(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072626
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】電極製造装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20240521BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20240521BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240521BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240521BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
B05C5/02
B05C11/10
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183576
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000119254
【氏名又は名称】株式会社テクノスマート
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】林 圭一
(72)【発明者】
【氏名】小島 昌人
(72)【発明者】
【氏名】市川 太空美
(72)【発明者】
【氏名】西野 和秀
(72)【発明者】
【氏名】築地 鉄矢
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
5H050
【Fターム(参考)】
4F041AA12
4F041AB01
4F041CA03
4F041CA13
4F041CA17
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
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4F042CB08
4F042DH09
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA29
(57)【要約】
【課題】適切に膜厚のフィードバック制御が実行される電極製造装置を提供すること。
【解決手段】電極製造装置10は、塗工部分32の各々において、塗工部分32の幅方向Bに複数点の膜厚を取得するとともに、幅方向Bに複数点取得された膜厚から塗工部分32の膜厚の代表値を決定する測定部40と、集電体100に塗工する塗液31の出口である複数の塗液吐出部312と、塗液吐出部312の各々に連通する分岐流路313bと、分岐流路313bの各々の容積が調整されるように分岐流路313bの各々に進退可能とした部材であって、塗液吐出部312の各々から吐出される塗液31の吐出量を調整する容積変更部材314と、を含む塗工装置30と、を備える。測定部40は、塗工部分32の各々において、複数点の膜厚のうち上位n点(nは幅方向Bに取得された膜厚の数よりも小さく、且つ自然数である)の膜厚に基づいて代表値を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の集電体に活物質を含有する塗液を塗工することにより前記集電体の長手方向に延びる塗工部分を前記集電体の幅方向に間隔を空けて複数形成する電極製造装置であって、
前記塗工部分の各々において、前記塗工部分の前記幅方向に複数点の膜厚を取得するとともに、前記幅方向に複数点取得された前記膜厚から前記塗工部分の膜厚の代表値を決定する測定部と、
前記集電体に塗工する前記塗液の出口である複数の塗液吐出部と、前記塗液吐出部の各々に連通する分岐流路と、前記分岐流路の各々の容積が調整されるように前記分岐流路の各々に進退可能とした部材であって、前記塗液吐出部の各々から吐出される前記塗液の吐出量を調整する容積変更部材と、を含む塗工装置と、を備え、
前記容積変更部材は、当該容積変更部材に対応する前記分岐流路に流れる前記塗液により形成された前記塗工部分の前記代表値に応じて当該分岐流路に連通する前記塗液吐出部から吐出される前記塗液の吐出量を調整するように当該分岐流路に進退し、
前記測定部は、前記塗工部分の各々において、前記複数点の前記膜厚のうち上位n点(nは前記幅方向に取得された前記膜厚の数よりも小さく、且つ自然数である)の前記膜厚に基づいて前記代表値を決定することを特徴とする電極製造装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記複数点の前記膜厚のうち最も大きい膜厚を含む上位n点の前記膜厚を平均した基準値を算出するとともに前記基準値を中央値とする所定範囲を設定し、前記複数点の前記膜厚のうち前記所定範囲に含まれる前記膜厚を平均することにより前記代表値を決定する、請求項1に記載の電極製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、塗工装置が記載されている。
上記の塗工装置は、二次電池や、コンデンサなどの電子部品を製造するにあたり使用される。塗工装置は、帯状の被塗工材に塗液を塗工することにより被塗工材の長手方向に延びる塗工部分を被塗工材の幅方向に間隔を空けて複数形成する。つまり、塗工装置は、被塗工材に塗液をストライプ状に塗工する。
【0003】
塗工装置は、被塗工材に塗工する塗液の出口である複数の塗液吐出部と、全ての塗液吐出部に塗液を流す流路と、塗液吐出部から吐出される塗液の吐出量を調整する複数の容積変更部材と、を含んでいる。容積変更部材は、塗液吐出部からの塗液の吐出量を調整するにあたり、流路の一部分の容積が調整されるように流路に進退可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗液に気泡が混ざることによって、塗工部分にピンホールやスジといった局所的な凹みである凹部が形成されることがある。塗工装置を用いて被塗工材に塗液をストライプ状に塗工する場合のように、被塗工材の幅方向における各塗工部分の幅が小さいとき、塗液をストライプ状に塗工しない場合に比べて、塗工部分の幅全体に占める凹部の幅の比率が大きい。
【0006】
ここで、塗工部分の各々における被塗工材の膜厚を取得するとともに、膜厚に応じて容積変更部材を流路に進退させる場合を想定する。具体的には、取得される膜厚に基づいて塗工部分の膜厚が目標値となるように塗工装置をフィードバック制御する場合を想定する。
【0007】
この場合、塗工部分の幅全体において大きい比率を占める凹部が形成されていると、たとえその凹部が局所的なものであっても、取得される膜厚は塗工部分に形成された凹部の影響を受けやすくなり、凹部が形成されていないときに取得される膜厚よりも小さくなる場合がある。よって、凹部の影響を受けた膜厚に基づいて塗工装置をフィードバック制御して容積変更部材により流路の一部分の容積を調整すると、凹部が形成されていない塗工部分における膜厚が目標値よりも大きくなってしまう。すなわち、膜厚のフィードバック制御が適切に実施されない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する電極製造装置は、帯状の集電体に活物質を含有する塗液を塗工することにより前記集電体の長手方向に延びる塗工部分を前記集電体の幅方向に間隔を空けて複数形成する電極製造装置であって、前記塗工部分の各々において、前記塗工部分の前記幅方向に複数点の膜厚を取得するとともに、前記幅方向に複数点取得された前記膜厚から前記塗工部分の膜厚の代表値を決定する測定部と、前記集電体に塗工する前記塗液の出口である複数の塗液吐出部と、前記塗液吐出部の各々に連通する分岐流路と、前記分岐流路の各々の容積が調整されるように前記分岐流路の各々に進退可能とした部材であって、前記塗液吐出部の各々から吐出される前記塗液の吐出量を調整する容積変更部材と、を含む塗工装置と、を備え、前記容積変更部材は、当該容積変更部材に対応する前記分岐流路に流れる前記塗液により形成された前記塗工部分の前記代表値に応じて当該分岐流路に連通する前記塗液吐出部から吐出される前記塗液の吐出量を調整するように当該分岐流路に進退し、前記測定部は、前記塗工部分の各々において、前記複数点の前記膜厚のうち上位n点(nは前記幅方向に取得された前記膜厚の数よりも小さく、且つ自然数である)の前記膜厚に基づいて前記代表値を決定する。
【0009】
上記構成によれば、測定部により取得される代表値は、塗工部分において幅方向に複数点取得された膜厚のうち上位n点の膜厚に基づいて決定される。このため、塗工部分に局所的に凹部が形成されていたとしても、代表値の決定に際して、その凹部の影響を受けにくくすることができる。そして、そのように、塗工部分に形成された局所的な凹部の影響を受けにくくされた状態で決定した代表値に応じて容積変更部材により分岐流路の容積が調整されることで塗液の吐出量が調整される。よって、塗工部分に形成された局所的な凹部に起因する塗液の過剰吐出が抑制され、適切に膜厚のフィードバック制御が実行される。
【0010】
上記の電極製造装置において、前記測定部は、前記複数点の前記膜厚のうち最も大きい膜厚を含む上位n点の前記膜厚を平均した基準値を算出するとともに前記基準値を中央値とする所定範囲を設定し、前記複数点の前記膜厚のうち前記所定範囲に含まれる前記膜厚を平均することにより前記代表値を決定するとよい。
【0011】
塗工部分に局所的に凹部が形成されると、当該凹部に存在するはずであった塗液が、塗工部分に凸部として現れる場合がある。この場合、取得された複数点の膜厚のうち上位n点の膜厚には、凸部による異常値が含まれることがある。仮に塗工部分の膜厚のうち最も大きい膜厚を含む上位n点の膜厚を平均した基準値を代表値にすると、代表値が塗工部分に現れた凸部の影響を受けることがある。凸部の影響を受けた代表値に応じて容積変更部材により分岐流路の容積が調整されると、塗液の吐出量が少なくなり過ぎる虞がある。
【0012】
そこで、塗工部分に凸部が形成されても、上位n点の膜厚のうち基準値を中央値とする所定範囲に含まれる膜厚を平均することにより代表値を決定している。所定範囲が凸部を含まない膜厚の範囲となるように設定することで、代表値は、凸部の影響が除かれた膜厚となる。よって、塗工部分に凸部が形成されても、集電体への塗液の吐出量が少なくなり過ぎることを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、適切に膜厚のフィードバック制御が実行される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】塗工装置が塗液を塗工しているときの図である。
【
図3】測定部が膜厚を取得しているときを示す図である。
【
図4】
図3の4-4線で切断したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、電極製造装置を具体化した実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。
<電極製造装置>
図1及び
図2に示すように、電極製造装置10は、帯状の集電体100に活物質を含有する塗液31を塗工することにより集電体100の長手方向Aに延びる塗工部分32を集電体100の幅方向Bに間隔を空けて5つ形成する装置である。
【0016】
本実施形態で採用される集電体100は、例えば、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、集電体100に形成される塗工部分32及び負極活物質層33に電流を流し続けるための化学的に不活性な電気伝導体である。集電体100の材料は、例えば、金属材料、導電性樹脂材料又は導電性無機材料等である。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。集電体100は、複数の層を備えていてもよい。この場合、集電体100の各層は、上記の金属材料及び/又は導電性樹脂材料を含んでいてもよい。
【0017】
本実施形態においては、集電体100はアルミニウム箔と銅箔とを一体化させた金属箔101を備える。
本実施形態の塗液31は、活物質としての正極活物質を含有する。電極製造装置10により製造される電極がリチウムイオン電池に使用される電極である場合、正極活物質としては、層状岩塩構造を有するリチウム複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、ポリアニオン系化合物など、リチウムイオン電池の正極活物質として使用可能なものを採用すればよい。また、二種以上の正極活物質を併用してもよい。塗工部分32は、正極活物質層である。
【0018】
金属箔101の長辺に沿う方向が集電体100の長手方向Aであり、金属箔101の短辺に沿う方向が集電体100の幅方向Bである。金属箔101は、金属箔101の厚さ方向の一方に向く第1面101aと、金属箔101の厚さ方向の他方に向く第2面101bと、を有している。
【0019】
本実施形態では、集電体100は、電極製造装置10によって、長手方向Aに連続的に搬送されている。集電体100が搬送される方向を搬送方向Cとする。電極製造装置10は、集電体100が搬送方向Cに連続的に搬送されている状態で、金属箔101の第1面101aに活物質としての正極活物質を含有する塗液31を間欠的に塗工することにより長手方向Aに複数の塗工部分32を形成する。
【0020】
本実施形態の集電体100は、帯状の金属箔101の第2面101bに形成された負極活物質層33を含む。金属箔101の第2面101bには、長手方向Aに間欠的に負極活物質層33が形成されている。電極製造装置10により製造される電極がリチウムイオン電池に使用される電極である場合、負極活物質層33に含まれる負極活物質としては、Li、又は、炭素、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物等が挙げられる。炭素としては天然黒鉛、人造黒鉛、あるいはハードカーボン(難黒鉛化性炭素)又はソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)を挙げることができる。人造黒鉛としては、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。
【0021】
各塗工部分32は、金属箔101の第1面101aにおける各負極活物質層33の反対側に形成される。すなわち、各塗工部分32は金属箔101を介し各負極活物質層33と重なる位置に形成される。電極製造装置10は、バイポーラ電極を形成する装置である。なお、集電体100は、金属箔101の第2面101bに正極活物質を含有した正極活物質層が形成されたものであってもよい。この場合、塗液31は、負極活物質を含有するとよい。また、本実施形態で製造される電極は、リチウムイオン電池以外の電池に使用される電極であってもよい。この場合、塗液31に含有される活物質は、適宜変更する。
【0022】
図1に示すように、電極製造装置10は、2つのロール20と、塗工装置30と、測定部40と、を備えている。2つのロール20は、搬送方向Cにおいて間隔をおいて配置されている。2つのロール20は、集電体100を支持している。2つのロール20は、集電体100が搬送方向Cに搬送されるように回転する。なお、ロール20は、図示しないモータ等の駆動力を使用して回転する駆動ロールであってもよいし、集電体100の搬送にしたがって回転する従動ロールであってもよい。
【0023】
<塗工装置>
図1及び
図2に示すように、塗工装置30は、2つのロール20のうち搬送方向Cの上流に位置するロール20とともに集電体100を挟む位置に設けられている。塗工装置30は、本体部310と、5つの駆動部320と、を有している。本体部310は、一方向に長い略直方体状である。本体部310の長手方向は、集電体100の幅方向Bに一致している。
【0024】
本体部310は、塗液導入部311と、5つの塗液吐出部312と、流路313と、5つの容積変更部材314と、を有している。塗液導入部311は、塗工装置30の流路313へ塗液31を導入する入口である。本実施形態では、塗液導入部311には、本体部310の外部に設置されたタンク200に貯留された塗液31がポンプ201により一定流量で導入されている。
【0025】
塗液吐出部312は、集電体100に塗工する塗液31の出口である。全ての塗液吐出部312は、本体部310の長手方向に間隔を空けて配置されている。全ての塗液吐出部312は、金属箔101の第1面101aに対向している。全ての塗液吐出部312から塗液31が吐出されることにより、集電体100の幅方向Bに間隔を空けて5つの塗工部分32が形成される。つまり、塗工装置30は、集電体100に塗液31をストライプ状に塗工する。
【0026】
流路313は、1つの充填流路313aと、5つの分岐流路313bと、を有している。すなわち、塗工装置30は、5つの塗液吐出部312と、5つの分岐流路313bと、5つの容積変更部材314と、を含む。充填流路313aは、本体部310の内部において本体部310の長手方向に延びている。充填流路313aは、塗液導入部311に連通している。塗液導入部311に導入された塗液31は、充填流路313aに充填される。全ての分岐流路313bは、本体部310の長手方向に間隔を空けて設けられている。分岐流路313bの各々は、塗液吐出部312の各々に連通している。
【0027】
本体部310の長手方向において、全ての塗液吐出部312の間、及び全ての分岐流路313bの間は、隔壁315により隔てられている。隔壁315は、隣り合う塗液吐出部312の間、及び隣り合う分岐流路313bの間で塗液31が流れないように仕切る仕切壁である。
【0028】
全ての分岐流路313bには、充填流路313aに充填された塗液31が流れる。流路313は、塗液導入部311から導入された塗液31を全ての塗液吐出部312へ流している。流路313は、塗液導入部311及び塗液吐出部312の各々に連通する塗液31の流路である。
【0029】
全ての容積変更部材314は、略棒状の部材である。全ての容積変更部材314の各々は、長さ方向の一端の第1端314aと、長さ方向の他端の第2端314bと、を有する。容積変更部材314の各々の第1端314aは、本体部310の外部に位置しており、駆動部320の各々と接続されている。容積変更部材314の各々の第2端314bは、本体部310の内部に位置している。容積変更部材314の各々は、駆動部320によって第1端314aが本体部310に向けて押されると、第2端314bが分岐流路313bに進入する一方で、駆動部320によって第1端314aが本体部310から離れるように引かれると、第2端314bが分岐流路313bから後退する。
【0030】
分岐流路313bに第2端314bが進入するほど、分岐流路313bの容積が減少する。このため、分岐流路313bに進入する第2端314bの量が多いほど、塗液吐出部312に向けて流れる塗液31の単位時間あたりの流量が少なくなる。分岐流路313bから第2端314bが後退するほど、分岐流路313bの容積が増加する。このため、分岐流路313bから後退する第2端314bの量が多いほど、塗液吐出部312に向けて流れる塗液31の単位時間あたりの流量が多くなる。要するに、容積変更部材314の各々は、塗液吐出部312の各々から吐出される塗液31の単位時間あたりの吐出量を調整する。
【0031】
容積変更部材314の各々は、分岐流路313bの各々の容積が調整されるように分岐流路313bの各々に進退可能とした部材である。このため、容積変更部材314の各々は、当該容積変更部材314に対応する分岐流路313bに進退することにより当該分岐流路313bに連通する塗液吐出部312から吐出される塗液31の単位時間あたりの吐出量を調整する。なお、本実施形態において、容積変更部材314の第2端314bを分岐流路313bに最大限進入させると、分岐流路313bを遮断する。つまり、塗液吐出部312から塗液31が吐出されなくなる。
【0032】
駆動部320は、一例としてモータ320aと、モータ320aの回転運動をねじ軸の直線運動に変換するボールねじ機構とを有している。駆動部320のねじ軸は、その軸線が容積変更部材314の軸線と一致するように、容積変更部材314の第1端314aに接続されている。駆動部320は、モータ320aの回転方向の変更により容積変更部材314の進退する方向を変更する。駆動部320は、モータ320aを制御し、ボールねじ機構の回転量を変更することで容積変更部材314の移動量を変更する。
【0033】
<測定部>
図1及び
図3に示すように、測定部40は、光切断法により幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々の膜厚を周期的に取得する。測定部40は、光源50と、カメラ60と、制御装置70と、を有している。光源50及びカメラ60は、搬送方向Cにおいて塗工装置30よりも下流に配置されている。制御装置70は、CPUやGPU等のプロセッサ71と、RAM及びROM等からなる記憶部72と、を備えている。記憶部72は、処理をプロセッサ71に実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。記憶部72、すなわち、コンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置70は、ASIC:Application Specific Integrated CircuitやFPGA:Field Programmable Gate Array等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置70は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ71や、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0034】
図3に示すように、光源50は、集電体100に幅方向Bに延びるライン状の光を照射するレーザ光源などである。光源50から集電体100に照射されたライン状の光は、幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々に照射される。カメラ60は、光源50の光が照射された塗工部分32の各々を周期的に撮像する。カメラ60は、撮像した画像を制御装置70に出力する。制御装置70は、カメラ60で撮像された画像を取得する。制御装置70は、画像に含まれる光の移動量を検出することにより、幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々において、幅方向Bの複数点における金属箔101からの高さを取得する。つまり、制御装置70は、取得した画像から幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々において、塗工部分32の幅方向Bに複数点の膜厚を周期的に取得している。測定部40は、塗工部分32の各々において、塗工部分32の幅方向Bに複数点の膜厚を取得している。本実施形態では、制御装置70は、幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々において、幅方向Bで並ぶ任意の10点における膜厚を周期的に取得している。
【0035】
制御装置70は、幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々において、幅方向Bに複数点取得された膜厚から塗工部分32の膜厚の代表値Tvを決定する。制御装置70は、幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々において、複数点の膜厚のうち上位n点の膜厚に基づいて膜厚の代表値Tvを決定する。本実施形態において、nは、「5」である。nは、幅方向Bに取得された膜厚の数よりも小さく、且つ自然数である。測定部40は、幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々において、幅方向Bに複数点取得された膜厚から塗工部分32の膜厚の代表値Tvを決定する。測定部40は、幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々において、複数点の膜厚のうち上位n点の膜厚に基づいて膜厚の代表値Tvを決定する。測定部40は、塗工部分32の各々において、幅方向Bに複数点取得された膜厚の代表値Tvを周期的に取得する。
【0036】
図2及び
図3に示すように、制御装置70は、幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々における代表値Tvに基づいて塗工装置30をフィードバック制御する。制御装置70は、幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々における膜厚が目標値※Tとなるように塗工装置30をフィードバック制御する。制御装置70は、幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々において、代表値Tvと目標値※Tとの差分をなくすように各駆動部320のモータ320aの回転方向及び回転数を制御する。
【0037】
制御装置70は、代表値Tvが目標値※Tよりも小さければ、この代表値Tvを有する塗工部分32を形成する塗液31が流れる分岐流路313bの容積を大きくするように該当する容積変更部材314が後退するようにモータ320aを制御する。
【0038】
制御装置70は、代表値Tvが目標値※Tよりも大きければ、この代表値Tvを有する塗工部分32を形成する塗液31が流れる分岐流路313bの容積を小さくするように該当する容積変更部材314が押し込まれるようにモータ320aを制御する。
【0039】
制御装置70は、代表値Tvが目標値※Tと同じであれば、当該代表値Tvを有する塗工部分32を形成する塗液31が流れる分岐流路313bの容積が変化しないように該当する容積変更部材314が進退しないようにモータ320aを制御する。なお、容積変更部材314は、当該容積変更部材314に対応する分岐流路313bに流れる塗液31により形成された塗工部分32の代表値Tvに応じて当該分岐流路313bに連通する塗液吐出部312から吐出される塗液31の吐出量を調整するように当該分岐流路313bに進退する。
【0040】
<代表値Tvの取得>
以下、代表値Tvの取得について具体的に説明する。
図3及び
図4に示すように、幅方向Bに並ぶ塗工部分32のうち1つに局所的な凹部32aが形成された場合を一例として説明する。なお、以下の説明において、目標値※Tは、100μmである。
【0041】
図4に示すように、局所的な凹部32aが形成された塗工部分32において、凹部32aに存在するはずであった塗液31が凹部32aの幅方向Bの両側に凸部32bとして現れている。局所的な凹部32aが形成された塗工部分32において、幅方向Bに並ぶ任意の10点のそれぞれを、測定箇所P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8,P9,P10とする。測定箇所P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8,P9,P10は上記順序で幅方向Bに並んでいる。測定部40は、測定箇所P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8,P9,P10における膜厚を取得する。なお、測定箇所P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8,P9,P10の位置は、塗工部分32における幅方向Bの全体にわたって一定の間隔で設定されることが好ましい。
【0042】
図4及び
図5に示すように、測定箇所P1,P2,P9,P10における膜厚は、100μmである。測定箇所P3における膜厚は、120μmである。測定箇所P4,P5,P6,P7における膜厚は、30μmである。測定箇所P8における膜厚は、120μmである。測定箇所P4,P5,P6,P7は、凹部32aが形成されている位置を示す。測定箇所P3,P8は、凸部32bが形成されている位置を示す。
【0043】
本実施形態では、制御装置70は、取得した10点の膜厚のうち最も大きい膜厚を含む上位5点の膜厚を平均した基準値Svを算出する。上述した一例では、基準値Svは、108μmである。制御装置70は、基準値Svを中央値とする所定範囲を設定する。測定部40は、基準値Svを中央値とする所定範囲を設定する。制御装置70は、上位5点の膜厚のうち所定範囲に含まれる膜厚を平均することにより代表値Tvを決定する。測定部40は、上位5点の膜厚のうち所定範囲に含まれる膜厚を平均することにより代表値Tvを決定する。所定範囲は、一例として基準値Svの±10%の範囲である。本実施形態では、所定範囲は、118.8μmを上限値、及び97.2μmを下限値とする範囲である。所定範囲は、基準値Svを基準として上限値及び下限値により規定される範囲である。「±10%」とは、上限値及び下限値が凸部32bを含まない膜厚となるように設定されている。つまり、所定範囲は、凸部32bを含まない膜厚の範囲となるように設定されている。所定範囲は、上位5点の膜厚から膜厚の異常値を省くように設定されている。所定範囲は、上記に例示した範囲に限られず、実験等により求められた任意の範囲を設定してもよい。上述した一例において、上位5点の膜厚に含まれ得る膜厚の異常値は、測定箇所P3,P8における膜厚の120μmである。制御装置70は、上位5点の膜厚から測定箇所P3,P8における膜厚である120μmを省いた3つの膜厚を平均することにより代表値Tvを決定する。上述した一例では、代表値Tvは、100μmである。
【0044】
[本実施形態の作用]
本実施形態の作用を説明する。
仮に、測定箇所P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8,P9,P10における膜厚の全ての平均値である76μmを代表値Tvとして制御装置70が塗工装置30をフィードバック制御する場合を想定する。
【0045】
図6に示すように、この場合、凹部32aが形成された塗工部分32を形成する塗液31が流れる分岐流路313bの容積が大きくなるように該当する容積変更部材314が、例えば二点鎖線で示される位置まで後退する。すると、凹部32aよりも搬送方向Cの下流側において、集電体100に塗液31が過剰に吐出される。
【0046】
その点、本実施形態の上述した一例では、塗工部分32に凹部32aが形成されていても、代表値Tvが100μmとなる。そして、目標値※Tが100μmであるため、塗工部分32に凹部32aが形成されても、凹部32aが形成された塗工部分32を形成する塗液31が流れる分岐流路313bの容積が変化しないように該当する容積変更部材314が進退しない。
【0047】
要するに、塗工部分32に局所的に凹部32aが形成されていたとして、測定部40により決定される代表値Tvは、凹部32aの影響を受けない。凹部32aの影響を受けていない代表値Tvに応じて容積変更部材314により分岐流路313bの容積が調整されることで塗液31の単位時間あたりの吐出量が調整される。
【0048】
また、
図4に示すように、塗工部分32に局所的に凹部32aが形成されると、当該凹部32aに存在するはずであった塗液31が、塗工部分32に凸部32bとして現れる場合がある。
【0049】
この場合、
図5に示すように、取得した10点の膜厚のうちの上位5点の膜厚には、凸部32bによる異常値が含まれることがある。仮に、上述した一例の基準値Svである108μmを代表値Tvにすると、代表値Tvが塗工部分32に現れた凸部32bの影響を受ける。凸部32bの影響を受けた代表値Tvに応じて容積変更部材314により分岐流路313bの容積が調整されると、塗液31の吐出量が少なくなり過ぎる虞がある。
【0050】
また、塗工部分32の表面には、通常凹凸が存在する。当該凹凸は、塗工部分32の膜厚の目標値※Tと比較して差分が非常に微小である。このため、測定箇所P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8,P9,P10における膜厚に微小な凹凸が含まれても、代表値Tvへの影響が微小である。
【0051】
しかし、上述した一例における凸部32bは、塗工部分32に通常形成される凸の高さよりも十分に大きい。このため、測定箇所P3,P8における膜厚を含めて代表値Tvを算出すると、代表値Tvが大きくなり過ぎる。このため、制御装置70が凸部32bの影響を受けた代表値Tvに基づいて塗工装置30をフィードバック制御すると、塗液31の吐出量が少なくなり過ぎることにより塗工部分32の膜厚が薄くなってしまう。
【0052】
本実施形態では、塗工部分32に凸部32bが形成されても、取得した10点の膜厚のうち最も大きい膜厚を含む上位5点の膜厚のうち基準値Svを中央値とする所定範囲に含まれる膜厚を平均することにより代表値Tvを決定している。所定範囲は、凸部32bを含まない膜厚の範囲となるように設定されている。つまり、代表値Tvは、凸部32bの影響が除かれた膜厚となる。よって、塗工部分32に凸部32bが形成されても、塗液31の吐出量が少なくなり過ぎることが抑制される。
【0053】
本実施形態では、塗工部分32に形成される凹部32aは、塗工部分32を形成しているときに塗液31に含まれる気泡によって瞬間的に、且つ局所的に形成されるものである。このため、塗工部分32に凹部32aが一部形成されていたとしても、電極の性能に対する影響は微小である。また、電極の製造において、塗工部分32がプレスされる工程が存在することが知られている。塗工部分32に形成される凹部32a及び凸部32bが形成されていたとしても、当該プレス工程により凹部32a及び凸部32bが均される。このため、塗工部分32の凹部32a及び凸部32bの存在は、電極の性能に対する影響が微小である。
【0054】
その点、上述したように、凹部32a及び凸部32bにより塗液31が吐出量が多過ぎたり、少なく過ぎたりすると、電極全体の厚さが増減するため、電極の性能に大きく影響する。つまり、凹部32a及び凸部32bに起因して塗液31の吐出量が多くなり過ぎたり、少なくなり過ぎたりすることが従来問題となっていた。本実施形態の電極製造装置10は、塗液31の吐出量が電極の性能に大きく影響しないようにする観点で構成されている。
【0055】
[本実施形態の効果]
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)測定部40により取得される代表値Tvは、塗工部分32において幅方向Bに複数点取得された膜厚のうち上位5点の膜厚に基づいて決定される。このため、塗工部分32に局所的に凹部32aが形成されていたとしても、代表値Tvの決定に際して、その凹部32aの影響を受けにくくすることができる。そして、そのように塗工部分32に形成された局所的な凹部32aの影響を受けにくくされた状態で決定した代表値Tvに応じて容積変更部材314により分岐流路313bの容積が調整されることで塗液31の吐出量が調整される。よって、塗工部分32に形成された局所的な凹部32aに起因する塗液31の過剰吐出が抑制され、適切に膜厚のフィードバック制御が実行される。
【0056】
(2)本実施形態では、塗工部分32に凸部32bが形成されても、上位5点の膜厚のうち基準値Svを中央値とする所定範囲に含まれる膜厚を平均することにより代表値Tvを決定している。所定範囲が凸部32bを含まない膜厚の範囲となるように設定することで、代表値Tvは、凸部32bの影響が除かれた膜厚となる。よって、塗工部分32に凸部32bが形成されても、集電体100への塗液31の吐出量が少なくなり過ぎることを抑制できる。
【0057】
[変更例]
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0058】
○ 測定部40は、幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々において、幅方向Bに並ぶ任意の10点における膜厚を取得している。幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々において、膜厚を取得する箇所は、2箇所以上であれば適宜変更してもよい。また、測定部40は、幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々において、幅方向Bの全体の膜厚を連続的に取得してもよい。連続的に取得された幅方向Bの全体の膜厚とは、幅方向Bに数限りなく存在する点における膜厚の集合である。要するに、測定部40は、塗工部分32の各々において、幅方向Bで複数点の膜厚を取得できればよい。
【0059】
○ 測定部40は、幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々において、複数点の膜厚のうち上位n点の膜厚に基づいて膜厚の代表値Tvを取得している。本実施形態において、nは、「5」であったが、膜厚を取得する箇所が2箇所であった場合、nは、「1」となる。また、膜厚を取得する箇所が3箇所であった場合、nは「1」又は「2」となる。要するに、nは、幅方向Bで取得された膜厚の数よりも小さく、且つ自然数であればよい。
【0060】
○ 本実施形態及び上記変更例において、複数点の膜厚のうち最も大きい膜厚を含む上位n点の膜厚を平均した基準値Svを代表値Tvとしてもよい。
○ 本実施形態及び上記変更例において、複数点の膜厚のうち最も大きい膜厚以外の上位n点の膜厚を平均した基準値Svを代表値としてもよい。
【0061】
○ 測定部40は、光源50と、カメラ60と、カメラ60で撮像された画像から幅方向Bで複数点の膜厚を取得した後、複数点の膜厚のうち上位n点の膜厚に基づいて代表値Tvを取得する処理装置と、を有していればよい。そして、本実施形態における制御装置70が当該処理装置に該当するが、これに限らない。例えば、制御装置70と、当該処理装置とを個別に用意してもよい。この場合、処理装置により取得された代表値Tvは、制御装置70に出力されるとよい。
【0062】
○ 測定部40は、光源50とカメラ60を使用して光切断法により幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々の膜厚を周期的に取得したが、これに限らない。幅方向Bに並ぶ塗工部分32の各々の膜厚を周期的に取得する構成は、光源50とカメラ60に限らず、適宜変更してもよい。
【0063】
○ 測定部40は、周期的に代表値Tvを取得していたが、これに限らない。測定部40は、連続的に代表値Tvを取得してもよい。
○ 容積変更部材314の第2端314bを分岐流路313bに最大限進入させると、分岐流路313bを遮断していたが、これに限らない。例えば、金属箔101の第1面101aに塗液31を連続的に塗工するのであれば、分岐流路313bは、容積変更部材314により遮断されないようにする。
【0064】
○ タンク200に貯留された塗液31がポンプ201により一定流量で塗液導入部311に導入されていたが、これに限らない。例えば、制御装置70は、ポンプ201を制御することにより塗液導入部311に導入する塗液31の流量を調整してもよい。
【0065】
○ 1つの分岐流路313bに2つ以上の容積変更部材314が対応していてもよい。
○ 集電体100において、金属箔101の第2面101bには、負極活物質層33が形成されていなくてもよい。つまり、塗液31が塗工される前の集電体100は、金属箔101のみで構成されていてもよい。この場合、金属箔101の第1面101aに負極活物質を含有する塗液31を塗工してもよい。
【0066】
○ 集電体100において、金属箔101の第1面101a及び第2面101bに正極活物質層となる塗工部分32を形成してもよい。また、金属箔101の第2面101bに負極活物質層33を形成し、且つ金属箔101の第1面101aに負極活物質を含有する塗液31により負極活物質層となる塗工部分32を形成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…電極製造装置、30…塗工装置、31…塗液、32…塗工部分、40…測定部、100…集電体、312…塗液吐出部、313b…分岐流路、314…容積変更部材、A…長手方向、B…幅方向、Tv…代表値、Sv…基準値。