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  • 特開-リチウムイオン二次電池 図1
  • 特開-リチウムイオン二次電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072532
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20240521BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240521BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240521BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20240521BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/052
H01M4/13
H01M50/451
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183396
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 正人
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H021CC04
5H021EE01
5H021EE04
5H021EE07
5H021EE08
5H021EE10
5H021EE21
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029CJ25
5H029HJ12
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050FA15
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一方に溝を有するリチウムイオン二次電池において、絶縁検査試験を使用した金属不純物の含有の有無の判断が容易であるリチウムイオン二次電池の提供。
【解決手段】正極活物質層及び正極集電体を有する正極及び負極活物質層並びに負極集電体を有する負極が導電層を有するセパレータを介して積層している電極体を備え、前記正極活物質層及び前記負極活物質層が前記セパレータと接触し、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の少なくとも一方が厚さ方向に溝を有し、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の少なくとも一方の前記溝を有する表面と向き合う前記セパレータの表面に前記導電層を有するリチウムイオン二次電池。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質層及び正極集電体を有する正極及び負極活物質層並びに負極集電体を有する負極が導電層を有するセパレータを介して積層している電極体を備え、
前記正極活物質層及び前記負極活物質層が前記セパレータと接触し、
前記正極活物質層及び前記負極活物質層の少なくとも一方が厚さ方向に溝を有し、
前記正極活物質層及び前記負極活物質層の少なくとも一方の前記溝を有する表面と向き合う前記セパレータの表面に前記導電層を有するリチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記正極活物質層が前記溝を有する請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記セパレータが、前記溝と向き合う部分のみに前記導電層を有する請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、軽量で高エネルギー密度が得られることから、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両駆動用電源として広く用いられている。
例えば、特許文献1には、「リチウムを吸蔵・放出することが可能な正極及び負極と、セパレータと、非水系溶媒に電解質を溶解してなる非水系電解液とを備える非水系電解液二次電池に用いられるセパレータにおいて、導電材及びバインダーを含有する導電層を有し、該導電層の見掛け体積抵抗率が1×10-4Ω・cm乃至1×10Ω・cmであり、かつ該導電層の膜厚が5μm未満であることを特徴とする非水系電解液二次電池用セパレータ、及び当該セパレータを備えた非水系電解液二次電池。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5640546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン二次電池において、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一方に金属不純物を含む場合、内部短絡を引き起こすことがある。そのため、金属不純物の含有の有無の判断が容易であることが好ましい。ここで、金属不純物の含有の有無の判断は、例えば絶縁検査試験又はスパイクリーク試験と呼ばれる手法が使用される。
ここでリチウム二次電池において、非水系電解液が電極体に速やかに浸透するように、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一方に溝を形成することがある。この場合、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一方に溝を有するリチウムイオン二次電池において、溝に金属不純物が存在する場合、絶縁検査試験を使用した金属不純物の有無の判断が困難となる場合がある。これは金属不純物と電極との接触面積が小さくなるためである。
【0005】
ここで、本開示が解決しようとする課題は、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一方に溝を有するリチウムイオン二次電池において、絶縁検査試験を使用した金属不純物の含有の有無の判断が容易であるリチウムイオン二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の手段が含まれる。
<1> 正極活物質層及び正極集電体を有する正極及び負極活物質層並びに負極集電体を有する負極が導電層を有するセパレータを介して積層している電極体を備え、
前記正極活物質層及び前記負極活物質層が前記セパレータと接触し、
前記正極活物質層及び前記負極活物質層の少なくとも一方が厚さ方向に溝を有し、
前記正極活物質層及び前記負極活物質層の少なくとも一方の前記溝を有する表面と向き合う前記セパレータの表面に前記導電層を有するリチウムイオン二次電池。
<2> 前記正極活物質層が前記溝を有する<1>に記載のリチウムイオン二次電池。
<3> 前記セパレータが、前記溝と向き合う部分のみに前記導電層を有する<1>又は<2>に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一方に溝を有するリチウムイオン二次電池において、絶縁検査試験を使用した金属不純物の含有の有無の判断が容易であるリチウムイオン二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る電極体の厚さ方向断面を示す概略正面図である。
図2】他の一実施形態に係る電極体の厚さ方向断面を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
<リチウムイオン二次電池>
本開示に係るリチウムイオン二次電池(以下、単に「二次電池」ともいう)は、正極活物質層及び正極集電体を有する正極並びに負極活物質層及び負極集電体を有する負極が導電層を有するセパレータを介して積層している電極体を備え、正極活物質層及び負極活物質層がセパレータと接触し、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一方が厚さ方向に溝を有し、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一方の前記溝を有する表面と向き合うセパレータの表面に導電層を有する。
【0012】
本開示に係る二次電池は、上記構成により、絶縁検査試験を使用した金属不純物の含有の有無の判断が容易となる。その理由は、次の通り推測される。
【0013】
本開示に係る二次電池に含まれるセパレータは、溝を有する正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一方の溝を有する表面と向き合うセパレータの表面に導電層を有する。そのため、溝に金属不純物が含まれる場合であっても、導電層と金属不純物とが接触しやすく、絶縁検査試験を実施した際に金属不純物の有無の判断が容易となる。
【0014】
以下、本開示に係る二次電池の詳細について説明する。
【0015】
(電極体)
電極体は正極活物質層及び正極集電体を有する正極並びに負極活物質層及び負極集電体を有する負極が導電層を有するセパレータを介して積層している。そして、上記正極活物質層及び上記負極活物質層が上記セパレータと接触している。
つまり、正極集電体/正極活物質層/セパレータ/負極活物質層/負極集電体の層構造を有している。なお、「/」は各層の界面を表す。
【0016】
ここで、電極体は、正極活物質層及び負極活物質層の両方が溝を有していてもよい。
この場合、セパレータは、正極活物質層の表面と向き合う面及び負極活物質層の表面と向き合う面の両方(即ち、セパレータの両面)に導電層を有することが好ましい。
【0017】
-正極-
正極は正極活物質層及び正極集電体を有する。
正極集電体としては、例えばアルミニウム箔等が挙げられる。
正極活物質層は正極活物質を含む。正極活物質としては、例えばリチウム遷移金属酸化物(例、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiO、LiCoO、LiFeO、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等)、リチウム遷移金属リン酸化合物(例、LiFePO等)等が挙げられる。
正極活物質層は正極活物質以外に、例えば導電助剤、バインダ等を含み得る。導電助剤としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック又はその他(例、グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0018】
正極活物質層の厚さは特に限定されず、50μm以上250μm以下であることが好ましく、100μm以上200μm以下であることがより好ましく、130μm以上170μm以下であることが更に好ましい。
【0019】
金属不純物の含有の有無の判断を容易とする観点から、正極活物質層は溝を有することが好ましい。
溝の深さは特に限定されないが、正極活物質層の厚さと同一であることが好ましい。
溝の幅は特に限定されないが、0.5mm以上5mm以下であることが好ましく、1mm以上3mm以下であることがより好ましく、2mm以上3mm以下であることが更に好ましい。
溝の形状は特に限定されず、直線状、曲線状等であってもよいが、直線状であることが好ましい。
【0020】
正極活物質層は直線状の溝を一定間隔ごとに複数有し、当該溝はそれぞれ交差していないことが好ましい。
正極活物質層が直線状の溝を複数有する場合、溝の間隔は、50mm以上200mm以下であることが好ましく、70mm以上150mm以下であることがより好ましく、80mm以上120mm以下であることが更に好ましい。
ここで溝の間隔とは、隣接する2つの溝の最短距離を意味する。
【0021】
-負極-
負極は負極活物質層及び負極集電体を有する。
負極集電体としては、例えば銅箔等が挙げられる。
負極活物質層は負極活物質を含む。負極活物質としては、黒鉛系炭素材料;チタン酸リチウム(LiTi12:LTO);Sn;Si系材料等が挙げられる。
負極活物質層は負極活物質以外に、例えばバインダ、増粘剤等を含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0022】
負極活物質層の厚さは特に限定されず、50μm以上250μm以下であることが好ましく、100μm以上200μm以下であることがより好ましく、130μm以上170μm以下であることが更に好ましい。
【0023】
金属不純物の含有の有無の判断を容易とする観点から、正極活物質層に溝を有しない場合は、負極活物質層は溝を有することが好ましい。
ここで、負極活物質層が有する溝の好ましい形態は、既述の正極活物質層が有する溝と同一である。
【0024】
-セパレータ-
セパレータは導電層を有する。そして、当該導電層は、溝を有する正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一方と向き合うセパレータの表面に設けられている。
【0025】
導電層は導電材及びバインダを含むことが好ましい。
導電材としては、金属、炭素材料などが挙げられる。
金属としては、例えば、アルミニウム、タングステン、モリブデン、チタン、タンタル、銅、ニッケル、チタン、鉄、モリブデン、クロム等の金属単体;ステンレス鋼等の合金;などが挙げられる。
炭素材料としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、ニードルコークス、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
バインダとしては、特に限定されず、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
導電層において、バインダに対する導電材の含有量は、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、25質量%以上35質量%以下であることが更に好ましい。
【0026】
導電層の厚さは1μm以上10μm以下であることが好ましく、2μm以上7μm以下であることがより好ましく、3μm以上5μm以下であることが更に好ましい。
【0027】
金属不純物の含有の有無の判断を容易とする観点から、セパレータが、正極活物質層又は負極活物質層が有する溝と向き合う部分のみに導電層を有することが好ましい。
【0028】
セパレータは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から成る多孔質シート(フィルム)の表面に導電層を有することが好ましい。
【0029】
ここで、電極体の態様を図1及び図2を用いて説明する。なお、図1及び図2はあくまで電極体の一例であり、これに限定されることはない。
図1は、一実施形態に係る電極体の厚さ方向断面を示す概略正面図である。
電極体100Aは、図1に示すように、正極活物質層1A及び正極集電体2Aを有する正極10Aと、負極活物質層3A及び負極集電体4Aを有する負極20Aと、が導電層5Aを有するセパレータ30Aを介して積層している。セパレータ30Aは多孔質シート7Aを有する。
図1に示す電極体100Aは、正極活物質層1Aが正極活物質層1Aの厚さ方向に溝6Aを有する。そして、導電層5Aは溝6Aを有する正極活物質層1A側のセパレータ30Aの表面に配置されている。ここで、溝6Aは直線状に概略正面図の観察方向に延びている。
【0030】
図2は、他の一実施形態に係る電極体の厚さ方向断面を示す概略正面図である。
電極体100Bは、図2に示すように、正極活物質層1B及び正極集電体2Bを有する正極10Bと、負極活物質層3B及び負極集電体4Bを有する負極20Bと、が導電層5Bを有するセパレータ30Bを介して積層している。セパレータ30Bは多孔質シート7Bを有する。
図2に示す電極体100Bは、正極活物質層1Bが正極活物質層1Bの厚さ方向に溝6Bを有する。そして、導電層5Bは溝6Bを有する正極活物質層1B側のセパレータ30Bの表面に、かつ、導電層5Bが溝と対向する部分のみ配置されている。ここで、溝6Bは直線状に概略正面図の観察方向に延びている。
【0031】
(非水系電解液)
本開示に係る二次電池は非水系電解液を含有することが好ましい。
非水系電解液は、特に限定されず、従来公知の非水系電解液が使用可能である。
非水電解質は、非水溶媒及び支持塩を含有することが好ましい。非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類や、エーテル類、エステル類等が例示される。支持塩としては、例えばLiPF、LiBF等のリチウム塩が例示される。
【0032】
(二次電池の製造方法)
本開示に係る二次電池は、正極、負極及び導電層を有するセパレータを作製し、これらを積層することで電極体を得た後、電池ケース(外装容器)に電極体を収容することで製造することが好ましい。
【0033】
正極及び負極の作製は、活物質(即ち正極活物質又は負極活物質)及び溶媒を含むスラリーを集電体(即ち正極集電体又は負極集電体)上に塗布し、乾燥することで行うことが好ましい。
ここで、正極活物質層又は負極活物質層に溝を形成する方法としては、上記スラリーを集電体上に塗布及び乾燥して得た正極活物質層又は負極活物質層を部分的に削ることで溝を形成する方法が挙げられる。
【0034】
導電層を有するセパレータの作製は、上記多孔質シートの表面に、導電材、バインダ及び溶媒を含むスラリーを塗布し、乾燥することで行うことが好ましい。
【実施例0035】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0036】
<正極の作製>
以下の手順で正極1及び正極2を作製した。
【0037】
(正極1)
正極活物質(LiNi/3Co/3Mn1/3):導電助剤(アセチレンブラック):バインダ(PVdF)=91:4:4の割合(質量比)でN-メチル-2-ピロリドンを溶媒として混合して正極活物質層形成用スラリーを作製し、アルミ箔に塗布及び乾燥した。そして、塗布後の正極活物質層をレーザーで除去することで、幅100mm×厚さ150μmの直線状の正極活物質層を2mmの間隔ごとに複数有する正極1を得た。直線状の正極活物質層はそれぞれ交差しておらず、それぞれ平行であった。
【0038】
(正極2)
(正極1)において作製した正極活物質層形成用スラリーをアルミ箔に塗布及び乾燥することで正極2を得た。
【0039】
<負極の作製>
以下の手順で負極1及び負極2を作製した。
【0040】
(負極1)
負極活物質(天然黒鉛):バインダ(スチレンブタジエンゴム(SBR)):増粘剤(カルボキシメチルセルロース(CMC))=91:4:4の割合(質量比)で溶媒である水中で混合し、負極活物質層形成用スラリーを作製し、銅箔に塗布及び乾燥することで負極1を得た。
【0041】
(負極2)
(負極1)において作製した負極活物質層形成用スラリーを銅箔に塗布及び乾燥した。そして、塗布後の負極活物質層をレーザーで除去することで、幅100mm×厚さ150μmの直線状の負極活物質層を2mmの間隔ごとに複数有する負極2を得た。直線状の負極活物質層はそれぞれ交差しておらず、それぞれ平行であった。
【0042】
<セパレータの作製>
以下の手順でセパレータ1、セパレータ2及びセパレータ3を作製した。
【0043】
(セパレータ1)
バインダであるポリフッ化ビニリデン、導電材であるカーボンブラック(アセチレンブラック)及び溶剤であるN-メチル-2-ピロリドンを含む導電層形成用スラリーを作製した。なお、導電層形成用スラリー中におけるバインダに対する導電材の含有量は、30質量%とした。
導電層形成用スラリーを多孔質シート(ポリエチレン樹脂から成る多孔質シート)の片側表面に導電層形成用スラリーを塗布し、乾燥することで、厚さ4μmの導電層を有するセパレータを得た。
【0044】
(セパレータ2)
(セパレータ1)において作製した導電層形成用スラリーを、(セパレータ1)において使用したものと同一の多孔質シートに予めマスキングテープ(ポリイミド製)を張っておき、片側表面に塗布し乾燥した。その後、マスキングテープを剥がすることで、幅2mm×厚さ4μmの直線状の導電層を100mmの間隔ごとに複数有するセパレータを得た。直線状の導電層はそれぞれ交差しておらず、それぞれ平行であった。
【0045】
(セパレータ3)
(セパレータ1)において使用したものと同一の多孔質シートをセパレータ3として用意した。
【0046】
<実施例1>
正極1及び負極1を、セパレータ1を介して積層することで電極体を得た。なおこの時、正極活物質層及び負極活物質層がセパレータ1と接触し、かつ、セパレータ1の導電層が正極1側に向くようにした(すなわち図1の状態)。また、金属不純物として直径200μmのステンレス球を正極1の正極活物質層の溝に1つ配置した。
上記手順で作成した電極体を電池ケースに収容し、二次電池を作製した。なお、各例二次電池は同一手順で5つ作製した。
【0047】
<実施例2>
正極1及び負極1を、セパレータ2を介して積層することで電極体を得た。なおこの時、正極活物質層及び負極活物質層がセパレータ2と接触し、かつ、セパレータ2の導電層が正極1側に向くようにし、かつ、正極活物質層の溝と向き合う部分のみに導電層を有するようにした(すなわち図2の状態)。また、金属不純物として直径200μmのステンレス球を正極1の正極活物質層の溝に1つ配置した。
上記手順で作成した電極体を電池ケースに収容し、二次電池を作製した。
【0048】
<実施例3>
正極2及び負極2を、セパレータ1を介して積層することで電極体を得た。なおこの時、正極活物質層及び負極活物質層がセパレータ1と接触し、かつ、セパレータ1の導電層が負極2側に向くようにした(すなわち図1において、1Aを負極活物質層、2Aを負極集電体、3Aを正極活物質層、4Aを正極集電体とした状態)。また、金属不純物として直径200μmのステンレス球を負極2の負極活物質層の溝に1つ配置した。
上記手順で作成した電極体を電池ケースに収容し、二次電池を作製した。
【0049】
<実施例4>
正極2及び負極2を、セパレータ2を介して積層することで電極体を得た。なおこの時、正極活物質層及び負極活物質層がセパレータ2と接触し、かつ、セパレータ2の導電層が負極2側に向くようにし、かつ、負極活物質層の溝と向き合う部分のみに導電層を有するようにした(すなわち図2において、1Bを負極活物質層、2Bを負極集電体、3Bを正極活物質層、4Bを正極集電体とした状態)。また、金属不純物として直径200μmのステンレス球を正極2の負極活物質層の溝に1つ配置した。
上記手順で作成した電極体を電池ケースに収容し、二次電池を作製した。
【0050】
<比較例1>
正極1及び負極1を、セパレータ3を介して積層することで電極体を得た。なおこの時、正極活物質層及び負極活物質層がセパレータ3と接触するようにした。また、金属不純物として直径200μmのステンレス球を正極1の負極活物質層の溝に1つ配置した。
上記手順で作成した電極体を電池ケースに収容し、二次電池を作製した。
【0051】
<比較例2>
正極2及び負極2を、セパレータ3を介して積層することで電極体を得た。なおこの時、正極活物質層及び負極活物質層がセパレータ3と接触するようにした。また、金属不純物として直径200μmのステンレス球を負極2の負極活物質層の溝に1つ配置した。
上記手順で作成した電極体を電池ケースに収容し、二次電池を作製した。
【0052】
<絶縁検査試験(スパイクリーク)試験>
各例で得た二次電池に対してスパイクリーク試験を実施した。具体的には、室温(25℃)環境において、二次電池に対し、電池ケースの厚み方向に6kNの荷重を印加し、正負の外部端子間に1000Vのスパイク電圧を10秒間印加し、リーク電流(絶縁破壊電流)の値を確認した。リーク電流が10mA以上の場合、金属不純物を含有する二次電池であると判断した。そして、各例で作製した5つのセルのうち、3つ以上金属不純物を含有する二次電池であると判断できた場合「合格」とし、金属不純物を含有する二次電池であると判断できた電池が2つ以下である場合「不合格」とした。
【0053】
【表1】
【0054】
表1中、比較例1及び比較例2において「導電層の向き」の項目が「-」と記載している理由はセパレータが導電層を有しないためである。
表1中、「導電層の態様」において「全面」はセパレータの正極側又は負極側表面全体に導電層を有することを意味し、「溝対向部のみ」はセパレータの正極側又は負極側表面のうち、正極活物質層又は負極活物質層が有する溝と向き合う部分のみに導電層を有することを意味する。
表1中、「絶縁検査試験結果」の下欄に記載の「検知数」は、金属不純物を含有する二次電池であると判断できた電池の数を示す。
【0055】
上記結果から、本実施例の二次電池は、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一方に溝を有するリチウムイオン二次電池において、絶縁検査試験を使用した金属不純物の含有の有無の判断が容易であることがわかる。
【符号の説明】
【0056】
1A、1B 正極活物質層
2A、2B 正極集電体
3A、3B 負極活物質層
4A、4B 負極集電体
5A、5B 導電層
6A、6B 溝
7A、7B 多孔質シート
10A、10B 正極
20A、20B 負極
30A、30B セパレータ
100A、100B 電極体
図1
図2