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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072638
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】排気アダプタ
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/02 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
F24H9/02 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183596
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】弓削 良祐
【テーマコード(参考)】
3L037
【Fターム(参考)】
3L037AC07
3L037AC11
(57)【要約】
【課題】本体と本体内の排気導流体との間の気密を高く確保可能とする排気アダプタを提供する。
【解決手段】排気アダプタ1は、燃焼装置30からの燃焼排気を排出する排気出口11が設けられた本体2、本体内に設けられ燃焼装置の排気筒から排気出口までを連接する排気導流体3、排気導流体の一部を構成し排気出口に連通される開口部13の外周縁に設けられたフランジ14を有する排気流路部5、排気流路部のフランジと排気出口の外周部の本体内面との間に圧縮保持されるパッキン15、本体内面に設けられ排気流路部の開口部の対向壁である閉塞部16の外面に圧接される摺動案内部18を備える。摺動案内部は、先端側から基端側に向かうに従い排気出口側方向に傾斜した凹弧状部18aが形成され、排気流路部は、閉塞部の外面が凸弧状面16aに形成され、凸弧状面が摺動案内部の凹弧状部に沿って押し込まれた状態で本体に固定されている。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を形成する箱状の装置本体と、前記装置本体から外方に突出する排気筒とを備えた燃焼装置に接続される排気アダプタであって、
前記燃焼装置からの燃焼排気を排出する排気出口が設けられた箱状の本体と、
前記本体内に設けられ、前記排気筒から前記排気出口までを連接する排気導流体と、
前記排気導流体の一部を構成し、前記排気出口に連通される開口部と当該開口部の外周縁に設けられたフランジとを有する排気流路部と、
前記排気流路部のフランジと前記排気出口の外周部における前記本体の内面との間に圧縮保持されるパッキンと、
前記本体の内面に設けられ、前記排気流路部における前記開口部の対向壁である閉塞部の外面に圧接される摺動案内部とを備え、
前記摺動案内部は、先端側から基端側に向かうに従い前記排気出口側方向に傾斜した凹弧状部が形成されており、
前記排気流路部は、前記閉塞部の外面が凸弧状面に形成されており、当該凸弧状面が前記摺動案内部の凹弧状部に沿って押し込まれた状態で前記本体に固定されている、排気アダプタ。
【請求項2】
請求項1に記載の排気アダプタにおいて、
前記排気流路部は、外方に膨れる膨出部を備え、当該膨出部により前記閉塞部が構成されている、排気アダプタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排気アダプタにおいて、
前記排気流路部は、ビス固定により本体に固定され、
前記ビス固定方向は、前記パッキンの圧縮方向と交差する方向に設定されている、排気アダプタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置に接続する排気アダプタに関し、例えば、屋内設置型の燃焼装置を屋外設置型に適用することを可能とする排気アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置等の燃焼装置は、燃焼排気を排出する排気筒を備えている。屋内設置型の燃焼装置では、排気筒を建物の壁に設置する排気配管と接続するため、排気筒は、燃焼装置の天面部から突出して設けられるものが多い。屋外設置型の燃焼装置では、燃焼排気が建物の壁や軒などに直接当たらないようにするため、排気筒は、燃焼装置の前面部又は側面部に設けられている。このように燃焼装置は、屋内設置型と屋外設置型とで排気筒の設置構成が異なるため、燃焼装置のメーカは、屋内設置型と屋外設置型とに応じて燃焼装置を生産する必要があり、ユーザにおいても、燃焼装置を屋内設置から屋外設置に変更する場合は新たな燃焼装置に買い換える必要があった。
【0003】
従来、排気筒を天面部に備える燃焼装置において、前面に排気窓を開設した外装ケースを燃焼装置の天面部に設置して燃焼排気を前方に向かってのみ行われるようにした技術が知られていた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-187721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記従来技術は、燃焼装置を屋内設置型から屋外設置型へと変換するものではなかった。本発明者は、屋内設置型の燃焼装置を屋外設置型の燃焼装置に変換可能とする新規な排気アダプタの開発を検討した。排気アダプタを燃焼装置に設置する場合、排気アダプタに燃焼装置と一体感を持たせ、正面からのデザイン性を高めるには、外部部品となる本体と、内部部品として燃焼装置の燃焼排気を本体の排気出口へ送り込む排気導流体とで構成することが考えられる。この場合、本体の排気出口と排気導流体との接続部分での気密性が低いと、排気導流体から本体内に燃焼排気や結露水が漏出してしまう。燃焼排気が本体内に漏出した場合、燃焼排気が燃焼装置内に流入して燃焼性能を低下させるという問題が生じる。結露水が本体内に漏出した場合、結露水が燃焼装置の装置本体に付着して装置本体を劣化させるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、本体と本体内の排気導流体との間の気密を高く確保することを可能とする排気アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る排気アダプタは、
外郭を形成する箱状の装置本体と、前記装置本体から外方に突出する排気筒とを備えた燃焼装置に接続される排気アダプタであって、
前記燃焼装置からの燃焼排気を排出する排気出口が設けられた箱状の本体と、
前記本体内に設けられ、前記排気筒から前記排気出口までを連接する排気導流体と、
前記排気導流体の一部を構成し、前記排気出口に連通される開口部と当該開口部の外周縁に設けられたフランジとを有する排気流路部と、
前記排気流路部のフランジと前記排気出口の外周部における前記本体の内面との間に圧縮保持されるパッキンと、
前記本体の内面に設けられ、前記排気流路部における前記開口部の対向壁である閉塞部の外面に圧接される摺動案内部とを備え、
前記摺動案内部は、先端側から基端側に向かうに従い前記排気出口側方向に傾斜した凹弧状部が形成されており、
前記排気流路部は、前記閉塞部の外面が凸弧状面に形成されており、当該凸弧状面が前記摺動案内部の凹弧状部に沿って押し込まれた状態で前記本体に固定されている構成とする。
【0008】
前記構成より、排気流路部のフランジを排気出口の外周部における本体の内面に対しパッキンを間に挟んで配置して、排気流路部の閉塞部が摺動案内部の先端側から基端側に押し込まれた状態で排気流路部が本体に固定されて排気アダプタが組立てられることとなる。この組立過程において排気流路部の閉塞部外面の凸弧状面が摺動案内部の凹弧状部に沿って摺動しながら押し込まれることで、排気流路部は、摺動案内部に導かれて排気出口側に強く押し付けられる。これにより、排気流路部のフランジと前記本体の内面との間に配置するパッキンを高い圧縮状態にして保持することができる。従って、パッキンの圧縮にバラつきがなく、排気流路部のフランジと前記本体の内面との間の気密を高く確保することができる。以上より、燃焼排気が排気流路部の開口部から本体内へ漏出することを防止でき、燃焼排気が燃焼装置内に流入して燃焼性能を低下させることを防止できる。また、排気流路部内の開口部付近に滞留した結露水が排気流路部の開口部から本体内へ浸入することを防止でき、結露水が燃焼装置の装置本体に付着して装置本体を劣化させることを防止できる。
【0009】
前記排気アダプタにおいて、
前記排気流路部は、外方に膨れる膨出部を備え、当該膨出部により前記閉塞部が構成されるようにすることができる。
【0010】
この構成により、膨出部を備えることで排気流路部が長くなり、膨出部である閉塞部を摺動案内部に押し込む際、排気流路部を押さえ付けやすくなり排気流路部の組立が容易となる。また、膨出部により排気流路部を流れる燃焼排気の流路長が長くなるため、燃焼排気の流速を低減することができる。これにより、突風の吹き付けで排気出口が閉塞気味となった場合でも、前記パッキンによって、燃焼排気が排気流路部の開口部から本体内へ漏出することを防止できる。また、燃焼排気の流速が低くなることで排気流路部や排気出口付近等に滞留した結露水が燃焼排気によって排気出口から外に飛散することを防止できる。
【0011】
前記排気アダプタにおいて、
前記排気流路部は、ビス固定により本体に固定され、
前記ビス固定方向は、前記パッキンの圧縮方向と交差する方向に設定される構成とすることができる。
【0012】
排気流路部のパッキンの圧縮方向は、摺動案内部により排気流路部を押し付ける排気出口側方向と同じ方向であり、排気流路部には、排気出口側方向と反対方向にパッキンの圧縮反発力が作用する。排気流路部のビス固定方向は、ビスの螺進方向と平行した方向となる。排気流路部に対してビス固定方向がパッキンの圧縮方向と平行した方向に設定される場合は、パッキンの圧縮反発力がビスの抜ける方向に作用する。本発明の前記構成によれば、排気流路部に対してビス固定方向と交差する方向にパッキンの圧縮反発力が作用するので、ビスの緩みを防止し、ビスの固定を保持させることができる。これにより、摺動案内部に押し込まれた状態で組立てられた排気流路部は、ビス固定によって摺動案内部から脱出する方向にずれることなく、摺動案内部による排気出口側への押し付け状態に安定して保持される。従って、パッキンの気密を高い状態に安定して維持し続けることができる。また、ビスの螺進方向は、排気流路部を摺動案内部に押し込む方向と同じ方向となるので、排気流路部を本体内に組立てる組立作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態における燃焼装置を示す正面図である。
図2】本実施形態における燃焼装置の内部構成を示す模式図である。
図3】本実施形態の排気アダプタの前蓋を開状態とした場合における燃焼装置を示す斜視図である。
図4】本実施形態の排気アダプタを燃焼装置の天面部に設置するときの状態を示す斜視図である。
図5】本実施形態の排気アダプタにおいて、前蓋が閉状態の場合を示す斜視図(同図(a))及び前蓋が開状態の場合を示す斜視図(同図(b))である。
図6】本実施形態の排気アダプタを示す断面図である。
図7】本実施形態の排気アダプタを底面側から示す斜視図である。
図8】本実施形態の排気アダプタを後方側から見た断面図である。
図9】本実施形態の排気アダプタを本体と排気導流体とに分解した状態の断面斜視図である。
図10】本実施形態の排気アダプタにおいて排気連結部と燃焼装置の排気筒との接続部分を示す拡大断面図である。
図11】本実施形態の排気アダプタの組立方法を説明するための断面図である。
図12】本実施形態の排気アダプタの組立方法を説明するための断面図である。
図13】本実施形態の排気アダプタにおいて排気流路部のフランジと本体の側方壁との間のパッキンの圧縮状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1図2図3に示す燃焼装置30は、給湯装置を構成するものであり、前方に開放部31を有する箱状のケーシング32と、開放部31を覆いケーシング32に取り外し可能に固定された前カバー34とを備え、ケーシング32と前カバー34とで装置の外郭となる装置本体が構成される。前カバー34は、ケーシング32に対して、上端部がパッチン錠46で固定され、下端部がビス49aで固定されている。なお、前カバー34の上端部の固定手段は、パッチン錠46以外にビス止め等の他の固定手段であってもよい。本明細書では、図1及び図3より、燃焼装置30の前カバー34側を前面とし、前後、左右、上下の位置関係を規定する。
【0015】
図2に示すように、ケーシング32内には、燃焼部35と、熱交換部36と、送風手段37と、給気部38と、排気部39とが配設されている。排気部39は、排気下流部に円筒状の排気筒40を有する。給気部38は、給気上流部に、円筒状の給気筒41と、排気筒40を内周部に配設するリング状給気筒42とを有する。排気筒40、給気筒41及びリング状給気筒42は、ケーシング32の天面部33(燃焼装置30の天面部でもある。)から上方に突出して配設されている。送風手段37は、給気部38から燃焼装置30内に導入した空気を燃料供給管43から供給される燃料ガスと混合し、混合ガスとして燃焼部35に供給する。燃焼部35は、燃焼部35に備えるバーナ(不図示)により混合ガスを燃焼させて燃焼排気を生成する。熱交換部36は、燃焼部35から送り込まれた燃焼排気により給水管44から伝熱管(不図示)に流入される流体(水)を加熱する。熱交換部36で加熱された流体は、伝熱管から出湯管45に流出され、給湯端末に供給される。熱交換部36で流体を加熱した後の燃焼排気は、排気部39から器具外に排出される。
【0016】
本実施形態では、燃焼装置30の天面部33に排気筒40と接続する排気アダプタ1が設置されている。燃焼装置30は、天面部33に排気アダプタ1を設置しないものを屋内設置型の燃焼装置30とし、天面部33に排気アダプタ1を設置したものを屋外設置型の燃焼装置30に適用することができる。すなわち、屋内設置型の燃焼装置30において天面部33に排気アダプタ1を設置することにより、屋外設置型の燃焼装置30に変換することができる。図4に示すように、本実施形態の排気アダプタ1は、本体2内の左右端部に設ける締結部としての固定板部51を燃焼装置30の天面部33の左右端部に設けた固定部品52にビス51aにより固定することで、燃焼装置30の天面部33に取り付けられている。また、排気アダプタ1には、本体2の前面に設けられた切欠部20を覆う開閉可能な前蓋8が設けられている。この前蓋8を開状態にすることで、本体2の切欠部20を通して燃焼装置30の前面側から固定板部51のビス止め作業を行うことができ、燃焼装置30の天面部33側から作業する場合に比べ、排気アダプタ1の取り付け作業を容易に行うことができる。また、前蓋8を開状態にすることで、切欠部20を通して前カバー34の上部のパッチン錠46を解錠でき、また、切欠部20によって排気アダプタ1が干渉することなく前カバー34を取り外すことができる(図3参照)。従って、排気アダプタ1を燃焼装置30から取り外すことなく前カバー34をケーシング32から取り外すことができ、燃焼装置30のメンテナンス等の際、前カバー34を取り外す作業性を向上することができる。
【0017】
図5図9に示すように、本実施形態の排気アダプタ1は、外部部品となる本体2と、内部部品として本体2内に設けられた排気導流体3とを備えている。排気導流体3は、排気連結部4と排気流路部5とで構成されている。
【0018】
本体2は、側方壁6及び上方壁7を備え、下方が開放された箱状に形成されている。本体2の上方壁7は、長方形形状を有し、後部よりも前部が高い傾斜面となっている。本体2の側方壁6は、上方壁7の周縁部から下方へ延設されている。前側の側方壁6には、開閉可能な前蓋8が取り付けられている。前蓋8は、前方へ膨出した形状を有し、閉状態で燃焼装置30の前カバー34と面一となる寸法に形成されている。後側の側方壁6は、燃焼装置30のケーシング32の背面と面一となる寸法に形成されている。前蓋8及び後側の側方壁6は、下端が前カバー34の上端及びケーシング32の背面の上端と略一致する寸法に形成されている。左右側の側方壁6は、上下方向の中間部付近から下端までの下部が外方へ膨出した膨出形状を有し、燃焼装置30のケーシング32の左右面と面一となる寸法に形成されている。左右側の側方壁6は、下端がケーシング32の左右面と天面との間の丸みを帯びた隅部に被る位置まで延出する寸法に形成されている。このように、排気アダプタ1は、燃焼装置30の天面部33に設置された状態では、外部部品の本体2が燃焼装置30の天面部33を覆い装置本体の前後面及び左右面と面一となり、燃焼装置30との一体感を有し、正面からのデザイン性が高められている。なお、排気アダプタ1の本体2は、燃焼装置30の天面部33よりも多少大きい又は小さいサイズであってもよいし、本体2の下端部が燃焼装置30の上部を多少覆う位置まで延びていてもよい。なお、本実施形態では、本体2と排気導流体3と前蓋8とは樹脂材料によって成形されている。
【0019】
本体2における左右側の側方壁6の下部には、前後方向に横長に開口した給気口9が設けられている。本体2内における左右の側方壁6付近には、給気口9に対向して側方壁6と平行に延在するガイド板10(図8参照)が設けられている。このガイド板10によって給気口9を通して外部から本体2内に流入した空気は、下方に流されて燃焼装置30の天面部33の給気筒41及びリング状給気筒42に導かれる。前側の側方壁6における上端から中間部付近までの上部は、斜め上を向いた傾斜面となっている。この傾斜面には、左右方向に横長に開口した排気出口11が設けられている。排気出口11には、本体2内の排気流路部5が連通するように接続されている。排気出口11を形成する前側の側方壁6の内面には、排気出口11の上部と下部とに本体2内に突出する板状の挿入凸部12が設けられている。上下の挿入凸部12は、排気流路部5内に配置され、排気出口11の周縁部に燃焼排気を滞留させて排気出口11周囲の側方壁6の温度低下を防ぐ空間を形成することができる。また、前側の側方壁6の内面には、下側の挿入凸部12より下方の左右位置に、外側端部が上方に湾曲した受板部60(図8参照)が設けられている。左右の受板部60は、前側の側方壁6の内面に配設される排気流路部5のフランジ14の隅部外周に沿うように設けられている。
【0020】
前側の側方壁6には、下端から中間部付近までの所定高さで左右全幅にわたって切り欠かれた切欠部20が設けられている。前側の側方壁6には、切欠部20を覆う前蓋8が取り付けられている。前蓋8は、ヒンジ21によって切欠部20に対して開閉可能に本体2と固定されている。ヒンジ21は、ヒンジ軸を2枚のヒンジ挟持板で挟んだ構成を有し、切欠部20の上端及び前蓋8の上部における左右位置に設けられ、前蓋8を上方へ回動させて開状態とすることができる。また、ヒンジ21には、ヒンジ軸とヒンジ挟持板に係合部(不図示)が設けられており、前蓋8を上方へ回動させて開状態にすると係合部が係合して前蓋8を開状態の位置に保持するように構成されている。なお、本実施形態では、ヒンジ21を前蓋8の上部に設けるが、ヒンジ21を前蓋8の右端部又は左端部に設けて前蓋8を右開き又は左開きとしてもよいし、また、前蓋8を左右に分割して、分割した前蓋8の左右両端部にヒンジ21を設けて前蓋8を観音開きとしてもよい。また、ヒンジ21は、軸と軸孔又は軸溝等を組み合わせたもの、蝶番等のように任意のヒンジ手段を用いてもよい。
【0021】
前蓋8の左右側端部は、本体2の左右側の側方壁6に沿うように曲げられており、この曲げ部分の後端に係合片27(図9参照)が設けられ、また、左右側の側方壁6における前縁部の内面には、前蓋8の係合片27と係合する係合凸部28(図9参照)が設けられている。前蓋8が閉状態の位置では、前蓋8の係合片27と側方壁6の係合凸部28とが係合して、前蓋8が安易に開かないように閉状態の位置で保持される。なお、本実施形態では、前蓋8を閉状態に保持する手段は、前記の係合片27と係合凸部28とによる係合手段とするが、磁石による吸着手段等であってもよい。
【0022】
図7に示すように、排気導流体3は、燃焼装置30の排気筒40に接続される排気連結部4と、排気連結部4から本体2の排気出口11までの間を連接する排気流路部5とを備えている。排気連結部4と排気流路部5とは、一体化されており、各々の内部空間が連通されている。
【0023】
排気連結部4は、燃焼装置30の排気筒40の内周形状に沿うように円筒状に形成されている。排気連結部4の上端部は、排気流路部5に接合されている。図10に示すように、排気連結部4の下部は、排気筒40内に挿入されて排気筒40と連通するように接続されている。排気連結部4の下部と排気筒40との間には、筒状パッキン70が配設されている。筒状パッキン70は、上端部に内向きのシール部71が全周にわたって設けられ、下端部に外向きの延出部72が全周にわたって設けられている。排気筒40の上端部には、全周にわたって溝部40aが設けられている。筒状パッキン70は、排気筒40の溝部40a内に挿入して取り付けられており、延出部72が溝部40aの内壁に当接され、シール部71が排気筒40の上端部から排気筒40の内側に配設されている。従って、排気筒40内に接続された排気連結部4は、筒状パッキン70のシール部71と圧接され、排気筒40と排気連結部4の接続部分での燃焼排気の漏れが防止される。
【0024】
排気流路部5は、燃焼装置30の燃焼排気が流れる内部空間を有し、前端側に横長に開口した開口部13を設け、開口部13と対向した後端側を閉塞部(16)とする偏平な箱状に形成されている。排気流路部5の底面の中央部には、排気連結部4が内部空間と連通するように接合されている。排気流路部5の開口部13の外周縁には、外向きのフランジ14が形成されている。排気流路部5のフランジ14は、環状のパッキン15を配設して排気出口11の外周部における本体2内の前側の側方壁6に押し付けて接続されている。これにより、排気流路部5の開口部13が本体2の排気出口11と連通されて、燃焼装置30の燃焼排気は、排気筒40から、排気連結部4及び排気流路部5を通って、排気出口11から外部に排出される。
【0025】
排気流路部5の後端側の閉塞部は、略U字状に外方に膨れる膨出部16を備え、この膨出部16の外面が凸弧状面16aに形成されている。膨出部16の外面には、左右幅方向の中間部に本体2とビス固定する固定部17が設けられている。
【0026】
一方、本体2の上方壁7の内面における後方部には、排気流路部5の膨出部16の外面に圧接される摺動案内部18と、排気流通路の固定部17とビス固定する固定基台19とが設けられている。摺動案内部18は、膨出部16の左右端部位置に対応する2箇所と中央位置に対応する左右2箇所の計4つ設けられている。固定基台19は、ネジ孔を有し、膨出部16の中間部に対応する1箇所に設けられている。排気流路部5は、膨出部16を摺動案内部18に圧接した状態で固定部17を固定基台19にビス固定して本体2内に取り付けられている。
【0027】
摺動案内部18は、本体2内に配設した排気流路部5を排気出口11側方向に押し込み可能とする位置に設けられている。摺動案内部18の前部には、摺動案内部18の先端側から基端側に向かうに従い前方の排気出口11側方向に傾斜した凹弧状部18aが形成されている。凹弧状部18aの先端側には、先端側が開くように斜めに形成した受入部18bが設けられている。排気流路部5は、膨出部16の外面である凸弧状面16aが摺動案内部18の凹弧状部18aに押し込まれた状態で本体2に固定されている。
【0028】
次に、排気アダプタ1の組立について説明する。
図11図12に示すように、排気流路部5のフランジ14にパッキン15を配置した状態とし、排気流路部5を本体2の開放部31から本体2内に配置して、排気流路部5の開口部13内に本体2内の挿入凸部12を挿入して係止させる(図11参照)。引き続き、排気流路部5の前方のフランジ14をパッキン15を介して排気出口11の外周部の側方壁6に当接させ、排気流路部5の後方の膨出部16を摺動案内部18に配置させる(図12(a)参照)。このとき、排気流路部5の膨出部16は、摺動案内部18の受入部18bに当接することで摺動案内部18の前部に円滑に案内される。この状態で、膨出部16を摺動案内部18の先端側から基端側に押し込む。膨出部16を押し込むに従って、膨出部16の外面である凸弧状面16aが摺動案内部18の凹弧状部18aに沿って摺動しながら押し込まれ、排気流路部5は、摺動案内部18に導かれて前方の排気出口11側に強く押し付けられる(図12(b)参照)。この状態で、排気流路部5の固定部17と本体2の固定基台19とをビス17aで固定する。このようにして、本体2内に排気流路部5及び排気連結部4を有する排気導流体3が取り付けられて、排気アダプタ1が組み立てられる。
【0029】
以上のように、実施形態の排気アダプタ1は、前記組立過程において排気流路部5の膨出部16外面の凸弧状面16aが摺動案内部18の凹弧状部18aに沿って摺動しながら押し込まれることで、排気流路部5が摺動案内部18に導かれて排気出口11側に強く押し付けられる。これにより、排気流路部5のフランジ14と本体2の排気出口11を形成する側方壁6との間に配置するパッキン15を全周にわたり高い圧縮状態にして保持することができる。従って、パッキン15の圧縮にバラつきがなく、排気流路部5のフランジ14と本体2の側方壁6との間の気密を高く確保することができ、高度に密閉することができる。この結果、燃焼排気が排気流路部5の開口部13から本体2内へ漏出することを防止でき、燃焼排気が燃焼装置30内に流入して燃焼性能を低下させることを防止できる。また、排気流路部5内の開口部13付近に滞留した結露水が排気流路部5の開口部13から本体2内へ浸入することも防止でき、結露水が燃焼装置30のケーシング32等の装置本体2に付着して装置本体2を劣化させることを防止できる。
【0030】
ところで、人の力だけで排気流路部5を排気出口11側に押し付けた場合は、パッキン15の圧縮状態が部分的にバラつきを生じ、また、各部品の寸法公差を吸収するまでパッキン15を全周にわたって高い圧縮状態に圧縮することは困難であった。本実施形態によれば、排気流路部5の後方の膨出部16を摺動案内部18に沿わせて摺動させながら押し込むことで、容易に排気流路部5を排気出口11側に強く押し付けることができ、パッキン15を全周にわたり高い圧縮状態に圧縮することができる。因みに、本実施形態では、パッキン15の圧縮率として、およそ70%~75%程度の高い圧縮状態とすることができる。一方、パッキン15を強く圧縮し過ぎると、パッキン15自体の弾性が失われてしまうおそれがある。そこで、図13に示すように、フランジ14には、パッキン15を配置する受容溝14aが設けられ、この受容溝14aの外周縁に突出部14bを設け、この突出部14bが本体2の側方壁6に当接することで、過剰にパッキン15が圧縮されないように規制している。
【0031】
また、本実施形態では、排気流路部5は、開口部13の対向壁である閉塞部を後方に膨れる膨出部16として構成する。これにより、膨出部16により排気流路部5が長くなり、膨出部16を摺動案内部18に押し込む際、排気流路部5を押さえ付けやすくなり排気流路部5の組立を容易に行うことができる。また、膨出部16により排気流路部5を流れる燃焼排気の流路長が長くなるため、燃焼排気の流速を低減することができる。これにより、突風の吹き付けで排気出口11が閉塞気味となった場合でも、パッキン15によって、燃焼排気が排気流路部5の開口部13から本体2内へ漏出することを防止できる。また、燃焼排気の流速が低くなることで排気流路部5や排気出口11付近等に滞留した結露水が燃焼排気によって排気出口11から外に飛散することを防止できる。
【0032】
また、本実施形態では、排気流路部5の固定部17と本体2の固定基台19とをビス17aで固定することにより、排気流路部5の膨出部16を摺動案内部18の基端側へ押し込んだ状態に保持させている。このビス17aによる固定方向は、上下方向であり、摺動案内部18によって排気流路部5を押し付ける横方向、すなわち、パッキン15の圧縮方向と交差する方向に設定されている。排気流路部5のパッキン15の圧縮方向は、摺動案内部18により排気流路部5を押し付ける排気出口11側方向と同じ方向であり、排気流路部5には、排気出口11側方向と反対方向にパッキン15の圧縮反発力が作用する。排気流路部5のビス固定方向は、ビス17aの螺進方向と平行した方向となる。排気流路部5に対してビス固定方向がパッキン15の圧縮方向と平行した方向に設定される場合は、パッキン15の圧縮反発力がビスの抜ける方向に作用する。本実施形態では、排気流路部5に対してビス固定方向と交差する方向にパッキン15の圧縮反発力が作用するので、ビス17aの緩みを防止し、ビス17aによる固定を保持させることができる。これにより、摺動案内部18に押し込まれた状態で組立てられた排気流路部5は、ビス17aの固定によって摺動案内部18から脱出する方向にずれることなく、摺動案内部18による排気出口11側への押し付け状態に安定して保持される。従って、パッキン15の気密を高い状態に安定して維持し続けることができる。また、ビス17aの螺進方向は、排気流路部5を摺動案内部18に押し込む方向と同じ方向となるので、排気流路部5を本体2内に組立てる組立作業を容易に行うことができる。
【0033】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で任意に変更を行うことが可能である。例えば、本実施形態では燃焼装置30の天面部33に給気筒41及びリング状給気筒42が設けられ、給気口9を通して外部から本体2内に流入した空気は、給気筒41及びリング状給気筒42に導かれているが、いずれか一方が閉塞されて他方からのみ空気が燃焼装置30内に供給されてもよいし、給気筒41又はリング状給気筒42のいずれか一方のみが燃焼装置30の天面部33に設けられる構成でもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 排気アダプタ
2 本体
3 排気導流体
4 排気連結部
5 排気流路部
6 側方壁
7 上方壁
8 前蓋
9 給気口
10 ガイド板
11 排気出口
12 挿入凸部
13 開口部
14 フランジ
15 パッキン
16 膨出部
16a 凸弧状面
17 固定部
18 摺動案内部
18a 凹弧状部
18b 受入部
19 固定基台
20 切欠部
21 ヒンジ
22 アーム
23 ヒンジ軸
24 ヒンジ挟持板
25 凸部
26 凹部
27 係合片
28 係合凸部
30 燃焼装置
31 開放部
32 ケーシング
33 天面部
34 前カバー
35 燃焼部
36 熱交換部
37 送風手段
38 給気部
39 排気部
40 排気筒
41 給気筒
42 リング状給気筒
43 燃料供給管
44 給水管
45 出湯管
46 パッチン錠
47 フック
48 取付部
49 固定片
51 固定板部
52 固定部品
60 受板部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13