(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072636
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】光増幅器、光伝送システム、出力保持装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/296 20130101AFI20240521BHJP
H04B 10/079 20130101ALI20240521BHJP
H01S 3/10 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H04B10/296
H04B10/079 170
H01S3/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183594
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116677
【氏名又は名称】シンクレイヤ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラカパン バラスブラマニアン
(72)【発明者】
【氏名】鈴村 英彦
(72)【発明者】
【氏名】木全 勝広
【テーマコード(参考)】
5F172
5K102
【Fターム(参考)】
5F172AM08
5F172BB02
5F172BB03
5F172BB34
5F172BB44
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5F172BB94
5K102AA53
5K102AD01
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5K102MA03
5K102MB01
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5K102MD02
5K102MD03
5K102MH02
5K102MH04
5K102MH13
5K102MH14
5K102MH22
5K102PB03
5K102PB05
5K102PB11
5K102PD13
5K102PH12
5K102PH13
5K102PH43
5K102PH48
5K102PH49
5K102PH50
5K102RD02
(57)【要約】
【課題】無用な光スイッチの切り替えが防止された光増幅器を提供する。
【解決手段】光増幅器は、励起光を出力する励起光源100と、第1希土類ドープファイバー(EDF103)と、EDF103により増幅可能な波長であるダミー光を出力するダミー光生成部(ダミー光源101)と、励起光およびダミー光の出力を制御する制御部(制御装置104、コンパレータ105、論理積回路106)と、を有する。制御部は、光増幅器への信号光の入力が遮断された場合に、励起光の出力を所定時間が経過するまで継続し、信号光の遮断後で所定時間の経過前は、ダミー光と励起光がEDF103に入力されるように制御する。また、光増幅器によって増幅された前記ダミー光の光パワーが、光増幅器によって増幅された信号光の光パワーと同等となるように、ダミー光生成部から出力されるダミー光の光パワーが設定されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を出力する励起光源と、信号光と前記励起光が入力され、前記信号光を増幅して出力する第1希土類ドープファイバーと、を有した光増幅器であって、
前記第1希土類ドープファイバーにより増幅可能な波長であるダミー光を出力するダミー光生成部と、
前記励起光および前記ダミー光の出力を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記光増幅器に入力される前記信号光の光パワーが所定値以下となった場合に、前記信号光の入力が遮断されたと判断し、
前記光増幅器への前記信号光の入力が遮断された場合に、前記励起光の出力を所定時間が経過するまで継続し、前記所定時間の経過後は前記励起光の出力を停止し、前記信号光の遮断後で前記所定時間の経過前は、前記ダミー光と前記励起光が前記第1希土類ドープファイバーに入力されるように制御し、
前記光増幅器によって増幅された前記ダミー光の光パワーが、前記光増幅器によって増幅された前記信号光の光パワーと同等となるように、前記ダミー光生成部から出力される前記ダミー光の光パワーが設定されている、光増幅器。
【請求項2】
前記ダミー光生成部は、前記ダミー光を出力するダミー光源を有し、
前記制御部は、
前記所定時間の経過前であれば1、前記所定時間の経過後であれば0の2値とする第1制御信号を生成し、
前記光増幅器への前記信号光の入力がある場合に0、前記光増幅器への前記信号光の入力が遮断された場合に1の2値とする第2制御信号を生成し、
前記第1制御信号と前記第2制御信号との論理積である第3制御信号を生成し、
前記第1制御信号によって前記励起光の出力をオンオフ制御し、
前記第3制御信号によって前記ダミー光の出力をオンオフ制御する、請求項1に記載の光増幅器。
【請求項3】
前記ダミー光生成部は、
前記励起光の一部が分岐されて入力される第2希土類ドープファイバーを有し、
前記第2希土類ドープファイバーから出力されるASEを前記ダミー光とする、請求項1に記載の光増幅器。
【請求項4】
ヘッドエンドから各加入者宅まで放送信号である信号光を伝送する光伝送システムにおいて、
前記信号光を増幅する第1光増幅器および第2光増幅器と、
前記第1光増幅器と前記第2光増幅器の一方に選択的に接続し、前記第1光増幅器から入力される前記信号光の光パワーが所定値よりも大きい場合には前記第1光増幅器と接続し、前記第1光増幅器から入力される前記信号光の光パワーが所定値以下である場合には前記第2光増幅器と接続する光スイッチと、を有し、
前記第1光増幅器は、請求項1~3のいずれかに記載の光増幅器である、光伝送システム。
【請求項5】
励起光を出力する励起光源と、信号光と前記励起光が入力され、前記信号光を増幅して出力する第1希土類ドープファイバーと、を有した光増幅器の前段に挿入される出力保持装置であって、
前記第1希土類ドープファイバーにより増幅可能な波長であるダミー光を出力するダミー光生成部と、
前記ダミー光の出力を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記光増幅器に入力される前記信号光の光パワーが所定値以下となった場合に、前記信号光の入力が遮断されたと判断し、
前記出力保持装置への前記信号光の入力が遮断された場合に、前記信号光の遮断後から所定時間が経過するまでの間に、前記出力保持装置から前記ダミー光が出力されるように制御し、
前記光増幅器によって増幅された前記ダミー光の光パワーが、前記光増幅器によって増幅された前記信号光の光パワーと同等となるように、前記ダミー光生成部から出力される前記ダミー光の光パワーが設定されている、出力保持装置。
【請求項6】
前記ダミー光生成部は、前記ダミー光を出力するダミー光源を有し、
前記制御部は、
前記所定時間の経過前であれば1、前記所定時間の経過後であれば0の2値とする第1制御信号を生成し、
前記出力保持装置への前記信号光の入力がある場合に0、前記出力保持装置への前記信号光の入力が遮断された場合に1の2値とする第2制御信号を生成し、
前記第1制御信号と前記第2制御信号との論理積である第3制御信号を生成し、
前記第1制御信号によって前記励起光の出力をオンオフ制御し、
前記第3制御信号によって前記ダミー光の出力をオンオフ制御する、
請求項5に記載の出力保持装置。
【請求項7】
ヘッドエンドから各加入者宅まで放送信号である信号光を伝送する光伝送システムにおいて、
前記信号光を複数に分配する光分配器と、
前記光分配器により分配された前記信号光がそれぞれ入力され、前記信号光を増幅する複数の第1光増幅器および第2光増幅器と、
前記第1光増幅器と前記第2光増幅器の一方に選択的に接続し、前記第1光増幅器から入力される前記信号光の光パワーが所定値よりも大きい場合には前記第1光増幅器と接続し、前記第1光増幅器から入力される前記信号光の光パワーが所定値以下である場合には前記第2光増幅器と接続する光スイッチと、を有し、
前記光分配器の前段に請求項5または請求項6に記載の出力保持装置が挿入されている、光伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光増幅器、光伝送システム、出力保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドエンド(放送局)に配置された光送信機から各加入者宅に配置された光端末器までを光ファイバーによって接続し、放送信号を光信号として伝送する光伝送システムが広く知られている。このような伝送方式は放送型FTTHと呼ばれている。ヘッドエンドには、光送信機の他、光増幅器などの機器が配置される。また、加入者までの距離に応じて伝送路途中にサブヘッドエンド(子局)が構築され、主に光増幅器が設置される。光増幅器には、EDF(エルビウムドープファイバー)を用いた光増幅器(EDFA)が一般に使用されている。
【0003】
このようなFTTHの光伝送システムでは、そのシステム強靭化を目的に、光送信機や光増幅器について冗長構成を取ることが一般的である。代表的な冗長構成は、メインが故障した場合に予備に切り替えるシステムである。たとえば、メインで使用する光増幅器と、予備の光増幅器を設け、これを光スイッチにより選択可能にした構成である。光スイッチは、たとえば、メインの光送信機や光増幅器からの信号光を常時監視して、光増幅器への信号光の入力の遮断により光増幅器からの信号光の出力の遮断が検知されたら予備の光増幅器に切り替える動作を行う。
【0004】
光増幅器では、EDFに信号光と励起光が入力されている場合には誘導放出によって信号光が増幅されるが、励起光のみが入力されている場合でもASE(自然放射増幅光)が発生し出力される。このようなEDFに励起光のみが入力されている状態において信号光が入力されると、誘導放出の過程で光サージ(オーバーシュート)が発生することがあり、機器の故障の原因となる。そこで従来の光増幅器には、EDFへの信号光の入力がない場合には励起光の出力を停止し、信号光の入力を検知してから励起光を出力するような機能が一般に設けられている。したがって、光増幅器への信号光の入力がない場合には光増幅器からの出力はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】MYamada, H Ono, T Kanamori, T Sakamoto, Y Ohishi, S Sudo, “A low-noise and gain-flattenedamplifier composed of a silica-based and a fluoride-based Er/sup 3+/-dopedfiber amplifier in a cascade configuration”, IEEE Photonics Technology Letters,Vol.8, No.5, pp.620-622, 1996.
【非特許文献2】HOno, M Yamada, T Kanamori Y Ohishi, “Low-noise and high-gain 1.58μm band Er/sup 3+/-doped fiber amplifiers with cascadeconfigurations”, Electronics Letters, Vol. 33 No. 17, pp.1477-1479, 1997.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の光伝送システムでは、前段の光スイッチがメイン系との接続から予備系との接続に切り替わる際、前段の光スイッチからの光出力が瞬間的に遮断されるため、光増幅器からの出力も遮断され、その後段の光スイッチへの光入力も瞬間的に遮断される。そのため、後段の光スイッチもメイン系との接続から予備系との接続に切り替わってしまうことがあり、無用な切り替え動作をしてしまうことがあった。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、無用な光スイッチの切り替えが防止された光増幅器、および光伝送システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
励起光を出力する励起光源と、信号光と前記励起光が入力され、前記信号光を増幅して出力する第1希土類ドープファイバーと、を有した光増幅器であって、
前記第1希土類ドープファイバーにより増幅可能な波長であるダミー光を出力するダミー光生成部と、
前記励起光および前記ダミー光の出力を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記光増幅器への前記信号光の入力が遮断された場合に、前記励起光の出力を所定時間が経過するまで継続し、前記信号光の遮断後で前記所定時間の経過前は、前記ダミー光と前記励起光が前記第1希土類ドープファイバーに入力されるように制御し、
前記光増幅器によって増幅された前記ダミー光の光パワーが、前記光増幅器によって増幅された前記信号光の光パワーと同等となるように、前記ダミー光生成部から出力される前記ダミー光の光パワーが設定されている、光増幅器にある。
【0009】
本発明の他の態様は、
励起光を出力する励起光源と、信号光と前記励起光が入力され、前記信号光を増幅して出力する第1希土類ドープファイバーと、を有した光増幅器の前段に挿入される出力保持装置であって、
前記第1希土類ドープファイバーにより増幅可能な波長であるダミー光を出力するダミー光生成部と、
前記ダミー光の出力を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記出力保持装置への前記信号光の入力が遮断された場合に、前記信号光の遮断後から所定時間が経過するまでの間に、前記出力保持装置から前記ダミー光が出力されるように制御し、
前記光増幅器によって増幅された前記ダミー光の光パワーが、前記光増幅器によって増幅された前記信号光の光パワーと同等となるように、前記ダミー光生成部から出力される前記ダミー光の光パワーが設定されている、出力保持装置にある。
【発明の効果】
【0010】
上記光増幅器では、光増幅器の前段の光スイッチが切り替え動作をして信号光が瞬間的に遮断された場合でも、光増幅器からダミー光が増幅されて出力される。そのため、光増幅器の後段の光スイッチには継続的に光が入力されることになり、後段の光スイッチが無用に切り替わってしまうことを防止することができる。また、上記出力保持装置によっても、上記と同様の動作をさせることができる。
【0011】
以上のごとく、上記態様によれば、無用な光スイッチの切り替えが防止された光増幅器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1における光伝送システムの構成を模式的に示した図。
【
図2】ヘッドエンドに配置される伝送機器の構成を模式的に示した図。
【
図3】サブヘッドエンドに配置される伝送機器の構成を模式的に示した図。
【
図5】ダミー光源のレーザーダイオードの駆動回路を示した図。
【
図6】光増幅器に入力される信号光の光パワーと、出力される信号光またはダミー光の光パワーについて時間変化を示した図。
【
図7】実施形態2における光増幅器の構成を模式的に示した図。
【
図8】実施形態3における出力保持装置の構成を模式的に示した図。
【
図9】実施形態3における光伝送システムの構成を模式的に示した図。
【
図10】既存の光増幅器の構成を模式的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
光増幅器は、励起光を出力する励起光源と、信号光と励起光が入力され、信号光を増幅して出力する第1希土類ドープファイバーと、を有する。さらに、前記第1希土類ドープファイバーにより増幅可能な波長であるダミー光を出力するダミー光生成部と、前記励起光および前記ダミー光の出力を制御する制御部を有する。前記制御部は、前記光増幅器に入力される前記信号光の光パワーが所定値以下となった場合に、前記信号光の入力が遮断されたと判断し、前記光増幅器への前記信号光の入力が遮断された場合に、前記励起光の出力を所定時間が経過するまで継続する。また、前記所定時間の経過後は前記励起光の出力を停止する。また、前記信号光の遮断後で所定時間の経過前は、前記ダミー光と前記励起光が前記第1希土類ドープファイバーに入力されるように制御する。また、前記光増幅器によって増幅された前記ダミー光の光パワーが、前記光増幅器によって増幅された前記信号光の光パワーと同等となるように、前記ダミー光生成部から出力される前記ダミー光の光パワーが設定されている。上記のように、信号光の入力が遮断とは、完全に遮断された場合だけでなく、光パワーが所定のしきい値以下となった場合も意味する。以下同様である。
【0014】
前記ダミー光生成部は、前記ダミー光を出力するダミー光源を有し、前記制御部は、前記所定時間の経過前であれば1、前記所定時間の経過後であれば0の2値とする第1制御信号を生成し、前記光増幅器への前記信号光の入力がある場合に0、前記光増幅器への前記信号光の入力が遮断された場合に1の2値とする第2制御信号を生成し、前記第1制御信号と前記第2制御信号との論理積である第3制御信号を生成し、前記第1制御信号によって前記励起光の出力をオンオフ制御し、前記第3制御信号によって前記ダミー光の出力をオンオフ制御してもよい。ダミー光の生成を高速に制御することができる。
【0015】
前記ダミー光生成部は、前記励起光の一部が分岐されて入力される第2希土類ドープファイバーを有し、前記第2希土類ドープファイバーから出力されるASEを前記ダミー光としてもよい。ダミー光源を別途設ける必要がなく、装置の低コスト化を図ることができる。
【0016】
光伝送システムは、ヘッドエンドから各加入者宅まで放送信号である信号光を伝送するものであり、前記信号光を増幅する第1光増幅器および第2光増幅器と、前記第1光増幅器と前記第2光増幅器の一方に選択的に接続し、前記第1光増幅器から入力される前記信号光の光パワーが所定値よりも大きい場合には前記第1光増幅器と接続し、前記第1光増幅器から入力される前記信号光の光パワーが所定値以下である場合には前記第2光増幅器と接続する光スイッチと、を有してもよい。つまり、第1光増幅器は冗長構成が取られている。そして、前記第1光増幅器として、上記の光増幅器が用いられていてもよい。この光伝送システムでは、無用な光スイッチの切り替えが防止されている。
【0017】
出力保持装置は、励起光を出力する励起光源と、信号光と前記励起光が入力され、前記信号光を増幅して出力する第1希土類ドープファイバーと、を有した光増幅器の前段に挿入される。出力保持装置は、前記第1希土類ドープファイバーにより増幅可能な波長であるダミー光を出力するダミー光生成部と、前記ダミー光の出力を制御する制御部と、を有する。前記制御部は、前記出力保持装置への前記信号光の入力が遮断された場合に、前記信号光の遮断後から所定時間が経過するまでの間に、前記出力保持装置から前記ダミー光が出力されるように制御する。また、前記光増幅器によって増幅された前記ダミー光の光パワーが、前記光増幅器によって増幅された前記信号光の光パワーと同等となるように、前記ダミー光生成部から出力される前記ダミー光の光パワーが設定されている。ここで言う出力保持とは、光増幅器への信号光の入力が遮断された場合でも所定時間が経過するまでは光増幅器から信号光と同等の光パワーの光が出力されるようにする、という意味である。
【0018】
上記の出力保持装置において、前記ダミー光生成部は、前記ダミー光を出力するダミー光源を有し、前記制御部は、前記所定時間の経過前であれば1、前記所定時間の経過後であれば0の2値とする第1制御信号を生成し、前記出力保持装置への前記信号光の入力がある場合に0、前記出力保持装置への前記信号光の入力が遮断された場合に1の2値とする第2制御信号を生成し、前記第1制御信号と前記第2制御信号との論理積である第3制御信号を生成し、前記第1制御信号によって前記励起光の出力をオンオフ制御し、前記第3制御信号によって前記ダミー光の出力をオンオフ制御してもよい。
【0019】
光伝送システムは、ヘッドエンドから各加入者宅まで放送信号である信号光を伝送するものであり、前記信号光を複数に分配する光分配器と、前記光分配器により分配された前記信号光がそれぞれ入力され、前記信号光を増幅する複数の第1光増幅器および第2光増幅器と、前記第1光増幅器と前記第2光増幅器の一方に選択的に接続し、前記第1光増幅器から入力される前記信号光の光パワーが所定値よりも大きい場合には前記第1光増幅器と接続し、前記第1光増幅器から入力される前記信号光の光パワーが所定値以下である場合には前記第2光増幅器と接続する光スイッチと、を有してもよい。そして、前記光分配器の前段に上記の出力保持装置が挿入されていてもよい。この光伝送システムでは、無用な光スイッチの切り替えが防止されている。さらに、各第1光増幅器においてダミー光の生成、制御を出力保持装置によって共通化している。
【0020】
(実施形態1)
1.光伝送システムの構成
図1は、実施形態1における光伝送システムの構成を模式的に示した図である。
図1に示すように、実施形態1における光伝送システムは、光ファイバー3を伝送路としてヘッドエンド1(放送局)から各加入者宅2までを光ファイバー3により接続し、ヘッドエンド1からの放送信号である信号光を光ファイバー3により各加入者宅2の光端末器4まで伝送させる構成である。光ファイバー3は光分配器5によって分配されており、これにより1つのヘッドエンド1と複数の加入者宅2との間を接続している。光端末器4はテレビ7などの受信機に接続され、各加入者宅2において受信機により放送を視聴可能となっている。放送信号は、地上デジタル放送、BSデジタル放送、CSデジタル放送、などであり、信号光の波長はたとえば1550nmである。
【0021】
また、光ファイバー3にはサブヘッドエンド6(子局)が必要に応じて挿入されている。サブヘッドエンド6は、分配や長距離伝送によって弱まった信号光を増幅させるために設置されている。
【0022】
図2は、ヘッドエンド1に配置される伝送機器の構成を模式的に示した図である。
図2に示すように、ヘッドエンド1には、2つの光送信機10A、10Bと、光スイッチ11、12と、2つの光増幅器13A、13Bと、光分配器14が配置されている。
【0023】
光送信機10A、10Bは、高周波の電気信号である放送信号を、波長1550nmの光信号(以下、信号光)に変換して出力する装置である。光送信機10Aはメインとして使用され、光送信機10Bは光送信機10Aが故障した場合などに予備として使用される。
【0024】
光スイッチ11は、光送信機10Aとの接続と光送信機10Bとの接続を切り替える装置である。光スイッチ11は、光送信機10Aからの信号光の入力を監視し、通常時は光送信機10Aと接続し、光送信機10Aからの信号光を出力するように動作する。また、光スイッチ11は、光送信機10Aからの信号光の異常を検知した場合には、光送信機10Bとの接続に自動的に切り替え、光送信機10Bからの信号光を出力するように動作する。そして、光送信機10Aからの信号光が正常に戻った場合には、光送信機10Aとの接続に戻すように動作する。信号光の異常は、たとえば、信号光のパワーが規定値を下回った場合や信号光の入力がない場合である。
【0025】
光分配器14は、光スイッチ11の出力側と接続されている。光分配器14は、光スイッチ11からの信号光を2分配して出力する装置である。
【0026】
光増幅器13A、13Bは、光分配器14の2つの出力側にそれぞれ接続されている。光増幅器13A、13Bは、光分配器14からの信号光を増幅して出力する装置である。光増幅器13Aはメインとして使用され、光増幅器13Bは予備として使用される。光増幅器13A、13Bの詳細な構成は後述する。
【0027】
光スイッチ12は、光増幅器13Aの出力側との接続と光増幅器13Bの出力側との接続を切り替える装置であり、光スイッチ11と同様の動作をする。つまり、光スイッチ12は、光増幅器13Aからの信号光の入力を監視し、通常時は光増幅器13Aと接続し、光増幅器13Aからの信号光を出力するように動作する。また、光スイッチ12は、光増幅器13Aからの信号光の異常を検知した場合には、光増幅器13Bとの接続に自動的に切り替え、光増幅器13Bからの信号光を出力するように動作する。そして、光増幅器13Aからの信号光が正常に戻った場合には、光増幅器13Aとの接続に戻すように動作する。
【0028】
このように、ヘッドエンド1では、光送信機10A、光増幅器13Aについて故障等が発生した場合に、光スイッチ11、12で予備の光送信機10B、光増幅器13Bに切り替える冗長構成が取られている。
【0029】
図3は、サブヘッドエンド6に配置される伝送機器の構成を模式的に示した図である。サブヘッドエンド6には、ヘッドエンド1の光分配器14、光増幅器13A、13B、光スイッチ12と同一構成のものが配置され、ヘッドエンド1から2つの光送信機10A、10Bと、光スイッチ11を省いた構成となっている。つまり、光増幅器13Aについて冗長構成が取られた構成となっている。
【0030】
2.光増幅器の構成
図4は、光増幅器13A、13Bの構成を模式的に示した図である。光増幅器13A、13Bは、
図4に示すように、励起光源100と、ダミー光源101(ダミー光生成部)と、WDM102と、EDF(エルビウムドープファイバー)103と、制御装置104と、コンパレータ105と、論理積回路106と、光入力モニタ107と、光出力モニタ108と、を有している。制御装置104、コンパレータ105、論理積回路106によって本形態の光伝送システムにおける制御部を構成する。
【0031】
励起光源100は、EDF103において信号光を増幅させるための励起光を出力する光源である。励起光の波長は、980nmまたは1480nmである。励起光源100は、後述のように制御装置104からの第1制御信号によって起動がオンオフ制御される。
【0032】
ダミー光源101は、信号光と同一の波長(1550nm)のダミー光を出力する装置である。ダミー光の波長は信号光と同一波長に限らず、EDF103で増幅可能な波長であれば任意の波長でよい。ダミー光源101は、後述のように、論理積回路106からの第3制御信号によって起動がオンオフ制御される。ダミー光源101は、レーザーダイオードとその駆動回路によって構成されている。
【0033】
ダミー光源から出力されるダミー光は、光分岐器110の分岐側に入力され、信号光と合波される。光分岐器110の分岐比は、信号光の損失を抑えるためになるべく低い方が好ましく、5/95以下が好ましい。ダミー光の光パワーを十分に高くできるのであれば、1/99以下としてもよい。
【0034】
ダミー光源101は、後述のように出力保持時間内の起動であり、数十ms~数百msといった極短時間のみ起動される。そのため、ダミー光の品質は問われず、安価なレーザーダイオードを用いることができる。たとえば、DFB型レーザーダイオードやFP型レーザーダイオードでもよい。また、レーザーダイオードの駆動回路も単純なものでよく、温度制御など複雑な駆動回路は必要ない。たとえば、レーザーダイオードの出力を単純にオンオフする駆動回路でよい。
【0035】
駆動回路の一例を
図5に示す。
図5のように、駆動回路は、抵抗RとスイッチングトランジスタTRで構成され、スイッチングトランジスタTRのコレクタにレーザーダイオードLDのカソードが接続され、エミッタに抵抗Rが接続された構成である。スイッチングトランジスタTRは、たとえばnpn型のバイポーラトランジスタである。スイッチングトランジスタTRのベースには第3制御信号が入力される。第3制御信号によってスイッチングトランジスタTRをオンオフし、レーザーダイオードLDの出力をオンオフする構成である。駆動電流は抵抗Rによって調整する。
【0036】
WDM102は、光分岐器110からの信号光またはダミー光と、励起光源100から出力される励起光とを合波して出力する装置である。
【0037】
EDF103は、信号光またはダミー光を励起光により増幅する装置である。EDF103の一端はWDM102の出力側と接続されており、信号光またはダミー光と励起光との合波光が入力される。EDF103から出力される信号光またはダミー光は、光アイソレータ112に通された後、光分配器113によって分配され出力される。光分配器113は必ずしも光増幅器13A、13B内に設ける必要はなく、光増幅器13A、13Bの外部で光を分配してもよい。
【0038】
EDF103にダミー光を入射させた場合にEDF103から出力されるダミー光の光パワーは、EDF103に信号光を入射させた場合にEDF103から出力される信号光の光パワーと同等となるようにする。これは、ダミー光源101のレーザーダイオードから出力されるダミー光の光パワーを調整することで可能となる。ダミー光と信号光とで完全に光パワーが等しくなるようにする必要はなく、後段の光スイッチ12において光が入力されていると判断される程度に光パワーの差が小さければよい。たとえば、光スイッチ12において信号光の光パワーが70%未満となったときに信号光が入力されていないと判断される場合、ダミー光の光パワーは信号光の光パワーの70%以上であればよい。好ましくは、信号光の光パワーの90~100%である。
【0039】
なお、実施形態1では信号光の波長を1550nmとし、この波長を増幅可能なEDF103を用いているが、信号光の波長に応じて各種の希土類ドープファイバーを用いることができる。たとえば、信号光の波長が1300nm帯であれば、Pr(プラセオジウム)ドープファイバーを用いることができる。また、希土類ドープファイバーの材料も石英に限らず、フッ化物ガラスなどを用いてもよい。
【0040】
制御装置104は、励起光源100の起動を制御するための第1制御信号を生成し出力する装置である。第1制御信号は励起光源100と論理積回路106に入力される。第1制御信号は、0、1の2値の電圧信号であり、1のときは励起光源100が起動されて励起光が出力され、0のときは励起光源100が停止されて励起光の出力が停止される。たとえば、値が1で5V、値が0で0Vの電圧信号である。
【0041】
制御装置104は、光入力モニタ107からの入力モニタ信号によって光増幅器13A、13Bへの信号光の入力を監視する。そして、入力モニタ信号の電圧値が所定のしきい値より大きければ、信号光が入力されていると判断し、しきい値以下であれば、信号光が入力されていない(遮断されている)と判断する。信号光が入力されている場合には、値が1の第1制御信号を生成し出力する。これにより、励起光源100を起動して励起光が出力されるように制御する。
【0042】
一方、信号光が入力されていない場合には、出力保持時間内であれば、値が1の第1制御信号を生成して出力する。これにより、出力保持時間内は励起光源100を起動して励起光が出力されるように制御する。ここで出力保持時間は、光増幅器13A、13Bへの信号光の入力が遮断されてから所定の時間が経過するまでの時間である。出力保持時間が経過したら、値が0の第1制御信号を生成し出力する。これにより、励起光源100の起動を停止し、励起光が出力されないように制御する。従来の光増幅器では、信号光の入力がなくなった場合にはすぐに励起光の出力を停止していたが、実施形態1ではこのような出力保持時間を設けている。
【0043】
出力保持時間は、光増幅器13A、13Bの前段に設けられた光スイッチ11の切り替え時間よりも長く設定されていればよい。ただし、出力保持時間が長すぎると、その分励起光源100を無用に起動することになるので、前段の光スイッチ11の切り替え時間の1.5~3倍に設定するとよい。たとえば、10~100msに設定される。なお、サブヘッドエンド6では、光増幅器の13A、13Bの前段と後段の双方が光スイッチ12であるが、この場合も後段の光スイッチ12について、前段の光スイッチ12の切り替え時間よりも長く設定されていればよい。
【0044】
コンパレータ105は、光入力モニタ107からの入力モニタ信号(電圧信号)を基準電圧と比較し、基準電圧よりも高ければ0、低ければ1の2値の電圧信号である第2制御信号を出力する装置である。基準電圧は、光増幅器13A、13Bへの信号光の入力があるかないかの判断基準となるしきい値である。つまり、第2制御信号は、光増幅器13A、13Bへの信号光の入力がある場合には0、ない場合には1となる。第2制御信号は、たとえば値が1で5V、値が0で0Vの電圧信号である。
【0045】
論理積回路106には、制御装置104からの第1制御信号とコンパレータ105からの第2制御信号が入力される。論理積回路106は、第1制御信号と第2制御信号との論理積を第3制御信号として出力する回路である。第1制御信号が1で、第2制御信号が1の場合には第3制御信号の値は1となり、それ以外の場合は0となる。第3制御信号は、ダミー光源101の起動を制御する信号であり、第3制御信号の値が1であれば、ダミー光源101が起動されてダミー光が出力される。値が0であれば、ダミー光源101の起動が停止されてダミー光の出力は停止される。第3制御信号は、たとえば値1で5V、値0で0Vの電圧信号である。
【0046】
要するに、光増幅器13A、13Bに信号光の入力がなく、励起光が出力されている状態(つまり出力保持時間内)であれば、第3制御信号の値は1となり、それ以外の場合には、値が0となる。実施形態1では、このような第3制御信号の生成をコンパレータ105、論理積回路106のハードウェアにより実現している。
【0047】
ダミー光源101とその制御部(コンパレータ105、論理積回路106)はすべてハードウェアで構成されている。そのため、ダミー光源101を高速に起動することができ、たとえば1μs以下で起動することができる。ダミー光源101を高速に起動できるので、信号光の入力が遮断されてからダミー光が出力されるまでの遅延を小さくすることができる。また、コンパレータ105、論理積回路106は汎用のロジックICを用いることができるので、安価にダミー光源101を制御することができる。
【0048】
光入力モニタ107は、光増幅器13A、13Bに入力される信号光を監視するための入力モニタ信号を出力する装置である。光入力モニタ107は、フォトダイオードとこれに直列接続する負荷抵抗により構成される。光増幅器13A、13Bに入力される信号光を光分岐器109によって分岐させ、その分岐させた信号光の強度をフォトダイオードにより電気信号に変換して入力モニタ信号とする。光分岐器109の分岐比は、たとえば1:99である。入力モニタ信号は、制御装置104とコンパレータ105に入力される。
【0049】
光出力モニタ108は、光増幅器13A、13Bから出力される信号光またはダミー光を監視するための出力モニタ信号を出力する装置である。光出力モニタ108は、フォトダイオードとこれに直列接続する負荷抵抗により構成される。光アイソレータ112から出力される信号光またはダミー光を光分岐器111によって分岐させ、その分岐させた光をフォトダイオードにより電気信号に変換して出力モニタ信号とする。出力モニタ信号は制御装置104に入力される。制御装置104は、出力モニタ信号により光増幅器13A、13Bの光出力を監視する。
【0050】
なお、実施形態1の光増幅器13Aは前方励起型であるが、後方励起型や双方向励起型であってもよい。また、実施形態1では、予備の光増幅器13Bをメインの光増幅器13Aと同一構成としているが、予備の光増幅器13Bはダミー光の生成、制御部分を省いた構成としてもよい。ただし、光伝送システムのさらなる強靭化のためには、実施形態1のように、予備の光増幅器13Bをメインの光増幅器13Aと同一構成とすることが好ましい。
【0051】
3.光増幅器の動作
次に、光増幅器13Aの動作について、
図6を参照に説明する。
図6は、光増幅器13Aに入力される信号光の光パワーと、出力される信号光またはダミー光の光パワーについて時間変化を示した図である。なお、光増幅器13Bの動作も光増幅器13Aと同一の動作となる。
【0052】
まず、光増幅器13Aに信号光が入力されている場合の動作について説明する。
【0053】
図6に示すように、光増幅器13Aに信号光が入力されている場合、光入力モニタ107からの入力モニタ信号により制御装置104は信号光の入力を検知し、値を1とする第1制御信号の値を生成して励起光源100、論理積回路106に出力する。値が1の第1制御信号に基づき、励起光源100は起動され、励起光が出力される。
【0054】
一方で、コンパレータ105にも入力モニタ信号が入力される。信号光の入力があるため、入力モニタ信号は基準電圧以上であり、コンパレータ105は第2制御信号の値を0として論理積回路106に出力する。第1制御信号の値が1、第2制御信号の値が0であるから、論理積は0であり、論理積回路106は第3制御信号の値を0としてダミー光源101に出力する。第3制御信号の値が0であるためダミー光源101は起動せず、ダミー光が出力されない。よって、光分岐器110の分岐側にダミー光は入力されず、信号光のみが入力されて出力される。
【0055】
光分岐器110からの信号光と励起光源100からの励起光は、WDM102に入力される。そしてWDM102で合波された後、EDF103に入力される。EDF103によって信号光は増幅され出力される。たとえば100mWに増幅される。このように、信号光が入力されている場合には、通常の信号光増幅動作となる。たとえば、
図6のように、3mWの信号光が100mWに増幅されて出力される。
【0056】
次に、光増幅器13Aの前段の光スイッチ11が切り替わった場合の動作について説明する。
【0057】
光増幅器13Aの前段の光スイッチ11が切り替わると、その切り替えが始まった瞬間、信号光が遮断され、光スイッチ11からの信号光の出力が途絶える。たとえば、
図6のように、信号光の光パワーが3mWから0mWに低下する。すると、光スイッチ11の後段の光増幅器13Aにも信号光が入力されなくなる。
【0058】
制御装置104は、信号光の遮断により入力モニタ信号の電圧がしきい値以下となったことを検知すると、出力保持時間のカウントを開始し、出力保持時間が経過するまでは第1制御信号の値を1に保持して励起光源100、論理積回路106に出力する。第1制御信号の値が1であるため励起光源100の起動は継続され、励起光が出力される。
【0059】
一方、コンパレータ105は、信号光の遮断により入力モニタ信号の電圧が基準電圧以下となるので、第2制御信号の値を1として論理積回路106に出力する。第1制御信号の値が1、第2制御信号の値が1であるから、論理積は1であり、論理積回路106は第3制御信号の値を1としてダミー光源101に出力する。第3制御信号の値が1であるため、ダミー光源101は起動され、ダミー光が出力される。
【0060】
よって、ダミー光と励起光がWDM102で合波されEDF103に入力される。EDF103によってダミー光は増幅され出力される。ここで、増幅されたダミー光の光パワーが100mWとなるように、ダミー光源101のレーザーダイオードの光パワーが設定されている。たとえば、WDM102の入力に到達したときのダミー光の光パワーが約0.1mW(約-10dBm)であれば、ダミー光を100mWに増幅可能である。光分岐器110の分岐比が5:95であれば、ダミー光源101のレーザーダイオードの光パワーを約3mW(約5dBm)とすればよい。
【0061】
このように、光増幅器13A、13Bへの信号光の入力が遮断されるとすぐにダミー光源101が起動されてダミー光が出力され、EDF103によって信号光と同等の光パワーまで増幅されて光増幅器13A、13Bから出力される(
図6参照)。なお、信号光からダミー光に切り替わる際、信号光の光パワーがしきい値以下となった瞬間にダミー光が出力されるため、EDF103に励起光のみが入力された状態からダミー光が入力されることにはならず、光サージは発生しない。
【0062】
光増幅器13Aの前段の光スイッチ11の切り替えが終わると、信号光が再び前段の光スイッチ11から出力されるようになる。すると光スイッチ11の後段の光増幅器13Aにも信号光が再び入力されるようになる。
【0063】
制御装置104は、信号光の入力の復活により入力モニタ信号の電圧がしきい値を上回ったことを検知すると、出力保持時間のカウントをリセットして停止する。第1制御信号の値は1に保持したままである。
【0064】
また、コンパレータ105は、信号光の入力の復活により入力モニタ信号の電圧が基準電圧を上回るため、第2制御信号の値を0として論理積回路106に出力する。第1制御信号の値が1、第2制御信号の値が0であるから、論理積は0であり、論理積回路106は第3制御信号の値を0としてダミー光源101に出力する。第3制御信号の値が0であるため、ダミー光源101の起動は停止され、ダミー光の出力が停止される。
【0065】
このように、光増幅器13A、13Bへの信号光の入力が復活するとすぐにダミー光源101の起動が停止されてダミー光の出力が停止され、EDF103には信号光と励起光が入力されるようになる。そのため、通常の信号光増幅動作に戻る(
図6参照)。
【0066】
ダミー光から信号光に切り替わる際、信号光が復活した瞬間にダミー光の出力が停止されるため、EDF103に励起光のみが入力された状態から信号光が入力されることにはならず、光サージは発生しない。
【0067】
なお、出力保持時間を経過しても信号光の復活がない場合、たとえば、機器の故障や伝送路断絶等による信号光の遮断の場合には、出力保持時間の経過後、制御装置104は第1制御信号の値を0として、励起光もダミー光も出力しない動作となる。
【0068】
以上のように、光スイッチ11の切り替えによる信号光の中断の間、光増幅器13Aからは信号光と同等の光パワーのダミー光が出力される。その結果、光増幅器13Aの前段の光スイッチ11の切り替えに伴う信号光の瞬断が生じても、後段の光スイッチ12には光増幅器13Aから信号光と同等の光パワーのダミー光が入力され、後段の光スイッチ12が前段の光スイッチ11の切り替えに連動して無用に切り替わってしまうことが防止されている。なお、光増幅器13Aの前段に光スイッチ11、後段に光スイッチ12の場合を説明したが、前段と後段の双方が光スイッチ12の場合(サブヘッドエンド6内の光増幅器13Aの前段後段の場合)も同様である。
【0069】
また、信号光の遮断から復帰までの間、信号光からダミー光、ダミー光から信号光の切り替わりは連続的に行われるので、光サージの発生も防止されている。
【0070】
また、実施形態1では、ダミー光源101はコンパレータ105、論理積回路106によって起動され、ハードウェアにより制御される。そのため、ダミー光源101は高速に起動でき、信号光が遮断されてからダミー光が出力されるまでの遅延を十分に小さくすることができる。
【0071】
(実施形態1の変形形態)
実施形態1では、コンパレータ105、論理積回路106によってダミー光源101をハードウェア制御しているが、これに限るものではない。要は、光増幅器13A、13Bに信号光が入力されていない状態であって出力保持時間内である場合に、ダミー光源101を起動してダミー光が出力されるようにし、それ以外の場合にはダミー光源101の起動を停止するように制御できればよい。そのように制御できるのであれば、ハードウェアによる制御でも、同等な応答速度を有するソフトウェアによる制御でもよい。ただし、信号光が遮断されてからダミー光が出力されるまでの遅延はなるべく短くすることが好ましく、その点でダミー光源101の起動が速いハードウェア制御が好ましい。
【0072】
また、コンパレータ105、論理積回路106を設けずに単に第1制御信号によってダミー光源101をオンオフ制御してもよい。この場合、信号光が光増幅器13Aに入力されている間もダミー光源101からダミー光が出力され、信号光にダミー光が合波されることになる。しかし、後述の実施形態2と同様に、ダミー光の光パワーが信号光の光パワーに比べて十分に低ければ、信号光に対するダミー光の影響は無視できる。ただし、ダミー光源101が長時間駆動されることになるため、実施形態1のように信号光の入力がない場合はダミー光源101の起動を停止するように制御することが好ましい。
【0073】
(実施形態2)
実施形態2は、実施形態1における光増幅器13A、13Bを光増幅器23A、23Bに置き換えたものである。他の構成は実施形態1と同様である。
図7は、光増幅器23A、23Bの構成を模式的に示した図である。光増幅器23A、23Bの構成中、光増幅器13A、13Bと同様の構成部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
光増幅器23A、23Bは、
図7に示すように、光増幅器13A、13Bのコンパレータ105、論理積回路106、ダミー光源101を、EDF200(ダミー光生成部)、光分岐器201に替えた構成である。EDF200は、EDF103と同様にエルビウムドープファイバーである。
【0075】
光分岐器201は、励起光源100からの励起光を一部分岐して出力する装置である。分岐比はたとえば5:95である。分岐された励起光は、EDF200に入力される。EDF200に入力されるのは励起光のみであるため、EDF200からはASE(自然放射増幅光)が出力される。ASEは、自然放出光が誘導放出により増幅されたものであり、波長はおよそ1520~1570nmにわたる広帯域な光である。実施形態2では、このASEをダミー光として利用する。EDF200から出力されるダミー光は、実施形態1と同様に光分岐器110の分岐側に入力される。
【0076】
EDF200から出力されるダミー光の光パワーは、EDF200の長さと、EDF200に入力される励起光の光パワーによって制御する。これにより、光増幅器23A、23Bから出力される光パワーが、信号光が入力される場合とされない場合とで変動しないように制御することができる。なお、ASEは前方に向かう光(光分岐器110側に向かう光)だけでなく、後方に向かう光(光分岐器201側に向かう光)も発生し、前方に向かう光は全体の3割程度である点に留意する。
【0077】
光分岐器201により励起光を分岐するため、励起光源100から出力される励起光の光パワーは光増幅器13A、13Bの場合に比べて高くする必要がある。しかし、励起光源100の定格の範囲内で十分にこのような調整は可能である。
【0078】
一例として、光増幅器13A、13Bにおいて励起光源100から出力されWDM102に入力される励起光の光パワーが2700mWの場合を考える。この場合、光増幅器23A、23Bにおいて励起光源100から出力される励起光の光パワーを約3100mWとすれば、分岐比5:95の光分岐器201を介してWDM102に入力される励起光の光パワーは約2700mWとなり、実施形態1と同じになる。また、光分岐器201により分岐された励起光の光パワーは約100mWとなり、EDF200によって約8mWのASEであるダミー光となる。このダミー光は光分岐器110を介して約0.25mWとなりWDM102に入力される。0.1~0.25mWであれば、EDF103によってダミー光を信号光と同等の光パワー100mWに増幅するように調整できる。
【0079】
光増幅器23A、23Bでは、信号光の入力がない場合でも、出力保持時間内であれば励起光源100が起動され励起光が出力されているので、ダミー光も出力される。したがって、実施形態1の光増幅器13A、13Bと同様に、無用な光スイッチの切り替えが防止されている。
【0080】
また、光増幅器23A、23Bでは、励起光源100が起動している間はダミー光も常時出力される。そのため、光増幅器23A、23Bに信号光が入力されている場合にもダミー光が出力され、光分岐器110において信号光にダミー光が合波され出力される。ここで、信号光がダミー光の影響を受けないかが問題となる。しかし、ダミー光の光パワーは信号光の光パワーの1/10以下であり、信号光の光パワーに比べて十分に小さいため、信号光に対するダミー光の影響は無視できる。上記の一例で言えば、信号光は3mWであり、WDM102に入力されるダミー光の光パワーが0.25mWである場合でも、信号光の光パワーの1/12である。
【0081】
以上、実施形態2における光増幅器23A、23Bもまた、実施形態1における光増幅器13A、13Bと同様に、無用な光スイッチ12の切り替えが防止されている。
【0082】
(実施形態3)
図8は、実施形態3における出力保持装置30の構成を模式的に示した図である。出力保持装置30は、実施形態1の光増幅器13A、13Bにおけるダミー光の生成、制御部分を光増幅器13A、13Bから取り出した構成である。すなわち、光増幅器13A、13Bの各構成のうち、ダミー光源101、コンパレータ105、論理積回路106、光入力モニタ107、光分岐器109、110を有し、制御装置104に替えて制御装置301を設けた構成である。制御装置301は、光入力モニタ107からの入力モニタ信号により第1制御信号を生成する点で制御装置104と同様である。制御装置301では、光出力モニタ108による出力の監視は行わない。
【0083】
実施形態3における出力保持装置30は、既存の光増幅器300の前段に後付けして、光増幅器13A、13Bと同様の機能とすることができる。ここで既存の光増幅器300とは、
図10に示すように、光増幅器13A、13Bからダミー光の生成、制御部分を省いた構成である。すなわち、光増幅器13A、13Bの各構成のうち、ダミー光源101、コンパレータ105、論理積回路106、光分岐器110を省いた構成である。出力保持装置30は、既存の光増幅器への信号光の入力が遮断された場合でも、出力保持時間の間は、光増幅器から信号光と同等の光パワーのダミー光が出力されるように、出力を保持する装置である。
【0084】
実施形態3における出力保持装置30を用いれば、複数の既存の光増幅器に共通してダミー光の生成、制御機能を付加することができる。
【0085】
実施形態3における出力保持装置30は、
図1に示した光伝送システムにおいて、光分配器5によってN(Nは2以上の自然数)本に分配された各光ファイバー3に、
図10に示すような既存の光増幅器300-1~300-Nがそれぞれ挿入されている場合に好適である。実施形態3では、出力保持装置30を設けることで、これら光増幅器300-1~300-Nに対してダミー光の生成、制御機能を共通に付与することができる。
【0086】
出力保持装置30は、光スイッチ11、12から光分配器5までの間の伝送路に挿入されている。たとえば、
図9に示すように、ヘッドエンド1と光分配器5の間や、サブヘッドエンド6と光分配器5の間に挿入されている。また、出力保持装置30は、サブヘッドエンド6の入力側、たとえば、
図3の光分配器14の前に挿入してもよい。
【0087】
なお、光増幅器300-1~300-Nには、図示しないが、それぞれ予備の光増幅器と光スイッチ12が設けられており、実施形態1、2と同様の冗長構成が採用されている。
【0088】
出力保持装置30の動作について説明する。出力保持装置30の動作は実施形態1、2と同様である。すなわち、出力保持装置30への信号光の入力が途絶えた場合に、出力保持時間内の間はダミー光源101を起動してダミー光が出力され、それ以外の場合にはダミー光が出力されない。
【0089】
したがって、出力保持装置30の前段の光スイッチ11、12の切り替え動作によって信号光が瞬断された場合でも、出力保持装置30からはダミー光が出力される。そして、光増幅器300-1~300-Nに入力されたダミー光は、信号光と同等の光パワーまで増幅されて出力され、光増幅器300-1~300-Nの後段の光スイッチ12には信号光と同等の光パワーのダミー光が入力される。この結果、前段の光スイッチ11、12による切り替え動作によって瞬断があった場合の後段の光スイッチ12の無用な切り替えが防止されている。
【0090】
光増幅器300-1~300-Nから出力されるダミー光の光パワーが信号光の場合と同等となるようにするためには、光分岐器110の挿入損失と光分配器5の挿入損失を合わせた総合損失を考慮してダミー光源101のレーザーダイオードの出力を設定すればよい。
【0091】
たとえば、光増幅器300-1~300-Nへの入力時点でダミー光の光パワーが0.1mW(ー10dBm)であれば、光増幅器300-1~300-Nから出力されるダミー光の光パワーを100mWまで増幅させることができ、信号光の光パワーと同等とすることができる。
【0092】
光分岐器110として分岐比5:95のものを使用する場合、光分配器5が4分配であれば総合損失は約21dBなので、ダミー光源101のレーザーダイオードの出力を約13mW(約11dBm)とすればよい。光増幅器300-1~300-Nへの入力時点でダミー光の光パワーを0.1mW(ー10dBm)とすることができる。同様に、光分配器5が8分配であれば、総合損失は約24dBなので、ダミー光源101のレーザーダイオードの出力を約25mW(約14dBm)とすればよい。
【0093】
以上のように、実施形態3では、光伝送システムにおける光分配器5下の各光増幅器300-1~300-Nに対して、ダミー光の生成、制御を出力保持装置30によって共通化している。個々の光増幅器300-1~300-Nにダミー光の生成、制御部分を設ける必要がなく、出力保持時間を設定する必要もないので低コスト化を図ることができる。また、実施形態3では既存の光伝送システムに出力保持装置30を組み込むだけでよく、既存の光増幅器を置き換える必要がない。
【符号の説明】
【0094】
1:ヘッドエンド
2:加入者宅
3:光ファイバー
4:光端末器
5:光分配器
6:サブヘッドエンド
7:テレビ
10A、10B:光送信機
11、12:光スイッチ
13A、13B、23A、23B、300-1~300-N:光増幅器
30:出力保持装置
100:励起光源
101:ダミー光源
102:WDM
103、200:EDF
104:制御装置
105:コンパレータ
106:論理積回路
107:光入力モニタ
108:光出力モニタ
109、110、111:光分岐器
113:光分配器
112:光アイソレータ