(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007255
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】スプロケット
(51)【国際特許分類】
F16H 55/30 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
F16H55/30 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108629
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】清水 章一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 優太
【テーマコード(参考)】
3J030
【Fターム(参考)】
3J030BA07
3J030BB17
3J030CA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】チェーンとスプロケットの噛み合い時の接触、着座による衝撃や打撃音を軽減するだけでなく、クッションリングをスプロケット本体の側面に固定する際の条件の設定が簡易なスプロケットを提供する。
【解決手段】スプロケット100は、複数の歯が周面に形成されたスプロケット本体101と、スプロケット本体101の少なくとも一方の側面に設けられ、外周面がチェーンのリンクプレートと接触するクッションリング120とを有するスプロケット100において、クッションリング120は、スプロケット本体101に対し接着層を介さずに固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の歯が周面に形成されたスプロケット本体と、当該スプロケット本体の少なくとも一方の側面に設けられ外周面がチェーンのリンクプレートと接触するクッションリングとを有するスプロケットにおいて、
前記クッションリングは、前記スプロケット本体に対し接着層を介さずに固定されていることを特徴とするスプロケット。
【請求項2】
前記クッションリングが熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のスプロケット。
【請求項3】
前記スプロケット本体の側面には、当該側面に対して凹である側面側凹部が形成され、当該側面側凹部には前記熱可塑性樹脂が充填されていることを特徴とする請求項2記載のスプロケット。
【請求項4】
前記側面側凹部は、前記スプロケット本体の両側面を貫通する貫通孔であることを特徴とする請求項3記載のスプロケット。
【請求項5】
前記クッションリングは、前記スプロケット本体の前記両側面にそれぞれ設けられ、かつ、前記側面を貫通する前記貫通孔が形成されており、
各クッションリングは、当該貫通孔内に充填された前記熱可塑性樹脂により互いに接続されていることを特徴とする請求項4記載のスプロケット。
【請求項6】
前記貫通孔が複数形成されていることを特徴とする請求項4記載のスプロケット。
【請求項7】
前記貫通孔は、当該金型内に熱可塑性樹脂を注入するための金型に形成されたゲート穴と同位相となるように形成されていることを特徴とする請求項3記載のスプロケット。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項2記載のスプロケット。
【請求項9】
前記スプロケット本体に連続して形成されたボス部の外周面に、当該外周面に対して凹であるボス部側凹部が形成され、当該ボス部側凹部には前記熱可塑性樹脂が充填されていることを特徴とする請求項2記載のスプロケット。
【請求項10】
前記ボス部側凹部と前記側面側凹部とを連続して設けることを特徴とする請求項9記載のスプロケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプロケット本体の周面にチェーンのピン、ブシュあるいはローラと噛み合う複数の歯が形成され、スプロケット本体の側面に外周面がチェーンのリンクプレートと接触するクッションリングを有するスプロケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、チェーンを駆動側および従動側の少なくとも2つのスプロケットに掛架して動力を伝達するチェーン伝動装置が広く使用されており、いずれの用途においても騒音レベルを低減させることが望まれている。
【0003】
特に、チェーンがスプロケットに噛み合い始める時に生じる、ピン、ブシュあるいはローラとスプロケットの歯との接触、着座による打撃音は、騒音の大きな要因となっており、これを低減することがチェーン伝動装置の課題となっている。
【0004】
また、ピン、ブシュあるいはローラとスプロケットの歯との噛み合い始めの接触、着座による衝撃が振動の要因となる他、チェーンやスプロケットの破損や摩耗の要因となり耐久性を低下させるなどの問題もあった。
【0005】
このようなチェーンとスプロケットの噛み合い時の接触、着座による衝撃や打撃音を軽減するため、スプロケット本体の周面にチェーンのピン、ブシュあるいはローラと噛み合う複数の歯が形成され、スプロケット本体の側面に外周面がチェーンのリンクプレートと接触するクッションリングを有するスプロケットが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、クッションリングは、一般的に架橋ゴムなどの熱硬化性樹脂からなるが、このようなゴムからなるクッションリングと金属であるスプロケット本体の側面に固定する固定時の条件の設定が困難である。具体的には、まず、被着材の表面を洗浄し異物を取り除いた後、サンドブラストなどで表面処理を行う。その後、加硫接着剤をスプロケット本体に塗布し、金型を用いて加熱しながら加硫成形を行いクッションリングを固定するが、この接着剤を塗布するための前処理及び接着処理そのものや加硫成形処理時の工程管理の設定が難しい。また最後に金型を外してバリ取りを行うが、熱硬化性樹脂を使って加硫成形する場合、金型間(もしくは金型と他の構造物との間)にバリが形成されやすいためバリ取り処理も煩雑である。したがって、ゴム等の熱硬化性樹脂からなるクッションリングの場合、製造工程が煩雑であると言える。
【0008】
また、ゴムのような熱硬化性樹脂は再利用できないため、スプールやゲートまでのランナー部がすべて硬化されてしまい、廃却資材が増える課題があった。
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的はチェーンとスプロケットの噛み合い時の接触、着座による衝撃や打撃音を軽減するだけでなく、クッションリングをスプロケット本体の側面に固定する際の条件の設定が簡易なスプロケットを提供することとにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のスプロケットは、複数の歯が周面に形成されたスプロケット本体と、当該スプロケット本体の少なくとも一方の側面に設けられ外周面がチェーンのリンクプレートと接触するクッションリングとを有するスプロケットにおいて、前記クッションリングは、前記スプロケット本体に対し接着層を介さずに固定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のスプロケットは、クッションリングがスプロケット本体に対して接着層を介さずに固定されていることから、チェーンとスプロケットの噛み合い時の接触、着座による衝撃や打撃音を軽減したうえで、クッションリングをスプロケット本体の側面に固定する際の条件の設定が簡易である。
【0012】
前記クッションリングが熱可塑性樹脂からなることが好ましい。熱可塑樹脂からなることで、接着剤を介さずにスプロケット本体に固定することが可能である。
【0013】
前記スプロケット本体の側面には、当該側面に対して凹である側面側凹部が形成され、当該側面側凹部には前記熱可塑性樹脂が充填されていることが好ましい。側面側凹部が形成されることで、クッションリングが強固に固定され、防振効果を高めることが可能である。
【0014】
前記側面側凹部は、前記スプロケット本体の両側面を貫通する貫通孔であるこが好ましい。貫通孔が形成されることで、クッションリングが強固に固定され、防振効果を高めることが可能である。
【0015】
前記クッションリングは、前記スプロケット本体の前記両側面にそれぞれ設けられ、かつ、前記側面を貫通する前記貫通孔が形成されており、各クッションリングは、当該貫通孔内に充填された前記熱可塑性樹脂により互いに接続されていることが好ましい。各クッションリングが貫通孔内に充填された前記熱可塑性樹脂により互いに接続されていることで、クッションリングが強固に固定され、防振効果を高めることが可能である。
【0016】
前記貫通孔が複数形成されていることが好ましい。貫通孔が複数形成されていることで、よりクッションリングが強固に固定され、防振効果を高めることが可能である。
【0017】
前記貫通孔は、当該金型内に熱可塑性樹脂を注入するための金型に形成されたゲート穴と同位相となるように形成されていることが好ましい。貫通孔がゲート穴と同位相となるように形成されていることで、貫通孔にも好ましく熱可塑性樹脂を充填でき、特にクッションリングをスプロケット本体の両側面に設ける場合に裏面側まで効率よく好ましく熱可塑性樹脂を流入せしめることが可能である。
【0018】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂であることが特に好ましい。
【0019】
前記スプロケット本体に連続して形成されたボス部の外周面に、当該外周面に対して凹であるボス部側凹部が形成され、当該ボス部側凹部には前記熱可塑性樹脂が充填されていることが好ましい。ボス部側凹部には前記熱可塑性樹脂が充填されていることで、クッションリングが強固に固定され、防振効果を高めることが可能である。
【0020】
前記ボス部側凹部と前記側面側凹部とを連続して設けることが好ましい。前記側面側凹部とボス部側凹部とに前記熱可塑性樹脂が充填されていることで、クッションリングがより強固に固定され、防振効果を高めることが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のスプロケットは、チェーンとスプロケットの噛み合い時の接触、着座による衝撃や打撃音を軽減するだけでなく、接着層を介さずにクッションリングをスプロケット本体の側面に固定するので、製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のスプロケットの構成の概略を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すスプロケット本体とクッションリングとの関係を示す分解斜視図である。
【
図3】
図1に示すスプロケット本体の正面図である。
【
図4】(1)(2)成型工程におけるスプロケットの貫通孔近辺の断面図である。
【
図6】(1)別のスプロケット本体を示す斜視図、(2)別のスプロケット本体を示す正面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のスプロケットの実施形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態では、同じ構成要素をその位置により区別して説明する際にはそれぞれアルファベットを付して区別する。
【0024】
図1~
図4に示すように、本発明の第1実施形態であるスプロケット100は、周面に複数の歯先111と歯底112を有する歯110が形成されたスプロケット本体101と、スプロケット本体101の各側面102に設けられ、円筒状をなす外周面がチェーンのリンクプレートと接触するクッションリング120(120A、120B)と、スプロケット本体101から延設されたボス部103とを有している。
【0025】
クッションリング120は、接着層を介することなく、側面102に密着した状態で固定されている。また、クッションリング120は、スプロケット本体101のボス部103の外周面104にも密着した状態で固定されている。本実施形態のスプロケット本体101は、鋼等の金属、セラミック、樹脂等いかなる材料から構成されていても良く、それらの複合材料であってもよい。
【0026】
本実施形態では、クッションリング120は、熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂としては、クリープ力が高くゴム弾性を持つ熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂を使うことによって、スプールやゲートまでのランナー部をリサイクルすることも可能となり、省資源化につなげることが可能である。なお、本発明においては、「樹脂」にはゴム及びエラストマーが含まれる。このような熱可塑性樹脂としては、耐熱温度が高く(例えば100℃以上)、かつ、耐油性(耐油試験後の体積変化率)に優れ(例えば50%以下、好ましくは30%以下)、かつ、圧縮永久歪が少ない(例えば80%以下)ものが好ましく、例えばこのような熱可塑性樹脂としてはポリエステル系樹脂、特にポリエステル系エラストマーが好ましい。このようなポリエステル系エラストマーとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT: (C12H12O4)n)及びポリエーテールを用いた熱可塑性エラストマー、アクリルゴムとポリオレフィンまたはポリエステルとからなる熱可塑性エラストマーであることが好ましい。本実施形態では、アクリルゴムとポリエステルからなる熱可塑性エラストマー(日油製商品名ノフアロイ(登録商標)TZ660)を用いている。この熱可塑性エラストマーは耐熱温度が150℃以上で、かつ、耐油性(IRM903オイル150℃、72Hr浸漬後)が10%以下、25%圧縮永久歪(150℃、24Hr)が60%以下であるので、より好ましく用いることができる。
【0027】
従来は、ゴム製のクッションリングを、スプロケット本体へのブラスト及び接着剤塗布をしたのちに成形加硫処理を行ってスプロケット本体に固定していたが、本実施形態では、ゴムに比べて収縮率が高い熱可塑性樹脂を用いてクッションリング120を形成したことから、接着剤を用いずにスプロケット本体101にクッションリング120を固定することができる。このため、接着剤を塗布するための前処理及び接着処理が不要である。また、熱可塑性樹脂を用いてクッションリング120を形成したことで、ゴムを用いる場合よりも、長期に渡ってクッション性が得られて騒音・振動を低減できる。
【0028】
また、クッションリング120の材料として熱可塑性樹脂を用いることで、ゴム等の熱硬化性樹脂ではできないマテリアルリサイクルが可能である。さらには、熱可塑性樹脂は、温度依存性、エンジン内の過酷条件も耐えうる耐熱老化性及び耐油性を保持しているため、変形が少ないという利点を有するため、好ましく用いることができる。
【0029】
また、ゴムを用いる場合の成形加硫処理は処理時間が長いが、後述のように本実施形態では射出成形により形成しているので処理時間が短く、かつ、成形加硫における複雑な工程条件を設定する必要がない。また、ゴムを用いる場合には、成形加硫処理において金型間でのバリが多く発生するが、熱可塑性樹脂を用いてクッションリング120を形成する場合には、射出成形により形成するのでバリの発生を抑制でき、バリの除去時間が短い。
【0030】
スプロケット本体101の側面102には、それぞれ側面102を貫通する貫通孔130が形成されている。当該貫通孔130は、本実施形態ではクッションリング120の形成時に用いられるものであり、詳しくは後述する。
【0031】
貫通孔130の形状は、正面視において円形状である。貫通孔130は、本実施形態では5個形成されている。貫通孔の形状、個数についてはとくに限定されないが、後述するようにクッションリング120を構成する熱可塑性樹脂の種類に応じて設定することが可能であり、例えば加熱した熱可塑性樹脂の流動性が低い(粘性が高い)ものであれば、孔径を大きくして金型200B側に熱可塑性樹脂が流入しやすくなるように構成してもよいし、また、貫通孔130を大きくすることで接続部121(後述する)が大きく形成されるようにすることでクッションリング120Aとクッションリング120Bとを強固に接続するようにしてもよい。
【0032】
ここで、スプロケット本体101の両側の側面102にクッションリング120を形成する工程について説明する。
【0033】
初めに、成形工程を行う。成形工程は、熱可塑性樹脂の射出成形を行う工程である。
図4(1)で示すように、成型工程では、スプロケット本体101の側面102のそれぞれにクッションリング120の所望の形状に沿って構成された金型200A、200Bを設置する。金型200は側面102側及びボス部103の外周面104に接する面は開放されている。また、金型200Aにはゲート穴201が形成されている。このゲート穴201は貫通孔130とは同一位相位置にある。すなわち、貫通孔130とゲート穴201とは正面視において対向するように貫通孔130はスプロケット本体101にそれぞれ設けられている。
【0034】
そして、その金型200A内に加熱されて溶融された熱可塑性樹脂Eをゲート穴201に注入する。この時に、金型200Bにはゲート穴201が設けられていないので金型200Bには直接熱可塑性樹脂が流入しないが、金型200B側には、金型200A側から、貫通孔130を介して熱可塑性樹脂Eが流入する。このように貫通孔130を設けることで、一方側のみから熱可塑性樹脂Eを金型200内に注入することができ、金型200内を熱可塑性樹脂Eで満たすことができる。
【0035】
また、本実施形態では、各貫通孔130はそれぞれ各ゲート穴201と対向して形成されているので、ゲート穴201から流入された熱可塑性樹脂Eが金型200A側から貫通孔130を介して金型200B側に流入しやすい。なお、本実施形態では各貫通孔130は各ゲート穴201と対向するように形成されているがこれに限定されず、貫通孔130が少なくとも1個設けられていれば金型200B側に直接溶融した熱可塑性樹脂Eを注入する必要がなく、また、少なくとも1個の貫通孔130とゲート穴201とが対向していれば、熱可塑性樹脂Eが金型200A側から貫通孔130を介して金型200B側に流入しやすいため好ましい。
【0036】
このようにして金型200内に溶融した熱可塑性樹脂Eが流入した状態で冷却を行って熱可塑性樹脂が固化することで、クッションリング120がスプロケット本体101に固定された状態で形成される。クッションリング120が形成された後、金型200を外して、バリが発生していればバリを除去し、
図4(2)で示すように熱可塑性樹脂からなるクッションリング120をスプロケット本体101に形成すると同時に固定することができる。このように、本実施形態では貫通孔130を設けてスプロケット本体101の側面102にそれぞれクッションリング120を同時に形成することができる。
【0037】
また、金型200A側から貫通孔130を介して熱可塑性樹脂Eが金型200B側に流入する結果、各貫通孔130内にはクッションリング120の形成時にクッションリング120を構成する熱可塑性樹脂Eが充填されることで、貫通孔130内に接続部121が形成されている。この接続部121の両端は、それぞれ側面102に設けられたクッションリング120に対し一体的に接続されている。つまり、この接続部121によりクッションリング120Aとクッションリング120Bとが接続されている。このようにクッションリング120Aとクッションリング120Bとが貫通孔130内に形成された接続部121により接続されることで、よりクッションリング120がスプロケット本体101に強固に固定される。これにより、さらに騒音・振動を低減できる。
【0038】
また、金型200を外す際に、ゲート穴201で固化した熱可塑性樹脂を切断するが、この時にクッションリング120Aの表面にゲート穴201の形状に沿った切断跡が凸部として残る。この凸部を、本実施形態のスプロケット100を例えばクランクシャフト等に取り付けた際の位置合わせとして利用することができる。
【0039】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、クッションリング120は、スプロケット本体101の両側面にそれぞれ設けたが、これに限定されず少なくとも一方の側面102に設けられていればよい。この場合、射出成形時に貫通孔130は空気穴として機能する。また、クッションリング120がスプロケット本体101の側面102に接着層を介さずに固定することができれば、熱可塑性樹脂以外の材料を用いてもよい。
【0040】
また、クッションリング120の防振効果を高めるべく、
図5に示すようにボス部103の外周面104に、外周面104に対して凹である凹部301を設けてもよい。このように凹部301を設けることで、クッションリング120が凹部301に嵌合して形成されるのでより強固に固定され、振動することを抑制し、防振効果を高めることが可能である。なお、
図5に示す変形例では、図中に示す凹部301は互いに対向しているが、互いに対向しないようにずらして設けてもよい。また、凹部301は、複数設けてもよい。また、同様にスプロケット本体101の側面102に当該側面102に対して凹である側面凹部(側面側凹部)を形成し、この側面凹部に熱可塑性樹脂が充填されているように構成してもよい。この場合にも、クッションリング120が側面凹部に嵌合して形成されるのでより強固に固定され、また、その厚みが増し、振動することを抑制し、防振効果を高めることが可能である。また、例えばクッションリング120を一つだけ設けて、スプロケット本体101の側面102には側面凹部のみを設けて貫通孔130を設けないようにしてもよい。
【0041】
また、クッションリング120の防振効果を高めるべく、
図5に示す凹部301と貫通孔130とを連続して設けてもよい。
図6、7に示す変形例では、スプロケット本体101に貫通溝302が形成されている。貫通溝302は、スプロケット本体101の両面のボス部103の外周面104及びフランジ部105に亘り設けられている。より具体的には、貫通溝302は、ボス部103の外周面104に形成された、外周面104に対して凹である溝部303と、溝部303から連続し、スプロケット本体101を貫通する孔部304と、溝部303から連続し、フランジ部105に形成された、フランジ部105に対して凹である切欠部305とからなる。この貫通溝302は、
図6、7に示す変形例ではスプロケット本体101に3つ設けられているがこれに限定されるものではない。
【0042】
このように貫通溝302が形成されている場合、
図7に示すように、貫通溝302にも熱可塑性樹脂が充填されてクッションリング120が形成される。この場合、上述した
図5等の場合よりも貫通孔130を大きく形成することができ、その結果クッションリング120がより強固にスプロケット本体101に固定され、防振効果を高めることができる。なお、
図6、7に示した変形例では、貫通溝302は孔部304を有するが、このようなスプロケット本体101を貫通した孔ではなく上述した側面凹部であってもよい。
【0043】
以上説明した実施形態及び変形例は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態及び変形例に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0044】
100 スプロケット
101 スプロケット本体
102 側面
103 ボス部
104 外周面
110 歯
111 歯先
112 歯底
120 クッションリング
121 接続部
130 貫通孔
200 金型
201 ゲート穴
301 凹部
302 貫通溝
E 熱可塑性樹脂