻度や利用割合を出力対象の項目とすることもできる。また、公平性を評価する指標として、収入の違いに応じた、介護サービスの未利用率(いずれの介護サービスも利用していない被介護者の割合)を示すデータなども挙げられる。ここでの説明における収入は、介護サービス利用の公平性を評価において着目する属性の1つの例であり、例えば、被介護者の居住地域など他の属性に置き換えることもできる。
【0026】
次に、シミュレーション処理部11は、図4に示す一連の処理を終了するか否かを判定する(S403)。終了するか否かの判定方法は様々な態様が考えられる。例えば、情報処理装置1が、ステップS402で出力されたシミュレーションの結果に対する良否の判断結果を、シミュレーションの結果の出力先となるユーザから受け付ける。そしてシミュレーション処理部11は、受け付けた判断結果が、シミュレーションの結果が良いとの判断の場合(S403、YES)、図4に示す一連の処理を終了する。一方、受け付けた判断結果が、シミュレーションの結果が良くないとの判断の場合(S403、NO)は、以降でステップS404~S408に分けて説明するポリシー決定処理が実行される。
【0027】
ステップS404において、変換部12は、結果データ220の複製処理と変換処理を実行する(S404)。ステップS404の処理により、結果データ220が変換された変換データが、介護サービスの選択結果ごとに生成される。
【0028】
その後、分類部13は、介護サービスの選択結果ごとに生成された変換データそれぞれについて、変換データの分類処理を実行する(S405)。グループ選択部14は、分類処理の結果に基づいて、共通グループを選択する処理を実行する(S406)。因果分析部15は、共通グループのデータについての因果分析を実行することで、介護サービスのそれぞれについて、選択の主要因となるデータ項目(属性)を特定する(S407)。ポリシー決定部16は、ステップS407で特定された主要因に基づいて、推奨ポリシーを決定する(S408)。ステップS408の処理の後は、決定された推奨ポリシーを用いて、ステップS401で説明したシミュレーション処理が再実行され、また、ステップS402、S403の処理も再実行される。
【0029】
なお、S404~S408のそれぞれの処理や、関連するデータ、用語については、詳細を後述する。
【0030】
〔結果データ220の複製処理と変換処理(ステップS404)の詳細〕
ステップS404の処理の詳細を説明する。変換部12は、まず結果データ220に含まれるデータ項目である選択結果2201のデータ値の種類の数を特定する。例えば、図5に示した結果データ220の場合、データ値は3種類(1、2、3)であるので、変換部12は、結果データ220を3つ複製する。なお、選択結果2201のデータ値の種類の数は、シミュレーション処理において選択された介護サービスの種類の数ということもできる。
【0031】
次に、変換部12は、複製した結果データ220のそれぞれについて変換処理を行う。変換処理は、選択結果2201のデータ値を変更する処理である。具体的には、変換部12は、選択結果2201のデータ値が、各介護サービスを選択したか否かを示す2値のデータとなるように、複製した結果データ220のそれぞれを変換する。
【0032】
図6A図6B図6Cは、変換処理により生成される変換データ230-1、230-2、230-3を示す図である。変換データ230-1は介護サービスが在宅介護の場合についての変換データである。変換データ230-2は介護サービスが老人ホームの場合についての変換データである。変換データ230-3は介護サービスが病院の場合についての変換データである。例えば、変換データ230-1の場合は、結果データ220とは異なり、選択結果231-1が、介護サービスとして在宅介護が選択されたか否かを示す2値データのデータ項目となっている。つまり、介護サービスとして在宅介護が選択された場合(YES)はデータ値が1、介護サービスとして在宅介護以外のサービスが選択された場合(NO)はデータ値が0となるように、データの変換が行われている。同様に、変換データ230-2の場合は介護サービスとして老人ホームが選択されたか否かを、変換データ230-3の場合は介護サービスとして病院が選択されたか否かを示すように、データの変換が行われている。変換部12は、変換処理により生成した変換データ230-1、230-2、230-3を、変換データ記憶部23に記憶する。
【0033】
〔結果データ220の分類処理(ステップS405)の詳細〕
ステップS405の処理の詳細を説明する。分類部13は、変換データ記憶部23に記憶された介護サービスの種類ごとの変換データ230-1、230-2、230-3のそれぞれについて、分類処理を行う。
【0034】
分類部13は、変換データ記憶部23に記憶されたデータのうち、いずれかの介護サービスの種類についての変換データを読み出す。例として、分類部13が変換データ記憶部23から変換データ230-1を読み出したとする。そして分類部13は、読みだした変換データ230-1についての分類処理を実行することで、介護サービス(変換データ230-1の場合は在宅介護)が選択されたことと相関の高い属性値を特定する。ここで属性値とは、データ項目のデータ値の条件あるいはそれらの組合せである。分類処理には、例えば特許文献1に開示される手法を採用することができるが、他の手法を用いることとしてもよい。
【0035】
本実施例においては、変換データ230-1についての分類処理によって、「性別が女性(データ値=1)」、「ADLが4未満」、「世帯収入が2239より高い」という属性値が特定されたこととする。つまり、分類処理の結果によれば、介護サービスとして在宅介護を選択した被介護者は「性別が女性(データ値=1)」、「ADLが4未満」、「世帯収入が2239より高い」という属性値を持つ傾向が高いということになる。なお、以降の説明では、介護サービスの種類ごとの、介護サービスが選択されたことと相関の高い属性値を「属性条件」と記載することがある。例えば、変換データ230-1から得られた属性条件は、「在宅介護の属性条件」と記載することがある。
【0036】
分類部13は、変換データ230-2、230-3についても同様に、介護サービスが選択されたことと相関の高い属性値を特定する。変換データ記憶部23に記憶されたすべての変換データについて分類処理を実行した後、分類部13はステップS405の処理を終了する。
【0037】
〔共通グループの選択(ステップS406)の詳細〕
ステップS406の処理の詳細を説明する。グループ選択部14は、ステップS405の分類処理の結果に基づいて、共通グループを選択(特定)する処理を実行する。ここで共通グループとは、異なる2以上の介護サービスの属性条件の間で共通する属性条件に該当する被介護者の集合である。
【0038】
具体例を用いて説明する。まず、上述のように、在宅介護の属性条件として「性別が女性(データ値=1)」、「ADLが4未満」、「収入が2239より高い」という属性条件が特定されているとする。また、説明のための例として、老人ホームの属性条件として、「性別が女性(データ値=1)」、「ADLが4未満」、「介護者が無し(データ値=5)」という属性条件が特定されているとする。この場合、「在宅介護の属性条件」と「老人ホームの属性条件」との間で共通する属性条件は、「性別が女性(データ値=1)」、「ADLが4未満」、となる。そして、この場合の共通グループは、「性別が女性(データ値=1)」、「ADLが4未満」の条件に該当する被介護者の集合を意味する。
【0039】
例えばグループ選択部14は、上記の例のように、異なる2つの介護サービスの属性条件の間で共通する属性条件を、介護サービスの組合せごとに特定する。そしてグループ選択部14は、特定した属性条件に基づいて、介護サービスの組合せそれぞれについての共通グループを選択する。グループ選択部14は、介護サービスの組合せそれぞれについての共通グループを特定する情報を共通グループデータ記憶部24に記憶する。あるいは、グループ選択部14は、共通グループに該当するデータを変換データ記憶部23から抽出して共通グループデータ記憶部24に記憶することとしてもよい。
【0040】
〔主要因となるデータ項目(属性)の特定(S407)〕
ステップS407の処理の詳細を説明する。因果分析部15は、ステップS406の処理により選択された共通グループのそれぞれに基づいて、介護サービスそれぞれの選択に影響するデータ項目(属性)を特定する。以降の説明では、介護サービスそれぞれの選択に影響するデータ項目(属性)を「主要因」と記載することがある。
【0041】
具体的には、因果分析部15は、ステップS406の処理により特定された共通グループのそれぞれについて、共通グループに対応する変換データを用いて、データ項目間の因果分析を実行する。そして、因果分析部15は、因果分析の結果、各介護サービスの選択との因果関係を有すると判定されたデータ項目を主要因と特定する。
【0042】
因果分析には例えば、PCアルゴリズム(Peter and Clark、PC algorithm)、GFCI(Greedy Fast Causal Inference)、DirectLiNGAM(Linear non-Gaussian acyclic model)等のアルゴリズムが使用可能である。なお、因果分析は単一のアルゴリズムが使用されてもよいし、複数の因果分析アルゴリズムが併用されてもよい。複数の因果分析アルゴリズムを併用する場合には、例えば、因果分析部15は、併用した複数のアルゴリズムのうちの所定の数以上、あるいはすべてのアルゴリズムにおいて主要因と判定されたデータ項目を主要因として特定することとしてもよい。
【0043】
例えば、前述の例示で記載した、共通する属性条件が「性別が女性(データ値=1)」、「ADLが4未満」の共通グループを再度例に挙げる。因果分析によって、介護サービスとして在宅介護を選択することに対して、年齢と収入が因果関係を有すると判定されたとする。この場合、因果分析部15は、属性条件が「性別が女性(データ値=1)」、「ADLが4未満」、の共通グループにおいて、年齢と年収が、在宅介護の選択の主要因であると特定する。
【0044】
このようにして、因果分析部15は、共通グループのそれぞれについて、介護サービスそれぞれの選択についての主要因を特定する。
【0045】
〔推奨ポリシーの決定(S408)〕
ステップS408の処理の詳細を説明する。ポリシー決定部16は、ステップS407の処理の結果に基づいて、推奨ポリシーを決定する。ポリシー決定部16は、共通グループについての属性条件と、介護サービスそれぞれについての選択の主要因とに基づいて、推奨ポリシー決定する。ここで推奨ポリシーとは、介護サービスの提供に関する改善をするための改善案である。
【0046】
例えば、前述の例のように、属性条件が「性別が女性(データ値=1)」、「ADLが4未満」の共通グループにおいて、年齢と年収が、在宅介護の選択の主要因であると特定された場合を考える。この場合、ポリシー決定部16は、例えば、ADLが4未満の女性に対して現金給付を行う、ということを、在宅介護に関連する推奨ポリシーとして決定する。あるいは例えば、主要因が年齢と年収であることを考慮して、ADLが4未満、かつ、年齢が所定以上の女性に対して現金給付を行う、という推奨ポリシーが決定されてもよい。
【0047】
ここで決定されるポリシーは、被介護者に対してのポリシーとは異なり、属性条件に応じた特定のグループに対するポリシーであり、かつ、特定の介護サービスに対するポリシーが決定される。このように、ポリシー決定部16は、共通グループそれぞれについて、主要因に基づく推奨ポリシーを決定する。ポリシー決定部16は、決定した推奨ポリシーをポリシー記憶部25に記憶する。
【0048】
〔シミュレーション処理の再実行〕
ステップS408の処理の後、シミュレーション処理部11は、決定された推奨ポリシーを用いて、シミュレーション処理(S401)を再度実行する。例えば、シミュレーション処理部11は、被介護者データ210に対して推奨ポリシーが適用されたデータを生成し、生成したデータを用いてシミュレーション処理を実行する。具体例として、推奨ポリシーが、ADLが4未満の女性に対して現金給付を行う、というポリシーの場合、シミュレーション処理部11は、被介護者データ210に含まれるデータのうち、「性別が女性(データ値=1)」、「ADLが4未満」の条件を満たすデータ行を特定する。そして、シミュレーション処理部11は、特定したデータ行それぞれの年収のデータ値に所定の値(想定する給付金額に相当する値)を加算することで、推奨ポリシーが適用されたデータを生成する。そして、シミュレーション処理部11は、推奨ポリシーが適用されたデータを用いたシミュレーション処理を実行(S401)し、シミュレーションの結果を出力する(S402)。さらに、シミュレーション処理部11は、ステップS403の判定を行い、判定結果に応じて、ステップS404以降の処理の再実行、または図4に示す一連の処理の終了が選択される。
【0049】
〔本実施例の効果、意義〕
本実施例においては、ポリシー決定のための因果分析に先立って、介護サービスの種類ごとの分類処理と共通グループの選択が実行される。まず、介護サービスの種類ごとに、介護サービスが選択されたことと相関の高い属性値(属性条件)が特定される。これにより、後に実行される因果分析に用いられるデータは、各介護サービスの選択と相関の高いデータが選択されることとなる。加えて、推奨ポリシーも、被介護者全般に対してのものではなく、特定の属性を持つ被介護者に対してより特化したポリシーが生成されるようになる。
【0050】
その上で、上述した共通グループに属するデータが因果分析に用いられる。これにより、因果分析において、介護サービスの種類によらない因果関係(言い換えれば、被介護者全般に共通する一般的な因果関係)の影響が抑制される。そのため、因果分析によって得られる各介護サービスと属性との因果関係は、各介護サービスにより特化したものとなる。
【0051】
さらに、共通グループは複数の介護サービスにおいて介護サービスの選択との相関が高い属性を持つ。共通グループを因果分析の対象とすることで、介護サービスの選択においてより重要な属性を持つ被介護者に対して特化したポリシーが生成されるようになる。
【0052】
以上のことから、情報処理装置1の処理によって決定される推奨ポリシーは、特定の属性を持つ被介護者、あるいは特定の介護サービスに特化したポリシーとなることが期待される。
【0053】
また、従来技術として説明した事例では、シミュレーションとシミュレーションの結果の評価が、シミュレーションの条件を変えながら繰り返し行われる。従来技術においては、改善案は評価者の試行錯誤によって得られるものであり、多数回のシミュレーション、言い換えれば多くのコスト(資金、コンピュータ資源、時間)が必要となる。そのため、介護サービスの提供計画の改善の効率化(コストの抑制)が求められる。本実施例で説明した処理によれば、情報処理装置1がシミュレーション結果に基づいて特定のグループ向けのポリシーを決定するので、より少ない試行回数の中で有用なポリシー(改善案)を得られることが期待される。さらに、得られたポリシーを反映したシミュレーションを再実行して評価をすることができるので、従来技術と比較してより低コストで介護サービスの提供計画の改善を図ることができる。
【0054】
〔ハードウェア構成の一例〕
図7は、本実施例における情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。情報処理装置1は、例えば、それぞれがバス71で相互に接続された、プロセッサ72、メモリ73、記憶装置74、NIC(Network Interface Controller)75、媒体読取装置76、入力装置77、表示装置78を備える情報処理装置である。
【0055】
プロセッサ72は、情報処理装置1における種々の動作制御を行う。メモリ73、記憶装置74は、本実施例で説明した各種の処理を実行するプログラムや、各種の処理に利用される種々のデータを記憶する。プロセッサ72は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア回路の総称である。記憶装置74は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Drive)等の記憶媒体である。
【0056】
プロセッサ72は、メモリ73あるいは記憶装置74に記憶されたプログラムを読み出して処理、制御を実行することで、図1に示す処理部10に含まれる各機能部が実現されてもよい。また、メモリ73、記憶装置74のそれぞれは、図1および図2に記載した記憶部20として機能することができる。なお、本実施例においては、記憶装置74に代えて、情報処理装置1とは異なる外部の記憶装置が記憶部20として機能してもよい。
【0057】
NIC75は、有線または無線のネットワークを介した、他の装置とのデータの送受信に用いられるハードウェアである。
【0058】
媒体読取装置76は、記録媒体からデータを読み取るための装置であり、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等のディスク媒体に記憶されたデータを読み取るディスクドライブや、メモリカードに記憶されたデータを読み取るカードスロット等である。前述した記憶部20に記憶されるデータの一部または全部は、媒体読取装置76を用いて読み取り可能な記録媒体に記憶されることとしてもよい。
【0059】
入力装置77は、情報処理装置1のユーザからの入力や指定を受け付ける装置である。表示装置78は、プロセッサ72の制御の下で、種々の情報の表示を行う。入力装置77の例としては、例えばキーボードやマウス、タッチパッドが挙げられる。また、表示装置78は、例えば液晶ディスプレイである。本実施例においては、例えば、入力装置77の機能と表示装置78の機能とを備えるタッチパネルを用いることとしてもよい。
【0060】
なお本実施例においては、単一の装置である情報処理装置1が各処理を実行することとして説明をしているが、情報処理装置1の各機能部が実行する処理は、複数の情報処理装置で分散して実行されることとしてもよい。また、情報処理装置1がサーバ装置であって、シミュレーション結果の出力や、ユーザによる結果の良否判断の入力が、サーバ装置である情報処理装置1と通信可能なクライアント装置にて行われるといった態様も採用可能である。
【0061】
本実施例においては、具体例として介護サービスの提供計画の策定における適用をレジしたが、本実施例で説明した内容の適用対象は、介護サービスの提供計画に限定されない。例えば、複数の人に対する支援施策の検討および改善や、会社、自治体といった組織や集団における福利厚生の整備など、他の用途に対しても本実施例で説明した技術を適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 情報処理装置
10 処理部
20 記憶部
71 バス
72 プロセッサ
73 メモリ
74 記憶装置
75 NIC
76 媒体読取装置
77 入力装置
78 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7