(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072609
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】電気回路体および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240521BHJP
H01L 23/34 20060101ALI20240521BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/34 A
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183545
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】露野 円丈
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕二朗
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BC01
5F136BC05
5F136BC07
5F136CB07
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA52
(57)【要約】
【課題】絶縁シートの絶縁信頼性が低下する。
【解決手段】半導体素子と、前記半導体素子が接合された導体板と、前記導体板の放熱面に接着された絶縁シートと、を一体的に封止材により封止してなる半導体装置と、前記半導体装置と対向して配置され、前記半導体素子による発熱を冷却する冷却部材と、前記絶縁シートと前記冷却部材との間に配置された熱伝導部材と、を備え、前記絶縁シートは、一方面において前記導体板を覆って前記導体板の前記放熱面に接着されている樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層の他方面に接着されるとともに前記半導体装置の表面に露出する表面導体層と、を有し、前記表面導体層の投影領域内であって前記導体板と前記樹脂絶縁層の接着領域の外周側の領域において、前記表面導体層および前記冷却部材とを互いに電気的に接続する導電性接続部を形成した電気回路体。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、前記半導体素子が接合された導体板と、前記導体板の放熱面に接着された絶縁シートと、を一体的に封止材により封止してなる半導体装置と、
前記半導体装置と対向して配置され、前記半導体素子による発熱を冷却する冷却部材と、
前記絶縁シートと前記冷却部材との間に配置された熱伝導部材と、を備え、
前記絶縁シートは、一方面において前記導体板を覆って前記導体板の前記放熱面に接着されている樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層の他方面に接着されるとともに前記半導体装置の表面に露出する表面導体層と、を有し、前記表面導体層の投影領域内であって前記導体板と前記樹脂絶縁層の接着領域の外周側の領域において、前記表面導体層および前記冷却部材とを互いに電気的に接続する導電性接続部を形成した電気回路体。
【請求項2】
請求項1に記載の電気回路体において、
前記導電性接続部は、前記冷却部材側へ向けた凸部が前記封止材に設けられ、前記凸部により前記絶縁シートの前記表面導体層を前記冷却部材へ接続して構成される電気回路体。
【請求項3】
請求項1に記載の電気回路体において、
前記導電性接続部は、前記半導体装置側へ向けた凸部が前記冷却部材に設けられ、前記凸部により前記冷却部材を前記絶縁シートの前記表面導体層へ接続して構成される電気回路体。
【請求項4】
請求項1に記載の電気回路体において、
前記導電性接続部は、前記半導体装置と前記冷却部材との間に導電性部材が設けられ、前記導電性部材を介して前記冷却部材と前記絶縁シートの前記表面導体層とを接続して構成される電気回路体。
【請求項5】
請求項1に記載の電気回路体において、
前記絶縁シートは、前記樹脂絶縁層に導電性の中間導体層を内蔵する電気回路体。
【請求項6】
請求項1に記載の電気回路体において、
前記導電性接続部は、前記半導体装置と前記冷却部材の積層方向と交差する平面方向において、前記樹脂絶縁層の前記接着領域を挟んで対称位置にそれぞれ配置される電気回路体。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の電気回路体において、
前記半導体装置の少なくとも一側面より前記半導体素子と接続される端子が導出され、
前記導電性接続部と前記端子との最短距離上に遮断部材を設けた電気回路体。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の電気回路体において、
前記半導体装置は、前記半導体素子の両面に前記導体板および前記絶縁シートが形成され、
前記冷却部材は、前記熱伝導部材を介して前記半導体装置の両面に配置され、
前記導電性接続部は、前記半導体装置と前記冷却部材との間の両面であって、前記半導体装置と前記冷却部材の積層方向における対称位置にそれぞれ配置される電気回路体。
【請求項9】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の電気回路体を備え、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路体および電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子のスイッチング動作による電力変換装置は、変換効率が高いため、民生用、車載用、鉄道用、変電設備等に幅広く利用されている。半導体素子は通電により発熱する。このため、半導体素子を冷却する冷却部材が設けられ、さらに、半導体素子を内蔵した半導体装置と、半導体装置と対向して配置される冷却部材との間には、絶縁シートが配置されている。半導体装置の冷却は、特に、車載用途においては、放熱性を維持するための高い信頼性が求められる。
【0003】
特許文献1には、一端側がモールド樹脂の内部にて導体層に電気的に接続され、他端側がモールド樹脂より突出して冷却手段に電気的に接続された端子部材が設けられ、この端子部材を介して、導体層と冷却手段とを電気的接続した半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された半導体装置は、絶縁シートの絶縁信頼性が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電気回路体は、半導体素子と、前記半導体素子が接合された導体板と、前記導体板の放熱面に接着された絶縁シートと、を一体的に封止材により封止してなる半導体装置と、前記半導体装置と対向して配置され、前記半導体素子による発熱を冷却する冷却部材と、前記絶縁シートと前記冷却部材との間に配置された熱伝導部材と、を備え、前記絶縁シートは、一方面において前記導体板を覆って前記導体板の前記放熱面に接着されている樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層の他方面に接着されるとともに前記半導体装置の表面に露出する表面導体層と、を有し、前記表面導体層の投影領域内であって前記導体板と前記樹脂絶縁層の接着領域の外周側の領域において、前記表面導体層および前記冷却部材とを互いに電気的に接続する導電性接続部を形成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、絶縁シートの絶縁信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態にかかる電気回路体の平面図である。
【
図2】電気回路体のX-X線における断面図である。
【
図3】電気回路体のY-Y線における断面斜視図である。
【
図4】電気回路体のX-X線における断面斜視図である。
【
図7】(a)~(d)半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【
図8】(a)(b)電気回路体の製造工程を説明する断面図である。
【
図9】(a)(b)比較例1、比較例2の要部拡大断面図である。
【
図10】(a)(b)変形例1のX-X線、Y-Y線の断面図である。
【
図11】(a)(b)変形例2のX-X線、Y-Y線の断面図である。
【
図12】(a)~(d)変形例3~6の半透過平面図である。
【
図15】電力変換装置のXV-XV線の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0010】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0011】
図1は、実施形態にかかる電気回路体400の平面図である。
電気回路体400は、半導体装置300と冷却部材340からなる。
図1に示す例では、電気回路体400は、半導体装置300を3個並列に設けてなる。
【0012】
半導体装置300は、後述する半導体素子155、157を封止材360により封止して、これを内蔵している。半導体装置300の両面は半導体素子155、157のスイッチング動作による熱を放熱する。さらに、半導体装置300は、半導体素子155、157と接続されている端子が半導体装置300の側面の封止材360より導出される。これらの端子は、直流回路のコンデンサモジュール500(
図13参照)に連結する正極側端子315Bおよび負極側端子319B、交流回路のモータジェネレータ192、194(
図13参照)に連結する交流側端子320B等の大電流が流れるパワー端子である。また、半導体装置300の側面の封止材360より導出される端子は、下アームゲート端子325L、コレクタセンス端子325C、エミッタセンス端子325E、上アームゲート端子325Uなどの端子である。半導体装置300を3個並列に設けた電気回路体400は、半導体素子155、157のスイッチング動作により直流電流と交流電流を変換する電力変換装置200として機能する。なお、電気回路体400が有する半導体装置300の個数は3個に限らず、電気回路体400の種々の形態に合わせて任意に設定される。
【0013】
冷却部材340は、半導体装置300と対向して配置され、半導体素子155、157のスイッチング動作による発熱を冷却する。具体的には、冷却部材340は、内部に冷媒が流通する流路が形成され、流路を流通する冷媒により半導体装置300からの発熱を冷却する。冷媒には、水や水にエチレングリコールを混入した不凍液等を用いる。冷却部材340は、熱伝導率が高く軽量なアルミ系が望ましい。押し出し成型や、鍛造、ろう付け等で作製する。
【0014】
図2は、
図1に示す電気回路体400のX-X線における断面図、
図3は、
図1に示す電気回路体400のY-Y線における断面斜視図である。
図4は、
図1に示す電気回路体400のX-X線における断面斜視図であるが、電気回路体400から冷却部材340および熱伝導部材453を取り除いた半導体装置300を示す。
【0015】
図2に示すように、電気回路体400は、半導体装置300の両面に設けられた冷却部材340を両面から挟んで加圧する加圧機構341を備えている。加圧機構341は、図示を簡略化しているが、例えば、両面の冷却部材340を互いにビス等で連結して半導体装置300側に加圧する機構である。
【0016】
図2に示すように、電力変換装置の上アーム回路を形成する第1半導体素子として、能動素子155、ダイオード156を備える(後述の
図5、
図6参照)。能動素子としては、Si、SiC、GaN、GaO、C等を用いることができる。能動素子155のボディダイオードを用いる場合は、別付けのダイオードを省略してもよい。第1半導体素子155のコレクタ側は、第2導体板431に接合されている。この接合には、はんだを用いてもよいし、焼結金属を用いてもよい。第1半導体素子155のエミッタ側には第1導体板430が接合されている。
【0017】
図3に示すように、下アーム回路を形成する第2半導体素子として、能動素子157、ダイオード158を備える(後述の
図5、
図6参照)。
図3に示すように、第2半導体素子157のコレクタ側は、第4導体板433に接合されている。第2半導体素子157のエミッタ側には第3導体板432が接合されている。
【0018】
導体板430、431、432、433は、電気伝導性と熱伝導率が高い材料であれば特に限定されないが、銅系又はアルミ系材料等の金属系材料や、金属系材料と高熱伝導率のダイヤモンド、カーボンやセラミック等の複合材料等を用いることが望ましい。これらは、単独で用いてもよいが、はんだや、焼結金属との接合性を高めるためNiやAg等のめっきを施してもよい。
【0019】
図2、
図3、
図4に示すように、導体板430、431、432、433は、電流を通電する役割の他に、半導体素子155、156、157、158が発する熱を冷却部材340に伝熱する伝熱部材としての役割をはたしている。半導体素子155、156、157、158と接合されている面と反対側の面が導体板430、431、432、433の放熱面となる。導体板430、431、432、433と冷却部材340は電位が異なるため、放熱面との間に絶縁シート440、441を用いる。
【0020】
絶縁シート440、441は、樹脂絶縁層443、表面導体層444、中間導体層445を積層して構成される。樹脂絶縁層443は、一方面において導体板430、431、432、433を覆って導体板430、431、432、433の放熱面に接着される。表面導体層444は、樹脂絶縁層443の他方面に接着されるとともに半導体装置300の表面に露出する。中間導体層445は、導電性の材料で構成され、樹脂絶縁層443にその厚さ方向の略中間位置に内蔵される。
【0021】
絶縁シート440、441の樹脂絶縁層443は、導体板430、431、432、433と接着性を有するものであれば特に限定されないが、粉末状の無機充填剤を分散したエポキシ樹脂系樹脂絶縁層が望ましい。これは、接着性と放熱性のバランスが良いためである。絶縁シート440、441は、後述の熱伝導部材453と接する側に金属箔などの表面導体層444を設ける。また、絶縁シート440、441の樹脂絶縁層443に内蔵された中間導体層445の平面サイズは、導体板430、431、432、433の投影位置に対して同等かわずかに大きい。樹脂絶縁層443に中間導体層445を内蔵した場合に、電圧分担を利用して絶縁シート440、441を高耐電圧化できる。なお、中間導体層445は、高耐電圧化の程度・必要性等に応じて適宜設ける。
【0022】
絶縁シート440、441は、トランスファーモールド工程で封止材360と同時に硬化される。トランスファーモールド成型工程において、絶縁シート440、441を金型に搭載する際、金型への接着を防ぐため、絶縁シート440、441と金型との接触面には、離型シート又は、表面導体層444を設ける。離型シートは、熱伝導率が悪いためトランスファーモールド後に剥離する工程が必要となるが、金属箔などの表面導体層444を用いた場合は、銅系や、アルミ系の熱伝導率の高い金属を選択することで、トランスファーモールド後に剥離することなく使用することができる。
【0023】
また、トランスファーモールド成型工程において、硬化前の封止材360が所定の圧力で金型に注入されるが、この成型圧力が加わることで、金型に設けた凹部に絶縁シート440、441が変形し追従し、冷却部材340へ向けた凸部が形成される。この凸部が、絶縁シート440、441の表面導体層444を冷却部材340へ電気的に接続する導電性接続部460となる。導電性接続部460の詳細は後述する。
【0024】
半導体素子155、156、157、158、導体板430、431、432、433、絶縁シート440、441は、トランスファーモールド成型により封止材360で封止され、半導体装置300を構成する。
【0025】
熱伝導部材453は、半導体装置300と冷却部材340との間に、接触熱抵抗を低減するために配置される。熱伝導部材453は、グリースや、ゲルグリース、フェーズチェンジシートなど常温又は高温で流動性のあるものを用いることができるが、作業性と長期信頼性を確保のため、未硬化では流動性を有し、硬化後に流動性が無くなる硬化型の熱伝導材料が望ましい。硬化型の熱伝導部材453は、塗布時は、粘度が低く作業性に優れ、硬化することで、機械物性を向上することができる利点がある。硬化は熱硬化、湿気硬化、紫外線硬化などを利用することができるが、深部まで硬化するには熱硬化が望ましい。
【0026】
熱伝導部材453は、金属、セラミックス、炭素系材料等の高熱伝導材料を樹脂と混ぜ合わせた材料である。樹脂は、-40℃付近から200℃付近まで弾性率の変化が小さいシリコーン樹脂が最も望ましい。また、熱伝導部材453は、絶縁性材料が好まれる。これは、端子近傍に熱伝導部材453の材料が付着することで絶縁性が低下することを防止するためである。
【0027】
熱伝導部材453を絶縁性材料で構成した場合、導体板430、431、432、433と冷却部材340との電位差は、絶縁シート440、441に分担されるだけでなく熱伝導部材453にも分担されることとなる。絶縁シート440、441は、ボイドなどの空気層が含まれないように真空プロセスで製造しているが、熱伝導部材453は大気圧で塗布される。熱伝導部材453の塗布を真空プロセス等で行うには設備が大型になるためである。大気圧で熱伝導部材453を塗布すると、熱伝導部材453は、絶縁シート440、441に比べ、ボイドなどの空気層が含まれ易い。空気層が含まれた熱伝導部材440、441に高電圧が加わると、ボイドなどの空気層で部分放電が生じる場合がある。部分放電が生じると、ノイズが発生したり、絶縁シート440、441の絶縁信頼性を低下させる。詳細は
図9(a)を参照して後述する。
【0028】
導電性接続部460により、半導体装置300の絶縁シート440、441の表面導体層444と冷却部材340とを電気的に接続することで、予め表面導体層444と冷却部材340とを同電位とすることができる。これにより、熱伝導部材453の部分放電を防止し、熱伝導部材453の一部が絶縁破壊することによる電位変動を防止することができる。また、中間導体層445を内蔵した絶縁シート440、441を用いて、電圧分担により高電圧化しても、ノイズの発生を抑制し、絶縁シート440、441の絶縁信頼性を維持できる。
【0029】
導電性接続部460は、
図2に示すように、表面導体層444の投影領域462内であって導体板430、431、432、433と樹脂絶縁層443の接着部の投影領域461の外周側の領域において、表面導体層444および冷却部材340とを互いに電気的に接続する。熱伝導部材453は、少なくとも樹脂絶縁層443の接着部の投影領域461をカバーする領域であって、表面導体層444および冷却部材340との間に配置される。
【0030】
導電性接続部460を接着部の投影領域461の外側に配置することで、絶縁シート440の剥離等による絶縁シート440の絶縁性の低下を防止する。詳細は
図9(b)を参照して後述する。さらに、導電性接続部460を接着部の投影領域461の外側に配置しているので、導電性接続部460における樹脂絶縁層443が劣化しても、絶縁性や放熱性に影響しない。また、表面導体層444の投影領域462に導電性接続部460を設けることで、別途端子などを設けて冷却部材340と接続する必要がなく、装置の生産性に優れる利点がある。
【0031】
導体板430、431、432、433と樹脂絶縁層443の接着部は、半導体素子155、156、157、158の直上又は直下に接合される導体板430、431、432、433と絶縁シート440、441とが接着される部分であり、半導体素子155、156、157、158からの放熱と、絶縁の両方を担っている。半導体素子155、156、157、158の直上又は直下に接合されていないダミーとして設けられた導体板430、431、432、433と絶縁シート440、441との接着部は、本実施形態の投影領域461には該当しない。したがって、表面導体層444の投影領域462内であって樹脂絶縁層443の接着部の投影領域461の外周側の領域において、ダミーに相当する接着部の領域に導電性接続部460を設けてもよい。
【0032】
導電性接続部460は、半導体装置300と冷却部材340との間であって、半導体装置300と冷却部材340の積層方向におけるエミッタ側とコレクタ側において、対称位置にそれぞれ配置される。換言すれば、エミッタ側に配置された導電性接続部460と、コレクタ側に配置された導電性接続部460とは、半導体装置300と冷却部材340の積層方向において重なる位置にある。これにより、加圧機構341で加圧した場合に、導電性接続部460に両面から対向して均等に力が加わり、導電性接続部460がエミッタ側とコレクタ側で重ならない位置に配置された場合と比較して、絶縁シート440、441に曲げ応力による反りが生じるのを防止することができる。
【0033】
図5は、半導体装置300の半透過平面図である。
図6は、半導体装置300の回路図である。
図5、
図6に示すように、正極側端子315Bは、上アーム回路のコレクタ側から出力しており、バッテリ又はコンデンサの正極側に接続される。上アームゲート端子325Uは、上アーム回路の能動素子155のゲートから出力している。負極側端子319Bは、下アーム回路のエミッタ側から出力しており、バッテリ若しくはコンデンサの負極側、又はGNDに接続される。下アームゲート端子325Lは、下アーム回路の能動素子157のゲートから出力している。交流側端子320Bは、下アーム回路のコレクタ側から出力しており、モータに接続される。中性点接地をする場合は、下アーム回路は、GNDでなくコンデンサの負極側に接続する。
【0034】
上アームのエミッタセンス端子325Eは、上アーム回路の能動素子155のエミッタから、下アームのエミッタセンス端子325Eは、下アーム回路の能動素子157のエミッタから出力される。上アームのコレクタセンス端子325Cは、上アーム回路の能動素子155のコレクタから、下アームのコレクタセンス端子325Cは、下アーム回路の能動素子157のコレクタから出力される。
【0035】
また、半導体素子(上アーム回路)の能動素子155およびダイオード156の上下に導体板(上アーム回路エミッタ側)430、導体板(上アーム回路コレクタ側)431が配置される。半導体素子(下アーム回路)の能動素子157およびダイオード158の上下に導体板(下アーム回路エミッタ側)432、導体板(下アーム回路コレクタ側)433が配置される。
【0036】
図5に示す例では、半導体素子(上アーム回路)の能動素子155およびダイオード156に対応する樹脂絶縁層443の接着部の投影領域461と、半導体素子(下アーム回路)の能動素子157およびダイオード158に対応する樹脂絶縁層443の接着部の投影領域461を1枚の絶縁シートでカバーしている。そして、半導体装置300には凸部である導電性接続部460が形成されている。導電性接続部460は、この例では、1枚の絶縁シートでカバーされる表面導体層444の投影領域462内であって樹脂絶縁層443の接着部の投影領域461の外周側の領域において、4個設けている。各導電性接続部460は、半導体装置300と冷却部材240の積層方向と交差する平面方向において、樹脂絶縁層443の接着部の投影領域461を挟んで対称位置にそれぞれ配置される。これにより、加圧機構341で加圧した場合に、平面方向に対称位置に配置された導電性接続部460に均等に力が加わり、導電性接続部460が平面方向に対称位置に配置されない場合と比較して、絶縁シート440、441に曲げ応力による反りが生じるのを防止することができる。
【0037】
本実施形態の半導体装置300は、上アーム回路及び下アーム回路の2つのアーム回路を、1つのモジュールに一体化した構造である2in1構造である。この他に、複数の上アーム回路及び下アーム回路を、1つのモジュールに一体化した構造を用いてもよい。この場合は、半導体装置300からの出力端子の数を低減し小型化することができる。
【0038】
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)、
図7(d)は、半導体装置300の製造工程を説明する断面図である。
図2と同様に、1モジュール分のX-X線の断面図で示す。
【0039】
図7(a)は、仮着け工程である。第2導体板431に半導体素子155のコレクタ側と半導体素子156のカソード側を接続し、半導体素子155のゲート電極、エミッタセンス電極、コレクタ電極をワイヤボンディングで上アームのゲート端子325U、エミッタセンス端子325E、コレクタセンス端子325Cにそれぞれ接続する。さらに、半導体素子155のエミッタ側と半導体素子156のアノード側を第1導体板430に接続して、上アーム側の回路体310を作製する。同様に、第4導体板433に半導体素子157のコレクタ側と半導体素子158のカソード側を接続し、半導体素子157のゲート電極、エミッタセンス電極、コレクタ電極をワイヤボンディングで下アームのゲート端子325L、エミッタセンス端子325E、コレクタセンス端子325Cにそれぞれ接続する。
【0040】
さらに、半導体素子157のエミッタ側と半導体素子158のアノード側を第3導体板432に接続して、下アーム側の回路体310を作製する。ただし
図7(a)では、上アーム側の回路体310のみを図示し、下アーム側の回路体310については図示していない。その後、導体板430~433に絶縁シート440、441を仮着けする。仮着けとは、この後のトランスファーモールド工程で絶縁シート440、441が硬化し接着する余地を残した条件で、絶縁シート440、441の密着力を使用して一時的に貼り付けることである。
【0041】
図7(b)~
図7(d)は、トランスファーモールド工程である。トランスファーモールド装置601は、スプリング602を金型603に備えている。このスプリング602により、回路体310の高さがばらついても、半導体素子155~158に過度の圧力を加えることなく、スプリング602の力により所定の荷重を加えることができる。また、トランスファーモールド装置601は、図示していない真空脱気機構を備える。真空脱気することで、樹脂等よりなる封止材360等がボイドを巻き込んでもボイドを小さく圧縮し、絶縁性を向上できる。また、図示していない離型フィルムで回路体310を覆うことで、スプリング駆動部等に樹脂バリが侵入するのを保護できる。
【0042】
図7(b)に示すように、予め175℃の恒温状態に加熱した金型603内に、絶縁シート440、441を仮着した回路体310をセットする。金型603には、凹部604が設けられている。この凹部604は、導電性接続部460となる突起を形成するためのものである。次に、
図7(c)に示すように、上下の金型603をクランプする。このとき、スプリング602により、絶縁シート440、441と導体板430~433は加圧され密着する。
【0043】
この後、
図7(d)に示すように、封止材360を金型603内に注入する。封止材360の注入による成型圧力456が加わることで、金型603に設けた凹部604に絶縁シート440、441が変形し追従し、絶縁シート440、441に導電性接続部460となる凸部が形成される。このように、トランスファーモールド金型に凹部604を設けることで、封止材360に導電性接続部460となる突起を容易に形成できる。その後、トランスファーモールド装置601から樹脂封止した半導体装置300を取り出し、175℃にて2時間以上の後硬化を行う。
【0044】
図8(a)、
図8(b)は、電気回路体400の製造工程を説明する断面図である。この工程は、
図7(d)に示した工程により製造された半導体装置300を用いて行う。
図8(a)は、塗布工程である。冷却部材340に熱伝導部材453を塗布する。熱伝導部材453の塗布位置は導電性接続部460と重ならない位置とすることで、熱伝導部材453の濡れ広がり時に、熱伝導部材453が導電性接続部460を被覆することを防止する。
【0045】
図8(b)は、密着・硬化工程である。熱伝導部材453が塗布された冷却部材340を加圧機構341で半導体装置300に密着する。これにより、導電性接続部460は冷却部材340に当接し、絶縁シート440、441の表面導体層444と冷却部材340とは互いに電気的に接続される。そして、熱伝導部材453を硬化することで電気回路体400を作製する。
【0046】
図9(a)は比較例1、
図9(b)は比較例2であり、電気回路体400’のX-X線における要部拡大断面図である。この比較例1、比較例2は、本発明を理解するために、本発明を適用しない場合の例を示す。
【0047】
図9(a)に示す比較例1では、
図2に示す本実施形態と比較して、導電性接続部460を設けていない。冷却部材340と表面導体層444の間の静電容量をC
tim、表面導体層444と中間導体層445の間の静電容量をC
sheet1、中間導体層445と導体板420との間の静電容量をC
sheet2とする。冷却部材340は接地されており、冷却部材340と導体板420の間に電位が加わるが、この電位は各静電容量に応じて、V
tim、V
sheet1、V
sheet2の電位に分担される。
【0048】
熱伝導部材453にボイド457などの空気層があると、電位Vtimが高い場合に、ボイド457で部分放電が生じることがある。この部分放電によりノイズが発生する場合がある。また部分放電を繰り返すことで、熱伝導部材453の一部が絶縁破壊し、冷却部材340と表面導体層444が同電位となる電位変動が生じる。この結果、絶縁シート440、441の絶縁信頼性を低下させる。
【0049】
さらに、中間導体層445を用いて、Csheet1とCsheet2を同等にすることで、電位Vsheet1、電位Vsheet2を同等にし、高耐電圧化した場合を考察する。熱伝導部材453内のボイド457で部分放電が生じると、熱伝導部材453の一部が絶縁破壊して、熱伝導部材453にかかる電位Vtimが短絡した際に、一時的に表面導体層444と中間導体層445の間にかかる電位Vsheet1に、過大な電圧が加わり、絶縁シート440、441の絶縁信頼性を低下させる。また部分放電を繰り返すことで、電位変動が生じて、冷却部材340と表面導体層444と中間導体層445の間の電圧分担を乱すことから、絶縁シート440、441の絶縁信頼性を低下させる。
【0050】
一方、本実施形態によれば、導電性接続部460を設けて、予め表面導体層444と冷却部材340とを同電位にすることにより、熱伝導部材453の部分放電を防止し、ノイズの発生を抑制すると共に、絶縁シート440、441の絶縁信頼性を維持できる。
【0051】
図9(b)に示す比較例2では、
図2に示す本実施形態と比較して、導体板420と樹脂絶縁層443の接着部の投影領域461内において、冷却部材340に凸部343を設けた例を示す。
【0052】
図9(b)に示すように、冷却部材340に設けた凸部343は、絶縁シート440の表面導体層444に電気的に接続されている。しかし、凸部343は、絶縁シート440を挟んで導体板420と対向する位置にあるので、加圧機構341の加圧力が冷却部材340の凸部343を介して絶縁シート440に部分的に集中する。絶縁シート440の樹脂絶縁層443は、
図9(b)の部分拡大断面
図Bに示すように、高熱伝導フィラ447と樹脂バインダ448から構成されているが、樹脂絶縁層443に過度の応力が部分的に加わると、高熱伝導フィラ447と樹脂バインダ448に剥離448が生じる。この剥離448により導体板420との絶縁が不可欠な絶縁シート440の絶縁性が低下する。
【0053】
一方、本実施形態によれば、導電性接続部460を接着部の投影領域461の外側に配置することにより、絶縁シート440、441の絶縁信頼性を維持できる。
【0054】
図10(a)、
図10(b)は本実施形態の変形例1であり、
図10(a)は
図1に示す電気回路体400のX-X線に相当する断面図、
図10(b)は
図1に示す電気回路体400のY-Y線に相当する断面図である。
【0055】
図10(a)、
図10(b)に示すように、冷却部材340には、半導体装置300側へ向けた凸部が、表面導体層444の投影領域462内であって導体板430、431と樹脂絶縁層443の投影領域461の外周側の領域に形成されている。導電性接続部460は、この凸部により冷却部材340を絶縁シート440、441の表面導体層444へ電気的に接続する。
【0056】
この変形例1においても、熱伝導部材453の部分放電を防止し、ノイズの発生を抑制すると共に、絶縁シート440、441の絶縁信頼性を維持でき、導電性接続部460における樹脂絶縁層443が劣化しても、絶縁性や放熱性に影響しない。
【0057】
図11(a)、
図11(b)は本実施形態の変形例2であり、
図11(a)は
図1に示す電気回路体400のX-X線に相当する断面図、
図11(b)は
図1に示す電気回路体400のY-Y線に相当する断面図である。
【0058】
図11(a)、
図11(b)に示すように、半導体装置300と冷却部材340との間には、表面導体層444の投影領域462内であって導体板430、431と樹脂絶縁層443の投影領域461の外周側の領域に導電性部材を設ける。導電性接続部460は、この導電性部材を介して冷却部材340と絶縁シート440、441の表面導体層444とを電気的に接続して構成される。導電性部材は、例えば、アルミニウム、銅、銀などの材料を含有した導電性の接着剤である。
【0059】
この変形例2においても、熱伝導部材453の部分放電を防止し、ノイズの発生を抑制すると共に、絶縁シート440、441の絶縁信頼性を維持でき、導電性接続部460における樹脂絶縁層443が劣化しても、絶縁性や放熱性に影響しない。
【0060】
図12(a)、
図12(b)、
図12(c)、
図12(d)は、本実施形態の変形例3~6を示す半導体装置300の半透過平面図である。
図12(a)は変形例3を、
図12(b)は変形例4を、
図12(c)は変形例5を、
図12(d)は変形例6を示す。いずれも
図5に示す半透過平面図を簡略化した図であり、同一箇所には同一の符号を付してその説明を簡略に行う。
【0061】
図12(a)に示す変形例3では、導電性接続部460を5個設けている。4個の導電性接続部460は、
図5に示したと同様に、1枚の絶縁シートでカバーされる表面導体層444の投影領域462内であって樹脂絶縁層443の接着部の投影領域461の外周側の領域において、4個設けている。ここで、樹脂絶縁層443の接着部の投影領域461を点線で、熱伝導部材453をグレイ塗りつぶしで示す。残りの1個の導電性接続部460は、樹脂絶縁層443の接着部の投影領域461に挟まれた中央部であって、樹脂絶縁層443の接着部の投影領域461の外側に設ける。導電性接続部460は、変形例1、変形例2で示した例を含む。
【0062】
この変形例3においても、加圧機構341で加圧した場合に、導電性接続部460に均等に力が加わり、熱伝導部材453の部分放電を防止し、ノイズの発生を抑制すると共に、絶縁シート440、441の絶縁信頼性を維持でき、導電性接続部460における樹脂絶縁層443が劣化しても、絶縁性や放熱性に影響しない。
【0063】
図12(b)に示す変形例4では、半導体装置300の少なくとも一側面より半導体素子と接続される端子325E等が導出されているが、導電性接続部460と端子325Eとの最短距離上に熱伝導部材453を設けた。この熱伝導部材453は、
図8(a)に示した塗布工程で同時に塗布することができる。変形例1、変形例2で示した例を含む導電性接続部460は、繰り返される熱サイクルにより接続箇所で摩擦による異物(削られた粉体)が生じる可能性がある。変形例4によれば、生じた異物が端子近傍に付着して短絡するのを防止できる。
【0064】
図12(c)に示す変形例5では、導電性接続部460と端子325Eとの最短距離上に樹脂部材454を設けた。樹脂部材454は、熱伝導部材453とは別の樹脂材料である。また、樹脂材料に限らず、導電性接続部460と端子325Eとを遮蔽する遮蔽部材を用いてもよい。遮蔽部材の材料種別は問わない。変形例5によれば、導電性接続部460の接続箇所で生じた異物が端子近傍に付着して短絡するのを防止できる。
図12(d)に示す変形例6では、導電性接続部460を除く領域であって、導電性接続部460と端子325Eとの最短距離上を含む領域に熱伝導部材453を設けている。
図8(a)に示した塗布工程で、導電性接続部460に熱伝導部材453が付着しないように、導電性接続部460の近傍には、熱伝導部材453を塗布しない。変形例6によれば、生じた異物が端子近傍に付着して短絡するのを防止できる。
【0065】
図13は、半導体装置300を用いた電力変換装置200の回路図である。
電力変換装置200は、インバータ回路部140、142と、補機用のインバータ回路部43と、コンデンサモジュール500とを備えている。インバータ回路部140及び142は、半導体装置300を複数個備えており、それらを接続することにより三相ブリッジ回路を構成している。電流容量が大きい場合には、更に半導体装置300を並列接続し、これら並列接続を三相インバータ回路の各相に対応して行うことにより、電流容量の増大に対応できる。また、半導体装置300に内蔵している半導体素子である能動素子155、157やダイオード156、158を並列接続することでも電流容量の増大に対応できる。
【0066】
インバータ回路部140とインバータ回路部142とは、基本的な回路構成は同じであり、制御方法や動作も基本的には同じである。インバータ回路部140等の回路的な動作の概要は周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0067】
上アーム回路は、スイッチング用の半導体素子として上アーム用の能動素子155と上アーム用のダイオード156とを備えており、下アーム回路は、スイッチング用の半導体素子として下アーム用の能動素子157と下アーム用のダイオード158とを備えている。能動素子155、157は、ドライバ回路174を構成する2つのドライバ回路の一方あるいは他方から出力された駆動信号を受けてスイッチング動作し、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。
【0068】
上アーム用の能動素子155および下アーム用の能動素子157は、コレクタ電極、エミッタ電極、ゲート電極を備えている。上アーム用のダイオード156および下アーム用のダイオード158は、カソード電極およびアノード電極の2つの電極を備えている。
図6に示すように、ダイオード156、158のカソード電極が能動素子155、157のコレクタ電極に、アノード電極が能動素子155、157のエミッタ電極にそれぞれ電気的に接続されている。これにより、上アーム用の能動素子155および下アーム用の能動素子157のエミッタ電極からコレクタ電極に向かう電流の流れが順方向となっている。能動素子155、157は、例えばIGBTである。
【0069】
なお、能動素子としてはMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いても良く、この場合は、上アーム用のダイオード156、下アーム用のダイオード158は不要となる。
【0070】
各上・下アーム直列回路の正極側端子315Bと負極側端子319Bとはコンデンサモジュール500のコンデンサ接続用の直流端子にそれぞれ接続されている。上アーム回路と下アーム回路の接続部にはそれぞれ交流電力が発生し、各上・下アーム直列回路の上アーム回路と下アーム回路の接続部は各半導体装置300の交流側端子320Bに接続されている。各相の各半導体装置300の交流側端子320Bはそれぞれ電力変換装置200の交流出力端子に接続され、発生した交流電力はモータジェネレータ192または194の固定子巻線に供給される。
【0071】
制御回路172は、車両側の制御装置やセンサ(例えば、電流センサ180)などからの入力情報に基づいて、上アーム用の能動素子155、下アーム用の能動素子157のスイッチングタイミングを制御するためのタイミング信号を生成する。ドライバ回路174は、制御回路172から出力されたタイミング信号に基づいて、上アーム用の能動素子155、下アーム用の能動素子157をスイッチング動作させるための駆動信号を生成する。なお、181、182、188はコネクタである。
【0072】
上・下アーム直列回路は、不図示の温度センサを含み、上・下アーム直列回路の温度情報がマイコンに入力される。また、マイコンには上・下アーム直列回路の直流正極側の電圧情報が入力される。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知および過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全ての上アーム用の能動素子155、下アーム用の能動素子157のスイッチング動作を停止させ、上・下アーム直列回路を過温度或いは過電圧から保護する。
【0073】
図14は、
図13に示す電力変換装置200の外観斜視図であり、
図15は、
図14に示す電力変換装置200のXV-XV線の断面斜視図である。
【0074】
電力変換装置200は、下部ケース11および上部ケース10により構成され、ほぼ直方体形状に形成された筐体12を備えている。筐体12の内部には、電気回路体400、コンデンサモジュール500等が収容されている。電気回路体400は冷却部材340へ流れる冷却流路を有しており、筐体12の一側面からは、冷却流路に連通する冷却水流入管13および冷却水流出管14が突出している。下部ケース11は、上部側が開口され、上部ケース10は、下部ケース11の開口を塞いで下部ケース11に取り付けられている。上部ケース10と下部ケース11とは、アルミニウム合金等により形成され、外部に対して密封して固定される。上部ケース10と下部ケース11とを一体化して構成してもよい。筐体12を、単純な直方体形状としたことで、車両等への取り付けが容易となり、また、生産もし易い。
【0075】
筐体12の長手方向の一側面に、コネクタ17が取り付けられており、このコネクタ17には、交流ターミナル18が接続されている。また、冷却水流入管13および冷却水流出管14が導出された面には、コネクタ21が設けられている。
【0076】
図15に図示されるように、筐体12内には、電気回路体400が収容されている。電気回路体400の上方には、制御回路172およびドライバ回路174が配置され、電気回路体400の直流端子側には、コンデンサモジュール500が収容されている。コンデンサモジュールを電気回路体400と同一高さに配置することで、電力変換装置200を薄型化でき、車両への設置自由度が向上する。電気回路体400の交流側端子320Bは、電流センサ180を貫通してコネクタ188に接続されている。また、半導体装置300の直流端子である、正極側端子315Bおよび負極側端子319Bは、それぞれ、コンデンサモジュール500の正・負極端子362A、362Bに接合される。
【0077】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)電気回路体400は、半導体素子155、156、157、158と、半導体素子155、156、157、158が接合された導体板430、431、432、433と、導体板430、431、432、433の放熱面に接着された絶縁シート440、441と、を一体的に封止材360により封止してなる半導体装置300と、半導体装置300と対向して配置され、半導体素子155、156、157、158による発熱を冷却する冷却部材340と、絶縁シート440、441と冷却部材340との間に配置された熱伝導部材453と、を備え、絶縁シート40、441は、一方面において導体板430、431、432、433を覆って導体板430、431、432、433の放熱面に接着されている樹脂絶縁層443と、樹脂絶縁層443の他方面に接着されるとともに半導体装置300の表面に露出する表面導体層444と、を有し、表面導体層444の投影領域内であって導体板430、431、432、433と樹脂絶縁層443の接着領域461の外周側の領域において、表面導体層444および冷却部材340とを互いに電気的に接続する導電性接続部460を形成した。これにより、絶縁シートの絶縁信頼性を向上させることができる。
【0078】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上述の実施形態と複数の変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10・・・上部ケース、11・・・下部ケース、13・・・冷却水流入管、14・・・冷却水流出管、17・・・コネクタ、18・・・交流ターミナル、43、140、142・・・インバータ回路、155、156、157、158・・・半導体素子、172・・・制御回路、174・・・ドライバ回路、180・・・電流センサ、21、181、182、188・・・コネクタ、192、194・・・モータジェネレータ、200・・・電力変換装置、300・・・半導体装置、315B・・・正極側端子、319B・・・負極側端子、320B・・・交流側端子、325U・・・上アームゲート端子325U、325L・・・下アームゲート端子、325E・・・エミッタセンス端子、325C・・・コレクタセンス端子、340・・・冷却部材、341・・・加圧機構、360・・・封止材、400・・・電気回路体、420、430、431、432、433・・・導体板、440、441・・・絶縁シート、443・・・樹脂絶縁層、444・・・表面導体層、445・・・中間導体層、453・・・熱伝導部材、454・・・樹脂部材、457・・・ボイド、460・・・導電性接続部、461・・・樹脂絶縁層の接着部の投影領域、462・・・表面導体層の投影領域、447・・・高熱伝導フィラ、500・・・コンデンサモジュール、601・・・トランスファーモールド装置、602・・・スプリング。