IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理想科学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-吸引装置 図1
  • 特開-吸引装置 図2
  • 特開-吸引装置 図3
  • 特開-吸引装置 図4
  • 特開-吸引装置 図5
  • 特開-吸引装置 図6
  • 特開-吸引装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072545
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】吸引装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20240521BHJP
   B65H 5/22 20060101ALI20240521BHJP
   B41J 11/02 20060101ALI20240521BHJP
   B65H 5/00 20060101ALI20240521BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B65H5/22 C
B41J11/02
B65H5/00 B
B41J2/01 305
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183418
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】窪田 裕人
(72)【発明者】
【氏名】辻野 直人
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕也
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
3F049
3F101
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EB12
2C056EB29
2C056EC12
2C056EC32
2C056FA13
2C056HA33
2C056JB18
2C058AB06
2C058AC07
2C058AF27
2C058AF31
2C058DA13
2C058DA38
2C058DB17
2C058DB19
3F049FB01
3F049LA07
3F049LB03
3F101AB01
3F101AB11
3F101LA07
(57)【要約】
【課題】吸引力の低下を軽減できる吸引装置を提供する。
【解決手段】プラテン31には、複数の吸引穴が形成されている。圧力室33は、プラテン31の各吸引穴に連通している。ファン34は、圧力室33に負圧を生成する。制御部5は、プラテン31の全吸引穴31bの少なくとも一部を間接的に塞ぐように用紙Pを搬送面21b上に配置した状態でファン34により吸引穴31bを清掃するための圧力を圧力室33に生成する清掃動作を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸引穴が形成された吸引穴部材と、
前記複数の吸引穴に連通する圧力室と、
前記圧力室に負圧を生成する圧力生成部と、
前記複数の吸引穴の少なくとも一部を直接または間接的に塞ぐように閉塞部材を配置した状態で前記圧力生成部により前記複数の吸引穴を清掃するための圧力を前記圧力室に生成する清掃動作を実行する制御部と
を備えることを特徴とする吸引装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記吸引穴部材に対向して配置された液滴吐出部のメンテナンス時に前記液滴吐出部から落下した液体を受ける液体受け部を前記閉塞部材として用いて前記清掃動作を実行することを特徴とする請求項1に記載の吸引装置。
【請求項3】
前記吸引穴部材に沿って移動する移動体と、
前記移動体を移動させるモータとをさらに備え、
前記制御部は、前記移動体の移動時における前記モータの負荷が所定の閾値まで低下すると、前記清掃動作を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の吸引装置。
【請求項4】
前記移動体は、複数の吸着穴を有し、前記圧力生成部の駆動により前記吸着穴に発生する吸着力により搬送対象物を保持して搬送するものであり、
前記制御部は、前記搬送対象物を前記閉塞部材として用いて前記清掃動作を実行することを特徴とする請求項3に記載の吸引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エア吸引を行う吸引装置が知られている。例えば、用紙を搬送しつつ、インクジェットヘッドから用紙へインクを吐出して印刷するライン型のインクジェット印刷装置において、エア吸引により用紙を搬送ベルトに吸着させて搬送するための吸引装置が用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
上述のようなインクジェット印刷装置では、多数のベルト穴が形成された搬送ベルトの下に、多数の吸引穴が形成されたプラテンが配置されている。そして、ファンの駆動によりベルト穴および吸引穴を介して空気を吸引し、これによりベルト穴に発生する吸着力により用紙を搬送ベルトに吸着させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-206309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したインクジェット印刷装置では、インクの吐出により発生するインクミストを含む空気がベルト穴および吸引穴を介して吸引されることで、吸引穴にインクが詰まることがある。特に、吸引穴が小さいプラテンでは、吸引穴にインクが詰まりやすい。
【0006】
吸引穴に詰まったインクに、ファンの駆動による十分な圧力がかかれば、その圧力により吸引穴からインクが除去されて詰まりが解消される。しかし、プラテンにおいてまだインクの詰まりがない吸引穴が多く存在している状態では、ファンが駆動されていても、インクの詰まりがない吸引穴が空気の通り道となることで、インクが詰まった吸引穴内のインクにはほとんど圧力がかからない。
【0007】
このため、インクが詰まった吸引穴におけるインクの詰まりが解消されず、吸引装置の吸引力が低下し、結果として搬送ベルトからの用紙の浮きが発生するおそれがある。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、吸引力の低下を軽減できる吸引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の吸引装置は、複数の吸引穴が形成された吸引穴部材と、前記複数の吸引穴に連通する圧力室と、前記圧力室に負圧を生成する圧力生成部と、前記複数の吸引穴の少なくとも一部を直接または間接的に塞ぐように閉塞部材を配置した状態で前記圧力生成部により前記複数の吸引穴を清掃するための圧力を前記圧力室に生成する清掃動作を実行する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吸引装置によれば、吸引力の低下を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。
図2図1に示すインクジェット印刷装置の搬送部の部分拡大平面図である。
図3図2のA-A線に沿った搬送部の部分拡大断面図である。
図4】メンテナンス部がメンテナンス位置に配置された状態を示す図である。
図5】プラテンの吸引穴にインクが詰まった状態を示す図である。
図6】清掃動作によりプラテンの吸引穴に詰まったインクに圧力がかかる様子を示す図である。
図7】清掃動作によりプラテンの吸引穴に詰まったインクが除去された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0013】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る吸引装置が設けられたインクジェット印刷装置の概略構成図である。図2は、図1に示すインクジェット印刷装置の搬送部の部分拡大平面図である。図3は、図2のA-A線に沿った搬送部の部分拡大断面図である。以下の説明において、図1の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。図1において、左から右へ向かう方向が用紙の搬送方向である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、印刷部2と、搬送部3と、メンテナンス部4と、制御部5とを備える。なお、吸引装置は、搬送部3と、制御部5とを備える。
【0016】
印刷部2は、搬送部3により搬送される用紙Pに印刷を行う。印刷部2は、複数のラインヘッド11を備える。本実施の形態では、印刷部2は、4つのラインヘッド11を備える。
【0017】
ラインヘッド11は、用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する。4つのラインヘッド11は、それぞれ異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクを吐出する。4つのラインヘッド11は、搬送部3の上方において、用紙Pの搬送方向(左右方向)に沿って並列して配置されている。各ラインヘッド11は、それぞれ複数のインクジェットヘッド(液滴吐出部に相当)12を有する。
【0018】
ラインヘッド11において、複数のインクジェットヘッド12は、前後方向に沿って千鳥状に配置されている。すなわち、各ラインヘッド11において、前後方向に沿って配列された複数のインクジェットヘッド12が、左右方向における位置を交互にずらして配置されている。
【0019】
インクジェットヘッド12は、後述する搬送ベルト21を挟んで後述するプラテン(吸引穴部材に相当)31に対向して配置されている。インクジェットヘッド12は、後述する搬送ベルト21の搬送面21bに対向する下面である吐出面12aに開口する複数のノズル(図示せず)を有し、ノズルからインクを吐出する。
【0020】
搬送部3は、給紙部(図示せず)から給紙された用紙(搬送対象物に相当)Pを、エア吸引により吸着保持しつつ搬送する。搬送部3は、搬送ベルト(移動体に相当)21と、駆動ローラ22と、従動ローラ23~25と、搬送モータ(モータに相当)26と、吸引部27とを備える。
【0021】
搬送ベルト21は、用紙Pを吸着保持して搬送する。搬送ベルト21は、駆動ローラ22および従動ローラ23~25に掛け渡された環状のベルトである。図2に示すように、搬送ベルト21には、多数のベルト穴(吸着穴に相当)21aが形成されている。搬送ベルト21は、後述する吸引部27のファン34の駆動によりベルト穴21aに発生する吸着力により、搬送面21b上に用紙Pを保持する。搬送面21bは、搬送ベルト21の用紙Pが載置される面であり、駆動ローラ22と従動ローラ23との間の搬送ベルト21の水平部分の上面である。搬送ベルト21は、図1における時計回り方向に回転し、プラテン31に沿って移動(無端移動)することで、搬送面21b上に保持した用紙Pを搬送する。
【0022】
ベルト穴21aは、用紙Pの搬送方向(左右方向)に沿った各列において、所定のピッチで配置されている。また、搬送方向に直交する用紙幅方向(前後方向)に互いに隣接する2列のベルト穴21aが、左右方向に半ピッチ分だけずれるように配置されている。
【0023】
駆動ローラ22は、搬送ベルト21を回転させる。従動ローラ23~25は、駆動ローラ22とともに搬送ベルト21を支持する。従動ローラ23~25は、搬送ベルト21に従動回転する。従動ローラ23は、駆動ローラ22と同じ高さで、駆動ローラ22の左方に配置されている。従動ローラ24,25は、駆動ローラ22および従動ローラ23の下方において、互いに左右方向に離間して、同じ高さに配置されている。
【0024】
搬送モータ26は、駆動ローラ22を回転駆動させることで、搬送ベルト21をプラテン31に沿って移動(無端移動)させる。
【0025】
吸引部27は、エア吸引により用紙Pを搬送ベルト21に吸着させる。吸引部27は、プラテン31と、プラテンプレート32と、圧力室33と、ファン(圧力生成部に相当)34とを備える。
【0026】
プラテン31は、駆動ローラ22と従動ローラ23との間において搬送ベルト21の下側に配置され、搬送ベルト21を摺動可能に支持する板状の部材である。プラテン31は、複数の凹部31aと、複数の吸引穴31bとを有する。
【0027】
凹部31aは、プラテン31の搬送ベルト21側の面である表面(上面)において、裏面(下面)に向かって掘り下げて形成されている。凹部31aは、ファン34の駆動により空気が吸引されて負圧が生成される部分である。凹部31aは、平面視矩形状に形成されている。凹部31aは、左右方向に沿って所定のピッチで配置されている。また、前後方向に互いに隣接する2列の凹部31aが、左右方向に半ピッチ分だけずれるように配置されている。凹部31aの前後方向におけるピッチは、ベルト穴21aの前後方向におけるピッチと等しい。凹部31aは、搬送ベルト21のベルト穴21aが通過する箇所に配置されている。
【0028】
吸引穴31bは、凹部31aおよびベルト穴21aを介して空気を吸引するための穴である。吸引穴31bは、凹部31aの底面の一部からプラテン31の裏面に貫通するように形成されている。吸引穴31bは、各凹部31aの底面に1つずつ開口するように形成されている。吸引穴31bは、ベルト穴21aより平面視面積が小さくなるように形成されている。
【0029】
プラテンプレート32は、プラテン31の下方に配置され、複数のスペーサ36を介してプラテン31を支持する板状の部材である。プラテンプレート32には、ファン34が吸引する空気を通過させるための複数の貫通穴32aが形成されている。貫通穴32aの平面視面積は、ベルト穴21aの平面視面積および吸引穴31bの平面視面積より大きい。
【0030】
圧力室33は、搬送ベルト21のベルト穴21aに吸着力を発生させるための負圧が生成される空間を形成するものである。圧力室33は、駆動ローラ22と従動ローラ23との間において、プラテン31の裏面側(下側)に設けられている。圧力室33は、プラテン31の各吸引穴31bに連通している。圧力室33内の底面上には、インクを吸収するインク吸収シート(図示せず)が配置されている。
【0031】
ファン34は、圧力室33から排気して圧力室33に負圧を生成する。これにより、ファン34は、吸引穴31bおよびベルト穴21aを介して空気を吸引してベルト穴21aに吸着力を発生させ、用紙Pを搬送ベルト21に吸着させる。
【0032】
メンテナンス部4は、インクジェットヘッド12のメンテナンスを行う。メンテナンス部4は、インクジェット印刷装置1の印刷動作時には、図1に示すメンテナンス部4の位置である退避位置に配置される。また、メンテナンス部4は、インクジェットヘッド12のメンテナンス時には、図4に示すメンテナンス部4の位置であるメンテナンス位置に配置される。メンテナンス部4は、図示しないモータにより移動可能に構成されている。
【0033】
メンテナンス部4は、インク受け部(液体受け部に相当)41と、インクジェットヘッド12の吐出面12aをワイプする複数のワイパ(図示せず)とを備える。
【0034】
インク受け部41は、インクジェットヘッド12のメンテナンス時にワイパによる吐出面12aのワイプによりインクジェットヘッド12から落下したインクを受けるものである。メンテナンス部4がメンテナンス位置に配置されている状態では、インク受け部41は、搬送ベルト21の搬送面21b上に配置され、搬送面21bの各ベルト穴21aを塞いでいる。
【0035】
制御部5は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部5は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0036】
具体的には、制御部5は、搬送部3により用紙Pをしつつ、各インクジェットヘッド12からインクを吐出して用紙Pに印刷するよう制御する。
【0037】
また、制御部5は、プラテン31の全吸引穴31bの少なくとも一部を間接的に塞ぐように用紙Pを搬送面21b上に配置した状態でファン34により吸引穴31bを清掃するための圧力(負圧)を圧力室33に生成する清掃動作を実行する。
【0038】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0039】
印刷ジョブが入力されると、制御部5は、搬送モータ26の駆動を開始させる。これにより、駆動ローラ22の駆動が開始される。また、制御部5は、ファン34の駆動を開始させる。
【0040】
駆動ローラ22の駆動により、搬送ベルト21は、図1における時計回り方向に回転し、駆動ローラ22と従動ローラ23との間において用紙Pの搬送方向に移動する。搬送ベルト21が回転すると、ベルト穴21aがプラテン31の凹部31aの上を左から右へ通過して行く。
【0041】
一方、ファン34の駆動により、圧力室33からの排気が行われると、圧力室33内に負圧が生成される。
【0042】
プラテン31の凹部31aは、吸引穴31bおよびプラテンプレート32の貫通穴32aを介して圧力室33に連通されている。このため、圧力室33内に負圧が生成されると、ベルト穴21aが重なっておらず搬送ベルト21により閉塞された凹部31aには負圧が生成される。ベルト穴21aが重なっている凹部31aは、ベルト穴21aにより大気開放され、負圧は生成されていない状態になる。
【0043】
駆動ローラ22およびファン34の駆動開始後、給紙部(図示せず)から搬送部3に用紙Pが給紙されると、給紙された用紙Pにより、一部のベルト穴21aが覆われる。用紙Pに覆われたベルト穴21aが重なる凹部31aは搬送ベルト21および用紙Pによって閉塞されるので、当該凹部31aは負圧状態となる。これにより、ベルト穴21aに吸着力が発生し、用紙Pがベルト穴21aに吸着される。
【0044】
搬送ベルト21は、用紙Pに覆われたベルト穴21aに発生した吸着力により、用紙Pを搬送面21b上に吸着保持する。搬送ベルト21は、図1における時計回り方向に回転することで、吸着保持した用紙Pを右方向に搬送する。
【0045】
制御部5は、印刷ジョブに基づき、搬送ベルト21により搬送される用紙Pにインクを吐出して画像を印刷するよう各インクジェットヘッド12を制御する。印刷された用紙Pは、排紙部(図示せず)により排紙される。
【0046】
上述のような印刷動作中において、インクジェットヘッド12からのインクの吐出により、インクミストが発生する。発生したインクミストの一部は、搬送される用紙P間の領域において、ベルト穴21a、プラテン31の凹部31a、吸引穴31b、プラテンプレート32の貫通穴32aを介して圧力室33へ空気とともに吸引される。
【0047】
このようにインクミストが吸引されることで、図5に示すように、平面視面積が比較的小さい穴である吸引穴31bに、インクミストが液化したインク51が詰まることがある。
【0048】
吸引穴31bに詰まったインク51に十分な圧力がかかれば、その圧力により吸引穴31bからインク51が除去されて詰まりが解消される。しかし、プラテン31においてまだインクの詰まりがない吸引穴31bが多く存在している状態では、ファン34が駆動されていても、図5に示すように、インクの詰まりがない吸引穴31bが空気の通り道となる。このため、インクが詰まった吸引穴31b内のインク51にはほとんど圧力がかからない。
【0049】
このため、インク51が詰まった吸引穴31bにおけるインク51の詰まりが解消されないために吸引部27の吸引力が低下し、結果として搬送ベルト21からの用紙Pの浮きが発生するおそれがある。
【0050】
これに対し、インクジェット印刷装置1では、吸引穴31bに詰まったインク51を除去するための清掃動作を行う。
【0051】
上記清掃動作について説明する。
【0052】
印刷動作中において、上述のような吸引穴31bの詰まりによる吸引部27の吸引力の低下が生じると、搬送ベルト21とプラテン31との間の摩擦力が低下する。これにより、搬送モータ26の負荷(負荷電流値)が低下する。そこで、制御部5は、印刷動作中における搬送ベルト21の移動時の搬送モータ26の負荷が所定の閾値まで低下すると、清掃動作を実行する。ここで、搬送モータ26の負荷の閾値は、吸引部27の吸引力の低下により搬送ベルト21からの用紙Pの浮きが発生しうる、吸引穴31bの清掃が必要な状況における搬送モータ26の負荷として、実験等に基づき設定された値である。
【0053】
制御部5は、印刷動作中において搬送モータ26の負荷が閾値まで低下すると、搬送モータ26を制御して用紙Pを搬送ベルト21の搬送面21b上に停止させる。
【0054】
搬送面21b上に停止した用紙Pに塞がれたベルト穴21aが重なる凹部31aの吸引穴31bは、用紙Pにより間接的に塞がれた状態となる。なお、このように吸引穴31bが用紙Pにより間接的に塞がれている(用紙Pが吸引穴31bを間接的に塞ぐ)ことを、単に、吸引穴31bが用紙Pに塞がれている(用紙Pが吸引穴31bを塞ぐ)と記述することがある。
【0055】
用紙Pが、プラテン31のすべての吸引穴31bを塞ぐことが可能なサイズであれば、制御部5は、すべての吸引穴31bを塞ぐ位置に用紙Pを停止させる。ここで、制御部5は、用紙Pの搬送方向における搬送部3の上流側に設けられた用紙センサ(図示せず)が用紙Pの先端を検出したタイミングに基づき、用紙Pの停止位置を制御する。
【0056】
用紙Pがすべての吸引穴31bを塞ぐことはできないサイズであれば、制御部5は、用紙Pに塞がれる吸引穴31bの割合である閉塞割合が所定値以上となる位置に用紙Pを停止させる。用紙Pのサイズに応じて、複数の用紙Pを停止させてもよい。ここで、閉塞割合の所定値は、ファン34の駆動により吸引穴31bに詰まったインク51を除去可能な閉塞割合の下限値として、実験等に基づき設定された値である。
【0057】
次いで、制御部5は、吸引穴31bを清掃するための圧力(負圧)である清掃用圧力を圧力室33に生成するようファン34を制御する。ここで、清掃用圧力は、吸引穴31bに詰まったインク51のメニスカスを破壊できる圧力として予め設定されたものである。
【0058】
上述のように搬送面21b上に用紙Pを停止させた状態で圧力室33に清掃用圧力を生成することで、プラテン31の下面および圧力室33の内壁面に均一に圧力がかかり、図6に示すように、吸引穴31bに詰まったインク51にも圧力がかかる。そして、吸引穴31bに詰まったインク51のメニスカスが破壊されることで、図7に示すように、吸引穴31bからインク51が除去され、インク51の詰まりが解消する。吸引穴31bから除去されたインク51は、プラテンプレート32の貫通穴32aから落下し、圧力室33内の底面上のインク吸収シートに吸収される。
【0059】
制御部5は、清掃用圧力の生成を開始してから所定の清掃時間が経過すると、清掃動作を終了する。具体的には、制御部5は、圧力室33の圧力(負圧)が用紙搬送時(印刷動作時)の圧力となるようファン34を制御するとともに、搬送部3により用紙Pを搬送させ、排紙部により排紙させる。
【0060】
なお、清掃用圧力および清掃時間の少なくともいずれかを、用紙Pのサイズに応じた閉塞割合に応じて調整してもよい。
【0061】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、制御部5は、プラテン31の全吸引穴31bの少なくとも一部を塞ぐように用紙Pを搬送面21b上に配置した状態でファン34により清掃用圧力を圧力室33に生成する清掃動作を実行する。これにより、吸引穴31bのインクの詰まりを解消できるので、吸引部27の吸引力の低下を軽減できる。この結果、搬送ベルト21からの用紙Pの浮きの発生を抑制できる。
【0062】
また、制御部5は、搬送ベルト21の移動時の搬送モータ26の負荷が閾値まで低下すると、清掃動作を実行する。これにより、吸引部27の吸引力の低下が生じた適切なタイミングで清掃動作を実行できる。
【0063】
また、制御部5は、吸引穴31bの少なくとも一部を塞ぐ閉塞部材として用紙Pを用いて清掃動作を実行する。このため、専用の閉塞部材を新たに設けることなく、吸引穴31bの清掃を実現できる。
【0064】
なお、上述した実施の形態では、清掃動作において、用紙Pを搬送面21b上に停止させたが、用紙Pを搬送しつつ清掃動作を行ってもよい。この場合において、制御部5は、搬送モータ26の負荷に基づき、清掃動作を終了するタイミングを判断してもよい。例えば、搬送モータ26の負荷がインクジェット印刷装置1の製品出荷時と同じ値になったら清掃動作を終了するようにしてもよい。これにより、過度に長時間の清掃動作を行うことを回避できる。
【0065】
また、上述した実施の形態では、閉塞部材として用紙Pを用いたが、インク受け部41を閉塞部材として用いてもよい。この場合、制御部5は、メンテナンス部4をメンテナンス位置に配置して清掃動作を実行する。このようにしても、専用の閉塞部材を新たに設けることなく、吸引穴31bの清掃を実現できる。ここで、インク受け部41は、プラテン31の全吸引穴31bを塞ぐことはできないが所定値以上の閉塞割合となる大きさであってもよい。
【0066】
また、閉塞部材として専用の部材を用いてもよい。例えば、専用のシートを搬送面21b上に配置して清掃動作を行うようにしてもよい。
【0067】
また、上述した実施の形態では、搬送ベルト21の移動時の搬送モータ26の負荷が閾値まで低下すると清掃動作を実行したが、清掃動作を実行するタイミングはこれに限らない。例えば、所定期間ごとに定期的に清掃動作を実行してもよいし、所定の印刷枚数ごとに清掃動作を実行してもよい。
【0068】
また、上述した実施の形態では、インクによる吸引穴31bの詰まりを清掃動作により解消する例を示した。しかし、清掃動作は、インク以外のものによる吸引穴31bの詰まりも解消可能なものである。例えば、清掃動作により、紙粉による吸引穴31bの詰まりを解消することも可能である。
【0069】
また、上述した実施の形態では、清掃動作の際、閉塞部材としての用紙Pによりベルト穴21aを塞ぐことで、間接的に吸引穴31bを塞いだ。しかし、搬送ベルト21を取り外し、吸引穴31bを直接塞ぐことができる閉塞部材をプラテン31上に配置して清掃動作を行うようにしてもよい。
【0070】
また、上述した実施の形態では、吸引部27の吸引力により搬送ベルト21に用紙Pを吸着させるインクジェット印刷装置1について説明した。しかし、これに限らず、吸引穴部材に形成された複数の吸引穴を介してエア吸引を行う吸引装置であればよい。また、吸引穴部材に沿って移動する移動体は、用紙Pを搬送する搬送ベルト21に限らない。また、移動体は、搬送対象物の搬送を行うためのものに限らない。
【0071】
また、インクジェットヘッド以外の液滴吐出部を備える液滴吐出装置に設けられる吸引装置にも本発明は適用可能である。このような吸引装置において、液滴吐出部のメンテナンス時に液滴吐出部から落下した液体を受ける液体受け部を閉塞部材として用いてもよい。
【0072】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0073】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0074】
(付記1)
複数の吸引穴が形成された吸引穴部材と、
前記複数の吸引穴に連通する圧力室と、
前記圧力室に負圧を生成する圧力生成部と、
前記複数の吸引穴の少なくとも一部を直接または間接的に塞ぐように閉塞部材を配置した状態で前記圧力生成部により前記複数の吸引穴を清掃するための圧力を前記圧力室に生成する清掃動作を実行する制御部と
を備えることを特徴とする吸引装置。
【0075】
(付記2)
前記制御部は、前記吸引穴部材に対向して配置された液滴吐出部のメンテナンス時に前記液滴吐出部から落下した液体を受ける液体受け部を前記閉塞部材として用いて前記清掃動作を実行することを特徴とする付記1に記載の吸引装置。
【0076】
(付記3)
前記吸引穴部材に沿って移動する移動体と、
前記移動体を移動させるモータとをさらに備え、
前記制御部は、前記移動体の移動時における前記モータの負荷が所定の閾値まで低下すると、前記清掃動作を実行することを特徴とする付記1または2に記載の吸引装置。
【0077】
(付記4)
前記移動体は、複数の吸着穴を有し、前記圧力生成部の駆動により前記吸着穴に発生する吸着力により搬送対象物を保持して搬送するものであり、
前記制御部は、前記搬送対象物を前記閉塞部材として用いて前記清掃動作を実行することを特徴とする付記3に記載の吸引装置。
【符号の説明】
【0078】
1 インクジェット印刷装置
2 印刷部
3 搬送部
4 メンテナンス部
5 制御部
11 ラインヘッド
12 インクジェットヘッド
21 搬送ベルト
21a ベルト穴
21b 搬送面
22 駆動ローラ
23~25 従動ローラ
26 搬送モータ
27 吸引部
31 プラテン
31a 凹部
31b 吸引穴
32 プラテンプレート
32a 貫通穴
33 圧力室
34 ファン
41 インク受け部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7