IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-操舵制御装置 図1
  • 特開-操舵制御装置 図2
  • 特開-操舵制御装置 図3
  • 特開-操舵制御装置 図4
  • 特開-操舵制御装置 図5
  • 特開-操舵制御装置 図6
  • 特開-操舵制御装置 図7
  • 特開-操舵制御装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072642
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】操舵制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240521BHJP
   B60W 50/00 20060101ALI20240521BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20240521BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
B62D6/00
B60W50/00
B62D113:00
B62D101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183600
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】板摺 一貴
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
【Fターム(参考)】
3D232CC12
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA22
3D232DA63
3D232DA84
3D232DC08
3D232DC09
3D232DC10
3D232DC28
3D232DC33
3D232DC34
3D232DD01
3D232DD06
3D232DD17
3D232DE06
3D232EB04
3D232EC23
3D232EC34
3D232GG01
3D241BA12
3D241BA33
3D241BA51
3D241BC02
3D241CC17
3D241CE05
3D241DA52Z
3D241DB02Z
3D241DC43Z
(57)【要約】
【課題】あそび補償量の大きさが大きいことに起因して不都合が生じることを抑制できるようにした操舵制御装置を提供する。
【解決手段】PU62は、上位ECU80が設定した目標角の変化方向である操舵方向が右操舵方向に変化する場合、目標角を右あそび補償量だけ補正する。そして、PU62は、操舵角を制御量として且つ補正した目標角を制御量の目標値とする制御を実行する。PU62は、現在直進経路を走行しており、進行方向前方の走行経路が左旋回となっている場合、操舵方向が右操舵方向に変化すると、右あそび補償量の大きさを小さい側に制限しつつ、目標角を補正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵装置を制御対象とする操舵制御装置であって、
前記操舵装置は、
ステアリング軸と、
前記ステアリング軸の回転に伴って転舵する車両の転舵輪と、
前記ステアリング軸を回転させるモータと、
を備え、
目標舵角変数取得処理、走行経路情報取得処理、目標舵角補正処理、制限処理、および舵角制御処理を実行するように構成され、
前記目標舵角変数取得処理は、目標舵角変数の値を取得する処理であり、
前記目標舵角変数は、前記転舵輪の転舵角の目標値を示す変数であり、
前記走行経路情報取得処理は、前記車両の走行経路の情報を取得する処理であり、
前記目標舵角補正処理は、前記目標舵角変数の値を操舵方向に応じたあそび補償量だけ補正する処理であり、
前記操舵方向は、前記目標舵角変数の値が変化する方向であり、
前記制限処理は、前記車両の現在の前記走行経路と進行方向前方の前記走行経路とに応じて前記あそび補償量の大きさを小さい側に制限する処理であり、
前記舵角制御処理は、前記ステアリング軸の回転角度に応じた操舵角を制御量として且つ、前記目標舵角変数の値を前記制御量の目標値とする制御によって前記モータを操作する処理である操舵制御装置。
【請求項2】
前記制限処理は、現在の前記走行経路の曲率半径が直進閾値以上であって且つ進行方向前方の前記走行経路の曲率半径が前記直進閾値未満である前方旋回経路において、現在の前記走行経路の曲率半径および進行方向前方の前記走行経路の曲率半径の双方が前記直進閾値以上である場合と比較して、進行方向前方における旋回方向とは逆方向の前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを小さい値に制限する処理を含む請求項1記載の操舵制御装置。
【請求項3】
前記制限処理は、前記前方旋回経路において、進行方向前方における旋回方向とは逆方向の前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを進行方向前方の前記走行経路の曲率半径に応じて変更する処理であって且つ、進行方向前方の前記走行経路の曲率半径が小さい場合の前記あそび補償量の大きさを進行方向前方の前記走行経路の曲率半径が大きい場合の前記あそび補償量の大きさ以下とする処理を含む請求項2記載の操舵制御装置。
【請求項4】
前記制限処理は、前記前方旋回経路において、進行方向前方における旋回方向とは逆方向の前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを進行方向前方の前記走行経路の曲率半径の減少率に応じて変更する処理であって且つ、前記減少率が大きい場合の前記あそび補償量の大きさを前記減少率が小さい場合の前記あそび補償量の大きさ以下とする処理を含む請求項2記載の操舵制御装置。
【請求項5】
前記舵角制御処理を自動操舵モードにおいて実行するように構成されて且つ、あそび変位算出処理、および基本量設定処理を実行するように構成され、
前記あそび変位算出処理は、前記操舵角の都度の変化に応じてあそび変位を算出する処理であり、
前記あそび変位は、前記操舵角の変化に対して前記転舵角が変化しない領域における位置を特定する量であり、
前記基本量設定処理は、前記自動操舵モードとなった時点における前記あそび変位に応じて、右操舵方向に応じたあそび基本量と、左操舵方向に応じたあそび基本量と、を前記操舵角を前記領域内に維持する量に設定する処理であり、
前記制限処理は、前記前方旋回経路において、前記あそび基本量の大きさが所定値以上の場合、進行方向前方における旋回方向とは逆方向の前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを、前記あそび基本量の大きさよりも小さい値に制限する処理を含む請求項2記載の操舵制御装置。
【請求項6】
前記制限処理は、現在の前記走行経路の曲率半径が直進閾値未満であって且つ進行方向前方の前記走行経路の曲率半径が前記直進閾値未満である継続旋回経路において、進行方向前方における旋回方向とは逆方向の前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを、現在の前記走行経路の曲率半径および進行方向前方の前記走行経路の曲率半径の双方が前記直進閾値以上である場合と比較して、小さい値に制限する処理を含む請求項1記載の操舵制御装置。
【請求項7】
前記制限処理は、進行方向前方における旋回方向とは逆方向への操舵がなされる継続時間が所定時間以上となる場合、前記小さい値への制限を解除する処理を含む請求項6記載の操舵制御装置。
【請求項8】
前記継続旋回経路において、現在の前記走行経路の曲率半径および進行方向前方の前記走行経路の曲率半径の双方が前記直進閾値以上である場合と比較して、進行方向前方における旋回方向とは逆方向の前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを小さい値に制限する処理は、現在の前記走行経路の旋回方向と進行方向前方の前記走行経路の旋回方向とが同一の場合の処理であり、
前記制限処理は、前記継続旋回経路において、進行方向前方における旋回方向とは逆方向の前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを、現在の前記走行経路の旋回方向と進行方向前方の前記走行経路の旋回方向とが同一の場合に、現在の前記走行経路の旋回方向と進行方向前方の前記走行経路の旋回方向とが異なる場合と比較して小さい側に制限する処理を含む請求項6記載の操舵制御装置。
【請求項9】
前記制限処理は、前記継続旋回経路において、進行方向前方における旋回方向とは逆方向への前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを進行方向前方の前記走行経路の曲率半径の減少率に応じて変更する処理であって且つ、前記減少率が大きい場合の前記あそび補償量の大きさを前記減少率が小さい場合の前記あそび補償量の大きさ以下とする処理を含む請求項6記載の操舵制御装置。
【請求項10】
前記舵角制御処理を自動操舵モードにおいて実行するように構成されて且つ、あそび変位算出処理、および基本量設定処理を実行するように構成され、
前記あそび変位算出処理は、前記操舵角の都度の変化に応じてあそび変位を算出する処理であり、
前記あそび変位は、前記操舵角の変化に対して前記転舵角が変化しない領域における位置を特定する量であり、
前記基本量設定処理は、前記自動操舵モードとなった時点における前記あそび変位に応じて、右操舵方向に応じたあそび基本量と、左操舵方向に応じたあそび基本量と、を前記操舵角を前記領域内に維持する量に設定する処理であり、
前記制限処理は、前記あそび補償量を、前記あそび基本量よりも小さい値に制限する処理である請求項1記載の操舵制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1には、操舵方向に応じて目標操舵角を補正する制御装置が記載されている。この装置では、操舵予定方向が右操舵方向の場合、目標操舵角を、右操舵方向の値であるあそび量だけ補正する。あそび量は、操舵角が変化しても転舵輪の転舵角が変化しない量の最大値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-68056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように操舵方向に応じて目標操舵角を補正する場合、車両の進行方向前方の車線の曲率半径が小さい場合、不都合が生じるおそれがある。すなわちたとえば、目標操舵角を右操舵方向の値であるあそび量だけ補正して間もなく、車線が左旋回する場合、車線への追従性が低下するおそれがある。またたとえば、目標操舵角を右操舵方向の値であるあそび量だけ補正して間もなく、車線が左旋回する場合、ステアリングホイールの変位量が大きくなり、運転者が違和感を抱くおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
1.操舵装置を制御対象とする操舵制御装置であって、前記操舵装置は、ステアリング軸と、前記ステアリング軸の回転に伴って転舵する車両の転舵輪と、前記ステアリング軸を回転させるモータと、を備え、目標舵角変数取得処理、走行経路情報取得処理、目標舵角補正処理、制限処理、および舵角制御処理を実行するように構成され、前記目標舵角変数取得処理は、目標舵角変数の値を取得する処理であり、前記目標舵角変数は、前記転舵輪の転舵角の目標値を示す変数であり、前記走行経路情報取得処理は、前記車両の走行経路の情報を取得する処理であり、前記目標舵角補正処理は、前記目標舵角変数の値をp操舵方向に応じたあそび補償量だけ補正する処理であり、前記操舵方向は、前記目標舵角変数の値が変化する方向であり、前記制限処理は、前記車両の現在の前記走行経路と進行方向前方の前記走行経路とに応じて前記あそび補償量の大きさを小さい側に制限する処理であり、前記舵角制御処理は、前記ステアリング軸の回転角度に応じた操舵角を制御量として且つ、前記目標舵角変数の値を前記制御量の目標値とする制御によって前記モータを操作する処理である操舵制御装置である。
【0006】
操舵方向の変化に応じてステアリング軸を回転させたとしても、ステアリング軸の回転に対して転舵角が変化しないあそび領域が存在する。そこで上記構成では、目標舵角変数の値を操舵方向に応じたあそび補償量にて補正する。これにより、目標舵角変数の値に対する転舵角の追従性を向上させることができる。
【0007】
ただし、現在の走行経路と、進行方向前方の走行経路とで、旋回方向が異なっている場合等においては、あそび補償量による補正量が大きいと、進行方向前方の走行経路に差し掛かった際に車線への追従性が低下するなどの不都合が生じうる。そこで上記構成では、現在の走行経路と進行方向前方の走行経路とに応じてあそび補償量の大きさを小さい側に制限する。これにより、あそび補償量の大きさが大きいことに起因して不都合が生じることを抑制できる。
【0008】
2.前記制限処理は、現在の前記走行経路の曲率半径が直進閾値以上であって且つ進行方向前方の前記走行経路の曲率半径が前記直進閾値未満である前方旋回経路において、現在の前記走行経路の曲率半径および進行方向前方の前記走行経路の曲率半径の双方が前記直進閾値以上である場合と比較して、進行方向前方における旋回方向とは逆方向の前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを小さい値に制限する処理を含む上記1記載の操舵制御装置である。
【0009】
現在の走行経路の曲率半径が直進閾値以上の場合には、直進閾値未満の場合と比較して、車両の進行方向を迅速に変化させる必要性が低い。一方、進行方向前方の走行経路の曲率半径が直進閾値未満の場合には、直進閾値以上の場合と比較して、進行方向前方においては車両の進行方向を迅速に変化させる必要性が高い。そのため、進行方向前方における旋回方向とは逆方向の操舵方向に応じたあそび補償量にて目標舵角変数の値を補正する場合、あそび補償量の大きさが大きい場合には、その後の操舵において不都合を生じるおそれがある。その点、上記構成では、そのあそび補償量の大きさを小さい値に制限することによって、不都合が生じることを抑制できる。
【0010】
3.前記制限処理は、前記前方旋回経路において、進行方向前方における旋回方向とは逆方向の前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを進行方向前方の前記走行経路の曲率半径に応じて変更する処理であって且つ、進行方向前方の前記走行経路の曲率半径が小さい場合の前記あそび補償量の大きさを進行方向前方の前記走行経路の曲率半径が大きい場合の前記あそび補償量の大きさ以下とする処理を含む上記2記載の操舵制御装置である。
【0011】
曲率半径が小さい場合には大きい場合と比較して、車両の進行方向を迅速に変化させる必要が生じる。そこで、上記構成では、進行方向前方の走行経路の曲率半径が小さい場合のあそび補償量の大きさを進行方向前方の走行経路の曲率半径が大きい場合のあそび補償量の大きさ以下とするように、曲率半径に応じてあそび補償量の大きさを変更する。そのため、上記構成では、曲率半径が小さい場合であっても、これに追従することが容易となる。
【0012】
4.前記制限処理は、前記前方旋回経路において、進行方向前方における旋回方向とは逆方向の前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを進行方向前方の前記走行経路の曲率半径の減少率に応じて変更する処理であって且つ、前記減少率が大きい場合の前記あそび補償量の大きさを前記減少率が小さい場合の前記あそび補償量の大きさ以下とする処理を含む上記2または3記載の操舵制御装置である。
【0013】
進行方向前方の走行経路の曲率半径の減少率が大きい場合には、同減少率が小さい場合と比較して、車両の進行方向を迅速に変化させる必要が生じる。そこで、上記構成では、進行方向前方の走行経路の曲率半径の減少率が小さい場合のあそび補償量の大きさを進行方向前方の走行経路の曲率半径の減少率が大きい場合のあそび補償量の大きさ以下とするように、曲率半径の減少率に応じてあそび補償量の大きさを変更する。そのため、上記構成では、曲率半径の減少率が大きい場合であっても、これに追従することが容易となる。
【0014】
5.前記舵角制御処理を自動操舵モードにおいて実行するように構成されて且つ、あそび変位算出処理、および基本量設定処理を実行するように構成され、前記あそび変位算出処理は、前記操舵角の都度の変化に応じてあそび変位を算出する処理であり、前記あそび変位は、前記操舵角の変化に対して前記転舵角が変化しない領域における位置を特定する量であり、前記基本量設定処理は、前記自動操舵モードとなった時点における前記あそび変位に応じて、右操舵方向に応じたあそび基本量と、左操舵方向に応じたあそび基本量と、を前記操舵角を前記領域内に維持する量に設定する処理であり、前記制限処理は、前記前方旋回経路において、前記あそび基本量の大きさが所定値以上の場合、進行方向前方における旋回方向とは逆方向の前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを、前記あそび基本量の大きさよりも小さい値に制限する処理を含む上記2~4のいずれか1つに記載の操舵制御装置である。
【0015】
目標舵角変数の値をあそび基本量の大きさを有したあそび補償量にて補正したとしても、あそび補償量に起因して転舵輪の転舵角が変化することはない。しかし、あそび基本量の大きさを有したあそび補償量を採用する場合には、前方旋回経路においては、走行方向前方の旋回経路において不都合が生じるおそれがある。そこで上記構成では、あそび補償量の大きさをあそび基本量の大きさよりも小さくする。これにより、前方の旋回経路において不都合が生じることを抑制できる。
【0016】
6.前記制限処理は、現在の前記走行経路の曲率半径が直進閾値未満であって且つ進行方向前方の前記走行経路の曲率半径が前記直進閾値未満である継続旋回経路において、進行方向前方における旋回方向とは逆方向の前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを、現在の前記走行経路の曲率半径および進行方向前方の前記走行経路の曲率半径の双方が前記直進閾値以上である場合と比較して、小さい値に制限する処理を含む上記1~5のいずれか1つに記載の操舵制御装置である。
【0017】
走行経路が継続的に一方向に曲がっているにもかかわらず、車線とは逆方向に操舵がなされる場合、車両の進行方向を迅速に変化させる必要性が低い傾向にある。そこで上記構成では、継続旋回経路における車線の旋回方向とは逆方向の操舵方向に応じたあそび補償量の大きさを小さい値に制限する。これにより、車線に沿った走行が困難となる事態を抑制できる。
【0018】
7.前記制限処理は、進行方向前方における旋回方向とは逆方向への操舵がなされる継続時間が所定時間以上となる場合、前記小さい値への制限を解除する処理を含む上記6記載の操舵制御装置。
【0019】
上記逆方向への操舵が継続される場合、逆方向への操舵要求が大きいと考えられる。そこで、上記構成では、そのような状況において、あそび補償量の大きさを小さい値に制限する処理を解除する。これにより、操舵要求に十分に応じることができる。
【0020】
8.前記継続旋回経路において、現在の前記走行経路の曲率半径および進行方向前方の前記走行経路の曲率半径の双方が前記直進閾値以上である場合と比較して、進行方向前方における旋回方向とは逆方向の前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを小さい値に制限する処理は、現在の前記走行経路の旋回方向と進行方向前方の前記走行経路の旋回方向とが同一の場合の処理であり、前記制限処理は、前記継続旋回経路において、進行方向前方における旋回方向とは逆方向の前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを、現在の前記走行経路の旋回方向と進行方向前方の前記走行経路の旋回方向とが同一の場合に、現在の前記走行経路の旋回方向と進行方向前方の前記走行経路の旋回方向とが異なる場合と比較して小さい側に制限する処理を含む上記6記載の操舵制御装置。
【0021】
現在の旋回方向と進行方向前方の旋回方向とが同一の場合には、進行方向前方の旋回方向とは逆側に車両の進行方向を迅速に変化させる必要性は高くない。これに対し、現在の旋回方向と進行方向前方の旋回方向とが逆の場合には、進行方向前方の旋回方向とは逆側に車両の進行方向を迅速に変化させる必要性は、現在の走行経路に追従させる必要性があることから高い。そのため、上記構成では、現在の旋回方向と進行方向前方の旋回方向とが同一の場合のあそび補償量の大きさを小さくする。これにより、現在の旋回方向と進行方向前方の旋回方向とが逆の場合には、現在の走行経路に十分に追従した走行が容易となる。
【0022】
9.前記制限処理は、前記継続旋回経路において、進行方向前方における旋回方向とは逆方向への前記操舵方向に応じた前記あそび補償量の大きさを進行方向前方の前記走行経路の曲率半径の減少率に応じて変更する処理であって且つ、前記減少率が大きい場合の前記あそび補償量の大きさを前記減少率が小さい場合の前記あそび補償量の大きさ以下とする処理を含む上記6~8のいずれか1つに記載の操舵制御装置である。
【0023】
走行経路の曲率半径の減少率が大きい場合には同減少率が小さい場合と比較して、車両の進行方向を迅速に変化させる要求が大きい。そのため、上記構成では、減少率が大きい場合にあそび補償量の大きさの制限を小さくすることにより、走行経路への追従性を高めることができる。
【0024】
10.前記舵角制御処理を自動操舵モードにおいて実行するように構成されて且つ、あそび変位算出処理、および基本量設定処理を実行するように構成され、前記あそび変位算出処理は、前記操舵角の都度の変化に応じてあそび変位を算出する処理であり、前記あそび変位は、前記操舵角の変化に対して前記転舵角が変化しない領域における位置を特定する量であり、前記基本量設定処理は、前記自動操舵モードとなった時点における前記あそび変位に応じて、右操舵方向に応じたあそび基本量と、左操舵方向に応じたあそび基本量と、を前記操舵角を前記領域内に維持する量に設定する処理であり、前記制限処理は、前記あそび補償量を、前記あそび基本量よりも小さい値に制限する処理である上記1~9のいずれか1つに記載の操舵制御装置である。
【0025】
操舵方向が変化する場合に目標舵角変数の値をあそび基本量の大きさを有したあそび補償量にて補正したとしても、あそび補償量に起因して転舵輪の転舵角が変化することはない。しかし、進行方向前方の旋回方向との整合性を欠く場合等には、あそび基本量の大きさを有したあそび補償量を採用する場合には、走行方向前方の走行経路において不都合が生じるおそれがある。そこで上記構成では、あそび補償量の大きさをあそび基本量の大きさよりも小さくする。これにより、前方の走行経路において不都合が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施形態にかかる操舵システムの構成を示すブロック図である。
図2】同実施形態にかかる操舵角と転舵角との関係を示す図である。
図3】同実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図である。
図4】同実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図である。
図5】同実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図である。
図6】同実施形態にかかるあそび補償量の制限を例示する図である。
図7】同実施形態にかかるあそび補償量の制限を例示する図である。
図8】第2の実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
「前提構成」
図1に示す操舵装置10は、ステアリングホイール12を備える。ステアリングホイール12には、ステアリング軸14が連結されている。ステアリング軸14のうちのステアリングホイール12とは逆側の端部は、ベベルギア部16の入力軸に連結されている。ベベルギア部16の出力軸は、動力伝達軸18を介して油圧パワーステアリング装置20の入力軸に連結されている。油圧パワーステアリング装置20のセクター軸は、ピットマンアーム22の一方の端部に連結されている。ピットマンアーム22のもう一方の端部は、ドラッグリンク24の一方の端部に連結されている。ドラッグリンク24のもう一方の端部は、ナックルアーム26の一方の端部に連結されている。ナックルアーム26のもう一方の端部は、右の転舵輪40(R)のキングピン軸28に連結されている。右の転舵輪40(R)のキングピン軸28と、左の転舵輪40(L)のキングピン軸28とは、タイロッドアーム30およびタイロッド32によって連結されている。
【0028】
モータ50の回転動力は、ステアリング軸14に伝達される。モータ50は、一例として、同期電動機である。モータ50の端子には、インバータ52の出力電圧が印加される。
【0029】
操舵制御装置60は、操舵装置10を制御対象とする。操舵制御装置60は、制御対象の制御のために、回転角センサ70によって検出されるモータ50の回転角度θmを参照する。また、操舵制御装置60は、モータ50の各端子を流れる電流iu,iv,iwを参照する。電流iu,iv,iwは、たとえばインバータ52の各レッグに設けられたシャント抵抗の電圧降下量として検出されてもよい。操舵制御装置60は、ネットワーク72を介して、車速センサ84によって検出される車速Vを参照する。
【0030】
操舵制御装置60は、ネットワーク72を介して上位ECU80と通信可能となっている。上位ECU80は、ステアリングホイール12の操作による操舵の指示とは独立に、車両の操舵に介入するための指令を生成する処理を実行する。換言すれば、上位ECU80は、自動操舵処理を実行する。上位ECU80は、自動操舵処理を実行するために、カメラ82によって撮影された車両の前方の画像データを取得する。また、上位ECU80は、インターフェース86を介して運転者によって入力された自動操舵処理の実行の可否の意思表示等を把握する。
【0031】
操舵制御装置60は、PU62および記憶装置64を備えている。PU62は、CPU、GPU、およびTPU等のソフトウェア処理装置である。記憶装置64は、電気的に書き換え不可能な不揮発性メモリであってもよい。また記憶装置64は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ、およびディスク媒体等の記憶媒体であってもよい。操舵制御装置60は、記憶装置64に記憶されたプログラムをPU62が実行することによって、制御対象を制御する処理を実行する。
【0032】
「操舵装置10の特性」
上述の操舵装置10は、複雑なリンク機構を有することに起因して、ステアリング軸14の回転に対して転舵輪40が回転しないいわゆるあそびが大きい。
【0033】
図2に、操舵角θhと転舵角θtとの関係を示す。ここで、操舵角θhは、ステアリング軸14の回転角度である。一方、転舵角θtは、転舵輪40に関するタイヤの切れ角である。また、図2に記載の中立位置Oは、操舵角θhおよび転舵角θtの双方がゼロである点である。これは、操舵角θhおよび転舵角θtの双方ともに直進方向を示すことを意味する。なお、以下では、右旋回方向の回転角を正として且つ、左旋回方向の回転角を負とする。
【0034】
図2に示すように、中立位置Oから操舵角θhを右旋回方向に変化させても点Aに到達するまでは、転舵角θtは変化しない。そして、操舵角θhが点Aよりさらに大きい値となると、転舵角θtが増加する。
【0035】
また、点Bにおいて操舵角θhを減少させても、転舵角θtは変化しない。換言すれば、点Bにおいて操舵方向を左側に切り替えても、転舵角θtは変化しない。なお、操舵方向とは、ステアリング軸14の回転速度が示す方向である。そして操舵角θhが点Cを超えてさらに小さい値となると、転舵角θtが減少する。換言すれば、操舵角θhが負の値であって、その絶対値を点Cを超えてさらに大きくすると、転舵角θtが減少する。
【0036】
そして、転舵角θtがゼロとなる点Dにおいて、操舵角θhは負の値となる。
点Eは、転舵角θtがゼロとなった後にも操舵角θhを左操舵方向にさらに変位させることによって得られた値である。操舵角θhを点Eにおいて増加させても、操舵角θhが点Fに到達するまでは転舵角θtは変化しない。操舵角θhが点Fを超えてさらに大きくなると、転舵角θtが増加する。
【0037】
このように、たとえば点Bに位置する場合、点Bと点Cとの間で操舵角θhが変化しても、転舵角θtは変化しない。またたとえば、点Eに位置する場合、点Eと点Fとの間で操舵角θhが変化しても、転舵角θtは変化しない。このように、操舵装置10のあそびに起因して、操舵角θhの変化に対して転舵角θtが変化しない領域が存在する。ただし、この領域は、操舵角θhの固定した値を有する領域ではなく、操舵角θhの変化の履歴によって変わり得る領域である。
【0038】
点Bから点Cへの操舵角θhの変位は、右旋回からの切り戻しにおいて生じる。また、点Eから点Fへの操舵角θhの変位は、左旋回からの切り戻しにおいて生じる。これらの切り戻し時における操舵角θhの変化に対して転舵角θtが変化しない領域の長さを、図2には、「α」と記載している。「α」は、記憶装置64に予め記憶されている。「α」は、たとえば、固定値であってもよい。またたとえば、「α」は、都度更新される値であってもよい。「α」の更新処理は、たとえば以下のようにして実行できる。
【0039】
1.PU62は、車両の停止時に、モータ50の回転角を制御してステアリング軸14を回転させる。
2.PU62は、モータ50の回転に対してモータ50に流れる電流が閾値を超える直前におけるモータ50の回転角によって、上記領域の端部を特定する。
【0040】
PU62は、上記「1」および「2」のモータ50の回転角の制御を、右回転および左回転の双方に行うことによって、「α」を推定する。PU62は、推定した「α」によって、記憶装置64に記憶した「α」を更新する。PU62は、たとえば、推定した「α」を、記憶装置64に記憶してもよい。またたとえば、PU52は、推定した「α」と、記憶装置64に記憶されていた「α」との加重平均処理値を、記憶装置64に新たに記憶してもよい。
【0041】
「あそび基本量の設定」
上記領域は、操舵角θhの変化に対する転舵角θtの変化の応答性を低下させる要因となる。そのため、本実施形態では、あそび補償量によって応答性の低下の抑制を図る。ここでは、まず、あそび補償量を算出するための基本となる量であるあそび基本量の設定について説明する。
【0042】
図3に、あそび基本量の設定に関する処理の手順を示す。図3に示す処理は、記憶装置64に記憶されたプログラムをPU62がたとえば所定周期で繰り返し実行することによって実現される。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって各処理のステップ番号を表現する。
【0043】
図3に示す一連の処理において、PU62は、操舵角θhを取得する(S10)。操舵角θhは、PU62によって回転角度θmの積算処理によって算出される。次にPU62は、あそび変位を算出するための変数Xを以下の式にて算出する(S12)。
【0044】
X←Δα(n-1)+(θh-θh(n-1))
上記の式において、「n-1」は、図3に示す一連の処理の実行タイミングの前回の実行タイミングにおける値であることを意味する。すなわち、「Δα(n-1)」は、図3に示す一連の処理の前回の実行タイミングにおけるあそび変位Δαであることを意味する。また、「θh(n-1)」は、図3に示す一連の処理の前回の実行タイミングにおけるS10の処理において取得された値であることを意味する。
【0045】
図2に、あそび変位Δαを例示する。図2には、中立位置Oから操舵角θhを右にあそび変位Δαだけ切ったことにより、操舵角θhが点Pの位置に達した状態を示している。図3に戻り、PU62は、変数Xの値が「-α/2」以上であって且つ「α/2」以下であるか否かを判定する(S14)。PU62は、S14の処理において肯定判定する場合、あそび変位Δαに、変数Xの値を代入する(S16)。
【0046】
一方、PU62は、S14の処理において否定判定する場合、変数Xの値が「α/2」よりも大きいか否かを判定する(S18)。PU62は、変数Xの値が「α/2」よりも大きいと判定する場合(S18:YES)、あそび変位Δαに、「α/2」を代入する(S20)。この処理は、たとえば図2において点Aを超えて操舵角θhが大きく右に切られた状況に対応する。その場合、あそび変位Δαは、操舵角θhの変化に対して転舵角θtが変化しない領域のうちの右操舵方向の端部に位置する。領域の長さが「α」であり、領域の中央を「0」と定義すると、上記領域のうちの右操舵方向の端部のあそび変位Δαは、「α/2」となる。
【0047】
一方、PU62は、S18の処理において否定判定する場合、あそび変位Δαに、「-α/2」を代入する(S22)。
PU62は、S16,S20,S22の処理を完了する場合、自動操舵モードに切り替わったか否かを判定する(S24)。自動操舵モードは、上述の自動操舵処理を実行するモードである。自動操舵モードにおいては、上位ECU80が操舵制御装置60に目標角θt*を出力する。目標角θt*は、転舵輪40の転舵角の目標値を示す変数である。ただし、目標角θt*の変化量は、図2に示した点Fおよび点B間、または点Cおよび点E間において、操舵角θhの変化量と等しくなるように定量化されている。
【0048】
PU62は、切り替わったと判定する場合(S24:YES)、右あそび基本量αR0および左あそび基本量αL0を設定する(S26)。すなわち、PU62は、右あそび基本量αR0に、「α/2-Δα」を代入する。また、PU62は、左あそび基本量αL0に、「-α/2-Δα」を代入する。
【0049】
自動操舵モードに切り替わった時点で、たとえば、あそび変位Δαが図2に示した点Pに位置する場合、目標角θt*の変化が右操舵方向であっても、操舵角θhが「α/2-Δα」だけ変化するまでは、転舵角は変化しない。そのため、目標角θt*の変化に対する転舵角の応答性を高める上では、目標角θt*の右操舵方向への変化に伴って、目標角θt*を開ループ制御によって、「α/2-Δα」だけ補正することが望ましい。そのため、PU62は、右あそび基本量αR0に「α/2-Δα」を代入する。また、あそび変位Δαが点Pに位置する場合、目標角θt*が左操舵方向に変化しても、操舵角θhが「-α/2-Δα」だけ変化するまでは、転舵角は変化しない。そのため、目標角θt*の変化に対する転舵角の応答性を高める上では、目標角θt*の左操舵方向への変化に伴って、目標角θt*を開ループ制御によって、「-α/2-Δα」だけ補正することが望ましい。そのため、PU62は、左あそび基本量αL0に「-α/2-Δα」を代入する。
【0050】
PU62は、S26の処理を完了する場合と、S24の処理において否定判定する場合と、には、図3に示した一連の処理を一旦終了する。
「自動操舵モードにおける転舵角の制御」
図4に、転舵角の制御に関する処理の手順を示す。図4に示す処理は、自動操舵モードにおいて、記憶装置64に記憶されたプログラムをPU62がたとえば所定周期で繰り返し実行することによって実現される。
【0051】
図4に示す一連の処理において、PU62は、まず上位ECU80が出力する目標角θt*を取得する(S30)。次にPU62は、目標角θt*の変化が正であるか否かを判定する(S32)。換言すれば、PU62は、目標角θt*の変化方向が、右操舵方向であるか否かを判定する。目標角θt*の変化方向が右操舵方向であることは、上位ECU80が目標角θt*を通じて右操舵を指示していることを意味する。図4には、図4にかかる一連の処理の1つ前の実行タイミングにおけるS30の処理によって取得した目標角θt*を、「θt*(n-1)」と記載している。
【0052】
PU62は、目標角θt*の変化が正であると判定する場合(S32:YES)、あそび補償量Δ0に、右あそび補償量αRを代入する(S34)。右あそび補償量αRは、右あそび基本量αR0に応じて後述の処理によって設定される。
【0053】
一方、PU62は、S32の処理において否定判定する場合、目標角θt*の変化が負であるか否かを判定する(S36)。換言すれば、PU62は、目標角θt*の変化方向が、左操舵方向であるか否かを判定する。PU62は、目標角θt*の変化が負であると判定する場合(S36:YES)、あそび補償量Δ0に、左あそび補償量αLを代入する(S38)。左あそび補償量αLは、左あそび基本量αL0に応じて後述の処理によって設定される。
【0054】
PU62は、S36の処理において否定判定する場合、あそび補償量Δ0に「0」を代入する(S40)。
PU62は、S34,S38,S40の処理を完了する場合、あそび補償量Δ0の変化速度の大きさを小さい側に制限するガード処理を施す(S42)。ガード処理後の値が、あそび補償量Δである。図4に示す一連の処理の前回の実行タイミングにおけるあそび補償量Δを、「Δ(n-1)」とすると、S42の処理の出力は、以下となる。
【0055】
(Δ0/|Δ0|)・MIN(Δth |Δ0-Δ(n-1)|)+Δ(n-1)
ここで、上限値Δthは、図4に示す処理の実行周期当たりのあそび補償量Δの変化量の大きさの最大値を規定する。
【0056】
次にPU62は、目標角θt*にあそび補償量Δを加算した値を、目標角θt*に代入する(S44)。次にPU62は、操舵角θhを取得する(S46)。そして、PU62は、操舵角θhを制御量として且つ、目標角θt*を制御量の目標値とするフィードバック制御の操作量を算出する(S48)。操作量は、モータ50のトルクであってもよい。次にPU62は、操作量に応じてモータ50を制御すべく、インバータ52に操作信号MSを出力する(S50)。これにより、たとえば操作量がモータ50のトルクの場合、モータ50のトルクが操作量となるように、インバータ52の出力電圧が操作される。この処理は、たとえば電流iu,iv,iwを入力として実行されてもよい。
【0057】
なお、PU62は、S50の処理を完了する場合、図4に示す一連の処理を一旦終了する。ちなみに、S30~S40の処理を実行する周期内に、S42~S50の処理を複数回実行するようにしてもよい。その場合、S42の処理の前回の実行タイミングにおけるあそび補償量Δを、「Δ(n-1)」とする。これにより、目標角θt*が変化しなくなる前にあそび補償量Δをあそび補償量Δ0に収束させる確実性を高めることができる。
【0058】
「あそび補償量の設定」
図5に、右あそび補償量αRおよび左あそび補償量αLの設定に関する処理の手順を示す。図5に示す処理は、記憶装置64に記憶されたプログラムをPU62がたとえば所定周期で繰り返し実行することによって実現される。
【0059】
図5に示す一連の処理において、PU62は、まず自動操舵モードであるか否かを判定する(S60)。PU62は、自動操舵モードであると判定する場合(S60:YES)、車速Vを取得する(S62)。次にPU62は、上位ECU80から、道路形状情報を取得する(S64)。道路経路情報は、上位ECU80によりカメラ82が撮影した画像から抽出された車線に関する情報である。次に、PU62は、現在走行中の車線の曲率半径Rを取得する(S66)。曲率半径Rは、PU62によって、走行経路情報を用いて算出される。また、PU62は、車両がt秒後に到達する時点における車線の曲率半径R(t)を取得する(S68)。t秒後の曲率半径R(t)は、PU62によって、走行経路情報および車速Vを用いて算出される。すなわち、t秒後に到達する時点は、車速Vに基づき予測される時点である。また、PU62は、曲率半径変化率ΔRを取得する(S70)。PU62は、t秒後の曲率半径R(t)から曲率半径Rを減算した値を曲率半径変化率ΔRに代入する処理を実行することによって、曲率半径変化率ΔRを取得する。
【0060】
次にPU62は、以下の条件(A)および条件(B)の論理積が真であるか否かを判定する(S72)。
条件(A):曲率半径Rが直進閾値Rd以上である旨の条件である。直進閾値Rdは、道路形状が直線または直線に準じた緩いカーブ形状である場合の曲率半径の下限値に基づき設定されている。
【0061】
条件(B):t秒後曲率半径R(t)が直進閾値Rd以上である旨の条件である。
PU62は、論理積が真であると判定する場合(S72:YES)、左あそび補償量αLに左あそび基本量αL0を代入して且つ、右あそび補償量αRに右あそび基本量αR0を代入する(S74)。この処理は、図4のS34,S38の処理におけるあそび補償量Δ0を、右あそび基本量αR0または左あそび基本量αL0とするための設定である。
【0062】
一方、PU62は、条件(A)および条件(B)の論理積が偽であると判定する場合(S72:NO)、条件(A)および条件(C)の論理積が真であるか否かを判定する。
条件(C):t秒後の走行経路が、曲率半径R(t)が直進閾値Rd未満である左旋回の経路である旨の条件である。
【0063】
PU62は、条件(A)および条件(C)の論理積が真であると判定する場合(S76:YES)、S78の処理に移行する。PU62は、S78の処理において、左あそび補償量αLに左あそび基本量αL0を代入して且つ右あそび補償量αRに右あそび基本量αR0に制限をかけた量を代入する。
【0064】
図6に、右あそび基本量αR0に制限をかける処理を示す。
図6に示すように、PU62は、t秒後の曲率半径R(t)に応じて補正係数K1を算出する。補正係数K1は、曲率半径R(t)が大きい場合には「1」となり、小さい場合には、「1」よりも小さくなる。たとえば、曲率半径R(t)が「1」となる最小の値は、直進閾値Rdよりも小さくてもよい。またたとえば、曲率半径R(t)が「1」となる最小の値は、直進閾値Rdと等しくてもよい。またたとえば、曲率半径R(t)が「1」となる最小の値は、直進閾値Rdよりも大きくてもよい。この処理は、記憶装置64にマップデータが記憶された状態で補正係数K1をマップ演算する処理としてもよい。マップデータは、曲率半径R(t)を入力変数として且つ、補正係数K1を出力変数とするデータである。
【0065】
なお、マップデータとは、入力変数の離散的な値と、入力変数の値のそれぞれに対応する出力変数の値と、の組データである。また、マップ演算は、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれかに一致する場合、対応するマップデータの出力変数の値を演算結果とする処理とすればよい。また、マップ演算は、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれにも一致しない場合、マップデータに含まれる複数の出力変数の値の補間によって得られる値を演算結果とする処理とすればよい。また、これに代えて、マップ演算は、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれにも一致しない場合、マップデータに含まれる複数の入力変数の値のうちの最も近い値に対応するマップデータの出力変数の値を演算結果とする処理としてもよい。
【0066】
また、PU62は、曲率半径変化率ΔRに応じて補正係数K2を算出する。PU62は、曲率半径変化率ΔRがゼロ以上の場合、補正係数K2を「1」とする。一方、PU62は、曲率半径変化率ΔRがゼロ未満の場合、曲率半径変化率ΔRに応じて補正係数K2を変更する。詳しくは、PU62は、曲率半径変化率ΔRが小さい場合の補正係数K2を、曲率半径変化率ΔRが大きい場合の補正係数K2以下とする。換言すれば、曲率半径Rの減少率が大きい場合の補正係数K2を、曲率半径Rの減少率が小さい場合の補正係数K2以下とする。この処理は、記憶装置64にマップデータが記憶された状態で補正係数K2をマップ演算する処理としてもよい。マップデータは、曲率半径変化率ΔRを入力変数として且つ、補正係数K2を出力変数とするデータである。
【0067】
PU62は、「K1・K2・αR0」を閾値αRth以下に制限する。すなわち、PU62は、「K1・K2・αR0」が閾値αRthを超える場合、右あそび補償量αRに、閾値αRthを代入する。
【0068】
図5に戻り、PU62は、条件(A)および条件(C)の論理積が偽であると判定する場合(S76:NO)、下記の条件(D)および条件(C)の論理積が真であるか否かを判定する(S80)。
【0069】
条件(D):現在の走行経路が、曲率半径Rが直進閾値Rd未満である左旋回の経路である旨の条件である。
S80の処理は、車両が現在からt秒後まで継続して左旋回のカーブを走行し続ける状況か否かを判定する処理である。PU62は、条件(D)および条件(C)の論理積が真であると判定する場合(S80:YES)、S82の処理に移行する。PU62は、S82の処理において、左あそび補償量αLに左あそび基本量αL0を代入して且つ、右あそび補償量αRに、右あそび基本量αR0の大きさを制限した量を代入する。
【0070】
図7に、右あそび補償量αRの大きさを制限する処理を示す。
図7に示すように、PU62は、曲率半径変化率ΔRが「0」以上の場合、右あそび補償量αRに右あそび基本量αR0を代入する。一方、PU62は、曲率半径変化率ΔRが「0」未満の場合、曲率半径変化率ΔRに応じて右あそび補償量αRの大きさを制限する。すなわち、PU62は、曲率半径変化率ΔRが小さい場合の右あそび補償量αRの大きさを曲率半径変化率ΔRが大きい場合の右あそび補償量αRの大きさ以下とする。換言すれば、PU62は、曲率半径Rの減少率が大きい場合の右あそび補償量αRの大きさを曲率半径Rの減少率が小さい場合の右あそび補償量αRの大きさ以下とする。この処理は、たとえば、記憶装置64にマップデータが記憶された状態でPU62によって右あそび補償量αRをマップ演算する処理としてもよい。たとえば、マップデータは、曲率半径変化率ΔRおよび右あそび基本量αR0を入力変数として且つ、右あそび補償量αRを出力変数とするデータであってもよい。
【0071】
図5に戻り、PU62は、条件(D)および条件(C)の論理積が偽であると判定する場合(S80:NO)、条件(D)および以下の条件(E)の論理積が真であるか否かを判定する(S84)。
【0072】
条件(E):t秒後の走行経路が、曲率半径Rが直進閾値Rd未満である右旋回の経路である旨の条件である。
PU62は、条件(D)および以下の条件(E)の論理積が真であると判定する場合(S84:YES)、S86の処理において、S74の処理と同等の処理を実行する。
【0073】
一方、PU62は、条件(D)および以下の条件(E)の論理積が偽であると判定する場合(S84:NO)、S76~S86の処理において、「左」を「右」に読み替えて且つ「右」を「左」に読み替えた処理を実行する。図5においては、紙面の都合上、これらの処理についての記載を省略している。
【0074】
なお、PU62は、S74,S78,S82,S86の処理を完了する場合等と、S60の処理において否定判定する場合と、には、図5に示した一連の処理を一旦終了する。
「本実施形態の作用および効果」
PU62は、自動操舵モードに切り替わった時点において、右あそび基本量αR0および左あそび基本量αL0を設定する。そして、目標角θt*が右操舵方向に変化する際に右あそび基本量αR0に応じた右あそび補償量αRに応じて目標角θt*を補正する。また、目標角θt*が左操舵方向に変化する際に左あそび基本量αL0に応じた左あそび補償量αLに応じて目標角θt*を補正する。ここで、右あそび補償量αRを右あそび基本量αR0として且つ、左あそび補償量αLを左あそび基本量αL0とするのであれば、操舵角θhを目標角θt*に制御することにより、転舵角を目標角θt*に応じて高精度に制御できる。
【0075】
ただし、たとえば車両が直進経路を走行中に操舵方向をわずかに右方向とする際に目標角θt*を右あそび基本量αR0にて補正した後、車両が左旋回のカーブ形状の路面を走行する場合、車線に沿った走行の制御性が低下するおそれがある。また、ステアリングホイール12の回転量が大きくなることに運転者が違和感を抱くおそれもある。
【0076】
そこで、PU62は、走行経路の現在の曲率半径Rとt秒後の曲率半径R(t)とに応じて、あそび補償量Δ0の大きさを小さい側に制限する。これにより、t秒後にカーブ形状の車線を走行する場合であっても、車線への追従性を高めることができる。また、t秒後に車線に従って車両を旋回させる際、ステアリングホイール12の回転量が過度に大きくなることを抑制できる。
【0077】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0078】
図8に、本実施形態にかかる右あそび補償量αRおよび左あそび補償量αLの設定に関する処理の手順を示す。図8に示す処理は、記憶装置64に記憶されたプログラムをPU62がたとえば所定周期で繰り返し実行することによって実現される。図8に示す処理において、図5に示す処理と同様の処理については、便宜上同一のステップ番号を付与する。
【0079】
図8に示す一連の処理において、PU62は、S80の処理において肯定判定する場合、カウンタCnをインクリメントする(S90)。カウンタCnは、S80の処理の継続時間を計時する用途を有する。PU62は、カウンタCnが閾値Cnth以上であるか否かを判定する(S92)。この処理は、右方向の操舵が車両の車線制御にとって適切であることを判定する処理である。PU62は、閾値Cnth未満であると判定する場合(S92:NO)、S82の処理に移行する。一方、PU62は、閾値Cnth以上であると判定する場合(S92:YES)、S94の処理に移行する。PU62は、S94の処理において、左あそび補償量αLに左あそび基本量αL0を代入して且つ、右あそび補償量αRに右あそび基本量αR0を代入する。
【0080】
なお、PU62は、S80,S82,S90,S92,S94の処理において、右を左に読み替えて且つ左を右に読み替えた処理をも実行する。そして、PU62は、S82,S94の処理およびそれらに対応する上記読み替えた処理を完了する場合には、図8に示す一連の処理を一旦終了する。一方、PU62は、S74の処理と、S78,S86の処理およびそれらにおいて上記読み替えを行った処理を実行した場合には、カウンタCnを初期化する(S96)。そして、PU62は、図8に示す一連の処理を一旦終了する。
【0081】
このように本実施形態では、走行経路の現在の旋回方向とt秒後の旋回方向とが異なる場合であって現在の旋回方向とは逆方向への操舵が継続される場合には、制限を解除する。これにより、操舵の意思を尊重することができる。
【0082】
<対応関係>
上記実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。[1]目標舵角変数取得処理は、S30の処理に対応する。走行経路情報取得処理は、S64の処理に対応する。目標舵角補正処理は、S44の処理に対応する。制限処理は、S78,S82の処理に対応する。舵角制御処理は、S48,S50の処理に対応する。[2]S78の処理に対応する。[3]図6におけるt秒後の曲率半径R(t)と「f(αR0)」との関係に対応する。[4]図6における曲率半径変化率ΔRと「f(αR0)」との関係に対応する。[5]あそび変位算出処理は、S10~S22の処理に対応する。基本量設定処理は、S24,S26の処理に対応する。制限処理は、図6において、右あそび基本量αR0が閾値Rthよりも大きい場合の処理に対応する。[6]S82の処理に対応する。[7]S92,S94の処理に対応する。[8]S86の処理において右あそび補償量αRを制限しないことに対応する。[9]図7の処理に対応する。[10]あそび変位算出処理は、S10~S22の処理に対応する。基本量設定処理は、S24,S26の処理に対応する。
【0083】
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0084】
「走行経路情報取得処理について」
・上記実施形態では、PU62は、上位ECU80から道路経路情報を受信した後、同情報に基づいて、現在の曲率半径Rおよびt秒後の曲率半径R(t)を取得したが、これに限らない。たとえば、PU62が、上位ECU80から現在の曲率半径Rおよびt秒後の曲率半径R(t)を受信することによって、PU62が、現在の曲率半径Rおよびt秒後の曲率半径R(t)を取得してもよい。
【0085】
「目標舵角変数について」
・目標舵角変数としては、転舵輪40の転舵角を、ステアリング軸14の回転角度に換算した値に限らない。たとえば転舵角自体としてもよい。その場合、S48の処理においては、操舵角θhを転舵角に換算した値を制御量として且つ、目標角を制御量の目標値とする処理を実行すればよい。
【0086】
「制限処理について」
(a)曲率半径Rが直進閾値Rd以上であって且つ曲率半径R(t)が直進閾値Rd未満の前方旋回経路に関する処理について
図6に例示した処理によって、右あそび補償量αRおよび左あそび補償量αLの大きさを制限する処理に限らない。たとえば、3次元の入力変数を有したマップデータを用いてもよい。すなわち、たとえば、右あそび基本量αR0、曲率半径R(t)、および曲率半径変化率ΔRを入力変数として且つ、右あそび補償量αRを出力変数とするマップデータを用いて、右あそび補償量αRをマップ演算してもよい。
【0087】
・3つの入力変数に応じて制限をかけることも必須ではない。たとえば、曲率半径R(t)を制限する処理のための入力変数としつつも、曲率半径変化率ΔRを制限する処理のための入力変数にしなくてもよい。またたとえば、曲率半径変化率ΔRを制限する処理のための入力変数としつつも、曲率半径R(t)を制限する処理のための入力変数にしなくてもよい。
【0088】
(b)曲率半径Rが直進閾値Rd未満であって且つ曲率半径R(t)が直進閾値Rd未満である継続旋回経路に関する処理について
図7においては、曲率半径変化率ΔRが「0」以上の場合、右あそび補償量αRを右あそび基本量αR0としたが、これに限らない。曲率半径変化率ΔRが「0」以上であっても、右あそび補償量αRを右あそび基本量αR0よりも小さい値に制限してもよい。
【0089】
図7に例示した処理によって、右あそび補償量αRおよび左あそび補償量αLの大きさを制限する処理に限らない。たとえば、曲率半径変化率ΔRに応じて補正係数K3を演算する処理を含む処理としてもよい。すなわち、たとえば、PU62は、右あそび基本量αR0に補正係数K3を乗算した値を、右あそび補償量αRに代入してもよい。またたとえば、PU62は、右あそび基本量αR0に補正係数K3を乗算した値に所定のガード処理を施した値を、右あそび補償量αRに代入してもよい。ここで、ガード処理は、たとえば、右あそび基本量αR0に補正係数K3を乗算した値の大きさを所定値以下に制限する処理とすればよい。
【0090】
・たとえば、曲率半径Rを、制限する処理の入力にさらに含めてもよい。すなわち、たとえば、右あそび基本量αR0、曲率半径R(t)および曲率半径変化率ΔRに応じて右あそび補償量αRを算出してもよい。
【0091】
・たとえば、S82の処理等において、曲率半径変化率ΔRおよび曲率半径R(t)を参照しなくてもよい。すなわち、たとえば、右あそび補償量αRの大きさを所定値以下に制限する処理としてもよい。
【0092】
(c)そのほか
・たとえば、目標角θt*が変化しなくなった時点で、あそび補償量Δがあそび補償量Δ0に到達していない場合、あそび補償量Δがあそび補償量Δ0に到達するまではあそび補償量Δを変化させてもよい。これは、たとえば、目標角θt*が右操舵方向に変化している状態から変化しなくなった状態に移行した場合に、あそび補償量Δを右あそび補償量αRまで変化させることを意味する。
【0093】
・S42の処理においては、あそび補償量Δの変化量を、定数である上限値Δth以下に制限したが、これに限らない。たとえば、上限値Δthを、目標角θt*の変化速度に応じて変更してもよい。その場合、PU62は、たとえば、変化速度の大きさが大きい場合の上限値Δthを、変化速度の大きさが小さい場合の上限値Δth以上となるようにすればよい。
【0094】
・あそび補償量Δの変化量の大きさを制限することは必須ではない。たとえば、あそび補償量Δを、右あそび補償量αR、左あそび補償量αL、および0の3つの値の何れかを取る量としてもよい。
【0095】
「自動操舵モードについて」
・上記実施形態では、運転者によるステアリングホイール12の操作がなされない状態において、上位ECU80が操舵を実行する処理を想定した。しかし、自動操舵モードにおいて実行される自動操舵処理は、こうした処理に限らない。たとえば、運転者がステアリングホイール12を操作しているときに、車両が車線を逸脱しそうになる場合に、上位ECU80が操舵に介入する処理であってもよい。またたとえば、運転者がステアリングホイール12を操作しているときに、車両が障害物に接触しそうになる場合に、上位ECU80が操舵に介入する処理であってもよい。
【0096】
「舵角制御処理について」
・舵角制御処理が、操舵角θhを制御量として且つ目標角θt*を制御量の目標値とするフィードバック制御の操作量を算出する処理を含むことは必須ではない。たとえば、操舵角θhを制御量として且つ目標角θt*を制御量の目標値とする開ループ制御の操作量を算出する処理を含んでもよい。またたとえば、フィードバック制御の操作量と開ループ制御の操作量との双方を算出する処理を含んでもよい。
【0097】
「操舵制御装置について」
・操舵制御装置としては、上位ECU80が設定した目標角θt*を取得する装置に限らない。たとえば、操舵制御装置60と上位ECU80とを一体化した装置としてもよい。
【0098】
・操舵制御装置60としては、PU62と記憶装置64とを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態においてソフトウェア処理されたものの少なくとも一部を、ハードウェア処理する専用のハードウェア回路(たとえばASIC等)を備えてもよい。すなわち、操舵制御装置は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するROM等のプログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア処理回路や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。すなわち、上記処理は、1または複数のソフトウェア処理回路および1または複数の専用のハードウェア回路の少なくとも一方を備えた処理回路によって実行されればよい。
【符号の説明】
【0099】
10…操舵装置
12…ステアリングホイール
14…ステアリング軸
16…ベベルギア部
18…動力伝達軸
20…油圧パワーステアリング装置
22…ピットマンアーム
24…ドラッグリンク
26…ナックルアーム
28…キングピン軸
30…タイロッドアーム
32…タイロッド
40…転舵輪
50…モータ
52…インバータ
60…操舵制御装置
80…上位ECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8