(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072579
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20240521BHJP
E05F 11/16 20060101ALI20240521BHJP
E06B 1/70 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
E06B5/16
E05F11/16
E06B1/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183489
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 奨悟
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】油谷 祥太
【テーマコード(参考)】
2E011
2E239
【Fターム(参考)】
2E011MA01
2E239CA02
2E239CA22
2E239CA26
2E239CA32
2E239CA33
2E239CA35
2E239CA54
2E239CA62
(57)【要約】
【課題】製造コストが増大する事態を抑えて防火性を向上させること。
【解決手段】左右の縦枠11及び上下の横材12,13によって構成された枠体10と、面材21の四周に左右の縦框22、上框23及び下框24が設けられた障子20とを備え、枠体10に対して障子20が面外方向に開閉可能に配設された建具であって、下枠13には、下框24の見付け面に対向するように立ち上がり壁部15aが設けられ、立ち上がり壁部15aと下框24との間には内周に向けて開口するように隙間が設けられ、立ち上がり壁部15aには、外周側となる縁部に障子20に向けて延在する内底壁部15bが設けられ、内底壁部15bには熱膨張性部材30が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の縦材及び上下の横材によって構成された枠体と、
面材の四周に左右の縦框、上框及び下框が設けられた障子とを備え、前記枠体に対して前記障子が面外方向に開閉可能に配設された建具であって、
下方の前記横材は、前記下框の見付け面に対向する立ち上がり壁部を有し、
前記立ち上がり壁部と前記下框との間には内周に向けて開口するように隙間が設けられ、
前記立ち上がり壁部には、外周側となる縁部に前記障子に向けて延在する内底壁部が設けられ、前記内底壁部には熱膨張性部材が設けられていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記内底壁部は、水平方向に沿って延在されていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記内底壁部は、前記立ち上がり壁部と前記下框との開口に対向するように傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記立ち上がり壁部は、内周側となる縁部に前記障子に向けて延在する蓋状延在部を有していることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項5】
前記立ち上がり壁部の室内に臨む見付け面には、前記障子を開閉するための操作部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関するもので、特に下方の枠材に立ち上がり壁部が設けられた建具の防火性に関するものである。
【背景技術】
【0002】
すべり出し窓等の建具には、枠体の下枠や無目(以下、下方の横材という)に立ち上がり壁部を有したものがある。立ち上がり壁部は、障子の下框との間に隙間を確保した状態で下框の見付け面に対向するように設けられている。下方の横材と下框との間には、内周に向けて開口するように隙間が設けられ、障子を開閉するための操作部材が配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、火災発生時等のように建具が高温に晒された場合には、枠体と障子との間に設けられた気密材が溶融する事態が生じる。上記のように下方の横材に立ち上がり壁部が設けられた建具では、枠体と縦框との間に設けられた気密材が溶融すると、溶融した気密材が立ち上がり壁部と下框との間の開口を通じて隙間の内部に進入して貯留する懸念がある。貯留した気密材は、さらに高温に晒されると、発火して延焼を来す原因となり得る。上述した特許文献1では、立ち上がり壁部において下框に対向する立ち上がり面に熱膨張性部材が設けられている。このため、建具が高温に晒された場合には、熱膨張性部材が下框に向けて膨張することにより立ち上がり壁部と下框との間の隙間を塞ぐことが可能となる。しかしながら、溶融した気密材の進入を防ぐには、下框に向けて膨張した熱膨張性部材を立ち上がり壁部と下框との間の開口を塞ぐ位置まで充填させる必要があり、大量の熱膨張性部材が必要となる結果、建具の製造コストを増大する原因となる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、製造コストが増大する事態を抑えて防火性を向上させることのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、左右の縦材及び上下の横材によって構成された枠体と、面材の四周に左右の縦框、上框及び下框が設けられた障子とを備え、前記枠体に対して前記障子が面外方向に開閉可能に配設された建具であって、前記下方の横材は、前記下框の見付け面に対向する立ち上がり壁部を有し、前記立ち上がり壁部と前記下框との間には内周に向けて開口するように隙間が設けられ、前記立ち上がり壁部には、外周側となる縁部に前記障子に向けて延在する内底壁部が設けられ、前記内底壁部には熱膨張性部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内周に向いた内底壁部に熱膨張性部材を設けるようにしているため、高温に晒された場合に立ち上がり壁部と下框との間の隙間がすべて熱膨張性部材によって充填される以前に開口を塞ぐことができ、溶融した気密材が進入する事態を防止することが可能となる。従って、大量の熱膨張性部材を設けておく必要がなくなり、製造コストを増大させることなく防火性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態である建具を室内側から見た姿図である。
【
図4】
図1に示した建具の要部を示すもので、(a)は拡大縦断面図、(b)は高温に晒された後の拡大断面図である。
【
図5】本発明の変形例1である建具の縦断面図である。
【
図6】
図5に示した建具の要部を示す拡大縦断面図である。
【
図7】本発明の変形例2である建具の縦断面図である。
【
図8】
図7に示した建具の要部を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
図1~
図3は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体10と障子20とを備え、枠体10に対して障子20が室外に向けて突出するように開放する縦すべり出し窓と称されるものである。枠体10は、左右の縦枠(縦材)11、上枠(横材)12、下枠(下方の横材)13を四周組することによって構成したものである。障子20は、外形が四角状を成す面材21と、面材21の四周に配設した左右の縦框22、上框23、下框24とを備えて構成したものである。枠体10を構成する縦枠11、上枠12、下枠13及び障子20を構成する縦框22、上框23、下框24は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、長手に沿った全長にわたる部分がほぼ一様の断面形状を有するように構成してある。
【0011】
枠体10を構成する左右の縦枠11及び上枠12は、それぞれ基壁部10a及び見付け壁部10bを一体に成形したものである。基壁部10aは、見込み方向に沿って延在した板状を成すものである。見付け壁部10bは、基壁部10aの内周側となる見込み面において室内側となる部分から内周側に向けて見付け方向に延在した板状を成すものである。見付け壁部10bの延在縁部において室外に臨む部分には、それぞれ装着溝10cが設けてある。
【0012】
下枠13は、
図4(a)に示すように、別体に成形した下枠本体14及び下枠アタッチメント15を相互に連結することによって構成してある。下枠本体14は、下基壁部14a及び見付け中空壁部14bを一体に成形したものである。下基壁部14aは、見込み方向に沿ってほぼ水平に延在した板状を成している。下基壁部14aの外周側となる見込み面には、外周側に向けて漸次室外側となるように水切り壁部14cが設けてある。見付け中空壁部14bは、下基壁部14aの室内側となる縁部から内周側に向けて見付け方向に沿って延在したもので、断面がほぼ四角の中空状を成している。見付け中空壁部14bの延在縁部において室外に臨む部分には、装着溝14dが設けてある。この装着溝14dには、左右の縦枠11の装着溝10c及び上枠12の装着溝10cにわたって一連の気密材16が装着してある。気密材16としては、EPDM(エチレンプロピレンゴム)やエラストマーを適用することができる。
【0013】
下枠アタッチメント15は、立ち上がり壁部15a、内底壁部15bを一体に成形したものである。立ち上がり壁部15aは、見付け方向に沿って延在した板状を成すものである。立ち上がり壁部15aの内周側となる縁部は、室外に向けてほぼ直角に延在することにより蓋状延在部15cを構成している。内底壁部15bは、立ち上がり壁部15aの外周側となる縁部から室外に向けてほぼ水平方向に延在した板状を成すものである。この下枠アタッチメント15は、立ち上がり壁部15aの室内に臨む見付け面が、下枠本体14における見付け中空壁部14bの室内に臨む見付け面と同一の平面上に位置した状態で内底壁部15bを介して見付け中空壁部14bにネジ(図示せず)を螺合することにより下枠本体14に連結してある。
【0014】
障子20を構成する左右の縦框22、上框23、下框24は、それぞれ框本体20a、面材支持壁部20b、外周壁部20cを一体に成形したものである。框本体20aは、断面がほぼ四角の筒状を成すものである。面材支持壁部20bは、框本体20aの内周側、かつ室外側となる隅部から見付け方向に沿って内周側に延在した板状を成すものである。外周壁部20cは、框本体20aの外周側、かつ室外側となる隅部から見付け方向に沿って外周側に延在した板状を成すものである。これら縦框22、上框23、下框24には、框本体20aの内周側、かつ室内側となる部分に押縁25を装着することにより、面材支持壁部20bと押縁25との間に面材21の縁部が支持された状態となる。この障子20は、上框23と上枠12との間及び下框24と下枠13との間にそれぞれ開閉リンク機構26を介在させることにより、室外に向けて開放可能となる状態で枠体10に支持してある。
【0015】
枠体10に対して障子20を閉じ位置に配置した場合には、枠体10に設けた気密材16が障子20の室内に臨む見付け面に四周同時に当接することにより、室内外の気密性が確保された状態となる。また、下框24と下枠13の立ち上がり壁部15aとの間には、内周側に開口した隙間が確保された状態となる。この隙間の外周となる部分には、内底壁部15bが障子20の下框24に向けて延在した状態となる。下框24の押縁25と立ち上がり壁部15aとの開口1は、蓋状延在部15cによって見込み方向に沿った幅が減少されるが、障子20が閉じ位置に配置された状態にあっても開口した状態に維持される。下框24と立ち上がり壁部15aとの間の隙間には、互いの間に架設するように操作リンク機構2が配設してある。操作リンク機構2は、立ち上がり壁部15aの室内に臨む見付け面に設けた操作ハンドル(操作部材)3を操作することによって動作し、枠体10に対して障子20を開閉させることが可能である。
【0016】
図4(a)からも明らかなように、下枠アタッチメント15の内底壁部15bには、その内周側となる表面に熱膨張性部材30が配設してある。熱膨張性部材30は、熱により膨張する不燃性または難燃性の耐火部材であり、内底壁部15bの長手に沿ってほぼ全長にわたる部分に連続して設けてある。熱膨張性部材30としては、例えば熱膨張性を有した黒鉛含有の発泡材を適用することができる。熱膨張性部材30が膨張を開始する温度は、気密材16が溶融する温度よりも低く設定してあることが好ましい。図には明示していないが、熱膨張性部材30は、下枠アタッチメント15を下枠本体14に連結するためのネジで共締めすることにより、複数箇所が取付ブラケット(図示せず)を介して内底壁部15bに取り付けてある。
【0017】
また、下枠アタッチメント15の内底壁部15b以外にも、下枠本体14における見付け中空壁部14bの室外に臨む見付け面に熱膨張性部材30が配設してある。障子20についても、それぞれの面材支持壁部20bにおいて室内に臨む見付け面に熱膨張性部材30が配設してある。縦框22においては框本体20aの外周側となる見込み面において室外側となる部分に、下框24においては外周壁部20cの室内に臨む見付け面に、それぞれ熱膨張性部材30が配設してある。それぞれの熱膨張性部材30は、長手に沿ってほぼ全長にわたる部分に連続して設けてある。
【0018】
上記のように構成した建具では、上述したように、障子20を閉じ位置に配置した場合、枠体10と間の四周に気密材16が介在した状態となる。従って、雨水等の室外の水や外気が室内に進入する事態を防止することができる。
【0019】
ここで、火災発生時等のように建具が高温に晒された場合には、気密材16が溶融する事態が生じる。溶融した気密材16が立ち上がり壁部15aの蓋状延在部15cと下框24の押縁25との間の開口1を通じて隙間の内部に進入して貯留した場合には、発火して延焼を来す懸念がある。しかしながら、上述の建具では、高温状態に晒された場合、
図4(b)に示すように、内底壁部15bに配設した熱膨張性部材30が上方に向けて膨張するため、立ち上がり壁部15aと下框24との間の隙間がすべて熱膨張性部材30によって充填される以前に内周側の開口1を塞ぐことができる。従って、例えば縦枠11と縦框22との間に介在した気密材16が溶融して下方に流動したとしても、これが立ち上がり壁部15aと下框24との間の隙間に進入する事態を防止することができ、防火性の点で有利となる。しかも、熱膨張性部材30としては、立ち上がり壁部15aの蓋状延在部15cと下框24の押縁25との間の開口1を塞ぐだけの量を設ければ良く、建具の製造コストが大きく増大するおそれもない。
【0020】
なお、上述した実施の形態では、下枠13に立ち上がり壁部15aを設けるようにしているが、本発明はこれに限定されず、無目等のように下框24に対向する下方の横材であれば良い。また、下枠13として、立ち上がり壁部15aを有した下枠アタッチメント15と下枠本体14とを別体に成形したものを例示しているが、立ち上がり壁部15aが別体に成形されている必要はない。さらに、熱膨張性部材30を設ける内底壁部15bが見込み方向に沿ってほぼ水平に延在しているため、障子20を開放した状態においても熱膨張性部材30が視認し難い状態にあり、外観品質の点で有利であるが、内底壁部15bは内周に向いた面を有するものであれば必ずしも水平に延在している必要はない。
【0021】
図5、
図6は、こうした建具の変形例1を示すものである。この変形例1の建具は、実施の形態と同様、枠体10に対して障子20が室外側に向けて突出するように開放する縦すべり出し窓である。下枠(下方の横材)40としてはアルミニウム合金等の金属によって、下枠本体40a、立ち上がり壁部40b、内底壁部40c、蓋状延在部40dが一体に成形されたものを適用している。下枠40の内底壁部40cは、立ち上がり壁部40bの蓋状延在部40dと下框24との間の開口1に対向するように、室外に向けて漸次外周側となるように傾斜している。内底壁部40cの内周側となる表面には、その長手に沿った全長にわたる部分に熱膨張性部材30が配設してある。障子20の框22,23,24には、2つの面材支持壁部20bが設けてあり、これら面材支持壁部20bの間に面材21の縁部が支持してある。つまり、変形例1では、実施の形態で示した押縁は設けていない。なお、その他、変形例1において実施の形態と同様の構成については同一の符号が付してある。
【0022】
この変形例1の建具においても、実施の形態と同様、障子20を閉じ位置に配置した場合、枠体10と間の四周に気密材16が介在した状態となる。従って、雨水等の室外の水や外気が室内に進入する事態を防止することができる。
一方、火災発生時等のように建具が高温に晒された場合には、内底壁部40cに配設した熱膨張性部材30が立ち上がり壁部40bの蓋状延在部40dと下框24との間の開口1に向けて上方に膨張する。このため、膨張する熱膨張性部材30によって開口1が塞がれることになり、縦枠11と縦框22との間に介在した気密材16が溶融して下方に流動した場合にも、立ち上がり壁部40bと下框24との間の隙間に進入する事態を防止することができる。この変形例1の場合にも、立ち上がり壁部40bの蓋状延在部40dと下框24との間の開口1を塞ぐだけの熱膨張性部材30を設ければ良い。特に、内底壁部40cが開口1に対向するように設けてあるため、より少量の熱膨張性部材30によってより確実に溶融した気密材16の進入を防止することが可能となる。これにより、製造コストが増大する事態を抑えた上で、気密材16が発火することに起因した火災の延焼を防止することが可能となる。
【0023】
なお、実施の形態及び変形例1では、いずれも枠体10を構成する縦枠11、上枠12、下枠13及び障子20を構成する縦框22、上框23、下框24として、アルミニウム合金等の金属によって成形したものを例示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図7、
図8に示す変形例2のように、下枠(下方の横材)50としてアルミニウム合金等の金属によって成形した室外側の金属成形部50Aと、樹脂によって成形した室内側の樹脂成形部50Bとを有したものを適用しても良い。すなわち、変形例2の建具では、変形例1と同様、下枠本体50Aa、立ち上がり壁部50Ab、内底壁部50Acが金属成形部50Aとして一体に成形してある。立ち上がり壁部50Abとしては、単に平板状を成すように構成してある。これに対して樹脂成形部50Bには、立ち上がり壁部50Abの室内に臨む見付け面を覆う内装板部50Baと、内装板部50Baの内周側となる縁部から室外に向けてほぼ直角に延在した蓋状延在部50Bbとが一体に成形してある。内底壁部50Acが室外に向けて漸次外周側となるように傾斜し、その内周側となる表面に熱膨張性部材30が配設してある点は、変形例1と同様である。なお、障子20の下框24についても室外側の金属框成形部24Aと室内側の樹脂框成形部24Bとを有して構成してあり、これら金属框成形部24A及び室内側の樹脂框成形部24Bの間に面材21の縁部が支持させてある。
【0024】
この変形例2の建具においても、実施の形態と同様、障子20を閉じ位置に配置した場合、枠体10と間の四周に気密材16が介在した状態となる。従って、雨水等の室外の水や外気が室内に進入する事態を防止することができる。
一方、火災発生時等のように建具が高温に晒された場合には、内底壁部50Acに配設した熱膨張性部材30が立ち上がり壁部50Ab及び蓋状延在部50Bbと下框24との間の開口1に向けて上方に膨張する。このため、膨張する熱膨張性部材30によって開口1を塞ぐことにより、溶融した気密材16が進入する事態を防止することができる。この変形例2の場合にも、立ち上がり壁部50Ab及び蓋状延在部50Bbと下框24との間の開口1を塞ぐだけの熱膨張性部材30を設ければ良い。これにより、製造コストが増大する事態を抑えた上で、気密材16が発火することに起因した火災の延焼を防止することが可能となる。
【0025】
なお、実施の形態、変形例1、変形例2では、いずれも縦すべり出し窓を例示しているが、室外に向けて開放するように構成されているものであれば、外倒し窓等、その他のものにも適用することが可能である。また、実施の形態及び変形例1では、いずれも下方の横材が蓋状延在部を有するように構成しているため、開口1の見込み方向に沿った寸法を減少させることができるが、必ずしも蓋状延在部を設ける必要はない。また、立ち上がり壁部に操作ハンドルを取り付けるようにしているが、必ずしもこれに限定されない。
【0026】
以上のように、本発明に係る建具は、左右の縦材及び上下の横材によって構成された枠体と、面材の四周に左右の縦框、上框及び下框が設けられた障子とを備え、前記枠体に対して前記障子が面外方向に開閉可能に配設された建具であって、前記下方の横材は、前記下框の見付け面に対向する立ち上がり壁部を有し、前記立ち上がり壁部と前記下框との間には内周に向けて開口するように隙間が設けられ、前記立ち上がり壁部には、外周側となる縁部に前記障子に向けて延在する内底壁部が設けられ、前記内底壁部には熱膨張性部材が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、内周に向いた内底壁部に熱膨張性部材を設けるようにしているため、高温に晒された場合に立ち上がり壁部と下框との間の隙間がすべて熱膨張性部材によって充填される以前に開口を塞ぐことができ、溶融した気密材が進入する事態を防止することが可能となる。従って、大量の熱膨張性部材を設けておく必要がなくなり、製造コストを増大させることなく防火性の向上を図ることができる。
【0027】
また本発明は、上述した建具において、前記内底壁部は、水平方向に沿って延在されていることを特徴としている。
この発明によれば、障子が開いた際に熱膨張性部材が視認し難いため、外観品質の点で有利となる。
【0028】
また本発明は、上述した建具において、前記内底壁部は、前記立ち上がり壁部と前記下框との開口に対向するように傾斜して設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、高温に晒された場合に立ち上がり壁部と下框との間の開口に向けて熱膨張性部材を膨張させることができ、より少量の熱膨張性部材によってより確実に溶融した気密材の進入を防止することが可能となる。
【0029】
また本発明は、上述した建具において、前記立ち上がり壁部は、内周側となる縁部に前記障子に向けて延在する蓋状延在部を有していることを特徴としている。
この発明によれば、立ち上がり壁部と下框との間の見込み方向に沿った寸法が減少するため、溶融した気密材の進入を防止することが可能となる。
【0030】
また本発明は、上述した建具において、前記立ち上がり壁部の室内に臨む見付け面には、前記障子を開閉するための操作部材が取り付けられていることを特徴としている。
この発明によれば、操作部材と障子との連係部分が立ち上がり壁部によってカバーされるため、外観品質の点で有利となる。
【符号の説明】
【0031】
1 開口、3 操作ハンドル、10 枠体、11 縦枠、12 上枠、13,40、50 下枠、15a,40b、50Ab 立ち上がり壁部、15b,40c 内底壁部,50Ac 内底壁部、15c 蓋状延在部,40d 蓋状延在部,50Bb 蓋状延在部、16 気密材、20 障子、21 面材、22 縦框、23 上框、24 下框、30 熱膨張性部材