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特開2024-72607バルーンカテーテル用バルーン及びそれを備えるバルーンカテーテル、並びにバルーンカテーテルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072607
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル用バルーン及びそれを備えるバルーンカテーテル、並びにバルーンカテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20240521BHJP
【FI】
A61M25/10 512
A61M25/10 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183542
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 真弘
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼淵 崇亘
(72)【発明者】
【氏名】中野 良紀
(72)【発明者】
【氏名】杖田 昌人
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA06
4C267BB02
4C267BB12
4C267BB27
4C267CC09
4C267FF01
(57)【要約】
【課題】バルーンの収縮状態にてバルーンの外径が小さくなるように折り畳みやすく、血管内腔の挿通性を向上できるバルーンカテーテル用バルーンを提供する。
【解決手段】外層20bと、外層20bよりもショアD硬度が低い材料から構成される内層20aと、を有しているバルーンカテーテル用バルーンであって、径方向y1の外方に突出しており、長手軸方向x1に延在している突出部28を有し、収縮状態で複数の羽根形状部40を有し、直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、羽根形状部40は、羽根形状部40の外表面の長さの中点P1を含む羽根中央部41を有しており、直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、突出部28が存在している領域では、外層20bの厚みTcが内層20aの厚みTaよりも大きく、羽根中央部41では、外層20bの厚みTcが内層20aの厚みTaよりも小さい。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向、径方向、及び周方向を有し、外層と、前記外層よりもショアD硬度が低い材料から構成される内層と、を有しているバルーンカテーテル用バルーンであって、
直管部と、前記直管部よりも近位側に位置している近位側テーパー部と、前記近位側テーパー部よりも近位側に位置している近位側スリーブ部と、前記直管部よりも遠位側に位置している遠位側テーパー部と、前記遠位側テーパー部よりも遠位側に位置している遠位側スリーブ部と、を有し、
前記径方向の外方に突出しており、前記長手軸方向に延在している突出部を有し、
収縮状態で複数の羽根形状部を有し、
前記直管部での長手軸方向に垂直な断面において、前記羽根形状部は、前記羽根形状部の外表面の長さの中点を含む羽根中央部を有しており、
前記直管部での長手軸方向に垂直な断面において、前記突出部が存在している領域では、前記外層の厚みが前記内層の厚みよりも大きく、前記羽根中央部では、前記外層の厚みが前記内層の厚みよりも小さいバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項2】
前記直管部での前記長手軸方向に垂直な断面において、前記羽根形状部は、前記羽根形状部の端部から前記羽根形状部の外表面の長さの1/3分の領域であって、前記羽根形状部の両端に位置する羽根端部領域を有しており、
前記直管部での前記長手軸方向に垂直な断面において、少なくとも一方の前記羽根端部領域では、前記外層の平均厚みが前記内層の平均厚みよりも大きい請求項1に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項3】
前記突出部が存在している領域は、前記突出部の頂部を含む中央部と、前記中央部の前記周方向における両側に位置する端部と、を有しており、
前記直管部での前記長手軸方向に垂直な断面において、前記中央部での前記外層の厚みの割合は、前記羽根中央部での前記内層の厚みの割合よりも大きい請求項1または2に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項4】
前記直管部での前記長手軸方向に垂直な断面において、前記突出部が存在している領域での前記内層の厚みは、前記羽根中央部での前記内層の厚みよりも大きい請求項1または2に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項5】
前記近位側テーパー部および遠位側テーパー部の少なくとも一方での前記長手軸方向に垂直な断面において、前記突出部が存在している領域では、前記外層の厚みが前記内層の厚みよりも大きく、前記羽根中央部では、前記外層の厚みが前記内層の厚みよりも小さい請求項1または2に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項6】
前記突出部が存在している領域は、前記突出部の頂部を含む中央部と、前記中央部の前記周方向における両側に位置する端部と、を有しており、
前記近位側スリーブ部および遠位側スリーブ部の少なくとも一方での前記長手軸方向に垂直な断面において、前記中央部での前記内層の厚みは、前記端部での前記内層の厚みよりも大きい請求項1または2に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項7】
請求項1または2に記載のバルーンカテーテル用バルーンを備えるバルーンカテーテル。
【請求項8】
請求項7に記載のバルーンカテーテルの製造方法であって、
径方向、周方向、及び長手軸方向を有し、前記長手軸方向に延在する内腔を有するパリソンを準備するステップと、
前記パリソンを二軸延伸して、近位側スリーブ部、近位側テーパー部、直管部、遠位側テーパー部、及び遠位側スリーブ部を有し、前記径方向の外方に突出し前記長手軸方向に延在している突出部を有するバルーンを製造するステップと、を含む方法であり、
前記パリソンは、
外層と、前記外層よりもショアD硬度が低い材料から構成される内層と、を有しており、
前記径方向の外方に突出し前記長手軸方向に延在している突出部を含む突出領域と、前記突出領域以外の非突出領域と、を有しており、
前記長手軸方向に垂直な断面において、前記内層は、前記非突出領域において小厚部と、前記小厚部よりも厚い厚みを有する中厚部とを有しており、前記突出領域において前記中厚部の厚みよりも厚い厚みを有する大厚部を有しており、前記周方向において前記小厚部は前記大厚部と前記中厚部の間に位置しているバルーンカテーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテル用バルーン及びそれを備えるバルーンカテーテル、並びにバルーンカテーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内壁に石灰化等により硬化した狭窄部が形成されることにより、狭心症や心筋梗塞等の疾病が引き起こされる。これらの治療の一つとして、バルーンカテーテルを用いて狭窄部を拡張させる血管形成術がある。血管形成術は、バイパス手術のような開胸術を必要としない低侵襲療法であり、広く行われている。
【0003】
血管形成術において、一般的なバルーンカテーテルでは石灰化等により硬化した狭窄部を拡張させにくいことがある。また、ステントと称される留置拡張器具を狭窄部に留置することによって狭窄部を拡張する方法も用いられているが、例えば、この治療後に血管に新生内膜が過剰に増殖して再び血管の狭窄が発生してしまうISR(In-Stent-Restenosis)病変等が起こる場合もある。ISR病変では新生内膜が柔らかく、また表面が滑りやすいため、一般的なバルーンカテーテルではバルーンの拡張時にバルーンの位置が病変部からずれてしまい血管を傷つけてしまうことがある。
【0004】
このような石灰化病変やISR病変等の病変であっても狭窄部を拡張できるバルーンカテーテルとして、狭窄部に食い込ませるための突出部やブレード、スコアリングエレメントがバルーンに設けられているバルーンカテーテルが開発されている。例えば、特許文献1には、突出部にアモルファスポリマーを用いることにより、突出部の剛性をバルーン壁よりも大きくして、突出部による切開効率を向上したバルーンカテーテルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0128718号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、バルーンは、バルーンの内部を減圧し、バルーンを収縮させた状態にて羽根形状部を形成し、羽根形状部をシャフトに巻き付けてバルーンを折り畳む。このようにバルーンを折り畳むことによってバルーンの外径が小さくなり、バルーンが血管内腔を通過しやすくなる。しかし、上記従来のバルーンでは、バルーンの外径が小さくなるように綺麗に折り畳むという点で改善の余地があった。
【0007】
上記の事情に鑑み本発明は、バルーンの収縮状態にてバルーンの外径が小さくなるように折り畳みやすく、血管内腔の挿通性を向上できるバルーンカテーテル用バルーン及びそれを備えるバルーンカテーテル、並びにバルーンカテーテルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し得た本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンは、以下の通りである。
[1]長手軸方向、径方向、及び周方向を有し、外層と、前記外層よりもショアD硬度が低い材料から構成される内層と、を有しているバルーンカテーテル用バルーンであって、
直管部と、前記直管部よりも近位側に位置している近位側テーパー部と、前記近位側テーパー部よりも近位側に位置している近位側スリーブ部と、前記直管部よりも遠位側に位置している遠位側テーパー部と、前記遠位側テーパー部よりも遠位側に位置している遠位側スリーブ部と、を有し、
前記径方向の外方に突出しており、前記長手軸方向に延在している突出部を有し、
収縮状態で複数の羽根形状部を有し、
前記直管部での長手軸方向に垂直な断面において、前記羽根形状部は、前記羽根形状部の外表面の長さの中点を含む羽根中央部を有しており、
前記直管部での長手軸方向に垂直な断面において、前記突出部が存在している領域では、前記外層の厚みが前記内層の厚みよりも大きく、前記羽根中央部では、前記外層の厚みが前記内層の厚みよりも小さいバルーンカテーテル用バルーン。
[2]前記直管部での前記長手軸方向に垂直な断面において、前記羽根形状部は、前記羽根形状部の端部から前記羽根形状部の外表面の長さの1/3分の領域であって、前記羽根形状部の両端に位置する羽根端部領域を有しており、
前記直管部での前記長手軸方向に垂直な断面において、少なくとも一方の前記羽根端部領域では、前記外層の平均厚みが前記内層の平均厚みよりも大きい[1]に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[3]前記突出部が存在している領域は、前記突出部の頂部を含む中央部と、前記中央部の前記周方向における両側に位置する端部と、を有しており、
前記直管部での前記長手軸方向に垂直な断面において、前記中央部での前記外層の厚みの割合は、前記羽根中央部での前記内層の厚みの割合よりも大きい[1]又は[2]に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[4]前記直管部での前記長手軸方向に垂直な断面において、前記突出部が存在している領域での前記内層の厚みは、前記羽根中央部での前記内層の厚みよりも大きい[1]~[3]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[5]前記近位側テーパー部および遠位側テーパー部の少なくとも一方での前記長手軸方向に垂直な断面において、前記突出部が存在している領域では、前記外層の厚みが前記内層の厚みよりも大きく、前記羽根中央部では、前記外層の厚みが前記内層の厚みよりも小さい[1]~[4]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[6]前記突出部が存在している領域は、前記突出部の頂部を含む中央部と、前記中央部の前記周方向における両側に位置する端部と、を有しており、
前記近位側スリーブ部および遠位側スリーブ部の少なくとも一方での前記長手軸方向に垂直な断面において、前記中央部での前記内層の厚みは、前記端部での前記内層の厚みよりも大きい[1]~[5]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【0009】
本発明はまた、以下を提供する。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーンを備えるバルーンカテーテル。
【0010】
本発明はさらに、[7]に記載のバルーンカテーテルの製造方法を提供する。本発明の実施形態に係る製造方法は、以下の通りである。
[8]上記[7]に記載のバルーンカテーテルの製造方法であって、
径方向、周方向、及び長手軸方向を有し、前記長手軸方向に延在する内腔を有するパリソンを準備するステップと、
前記パリソンを二軸延伸して、近位側スリーブ部、近位側テーパー部、直管部、遠位側テーパー部、及び遠位側スリーブ部を有し、前記径方向の外方に突出し前記長手軸方向に延在している突出部を有するバルーンを製造するステップと、を含む方法であり、
前記パリソンは、
外層と、前記外層よりもショアD硬度が低い材料から構成される内層と、を有しており、
前記径方向の外方に突出し前記長手軸方向に延在している突出部を含む突出領域と、前記突出領域以外の非突出領域と、を有しており、
前記長手軸方向に垂直な断面において、前記内層は、前記非突出領域において小厚部と、前記小厚部よりも厚い厚みを有する中厚部とを有しており、前記突出領域において前記中厚部の厚みよりも厚い厚みを有する大厚部を有しており、前記周方向において前記小厚部は前記大厚部と前記中厚部の間に位置しているバルーンカテーテルの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
上記バルーンカテーテル用バルーン及びそれを備えるバルーンカテーテル、並びにバルーンカテーテルの製造方法によれば、バルーンの収縮状態にてバルーンの外径が小さくなるように折り畳みやすく、血管内腔の挿通性を向上できるバルーンカテーテル用バルーン及びそれを備えるバルーンカテーテル、並びにバルーンカテーテルの製造方法を提供することができる。これにより、バルーンカテーテルによる治療や処置の安全性を向上しつつ効率的な狭窄部の切開を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテルの側面図を表す。
図2図1に示したバルーンカテーテルのII-II断面図を表す。
図3図1に示したバルーンカテーテルのIII-III断面図を表す。
図4図1に示したバルーンカテーテルのIV-IV断面図を表す。
図5図2に示したバルーンカテーテルの収縮状態での断面図を表す。
図6図3に示したバルーンカテーテルの収縮状態での断面図を表す。
図7】本発明の一実施形態に係る二軸延伸前のパリソンの斜視図を表す。
図8図7に示したパリソンのVIII-VIII断面図を表す。
図9図8に示したパリソンの製造に用いられるパリソン用金型の長手軸方向に垂直な断面図を表す。
図10】本発明の実施形態に係る製造方法においてパリソンの二軸延伸に用いられる金型の長手軸方向の断面図を表す。
図11図10に示した金型のXI-XI断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態に基づき本発明を説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0014】
1.バルーンカテーテル用バルーン
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンは、長手軸方向、径方向、及び周方向を有し、外層と、外層よりもショアD硬度が低い材料から構成される内層と、を有しているバルーンカテーテル用バルーンであって、直管部と、直管部よりも近位側に位置している近位側テーパー部と、近位側テーパー部よりも近位側に位置している近位側スリーブ部と、直管部よりも遠位側に位置している遠位側テーパー部と、遠位側テーパー部よりも遠位側に位置している遠位側スリーブ部と、を有し、径方向の外方に突出しており、長手軸方向に延在している突出部を有し、収縮状態で複数の羽根形状部を有し、直管部での長手軸方向に垂直な断面において、羽根形状部は、羽根形状部の外表面の長さの中点を含む羽根中央部を有しており、直管部での長手軸方向に垂直な断面において、突出部が存在している領域では、外層の厚みが内層の厚みよりも大きく、羽根中央部では、外層の厚みが内層の厚みよりも小さい。
【0015】
バルーンカテーテルによる狭窄部の拡張は、バルーンカテーテルの遠位端部に設けられたバルーンを血管内腔に挿入して狭窄部まで送達した後バルーンを拡張させ、バルーンの径方向の外方に設けられた突出部を狭窄部に食い込ませることにより狭窄部を切開することで行われる。上記バルーンカテーテル用バルーンによれば、突出部が存在している領域では、内層よりもショアD硬度が高い材料から構成される外層の厚みが内層の厚みよりも大きいため、突出部の剛性が高まる。その結果、突出部による狭窄部の切開が行いやすくなる。
【0016】
狭窄部へのバルーンの挿入時や体内からの抜去時には、バルーンの内腔から流体を排出して収縮させ、シャフトにバルーンの羽根形状部を巻き付けることによりバルーンの外径を小さくすることができる。上記バルーンカテーテル用バルーンによれば、羽根中央部では、外層よりもショアD硬度が低い材料から構成される内層の厚みよりも外層の厚みが小さいため、羽根中央部の柔軟性が高まる。そのため、バルーンを収縮させて羽根形状部を形成する際に、柔軟な羽根中央部がバルーンの折り畳みの起点となりやすくなる。その結果、羽根形状部の位置や形状を制御しやすくなり、バルーンの収縮状態にてバルーンの外径が小さくなるように折り畳みやすく、血管内腔の挿通性を向上することができる。
【0017】
つまり、上記バルーンカテーテル用バルーンによれば、直管部での長手軸方向に垂直な断面において、突出部が存在している領域では外層の厚みが内層の厚みよりも大きく、羽根中央部では外層の厚みが内層の厚みよりも小さいことにより、突出部による狭窄部の切開が行いやすく、かつ、バルーンの収縮状態ではバルーンの外径が小さくなるように折り畳みやすくなる。そのため、血管内腔の挿通性がよく、バルーンカテーテルによる治療や処置の安全性を向上しつつ効率的な狭窄部の切開を行うことが可能になる。
【0018】
本明細書において、バルーンカテーテル用バルーンを単に「バルーン」と称することがある。
【0019】
以下、図1図6を参照しつつ、本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンについて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテルの側面図である。図2図1に示したバルーンカテーテルのII-II断面図を表し、直管部の長手軸方向に垂直な断面図を表している。図3図1に示したバルーンカテーテルのIII-III断面図を表し、遠位側テーパー部の長手軸方向に垂直な断面図を表している。図4図1に示したバルーンカテーテルのIV-IV断面図を表し、遠位側スリーブ部の長手軸方向に垂直な断面図を表している。図5図2に示したバルーンカテーテルの収縮状態であって、直管部の長手軸方向に垂直な断面図を表している。図6図3に示したバルーンカテーテルの収縮状態であって、遠位側テーパー部の長手軸方向に垂直な断面図を表している。
【0020】
図1に示すように、バルーン2はバルーンカテーテル1に用いられる。バルーン2はシャフト30の遠位端部に接続され、シャフト30の内腔を通じて流体を導入することによりバルーン2を拡張させ、流体を排出することでバルーン2を収縮させることができる。バルーン2の拡張と収縮を制御するために、インデフレーター(バルーン用加圧器)を用いて流体を導入又は排出することができる。流体は、ポンプ等により加圧された加圧流体であってもよい。バルーンカテーテル1については、「2.バルーンカテーテル」の項で詳述する。
【0021】
バルーン2は、長手軸方向x1と、長手軸方向x1に垂直な断面においてバルーン2の外縁の図心と外縁上の点とを結ぶ径方向y1と、長手軸方向x1に垂直な断面においてバルーン2の外縁に沿う周方向z1を有する。本明細書において、長手軸方向x1において使用者の手元側の方向を近位側と称し、近位側とは反対側、即ち処置対象者の方向を遠位側と称する。
【0022】
バルーン2以外の部材や部分は、それぞれ長手軸方向、径方向、及び周方向を有し、それらはバルーン2の長手軸方向x1、径方向y1、及び周方向z1とは同じである場合もあり異なる場合もあるが、本明細書においては理解のし易さのために全ての部材や部分がバルーン2の長手軸方向x1、径方向y1、及び周方向z1と同じ長手軸方向、径方向、及び周方向を有しているとして説明する。
【0023】
図1図6に示すように、バルーン2は、径方向y1の外方に突出し長手軸方向x1に延在している突出部28を有している。突出部28は、バルーン2の突出部28が設けられていない部分の厚みよりも厚く形成されている部分である。即ち、図2図4に示すように、突出部28は、バルーン2の突出部28が設けられていない部分の厚みを有するバルーン本体部20の外面よりも径方向y1の外方に突出している部分であると言い換えることもできる。
【0024】
バルーン2の突出部28における厚みは、例えば、バルーン2の突出部28が設けられていない部分の厚みの1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上がより好ましく、1.8倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上がさらに好ましい。バルーン2の突出部28における厚みの上限は特に限定されず、例えば、バルーン2の突出部28が設けられていない部分の厚みの30倍以下、20倍以下、10倍以下であってもよい。
【0025】
バルーン本体部20はバルーン2の基本形状を規定し、突出部28はバルーン本体部20の外側面に線状、点状、網状、らせん状等の任意のパターンで好ましく設けられている。突出部28によりバルーン2はスコアリング機能が付与され、バルーン2は血管形成術において石灰化した狭窄部に亀裂を入れて拡張することが可能になる。また、突出部28は、バルーン2の強度向上や加圧時の過拡張の抑制にも寄与できる。
【0026】
図2図4に示すように、突出部28は周方向z1に複数設けられていてもよいし、1つ設けられていてもよい。突出部28の周方向z1における数は、1以上、2以上、3以上、4以上、6以上であってもよく、また、20以下、15以下、10以下であってもよい。突出部28が周方向z1において複数設けられる場合、複数の突出部28は周方向z1に離隔していることが好ましく、周方向z1に等間隔に配されていることがより好ましい。離隔距離は、突出部28の最大周長よりも長いことが好ましい。
【0027】
長手軸方向x1に垂直な断面における突出部28の断面形状は任意であってよく、例えば、三角形、四角形、多角形、半円形、円形の一部、略円形、扇型、楔形、凸字形、紡錘形、及びそれらの組み合わせ等であってもよい。なお、三角形、四角形、及び多角形は、角部の頂点が明確であって辺部が直線であるものの他に、角部が丸みを帯びている所謂角丸多角形や、辺部の少なくとも一部が曲線となっているものも含むものとする。或いは、突出部28の断面形状は、凹凸や欠け等を有した不定形な形状であってもよい。
【0028】
突出部28が線状又は点状に形成されている場合、突出部28は長手軸方向x1に沿って延在するように配されていることが好ましい。或いは、突出部28は、長手軸周りにらせん状に延在するように配されていてもよい。
【0029】
図示していないが、バルーン2は、径方向y1の内方に突出している内側突出部を有していてもよい。内側突出部は長手軸方向x1に延在していることが好ましい。突出部28と内側突出部は、バルーン2の長手方向x1や周方向z1において同じ位置に配置されていることが好ましく、これらは一体形成されていることが好ましい。突出部28とバルーン本体部20と内側突出部とが一体に厚く形成されていることにより、バルーン2が突出部28と内側突出部とを有していてもよい。
【0030】
バルーン2は、外層20bと、外層20bよりも径方向の内方であって、外層20bよりもショアD硬度が低い材料から構成される内層20aと、を有している。バルーン2は、全ての部分で内層20aと外層20bからなる2層構造を有していることが好ましい。詳細には、長手軸方向x1の任意の位置における周方向z1の360度全体にわたって内層20aと外層20bが連続して存在していることが好ましい。バルーン2が全ての部分で内層20aと外層20bからなる2層構造を有していることにより、バルーン2の外側面はショアD硬度の高い外層20bで形成されるため、バルーン2の外側面が傷つきにくく強度を向上できる。また、突出部28の外側面もショアD硬度の高い外層20bで形成されるため、突出部28のスコアリング機能を高めることができる。
【0031】
内層20aのショアD硬度は、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上であることが好ましく、また、70以下、65以下、60以下、55以下であることが好ましい。外層20bのショアD硬度は、70超、72以上、74以上、75以上であることが好ましく、また、90以下、85以下、80以下であることが好ましい。内層20aのショアD硬度が上記範囲であれば、バルーン2の柔軟性向上に寄与することができる。外層20bのショアD硬度が上記範囲であれば、バルーン2の強度向上や突出部28のスコアリング機能向上に寄与することができる。
【0032】
ショアD硬度は、例えば、JIS K6253-2:2012の記載に基づきタイプDデュロメータを用いて測定することができる。また、内層20aと外層20bの各ショアD硬度は、バルーン2に成形する前の材料の段階でのショアD硬度であってもよい。
【0033】
外層20bの材料としては、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂が好適に用いられる。内層20aの材料としては、ショアD硬度が小さい観点から熱可塑性エラストマーを用いることが好ましく、例えば、ポリエーテルブロックアミド共重合体等のポリアミドエラストマーが好適に用いられる。
【0034】
図1に示すように、バルーン2は、長手軸方向x1に近位端と遠位端とを有しており、直管部23と、直管部23よりも近位側に位置している近位側テーパー部22と、近位側テーパー部22よりも近位側に位置している近位側スリーブ部21と、直管部23よりも遠位側に位置している遠位側テーパー部24と、遠位側テーパー部24よりも遠位側に位置している遠位側スリーブ部25と、を有している。直管部23は、長手軸方向x1においておよそ同じ径を有している略円柱状であることが好ましいが、長手軸方向x1において異なる径を有していてもよい。近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24は、直管部23から離れるにつれて縮径して略円錐状、円錐台状に形成されていることが好ましい。直管部23が最大径を有することにより、バルーン2を狭窄部等の病変部において拡張させた際に、直管部23が病変部に十分接触して病変部の拡張等の治療を行い易くできる。また、近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24が縮径されていることにより、バルーン2を収縮させた際に、バルーン2の近位端部及び遠位端部の外径を小さくしてシャフト30とバルーン2との段差を小さくすることができるため、バルーン2を体腔内に挿通し易くすることができる。
【0035】
近位側テーパー部22、直管部23、及び遠位側テーパー部24がバルーン2に流体を導入した際に拡張する部分であるのに対し、近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25は拡張しないことが好ましい。これにより、近位側スリーブ部21の少なくとも一部をシャフト30の遠位端部と固定し、遠位側スリーブ部25の少なくとも一部を後述するインナーシャフト60と固定する構成とすることができる。
【0036】
バルーン2は、近位側スリーブ部21、近位側テーパー部22、直管部23、遠位側テーパー部24、遠位側スリーブ部25の各領域において、突出部28を有していることが好ましい。これにより、直管部23に設けられた突出部28はスコアリング機能の向上に寄与でき、直管部23以外に設けられた突出部28はバルーン2の強度向上や加圧時の過拡張の抑制に寄与することができる。
【0037】
図2に示すように、直管部23において、突出部28は、径方向y1の外方端である頂部28Tと、頂部28Tよりも径方向y1の内方に位置しておりバルーン2の外面と接続している基端28Bを有している。突出部28が頂部28Tを有していれば、頂部28Tが狭窄部を切開しやすくなり、突出部28による切開効率を向上できる。図3及び図4に示すように、近位側スリーブ部21、近位側テーパー部22、遠位側テーパー部24、及び遠位側スリーブ部25において、突出部28は、頂部28Tを有していてもよい。
【0038】
突出部28において、径方向y1の外方側の先端部分を変形させる加工がなされていたり、除去されていたりすること等によって、頂部28Tの位置が定めにくい場合には、長手軸方向x1に垂直な断面において、基端28Bの幅方向の中点とバルーン2の外形の図心とを通る直線と、突出部28の外形の輪郭線とが交わる地点を頂部28Tとしてもよい。なお、基端28Bの幅方向の中点は、突出部28の周方向z1の第1方向d1側の端部と周方向z1の第2方向d2側の端部とを結ぶ線分の中点を指す。
【0039】
直管部23に設けられている突出部28は、周方向z1の第1方向d1及び第2方向d2のいずれかに倒れていてもよい。直管部23に設けられている突出部28は、周方向z1の第1方向d1及び第2方向d2のいずれかに倒れている角度が、所定の範囲にとどまっていることが好ましい。これにより、突出部28によるバルーン2の病変部への固定や狭窄部の切開を効率よく行うことができる。突出部28が周方向z1の第1方向d1及び第22方向d2のいずれかに倒れているとき、基端28Bの幅方向の中点と頂部28Tとを結ぶ直線Lpと基端28Bの垂線Lvとは一致するくらいに近い、即ち、基端28Bの幅方向の中点と頂部28Tとを結ぶ直線Lpと基端28Bの垂線Lvとがなす角度は0度に近いことが好ましい。該角度の絶対値は、5度以下、10度以下、15度以下であることも許容される。このとき、上記直線Lpと基端28Bの垂線Lvとがなす角度は、基端28Bの幅方向の中点を起点とし、直線Lpが基端28Bの垂線Lvに対して突出部28が倒れる方向になす角度とする。ここで、垂線Lvは、径方向yの断面において、基端28Bの周方向z1の一方端と他方端とを結ぶ線分に向かって頂部28Tから引いた垂線とする。なお、基端28Bの幅方向の中点は、突出部28の周方向z1の第1方向d1側の端部と周方向z1の第2方向d2側の端部とを結ぶ線分の中点を指す。
【0040】
図5及び図6に示すように、バルーン2は、収縮状態で複数の羽根形状部40を有している。羽根形状部40は、バルーン2が収縮している状態において、バルーン2の内表面の内、互いに重なり合う部分を有することが好ましい。また、羽根形状部40は、例えば羽根形状部40の頂部を折り目として折り畳めるように形成されていることが好ましい。
【0041】
図5及び図6に示すように、突出部28は、羽根形状部40以外の部分に位置していることが好ましい。つまり、突出部28は、バルーンの収縮状態において、羽根形状部40とならない部分に位置していることが好ましい。突出部28が羽根形状部40以外の部分に位置していることにより、収縮状態のバルーン2の周方向において、羽根形状部40と突出部28とが異なる位置に配置されることとなる。そのため、バルーン2の羽根形状部40を折り畳んだ際に、バルーン2の外径を小さくすることができる。
【0042】
図5に示すように、直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、羽根形状部40は、羽根形状部40の外表面の長さの中点P1を含む羽根中央部41を有している。つまり、羽根中央部41は、1つの羽根形状部40の外表面の長さの中点P1を含む領域である。なお、直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、羽根中央部41は、羽根形状部40の外表面の長さの1/3分の領域であることが好ましい。
【0043】
直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、図2及び図5に示すように、突出部28が存在している領域では、外層20bの厚みTcが内層20aの厚みTaよりも大きく、図5に示すように、羽根中央部41では、外層20bの厚みTcが内層20aの厚みTaよりも小さい。なお、突出部28が存在している領域での外層20bの厚みTcは、バルーン2の拡張時での突出部28が存在している領域における径方向y1での外層20bの最大の厚みを指し、突出部28が存在している領域での内層20aの厚みTaは、バルーン2の拡張時での突出部28が存在している領域における径方向y1での内層20aの最大の厚みを指す。また、羽根中央部41での外層20bの厚みTcは、バルーン2の拡張時での羽根中央部41における径方向y1での外層20bの最大の厚みを指し、羽根中央部41での内層20aの厚みTaは、バルーン2の拡張時での羽根中央部41における径方向y1での内層20aの最大の厚みを指す。
【0044】
直管部23において、突出部28が存在している領域では外層20bの厚みTcが内層20aの厚みTaよりも大きいことにより、外層20bは内層20aよりもショアD硬度が高いため、突出部28の剛性が高まる。その結果、突出部28による狭窄部の切開が行いやすくなる。また、直管部23において、羽根中央部41では外層20bの厚みTcが内層20aの厚みTaよりも小さいことにより、内層20aは外層20bよりもショアD硬度が低いため、羽根中央部41の柔軟性が高まる。その結果、バルーン2を収縮させて羽根形状部40を形成する際に、柔軟な羽根中央部41がバルーン2の折り畳みの起点となりやすく、羽根形状部40の位置や形状を制御しやすくなる。そのため、バルーンの収縮状態にてバルーン2の外径が小さくなるように折り畳みやすく、バルーン2の血管内腔への挿通性を向上させることができる。
【0045】
つまり、直管部23において、突出部28が存在している領域では外層20bの厚みTcが内層20aの厚みTaよりも大きく、羽根中央部41では外層20bの厚みTcが内層20aの厚みTaよりも小さいことにより、突出部28による狭窄部の切開が行いやすく、かつ、バルーン2の収縮状態ではバルーン2の外径が小さくなるように折り畳みやすくなる。そのため、血管内腔の挿通性がよく、バルーンカテーテル1による治療や処置の安全性を向上しつつ、狭窄部の切開を効率的に行うことが可能になる。
【0046】
直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、突出部28が存在している領域での外層20bの厚みTcは、内層20aの厚みTaの1.5倍以上であることが好ましく、1.7倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることがさらに好ましい。直管部23における突出部28が存在している領域での外層20bの厚みTcと内層20aの厚みTaとの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、ショアD硬度が高い外層20bによって突出部28の剛性が高まり、狭窄部に突出部28が刺さりやすくすることができる。また、直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、突出部28が存在している領域での外層20bの厚みTcは、内層20aの厚みTaの10倍以下であることが好ましく、9倍以下であることがより好ましく、8倍以下であることがさらに好ましい。直管部23における突出部28が存在している領域での外層20bの厚みTcと内層20aの厚みTaとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、突出部28において内層20aの厚みを確保することができ、バルーン2の拡張時等バルーン2が周方向z1に伸長した際に、突出部28での内層20aを破断しにくくすることができる。
【0047】
直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、羽根中央部41での外層20bの厚みTcは、内層20aの厚みTaの95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、85%以下であることがさらに好ましい。直管部23における羽根中央部41での外層20bの厚みTcと内層20aの厚みTaとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、ショアD硬度が低い内層20aによって羽根中央部41の柔軟性が高まり、収縮状態において羽根形状部40の位置や形状を制御してバルーン2の外径が小さくなるように折り畳みやすく、バルーン2の血管内腔への挿通性を向上させることができる。また、直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、羽根中央部41での外層20bの厚みTcは、内層20aの厚みTaの5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましい。直管部23における羽根中央部41での外層20bの厚みTcと内層20aの厚みTaとの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、ショアD硬度が高い外層20bによって羽根形状部40の剛性を確保することができ、バルーン2の強度及び挿通性を向上することができる。
【0048】
図2に示すように、直管部23において、バルーン2は全体にわたって少なくとも内層20aと外層20bからなる2層構造を有していることが好ましい。即ち、直管部23において、バルーン2の突出部28が設けられていない部分から突出部28が設けられている部分にわたって少なくとも内層20aと外層20bが周方向z1の360度全体に連続して存在していることが好ましい。直管部23において、バルーン2は全体にわたって少なくとも内層20aと外層20bからなる2層構造を有していることにより、ショアD硬度の高い外層20bによって突出部28のスコアリング機能、バルーン2の強度及び挿通性を向上することができる。
【0049】
バルーン2は、内層20a及び外層20bとは異なる層をさらに有していてもよい。具体例としては、図示していないが、内層20aよりも径方向y1の内側に最内層を有していてもよく、外層20bよりも径方向y1の外側に最外層を有していてもよく、内層20aよりも径方向y1の外側かつ外層20bよりも径方向y1の内側に中間層を有していてもよい。
【0050】
突出部28とバルーン本体部20とは、一体成形であることが好ましい。突出部28及びバルーン本体部20が一体成形であることにより、バルーン本体部20からの突出部28の脱落を防止することができる。
【0051】
内側突出部が設けられる場合も、バルーン2の内側突出部が設けられていない部分と内側突出部が設けられている部分の内層20aと外層20bは周方向z1に連続していることが好ましい。これにより、内側突出部とバルーン本体部20とを一体形成することができ、バルーン本体部20からの内側突出部の脱落を防ぐことができる。
【0052】
図5に示すように、直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、羽根形状部40は、羽根形状部40の端部40aから羽根形状部40の外表面の長さの1/3分の領域であって、羽根形状部40の両端に位置する羽根端部領域42を有していることが好ましい。つまり、直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、羽根形状部40は、羽根中央部41と、羽根中央部41の両側にそれぞれ羽根端部領域42を有していることが好ましい。
【0053】
直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、少なくとも一方の羽根端部領域42では、外層20bの平均厚みが内層20aの平均厚みよりも大きいことが好ましい。つまり、羽根中央部41では内層20aが外層20bよりも厚く、少なくとも一方の羽根端部領域42では外層20bが内層20aよりも厚いことが好ましい。直管部23における少なくとも一方の羽根端部領域42での外層20bの平均厚みが内層20aの平均厚みよりも大きいことにより、羽根端部領域42の方が羽根中央部41よりも剛性が高くなりやすく、バルーン2を収縮させた際に羽根中央部41がバルーン2の折り畳みの起点となりやすく、羽根形状部40の位置や形状を制御してバルーン2の外径が小さくなるように折り畳みやすくすることができる。
【0054】
直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、羽根形状部40が有している2つの羽根端部領域42にて外層20bの平均厚みが内層20aの平均厚みよりも大きいことが好ましい。2つの羽根端部領域42での外層20bの平均厚みが内層20aの平均厚みよりも大きいことにより、羽根中央部41がバルーン2の折り畳みの起点となりやすくする効果を高めることが可能となる。
【0055】
直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、少なくとも一方の羽根端部領域42での外層20bの平均厚みは、内層20aの平均厚みの1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。直管部23における少なくとも一方の羽根端部領域42での外層20bの平均厚みと内層20aの平均厚みとの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、羽根端部領域42の剛性が高まりやすく、羽根端部領域42よりも羽根中央部41の方が折り畳みの起点となりやすくなる。また、直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、少なくとも一方の羽根端部領域42での外層20bの平均厚みは、内層20aの平均厚みの10倍以下であることが好ましく、9倍以下であることがより好ましく、8倍以下であることがさらに好ましい。直管部23における少なくとも一方の羽根端部領域42での外層20bの平均厚みと内層20aの平均厚みとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、羽根端部領域42にある程度の柔軟性を付与することができ、シャフト30に羽根形状部40を巻き付けやすく、バルーン2の外径をより小さくすることが可能となる。
【0056】
図2に示すように、突出部28が存在している領域は、頂部28Tを含む中央部29aと、中央部29aの周方向z1における両側に位置する端部29bと、を有している。つまり、突出部28が存在している領域は、直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、周方向z1において2つの端部29bを有しており、2つの端部29bの間に中央部29aを有している。
【0057】
中央部29aは、頂部28Tを含む領域である。中央部29aは、頂部28Tを含む領域であり、基端28Bの幅方向の中点と頂部28Tとを結ぶ直線Lpを含む領域であってもよい。端部29bは、中央部29aの周方向z1における両側に位置する領域である。端部29bは、中央部29aの両側に位置する領域であり、基端28Bの周方向z1の一方端を含み、中央部29aよりも該一方側に位置している領域、及び、基端28Bの周方向z1の他方端を含み、中央部29aよりも該他方側に位置している領域であってもよい。
【0058】
中央部29aは、突出部28が存在している領域において、基端28Bの幅方向の中点と頂部28Tとを結ぶ直線Lpを含み、基端28Bの幅を3等分したうちの真ん中の領域であることが好ましい。また、端部29bは、突出部28が存在している領域において、基端28Bの周方向z1の一方端を含み、基端28Bの幅を3等分したうちの該一方側に位置している領域、及び、基端28Bの周方向z1の他方端を含み、基端28Bの幅を3等分したうちの該他方側に位置している領域であることが好ましい。
【0059】
直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、中央部29aでの外層20bの厚みTcの割合は、羽根中央部41での内層20aの厚みTaの割合よりも大きいことが好ましい。つまり、直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、中央部29a全体における外層20bの厚みTcの割合が、羽根中央部41全体における内層20aの厚みTaの割合よりも大きいことが好ましい。直管部23において、中央部29aでの外層20bの厚みTcの割合が羽根中央部41での内層20aの厚みTaの割合よりも大きいことにより、突出部28では剛性が高まり、かつ、羽根中央部41では柔軟性が高まるため、突出部28による狭窄部の切開効率を向上させつつ、バルーン2の収縮時に外径が小さくなるように折り畳みやすくすることができる。
【0060】
直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、中央部29a全体に対する外層20bの厚みTcの割合は、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。直管部23における中央部29aでの外層20bの厚みTcの割合の下限値を上記の範囲に設定することにより、中央部29aにおける外層20bの存在比率が高まり、中央部29aの剛性を高めて狭窄部に食い込みやすくすることができる。また、直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、中央部29a全体に対する外層20bの厚みTcの割合は、95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、85%以下であることがさらに好ましい。直管部23における中央部29aでの外層20bの厚みTcの割合の上限値を上記の範囲に設定することにより、中央部29aにおいて内層20aがある程度存在することとなり、バルーン2を拡張させて突出部28が周方向z1に伸長した際に、内層20aが破断することを防止できる。
【0061】
直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、羽根中央部41全体に対する内層20aの厚みTaの割合は、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。直管部23における羽根中央部41での内層20aの厚みTaの割合の下限値を上記の範囲に設定することにより、羽根中央部41における内層20aの存在比率が高まり、羽根中央部41の柔軟性を高めて折り畳みの起点となりやすくすることができる。また、直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、羽根中央部41全体に対する内層20aの厚みTaの割合は、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、70%以下であることがさらに好ましい。直管部23における羽根中央部41での内層20aの厚みTaの割合の上限値を上記の範囲に設定することにより、バルーン2の全体の剛性を高め、バルーン2の強度や挿通性を向上させることが可能となる。
【0062】
直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、突出部28が存在している領域での内層20aの厚みTaは、羽根中央部41での内層20aの厚みTaよりも大きいことが好ましい。直管部23において、突出部28が存在している領域での内層20aの厚みTaが羽根中央部41での内層20aの厚みTaよりも大きいことにより、バルーン2の全体において羽根中央部41の柔軟性が高まり、羽根中央部41が折り畳みの起点となりやすく、また、羽根形状部40が柔軟なものとなるため、バルーンの収縮状態において、容易にバルーン2の外径を小さく折り畳むことが可能となる。
【0063】
直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、突出部28が存在している領域での内層20aの厚みTaは、羽根中央部41での内層20aの厚みTaの1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。直管部23における突出部28が存在している領域での内層20aの厚みTaと、羽根中央部41での内層20aの厚みTaとの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、羽根中央部41の柔軟性をより高めることができる。また、直管部23での長手軸方向x1に垂直な断面において、突出部28が存在している領域での内層20aの厚みTaは、羽根中央部41での内層20aの厚みTaの10倍以下であることが好ましく、9倍以下であることがより好ましく、8倍以下であることがさらに好ましい。直管部23における突出部28が存在している領域での内層20aの厚みTaと、羽根中央部41での内層20aの厚みTaとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、バルーン2の全体において適度な柔軟性と強度の両立を図ることができる。
【0064】
近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方での長手軸方向x1に垂直な断面において、近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方に設けられている突出部28は、周方向z1の第1方向d1及び第2方向d2のいずれにも倒れていない構成であってもよく、周方向z1の第1方向d1及び第2方向d2のいずれかに倒れている構成であってもよい。近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方において、突出部28が周方向z1の第1方向d1及び第2方向d2のいずれにも倒れていないことにより、突出部28が設けられている近位側テーパー部22や遠位側テーパー部24において、突出部28によってバルーン2の長手軸方向x1の剛性が高まる。その結果、血管内腔へのバルーン2の挿通性を向上させることができる。近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方において、突出部28が周方向z1の第1方向d1及び第2方向d2のいずれかに倒れていることにより、バルーン2を病変部まで送達する際に、近位側テーパー部22や遠位側テーパー部24の突出部28の頂部28Tが血管内腔壁等の他物に接触しにくくなり、血管内腔壁の損傷を防止することが可能となる。
【0065】
図示していないが、近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方での長手軸方向x1に垂直な断面において、近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方に設けられている突出部28は、切削や溶解、押し潰す等の加工によって、径方向y1の外方側である突出部28の先端部分が除去されていてもよい。近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方に設けられている突出部28の先端部分が除去されていることにより、バルーン2が血管内腔に挿通されている際に、バルーン2の近位側テーパー部22や遠位側テーパー部24の突出部28が血管内腔壁に接触しても血管内腔壁を傷つけにくくすることができ、安全性の高いバルーン2とすることができる。
【0066】
近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方に設けられている突出部28において径方向y1の外方側の先端部分が除去されている場合、突出部28の先端部分が除去されている近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方において、バルーン2は全体にわたって少なくとも内層20aと外層20bからなる2層構造を有していることが好ましい。即ち、近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方において、バルーン2の突出部28が設けられていない部分から突出部28が設けられている部分にわたって少なくとも内層20aと外層20bが周方向z1の360度全体に連続して存在していることが好ましい。近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方において、バルーン2は全体にわたって少なくとも内層20aと外層20bからなる2層構造を有していることにより、ショアD硬度の高い外層20bによって突出部28のスコアリング機能、バルーン2の強度及び挿通性を向上することができる。
【0067】
近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方での長手軸方向x1に垂直な断面において、図3に示すように、突出部28が存在している領域では、外層20bの厚みTcが内層20aの厚みTaよりも大きく、図6に示すように、羽根中央部41では、外層20bの厚みTcが内層20aの厚みTaよりも小さいことが好ましい。近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方において、突出部28が存在している領域での外層20bの厚みTcが内層20aの厚みTaよりも大きく、羽根中央部41での外層20bの厚みTcが内層20aの厚みTaよりも小さいことにより、近位側テーパー部22や遠位側テーパー部24においても、突出部28の剛性を高めて狭窄部の切開を行いやすくし、さらに、羽根中央部41の柔軟性を高めてバルーン2の収縮状態ではバルーン2の外径が小さくなるように折り畳みやすくすることができる。そのため、血管内腔の挿通性がよく、バルーン2の安全性を向上させることができる。
【0068】
近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方での長手軸方向x1に垂直な断面において、突出部28が存在している領域での外層20bの厚みTcは、内層20aの厚みTaの1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方における突出部28が存在している領域での外層20bの厚みTcと内層20aの厚みTaとの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、突出部28の剛性を高め、突出部28を狭窄部に刺さりやすくすることが可能となる。また、近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方での長手軸方向x1に垂直な断面において、突出部28が存在している領域での外層20bの厚みTcは、内層20aの厚みTaの10倍以下であることが好ましく、9倍以下であることがより好ましく、8倍以下であることがさらに好ましい。近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方における突出部28が存在している領域での外層20bの厚みTcと内層20aの厚みTaとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、突出部28が存在している領域において内層20aの厚みを確保することができ、バルーン2が周方向z1に伸長した際に、突出部28において内層20aを破断しにくくすることができる。
【0069】
近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方での長手軸方向x1に垂直な断面において、羽根中央部41での外層20bの厚みTcは、内層20aの厚みTaの95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、85%以下であることがさらに好ましい。近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方における羽根中央部41での外層20bの厚みTcと内層20aの厚みTaとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、羽根中央部41の柔軟性を高めることができ、バルーン2の収縮状態においてバルーン2の外径が小さくなるように折り畳みやすくすることができる。また、近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方での長手軸方向x1に垂直な断面において、羽根中央部41での外層20bの厚みTcは、内層20aの厚みTaの5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましい。近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方における羽根中央部41での外層20bの厚みTcと内層20aの厚みTaとの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、羽根形状部40の剛性を保つことができ、バルーン2の強度及び挿通性を向上することが可能となる。
【0070】
近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方での長手軸方向x1に垂直な断面において、近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方に設けられている突出部28は、周方向z1の第1方向d1及び第2方向d2のいずれにも倒れていない構成であってもよく、周方向z1の第1方向d1及び第2方向d2のいずれかに倒れている構成であってもよい。近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方において、突出部28が周方向z1の第1方向d1及び第2方向d2のいずれにも倒れていないことにより、突出部28が設けられている近位側スリーブ部21や遠位側スリーブ部25において、バルーン2の長手軸方向x1の剛性が突出部28によって高まり、血管内腔へのバルーン2の挿通性を向上させることができる。近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方において、突出部28が周方向z1の第1方向d1及び第2方向d2のいずれかに倒れていることにより、病変部までバルーン2を送り込む際に、近位側スリーブ部21や遠位側スリーブ部25が有している突出部28の頂部28Tが血管内腔壁に接触しにくくなる。そのため、近位側スリーブ部21や遠位側スリーブ部25の突出部28によって血管内腔壁を損傷することを防ぐことができる。
【0071】
図示していないが、近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方での長手軸方向x1に垂直な断面において、近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方に設けられている突出部28は、切削や溶解、押し潰す等の加工によって、径方向y1の外方側である突出部28の先端部分が除去されていてもよい。近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方に設けられている突出部28の先端部分が除去されていることにより、血管内腔にバルーン2を挿通する際に、血管内腔壁等の他物に近位側スリーブ部21や遠位側スリーブ部25に設けられている突出部28が接触しても、血管内腔壁等を傷つけにくくすることができる。そのため、血管内腔壁等を傷つけにくく、安全性の高いバルーン2とすることが可能となる。
【0072】
近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方に設けられている突出部28において径方向y1の外方側の先端部分が除去されている場合、突出部28の先端部分が除去されている近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24の少なくとも一方において、突出部28の中央部29aは、内層20aを有しており、外層20bは有していない構成であってもよい。つまり、近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方において、突出部28の中央部29aに外層20bが存在していない構成であってもよい。
【0073】
図4に示すように、近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方での長手軸方向x1に垂直な断面において、中央部29aでの内層20aの厚みTaは、突出部28の端部29bでの内層の厚みTcよりも大きいことが好ましい。近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方において、中央部29aでの内層20aの厚みTaが、端部29bでの内層の厚みTcよりも大きいことにより、近位側スリーブ部21や遠位側スリーブ部25での突出部28を柔軟なものとすることができる。そのため、バルーン2を血管内腔へ挿通する際において、血管内腔壁に近位側スリーブ部21や遠位側スリーブ部25に設けられている突出部28の頂部28Tが接触しても、血管内腔壁が傷つきにくくなり、安全性の高いバルーン2とすることができる。
【0074】
近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方での長手軸方向x1に垂直な断面において、中央部29aでの内層20aの厚みTaは、端部29bでの内層20aの厚みTcの1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方における中央部29aでの内層20aの厚みTaと端部29bでの内層20aの厚みTcとの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25での突出部28の柔軟性を高めることができ、突出部28が血管内腔壁に当たっても傷つけにくくすることができる。また、近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方での長手軸方向x1に垂直な断面において、中央部29aでの内層20aの厚みTaは、端部29bでの内層20aの厚みTcの10倍以下であることが好ましく、9倍以下であることがより好ましく、8倍以下であることがさらに好ましい。近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方における中央部29aでの内層20aの厚みTaと端部29bでの内層20aの厚みTcとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、突出部28が適度な剛性を有するものとなる。そのため、バルーン2の強度を高めることができ、血管内腔でのバルーン2の挿通性を向上させ、かつ、狭窄部の切開効率のよいバルーン2とすることが可能となる。
【0075】
2.バルーンカテーテル
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル1は、上記バルーンカテーテル用バルーン2を備える。上記「1.バルーンカテーテル用バルーン」の項にも記載したが、図1に示すように、バルーン2はシャフト30の遠位端部に接続されている。
【0076】
図1には、シャフト30の遠位側から近位側に至る途中にガイドワイヤポート50を有し、ガイドワイヤポート50からシャフト30の遠位側までガイドワイヤ挿通路として機能するインナーシャフト60を有する、所謂ラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテル1を示している。バルーンカテーテル1は、遠位側シャフト31と近位側シャフト32を有していることが好ましく、遠位側シャフト31と近位側シャフト32は別部材であって、遠位側シャフト31の近位端部が近位側シャフト32の遠位端部に接続されることにより、バルーン2からバルーンカテーテル1の近位端部まで延在するシャフト30が構成されていてもよい。或いは、1つのシャフト30がバルーン2からバルーンカテーテル1の近位端部まで延在していてもよく、遠位側シャフト31や近位側シャフト32がさらに複数のチューブ部材から構成されていてもよい。
【0077】
シャフト30は内部に流体の流路とガイドワイヤ挿通路を有していることが好ましい。シャフト30が内部に流体の流路及びガイドワイヤの挿通路を有する構成とするには、例えば、シャフト30の内側に配置されているインナーシャフト60がガイドワイヤ挿通路として機能し、シャフト30とインナーシャフト60の間の空間が流体の流路として機能する構成とすることが挙げられる。このような構成の場合、インナーシャフト60がシャフト30の遠位端から延出してバルーン2を貫通し、バルーン2の遠位側がインナーシャフト60と接続され、バルーン2の近位側がシャフト30と接続されることが好ましい。
【0078】
シャフト30は、樹脂、金属、又は樹脂と金属の組み合わせから構成されていることが好ましい。シャフトの構成材料として樹脂を用いることにより、シャフト30に可撓性や弾性を付与し易くなる。また、シャフト30の構成材料として金属を用いることにより、バルーンカテーテル1の送達性を向上できる。シャフト30を構成する樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。シャフト30を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、又はこれらの組み合わせが挙げられる。シャフト30が別部材の遠位側シャフト31と近位側シャフト32から構成される場合、例えば、遠位側シャフト31が樹脂から形成され、近位側シャフト32が金属から形成される構成とすることができる。また、シャフト30は、異なる材料又は同じ材料による積層構造を有していてもよい。
【0079】
バルーン2とシャフト30との接合は、接着剤による接着、溶着、バルーン2の端部とシャフト30とが重なっている箇所にリング状部材を取り付けてかしめること等が挙げられる。中でも、バルーン2とシャフト30とは、溶着により接合されていることが好ましい。バルーン2とシャフト30とが溶着されていることにより、バルーン2を繰り返し拡張又は収縮させてもバルーン2とシャフト30との接合が解除されにくく接合強度を向上できる。
【0080】
バルーンカテーテル1の遠位端部には、先端チップ部材70が設けられていることが好ましい。先端チップ部材70は、インナーシャフト60とは別部材としてバルーン2の遠位端部に接続されることでバルーンカテーテル1の遠位端部に設けられてもよいし、バルーン2の遠位端よりも遠位側まで延在したインナーシャフト60が先端チップ部材70として機能してもよい。
【0081】
バルーン2の内部のインナーシャフト60上には、バルーン2の位置をX線透視化で確認できるように、長手軸方向x1においてバルーン2が位置する部分にX線不透過マーカー80が配置されていてもよい。X線不透過マーカー80は、バルーン2の直管部23の両端に相当する位置に配されることが好ましく、直管部23の長手軸方向x1の中央に相当する位置に配されてもよい。
【0082】
シャフト30の近位側にはハブ5が設けられていてもよく、ハブ5にはバルーン2の内部に供給される流体の流路と連通した流体注入部6が設けられていることが好ましい。
【0083】
シャフト30とハブ5との接合は、例えば、接着剤による接着、溶着等が挙げられる。中でも、シャフト30とハブ5とは接着により接合されていることが好ましい。シャフト30とハブ5とが接着されていることにより、例えば、シャフト30は柔軟性の高い材料から構成され、ハブ5は剛性の高い材料から構成されている等、シャフト30を構成する材料とハブ5を構成する材料とが異なっている場合に、シャフト30とハブ5の接合強度を高めてバルーンカテーテル1の耐久性を向上できる。
【0084】
図示していないが、本発明は、シャフトの遠位側から近位側にわたってガイドワイヤ挿通路を有している、所謂オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルにも適用できる。オーバーザワイヤ型の場合、インフレーションルーメン及びガイドワイヤルーメンが手元側に配置されるハブまで延在しており、各ルーメンの近位側開口が二又構造のハブに設けられていることが好ましい。
【0085】
ラピッドエクスチェンジ型のカテーテルの場合、遠位側シャフト31及び/又は近位側シャフト32の外壁に適宜コーティングが施されていることが好ましく、遠位側シャフト31と近位側シャフト32の両方にコーティングが施されていることがより好ましい。オーバーザワイヤ型のカテーテルの場合は、外側シャフトの外壁に適宜コーティングが施されていることが好ましい。
【0086】
コーティングは、目的に応じて親水性コーティング又は疎水性コーティングとすることができ、シャフト30を親水性コーティング剤又は疎水性コーティング剤に浸漬したり、シャフト30の外壁に親水性コーティング剤又は疎水性コーティング剤を塗布したり、シャフト30の外壁を親水性コーティング剤又は疎水性コーティング剤で被覆したりすることにより施すことができる。コーティング剤は、薬剤や添加剤を含んでいてもよい。
【0087】
親水性コーティング剤としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体等の親水性ポリマー、又はそれらの任意の組み合わせで作られた親水性コーティング剤等が挙げられる。
【0088】
疎水性コーティング剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、シリコーンオイル、疎水性ウレタン樹脂、カーボンコート、ダイヤモンドコート、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コート、セラミックコート、アルキル基やパーフルオロアルキル基で終端された表面自由エネルギーが小さい物質等が挙げられる。
【0089】
3.バルーンカテーテルの製造方法
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテルの製造方法は、上記バルーンカテーテルの製造方法であって、径方向、周方向、及び長手軸方向を有し、長手軸方向に延在する内腔を有しているパリソンを準備するステップと、パリソンを二軸延伸して、近位側スリーブ部、近位側テーパー部、直管部、遠位側テーパー部、及び遠位側スリーブ部を有し、径方向の外方に突出し長手軸方向に延在している突出部を有するバルーンを製造するステップと、を含む方法であり、パリソンは、外層と、外層よりもショアD硬度が低い材料から構成される内層と、を有しており、径方向の外方に突出し長手軸方向に延在している突出部を含む突出領域と、突出領域以外の非突出領域と、を有しており、長手軸方向に垂直な断面において、内層は、非突出領域において小厚部と、小厚部よりも厚い厚みを有する中厚部とを有しており、突出領域において中厚部の厚みよりも厚い厚みを有する大厚部を有しており、周方向において小厚部は大厚部と中厚部の間に位置している。
【0090】
本発明の実施形態に係る方法では、パリソンが、外層と外層よりもショアD硬度が低い材料から構成されている内層とを有しており、突出領域と非突出領域とを有しており、長手軸方向に垂直な断面において、内層が非突出領域において小厚部及び中厚部を有しており突出領域において大厚部を有している。このようなパリソンを二軸延伸してバルーンを製造する方法により、突出部が存在している領域では外層の厚みが内層の厚みよりも大きく、羽根中央部では外層の厚みが内層の厚みよりも小さい「1.バルーンカテーテル用バルーン」を備える「2.バルーンカテーテル」を製造することができる。
【0091】
図7図11を参照しつつ、本発明の実施形態に係るバルーンカテーテルの製造方法を説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る二軸延伸前のパリソンの斜視図を表す。図8図7に示したパリソンのVIII-VIII断面図を表し、図9図8に示したパリソンの製造に用いられるパリソン用金型の長手軸方向に垂直な断面図を表す。図10は、本発明の実施形態に係る製造方法においてパリソンの二軸延伸に用いられる金型の長手軸方向の断面図を表す。図11図10に示した金型のXI-XI断面図を表す。
【0092】
まず、パリソン200を準備する。図7に示すように、パリソン200は、樹脂から構成されており、内腔205を有する筒状の部材である。パリソン200は、第1端201と第2端202を有しており、第1端201から第2端202に向かう長手軸方向x2に延在している。パリソン200は、バルーン2と同様に径方向y2と周方向z2を有している。
【0093】
図8に示すように、パリソン200は、外層200bと、外層200bよりもショアD硬度が低い材料から構成されている内層200aとを有している。内層200a及び外層200bを構成する材料、並びにそれらのショアD硬度については、「1.バルーンカテーテル用バルーン」の項に記載した内層20a及び外層20bを構成する樹脂の説明、並びにそれらのショアD硬度についての記載を参照できる。
【0094】
パリソン200は、径方向y2の外方に突出し長手軸方向x2に延在している突出部208を含む突出領域R1と、突出領域R1以外の非突出領域R2とを有している。パリソン200を二軸延伸することにより、突出部208がバルーン2の突出部28に、非突出領域R2の部分が突出部28以外のバルーン本体部20に成形されることができる。
【0095】
図8に示すように突出部208は周方向z2に複数設けられていてもよいし、図示していないが突出部208は周方向z2に1つ設けられていてもよい。突出部208が周方向z2に複数設けられている場合は、複数の突出部208は周方向z2に離隔していることが好ましく、周方向z2に等間隔に配されていることがより好ましい。
【0096】
図8に示すように、長手軸方向x2に垂直な断面において、内層200aは、非突出領域R2において小厚部220と、小厚部220よりも厚い厚みを有する中厚部230とを有しており、突出領域R1において中厚部230よりも厚い厚みを有している大厚部210を有しており、周方向z1において小厚部220は大厚部210と中厚部230の間に位置している。突出領域R1において内層200aが大厚部210を有し、非突出領域R2において内層200aが小厚部220及び中厚部230を有し、周方向z1において小厚部220が大厚部210と中厚部230の間に位置していることにより、突出部28では外層20bの厚みTcが内層20aの厚みTaよりも大きく、羽根中央部41では外層20bの厚みTcが内層20aの厚みTaよりも小さいバルーン2を製造することができる。
【0097】
このようなパリソン200は、例えば、図9に示すようなパリソン用金型250を用いて樹脂を押出成形することにより製造できる。図9に示すように、パリソン用金型250は、第1筒状部材251、第2筒状部材252、及び第3筒状部材253を有しており、第1筒状部材251はパリソン200の内腔205を形成できるように円筒形状を有しており、第2筒状部材252は内層200aの大厚部210、小厚部220、及び中厚部230を形成できるように、突出領域R1を形成する部分に突出部を有し、非突出領域R2を形成する部分に上記突出部よりも低い高さを有する低突出部を有する筒形状を有しており、第3筒状部材253は突出部208を形成できるように突出部を有する筒形状を有していることが好ましい。これにより、第1筒状部材251の外側面と第2筒状部材252の内側面との間の空間に内層200aを形成する樹脂を導入し、第2筒状部材252の外側面と第3筒状部材253の内側面との間の空間に外層200bを形成する樹脂を導入して押出成形することにより、突出部208、内層200a、及び外層200bを有し、突出領域R1において内層200aが大厚部210を有し、非突出領域R2において内層200aが小厚部220と中厚部230を有するパリソン200を製造することができる。
【0098】
パリソン用金型250を構成する材料は、金属であることが好ましく、鉄、銅、アルミニウム又はこれらの合金であることがより好ましい。例えば、鉄の合金としてはステンレス鋼等が挙げられ、銅の合金としては真鍮等が挙げられ、アルミニウムの合金としてはジュラルミン等が挙げられる。十分な導電性や強度を有する点や加工のし易さの点から、パリソン用金型250はステンレス鋼で構成されていることが好ましい。
【0099】
パリソン200を二軸延伸することにより、近位側スリーブ部21、近位側テーパー部22、直管部23、遠位側テーパー部24、及び遠位側スリーブ部25を有し、突出部28を有するバルーン2を製造する。このとき、図10に示すような金型300を用いることができる。金型300は、長手軸方向x3、径方向y3、及び周方向z3を有し、長手軸方向x3に延在しパリソン200が挿入される内腔305を有している。金型300の内腔305には、パリソン200の長手軸方向x2における一部が配置されることが好ましい。
【0100】
金型300は、長手軸方向x3において、バルーン2の直管部を形成する金型直管部300Cと、金型直管部300Cの両側に配されバルーン2のテーパー部を形成する2つの金型テーパー部300Tと、金型テーパー部300Tよりも金型直管部300Cから離れた側に配されバルーン2のスリーブ部を形成する2つの金型スリーブ部300Sを有していることが好ましい。これにより、金型直管部300Cによりバルーン2の直管部23が形成され、金型テーパー部300Tにより近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24が形成され、金型スリーブ部300Sにより近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25が形成されることができる。
【0101】
金型300は、1つの部材から構成されていてもよく、複数の部材から構成されていてもよい。図10に示すように、複数の金型部材が長手軸方向x3において互いに接続されることにより構成されていてもよく、例えば、金型直管部300C、金型テーパー部300T、及び金型スリーブ部300Sがそれぞれ異なる金型部材であり、これらが長手軸方向x3において互いに接続されていてもよい。また、金型300は、径方向yに分割可能であってもよい。これにより、金型300の内腔305にパリソン200を挿入しやすくなる。図10に示すように、各金型部材は、隣り合う金型部材どうしを係合することにより接合されてもよいし、図示していないが隣り合う金型部材のそれぞれに磁石を取り付けて磁石の引力により接合されてもよい。
【0102】
図11に示すように、金型300の内腔305は、径方向y3の外方に凹んでおり長手軸方向x3に延在している溝部310と、溝部310以外の円筒壁部320から形成されていることが好ましい。これにより、溝部310にパリソン200の突出部208を入り込ませてバルーン2の突出部28を形成することができる。溝部310は周方向z3に複数設けられていてもよいし、図示していないが溝部310は周方向z3に1つ設けられていてもよい。溝部310が周方向z3に複数設けられている場合は、溝部310は周方向z3に離隔していることが好ましく、周方向z3に等間隔に配されていることがより好ましい。
【0103】
溝部310は、金型直管部300Cに設けられていることが好ましく、金型テーパー部300Tや金型スリーブ部300Sに設けられていてもよい。溝部310が金型直管部300Cに設けられていることにより、バルーン2の直管部23に突出部28を形成することができ、バルーン2による狭窄部の切開効率を高められる。金型テーパー部300Tや金型スリーブ部300Sに設けられる溝部310の深さは、金型直管部300Cに設けられる溝部310の深さよりも浅くてもよいし同等であってもよい。
【0104】
金型300を構成する材料は、金属であることが好ましく、鉄、銅、アルミニウム又はこれらの合金であることがより好ましい。例えば、鉄の合金としてはステンレス鋼等が挙げられ、銅の合金としては真鍮等が挙げられ、アルミニウムの合金としてはジュラルミン等が挙げられる。十分な導電性や強度を有する点や加工のし易さの点から、パリソン用金型300はステンレス鋼で構成されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0105】
1:バルーンカテーテル
2:バルーンカテーテル用バルーン
5:ハブ
6:流体注入部
20:バルーン本体部
20a:内層
20b:外層
21:近位側スリーブ部
22:近位側テーパー部
23:直管部
24:遠位側テーパー部
25:遠位側スリーブ部
28:突出部
28T:頂部
28B:基端
29a:中央部
29b:端部
30:シャフト
31:遠位側シャフト
32:近位側シャフト
40:羽根形状部
40a:羽根形状部の端部
41:羽根中央部
42:羽根端部領域
50:ガイドワイヤポート
60:インナーシャフト
70:先端チップ部材
80:マーカー
200:パリソン
200a:パリソンの内層
200b:パリソンの外層
201:パリソンの第1端
202:パリソンの第2端
205:パリソンの内腔
208:パリソンの突出部
210:大厚部
220:小厚部
230:中厚部
250:パリソン用金型
251:第1筒状部材
252:第2筒状部材
253:第3筒状部材
300:金型
300C:金型直管部
300S:金型スリーブ部
300T:金型テーパー部
305:金型の内腔
310:溝部
320:円筒壁部
Lp:基端の幅方向の中点と頂部とを結ぶ直線
Lv:基端の垂線
Ta:内層の厚み
Tc:外層の厚み
Ta1:中央部での内層の厚み
Ta2:端部での内層の厚み
P1:羽根形状部の外表面の長さの中点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11