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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072562
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
G01D5/245 110R
G01D5/245 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183452
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北浦 靖寛
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA20
2F077AA46
2F077AA47
2F077CC02
2F077NN02
2F077NN16
2F077NN22
2F077PP06
2F077TT21
2F077TT33
2F077TT66
2F077UU20
2F077VV10
2F077VV31
2F077WW04
(57)【要約】
【課題】検出体の形状を複雑なものに限定することなく、偏芯を補正する演算が従来よりも簡素化された位置検出装置とする。
【解決手段】位置検出装置は、送信コイル110と、送信コイル110への通電による電磁誘導により誘導結合をする第1受信コイル120および第2受信コイル130と、受信コイルが出力する検出信号に基づき、検出体の位置を導出する信号処理部とを備える。第2受信コイル130は、第1受信コイル120に隣接すると共に、検出体の回転中心Cを軸とする径方向D1における位置が第1受信コイルと異なっている。信号処理部は、第1受信コイル120の検出信号から算出される第1の角度と第2受信コイル130の検出信号から算出される第2の角度との差角に基づいて補正項を算出し、補正項に基づいて検出体の位置を導出する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置検出装置であって、
回転体である検出体(30)と対向して配置された基板(100)と、
前記基板に形成された送信コイル(110)と、
前記基板に形成され、前記送信コイルへの通電による電磁誘導により誘導結合をする第1受信コイル(120)および第2受信コイル(130)と、
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルが出力する検出信号に基づき、前記検出体の位置を導出する信号処理部(210)と、を備え、
前記第2受信コイルは、前記第1受信コイルに隣接すると共に、前記検出体の回転中心(C)を軸とする径方向(D1)における位置が前記第1受信コイルと異なっており、
前記信号処理部は、前記第1受信コイルの検出信号から算出される第1の角度(θ1)と前記第2受信コイルの検出信号から算出される第2の角度(θ2)との差角に基づいて補正項(Y1、Y2、Y3)を算出し、前記補正項に基づいて前記検出体の位置を導出する、位置検出装置。
【請求項2】
前記第2受信コイルは、前記軸を中心とする周方向(D2)に沿った全域が、前記第1受信コイルの近傍であって、前記第1受信コイルよりも前記検出体の回転中心に近い位置に配置されている、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルは、出力する検出信号の軸倍角が同一である、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルは、出力する検出信号における電気角の周期が一致しており、前記検出体の偏芯が生じていない場合、前記第1の角度と前記第2の角度が同一となる、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルのうち少なくとも一方が前記検出体の位置検知用のコイルであり、他方が前記検出体の回転中心に対する位置検出装置の相対位置のズレを検知するためのコイルである、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記送信コイルは、前記第1受信コイルを囲む第1送信コイル(111)と、前記第2受信コイルを囲む第2送信コイル(112)とを有してなる、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記検出体をさらに有し、
前記検出体は、前記軸を中心とする周方向(D2)に沿って交互に配置される凸部(32)および凹部(31)を有し、
前記凸部は、前記周方向に対して交差する外縁(322)のうち前記第1受信コイルと対向する部位、および前記第2受信コイルと対向する部位が、それぞれ、少なくとも一部が直線状とされた直線部を有する形状である、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記検出体をさらに有し、
前記検出体は、前記軸を中心とする周方向(D2)に沿って交互に配置される凸部(32)および凹部(31)を有し、
前記凸部は、前記周方向に対して交差する外縁(322)のうち前記第1受信コイルと対向する部位、および前記第2受信コイルと対向する部位が、それぞれ、少なくとも一部が曲線状とされた曲線部を有する形状である、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記検出体をさらに有し、
前記検出体は、前記送信コイルへの通電による電磁誘導により誘導電流が生じ、
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルは、前記検出体の誘導電流による電磁誘導により、前記検出体の位置に応じた誘導起電力が生じる、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記信号処理部は、前記第1受信コイルの検出信号について逆正接関数を演算して前記第1の角度を算出し、前記第2受信コイルの検出信号について逆正接関数を演算して前記第2の角度を算出する、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項11】
前記信号処理部は、前記第1の角度の値(A)と前記第2の角度の値(B)を加算して得られた加算値(A+B)に対する前記補正項(Y1)を算出し、前記加算値から前記補正項を差し引いて得られる値に基づいて、前記検出体の位置を導出する、請求項10に記載の位置検出装置。
【請求項12】
前記信号処理部は、前記第1の角度の値(A)に対する前記補正項(Y2)を算出し、前記第1の角度の値から前記補正項を差し引いて得られる値に基づいて、前記検出体の位置を導出する、請求項10に記載の位置検出装置。
【請求項13】
前記信号処理部は、前記第2の角度の値(B)に対する前記補正項(Y3)を算出し、前記第2の角度の値から前記補正項を差し引いて得られる値に基づいて、前記検出体の位置を導出する、請求項10に記載の位置検出装置。
【請求項14】
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルは、前記基板の面方向に対する法線方向において、正弦波状の曲線を描くパターン形状である、請求項1ないし13のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【請求項15】
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルは、前記基板の面方向に対する法線方向において、渦巻を描くパターン形状である、請求項1ないし13のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、検出体の位置を検出する位置検出装置が提案されている。例えば、位置検出装置は、回転軸を中心に回転可能な検出体に対して対向配置されると共に、送信コイルと、受信コイルとを備える。この種の位置検出装置は、送信コイルへの通電により検出体との間に磁界を生じさせ、受信コイルと検出体との間における磁界の変化により生じる検出信号に基づいて検出体の位置を検出する。
【0003】
この種の位置検出装置は、検出体を回転可能な状態で支持する軸受部材との取り付け精度や検出体自体の寸法精度などに起因し、検出体の回転中心に対して位置検出装置の相対位置がずれること(以下、単に「偏芯」という)がある。このような偏芯を検出および補正が可能な位置検出装置としては、例えば、特許文献1に記載のものが提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の位置検出装置は、検出体の回転角度を検出するための第1の送信コイルおよび受信コイルからなる送受信コイルに加えて、偏芯の度合いを検出するための第2の送信コイルおよび受信コイルからなる送受信コイルを備える。この位置検出装置は、第1の送受信コイルに対して、検出体の回転中心を軸とする径方向の外側に複数の第2の送受信コイルが配置されている。また、複数の第2の送受信コイルは、検出体の回転中心を軸とする周方向に沿って、それぞれ異なる位置に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6882348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の位置検出装置に対して対向配置される検出体は、例えば、歯車形状とされ、回転中心を軸とする周方向に沿って、凸部と凹部とが交互に繰り返し配列された構成となっている。しかしながら、特許文献1に記載の位置検出装置を用いるためには、検出体のうち位置検出装置と対向した状態で回転する複数の凸部を所定の形状にしなければならない。具体的には、複数の凸部は、第1の送受信コイルと主に対向する第1導電部と、第2の送受信コイルと主に対向する第2導電部とを有し、これらが溝等を隔てて配置された形状である必要がある。そのため、検出体が位置検出装置に合わせた所定の形状に制限され、製造工程が限定されてしまう。また、上記の位置検出装置は、複数の第2の送受信コイルからの検出信号に基づいて偏芯の方向を演算し、偏芯の補正を行う必要があり、演算が複雑となる。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑み、検出体の形状を複雑なものに限定することなく、偏芯の検出および検出体の位置補正を実行でき、偏芯の演算が従来よりも簡素化された位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1は、位置検出装置であって、回転体である検出体(30)と対向して配置された基板(100)と、基板に形成された送信コイル(110)と、基板に形成され、送信コイルへの通電による電磁誘導により誘導結合をする第1受信コイル(120)および第2受信コイル(130)と、第1受信コイルおよび第2受信コイルが出力する検出信号に基づき、検出体の位置を導出する信号処理部(210)と、を備え、第2受信コイルは、第1受信コイルに隣接すると共に、検出体の回転中心を軸とする径方向(D1)における位置が第1受信コイルと異なっており、信号処理部は、第1受信コイルの検出信号から算出される第1の角度(θ1)と第2受信コイルの検出信号から算出される第2の角度(θ2)との差角に基づいて補正項(Y1、Y2、Y3)を算出し、前記補正項に基づいて検出体の位置を導出する。
【0009】
これによれば、送信コイルと、送信コイルへの通電による電磁誘導により誘導結合をする第1受信コイルおよび第2受信コイルとを備え、第1受信コイルおよび第2受信コイルからの検出信号に基づいて検出体の位置を算出する。そして、第1受信コイルの検出信号から算出される第1の角度と第2受信コイルの検出信号から算出される第2の角度との差角に基づいて補正項を算出する。この補正項を用いて検出体の位置を導出することで偏芯による誤差をキャンセルすることができる。このような構成とすることで、検出体を所定の形状を複雑な形状とする必要がなく、かつ、検出体の位置演算が従来よりも簡素化される位置検出装置となる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の位置検出装置を用いて構成した電動化システムのブロック図である。
図2】位置検出装置と駆動部との関係を示す図である。
図3】回転平板および位置検出装置の平面図である。
図4】位置検出装置の斜視図である。
図5図4中のV-V線に沿った位置検出装置の断面図である。
図6】送信コイル、第1受信コイル、第2受信コイルの形状を示す模式図である。
図7】検出体と受信コイルとの配置関係を説明するための説明図である。
図8】第1受信コイルおよび第2受信コイルの他の配置例を示す平面図である。
図9】位置検出装置のブロック図である。
図10】検出体の偏芯を説明するための説明図である。
図11】偏芯補正部での処理を説明するための説明図である。
図12】第1受信コイルおよび第2受信コイルそれぞれの検出信号から算出された角度同士を加算したものにおける角度誤差と機械角との関係を、偏芯の有無別で示すグラフである。
図13】第1受信コイルおよび第2受信コイルそれぞれの検出信号から算出された角度同士の差動で得られたものにおける角度誤差と機械角との関係を、偏芯の有無別で示すグラフである。
図14】補正項の算出を説明するための説明図である。
図15】偏芯が生じた場合において第1受信コイルおよび第2受信コイルそれぞれの検出信号から算出された角度同士を加算したものを補正した後における角度誤差と機械角との関係を示すグラフである。
図16】第1の角度の値に対する補正項の算出を説明するための説明図である。
図17】第2の角度の値に対する補正項の算出を説明するための説明図である。
図18】第2実施形態の位置検出装置における受信コイルの形状を示す模式図である。
図19】第2実施形態における受信コイルの他の配置例を示す平面図である。
図20】検出体の他の形状例を示す図である。
図21】送信コイルの他の構成例を示す図である。
図22】送信コイルおよび受信コイルの他の形状例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、位置検出装置として、検出体の回転を検出する位置検出装置を例に挙げて説明する。なお、本実施形態では、車両に搭載される電動化システムに位置検出装置を適用した例について説明する。
【0014】
〔電動化システム〕
電動化システムは、例えば図1に示すように、アクチュエータ1、ギア2、駆動部3、ECU4(Electronic Control Unitの略)、位置検出装置S1を備えている。そして、この電動化システムは、次のように作動する。すなわち、アクチュエータ1は、ECU4によって制御され、ECU4の制御にしたがってギア2を回転させる。駆動部3は、後述する検出体を含むものであり、ギア2の回転によって動作する部品で構成されている。位置検出装置S1は、駆動部3に備えられている検出体の変位を検出し、検出信号をECU4に出力する。本実施形態では、後述するように、検出体が回転平板30で構成されており、回転平板30の回転角度をECU4に出力する。そして、ECU4は、位置検出装置S1からの検出信号を加味してアクチュエータ1の制御を行う。
【0015】
次に、位置検出装置S1が配置される駆動部3の構成について説明する。本実施形態では、主機モータやインホイールモータ等のモータに位置検出装置S1を配置した例について説明する。
【0016】
駆動部3は、例えば、モータ用ロータ等が想定され、図2に示すように、回転軸としてのシャフト10、回転平板30および固定台40等を備えている。そして、これらの各部材10、30、40は、シャフト10の軸方向Daを中心とした同軸状に配置されている。以下、シャフト10の軸方向Daを単に軸方向Daとして説明する。
【0017】
シャフト10は、例えば、ドライブシャフトであり、円柱状の部材で構成されている。そして、シャフト10は、一端部側にタイヤが備えられ、一端部側と反対側の他端部側が車体側となるように配置される。例えば、図2では、紙面上側がシャフト10の一端部側となり、紙面下側がシャフト10の他端部側となる。なお、シャフト10は、詳細は省略するが、例えば、図示しない回転輪や軸受部材等が取り付けられ、回転輪が回転可能な状態で軸受部材に支持されている。
【0018】
回転平板30は、金属で構成され、貫通孔30aが形成された円環板状とされている。また、本実施形態の回転平板30は、図3に示すように、外縁部に複数の凹部31が周方向に均等に形成されている。言い換えると、回転平板30は、外縁部に、周方向に沿って複数の凸部32が配置された構成とされている。つまり、回転平板30は、外縁部に凹部31および凸部32を有する凹凸構造33が周方向に沿って形成された構成とされている。なお、図3では、見易くするため、位置検出装置S1を構成する後述の送信コイル110、第1受信コイル120、第2受信コイル130を簡略化したものを示している。
【0019】
そして、回転平板30は、図2に示すように、シャフト10の回転に伴って回転するように、貫通孔30aにシャフト10の一端部側が挿通された状態でシャフト10に固定されている。なお、本実施形態では、回転平板30が検出体に相当する。回転平板30は、例えば、シャフト10の軸方向Daに沿った方向であって、シャフト10の中心を通る軸を中心軸として、シャフト10の回転に連動して回転する。以下、説明の便宜上、図3に示すように、回転平板30の回転中心を単に「回転中心C」と称する。回転平板30は、図3に示すように、複数の凸部32が回転中心Cを軸とする径方向D1の長さが所定以上とされ、位置検出装置S1の後述する第1受信コイル120および第2受信コイル130と対向して回転する構成となっている。以下、特に断りがない場合、回転中心Cを軸とする径方向D1を単に「径方向D1」と称し、回転中心Cを軸とする周方向D2を単に「周方向D2」と称する。回転平板30は、例えば、図3に示すように、凸部32の周方向D2における幅が、後述する第1受信コイル120および第2受信コイル130の周方向D2における幅の半分とされる。また、回転平板30は、例えば、凹部31の周方向D2における幅、すなわち凸部32間のピッチが、第1受信コイル120および第2受信コイル130の周方向D2における幅と略同一とされる。なお、回転平板30は「ターゲット」と、凸部32は「歯」と、それぞれ称されうる。また、図3では、位置検出装置と検出体との配置関係を分かり易くするため、受信コイル120、130を上面視にて回転平板30に重なる部位も含めて実線で示すと共に、後述するプリント基板100のうち回転平板30に重なる外郭を破線で示している。
【0020】
固定台40は、貫通孔40aが形成された板状とされている。そして、シャフト10は、他端部側が固定台40の貫通孔40aに挿通され、図示しない回転輪が回転可能な状態で配置されている。また、固定台40には、軸方向Daにて回転平板30の凸部32と対向するように位置検出装置S1が備えられている。なお、位置検出装置S1は、図2に示すように、回転平板30との間に所定のギャップ(すなわち、間隔)dを有するように配置される。
【0021】
〔位置検出装置〕
次に、本実施形態の位置検出装置S1の構成について説明する。
本実施形態の位置検出装置S1は、図4および図5に示すように、一面100aおよび他面100bを有するプリント基板100を有している。そして、位置検出装置S1は、例えば、プリント基板100の一面100a側に回路基板200およびターミナル400が配置され、これらが封止部材500によって一体的に封止された構成とされている。以下、プリント基板100の面方向に対する法線方向を単に法線方向として説明する。なお、プリント基板100の法線方向は、位置検出装置S1が固定台40に備えられた場合には軸方向Daと一致する方向となる。また、プリント基板100には、特に図示していないが、例えば、コンデンサや抵抗体等の各種の電子部品も適宜配置されている。
【0022】
本実施形態のプリント基板100は、円弧板状とされている。詳しくは、プリント基板100は、シャフト10を中心とした仮想円の円弧と一致するように構成されている。つまり、プリント基板100は、当該プリント基板100を円弧とする仮想円がシャフト10を中心とする円と一致する形状とされている。
【0023】
そして、プリント基板100には、図6に示すように、送信コイル110、第1受信コイル120、第2受信コイル130が形成されている。第1受信コイル120は、本実施形態では、後述する第1コイル121および第2コイル122により構成されている。第2受信コイル130は、後述する第3コイル131および第4コイル132により構成されている。また、プリント基板100には、図9に示すように、回路基板200と各コイル110、120、130とを接続する接続配線150が形成されている。なお、図5では、送信コイル110および第1受信コイル120を簡易的に示している。また、図7では、見易くするために、2つのコイルによりなる第1受信コイル120および第2受信コイル130をそれぞれ1つのコイルとして図示している。
【0024】
具体的には、本実施形態のプリント基板100は、絶縁膜と配線層とが交互に積層された多層基板とされている。そして、図6に示すように、各層に形成された配線層がビア140を介して適宜接続されて各コイル110、120、130が形成されていると共に、各コイル110、120、130と接続される接続配線150が形成されている。以下、本実施形態の送信コイル110、第1受信コイル120、第2受信コイル130の構成について、図6を参照しつつ説明する。
【0025】
以下、説明の簡便化のため、送信コイル110、第1受信コイル120、第2受信コイル130の各コイルを総称して「各コイル110~130」と称することがある。各コイル110~130は、第1受信コイル120を構成する第1コイル121および第2コイル122と、第2受信コイル130を構成する第3コイル131および第4コイル132と、を含む。また、受信コイルを構成する第1コイル121、第2コイル122、第3コイル131および第4コイル132の4つのコイルを総称して「各受信コイル121~132」と称することがある。
【0026】
送信コイル110は、法線方向において、複数回巻き回され、一方向(すなわち、プリント基板100の周方向)を長手方向とする円弧枠状に形成されている。
【0027】
各受信コイル121~132は、法線方向において、送信コイル110の内側に配置されている。また、第1コイル121および第2コイル122は、互いに干渉しない(すなわち、同じ層内で重ならない)ように、ビア140を介して異なる配線層が適宜接続されることで構成されている。第3コイル131および第4コイル132は、第1コイル121および第2コイル122と同様に、互いに干渉しないように異なる配線層が適宜接続されて構成され、第1コイル121および第2コイル122とは径方向D1において距離を隔てて配置される。本実施形態では、各コイル110~130は、例えば、順に積層された配線層のうちの隣合う2つの配線層がビア140で接続されて構成されている。例えば、本実施形態では、各コイル110~130は、プリント基板100における一面100a側に位置する最表層の配線層と、最表層の次層となる配線層とが接続される。このように、各コイル110~130は、プリント基板100に形成される図示しない多層配線のうち異なる層に位置する配線層同士が接続されて形成されている。なお、送信コイル110は、最表層の配線層および最表層の次層となる配線層が接続されて構成されるが、図6では、全て実線で示している。そして、送信コイル110は、実際には1筆書きで構成される形状とされている。
【0028】
なお、図6では、第1コイル121、第3コイル131、および接続配線150のうち送信コイル110に接続されたものを実線で、第2コイル122および第4コイル132を二点鎖線で、それぞれ示している。また、図6では、接続配線150のうち各受信コイル121~132に接続されたものを破線で示している。さらに、図6では、見易くするため、各受信コイル121~132の一部を構成する上記のビア140のうちの一部のみを示し、残りのビア140については省略している。
【0029】
第1コイル121は、例えば、法線方向において、閉ループの正弦波状の曲線を描くパターン形状となるように形成されている。第2コイル122は、例えば、法線方向において、第1コイル121に対して位相をずらした閉ループの正弦波状の曲線を描くパターン形状となるように形成されている。第1コイル121および第2コイル122は、それぞれ、例えば図6に示すように、ビア140および接続配線150を介して送信コイル110の外側領域に引き出されており、後述する復調部230に接続されている。例えば、第1受信120は、検出体である回転平板30の回転に伴って、第1コイル121が電気角をθ(°)とする正弦波の電気信号を出力し、第2コイル122が余弦波の電気信号を出力する構成となっている。
【0030】
第3コイル131は、例えば、法線方向において、閉ループの正弦波状の曲線を描くパターン形状となるように形成されている。第4コイル132は、例えば、法線方向において、第3コイル131に対して位相をずらした閉ループの正弦波状の曲線を描くパターン形状となるように形成されている。第3コイル131および第4コイル132は、それぞれ、第1コイル121および第2コイル122と同様に、ビア140および接続配線150を介して送信コイル110の外側領域に引き出され、後述する復調部230に接続されている。そして、例えば、第2受信コイル130は、回転平板30の回転に伴って、第3コイル131が正弦波の電気信号を出力し、第4コイル132が余弦波の電気信号を出力する構成となっている。
【0031】
第1受信コイル120は、例えば、図6に示すように、送信コイル110の内側領域において、第2受信コイル130とは重ならない位置に配置される。第1受信コイル120は、第2受信コイル130の近傍であって、径方向D1における位置が第2受信コイル130よりも外側に配置される。第2受信コイル130は、例えば、径方向D1における位置が第1受信コイル120よりも内側であって、第1受信コイル120とは重ならない位置に配置される。
【0032】
第1受信コイル120および第2受信コイル130は、例えば、偏芯が生じていない場合、回転平板30が回転しているときに出力する検出信号の電気角が同一となるように構成されている。第1受信コイル120は、第2受信コイル130よりも径方向D1における外側に位置し、周方向D2における両端間の周方向D2に沿った長さ(以下「周方向長さ」という)が第2受信コイル130よりも長い。このため、第1受信コイル120は、第1コイル121および第2コイル122の1周期の周方向長さが、第2受信コイル130の第3コイル131および第4コイル132の1周期の周方向長さよりも長くなっている。また、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、径方向D1において、第1コイル121および第2コイル122における周期上の位置と、第3コイル131および第4コイル132における周期上の位置とが一致する構成とされる。
【0033】
例えば図7に示すように、回転平板30の凸部32の外縁のうち周方向D2に沿った部位を第1外縁部321、周方向D2に対して交差する部位を第2外縁部322として、回転平板30は、第2外縁部322が径方向D1に沿った直線形状であるとする。なお、図7では、見易くするため、送信コイル110を省略している。また、各受信コイル121~132のそれぞれについて径方向D1において最も外側になる位置を「山」とし、最も内側になる位置を「谷」とする。そして、第1コイル121同士、第2コイル122同士、第3コイル131同士、第4コイル132同士が交差する位置を「節」とする。このとき、回転平板30の第2外縁部322は、例えば、第1コイル121の山、かつ第2コイル122の節に位置するとき、第3コイル131の山、かつ第4コイル132の節に位置する状態となる。つまり、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、第1コイル121および第2コイル122と、第3コイル131および第4コイル132とが、山、谷、節およびこれらの間が径方向D1において一致するように構成されている。
【0034】
これにより、第1受信コイル120の検出信号における電気角を第1の電気角θ1とし、第2受信コイル130の検出信号における電気角を第2の電気角θ2として、偏芯が生じてない場合には、第1の電気角θ1と第2の電気角θ2とが同一となる。言い換えると、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、出力する検出信号における電気角θ1、θ2の周期が同一、すなわち軸倍角が同一となっている。このような構成とされることで、偏芯が生じた場合にのみ、第1の電気角θ1と第2の電気角θ2とが一致しない状態となり、これらの差分に基づいて、偏芯の誤差補正が可能となる。この詳細については、後述する。なお、上記した2つの受信コイル120、130の「電気角の周期が同一」とは、完全同一の場合だけでなく、受信コイル120、130の形成時における寸法公差などの不可避の誤差要因によって僅かな差が生じているが、同一とみなせる略同一の場合を含む。これは、「軸倍角が同一」、「電気角が同一」の場合も同様である。また、上記の意味での「同一」は、「一致」や「合致」などとも称されうる。
【0035】
なお、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、後述する偏芯による角度誤差の低減精度を高める観点から、周方向D2における両端それぞれが径方向D1に沿って揃っていることが好ましい。例えば、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、それぞれを略扇形状とみなしたときに、周方向D2の両端に位置し、径方向D1に沿った辺が略一直線上に配置される構成であることが好ましい。具体的には、例えば、第1受信コイル120が周方向D2における両端それぞれに位置する2つの辺のなす角度が60°となる略扇形状の場合、第2受信コイル130も同様に周方向D2の両端に位置する2つの辺のなす角度が60°の略扇形状とされるとよい。そして、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、1つの略扇形状をなすように配置されるとよい。但し、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、これに限定されるものではなく、周方向D2において両端の位置が径方向D1において一方または両方が揃っていない配置であってもよい。
【0036】
また、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、上記したように軸倍角が同一であればよく、例えば図8に示すように、一部が重なる配置であってもよい。例えば、第1コイル121および第2コイル122の節を周方向D2に沿って繋いだ仮想曲線を曲線VC1とし、第3コイル131および第2コイル132の節を周方向D2に沿って繋いだ仮想曲線を曲線VC2とする。このとき、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、曲線VC1と曲線VC2とが重ならない配置であればよい。このため、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、図6に示すように互いに重ならない配置であってもよいし、図8に示すように一部が重なる配置であってもよい。なお、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、図8に示すように、上面視にて一部が重なる配置であった場合でも、第1コイル121ないし第4コイル132がそれぞれ干渉しないように独立した構成とされる。また、図8では、見易くするため、第1受信コイル120を実線で、第2受信コイル130を二点鎖線で、曲線VC1、VC2を破線でそれぞれ示している。
【0037】
また、プリント基板100には、図示しない複数のパッド部が形成されている。そして、図5に示すように、プリント基板100には、パッド部と接続されるように、棒状のターミナル400の一端部が接続されている。ターミナル400は、例えば、電源用、グランド用、出力用の3本が備えられている。例えば、出力用のターミナル400は、ECU4に接続され、ECU4に検出体の回転角度を出力するのに用いられる。なお、ターミナル400の数は特に限定されるものではなく、その接続先についてはターミナル400の数に応じて適宜変更されうる。
【0038】
回路基板200は、プリント基板100のうちの各コイル110~130が形成される部分と異なる部分に、図示しない接合部材を介して配置されている。そして、回路基板200は、プリント基板100に形成される接続配線150を介して各コイル110~130と接続されている。
【0039】
回路基板200は、CPUや、ROM、RAM、不揮発性RAM等の記憶部を備えたマイクロコンピュータ等を含んで構成されており、送信コイル110、第1受信コイル120、および第2受信コイル130と接続されている。そして、回路基板200は、CPUがROM、または不揮発性RAMからプログラムを読み出して実行することで各種の制御作動を実現する。なお、ROM、または不揮発性RAMには、プログラムの実行の際に用いられる各種のデータ(例えば、初期値、ルックアップテーブル、マップ等)が予め格納されている。また、ROM等の記憶媒体は、非遷移的実体的記憶媒体である。CPUは、Central Processing Unitの略であり、ROMは、Read Only Memoryの略であり、RAMは、Random Access Memoryの略である。
【0040】
具体的には、回路基板200は、図9に示すように、送信コイル110、第1受信コイル120、および第2受信コイル130と接続されて所定の処理を行う信号処理部210を備えている。信号処理部210は、例えば、発振部220、復調部230、AD変換部240、角度算出部250、偏芯補正部260、出力部270、および電源部300を有している。なお、以下では、デジタル信号に変換して処理する例を代表例として説明するが、アナログ信号で処理する場合には、信号処理部210は、AD変換部240等を備えていなくてもよい。
【0041】
封止部材500は、図4および図5に示すように、ターミナル400のうちのプリント基板100に接続される一端部と反対側の他端部が露出するように、プリント基板100、回路基板200、ターミナル400を一体的に封止している。以下では、封止部材500において、プリント基板100の形状に沿って円弧板状とされた部分を主部510とし、ターミナル400を封止する部分であり、外部のコネクタとの接続を図る部分をコネクタ部520として説明する。主部510は、例えば、プリント基板100の形状に沿って形成されており、少なくとも内縁側の部分がシャフト10を中心した仮想円の円弧と一致するように形成されている。コネクタ部520は、例えば、法線方向に沿って延設された略円筒状とされ、ターミナル400の他端部を主部510とは反対側に露出させる開口部520aが形成されている。封止部材500は、例えば、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂で構成されている。
【0042】
封止部材500は、円弧板状とされた主部510の周方向における両端部の段差部に、固定台40に固定するための締結部材が挿通されるカラー部530が形成されている。カラー部530は、主部510を厚さ方向に貫通する貫通孔531に、金属製のカラー532が配置されることで構成される。なお、主部510の周方向に段差部が形成されていなくてもよく、主部510の両端部の形状は、固定される側の形状に合わせて適宜変更可能である。
【0043】
以上が本実施形態における位置検出装置S1の構成である。そして、このような位置検出装置S1は、図2に示すように、軸方向Daにおいて回転平板30と対向するように、固定台40に配置される。具体的には、位置検出装置S1は、図2および図3に示すように、回転平板30が回転した際、軸方向Daにて各コイル110~130と回転平板30の凸部32とが対向する状態および対向しない状態が交互に繰り返されるように配置されている。
【0044】
〔信号処理部〕
次に、上記の回路基板200における信号処理部210の作動について説明する。
【0045】
発振部220は、図9に示すように、送信コイル110の両端と接続されており、所定の周波数の交流電流を印加する。なお、送信コイル110の両端と発振部220との間には、例えば、2つのコンデンサ161、162が直列に接続されていると共に、各コンデンサ161、162同士を接続する部分がグランドに接続されている。そして、送信コイル110は、第1受信コイル120で囲まれる領域および第2受信コイル130で囲まれる領域を通過する軸方向Daの磁界を発生させる。但し、送信コイル110と発振部220との接続の仕方は適宜変更可能であり、例えば、送信コイル110の両端と発振部220との間に1つのコンデンサを配置するようにしてもよい。
【0046】
復調部230は、第1受信コイル120および第2受信コイル130と接続されている。具体的には、第1受信コイル120は、第1コイル121の両端と第2コイル122の両端とがそれぞれ復調部230に接続されている。第2受信コイル130は、第3コイル131の両端と第4コイル132の両端とがそれぞれ復調部230に接続されている。そして、復調部230は、第1受信コイル120の第1コイル121から出力される電圧値を復調した第1復調信号を生成すると共に、第2コイル122から出力される電圧値を復調した第2復調信号を生成する。また、復調部230は、第2受信コイル130の第3コイル131から出力される電圧値を復調した第3復調信号を生成すると共に、第4コイル132から出力される電圧値を復調した第4復調信号を生成する。
【0047】
AD変換部240は、例えば、復調部230と、角度算出部250と接続されている。そして、AD変換部240は、第1復調信号をAD変換した第1変換信号S01および第2復調信号をAD変換した第2変換信号C01を角度算出部250に出力する。また、AD変換部240は、第3復調信号をAD変換した第3変換信号S02および第4復調信号をAD変換した第4変換信号C02を角度算出部250に出力する。
【0048】
角度算出部250は、例えば、第1変換信号S01および第2変換信号C01を用いた逆正接関数を演算して第1の電気角θ1を算出する。また、角度算出部250は、第3変換信号S02および第4変換信号C02を用いた逆正接関数を演算して第2の電気角θ2を算出する。つまり、角度算出部250は、第1受信コイル120および第2受信コイル130からのそれぞれ検出信号に基づいて、電気角θ1、θ2を算出する。第1の電気角θ1および第2の電気角θ2は、偏芯誤差を補正するために用いられるものであり、それぞれ偏芯補正部260に出力される。また、電気角θ1、θ2は、後述する偏芯が生じていない場合には同一の値となる。なお、各受信コイル121~132の電気信号における電気角θと、回転平板30の回転角度θ(機械角)との関係については、例えば、回転平板30の凹凸構造33の1つが各受信コイル121~132上を通過するのに要する回転角度に応じて決定する。そのため、電気角θに基づいて回転平板30の回転角度θを算出することができる。
【0049】
偏芯補正部260は、検出体の回転平板30の回転中心Cが、部品の取り付け精度や寸法精度等の原因によって本来の位置からずれた位置となる偏芯が起きた場合に生じる角度誤差を補正する。偏芯補正部260は、例えば、角度算出部250が算出した電気角θ1、θ2のデータを取得する。そして、偏芯補正部260は、例えば、第1受信コイル120からの検出信号から得られた第1の電気角θ1および第2受信コイル130からの検出信号から得られた第2の電気角θ2に基づいて、偏芯による誤差を補正した回転角度θaを算出する。偏芯補正部260による補正後の回転角度θaの算出については後述する。
【0050】
出力部270は、例えば、偏芯補正部260による補正後の回転平板30の回転角度θaを出力用のターミナル400に出力する。
【0051】
電源部300は、信号処理部210の各部220~270と接続されており、各部220~270に電源の供給を行う。
【0052】
以上が、信号処理部210の基本的な構成である。
【0053】
〔受信コイルの検出信号〕
次に、第1受信コイル120において、回転平板30が回転した際に第1コイル121から出力される第1電圧値V1、および第2コイル122から出力される第2電圧値V2について説明する。
【0054】
まず、送信コイル110は、発振部220から所定の周波数の交流電流が印加される。これにより、第1コイル121によって囲まれる領域および第2コイル122によって囲まれる領域を通過する軸方向Daの磁界が発生する。また、交流電流によって磁界が変化するため、電磁誘導により、第1コイル121に発生する第1電圧値V1および第2コイル122に発生する第2電圧値V2が変化する。
【0055】
そして、回転平板30の凸部32がコイル110、第1コイル121、第2コイル122と対向すると、凸部32に渦電流が発生すると共に渦電流に起因する磁界が発生する。このため、第1コイル121によって囲まれる領域および第2コイル122によって囲まれる領域を通過する軸方向Daの磁界のうちの凸部32と対向する部分を通過する磁界は、渦電流を起因とする磁界によって相殺される。
【0056】
そして、上記のように、凸部32は、周方向に間隔を空けて複数並んで配置されており、互いに隣り合う凸部32の間には凹部31が形成されている。これにより、回転平板30の回転に伴って凸部32と対向する面積が変化し、第1コイル121によって囲まれる領域および第2コイル122によって囲まれる領域を通過する軸方向Daの磁界のうちの凸部32と対向する部分の大きさが周期的に変化する。このため、回転平板30の回転に伴い、第1コイル121に発生する第1電圧値V1および第2コイル122に発生する第2電圧値V2は、周期的に変化する。本実施形態では、第1コイル121に発生する第1電圧値V1は、第1コイル121が正弦波状に形成されているため、正弦波状となる。第2コイル122に発生する第2電圧値V2は、第2コイル122が余弦波状に形成されているため、余弦波状となる。
【0057】
また、第2受信コイル130は、第1受信コイル120と同様に、正弦波状に形成された第3コイル131から正弦波状の第3電圧値V3が出力され、余弦波状に形成された第4コイル132から余弦波状の第4電圧値V4が出力される。
【0058】
〔偏芯および補正〕
次に、偏芯による角度誤差の発生とその補正について説明する。
【0059】
以下、説明の便宜上、図10に示すように、各コイル110~130を軸方向Da側から見たときの紙面左右方向に沿った方向を「x方向」とし、x方向に直交する紙面上下方向を「y方向」とし、xy平面に対して直交する方向を「z方向」とする。また、図8では、見易くするため、各受信コイル121~132を構成するビア140を省略している。
【0060】
まず、偏芯について説明する。検出体が本来の位置に正しく配置され、検出体と位置検出装置S1との相対位置にずれが生じていない場合、例えば図10に示すように、回転中心Cは、点C0の位置となる。しかしながら、検出体の取り付け精度や寸法精度などの原因により、検出体が本来の位置とは異なる位置に配置され、検出体と位置検出装置S1との相対位置にずれが生じた状態となることがある。この状態が偏芯であり、例えば、回転中心Cは、x方向において点C0とは異なる位置である点C1、C2の位置となってしまうことがある。例えば、点C0を原点とし、x方向における右方向を正として、点C1は、点C0よりもx方向に+0.1mmズレた位置であり、点C2は、点C0よりもx方向に-0.1mmズレた位置である。なお、後述する図12図13図15では、回転中心Cが点C0に位置する場合を「偏芯なし」、回転中心Cが点C1に位置する場合を「偏芯+0.1mm」、回転中心Cが点C2に位置する場合を「偏芯-0.1mm」、とそれぞれ表記している。
【0061】
なお、ここでは、ロータである検出体(回転平板30)が本来の正しい位置とは異なる位置に配置されることで、検出体の回転中心が点C0からずれる偏芯を代表例として説明するが、これに限定されるものではない。例えば、検出体が本来の正しい位置に配置され、位置検出装置S1側が本来の位置と異なる位置に配置されることで、検出体の回転中心とコイルの中心位置とがずれる偏芯であっても、後述する補正処理により対応することができる。また、回転平板30および位置検出装置S1が本来の正しい位置に配置され、ステータである駆動部3のうち回転平板30が取り付けられる部位が本来の正しい位置とは異なる位置となった場合に生じる偏芯についても同様に対応可能である。
【0062】
偏芯補正部260は、例えば図11に示すように、第1受信コイル120の検出信号から算出される第1の電気角θ1と、第2受信コイル130の検出信号から算出される第2の電気角θ2とに基づいて、偏芯による誤差の補正を行う。偏芯補正部260は、例えば、加算処理部261と、差動処理部262と、補正項算出部263と、補正部264とを備える。
【0063】
加算処理部261は、第1の電気角θ1と第2の電気角θ2との加算処理を行う。例えば、第1の電気角θ1の値をA、第2の電気角θ2の値をBとして、加算処理部261は、A+Bの処理を行う。加算処理部261での加算処理により得られる波形は、例えば図12に示すものとなる。例えば、回転中心CがC0の位置にある場合に得られるA+Bの波形は、回転平板30の機械角の全域において、角度誤差の変動が約-1°~+0.2°の範囲内と小さかった。これは、第1の電気角θ1と第2の電気角θ2とが同一となり、電気角θ1、θ2それぞれの角度誤差に差異が生じないためである。
【0064】
これに対して、回転中心がC1またはC2の位置にある場合、第1受信コイル120は、径方向D1における位置が第2受信コイル130よりも外側に配置されているため、偏芯により生じる角度誤差が第2受信コイル130よりも大きくなる。言い換えると、電気角θ1、θ2における角度誤差は、回転中心Cが点C0に位置する場合には差が生じないのに対し、回転中心Cが点C1、C2などに位置する場合には差が生じる。このため、加算処理部261の加算処理により得られるA+Bの波形は、偏芯+0.1mmの場合および偏芯-0.1mmの場合には角度誤差が約-3.4°~+3°の範囲内であり、偏芯なしの場合に比べて角度誤差の変動が大きくなる。
【0065】
差動処理部262は、第1の電気角θ1から第2の電気角θ2を差し引き、A-Bを算出する差動処理を行う。回転中心Cが点C1、C2などに位置する場合、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、上記したように径方向D1における位置の違いにより、各検出信号から得られる電気角θ1、θ2の誤差の大きさに違いが生じる。このため、差動処理部262の差動処理により得られるA-Bの波形は、例えば図13に示すように、偏芯なしの状態では機械角の全域にて角度誤差が約+0.5°~+0.7°の範囲内であり、角度誤差の変動が小さい。一方、偏芯+0.1mmおよび偏芯-0.1mmの状態では、A-Bの波形は、機械角の全域において角度誤差が約+0.1°~+1.2°の範囲内であり、偏芯なしの状態に比べて角度誤差の変動が大きくなる。
【0066】
ここで、検出体の偏芯による角度誤差、すなわち偏芯誤差(電気角)が最大となるのは、図10に示すように、検出体の回転中心Cがx方向にずれたときである。この偏芯誤差は、以下の(1)式で算出可能である。
【0067】
偏芯誤差=(360°/(π×センサ直径))×軸倍角×偏芯量・・・(1)
「π×センサ直径」は、第1受信コイル120については曲線VC1を円弧とする仮想円の円周であり、第2受信コイル130については曲線VC2を円弧とする仮想円の円周である。つまり、センサ直径とは、第1受信コイル120または第2受信コイル130を略円弧形状とみなしたとき、当該円弧部分を一部とする仮想円の直径である。軸倍角は、検出体の機械角に対する電気角の比率であり、回転平板30が1回転した場合に受信コイル120、130がN回転分(N:例えば1以上の任意の数)の検出信号を出力するとしたときのNに相当する。偏芯量は、検出体の回転中心の点Cと点C0とのX方向における距離である。
【0068】
(1)式によれば、偏芯誤差は、センサ直径に反比例する。そして、センサ直径が異なる受信コイル120、130を径方向D1に沿って平行配置する。言い換えると、受信コイル120、130は、曲線VC1、VC2が同一の点を中心とする同心円状となるように配置する。すると、受信コイル120、130それぞれの検出信号から得られる回転角度の差を取ると、上記したように、偏芯が生じていない場合にはゼロあるいはほぼゼロに近い値となり、偏芯が生じた場合には偏芯量に応じた差が生じることとなる。本実施形態の位置検出装置S1は、このことを利用して、補正項算出部263にて偏芯による誤差の補正項Yを算出し、補正部264にて補正後の回転角度θaを算出する構成となっている。
【0069】
以下、説明の便宜上、加算処理部261により得られるA+Bにおける角度誤差を「第1誤差」と称し、差動処理部262により得られるA-Bにおける角度誤差を「第2誤差」と称する。本発明者らの鋭意検討の結果、第1誤差および第2誤差は、図14に示すように、所定の関係となることが判明した。例えば図14に示すように、第1誤差と第2誤差とのプロットを結んで得られる線が直線状となる場合には、第1誤差をY、第2誤差をXとして、補正項Yは、aX+bの直線式で表される。補正項算出部263は、予め得られる第1誤差と第2誤差との関係により導かされる補正項Yの計算式に基づいて、補正項Yを算出する。
【0070】
なお、補正項Yの計算式は、第1誤差と第2誤差との関係により定まるものであり、上記した1次式に限定されるものではなく、二次式や指数関数式などの他の式にもなりうる。
【0071】
補正部264は、例えば、加算処理部261での算出結果および補正項算出部263で得られた補正項Yに基づいて、補正後の回転角度θaを算出する。具体的には、補正部264は、加算処理部261で算出したA+Bから補正項算出部263で算出した補正項Yを差し引いた値、すなわち(A+B)-Yを算出する。この(A+B)-Yの値は、偏芯による誤差をキャンセルした電気角である。そして、補正部264は、(A+B)-Yの値に基づいて、回転平板30の補正後の回転角度θaを算出し、その算出結果を出力部270に出力する。これにより、(A+B)-Yで示される補正後の波形は、例えば図15に示すように、偏芯+0.1mmおよび偏芯-0.1mmの状態においても、偏芯なしの場合と同様の角度誤差の変動となった。これは、上記した偏芯補正部260における補正処理によって、偏芯による角度誤差を低減できることを示している。なお、上記では、回転中心CがX方向において+0.1mmまたは-0.1mmだけズレた場合を代表例として説明したが、勿論、偏芯のズレ量が異なる場合であっても、同様の補正により、偏芯による角度誤差を低減することができる。
【0072】
本実施形態によれば、送信コイル110、第1受信コイル120および第2受信コイル130を用いて、回転平板30の回転角度を算出する。第1受信コイル120および第2受信コイル130は、送信コイル110の内側領域において、一方が他方の近傍であって、回転平板30の回転中心Cを軸とする径方向D1における位置が異なるように配置される。これにより、偏芯が生じた場合のみに、第1受信コイル120および第2受信コイル130それぞれの検出信号における電気角θ1、θ2に差が生まれる構成となっている。偏芯補正部260は、上記した受信コイル120、130の特性を利用して補正項Yを算出した後、補正項Yに基づいて補正後の回転角度θaを算出する。このため、2つの受信コイル120、130からの検出信号に基づいて、偏芯による角度誤差をキャンセルした補正後の検出体の位置を演算することができる。また、検出体を複雑な形状とする必要がなくなると共に、検出体の位置検出用のコイルに加えて、偏芯補正用のコイルを複数備える従来の構成に比べて、偏芯誤差をキャンセルするための演算が簡素化された位置検出装置S1となる。
【0073】
(1)第2受信コイル130は、周方向D2に沿った全域が、第1受信コイル120の近傍であって、第1受信コイル120よりも検出体の回転中心に近い位置に配置されている。これにより、偏芯が生じた場合における誤差低減の効果をより高めることができる。
【0074】
(2)第1受信コイル120および第2受信コイル130は、径方向D1における位置が異なることでこれら2つの組み合わせにより偏芯の検知および誤差補正を可能とする。言い換えると、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、少なくとも一方が検出体の位置検出用のコイル、他方が偏芯の検知用のコイルともいえる。このような構成とすることで、検出体の位置を検出するための送信コイルおよび受信コイルのほか、偏芯を検出するための別途の送信コイルおよび受信コイルを複数配置する必要がなくなり、従来よりも構成が簡素化される。
【0075】
(3)上記では、偏芯補正部260が加算処理部261により得られる加算値(A+B)に対する補正項を第1の補正項Y1として、加算値から第1の補正項Y1を差し引いた値に基づいて、補正後の回転角度θaを算出する例を説明したが、これに限定されない。例えば、偏芯補正部260は、第1の角度θ1の値Aに対する第2の補正項Y2を算出し、値Aから第2の補正項Y2を差し引いた値に基づいて補正後の回転角度θaを算出してもよい。また、偏芯補正部260は、第1の角度θ2の値Bに対する第3の補正項Y3を算出し、値Bから第3の補正項Y3を差し引いた値に基づいて補正後の回転角度θaを算出してもよい。
【0076】
具体的には、本発明者らの鋭意検討により、第1の角度θ1の値Aにおける角度誤差を「第3誤差」とし、第2の角度θ2の値Bにおける角度誤差を「第4誤差」として、第2誤差と、第3誤差もしくは第4誤差とが所定の関係となることが判明した。例えば、図16に示すように、第2誤差と第3誤差とのプロットを結んで得られる線が直線状である場合、上記と同様に、直線式により第2の補正項Y2を算出することができる。第2の補正項Y2を算出した場合には、第1の角度θ1の値Aから第2の補正項Y2を差し引いて得られる値が偏芯による誤差をキャンセルしたものとなる。また、例えば、図17に示すように、第2誤差と第4誤差とのプロットを結んで得られる線が直線状である場合、上記と同様に、直線式により第3の補正項Y3を算出することができる。第3の補正項Y3を算出した場合には、第2の角度θ2の値Bから第3の補正項Y3を差し引いて得られる値が偏芯による誤差をキャンセルしたものとなる。このため、補正部264は、上記のように算出した値(A-Y2)あるいは値(B-Y3)に基づいても、補正後の回転角度θaを算出することができる。なお、第1の補正項Y1と同様に、第2の補正項Y2や第3の補正項Y3の算出式は、第2誤差と第3誤差との関係、第2誤差と第4誤差との関係に基づいて決まるため、直線式に限定されず、二次式や指数関数式などの他の式であってもよい。また、第2の補正項Y2または第3の補正項Y3を算出する場合、偏芯補正部260は、差動処理部262、補正項算出部263および補正部264を有した構成とされ、加算処理部261を有しなくてもよい。
【0077】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態の位置検出装置S1は、第1受信コイル120および第2受信コイル130のパターン形状が変更されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0078】
第1受信コイル120および第2受信コイル130は、本実施形態では、例えば図18に示すように、各受信コイル121~132がそれぞれ渦巻形状とされた渦巻コイルにより構成されている。各受信コイル121~132は、例えば、本実施形態では、径を変えながら四角形を描くように形成された渦巻形状の配線パターンとなっている。なお、渦巻形状は、四角形を描くものに限られるものではなく、円形や扇形などの他のパターンを描くものであってもよい。本実施形態では、第1コイル121は渦巻コイル1211、1212で構成され、第2コイル122は渦巻コイル1221、1222で構成されている。第3コイル131は渦巻コイル1311、1312で構成され、第4コイル132は渦巻コイル1321、1322で構成されている。各受信コイル121~132は、それぞれ、構成要素の2つの渦巻コイルが図示しない配線層により接続され、一筆書きで描かれる構成とされ、正弦波または余弦波の電気信号を出力する。第1受信コイル120は、例えば、図18に示すように、送信コイル110の長手方向における左側から渦巻コイル1211、1221、1212、1222の順に、周方向D2に沿って互いに距離を隔てて配列された構成とされる。第2受信コイル130は、例えば、上記の長手方向における左側から渦巻コイル1311、1321、1312、1322の順に、周方向D2に沿って互いに距離を隔てて配列された構成とされる。第1受信コイル120および第2受信コイル130は、例えば、送信コイル110の内側領域において、上記した複数の渦巻コイルが径方向D1における位置をずらして配置されている。
【0079】
なお、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、本実施形態においても、それぞれの検出信号の軸倍角が同一となるように構成される。また、受信コイル120、130は、例えば図19に示すように、それぞれを構成する渦巻コイルの中心を通る仮想曲線VC3、VC4が異なる位置となる配置であればよい。つまり、受信コイル120、130は、渦巻コイル1211、1212、1221、1222と、渦巻コイル1311、1312、1321、1322とが重ならない配置であってもよいし、一部重なる配置であってもよい。なお、ここでいう仮想曲線VC3とは、周方向D2に沿った曲線であって、第1受信コイル120を構成する4つの渦巻コイルの仮想中心CV1~CV4を通るものである。仮想曲線VC4とは、周方向D2に沿った曲線であって、第2受信コイル130を構成する4つの渦巻コイルの仮想中心CV5~CV8を通るものである。また、仮想中心CV1~CV8とは、それぞれ、渦巻コイル1211、1212、1221、1222、1311、1312、1321、1322の中心であって、各渦巻コイルの最外周の部位を四辺とみなしたときの仮想四角形の中心となる部位である。
【0080】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる位置検出装置S1となる。
【0081】
(1)本実施形態では、各受信コイル121~132が渦巻形状の渦巻コイルで構成されている。これにより、各受信コイル121~132が正弦波もしくは余弦波を描くパターン形状である場合に比べて、プリント基板100に形成される配線層数が少なくなり、より簡便に製造することが可能となる。
【0082】
(他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0083】
(1)例えば、上記第1実施形態では、回転平板30の凸部32における第2外縁部322が径方向D1に沿った直線形状である場合について説明したが、これに限定されない。例えば、回転平板30は、図20に示すように、第2外縁部322の一部または全部が湾曲した曲線形状であってもよい。この場合、第2外縁部322は、例えば、第1受信コイル120上を通過する部位と、第2受信コイル130上を通過する部位とが曲線形状とされるが、その他の部位における形状については任意である。また、第2外縁部322のうち第1受信コイル120と対向する部位、および第2受信コイル130と対向する部位は、それぞれ、少なくとも一部が、直線状である直線部あるいは曲線状である曲線部であり、直線部と曲線部との複合形状であってもよい。このように、回転平板30は、凸部32の第2外縁部322が、受信コイル120、130それぞれの検出信号における電気角が同一となる形状であればよく、直線形状、曲線形状およびこれらの複合形状などの任意の形状とされうる。例えば、第2外縁部322は、回転中に第1受信コイル120上を通過する部位と、第2受信コイル130上を通過する部位とがそれぞれ直線形状とされ、他の部位が湾曲した曲線形状でもよいし、その逆であってもよい。上記した点は、上記第2実施形態についても同様である。
【0084】
(2)例えば、送信コイル110は、例えば図21に示すように、第1受信コイル120を囲む第1送信コイル111と、第2受信コイル130を囲む第2送信コイル112とを有する構成であってもよい。このような構成であっても、上記各実施形態と同様の効果が得られる。
【0085】
(3)例えば、送信コイル110は、例えば図22に示すように、略円環形状とされてもよい。この場合、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、それぞれ、送信コイル110の全周に沿って、略円環形状とされる。このような構成であっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0086】
(4)例えば、第1受信コイル120および第2受信コイル130は、それぞれの検出信号における電気角が同一である例に限られず、電気角に一定の差(例えば10°など)を有する構成であってもよい。この場合、偏芯補正部260は、第1の電気角θ1と第2の電気角θ2とが常に一定の位相差αを有するものとして、上記第1実施形態で説明した算出処理を実行すればよい。このような構成であっても、上記各実施形態の効果が得られる。
【0087】
(5)例えば、上記各実施形態における位置検出装置S1は、車両以外に搭載されて用いられてもよい。
【0088】
(6)また、上記各実施形態では、信号処理部210が回路基板200に備えられている例を説明した。しかしながら、信号処理部210は、ECU4に備えられていてもよい。つまり、プリント基板100から第1電圧値V1や第2電圧値V2等を出力するようにし、ECU4に備えられた信号処理部210で各種の演算を行うようにしてもよい。
【0089】
(7)そして、上記各実施形態では、各受信コイルの特性値として電圧値を用いる例について説明した。しかしながら、各受信コイルの特性値は、電流値であってもよいし、インダクタンス値であってもよい。このような位置検出装置S1であっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
(8)本開示に記載の制御部(例えば信号処理部210など)及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0091】
(9)なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0092】
(本発明の特徴)
[請求項1]
位置検出装置であって、
回転体である検出体(30)と対向して配置された基板(100)と、
前記基板に形成された送信コイル(110)と、
前記基板に形成され、前記送信コイルへの通電による電磁誘導により誘導結合をする第1受信コイル(120)および第2受信コイル(130)と、
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルが出力する検出信号に基づき、前記検出体の位置を導出する信号処理部(210)と、を備え、
前記第2受信コイルは、前記第1受信コイルに隣接すると共に、前記検出体の回転中心(C)を軸とする径方向(D1)における位置が前記第1受信コイルと異なっており、
前記信号処理部は、前記第1受信コイルの検出信号から算出される第1の角度(θ1)と前記第2受信コイルの検出信号から算出される第2の角度(θ2)との差角に基づいて補正項(Y1、Y2、Y3)を算出し、前記補正項に基づいて前記検出体の位置を導出する、位置検出装置。
[請求項2]
前記第2受信コイルは、前記軸を中心とする周方向(D2)における全域が、前記第1受信コイルの近傍であって、前記第1受信コイルよりも前記検出体の回転中心に近い位置に配置されている、請求項1に記載の位置検出装置。
[請求項3]
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルは、出力する検出信号の軸倍角が同一である、請求項1または2に記載の位置検出装置。
[請求項4]
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルは、出力する検出信号における電気角の周期が一致しており、前記検出体の偏芯が生じていない場合、前記第1の角度と前記第2の角度が同一となる、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の位置検出装置。
[請求項5]
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルのうち少なくとも一方が前記検出体の位置検知用のコイルであり、他方が前記検出体の回転中心に対する位置検出装置の相対位置のズレを検知するためのコイルである、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の位置検出装置。
[請求項6]
前記送信コイルは、前記第1受信コイルを囲む第1送信コイル(111)と、前記第2受信コイルを囲む第2送信コイル(112)とを有してなる、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の位置検出装置。
[請求項7]
前記検出体をさらに有し、
前記検出体は、前記軸を中心とする周方向(D2)に沿って交互に配置される凸部(32)および凹部(31)を有し、
前記凸部は、前記周方向に対して交差する外縁(322)のうち前記第1受信コイルと対向する部位、および前記第2受信コイルと対向する部位が、それぞれ、少なくとも一部が直線状とされた直線部を有する形状である、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の位置検出装置。
[請求項8]
前記検出体をさらに有し、
前記検出体は、前記軸を中心とする周方向(D2)に沿って交互に配置される凸部(32)および凹部(31)を有し、
前記凸部は、前記周方向に対して交差する外縁(322)のうち前記第1受信コイルと対向する部位、および前記第2受信コイルと対向する部位が、それぞれ、少なくとも一部が曲線状とされた曲線部を有する形状である、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の位置検出装置。
[請求項9]
前記検出体をさらに有し、
前記検出体は、前記送信コイルへの通電による電磁誘導により誘導電流が生じ、
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルは、前記検出体の誘導電流による電磁誘導により、前記検出体の位置に応じた誘導起電力が生じる、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の位置検出装置。
[請求項10]
前記信号処理部は、前記第1受信コイルの検出信号について逆正接関数を演算して前記第1の角度を算出し、前記第2受信コイルの検出信号について逆正接関数を演算して前記第2の角度を算出する、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の位置検出装置。
[請求項11]
前記信号処理部は、前記第1の角度の値(A)と前記第2の角度の値(B)を加算して得られた加算値(A+B)に対する前記補正項(Y1)を算出し、前記加算値から前記補正項を差し引いて得られる値に基づいて、前記検出体の位置を導出する、請求項10に記載の位置検出装置。
[請求項12]
前記信号処理部は、前記第1の角度の値(A)に対する前記補正項(Y2)を算出し、前記第1の角度の値から前記補正項を差し引いて得られる値に基づいて、前記検出体の位置を導出する、請求項10に記載の位置検出装置。
[請求項13]
前記信号処理部は、前記第2の角度の値(B)に対する前記補正項(Y3)を算出し、前記第2の角度の値から前記補正項を差し引いて得られる値に基づいて、前記検出体の位置を導出する、請求項10に記載の位置検出装置。
[請求項14]
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルは、前記基板の面方向に対する法線方向において、正弦波状の曲線を描くパターン形状である、請求項1ないし13のいずれか1つに記載の位置検出装置。
[請求項15]
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルは、前記基板の面方向に対する法線方向において、渦巻を描くパターン形状である、請求項1ないし13のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【符号の説明】
【0093】
30…回転平板(検出体)、100…基板、110…送信コイル、
111…第1送信コイル、112…第2送信コイル、120…第1受信コイル、
130…第2受信コイル、210…信号処理部、
D1…(検出体の回転中心を軸とする)径方向、
D2…(検出体の回転中心を軸とする)周方向、Y1、Y2、Y3…補正項
図1
図2
図3
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図6
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図10
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