(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072641
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ファン装置
(51)【国際特許分類】
F01P 11/10 20060101AFI20240521BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20240521BHJP
F04D 29/00 20060101ALI20240521BHJP
F01P 5/04 20060101ALI20240521BHJP
F01P 5/06 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
F01P11/10 C
F04D29/58 P
F04D29/00 A
F01P5/04 A
F01P5/06 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183599
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永元 里司
(72)【発明者】
【氏名】太田 秀岳
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC15
3H130BA33G
3H130CA29
3H130CB01
3H130DA02Z
3H130DD01Z
(57)【要約】
【課題】ファン装置を大型化することなく、冷却対象を冷却するのに必要な冷却風を確保すると共に、モータを適切に冷却可能なファン装置を提供する。
【解決手段】ファン装置(1)は、モータ支持部(42)を備えるシュラウド(4)と、モータ支持部(42)の表面側に配置されたファン(3)と、モータ支持部(42)の背面側に支持されたモータ(2)とを備える。モータ支持部(42)には、ファン(3)のボス31より径方向外側の周方向に離間した位置において、各々が厚み方向に貫通する複数の導風路(426)が形成されている。ファン装置(1)は、モータ支持部(42)の背面側で導風路(426)に対面して配置され、ファン(3)によって生起され且つ導風路(426)を通過した冷却風を、モータブラケット(21)の背面側に導く導風部(52)をさらに備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータブラケット、前記モータブラケットの表面側に回転自在に支持されたロータ、前記モータブラケットの表面側に固定されて、前記ロータを回転させるための磁界を発生するコイルが巻装されたステータ、及び前記モータブラケットの背面側に固定されて、前記コイルによる磁界の発生を制御するドライバ回路を備えるモータと、
前記ロータに固定されたボス、及び前記ボスの外周面の周方向に離間した位置から各々が径方向外向きに突出するブレードを備えるファンと、
前記ファンを収容するファン収容孔が形成されたシュラウド本体、前記ファン収容孔の中央で前記モータを支持するモータ支持部、及び前記モータ支持部から前記シュラウド本体に向けて放射状に延びる複数のステーを備えるシュラウドとを備えるファン装置において、
前記ファンは、前記モータ支持部の表面側に配置され、
前記モータは、前記モータ支持部の背面側に支持され、
前記モータ支持部には、前記ボスより径方向外側の周方向に離間した位置において、各々が厚み方向に貫通する複数の導風路が形成され、
前記モータ支持部の背面側で前記導風路に対面して配置され、前記ファンによって生起され且つ前記導風路を通過した冷却風を、前記モータブラケットの背面側に導く導風部をさらに備えることを特徴とするファン装置。
【請求項2】
請求項1に記載のファン装置において、
前記導風路は、前記モータ支持部の表面側から背面側に向かって、前記モータ支持部の径方向内側に傾斜していることを特徴とするファン装置。
【請求項3】
請求項2に記載のファン装置において、
前記モータ支持部の背面側における前記導風路の開口面積は、前記モータ支持部の表面側における前記導風路の開口面積より小さいことを特徴とするファン装置。
【請求項4】
請求項1に記載のファン装置において、
前記モータの背面側において、前記ドライバ回路を覆う遮熱板をさらに備え、
前記導風部は、前記遮熱板の外縁部に設けられていることを特徴とするファン装置。
【請求項5】
請求項4に記載のファン装置において、
前記遮熱板には、厚み方向に貫通して、前記導風部によって前記ドライバ回路及び前記遮熱板の間に導かれた冷却風を排出する排風孔が形成されていることを特徴とするファン装置。
【請求項6】
請求項5に記載のファン装置において、
前記遮熱板は、前記排風孔から排出される冷却風の流れを制御するために、前記遮熱板の厚み方向に対して傾斜したルーバを備え、
前記遮熱板の厚み方向から見た前記排風孔の開口面積は、前記ルーバの傾斜方向に沿って斜めから見た前記排風孔の開口面積より小さいことを特徴とするファン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却風を生起させるファン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、持続可能な開発のための2030アジェンダ、平成27(2015)年9月25日国連サミット採択、以下「SDGs」という)の推進に向けた取り組みが行われている。それに伴い、持続可能な生産消費形態の確保などのため、廃棄物や不良品の削減などを目指す技術が知られている。
【0003】
従来より、ラジエータに冷却風を供給するファン装置として、冷却風を生起させるファンと、ファンを回転させるモータと、ファン及びモータを支持するシュラウドとを一体化したものが知られている。
【0004】
上記構成のファン装置では、モータ自体も発熱するため、ラジエータに冷却風を供給することに加えて、モータの冷却対策も必要になる。例えば特許文献1には、モータの背面を覆う遮熱板の一部を径方向外向きに延長して、ファンが生起させた冷却風の一部をモータに導く構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では、径方向外向きに大きく延長された遮熱板によって、ファン装置を通過しようとする冷却風の流れが遮られる。そのため、ラジエータの冷却に必要な冷却風を確保するためには、ファンの直径を大きくする等の対策が必要になる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ファン装置を大型化することなく、冷却対象を冷却するのに必要な冷却風を確保すると共に、モータを適切に冷却可能なファン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、モータブラケット、前記モータブラケットの表面側に回転自在に支持されたロータ、前記モータブラケットの表面側に固定されて、前記ロータを回転させるための磁界を発生するコイルが巻装されたステータ、及び前記モータブラケットの背面側に固定されて、前記コイルによる磁界の発生を制御するドライバ回路を備えるモータと、前記ロータに固定されたボス、及び前記ボスの外周面の周方向に離間した位置から各々が径方向外向きに突出するブレードを備えるファンと、前記ファンを収容するファン収容孔が形成されたシュラウド本体、前記ファン収容孔の中央で前記モータを支持するモータ支持部、及び前記モータ支持部から前記シュラウド本体に向けて放射状に延びる複数のステーを備えるシュラウドとを備えるファン装置において、前記ファンは、前記モータ支持部の表面側に配置され、前記モータは、前記モータ支持部の背面側に支持され、前記モータ支持部には、前記ボスより径方向外側の周方向に離間した位置において、各々が厚み方向に貫通する複数の導風路が形成され、前記モータ支持部の背面側で前記導風路に対面して配置され、前記ファンによって生起され且つ前記導風路を通過した冷却風を、前記モータブラケットの背面側に導く導風部をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ファン装置を大型化することなく、冷却対象を冷却するのに必要な冷却風を確保すると共に、モータを適切に冷却可能なファン装置を得ることができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ファン装置の表面側(A)及び背面側(B)の外観斜視図である。
【
図2】ファン装置の表面側から見た分解斜視図である。
【
図3】ファン装置の背面側から見た分解斜視図である。
【
図5】シュラウドの表面図(A)及び背面図(B)である。
【
図6】
図5(A)のVI-VIにおけるモータ支持部の断面図である。
【
図7】遮熱板の表面側(A)及び背面側(B)の斜視図である。
【
図8】モータ支持部及び遮熱板の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るファン装置の一態様として、例えば自動車などの車両に搭載され、ラジエータ(冷却対象)内を流れるエンジンの冷却水などを冷却するファン装置1について説明する。
【0012】
(ファン装置1の全体構成)
まず、
図1及び
図2を参照して、ファン装置1の全体構成を説明する。
図1は、ファン装置1の表面側(A)及び背面側(B)の外観斜視図である。
図2は、ファン装置1の表面側から見た分解斜視図である。
図3は、ファン装置1の背面側から見た分解斜視図である。
図1~
図3に示すように、ファン装置1は、モータ2と、ファン3と、シュラウド4と、遮熱板5とを主に備える。
【0013】
ファン装置1は、例えば、前後方向においてラジエータと対向するように、エンジンルーム内に設置される。より詳細には、一般的な自動車のエンジンルーム内には、前方から後方に向かって、ラジエータ、ファン装置1、エンジンの順に配置されている。すなわち、ファン装置1は、前後方向においてラジエータ及びエンジンの間に配置されている。以下、ファン装置1の前方側(ラジエータ側)を「表面側」と表記し、ファン装置1の後方側(エンジン側)を「背面側」と表記する。
【0014】
シュラウド4は、ボルト等によってエンジンルーム内に固定される。また、シュラウド4は、モータ2を支持すると共に、モータ2に取り付けられたファン3を収容する。ファン3は、モータ2の駆動力が伝達されて回転することによって、ファン装置1の表面側から背面側に向かう冷却風を生起させる。遮熱板5は、背面側からモータ2を覆うことによって、エンジンから放出される輻射熱を遮断して、モータ2に届くのを阻止している。
【0015】
ファン3が回転することによって、ファン装置1の前方側(すなわち、ラジエータが設置された領域)が負圧になる。これにより、ラジエータが設置された領域にも前方側から後方側に向かう冷却風が生まれる。そして、ファン装置1を表面側から背面側に通過する冷却風の風量が多くなるほど、ラジエータを通過する冷却風の風量も多くなる。
【0016】
(モータ2の構成)
次に、
図4を参照して、モータ2の構成を説明する。
図4は、モータ2の縦断面図である。本実施形態に係るモータ2は、アウターロータ側のブラシレスモータである。また、モータ2は、ブラシレスモータを制御するドライバ回路25が一体化された、所謂「機電一体型」の電動モータである。
図4に示すように、モータ2は、モータブラケット21と、シャフト22と、ロータ23と、ステータ24と、ドライバ回路25と、ドライバケース26と、コネクタユニット27(
図2及び
図3参照)とを主に備える。
【0017】
モータブラケット21は、概ね板状の外形を呈する。モータブラケット21は、表面側または裏面側において、モータ2の構成部品(すなわち、シャフト22、ロータ23、ステータ24、ドライバ回路25、ドライバケース26、コネクタユニット27)を支持する。
【0018】
シャフト22は、軸方向の一端がモータブラケット21の表面側に固定されている。以下、シャフト22の軸方向を単に「軸方向」とし、シャフト22の軸心を中心とした径方向を単に「径方向」とし、シャフト22の軸心を中心とした周方向を単に「周方向」とする。
【0019】
ロータ23は、モータブラケット21の表面側において、ベアリング22A、22Bを介してシャフト22に回転自在に支持されている。ロータ23は、ステータ24の外周を囲むように周方向に等間隔に並んで配置された複数の永久磁石231と、ステータ24及び複数の永久磁石231を覆うロータヨーク232とを有する。そして、ロータヨーク232は、シャフト22の軸心と同心になるようにモータブラケット21の表面側に配置されている。ロータヨーク232は、外周壁232Aと、内周壁232Bと、連結壁232Cとを備える。
【0020】
外周壁232Aは、円筒形状の外形を呈する。また、外周壁232Aは、ステータ24より径方向の外側に配置されている。さらに、外周壁232Aは、複数の永久磁石231を内周面で支持している。換言すれば、複数の永久磁石231は、周方向に所定の間隔を隔てて外周壁232Aの内周面に固定されている。
【0021】
内周壁232Bは、円筒形状の外形を呈する。また、内周壁232Bは、ステータ24より径方向の内側に配置されている。さらに、内周壁232Bは、ベアリング22A、22Bを介してシャフト22に回転自在に支持される。
【0022】
連結壁232Cは、円盤形状の外形を呈する。また、連結壁232Cは、外周壁232A及び内周壁232Bの軸方向の端部同士を接続する。より詳細には、連結壁232Cは、シャフト22の軸方向の他端側(すなわち、モータブラケット21と反対側)において、外周壁232A及び内周壁232Bを接続する。
【0023】
ステータ24は、外周壁232A、内周壁232B、連結壁232C、及びモータブラケット21で囲まれた空間に収容されている。また、ステータ24は、複数の永久磁石231より径方向の内側において、モータブラケット21の表面側に固定されている。さらに、ステータ24は、径方向に所定の隙間を隔てて複数の永久磁石231に対面している。
【0024】
ステータ24は、円筒形状のステータコア241と、ステータコア241から径方向外向きに突出された複数のティース242と、絶縁性のインシュレータで覆われたティース242に巻回された導電性のコイル243とを有する。ステータ24は、コイル243に電流が流れることにより磁界を発生する。そして、コイル243で発生した磁界と、複数の永久磁石231との間に生じる引力及び斥力によって、ロータヨーク232がシャフト22の軸心を中心として回転する。
【0025】
ドライバ回路25は、コイル243に対する電流の供給タイミングを切り替えることによって、コイル243による磁界の発生を制御する。ドライバ回路25は、回路基板と、回路基板上に実装された電子部品とで構成される。ドライバケース26は、モータブラケット21の背面側(すなわち、シャフト22、ロータ23、及びステータ24と反対側)に固定されている。モータブラケット21の背面及びドライバケース26の間には、収容空間28が形成される。ドライバ回路25は、モータブラケット21の背面側に形成された収容空間28に収容される。
【0026】
図2及び
図3に示すように、コネクタユニット27は、モータブラケット21の端部に取り付けられている。コネクタユニット27は、外部ハーネスが接続される2つのコネクタが一体になったものである。ドライバ回路25は、コネクタユニット27を介して外部装置(例えば、自動車の制御装置)に電気的に接続されている。
【0027】
(ファン3の構成)
図1~
図3に示すように、ファン3は、ロータヨーク232に固定されるボス31と、ボス31の外周面の周方向に離間した位置から各々が径方向外向きに突出する複数(本実施形態では9枚)のブレード32と、隣り合うブレード32同士を先端側で連結する複数(本実施形態では9つ)の連結部材33とを有する。ファン3は、シャフト22の軸心上を回転中心として、ロータ23と一体回転する。
【0028】
また、ボス31は、円盤形状の円盤部311と、円盤部311の外縁からモータ2に向けて突出すると共に、複数のブレード32が取り付けられた円筒形状の周壁部312とを含む。ファン3がモータ2に取り付けられると、円盤部311はロータヨーク232の連結壁232Cに対面し、周壁部312はロータヨーク232の外周壁232Aを囲む。すなわち、ボス31の周壁部312の内径寸法は、ロータヨーク232の外形寸法より僅かに大きく設定されている。
【0029】
(シュラウド4の構成)
図5は、シュラウド4の表面図(A)及び背面図(B)である。
図6は、
図5(A)のVI-VIにおけるモータ支持部42の断面図である。
図5及び
図6に示すように、シュラウド4は、シュラウド本体41と、モータ支持部42と、複数のステー43(本実施形態では、11個)とで構成される。シュラウド4は、例えば、樹脂材料を射出成形して一体成形される。
【0030】
シュラウド本体41は、概ね板状の外形を呈する。シュラウド本体41の外周面には、ボルト等によってシュラウド4(換言すれば、ファン装置1)をエンジンルーム内に固定するための複数の被固定部411が設けられている。また、シュラウド本体41には、厚み方向に貫通するファン収容孔412が形成されている。ファン収容孔412は、ファン3を収容するための円形の貫通孔である。すなわち、ファン収容孔412の直径は、ファン3の外形寸法(すなわち、複数のブレード32の先端を結んだ仮想円の直径)より僅かに大きく設定されている。
【0031】
さらに、シュラウド本体41の表面及び背面には、複数の補強リブ413が形成されている。補強リブ413は、シュラウド本体41の表面及び背面から厚み方向に突出し、且つ任意の方向に延設されている。シュラウド本体41の表面側の補強リブ413は、例えば
図5(A)に示すように、ファン収容孔412の中心を通って径方向に延びる仮想線(一点鎖線)に対して、径方向外向きに向かってファン3の回転方向(時計回り)と逆向き(反時計回り)に傾斜していてもよい。これにより、シュラウド本体41の表面側の空気を、ファン収容孔412にスムーズに流入させることができるので、ファン装置1を通過する冷却風の風量が増加する。
【0032】
モータ支持部42は、モータ2を支持するために、ファン収容孔412の内部(より詳細には、ファン収容孔412の中央)に配置されている。モータ支持部42は、概ね円弧形状の外形を呈する。
図5及び
図6に示すように、モータ支持部42は、内周壁421と、外周壁422と、複数の接続壁423と、モータ固定部424と、遮熱板固定部425とを主に備える。
【0033】
内周壁421及び外周壁422は、概ね円弧形状の外形を呈する。外周壁422は、内周壁421より径方向外側に配置されている。すなわち、内周壁421及び外周壁422は、径方向に所定の間隔を隔てて配置されている。また、内周壁421の内径寸法は、ロータヨーク232の外形寸法より僅かに大きく設定されている。さらに、内周壁421422の外形寸法は、ボス31(より詳細には、周壁部312)の外形寸法より僅かに大きく設定されている。
【0034】
接続壁423は、周方向に離間した位置において、内周壁421の外周面と外周壁422の内周面とを接続する。その結果、内周壁421の外周面と、外周壁422の内周面と、隣接する接続壁423とで囲まれた空間は、モータ支持部42を厚み方向に貫通する導風路426として機能する。すなわち、モータ支持部42には、周方向に離間した位置において、各々が厚み方向に貫通する複数の導風路426が形成されている。
【0035】
モータ2及びファン3がシュラウド4に取り付けられたとき、複数の導風路426は、ボス31より径方向外側に位置する。換言すれば、シュラウド4を厚み方向から平面視すると、複数の導風路426は、複数のブレード32に対面する。これにより、ファン3(より詳細には、ブレード32)が生起させた冷却風は、導風路426を通じてモータ支持部42の表面側から背面側に通過する。
【0036】
図6に示すように、導風路426を画定する内周壁421の外周面は、概ねモータ支持部42(換言すれば、シュラウド4)の厚み方向に延設されている。一方、導風路426を画定する外周壁422の内周面は、モータ支持部42の表面側から背面側に向かって、径方向内側に傾斜している。すなわち、導風路426は、モータ支持部42の表面側から背面側に向かって、径方向内側に傾斜している。さらに、モータ支持部42の裏面側における導風路426の開口面積は、モータ支持部42の表面側における導風路426の開口面積より小さく設定されている。すなわち、導風路426の開口面積は、モータ支持部42の表面側から背面側に向かって徐々に小さくなっている。
【0037】
より詳細には、導風路426を画定する外周壁422の内周面は、モータ支持部42の表面側の第1面422Aと、モータ支持部42の背面側の第2面422Bと、第1面422A及び第2面422Bの間の段差422Cとで構成される。そして、第1面422A及び第2面422Bは、いずれもモータ支持部42の表面側から背面側に向かって径方向内側に傾斜している。但し、第2面422Bの傾斜角は、第1面422Aの傾斜角より大きく設定されている。その結果、導風路426の開口面積は、モータ支持部42の表面側から背面側に向かって、第1面422Aの領域では緩やかに減少し、第2面422Bの領域では急激に減少する。
【0038】
モータ固定部424は、モータ2をモータ支持部42に固定するためのボルトが挿通される部分である。より詳細には、モータ2の表面側をモータ支持部42の背面側に当接させる。これにより、モータブラケット21に設けられたボルト穴と、モータ固定部424に設けられたボルト穴とが連通する。そして、連通したボルト穴を通過したボルトの先端にナットを螺合することによって、モータ支持部42の背面側にモータ2が支持される。このとき、ロータヨーク232は、内周壁421の内側を通過して、モータ支持部42の表面側に突出する。さらに、モータ支持部42の表面側に突出したロータヨーク232にボス31を被せてボルトで固定することによって、モータ2にファン3が取り付けられる。すなわち、ファン3は、モータ支持部42の表面側に配置される。
【0039】
遮熱板固定部425は、遮熱板5をモータ支持部42に固定するためのボルトが挿通される部分である。モータ支持部42に取り付けたモータ2を背面側から覆うように遮熱板5を配置する。これにより、遮熱板5を厚み方向に貫通するボルト穴55と、遮熱板固定部425に設けられたボルト穴とが連通する。そして、連通したボルト穴を通過したボルトの先端にナットを螺合することによって、モータ2を背面側から覆った遮熱板5がモータ支持部42に固定される。そして、遮熱板固定部425に遮熱板5を取り付けると、ドライバケース26と遮熱板本体51との間に、冷却風が流通する空間が形成される。
【0040】
複数のステー43は、周方向に離間した位置において、モータ支持部42からシュラウド本体41に向けて放射状に延びている。より詳細には、ステー43は、外周壁422の外周面と、シュラウド本体41のファン収容孔412を画定する面とを接続する。これにより、モータ支持部42は、ファン収容孔412の中央において、シュラウド本体41に支持される。
【0041】
(遮熱板5の構成)
図7は、遮熱板5の表面側(A)及び背面側(B)の斜視図である。
図8は、モータ支持部42及び遮熱板5の要部断面図である。遮熱板5は、モータ2と、エンジンとの間に配置される。これにより、エンジンから放出される赤外線がモータ2に到達するのを防ぐ(換言すれば、エンジンの輻射熱を遮断する)。また、遮熱板5は、導風路426及び後述する導風部52を通じてモータ2の背面側に導かれた冷却風を排出する。
図7に示すように、遮熱板5は、遮熱板本体51と、複数の導風部52とを主に備える。
【0042】
遮熱板本体51は、概ね平板状の外形を呈する。遮熱板本体51には、複数の排風孔53と、複数のルーバ54とが形成されている。排風孔53は、遮熱板本体51を厚み方向に貫通する貫通孔である。本実施形態に係る排風孔53は、スリット状に形成された長孔である。そして、排風孔53は、導風部52によってドライバケース26と遮熱板本体51との間に導かれた冷却風を排出する。
【0043】
ルーバ54は、排風孔53に隣接して設けられている。ルーバ54は、遮熱板本体51の厚み方向に対して傾斜して設けられている。より詳細には、ルーバ54は、遮熱板本体51の表面側(すなわち、モータ2側)に向かって傾斜している。そして、ルーバ54は、排風孔53を通じた冷却風の排出方向を制御する。より詳細には、ルーバ54は、ドライバケース26と遮熱板本体51との間に導かれた冷却風を、傾斜したルーバ54の表面に沿って排風孔53から排出する。さらに、
図8に示すように、遮熱板5の厚み方向から見た排風孔53の開口面積A1は、ルーバ54の傾斜方向に沿って斜めから見た排風孔53の開口面積A2より小さく設定されている。
【0044】
複数の導風部52は、遮熱板本体51の外縁部に設けられている。導風部52は、遮熱板本体51の表面側(すなわち、モータ支持部42側)に傾斜している。また、
図8に示すように、遮熱板固定部425に遮熱板5を取り付けると、導風部52は、モータ支持部42の背面側において、導風路426に対面して配置される。また、導風部52は、外周壁422より径方向内側に位置している。導風部52は、ファン3によって生起され且つ導風路426を通過した冷却風を、モータブラケット21の背面側(換言すれば、ドライバケース26及び遮熱板固定部425の間の空間)に導く。
【0045】
これにより、
図8に矢印で示すように、ファン3によって生起された冷却風は、導風路426を通過する過程で、外周壁422の内周面に沿って径方向内側に傾斜すると共に、開口面積の縮小に伴って加速する。また、導風路426を通過した冷却風は、導風部52によってドライバケース26及び遮熱板固定部425の間の空間に導かれる。さらに、ドライバケース26及び遮熱板固定部425の間の空間に導かれた空間は、ドライバケース26(より詳細には、ドライバ回路25)を冷却した後、ルーバ54に沿って排風孔53から排出される。
【0046】
遮熱板5は、例えば、鋼板によって一体形成される。すなわち、鋼板の所定位置にパンチ加工によってボルト穴55を形成する。また、遮熱板本体51となる部分にパンチ加工によってスリット状の開口を形成し、開口に隣接する部分を曲げ加工によって表面側に折り曲げることによって、排風孔53及びルーバ54を形成する。さらに、遮熱板本体51の外縁部を表面側に折り曲げることによって導風部52を形成する。
【0047】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0048】
上記の実施形態によれば、モータ支持部42に設けられた導風路426を通過した冷却風を、導風部52を通じてドライバケース26に導く。これにより、モータ2(より詳細には、ドライバ回路25)を適切に冷却することができる。その結果、モータ2の経時劣化を遅らせることができるので、ファン装置1の寿命を延伸することができ、廃棄物や不良品の削減に寄与する。
【0049】
また、既存のモータ支持部42に導風路426を設け、モータ支持部42から径方向外側にはみ出さないように導風部52を配置した。これにより、導風部52によって遮断される冷却風を最小限に留めることができる。その結果、ファン装置1を大型化することなく、ラジエータの冷却に必要な冷却風を確保することができる。
【0050】
また、上記の実施形態によれば、導風路426(より詳細には、外周壁422の内周面)を径方向内側に傾斜させることによって、導風路426を通過した冷却風を効率的にモータ2側に導くことができる。また、上記の実施形態によれば、導風路426の開口面積を出口に向かって徐々に小さくすることによって、導風路426を通過する冷却風を加速させることができる。その結果、モータ2を効率的に冷却することができる。
【0051】
また、上記の実施形態によれば、ドライバ回路25(より詳細には、ドライバケース26)を遮熱板5で覆うことによって、エンジンからの輻射熱によってモータ2(より詳細には、ドライバ回路25)の温度が上昇するのを防止できる。これにより、少ない冷却風でドライバ回路25を効率的に冷却することができる。その結果、ファン装置1の大型化をさらに防止できる。
【0052】
また、上記の実施形態によれば、遮熱板本体51に設けた排風孔53を通じて冷却風を排出することによって、ドライバケース26及び遮熱板固定部425の間に冷却風が滞留するのを防止できる。これにより、導風路426及び導風部52を通じてドライバケース26及び遮熱板固定部425の間に導かれる冷却風の流れがスムーズになる。その結果、さらに少ない冷却風でドライバ回路25を効率的に冷却することができる。
【0053】
また、上記の実施形態によれば、排風孔53に隣接してルーバ54を設けることによって、冷却風の排出方向を制御できる。さらに、遮熱板5の厚み方向から見た排風孔53の開口面積A1を、ルーバ54の傾斜方向に沿って斜めから見た排風孔53の開口面積A2より小さくすることによって、冷却風の排出量を減少させることなく、エンジンから排風孔53を通じてモータ2に到達する赤外線の量を減少させることができる。
【0054】
さらに、上記の実施形態では、エンジンによって駆動される車両にファン装置1を搭載する例を説明したが、ファン装置1を搭載する車両は電動モータによって駆動されるものでもよい。この場合は、エンジンからの輻射熱が発生しないので、遮熱板本体51は省略可能である(すなわち、導風部52が単独で存在してもよい。)。また、上記の実施形態では、ファン装置1の冷却対象として、ラジエータの例を説明したが、ファン装置1の冷却対象はこれに限定されない。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 :ファン装置
2 :モータ
3 :ファン
4 :シュラウド
5 :遮熱板
21 :モータブラケット
22 :シャフト
22A,22B :ベアリング
23 :ロータ
24 :ステータ
25 :ドライバ回路
26 :ドライバケース
27 :コネクタユニット
28 :収容空間
31 :ボス
32 :ブレード
33 :連結部材
41 :シュラウド本体
42 :モータ支持部
43 :ステー
51 :遮熱板本体
52 :導風部
53 :排風孔
54 :ルーバ
55 :ボルト穴
231 :永久磁石
232 :ロータヨーク
232A,422 :外周壁
232B,421 :内周壁
232C :連結壁
241 :ステータコア
242 :ティース
243 :コイル
311 :円盤部
312 :周壁部
411 :被固定部
412 :ファン収容孔
413 :補強リブ
422A :第1面
422B :第2面
422C :段差
423 :接続壁
424 :モータ固定部
425 :遮熱板固定部
426 :導風路