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特開2024-72614クローディン量の変動剤、タイトジャンクション緩和剤、および、それらを用いた皮膚外用剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072614
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】クローディン量の変動剤、タイトジャンクション緩和剤、および、それらを用いた皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/53 20060101AFI20240521BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240521BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240521BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240521BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240521BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240521BHJP
   A61P 17/04 20060101ALN20240521BHJP
   A61P 37/08 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
A61K36/53
A61P43/00 105
A61K31/198
A61K8/9789
A61K8/44
A61Q19/00
A61P17/04
A61P37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183554
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(71)【出願人】
【識別番号】522449075
【氏名又は名称】合同会社BeCellBar
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一博
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 格
(72)【発明者】
【氏名】天野 剛志
(72)【発明者】
【氏名】廣明 秀一
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC661
4C083AC662
4C083BB51
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC13
4C083CC17
4C083CC23
4C083CC37
4C083DD11
4C083DD12
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE11
4C083EE13
4C083FF01
4C088AB38
4C088AC05
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA02
4C088MA16
4C088MA28
4C088MA32
4C088MA34
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB13
4C088ZB21
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA03
4C206GA37
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA48
4C206MA52
4C206MA54
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZB13
4C206ZB21
(57)【要約】
【課題】タイトジャンクション緩和剤に使用し得る、新規なクローディン量の変動剤、および、それらの利用技術を提供する。
【解決手段】マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシンを含有する、クローディン量の変動剤を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシンを含有する、クローディン量の変動剤。
【請求項2】
クローディン1(CLD1)量を減少させるものである、請求項1に記載のクローディン量の変動剤。
【請求項3】
マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシンを含有する、タイトジャンクション緩和剤。
【請求項4】
請求項1または2に記載のクローディン量の変動剤、および/または、請求項3に記載のタイトジャンクション緩和剤を含有する、皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローディン量の変動剤、タイトジャンクション緩和剤、および、それらを用いた皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
タイトジャンクションは、隣り合う上皮細胞同士をつなぎ、様々な物質が上皮細胞の間を通過することを防ぐ、細胞間接着の1つである。当該タイトジャンクションによって、様々な物質が体内から体外へ漏出すること、および、様々な物質が体外から体内へ侵入することが防がれ、これによって体内の恒常性が維持されている。タイトジャンクションの形成には様々なタンパク質(例えば、クローディン、ZO-1)が関与することが知られている。
【0003】
ところで、医薬品および化粧品の有効成分の皮膚への浸透性は、医薬品および化粧品が効果を発揮する上で、非常に重要である。
【0004】
従来、医薬品や化粧品の有効成分の皮膚への浸透性を高める方法として、皮膚のバリアであるタイトジャンクションを一時的に緩和させる方法が知られている。例えば、特許文献1および2には、特定の化合物を含むタイトジャンクションの緩和剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2016/190310号公報
【特許文献2】特開2020-075877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した技術には改善の余地があり、タイトジャンクション緩和剤等に利用可能な新規な製剤が求められている。
【0007】
本発明の一態様は、タイトジャンクション緩和剤に使用し得る、新規なクローディン量の変動剤、および、その利用技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、マヨナラの抽出エキスであるマヨナラエキス、および/または、カプリロイルグリシンが、クローディン量を変動させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
【0009】
〔1〕マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシンを含有する、クローディン量の変動剤。
【0010】
〔2〕クローディン1(CLD1)量を減少させるものである、〔1〕に記載のクローディン量の変動剤。
【0011】
〔3〕マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシンを含有する、タイトジャンクション緩和剤。
【0012】
〔4〕〔1〕または〔2〕に記載のクローディン量の変動剤、および/または、〔3〕に記載のタイトジャンクション緩和剤を含有する、皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、タイトジャンクション緩和剤に使用し得る、新規なクローディン量の変動剤、および、その利用技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る5%(v/v)md3を添加したZO-1 PDZ1ドメインのスペクトル、および、md3を添加していないZO-1 PDZ1ドメインのスペクトルを示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る5%(v/v)md3の添加前後のZO-1 PDZ1ドメイン構成アミノ酸由来のピーク間の距離を表すグラフ、および、当該アミノ酸のZO-1 PDZ1ドメインでの変化部位を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る5%(v/v)md3を添加したLNX-1 PDZ2ドメインのスペクトル、および、md3を添加していないLNX-1 PDZ2ドメインのスペクトルを示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る5%(v/v)md3の添加前後のLNX-1 PDZ2ドメイン構成アミノ酸由来のピーク間の距離を表すグラフ、および、当該アミノ酸のLNX-1 PDZ2ドメインでの変化部位を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る5%(v/v)md24を添加したZO-1 PDZ1ドメインのスペクトル、および、md24を添加していないZO-1 PDZ1ドメインのスペクトルを示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る5%(v/v)md24の添加前後のZO-1 PDZ1ドメイン構成アミノ酸由来のピーク間の距離を表すグラフ、および、当該アミノ酸のZO-1 PDZ1ドメインでの変化部位を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る1%(v/v)md24を添加したLNX-1 PDZ2ドメインのスペクトル、および、md24を添加していないLNX-1 PDZ2のスペクトルを示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る1%(v/v)md24の添加前後のLNX-1 PDZ2ドメイン構成アミノ酸由来のピーク間の距離を表すグラフ、および、当該アミノ酸のLNX-1 PDZ2ドメインでの変化部位を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る5%(v/v)md1を添加したZO-1 PDZ1ドメインのスペクトル、および、md1を添加していないZO-1 PDZ1のスペクトルを示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る5%(v/v)md1の添加前後のZO-1 PDZ1ドメイン構成アミノ酸由来のピーク間の距離を表すグラフ、および、当該アミノ酸のZO-1 PDZ1ドメインでの変化部位を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る5%(v/v)md1を添加したLNX-1 PDZ2ドメインのスペクトル、および、md1を添加していないLNX-1 PDZ2のスペクトルを示す図である。
図12】本発明の一実施形態に係る5%(v/v)md1の添加前後のLNX-1 PDZ2ドメイン構成アミノ酸由来のピーク間の距離を表すグラフ、および、当該アミノ酸のLNX-1 PDZ2ドメインでの変化部位を示す図である。
図13】本発明の一実施形態に係る5%(v/v)md21を添加したZO-1 PDZ1のスペクトル、および、md21を添加していないZO-1 PDZ1のスペクトルを示す図である。
図14】本発明の一実施形態に係る5%(v/v)md21の添加前後のZO-1 PDZ1ドメイン構成アミノ酸由来のピーク間の距離を表すグラフ、および、当該アミノ酸のZO-1 PDZ1ドメインでの変化部位を示す図である。
図15】本発明の一実施形態に係る1%(v/v)md21を添加したLNX-1 PDZ2ドメインのスペクトル、および、md21を添加していないLNX-1 PDZ2のスペクトルを示す図である。
図16】本発明の一実施形態に係る1%(v/v)md21の添加前後のLNX-1 PDZ2ドメイン構成アミノ酸由来のピーク間の距離を表すグラフ、および、当該アミノ酸のLNX-1 PDZ2ドメインでの変化部位を示す図である。
図17】本発明の一実施形態に係る5%(v/v)md3、および、10%(v/v)md24に曝露したヒト皮膚細胞のタイトジャンクション構成タンパク質の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意図する。
【0016】
〔1.クローディン量の変動剤〕
本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤は、マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシンを含有するものである。本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤は、タイトジャンクションにおけるクローディン量の変動剤であってもよい。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、薬剤などに含まれる有効成分の皮膚への浸透性を向上させることができ、これにより、例えば、目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」等の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0018】
本明細書中にて、「クローディン量の変動剤」とは、クローディンの量を変動させる製剤を意図する。クローディンの量は、クローディンのタンパク質の量であってもよいし、クローディンのmRNAの量であってもよい。
【0019】
クローディンには、複数のファミリーが存在する(例えば、クローディン1~27)。本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤によって量が変動するクローディンは、限定されないが、クローディン1であることが好ましい。本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤であれば、クローディン1の量を減少させることができる。
【0020】
本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤によるクローディン量を変動させる様式(増加、または、減少)は、タイトジャンクションを緩和させることができるのであれば限定されないが、クローディン量を減少させることが好ましい。当該構成であれば、タイトジャンクションを構成するタンパク質の量を減少させることによって、より良くタイトジャンクションを緩和させることができる。なお、クローディンの量が増加する場合、例えば、タイトジャンクションの形成能力が低いクローディンの量が増加し、当該クローディンが、タイトジャンクションの形成能力が高いクローディンと置き換わることによって、タイトジャンクションを緩和させることが可能である。
【0021】
本明細書中にて、「マヨナラエキス」(例えば、CAS No.84082-58-6)(マヨラナエキスとも言われる)は、シソ科植物マヨナラ(Origanum majorana)から得られる抽出物を意図する。マヨナラエキスは、シソ科植物マヨナラの任意の部分から得られる抽出物であり得るが、シソ科植物マヨナラの葉(マジョラムの葉とも言われる)から得られる抽出物であることが好ましい。
【0022】
マヨナラエキスとしては、市販のマヨナラエキスを用いることも可能であるし、マヨナラ(例えば、マヨナラの葉)を抽出して得たマヨナラエキスを用いることも可能である。
【0023】
マヨナラからマヨナラエキスを得る方法は、限定されない。例えば、(i)マヨナラを溶媒(例えば、水、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸エチル、または、ブチレングリコール)によって抽出して得られる抽出物をマヨナラエキスとしてもよいし、(ii)マヨナラを溶媒(例えば、水、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸エチル、または、ブチレングリコール)によって抽出して抽出物を得、当該抽出物から溶媒を除去して得られる乾燥物をマヨナラエキスとしてもよいし、(iii)マヨナラを溶媒(例えば、水、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸エチル、または、ブチレングリコール)によって抽出して抽出物を得、任意で当該抽出物から溶媒を除去して乾燥物を得た後、当該抽出物または当該乾燥物に、化粧品などに使用される所望の溶媒(例えば、水、エタノールおよびブチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つ)を加えたものをマヨナラエキスとしてもよい。
【0024】
マヨナラエキスは、様々な用途に用いられ、人体への安全性も確認されている。それ故に、本発明の一実施形態によれば、安全性の高いクローディン量の変動剤を実現することができる。
【0025】
本明細書中にて、「カプリロイルグリシン」とは、グリシン、および、オクタン酸より得られるグリシンのカプリル酸アミドを意図する。
【0026】
カプリロイルグリシンとしては、市販のカプリロイルグリシンを用いることも可能であるし、グリシン、および、オクタン酸から得たカプリロイルグリシンを用いることも可能である。グリシン、および、オクタン酸からカプリロイルグリシンを得る方法は、限定されず、公知の方法によって得ることができる。
【0027】
カプリロイルグリシンは、様々な用途に用いられ、人体への安全性も確認されている。それ故に、本発明の一実施形態によれば、安全性の高いクローディン量の変動剤を実現することができる。
【0028】
本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤は、当該クローディン量の変動剤中、マヨナラエキスを0.005%(v/v)以上0.080%(v/v)以下含むことが好ましく、0.010%(v/v)以上0.075%(v/v)以下含むことがより好ましく、0.020%(v/v)以上0.070%(v/v)以下含むことがさらに好ましく、0.023%(v/v)以上0.060%(v/v)以下含むことが特に好ましい。当該構成によると、得られるクローディン量の変動剤は、クローディング量を十分に減少させるとともに、毒性も示さないという利点を有する。
【0029】
勿論、本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤(例えば、液剤、ゲル剤、クリーム剤のもの)は、当該濃度にて、マヨナラエキスを含有するものであってもよい。当該構成であれば、タイトジャンクションを崩壊させることなく、細胞間隙をより良く発現させ得る。
【0030】
本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤は、当該クローディン量の変動剤中、カプリロイルグリシンを0.005%(v/v)以上0.500%(v/v)以下含むことが好ましく、0.010%(v/v)以上0.450%(v/v)以下含むことがより好ましく、0.020%(v/v)以上0.400%(v/v)以下含むことがさらに好ましく、0.023%(v/v)以上0.350%(v/v)以下含むことが特に好ましい。当該構成によると、得られるクローディン量の変動剤は、クローディング量を十分に減少させるとともに、毒性も示さないという利点を有する。
【0031】
本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤が、カプリロイルグリシンを含有する場合、当該クローディン量の変動剤のpHは、4.0~8.0が好ましく、4.5~7.0がより好ましく、5.0~6.0がさらに好ましく、5.0~5.5が最も好ましい。
【0032】
勿論、本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤(例えば、液剤、ゲル剤、クリーム剤のもの)は、当該濃度にて、カプリロイルグリシンを含有するものであってもよい。当該構成であれば、タイトジャンクションを崩壊させることなく、細胞間隙をより良く発現させ得る。
【0033】
本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤は、上述した有効成分以外の成分を含有していてもよい。
【0034】
有効成分以外の成分は、特に限定されず、例えば、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、防腐剤、抗酸化剤、高分子量重合体、賦形剤、溶媒、抗菌剤等であり得る。
【0035】
前記緩衝剤としては、例えば、リン酸またはリン酸塩、ホウ酸またはホウ酸塩、クエン酸またはクエン酸塩、酢酸または酢酸塩、炭酸または炭酸塩、酒石酸または酒石酸塩、ε-アミノカプロン酸、トロメタモールが挙げられる。前記リン酸塩としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが挙げられる。前記ホウ酸塩としては、例えば、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムが挙げられる。前記クエン酸塩としては、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウムが挙げられる。前記酢酸塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが挙げられる。前記炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。前記酒石酸塩としては、例えば、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウムが挙げられる。
【0036】
前記pH調整剤としては、例えば、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
【0037】
前記等張化剤としては、例えば、イオン性等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム)、非イオン性等張化剤(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール)が挙げられる。
【0038】
前記防腐剤としては、例えば、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム臭化物、ベンゼトニウム塩化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノールが挙げられる。
【0039】
前記抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、トコフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0040】
前記高分子量重合体としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、アテロコラーゲンが挙げられる。
【0041】
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、デンプン、結晶セルロースが挙げられる。
【0042】
前記溶媒としては、例えば、水、生理的食塩水、アルコールが挙げられる。
【0043】
前記抗菌剤としては、例えば、β-ラクタム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、リンコマイシン系、クロラムフェニコール系、マクロライド系、ケトライド系、ポリペプチド系、グリコペプチド系の抗生物質;ピリドンカルボン酸(キノロン)系、ニューキノロン系、オキサゾリジノン系、サルファ剤系の合成抗菌薬が挙げられる。
【0044】
本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤に含有される有効成分以外の成分の量は、特に限定されず、例えば、変動剤を100質量%とした場合に、0質量%~99.999質量%であってもよく、0質量%~99.99質量%であってもよく、0質量%~99.9質量%であってもよく、5質量%~99.9質量%であってもよく、10質量%~99.9質量%であってもよく、20質量%~99.9質量%であってもよく、30質量%~99.9質量%であってもよく、40質量%~99.9質量%であってもよく、50質量%~99.9質量%であってもよく、60質量%~99.9質量%であってもよく、70質量%~99.9質量%であってもよく、80質量%~99.9質量%であってもよく、90質量%~99.9質量%であってもよい。
【0045】
本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤の剤型は、特に限定されず、例えば、外用剤(例えば、液剤、ゲル剤、クリーム剤、スティック剤、シート剤)、錠剤、粉末剤、顆粒剤が挙げられる。
【0046】
本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤の投与対象は、特に限定されず、例えば、ヒト、非ヒト動物(例えば、家畜、愛玩動物、および、実験動物)、これらから採取した組織、これらから採取した細胞、株化された細胞が挙げられる。前記非ヒト動物としては、特に限定されず、例えば、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、および、ラットが挙げられる。
【0047】
本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤の投与経路は、特に限定されず、例えば、非経口投与(例えば、経皮投与)、および、経口投与が挙げられる。
【0048】
本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤の対象への投与間隔は、特に限定されず、例えば、1時間に1回、1~6時間に1回、6~12時間に1回、12時間~1日あたり1回、1日~3日あたり一回、1日~5日あたり1回、1日~7日あたり1回、7日~14日あたり1回、14日~21日あたり1回、1カ月あたり1回、2カ月あたり1回、3カ月あたり1回、4カ月あたり1回、5カ月あたり1回、6カ月あたり1回、または、1年あたり1回が挙げられる。
【0049】
〔2.タイトジャンクション緩和剤〕
本発明の一実施形態に係るタイトジャンクション緩和剤は、マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシンを含有するものである。本発明の一実施形態に係るタイトジャンクション緩和剤は、本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤を含有するもの、または、本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤からなるものであってもよい。
【0050】
一実施形態において、前記クローディン量の変動剤は、クローディン量を変動させることができる。それ故に、本発明の一実施形態に係るタイトジャンクション緩和剤は、タイトジャンクションを崩壊させることなく、すなわち、バリア機能を完全に崩壊させずに、細胞間隙を生じさせ、有効成分の浸透性を上昇させることができる。
【0051】
前記クローディン量の変動剤、前記マヨナラエキス、および、前記カプリロイルグリシンについては、既に説明したので、ここではその説明を省略する。
【0052】
本発明の一実施形態に係るタイトジャンクション緩和剤の投与対象、投与経路、および、投与間隔は、特に限定されず、上述した本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤の投与対象、投与経路、および、投与間隔と同じであり得る。
【0053】
クローディンが、皮膚、および、タイトジャンクションにおいて重要な機能を担っていることが知られている。例えば、「Reitaro Tokumasu et al., "Time- and dose-dependent claudin contribution to biological functions : Lessons from claudin-1 in skin" Tissue Barriers, 2017, VOL.5, NO.3, e1336194」および「Nina Kirschner et al., "Contribution of Tight Junction Proteins to Ion, Macromolecule, and Water Barrier in Keratinocytes" Journal of Investigative Dermatology, 2013, 133, 1161-1169」には、クローディンが、皮膚において重要な機能を担っていることが示されている。一方、「Nana Marunaka et al., "Brazilian Green Propolis Rescues Oxidative Stress-Induced Mislocalization of Claudin-1 in Human Keratinocyte-Derived HaCat Cells" International Journal of Molecular Sciences, 2019, 20, 3869」には、クローディンが、タイトジャンクションにおいて重要な機能を担っていることが示されている。
【0054】
より具体的に、CLD1は皮膚疾患と関連しており、CLD1の減少はアトピー性皮膚炎の症状の進行・悪化に関与し、CLD1の欠損は致死的な脱水、ならびに、イオンおよび高分子の傍細胞での浸透性の上昇をもたらし得ることが知られている。
【0055】
これらは、クローディン量の変動剤を、タイトジャンクション緩和剤、および、皮膚外用剤として用い得ることを示唆している。
【0056】
本発明の一実施形態に係るタイトジャンクション緩和剤は、本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤と同じ有効成分(マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシン)を含んでいるので、効果的にタイトジャンクションを緩和することができる。
【0057】
〔3.皮膚外用剤〕
本発明の一実施形態に係る皮膚外用剤は、本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤、および/または、タイトジャンクション緩和剤を含有するものである。本発明の一実施形態に係る皮膚外用剤は、本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤、および/または、タイトジャンクション緩和剤からなるものであってもよい。
【0058】
前記クローディン量の変動剤、前記タイトジャンクション緩和剤、前記マヨナラエキス、および、前記カプリロイルグリシンについては、既に説明したので、ここではその説明を省略する。
【0059】
上述したように、クローディンが、皮膚、および、タイトジャンクションにおいて重要な機能を担っていることが知られている。これらは、クローディン量の変動剤を、タイトジャンクション緩和剤、および、皮膚外用剤として用い得ることを示唆している。
【0060】
本発明の一実施形態に係る皮膚外用剤は、本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤、および、本発明の一実施形態に係るタイトジャンクション緩和剤と同じ有効成分(マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシン)を含んでいるので、効果的に皮膚外用剤として用いることができる。
【0061】
本明細書において、「皮膚外用剤」とは、皮膚における病状の改善、スキンケア等を目的として、体外から直接皮膚へ供する物質を意図する。外用剤としては、特に限定されないが、例えば、化粧品、医薬品、医薬部外品等が挙げられる。
【0062】
前記皮膚外用剤の適用は、特に限定されることなく、当該技術分野で通常用いられる場合において使用される。
【0063】
前記化粧料の具体例としては、例えば、ボディーローション、デオドラント化粧料、化粧水、乳液、スキンケアクリーム、トニック、スティック化粧料、リップ、洗顔料、洗浄料、シート状化粧料、髭そり用化粧料、育毛剤が挙げられる。
【0064】
前記外用剤の剤型としては、特に限定されず、例えば、液剤、ゲル剤、クリーム剤、スティック剤、および、シート剤が挙げられる。前記ゲル剤のゲル化度は、用途によって異なり得るので、特に限定されない。
【0065】
前記外用剤が適用され得る皮膚としては、特に限定されず、例えば、頭、顔、首、腕、手、肘、脛、背中、胴、および、足が挙げられる。
【0066】
本発明の一実施形態に係る皮膚外用剤に含有される、有効成分(換言すれば、マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシン)の量は、特に限定されず、例えば、外用剤を100質量%とした場合に、0.001質量%~1.0質量%であってもよく、0.01質量%~0.8質量%であってもよく、0.1質量%~0.6質量%であってもよく、0.1質量%~0.4質量%であってもよく、0.1質量%~0.2質量%であってもよい。
【0067】
本発明の一実施形態に係る皮膚外用剤は、上述したクローディン量の変動剤、および/または、タイトジャンクション緩和剤以外の成分を含有していてもよい。当該「クローディン量の変動剤、および/または、タイトジャンクション緩和剤以外の成分」としては、特に限定されず、例えば、上述した〔1.クローディン量の変動剤〕にて説明した「有効成分以外の成分」が挙げられる。
【0068】
本発明の皮膚外用剤は、前記各構成成分を混合し、公知の方法(例えばパドルミキサー)を用いて攪拌することにより製造することができる。
【0069】
本発明の一実施形態に係る皮膚外用剤の投与対象、投与経路、および、投与間隔は、特に限定されず、上述した本発明の一実施形態に係るクローディン量の変動剤、および/または、タイトジャンクション緩和剤の投与対象、投与経路、および、投与間隔と同じであり得る。
【0070】
〔4.その他〕
本発明の一実施形態は、以下のように構成することもできる。
【0071】
<1>マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシンを含有するクローディン量の変動剤(例えば、タイトジャンクションにおけるクローディン量の変動剤)を被験体(例えば、ヒト、または、非ヒト動物(例えば、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、および、ラット))へ投与する工程を有する、クローディン量の変動方法(例えば、タイトジャンクションにおけるクローディン量の変動方法)。
【0072】
<2>クローディン1(CLD1)の量を減少させる、<1>に記載のクローディン量の変動方法(例えば、タイトジャンクションにおけるクローディン量の変動方法)。
【0073】
<3>マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシンを含有するタイトジャンクション緩和剤を被験体(例えば、ヒト、または、非ヒト動物(例えば、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、および、ラット))へ投与する工程を有する、タイトジャンクションの緩和方法。
【0074】
<4>マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシンを含有するクローディン量の変動剤(例えば、タイトジャンクションにおけるクローディン量の変動剤)、および/または、マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシンを含有するタイトジャンクション緩和剤、を含有する、皮膚外用剤を被験体(例えば、ヒト、または、非ヒト動物(例えば、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、および、ラット))へ投与する工程を有する、皮膚処置方法。
【0075】
<5>クローディン量の変動剤(例えば、タイトジャンクションにおけるクローディン量の変動剤)を製造するための、マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシンの使用。
【0076】
<6>前記クローディン量の変動剤(例えば、タイトジャンクションにおけるクローディン量の変動剤)はクローディン1(CLD1)の量を減少させるものである、<5>に記載の使用。
【0077】
<7>タイトジャンクション緩和剤を製造するための、マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシンの使用。
【0078】
<8>皮膚外用剤を製造するための、マヨナラエキスおよび/またはカプリロイルグリシンの使用。
【実施例0079】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0080】
〔NMRによる一次スクリーニングの基本原理〕
タイトジャンクションは4回膜貫通型タンパク質であるクローディン(CLD)と、膜裏打ちタンパク質であるZO-1とが相互作用することで形成される。ZO-1に存在するPDZドメインに対する様々なサンプルの結合をNMRにより観察することで、一次スクリーニングを行った。
【0081】
評価に使用したPDZドメインは2種類である。一方は、ZO-1 PDZ1ドメイン(マウス由来の遺伝子情報をもとに作製した組換えタンパク質であって、ヒトと同一のアミノ酸配列を有する組換えタンパク質)であり、このPDZドメインにサンプルが結合する場合、当該サンプルはタイトジャンクションを緩和すると期待できる。
【0082】
もう一方は、LNX-1 PDZ2ドメイン(マウス由来の遺伝子情報をもとに作製した組換えタンパク質であって、結合に重要なPDZドメイン上のポケット表面を構成するアミノ酸についてはヒトと同一である組換えタンパク質)であり、このPDZドメインにサンプルが結合する場合は、当該サンプルはタイトジャンクションを強化すると期待できる。
【0083】
試験にて得られるNMRスペクトルは、タンパク質(ドメイン)を構成しているアミノ酸の主鎖アミド基、および、グルタミンやアスパラギンの側鎖アミノ基、を観測できるNMRスペクトルである。各アミド基(アミノ基)は、それぞれ存在する磁気的環境に依存した化学シフトをもつため、各アミノ酸に由来する交差ピークとして現れる。
【0084】
サンプルの存在下でのNMRスペクトルと、サンプルの非存在下でのNMRスペクトルとを比較したときに、NMRスペクトルピークに変化が観察されない場合は、PDZドメインを構成しているアミド基(アミノ基)の磁気的環境に影響を与えなかった、すなわち、PDZドメインに結合する成分がサンプルには含まれていなかったことを意味する。
【0085】
サンプルの存在下でのNMRスペクトルと、サンプルの非存在下でのNMRスペクトルとを比較したときに、NMRスペクトルピークに変化が観察される場合は、PDZドメインを構成しているアミド基(アミノ基)の磁気的環境に影響を与えた、すなわち、PDZドメインに結合する成分がサンプルには含まれていたことを意味する。
【0086】
〔実施例1:サンプルmd3に関する試験〕
(1.NMRによる一次スクリーニング)
1.0%のマヨナラエキス、49.5%の1,3-ブチレングリコール(以下BGと記載する)、および、49.5%の精製水を混合し、サンプルmd3を作製した。PDZドメインとして、ZO-1 PDZ1ドメイン、および、LNX-1 PDZ2ドメインを使用した。サンプルのバッファー条件は、ZO-1 PDZ1ドメインについては、20mMのMES(2-モルホリノエタンスルホン酸)-NaOH(pH=5.9)、および、10%(v/v)のDOとし、LNX-1 PDZ2ドメインについては、20mMのMOPS(3-モルフォリノプロパンスルホン酸)-NaOH(pH=6.8)、100mMのNaCl、50mMのMgSO、および、10%(v/v)のDOとした。5%濃度(v/v)となるようにサンプルmd3を、バッファー中に混合し、NMR装置(Bruker社製、600 MHz Avance III クライオジェニックプローブ)を使用して、1H-15N二次元相関スペクトルを測定し、マヨナラエキスのPDZドメインへの結合評価を行った。
【0087】
結果を図1図4、および、表1に示す。下記表1中、「〇」はサンプルがPDZドメインに結合することを示し、「×」はサンプルがPDZドメインに結合しないことを示す。マヨナラエキスを含有するmd3の存在下では、ZO-1 PDZ1ドメインを用いた場合にNMRスペクトルピークに変化が認められた。すなわち、マヨナラエキスを含有するmd3は、ZO-1 PDZ1ドメインに結合することが分かった。
【表1】
(2.ヒト皮膚細胞を用いた二次スクリーニング)
(2-1.マヨナラエキスの濃度範囲の測定)
HaCaT細胞を96ウェルプレートに播種し、3~4日間に1回、培地A(富士フイルム和光純薬製のD-MEM(高グルコース)(L-グルタミン、フェノールレッド、ピルビン酸ナトリウム含有))を交換しながら、計9日間培養した。次いで、培地Aに1.2mMとなるようにカルシウムイオンを添加した培地Bに交換して細胞分化を誘導し、さらに5~6日間培養した。次に、2.5%、5%、10%濃度(v/v)となるようにmd3を添加した培地Bに交換して、18時間培養した。その後、培地Bに10%濃度(v/v)となるようにWST-8試薬(同仁化学社製)を添加した培地Cへ交換した。WST-8ホルマザン増加による培地の着色を、プレートリーダー(PerkinElmer社製)を使用して450nmの光の吸収により測定し、細胞生育に影響が出ない、md3の濃度範囲を決定した。
【0088】
結果を表2に示す。表2より、md3について、10%濃度(v/v)ではコントロールよりも低いミトコンドリア活性を示したことから、10%濃度(v/v)では毒性であることが分かった。5%濃度(v/v)ではコントロールと同程度のミトコンドリア活性を示したことから、5%濃度(v/v)では毒性がないことが分かった。従って、md3について、以下に記載の(2-2.ヒト皮膚細胞でのタイトジャンクション構成タンパク質の変化)の試験は、5%濃度(v/v)で行った。
【表2】
(2-2.ヒト皮膚細胞でのタイトジャンクション構成タンパク質の変化)
HaCaT細胞を6ウェルプレートに播種し、3~4日間に1回、培地Aを交換しながら、計15日間培養した。次いで、培地Bに交換して細胞分化を誘導し、さらに3日間培養した。次に、培地を5%濃度(v/v)となるようにmd3を添加した培地Bに交換し、18時間培養した。得られた細胞を回収し、破砕し、SDS-PAGEにより細胞由来のタンパク質を分離した。細胞由来のタンパク質を電気泳動させた後、PVDF膜へ転写し、一次抗体CLD1、および、HRP付二次抗体と反応させた。次いで、化学発光で検出し、ウェスタンブロッティング、および、抗体ブロッティングにより、ヒト皮膚細胞のタイトジャンクション構成タンパク質のクローディン量の変化を評価した。結果を図17に示す。
【0089】
図17より、md3について、5%濃度(v/v)では、CLD1が減少することが示された。従って、タイトジャンクションの構成成分を減少させるmd3は、タイトジャンクションの緩和効果を有すると考えられる。なお、図17において、各レーンは、左から順に「培地B」、「10% BG水溶液」、「5% md3」、「10% md24」の試験結果を示している。
【0090】
〔実施例2:サンプルmd24に関する試験〕
(1.NMRによる一次スクリーニング)
実施例1におけるマヨナラエキス、BG、および、精製水を、カプリロイルグリシン(SEPPIC社製)、水酸化カリウム、および、精製水に変更し、表1の配合比で混合してサンプルmd24を作製した。得られたサンプルmd24について、ZO-1 PDZ1ドメインではサンプルmd24の濃度を5%濃度(v/v)、LNX-1 PDZ2ドメインではサンプルmd24の濃度を1.0%濃度(v/v)で使用した以外は、実施例1と同様にして、溶液NMRによるPDZドメインへの結合評価を行った。
【0091】
結果を図5図8、および、表1に示す。カプリロイルグリシンを含有するmd24の存在下では、ZO-1 PDZ1ドメインを用いた場合にNMRスペクトルピークに変化が認められた。すなわち、カプリロイルグリシンを含有するmd24は、ZO-1 PDZ1ドメインに結合することが分かった。
【0092】
(2.ヒト皮膚細胞を用いた二次スクリーニング)
(2-1.カプリロイルグリシンの濃度範囲の測定)
md3をmd24に変更し、培地中のサンプルの濃度を2.5%、5%、10%、20%、30%濃度(v/v)に変更した以外は、実施例1と同様にして、細胞生育に影響が出ない濃度範囲を決定した。
【0093】
結果を表2に示す。表2より、md24について、2.5%、5%、10%、20%、30%濃度(v/v)の何れの濃度でもコントロールと同程度のミトコンドリア活性を示したことから、2.5%、5%、10%、20%、30%濃度(v/v)の何れの濃度でも毒性がないことが分かった。以下に記載の(2-2.ヒト皮膚細胞でのタイトジャンクション構成タンパク質の変化)の試験は、10%濃度(v/v)で行った。
【0094】
(2-2.ヒト皮膚細胞でのタイトジャンクション構成タンパク質の変化)
5%濃度(v/v)のmd3を10%濃度(v/v)のmd24に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒト皮膚細胞を培養し、ヒト皮膚細胞でのタイトジャンクション構成タンパク質の変化をウェスタンブロッティングにより評価した。結果を図17に示す。
【0095】
図17より、md24について、10%濃度(v/v)では、CLD1が減少することが示された。従って、タイトジャンクションの構成成分を減少させるmd24は、タイトジャンクションの緩和効果を有すると考えられる。なお、図17において、各レーンは、左から順に「培地B」、「10% BG水溶液」、「5% md3」、「10% md24」の試験結果を示している。
【0096】
〔比較例1:サンプルmd1に関する試験〕
(1.NMRによる一次スクリーニング)
実施例1におけるマヨナラエキス、BG、および、精製水を、ビワ葉エキス、および、BGに変更し、表1の配合比で混合してサンプルmd1を作製した。5%濃度(v/v)のサンプルmd1を使用して、溶液NMRによるZO-1 PDZ1ドメイン、および、LNX-1 PDZ2ドメインへの結合評価を行った。
【0097】
結果を図9図12、および、表1に示す。md1の存在下では、ZO-1 PDZ1ドメイン、および、LNX-1 PDZ2ドメインの何れを用いた場合にもNMRスペクトルピークに変化が認められなかった。すなわち、md1は、ZO-1 PDZ1ドメイン、および、LNX-1 PDZ2ドメインとの結合を示さなかった。従って、二次スクリーニング以降の試験は行わなかった。
【0098】
〔比較例2:サンプルmd21に関する試験〕
(1.NMRによる一次スクリーニング)
実施例1においてマヨナラエキス、BG、および、精製水を、レスベラトロール、エタノール、および、精製水に変更し、表1の配合比で混合してサンプルmd21を作製した。得られたサンプルmd21について、ZO-1 PDZ1ドメインではサンプルmd21の濃度を5%濃度(v/v)、LNX-1 PDZ2ドメインではサンプルmd21の濃度を1.0%濃度(v/v)で使用した以外は、実施例1と同様にして溶液NMRによるZO-1 PDZ1ドメイン、および、LNX-1 PDZ2ドメインへの結合評価を行った。
【0099】
結果を図13図16、および、表1に示す。md21の存在下では、ZO-1 PDZ1ドメイン、および、LNX-1 PDZ2ドメインの何れを用いた場合にもNMRスペクトルピークに変化が認められなかった。すなわち、md21は、ZO-1 PDZ1ドメイン、および、LNX-1 PDZ2ドメインとの結合を示さなかった。従って、二次スクリーニング以降の試験は行わなかった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、クローディン量の変動剤、タイトジャンクション緩和剤、および、それらを用いた皮膚外用剤に利用することができる。それゆえ、本発明は、化粧品、医薬品、または、医薬部外品として好適に利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17