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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072608
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】生体情報取得装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20240521BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A61B5/02 310B
A61B5/0245 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183544
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】319006047
【氏名又は名称】シャープセミコンダクターイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】舩尾 大輔
(72)【発明者】
【氏名】柴田 慧一
(72)【発明者】
【氏名】望月 裕太
(72)【発明者】
【氏名】肥田 聡太
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘治
(72)【発明者】
【氏名】釼崎 智誠
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AC26
4C017BC11
4C017FF05
4C017FF15
(57)【要約】
【課題】従来よりも高精度な生体情報を取得する。
【解決手段】生体情報取得装置(1)における受光素子(14)は、620nm以上かつ740nm以下の第1波長帯において強度ピークを有する第1光を受光する第1受光素子(例:赤色光受光素子14R)を含んでいる。受光素子(14)は、(i)370nm以上かつ600nm以下の第2波長帯において強度ピークを有する第2光を受光する第2受光素子(例:青色光受光素子14Bおよび緑色光受光素子14G)、および、(ii)760nm以上かつ1100nm以下の第3波長帯において強度ピークを有する第3光を受光する第3受光素子(例:近赤外光受光素子14IR)、のうちの少なくとも一方をさらに含んでいる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の生体情報を取得する生体情報取得装置であって、
上記生体から到来した光を受光し、当該光に応じた受光信号を生成する受光素子と、
上記受光信号を解析することにより、上記生体情報を取得する解析装置と、を備えており、
上記受光素子は、620nm以上かつ740nm以下の第1波長帯において強度ピークを有する第1光を受光する第1受光素子を含んでおり、
上記受光素子は、
(i)370nm以上かつ600nm以下の第2波長帯において強度ピークを有する第2光を受光する第2受光素子、および、
(ii)760nm以上かつ1100nm以下の第3波長帯において強度ピークを有する第3光を受光する第3受光素子、
のうちの少なくとも一方をさらに含んでいる、生体情報取得装置。
【請求項2】
上記受光素子は、上記第2受光素子および上記第3受光素子の両方を含んでいる、請求項1に記載の生体情報取得装置。
【請求項3】
上記第2受光素子は、
(i)370nm以上かつ490nm以下のタイプ1第2波長帯において強度ピークを有するタイプ1第2光を受光するタイプ1第2受光素子、および、
(ii)490nmを越えかつ590nm以下のタイプ2第2波長帯において強度ピークを有するタイプ2第2光を受光するタイプ2第2受光素子、
のうちの少なくとも一方を含んでいる、請求項2に記載の生体情報取得装置。
【請求項4】
上記第1光は、赤色光であり、
上記タイプ1第2光は、青色光であり、
上記タイプ2第2光は、緑色光であり、
上記第3光は、近赤外光である、請求項3に記載の生体情報取得装置。
【請求項5】
上記第1光を透過する第1フィルタを含む分光フィルタをさらに備えており、
上記分光フィルタは、
(i)上記第2光を透過する第2フィルタ、および、
(ii)上記第3光を透過する第3フィルタ、
のうちの少なくとも一方をさらに含んでいる、請求項1に記載の生体情報取得装置。
【請求項6】
検査光を上記生体に向けて出射する発光装置をさらに備えており、
上記受光素子は、上記生体によって反射された上記検査光を受光する、請求項1に記載の生体情報取得装置。
【請求項7】
上記発光装置は、上記検査光としての上記第1光を上記生体に向けて出射する第1光源を含んでおり、
上記発光装置は、
(i)上記検査光としての上記第2光を上記生体に向けて出射する第2光源、および、
(ii)上記検査光としての上記第3光を上記生体に向けて出射する第3光源、
のうちの少なくとも一方をさらに含んでいる、請求項6に記載の生体情報取得装置。
【請求項8】
上記発光装置は、上記検査光としての白色光を上記生体に向けて出射する白色光源を含んでいる、請求項6に記載の生体情報取得装置。
【請求項9】
上記受光素子は、固体撮像素子である、請求項1に記載の生体情報取得装置。
【請求項10】
上記受光素子は、フォトダイオードである、請求項1に記載の生体情報取得装置。
【請求項11】
上記解析装置は、上記生体情報として容積脈波を取得する、請求項1に記載の生体情報取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、生体情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、生体情報(例:容積脈波)を取得するための装置の構成例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/104056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より高精度な生体情報を取得することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る生体情報取得装置は、生体の生体情報を取得する生体情報取得装置であって、上記生体から到来した光を受光し、当該光に応じた受光信号を生成する受光素子と、上記受光信号を解析することにより、上記生体情報を取得する解析装置と、を備えており、上記受光素子は、620nm以上かつ740nm以下の第1波長帯において強度ピークを有する第1光を受光する第1受光素子を含んでおり、上記受光素子は、(i)370nm以上かつ600nm以下の第2波長帯において強度ピークを有する第2光を受光する第2受光素子、および、(ii)760nm以上かつ1100nm以下の第3波長帯において強度ピークを有する第3光を受光する第3受光素子、のうちの少なくとも一方をさらに含んでいる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、従来よりも高精度な生体情報を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1における生体情報取得装置の要部の構成を例示するブロック図である。
図2】実施形態1における受光装置の一構成例について説明するための模式的な正面図である。
図3】実施形態1の受光装置の分光特性を例示するグラフである。
図4】実施形態1の受光装置における各フィルタの配置の一例を示す模式的な上面図である。
図5】実施形態1の生体情報取得装置の一変形例について説明するための図である。
図6】実施形態2における生体情報取得装置の要部の構成を例示するブロック図である。
図7】実施形態2の生体情報取得装置における発光装置および受光装置の一構成例を示す図である。
図8】実施形態2の発光装置から出射される検査光の波長スペクトルを例示するグラフである。
図9】実施形態2の生体情報取得装置の一変形例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
実施形態1について以下に説明する。説明の便宜上、実施形態1にて説明したコンポーネント(構成要素)と同じ機能を有するコンポーネントについては、以降の各実施形態では同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。簡潔化のため、公知の技術事項についても説明を適宜省略する。本明細書にて述べる各コンポーネントおよび各数値は、特に矛盾のない限りいずれも単なる一例である。それゆえ、例えば、特に矛盾のない限り、各コンポーネントの位置関係は各図の例に限定されない。また、各図は必ずしもスケール通りに図示されていない。
【0009】
(生体情報取得装置1の構成例)
図1は、実施形態1の生体情報取得装置1の要部の構成を例示するブロック図である。生体情報取得装置1は、生体Hの生体情報を取得する。生体Hは、生体情報取得装置1によって生体情報を取得可能な生物であればよく、特に限定されない。図1では、生体Hとして人が例示されている。生体情報取得装置1は、受光装置10と解析装置20とを備えている。一例として、解析装置20は、生体情報取得装置1の各部を統括する制御装置であってよい。
【0010】
受光装置10は、生体Hから到来した光を受光し、当該光に応じた受光信号を生成する受光素子(例:以下に述べる図2における受光素子14)を備える。受光素子は、光電変換素子とも称される。実施形態1の例では、生体Hが存在している空間は、環境光によって照らされているものとする。そして、環境光は白色光であるものとする。環境光の一部は、生体H(より具体的には、生体Hの皮膚)によって反射される。そして、生体Hによって反射された環境光が、受光装置10に入射する。
【0011】
解析装置20は、当該受光信号を解析することにより、生体Hの生体情報を取得(例:導出)する。実施形態1では、解析装置20が、生体情報として生体Hの容積脈波を取得する場合を主に例示する。
【0012】
図2は、受光装置10の一構成例について説明するための模式的な正面図である。受光装置10は、導光部材11、支持部材12、分光フィルタ13、および受光素子14を備えている。図2の紙面における下側は受光側(受光素子14が位置する側)であり、上側は生体側である。
【0013】
図2の例では、受光装置10は、受光素子14、分光フィルタ13、および導光部材11を、下側から上側にこの順に備える。導光部材11は、受光装置10に入射した光を受光側に導く。図2では、導光部材11としてレンズが例示されている。支持部材12は、導光部材11を支持する。図2の例における支持部材12は、レンズホルダである。
【0014】
分光フィルタ13は、所定の波長帯において強度ピークを有する光を透過する。分光フィルタ13は、カラーフィルタまたは光スペクトルフィルタとも称される。分光フィルタ13は、生体側から見た場合に、受光素子14の少なくとも一部を覆うように位置している。したがって、分光フィルタ13によって環境光としての白色光が分光され、分光された後の光が受光素子14に入射する。
【0015】
実施形態1の例における受光素子14は、固体撮像素子である。固体撮像素子は、CIS(CMOS Image Sensor)またはCCD(Charge Coupled Device)であってよい。受光素子として固体撮像素子を用いることにより、生体Hの所定の部位が映った画像(例:生体Hの顔画像)を撮像できる。当該画像を解析装置20によって解析することにより、より多様な生体情報を導出できる。
【0016】
本明細書では、620nm以上かつ740nm以下の波長帯を第1波長帯と称し、370nm以上かつ600nm以下の波長帯を第2波長帯と称し、760nm以上かつ1100nm以下の波長帯を第3波長帯と称する。そして、第1波長帯において強度ピークを有する光を第1光と称し、第2波長帯において強度ピークを有する光を第2光と称し、第3波長帯において強度ピークを有する光を第3光と称する。
【0017】
また、本明細書では、第2波長帯における、370nm以上かつ490nm以下の範囲をタイプ1第2波長帯と称し、490nmを越えかつ590nm以下の範囲をタイプ2第2波長帯と称する。そして、タイプ1第2波長帯において強度ピークを有する光を第タイプ1第2光と称し、タイプ2第2波長帯において強度ピークを有する光を第タイプ2第2光と称する。
【0018】
当業者であれば明らかである通り、赤色(Red,R)光波長帯は第1波長帯に属するので、赤色光は第1光の例である。近赤外(Infra-Red,IR)光波長帯は第3波長帯に属するので、近赤外光は第3光の例である。青色(Blue,B)光波長帯はタイプ1第2波長帯に属し、緑色(Green,G)光波長帯はタイプ2第2波長帯に属するので、青色光はタイプ1第2光の例であり、緑色光はタイプ2第2光の例である。以上のことから、第2光は、例えば青色光であってもよいし、あるいは緑色光であってよい。
【0019】
図2の例における分光フィルタ13は、赤色光フィルタ13Rと青色光フィルタ13Bと緑色光フィルタ13Gと近赤外光フィルタ13IRとを含んでいる。本明細書では、第1光を透過する分光フィルタを第1フィルタと称し、第2光を透過する分光フィルタを第2フィルタと称し、第3光を透過する分光フィルタを第3フィルタと称する。赤色光フィルタ13Rは、第1フィルタの例である。青色光フィルタ13Bおよび緑色光フィルタ13Gはいずれも、第2フィルタの例である。近赤外光フィルタ13IRは、第3フィルタの例である。
【0020】
また、本明細書では、タイプ1第2光を透過する分光フィルタをタイプ1第2フィルタと称し、タイプ2第2光を透過する分光フィルタをタイプ2第2フィルタと称する。青色光フィルタ13Bはタイプ1第2フィルタの例であり、緑色光フィルタ13Gはタイプ2第2フィルタの例である。
【0021】
第1フィルタ(例:赤色光フィルタ13R)は、理想的には、第1光(例:赤色光)のみを選択的に透過する分光特性を有している。したがって、第1フィルタは、第1波長帯(例:赤色光波長帯)において高い光透過率(理想的には、光透過率100%)を有しており、かつ、当該第1波長帯を除いた波長帯において低い光透過率(理想的には、光透過率0%)を有している。第1フィルタの光透過率に関する上記の説明は、その他の波長帯に対応する分光フィルタについても同様に当てはまる。
【0022】
図3は、図2の受光装置10(具体的には、図2の分光フィルタ13)の分光特性を例示するグラフである。図3において、横軸は光の波長を示し、縦軸は光の透過率(光透過率)を示す。上述の通り、図2の分光フィルタ13は、赤色光フィルタ13Rと青色光フィルタ13Bと緑色光フィルタ13Gと近赤外光フィルタ13IRとを含んでいる。この構成により、図3に示す分光特性が実現される。当該分光特性によれば、受光装置10に入射した白色光が、赤色光(第1光)と青色光(タイプ1第2光)と緑色光(タイプ2第2光)と近赤外光(第3光)とに分光される。
【0023】
図3に示す通り、青色光フィルタ13Bは、波長470nm付近に光透過率のピークを有する。したがって、青色光フィルタ13Bによって分光された青色光は、波長470nm付近に強度ピークを有する。緑色光フィルタ13Gは、波長540nm付近に光透過率のピークを有する。したがって、緑色光フィルタ13Gによって分光された緑色光は、波長540nm付近に強度ピークを有する。赤色光フィルタ13Rは、波長650nm付近に光透過率のピークを有する。したがって、赤色光フィルタ13Rによって分光された赤色光は、波長650nm付近に強度ピークを有する。近赤外光フィルタ13IRは、波長850nm付近に光透過率のピークを有する。したがって、近赤外光フィルタ13IRによって分光された近赤外光は、波長850nm付近に強度ピークを有する。
【0024】
再び図2を参照する。図2の例における受光素子14は、赤色光受光素子14Rと青色光受光素子14Bと緑色光受光素子14Gと近赤外光受光素子14IRとを含んでいる。本明細書では、第1光を受光する受光素子を第1受光素子と称し、第2光を受光する受光素子を第2受光素子と称し、第3光を受光する受光素子を第3受光素子と称する。赤色光受光素子14Rは、第1受光素子の例である。青色光受光素子14Bおよび緑色光受光素子14Gはいずれも、第2受光素子の例である。近赤外光受光素子14IRは、第3受光素子の例である。
【0025】
また、本明細書では、タイプ1第2光を受光する受光素子をタイプ1第2受光素子と称し、タイプ2第2光を受光する受光素子をタイプ2第2受光素子と称する。青色光受光素子14Bはタイプ1第2受光素子の例であり、緑色光受光素子14Gはタイプ2第2受光素子の例である。
【0026】
図2に示す通り、青色光フィルタ13Bは、生体側から見た場合に、青色光受光素子14Bを覆っている。したがって、青色光受光素子14Bは、青色光フィルタ13Bによって分光された青色光を受光する。緑色光フィルタ13Gは、生体側から見た場合に、緑色光受光素子14Gを覆っている。したがって、緑色光受光素子14Gは、緑色光フィルタ13Gによって分光された緑色光を受光する。赤色光フィルタ13Rは、生体側から見た場合に、赤色光受光素子14Rを覆っている。したがって、赤色光受光素子14Rは、赤色光フィルタ13Rによって分光された赤色光を受光する。近赤外光フィルタ13IRは、生体側から見た場合に、近赤外光受光素子14IRを覆っている。したがって、近赤外光受光素子14IRは、近赤外光フィルタ13IRによって分光された近赤外光を受光する。
【0027】
図4は、図2の受光装置10における各フィルタの配置の一例を示す模式的な上面図である。図4に示す通り、各フィルタは、2次元的に規則的に配置されてよい。このように、各フィルタの配置は、2次元的なアレイ状であってよい。したがって、各色受光素子の配置も、各フィルタの配置に対応する2次元的なアレイ状であってよい。
【0028】
以上の説明から明らかである通り、第1受光素子は、バルク状の固体撮像素子の受光領域のうち、第1フィルタによって覆われた領域として具現化されてよい。第1受光素子は、受光した第1光に応じた第1受光信号を生成する。したがって、例えば、赤色光受光素子14Rは、受光した赤色光に応じた赤色光受光信号を生成する。第1受光素子に関する上記説明は、その他の波長帯に対応する受光素子についても同様に当てはまる。
【0029】
解析装置20は、第1受光素子~第3受光素子から第1受光信号~第3受光素子をそれぞれ取得する。一例として、解析装置20は、第1受光信号~第3受光信号の時系列データを解析する(例:第1受光信号~第3受光素子の時系列データに対して信号処理を施す)ことにより、生体Hの容積脈波を取得できる。
【0030】
ところで、各受光信号に含まれる容積脈波の信号成分(以下、容積脈波成分と称する)は比較的小さく、かつ、各受光信号にはノイズが重畳している場合がある。当該ノイズは、例えば、環境光の光量の変動および生体Hの体動などに起因する。そこで、信号処理は、ノイズ除去のための任意の数値処理を含んでいてよい。数値処理の例としては、平均化、中央値を用いた演算、対数化、およびスケーリングなどを挙げることができる。ノイズ除去を行うことにより、生体Hの容積脈波をより高精度に取得できる。
【0031】
(生体情報取得装置1の効果)
固体撮像素子を受光素子として用いて生体情報(例:容積脈波)を検出する技術自体は、公知である。ただし、一般的な固体撮像素子は、被写体の撮像を目的として設計されている。人間の目は、緑色波長帯において高い視感度特性を有している。また、生体の皮膚に含まれるヘモグロビンは、緑色波長帯に属する波長550nmにおいて特に高い光吸収率を有している。このことから、従来では、一般的な固体撮像素子が、容積脈波の検出にそのまま使用されていた。
【0032】
例えば、特許文献1の技術は、一般的な固体撮像素子によって、青色光受光信号と緑色光受光信号と赤色光受光信号とを取得している。そして、特許文献1の技術は、赤色光受光信号または青色光受光信号を、緑色光受光信号に対するリファレンス信号(参照信号)として使用している。具体的には、特許文献1の技術は、リファレンス信号を用いて、注目信号である緑色光受光信号からノイズを除去する信号処理を行っている。
【0033】
一般的な固体撮像素子は、600nm付近の波長帯において強度ピークを有する赤色光を受光するとともに、450nm付近の波長帯において強度ピークを有する青色光を受光するように設計されている。ただし、これらの波長帯では、赤色光受光信号または青色光受光信号にある程度大きい容積脈波成分が含まれる。このため、特許文献1の技術における信号処理では、リファレンス信号を用いたノイズ除去に伴い、注目信号に含まれる容積脈波成分が減少してしまう。
【0034】
本願の発明者ら(以下、「発明者ら」と略記する)は、特許文献1の技術における上記問題点を踏まえ、本発明の一態様に係る生体情報取得装置(例:生体情報取得装置1)を新たに創作した。発明者らは、ヘモグロビンの光吸収率は、上述の第1波長帯において特に小さくなるという新たな知見を実験によって見出した。言い換えれば、発明者らは、第1受光信号に含まれる容積脈波成分が第1波長帯において特に小さくなることを見出した。上記新たな知見に基づき、発明者らは、第1受光信号をリファレンス信号として用いるという新たな着想をさらに見出した。
【0035】
このことから、本発明の一態様に係る生体情報取得装置は、第1受光素子を含んでいる。これにより、リファレンス信号としての第1受光信号を取得できる。第1信号をリファレンス信号として用いることにより、ノイズ除去に伴う注目信号の容積脈波成分の減少を最小化できる。それゆえ、本発明の一態様に係る生体情報取得装置によれば、特許文献1の技術に比べて高精度に容積脈波を取得できる。
【0036】
本発明の一態様に係る生体情報取得装置における注目信号は、第2受光信号または第3受光信号のいずれであってもよい。したがって、本発明の一態様に係る生体情報取得装置は、第2光を受光する第2受光素子および第3受光素子のうちの少なくとも一方をさらに含んでいればよい。上述の各説明から明らかである通り、図2の例における生体情報取得装置1は、第2受光素子および第3受光素子の両方を含んでいる。
【0037】
また、本発明の一態様に係る生体情報取得装置は、第2受光素子として、タイプ1第2受光素子およびタイプ2第2受光素子のうちの少なくとも一方を含んでいればよい。上述の各説明から明らかである通り、図2の例における生体情報取得装置1は、タイプ1第2受光素子およびタイプ2第2受光素子の両方を含んでいる。より多様なタイプの受光素子を設けることにより、より多様な手法によって注目信号からノイズを除去できる。
【0038】
ところで、人の皮膚にはメラニンが含まれている。しかしながら、皮膚におけるメラニンの含有率には個人差が大きいため、メラニンに由来するノイズの波長帯を予め特定することは難しい。ただし、本発明の一態様に係る生体情報取得装置によれば、上述の通りより多様なタイプの受光素子を設けることにより、メラニンに由来するノイズを低減できる、さらに、環境光の光量の変動および生体の体動などに由来するノイズを低減することもできる。このことからも、本発明の一態様に係る生体情報取得装置によれば、容積脈波を従来よりも高精度に取得できる。
【0039】
また、当業者であれば明らかである通り、本発明の一態様に係る生体情報取得装置は、容積脈波に基づいて、別の生体情報をさらに導出することもできる。例えば、当該生体情報取得装置は、容積脈波に基づいて、生体の心拍数、血圧、またはストレスレベルなどを取得できる。以上の通り、本発明の一態様に係る生体情報取得装置によれば、これらの生体情報を従来よりも高精度に取得できる。
【0040】
ところで、生体の皮膚に含まれるヘモグロビンの典型例としては、酸化ヘモグロビンを挙げることができる。酸化ヘモグロビンの光吸収率は、光の波長が短くなるにつれて高くなることが知られている。そこで、本発明の一態様に係る生体情報取得装置の分光特性は、酸化ヘモグロビンの光吸収特性を踏まえて設定されてよい。後述の実施形態2にて述べる検査光の波長スペクトルも、当該光吸収特性を踏まえて設定されてよい。
【0041】
実施形態1では、生体情報取得装置が分光フィルタを有している場合を例示している。分光フィルタは、受光素子と対応するように設計されていればよい。したがって、分光フィルタは、第1フィルタを含むとともに、第2光フィルタおよび第3光フィルタのうちの少なくとも一方をさらに含んでいればよい。図2の例における生体情報取得装置1は、第2光フィルタおよび第3光フィルタの両方を含んでいる。
【0042】
また、本発明の一態様に係る生体情報取得装置は、第2光フィルタとして、タイプ1第2光フィルタおよびタイプ2第2光フィルタのうちの少なくとも一方を含んでいればよい。図2の例における生体情報取得装置1は、タイプ1第2光フィルタおよびタイプ2第2光フィルタの両方を含んでいる。
【0043】
〔変形例〕
図5は、実施形態1の生体情報取得装置の一変形例について説明するための図である。図5は、図2と対になる図である。説明の便宜上、図5における生体情報取得装置を、生体情報取得装置1Vと称する。
【0044】
図5の例における受光装置10は、導光部材11に替えて導光部材11Vを有している。そして、図5の例における分光フィルタ13は、導光部材11Vよりも上側に位置している。このように、分光フィルタ13と導光部材との位置関係は、上述の図2の例に限定されない。また、後述の実施形態2からも明らかである通り、本発明の一態様に係る受光装置は、導光部材を有していなくともよい。
【0045】
図5に示す通り、分光フィルタ13は、図2の例とは異なり、青色光フィルタ13B(タイプ1第2フィルタ)を含んでいなくともよい。このことから、図5に示す通り、受光素子14は、図2の例とは異なり、青色光受光素子14B(タイプ1第2受光素子)を含んでいなくともよい。
【0046】
ただし、当業者であれば明らかである通り、図5の構成は単なる一例であることに留意されたい。したがって、例えば、図5の例における受光素子14は、緑色光受光素子14G(タイプ2第2受光素子)に替えて、青色光受光素子14Bを含んでいてよい。この場合、図5の例における分光フィルタ13は、緑色光フィルタ13Gに替えて、青色光フィルタ13Bを含んでいてよい。
【0047】
別の例として、図5の例における受光素子14は、第2受光素子として、青色光受光素子14Bと緑色光受光素子14Gとの両方を含んでいてよい。この場合、図5の例における分光フィルタ13は、青色光フィルタ13Bと緑色光フィルタ13Gとの両方を含んでいてよい。
【0048】
受光素子14が第2受光素子として青色光受光素子14Bを含んでいる場合、受光素子14によって撮像された画像における生体の皮膚の色を判別しやすくなる。ところで、青色光受光信号および緑色光受光信号のそれぞれに含まれる容積脈波成分の大きさには、個人差が存在しうる。例えば、一部の人では、青色光受光信号に含まれる容積脈波成分が、緑色光受光信号に含まれる容積脈波成分よりも大きいことが知られている。受光素子14が第2受光素子として青色光受光素子14Bを含んでいる場合、このような人の生体情報を高精度に取得することもできる。
【0049】
図5の例における導光部材11Vは、第1導光部材11VR、第2導光部材11VG、および第3導光部材11VIRを含んでいる。このように、図5の例では、図2の例とは異なり、各色に対して個別の導光部材が設けられている。
【0050】
第1導光部材VRは、赤色光フィルタ13R(第1フィルタ)の下側に位置している。第1導光部材11VRは、赤色光フィルタ13Rによって分光された赤色光(第1光)を、赤色光受光素子14R(第1受光素子)に導く。第2導光部材11VGは、緑色光フィルタ13G(タイプ1第2光フィルタ)によって分光された緑色光(タイプ2第2光)を、緑色光受光素子14G(タイプ1第2受光素子)に導く。第3導光部材11VIRは、近赤外光フィルタ13IR(第3フィルタ)によって分光された近赤外光(第3光)を、近赤外光受光素子14IR(第3受光素子)に導く。
【0051】
図5の構成によれば、図2の構成に比べて、導光部材を小型化できる。それゆえ、例えば、受光装置を薄型化できる。さらに、受光装置を軽量化することもできる。なお、図5に示す通り、分光フィルタは受光素子に接触していなくともよい。図5の構成によれば、図2の構成に比べて、分光フィルタを受光装置内に容易に配置することもできる。
【0052】
〔実施形態2〕
図6は、実施形態2における生体情報取得装置2の要部の構成を例示するブロック図である。生体情報取得装置2は、生体情報取得装置1とは異なり、発光装置30をさらに備える。そして、生体情報取得装置2は、実施形態1における受光装置10に替えて、受光装置40を備える。
【0053】
図6に示す通り、発光装置30は、検査光を生体Hに向けて出射する。受光装置40は、受光素子として、以下に述べる受光素子44を備える。受光素子44は、生体Hによって反射された検査光を受光する。したがって、受光素子44は、検査光に応じた受光信号を生成する。
【0054】
実施形態2の例における受光素子44は、フォトダイオードである。このように、本発明の一態様に係る受光素子は、固体撮像素子でなくともよい。すなわち、本発明の一態様に係る受光装置は、生体Hの画像を撮像する機能を有していなくともよい。受光素子としてフォトダイオードを用いることにより、生体情報取得装置の製造コストを低減できる。
【0055】
図7は、生体情報取得装置2における発光装置30および受光装置40の一構成例を示す図である。発光装置30は、生体Hの所定の部位に向けて検査光を出射する。当該所定の部位は、本発明の一態様に係る生体情報(例:容積脈波)を取得可能な部位であればよく、特に限定されない。図7の例では、当該所定の部位として生体Hの指FGが例示されている。
【0056】
図7の例における発光装置30は、検査光としての赤色光を生体Hに向けて出射する赤色光源31Rと、検査光としての緑色光を生体Hに向けて出射する緑色光源31Gと、検査光としての近赤外光を生体Hに向けて出射する近赤外光源31IRと、を含んでいる。
【0057】
本明細書では、検査光としての第1光を生体に向けて出射する光源を第1光源と称し、検査光としての第2光を生体に向けて出射する光源を第2光源と称し、検査光としての第3光を生体に向けて出射する光源を第3光源と称する。赤色光源31Rは、第1光源の例である。緑色光源31Gは、第2光源の例であり、近赤外光源31IRは、第3光源の例である。
【0058】
実施形態1における受光素子に関する説明から明らかである通り、本発明の一態様に係る発光装置は、第1光源を含むとともに、第2光源および第3光源の少なくとも一方を含んでいればよい。さらに、後述する通り、本発明の一態様に係る発光装置は、第1光源~第3光源のいずれを含んでいなくともよい。
【0059】
また、本明細書では、検査光としてのタイプ1第2光を生体に向けて出射する光源をタイプ1第2光源と称し、検査光としてのタイプ2第2光を生体に向けて出射する光源をタイプ2第2光源と称する。緑色光源31Gは、タイプ2第2光源の例である。実施形態1における受光素子に関する説明との対応性から明らかである通り、本発明の一態様に係る発光装置は、第2光源として、タイプ1第2光源および緑色光源31Gの少なくとも一方を含んでいればよい。したがって、発光装置30は、検査光としての青色光を生体Hに向けて出射する青色光源をさらに含んでいてよい。当該青色光源は、タイプ1第2光源の例である。
【0060】
図8は、図7の発光装置30から出射される検査光の波長スペクトルを例示するグラフである。図8において、横軸は光の波長を示し、縦軸は光の強度を示す。図8の縦軸は、規格化されている。上述の通り、図7の発光装置30は、赤色光源31Rと緑色光源31Gと近赤外光源31IRとを含んでいる。この構成により、図8に示すスペクトルが実現される。図8に示す通り、緑色光源31Gから出射される緑色光は、波長550nm付近に強度ピークを有する。赤色光源31Rから出射される赤色光は、波長680nm付近に強度ピークを有する。近赤外光源31IRから出射される近赤外光は、波長900nm付近に強度ピークを有する。
【0061】
図7を再び参照し、受光装置40について説明する。図7に例における受光装置40は、分光フィルタ43と受光素子44とを備える。図7の例における分光フィルタ43は、赤色光フィルタ43Rと緑色光フィルタ43Gと近赤外光フィルタ43IRとを含んでいる。赤色光フィルタ43Rは、第1フィルタの例である。緑色光フィルタ43Gは、第2フィルタの例(より詳細には、タイプ2第2フィルタの例)である。近赤外光フィルタ43IRは、第3フィルタの例である。
【0062】
図7の例における受光素子44は、赤色光受光素子44Rと緑色光受光素子44Gと近赤外光受光素子44IRとを含んでいる。赤色光受光素子44Rは、第1受光素子の例である。緑色光受光素子44Gは、第2受光素子の例(より詳細には、タイプ2第2受光素子の例)である。近赤外光受光素子44IRは、第3受光素子の例である。
【0063】
発光装置30がタイプ1第2光源をさらに含んでいる場合、受光素子44は、タイプ1第2受光素子(例:青色光受光素子)をさらに含んでいてよい。この場合、分光フィルタ43は、タイプ1第2フィルタ(例:青色光フィルタ)をさらに含んでいてよい。
【0064】
図7の例では、赤色光源31R~近赤外光源31IRは、発光装置30内に集約して配置されている。これに伴い、赤色光受光素子44R~近赤外光受光素子44IRも、受光装置40内に集約して配置されている。赤色光源31R~近赤外光源31IRはそれぞれ、指FGの共通の位置(共通位置)に向けて検査光を出射する。したがって、図7の例では、赤色光と緑色光と近赤外光とが混合された混合光が、共通位置に照射される。混合光は、共通位置において反射された後、受光装置40に向かう。混合光は、分光フィルタ43によって分光された後に、受光素子44に入射する。
【0065】
図7に示す通り、赤色光フィルタ43Rは、生体側から見た場合に、赤色光受光素子44Rを覆っている。したがって、赤色光受光素子44Rは、赤色光フィルタ13Rによって分光された赤色光を受光する。緑色光フィルタ43Gは、生体側から見た場合に、緑色光受光素子44Gを覆っている。したがって、緑色光受光素子44Gは、緑色光フィルタ43Gによって分光された緑色光を受光する。近赤外光フィルタ43IRは、生体側から見た場合に、近赤外光受光素子44IRを覆っている。したがって、近赤外光受光素子44IRは、近赤外光フィルタ43IRによって分光された近赤外光を受光する。
【0066】
解析装置20は、赤色光受光素子44Rから赤色光受光信号(第1受光信号)を、緑色光受光素子44Gから緑色光受光信号(第2受光信号)を、近赤外光受光素子44IRから近赤外受光信号(第3受光信号)を、それぞれ取得する。解析装置20は、第1~第3受光信号を解析することにより、生体Hの生体情報を取得する。
【0067】
生体情報取得装置2は、生体情報取得装置1とは異なり、光源を含んでいる。したがって、生体情報取得装置2によれば、例えば環境光の光量が少ない場合にも、生体Hの生体情報を取得できる。このように、実施形態2によれば、ユーザの利便性により優れた生体情報取得装置を提供できる。
【0068】
一例として、生体情報取得装置2は、ポータブルデバイスとして具現化されてよい。また、生体情報取得装置2は、接触型のデバイスとして具現化されてもよい。生体情報取得装置2が接触型のデバイスである場合、発光装置30および受光装置40を指FGに十分に近接させる(例:接触させる)ことができる。それゆえ、環境光に由来するノイズが受光信号に含まれるおそれを低減できる。その結果、生体情報取得装置2によって取得される生体情報の精度を高めることができる。
【0069】
(発光装置30の別の構成例)
発光装置30は、検査光としての白色光を生体Hに向けて出射する白色光源を含んでいてもよい。図7の例の分光フィルタ43によれば、白色光を、赤色光と緑色光と近赤外光とに分光できるためである。このように、発光装置30は、異なるピーク波長を有する検査光をそれぞれ発する個別の光源を含んでいなくともよい。
【0070】
〔変形例〕
図9は、生体情報取得装置2の一変形例について説明するための図である。説明の便宜上、図9の生体情報取得装置を、生体情報取得装置2Vと称する。図9は、図7と対になる図である。
【0071】
図9の例では、図7の例とは異なり、赤色光源31R~近赤外光源31IRは、互いに離間して配置されている。そして、赤色光受光素子44R~近赤外光受光素子44IRも、互いに離間して配置されている。加えて、生体情報取得装置2Vは、生体情報取得装置2とは異なり、分光フィルタ43を有していない。
【0072】
図9の例における赤色光源31R~近赤外光源31IRはそれぞれ、指FGの異なる位置に向けて検査光を出射する。このように、図9の例では、図7の例とは異なり、発光装置30は、指FGに混合光を照射しない。
【0073】
赤色光源31Rは、指FGの第1位置(例:指FGの先端部)に向けて赤色光を出射する。赤色光受光素子44Rは、第1位置において反射された赤色光を受光するように配置されている。緑色光源31Gは、指FGの第2位置(例:指FGの中央部)に向けて緑色光を出射する。緑色光受光素子44Gは、第2位置において反射された緑色光を受光するように配置されている。近赤外光源31IRは、指FGの第3位置(例:指FGの根元部)に向けて近赤外光を出射する。近赤外光受光素子44IRは、第3位置において反射された近赤外光を受光するように配置されている。
【0074】
図9における赤色光源31R~近赤外光源31IRおよび赤色光受光素子44R~近赤外光受光素子44IRの配置によれば、第2位置において反射された緑色光および第3位置において反射された近赤外光は、赤色光受光素子44Rにはほとんど入射しない。それゆえ、赤色光フィルタ43Rを要することなく、赤色光受光素子44Rに赤色光を受光させることができる。
【0075】
同様に、図9における上記配置によれば、第1位置において反射された赤色光および第3位置において反射された近赤外光は、緑色光受光素子44Gにはほとんど入射しない。それゆえ、緑色光フィルタ43Gを要することなく、緑色光受光素子44Gに緑色光を受光させることができる。また、当該配置によれば、第1位置において反射された赤色光および第2位置において反射された緑色光は、近赤外光受光素子44IRにはほとんど入射しない。それゆえ、近赤外光フィルタ43IRを要することなく、近赤外光受光素子44IRに近赤外光を受光させることができる。以上の通り、本発明の一態様に係る生体情報取得装置は、分光フィルタを有していなくともよい。
【0076】
〔ソフトウェアによる実現例〕
生体情報取得装置1~2V(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に解析装置20)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0077】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0078】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0079】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の一態様の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0080】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0081】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る生体情報取得装置は、生体の生体情報を取得する生体情報取得装置であって、上記生体から到来した光を受光し、当該光に応じた受光信号を生成する受光素子と、上記受光信号を解析することにより、上記生体情報を取得する解析装置と、を備えており、上記受光素子は、620nm以上かつ740nm以下の第1波長帯において強度ピークを有する第1光を受光する第1受光素子を含んでおり、上記受光素子は、(i)370nm以上かつ600nm以下の第2波長帯において強度ピークを有する第2光を受光する第2受光素子、および、(ii)760nm以上かつ1100nm以下の第3波長帯において強度ピークを有する第3光を受光する第3受光素子、のうちの少なくとも一方をさらに含んでいる。
【0082】
本発明の態様2に係る生体情報取得装置では、上記態様1において、上記受光素子は、上記第2受光素子および上記第3受光素子の両方を含んでいてよい。
【0083】
本発明の態様3に係る生体情報取得装置では、上記態様2において、上記第2受光素子は、(i)370nm以上かつ490nm以下のタイプ1第2波長帯において強度ピークを有するタイプ1第2光を受光するタイプ1第2受光素子、および、(ii)490nmを越えかつ590nm以下のタイプ2第2波長帯において強度ピークを有するタイプ2第2光を受光するタイプ2第2受光素子、のうちの少なくとも一方を含んでいてよい。
【0084】
本発明の態様4に係る生体情報取得装置では、上記態様3において、上記第1光は、赤色光であってよく、上記タイプ1第2光は、青色光であってよく、上記タイプ2第2光は、緑色光であってよく、上記第3光は、近赤外光であってよい。
【0085】
本発明の態様5に係る生体情報取得装置は、上記態様1から4のいずれか1つにおいて、上記第1光を透過する第1フィルタを含む分光フィルタをさらに備えていてよく、上記分光フィルタは、(i)上記第2光を透過する第2フィルタ、および、(ii)上記第3光を透過する第3フィルタ、のうちの少なくとも一方をさらに含んでいてよい。
【0086】
本発明の態様6に係る生体情報取得装置は、上記態様1から5のいずれか1つにおいて、検査光を上記生体に向けて出射する発光装置をさらに備えていてよく、上記受光素子は、上記生体によって反射された上記検査光を受光してよい。
【0087】
本発明の態様7に係る生体情報取得装置では、上記態様6において、上記発光装置は、上記検査光としての上記第1光を上記生体に向けて出射する第1光源を含んでいてよく、上記発光装置は、(i)上記検査光としての上記第2光を上記生体に向けて出射する第2光源、および、(ii)上記検査光としての上記第3光を上記生体に向けて出射する第3光源、のうちの少なくとも一方をさらに含んでいてよい。
【0088】
本発明の態様8に係る生体情報取得装置では、上記態様6において、上記発光装置は、上記検査光としての白色光を上記生体に向けて出射する白色光源を含んでいてよい。
【0089】
本発明の態様9に係る生体情報取得装置では、上記態様1から8のいずれか1つにおいて、上記受光素子は、固体撮像素子であってよい。
【0090】
本発明の態様10に係る生体情報取得装置では、上記態様1から8のいずれか1つにおいて、上記受光素子は、フォトダイオードであってよい。
【0091】
本発明の態様11に係る生体情報取得装置では、上記態様1から10のいずれか1つにおいて、上記解析装置は、上記生体情報として容積脈波を取得してよい。
【0092】
〔付記事項〕
本発明の一態様は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の一態様の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成できる。
【符号の説明】
【0093】
1、1V、2、2V 生体情報取得装置
10、40 受光装置
13、43 分光フィルタ
13R、43R 赤色光フィルタ(第1フィルタ)
13B 青色光フィルタ(第2フィルタ,タイプ1第2フィルタ)
13G、43G 緑色光フィルタ(第2フィルタ,タイプ2第2フィルタ)
13IR、43IR 近赤外光フィルタ(第3フィルタ)
14 受光素子(固体撮像素子)
14R 赤色光受光素子(第1受光素子)
14B 青色光受光素子(第2受光素子,タイプ1第2受光素子)
14G 緑色光受光素子(第2受光素子,タイプ2第2受光素子)
14IR 近赤外光受光素子(第3受光素子)
20 解析装置
30 発光装置
31R 赤色光源(第1光源)
31G 緑色光源(第2光源,タイプ2第2光源)
31IR 近赤外光源(第3光源)
44 受光素子(フォトダイオード)
44R 赤色光受光素子(第1受光素子)
44G 緑色光受光素子(第2受光素子,タイプ2第2受光素子)
44IR 近赤外光受光素子(第3受光素子)
H 生体
FG 指(検査光が照射される生体Hの部位)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9