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特開2024-72650バッテリ温調方法及びバッテリ温調装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072650
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】バッテリ温調方法及びバッテリ温調装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/27 20190101AFI20240521BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240521BHJP
   B60L 53/10 20190101ALI20240521BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20240521BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20240521BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240521BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240521BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240521BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240521BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20240521BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240521BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240521BHJP
【FI】
B60L58/27
B60L50/60
B60L53/10
B60L58/26
H02J7/10 L
H02J7/00 P
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/6556
H01M10/6568
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183608
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 邦和
【テーマコード(参考)】
5G503
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA10
5G503CB11
5G503DA08
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC13
5H125BC19
5H125DD02
5H125EE25
5H125EE27
5H125EE41
(57)【要約】
【課題】車両ユーザが負う充電電力量の負担を抑制する。
【解決手段】
電動車両に搭載されるバッテリ34に対する外部充電の実行要求を示す外部充電要求信号Sを受信すると、バッテリ34を暖機又は冷却するプレ温調制御(S600)を実行するか否かを判定する第1温調判定(S400)を行い、第1温調判定の結果が肯定的であると、プレ温調制御を実行する。特に、第1温調判定では、プレ温調制御の実行による充電電力量の増加分を示唆する充電ゲイン量Gを演算し(S401)、プレ温調制御の実行により消費される電力量を示唆する温調消費電力量ΔEb_temcを演算し、充電ゲイン量Gが温調消費電力量ΔEtemcを超える場合にプレ温調制御を実行すべきと判断する(S403、S404)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両に搭載されるバッテリに対する外部充電の実行要求を示す外部充電要求信号を受信すると、前記バッテリを暖機又は冷却するプレ温調制御を実行するか否かを判定する第1温調判定を行い、
前記第1温調判定の結果が肯定的であると、前記プレ温調制御を実行し、
前記第1温調判定では、
前記プレ温調制御の実行による充電電力量の増加分を示唆する充電ゲイン量を演算し、
前記プレ温調制御の実行により消費される電力量を示唆する温調消費電力量を演算し、
前記充電ゲイン量が前記温調消費電力量を超える場合に前記プレ温調制御を実行すべきと判断する、
バッテリ温調方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリ温調方法であって、
前記外部充電要求信号を取得すると、前記第1温調判定を実行するか否か判定する予備判定をさらに実行し、
前記予備判定の結果が肯定的であると、前記第1温調判定を実行し、
前記予備判定では、
充電時にバッテリ温度が到達すべき充電目標温度を演算し、
充電時の推定バッテリ温度である充電時推定温度を演算し、
前記充電時推定温度と前記充電目標温度の差として与えられる推定温度差を演算し、
前記推定温度差が所定の閾値温度差を超えると、前記第1温調判定を実行すべきと判断する、
バッテリ温調方法。
【請求項3】
請求項2に記載のバッテリ温調方法であって、
前記第1温調判定では、
前記充電時推定温度に基づいて、前記プレ温調制御を実行しないと仮定した場合の推定充電電力量である第1推定充電電力量を演算し、
前記充電目標温度に基づいて、前記プレ温調制御を実行すると仮定した場合の推定充電電力量である第2推定充電電力量を演算し、
前記第1推定充電電力量と前記第2推定充電電力量の差に基づいて、前記充電ゲイン量を演算する、
バッテリ温調方法。
【請求項4】
請求項2に記載のバッテリ温調方法であって、
前記プレ温調制御の実行中に、該プレ温調制御を終了するか否か判定する終了判定を実行し、
前記終了判定の結果が肯定的であると、前記プレ温調制御を終了し、
前記終了判定では、
前記推定温度差が前記閾値温度差を下回るか、前記充電ゲイン量が前記温調消費電力量を下回ると、前記プレ温調制御を終了すべきと判断する、
バッテリ温調方法。
【請求項5】
請求項3に記載のバッテリ温調方法であって、
前記プレ温調制御では、
前記充電時推定温度が前記充電目標温度よりも低い場合には、前記バッテリを暖機し、
前記充電時推定温度が前記充電目標温度よりも高い場合には、前記バッテリを冷却する、
バッテリ温調方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のバッテリ温調方法であって、
前記外部充電要求信号を取得するとさらに、前記第1温調判定とは別に前記プレ温調制御を実行するか否か判定する第2温調判定を行い、
前記第1温調判定及び前記第2温調判定の双方の判定結果が肯定的である場合に、前記プレ温調制御を実行し、
前記第2温調判定では、
前記プレ温調制御の開始から終了までに要する時間として定まる温調必要時間を演算し、
前記電動車両の現在地から前記外部充電を行う充電設備までに要する移動時間を取得し、
前記温調必要時間が前記移動時間を超えると、前記プレ温調制御を実行すべきと判断する、
バッテリ温調方法。
【請求項7】
電動車両に搭載されるバッテリに対する外部充電の実行要求を示す外部充電要求信号を受信すると、前記バッテリを暖機又は冷却するプレ温調制御を実行するか否かを判定する第1温調判定部と、
判定結果が肯定的であると、前記プレ温調制御を実行するプレ温調制御部と、を有し、
前記第1温調判定部は、
前記プレ温調制御の実行による充電電力の増加分を示唆する充電ゲイン量を演算し、
前記プレ温調制御の実行により消費される電力量を示唆する温調消費電力量を演算し、
前記充電ゲイン量が前記温調消費電力量を超える場合に前記プレ温調制御を実行すべきと判断する、
バッテリ温調装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ温調方法及びバッテリ温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車載のバッテリを充電設備で充電するにあたり、事前にバッテリを冷却又は暖機してバッテリ温度を調節する制御(プレ温調制御)を行うバッテリ温調装置が開示されている。特に、特許文献1のバッテリ温調装置では、電動車両の走行中にバッテリの充電状態(SOC)に基づいてバッテリの充電が必要であると判断された場合に、当該判断の時点から次の充電地点に到達するのに要する時間の間、バッテリ温度を目標温度に近づけるようにプレ温調制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5517644号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレ温調制御の実行にあたり、目標温度を適切に定めることで、プレ温調制御を実行しない場合に比べて得られる充電電力量を増加させることができる。しかしながら、電動車両の走行シーンによっては、プレ温調制御の実行による充電電力量の増加分を、当該プレ温調制御により消費される電力量が上回ることがある。このため、外部充電時において車両ユーザが負う実質的な充電電力量の負担が増大するという問題がある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、車両ユーザが負う充電電力量の負担を抑制することのできるバッテリ温調方法及びバッテリ温調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、電動車両に搭載されるバッテリに対する外部充電の実行要求を示す外部充電要求信号を受信すると、バッテリを暖機又は冷却するプレ温調制御を実行するか否かを判定する第1温調判定を行い、第1温調判定の結果が肯定的であると、プレ温調制御を実行する。
【0007】
特に、第1温調判定では、プレ温調制御の実行による充電電力量の増加分を示唆する充電ゲイン量を演算し、プレ温調制御の実行により消費される電力量を示唆する温調消費電力量を演算し、充電ゲイン量が温調消費電力量を超える場合にプレ温調制御を実行すべきと判断する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両ユーザが負う充電電力量の負担を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の各実施形態に共通する車両システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、バッテリに対する温調を実行するための車載冷却システムの構成を示す図である。
図3図3は、第1実施形態によるバッテリ温調方法における全体処理を示すフローチャートである。
図4A図4Aは、予備判定の詳細を説明するフローチャートである。
図4B図4Bは、予備判定部の詳細構成を示すブロック図である。
図5A図5Aは、第1温調判定の詳細を説明するフローチャートである。
図5B図5Bは、第1温調判定部の詳細構成を示すブロック図である。
図6図6は、プレ温調制御の詳細を説明するフローチャートである。
図7図7は、終了判定の詳細を説明するフローチャートである。
図8図8は、第1実施形態のバッテリ温調方法による制御結果の一例を示すタイミングチャートである。
図9図9は、第2実施形態によるバッテリ温調方法における全体処理を示すフローチャートである。
図10A図10Aは、第2温調判定の詳細を説明するフローチャートである。
図10B図10Bは、第2温調判定部の詳細構成を示すブロック図である。
図11図11は、第2実施形態のバッテリ温調方法による制御結果の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
【0011】
[前提構成]
図1は、後述の各実施形態に共通する車両システム1の構成を示すブロック図である。なお、図1に示す車両システム1は、電動車両に搭載される。また、本明細書における電動車両の概念には、電動機(モータ)を走行駆動源として車両を駆動させる電気自動車(EV)又はハイブリッド車両(HEV)が含まれる。
【0012】
より具体的に、車両システム1は、主として、センサ類10と、ナビシステム20と、バッテリ34が配置される温調システム30と、コントローラ50と、により構成されている。
【0013】
センサ類10は、走行中及び停車中を含む電動車両の車両状況を示唆する各パラメータを検出する。特に、本実施形態のセンサ類10には、バッテリ温度センサ12、及び充電状態センサ14が含まれる。バッテリ温度センサ12は、現在のバッテリ温度T(以下、「現在バッテリ温度TB_c」と称する)を検出して、コントローラ50に出力する。また、充電状態センサ14は、現在のバッテリ34の充電率(以下、「現在SOC_c」と称する)を検出して、コントローラ50に出力する。
【0014】
ナビシステム20は、電動車両のユーザ(以下、「車両ユーザ」と称する)の入力操作に応じて外部充電要求信号Sを生成する。また、ナビシステム20は、車両ユーザが指定した充電設備における外部充電器の出力に関する情報(充電器出力P)を取得する。なお、充電器出力Pは、外部充電器に定められる定格充電電力などに応じて定まるパラメータである。さらに、ナビシステム20は、現在地から充電設備までの予測移動時間Δttraを、電動車両の平均車速及び走行経路などから演算する。そして、ナビシステム20は、外部充電要求信号S、充電器出力P、及び予測移動時間Δttraをコントローラ50に出力する。
【0015】
コントローラ50は、センサ類10で得られる各種検出信号(特に、現在バッテリ温度TB_c及び現在SOC_c等)、及びナビシステム20からの各種信号(特に、外部充電要求信号S、充電器出力P、及び予測移動時間Δttra等)を入力として、温調システム30を制御する。コントローラ50は、例えば、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等からなり、後述する各実施形態において規定される処理を実行するようにプログラムされたコンピュータにより構成される。特に、コントローラ50の機能は、電動車両の各部を統括的に制御する車両コントローラ(VCM)などにより実現することができる。
【0016】
より詳細には、コントローラ50は、温調判定部51と、プレ温調制御部55と、終了判定部56と、を含む。
【0017】
温調判定部51は、各種入力情報に基づいて、プレ温調制御を実行すべきか否かの判定を行う。特に、温調判定部51は、予備判定部52と、第1温調判定部53と、第2温調判定部54と、を備える。プレ温調制御部55は、温調判定部51における判定結果に応じて、温調システム30におけるバッテリ34に対する暖機又は冷却を行う。終了判定部56は、プレ温調制御の実行中において当該プレ温調制御を終了させるか否かの判定を行う。なお、温調判定部51、プレ温調制御部55、及び終了判定部56における処理の詳細については後述する。
【0018】
温調システム30は、電動機ユニット32及びバッテリ34等の車載の温調対象装置と、当該温調対象装置に対して温調操作(暖機又は冷却)を行うための温調アクチュエータ36と、を含む。
【0019】
図2は、温調システム30の構成を説明する図である。図示のように、本実施形態の温調システム30は、温調対象装置である電動機ユニット32及びバッテリ34が共通の冷却回路Cに配置されている。
【0020】
電動機ユニット32は、主として、電動車両における走行駆動源として機能するモータ321と、当該モータ321に供給する電力を調節するインバータ322と、により構成される。
【0021】
バッテリ34は、インバータ322を介してモータ321に電気的に接続され、力行時に放電してモータ321に駆動電力を供給する一方、回生時にモータ321から回生電力を受けて充電される。
【0022】
また、温調システム30は、温調アクチュエータ36として、チラー301と、冷却水ポンプ302-1,302-2と、バルブ303-1~303-4と、PTCヒータ304と、ラジエータ305と、を有している。
【0023】
チラー301は、図示しない空調機熱交換回路(空調用コンデンサ等)に供給する液体冷媒と冷却回路Cの冷却水との熱交換を行う機器である。
【0024】
冷却水ポンプ302-1,302-2は、冷却回路C内における冷却水の流量を調節する。
【0025】
各バルブ303-1~303-4は、チラー301、ラジエータ305、電動機ユニット32、及びバッテリ34の間の冷却水の流路を切り替える。
【0026】
PTCヒータ304は、冷却水(特にバッテリ34に流入する冷却水)を加熱する。ラジエータ305は、冷却回路Cの冷却水の保有熱を外気との熱交換により放熱する。
【0027】
なお、温調システム30では、プレ温調制御におけるバッテリ34の暖機を、PTCヒータ304を作動させることで実行することができる、また、プレ温調制御におけるバッテリ34の冷却を、各バルブ303-1~303-4を個別に操作することでラジエータ305により放熱された冷却水のバッテリ34への流入量を調節するか、或いはチラー301の作動(特に、コンプレッサの出力調節)により実行することができる。
【0028】
以下、各実施形態によるバッテリ温調方法の詳細について説明する。
【0029】
[第1実施形態]
図3は、第1実施形態によるバッテリ温調方法における全体処理を示すフローチャートである。なお、図3に示す各処理は、コントローラ50の各部により所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0030】
図示のように、本実施形態のバッテリ温調方法では、外部充電要求信号Sを受信すると(S100)、予備判定(S200)を実行する。ここで、予備判定とは、後述する第1温調判定を実行する前に、予備的にプレ温調制御を実行すべき状況をスクリーニングするための所定である。以下、予備判定の詳細を説明する。
【0031】
(予備判定)
図4Aは、予備判定の詳細を説明するフローチャートである。また、図4Bは、予備判定部52の詳細構成を示すブロック図である。
【0032】
図示のように、予備判定では、先ず、現在SOC_cを入力として、充電時SOC_esを演算する(S201、推定充電状態演算部521)。なお、充電時SOC_esは、プレ温調制御の実行による消費電力を考慮せずに、現在地から目的となる充電設備までの走行による消費電力量を加味した充電時(充電設備への到着時)におけるバッテリSOCの推定値である。充電時SOC_esは、例えば、電動車両の現在地から目的となる充電設備までの走行経路における走行距離及び推定平均車速などから走行消費電力量を演算し、現在SOC_cから当該走行消費電力量分相当のSOCを減算して求めることができる。なお、上記ナビシステム20において充電時SOC_esを演算し、コントローラ50がこれを取得する構成を採用しても良い。
【0033】
次に、演算した充電時SOC_es及び充電器出力Pに基づいて、予めメモリに記憶された目標温度マップを参照して、充電目標温度TB_tを演算する(S202、充電目標温度演算部522)。
【0034】
ここで、充電目標温度TB_tは、外部充電器によるバッテリ34への充電(特に急速充電)を実行する際の電析を回避しつつ、好ましい充電効率(充電速度)を実現するための充電時におけるバッテリ温度Tの目標値である。
【0035】
次に、現在バッテリ温度TB_cを入力とし、充電時推定温度TB_esを演算する(S203、充電時推定温度演算部523)。
【0036】
ここで、充電時推定温度TB_esは、電動車両が充電設備に到着して外部充電器によるバッテリ34への充電を開始するときのバッテリ温度Tの推定値である。
【0037】
充電時推定温度TB_esは、例えば、現在バッテリ温度TB_cに、走行消費電力量に応じたバッテリ温度Tの推定上昇分を加算することで演算される。特に、この推定上昇分は、走行消費電力量に既知の発熱損失係数Klossを乗じて走行過程におけるバッテリ総発熱量Qを求め、このバッテリ総発熱量Qを既知のバッテリ熱容量で除算して求めることができる。なお、充電時推定温度TB_esを、バッテリ34に対する基本的な温調制御により維持されるバッテリ温度範囲の上限値及び下限値を考慮して、充電時推定温度TB_esを定めても良い。より詳細には、現在バッテリ温度TB_cに上記推定上昇分を加算して定まる充電時推定温度TB_esの基本演算値がバッテリ温度範囲の上限値を超える場合には、当該基本演算値をこの上限値に置き換えて充電時推定温度TB_esとしても良い。また、充電時推定温度TB_esの基本演算値がバッテリ温度範囲の下限値を下回る場合には、当該基本演算値をこの下限値に置き換えて充電時推定温度TB_esとしても良い。
【0038】
次に、演算した充電目標温度TB_tから充電時推定温度TB_esを減算して推定温度差ΔTB_t-esを求める(減算器524)。
【0039】
そして、求めた推定温度差ΔTB_t-esを予めメモリに記憶させた閾値温度差Aと比較する(S204)。さらに、推定温度差ΔTB_t-esが閾値温度差Aを超える場合には予備判定フラグfをONに設定し、そうでない場合には予備判定フラグfをOFFに設定する(S205、S206、予備判定フラグ設定部525)。
【0040】
ここで、閾値温度差Aは、プレ温調制御を実行することで実質的な充電電力量の増加を得られる状況に至るシーンをスクリーニングする観点から適切な値に定められる。すなわち、閾値温度差Aは、後述する第1温調判定を実行するまでもなくプレ温調制御を実行する意義が無い状況を判断するための指標となる。
【0041】
図3に戻り、予備判定において予備判定フラグfをOFFに設定した場合(S300のNo)には本ルーチンを終了し、ONに設定した場合(S300のYes)には第1温調判定(S400)に移行する。以下、第1温調判定の詳細を説明する。
【0042】
(第1温調判定)
図5Aは、第1温調判定の詳細を説明するフローチャートである。また、図5Bは、第1温調判定部53の詳細構成を示すブロック図である。
【0043】
図示のように、第1温調判定では、充電器出力P、充電目標温度TB_t、充電時SOC_es、及び予備判定の際に求められた充電時推定温度TB_esを入力とし、充電ゲイン量Gを演算する(S401、充電ゲイン量演算部531)。
【0044】
ここで、充電ゲイン量Gとは、プレ温調制御の実行により得られる外部充電時の充電電力量の増加分を示唆するパラメータである。より詳細には、プレ温調制御を実行するとバッテリ温度Tが適正値となるため、これを実行しない場合に比べて充電効率が高くなり、1回の充電あたりで得られる充電電力量が増大する。充電ゲイン量Gは、この充電電力量の増大分を定量化した値として定める。
【0045】
より具体的に、充電ゲイン量Gは、次のように演算される。先ず、充電器出力P、充電時推定温度TB_es、及び充電時SOC_esを入力として、予めメモリに記憶された第1充電量マップ531aを参照することで、プレ温調制御を実行しないと仮定した場合の充電電力量を示唆する第1推定充電電力量ΔEb_es1を演算する。また、充電器出力P、充電目標温度TB_t及び充電時SOC_esを入力として、予めメモリに記憶された第1充電量マップ531bを参照することで、プレ温調制御を実行すると仮定した場合の充電電力量を示唆する第2推定充電電力量ΔEb_es2を演算する。そして、第2推定充電電力量ΔEb_es2から第1推定充電電力量ΔEb_es1を減算することで、充電ゲイン量Gを定めることができる(減算部531c)。
【0046】
また、第1温調判定では、温調消費電力Wtemc及び温調実行時間Δttemcを入力として、温調消費電力量ΔEtemcを演算する(S402、温調消費電力量演算部532)。
【0047】
なお、演算に用いる温調消費電力Wtemcは、プレ温調制御時において温調アクチュエータ36の作動に要する電力を示唆するパラメータである。また、温調実行時間Δttemcはプレ温調制御が継続する時間を示唆するパラメータである。なお、温調消費電力Wtemc及び温調実行時間Δttemcは、後述するプレ温調制御(S600)における演算結果のフィードバック値を用いることができる。
【0048】
次に、演算した充電ゲイン量G及び温調消費電力量ΔEtemcの大小を比較する。そして、充電ゲイン量Gが温調消費電力量ΔEtemcより大きい場合には第1温調判定フラグfをONに設定し、そうでない場合には第1温調判定フラグfをOFFに設定する(S403、S404、S405、減算器533、第1温調判定フラグ設定部534)。
【0049】
図3に戻り、第1温調判定において第1温調判定フラグfをOFFに設定した場合(S500のNo)には本ルーチンを終了し、ONに設定した場合(S500のYes)にはプレ温調制御(S600)に移行する。
【0050】
(プレ温調制御)
図6は、プレ温調制御の詳細を説明するフローチャートである。
【0051】
図示のように、プレ温調制御では、充電目標温度TB_tと充電時推定温度TB_esの大小を比較する(S601)。
【0052】
そして、充電目標温度TB_tが充電時推定温度TB_esよりも小さい場合には、PTCヒータ304を作動してバッテリ34を暖機する(S603)。
【0053】
一方、充電目標温度TB_tが充電時推定温度TB_esよりも大きい場合には、さらに、チラー301により冷却が必要であるか否かを判定する(S602)。より具体的には、例えば現在バッテリ温度TB_cと外気温度との温度差が所定閾値以下である場合(ラジエータ305によって十分な冷却量が確保できない場合)には、チラー301を作動させると判断する。一方、上記温度差が所定閾値を超える場合(ラジエータ305によって十分な冷却量が確保できる場合)には、ラジエータ305による冷却を行う(チラー301を作動させない)。
【0054】
そして、S602の判定結果が肯定的である場合には、チラー301を作動させてバッテリ34を冷却する(S604)。一方、S602の判定結果が否定的である場合には、ラジエータ305によりバッテリ34を冷却する(S605)。
【0055】
その後、バッテリ34に対する暖機又は冷却に応じた温調消費電力量ΔEtemcを演算して(S606)、第1温調判定へフィードバックする。より詳細には、温調消費電力量ΔEtemcは、要求される温調量(必要温調量)及び各温調アクチュエータ36の暖機/冷却性能に基づいて、温調に要する時間(以下、「温調必要時間Δtreq」とも称する)を求め、温調必要時間Δtreqに各温調アクチュエータ36の消費電力を乗じることで得られる。また、温調量は、充電目標温度TB_tと充電時推定温度TB_esの差に基づいて推定することができる。特に、暖機時の温調消費電力量ΔEtemcは、PTCヒータ304の出力に基づいて定めることができる。また、冷却時の温調消費電力量ΔEtemcは、冷却にチラー301を用いる場合には当該チラー301のコンプレッサの消費電力などに基づいて定め、ラジエータ305を用いる場合には冷却水ポンプ302-1,302-2の消費電力などに基づいて定めることができる。
【0056】
図3に戻り、プレ温調制御の実行中に終了判定(S700)を行う。
【0057】
(終了判定)
図7は、終了判定の詳細を説明するフローチャートである。
【0058】
図示のように、終了判定では、予備判定部52で演算される推定温度差ΔTB_t-esが閾値温度差A以上であるか、及び充電ゲイン量Gが温調消費電力量ΔEtemc以上であるかの判定がそれぞれ行われる(S701,S702)。
【0059】
そして、各判定結果が何れも肯定的である場合には、終了判定フラグfをOFFに設定する(S703)。一方、各判定結果の何れかが否定的である場合には、終了判定フラグfをONに設定する(S703)。
【0060】
図3に戻り、終了判定において終了判定フラグfをONに設定した場合(S800のYes)には、プレ温調制御を終了する(S900)。一方、終了判定フラグfをOFFに設定した場合(S800のNo)にはプレ温調制御(S600)を継続する。
【0061】
以上説明した本実施形態のバッテリ温調方法による制御結果について説明する。
【0062】
図8は、本実施形態のバッテリ温調方法による制御結果の一例を示すタイミングチャートである。なお、図8では、プレ温調制御として、バッテリ温度Tを充電目標温度TB_tまで下げるための冷却シーンを想定する。
【0063】
図示のように、外部充電要求信号Sを受信する時刻t1で予備判定(S200)が開始される。ここで、予備判定中は、プレ温調制御は実行されていない。このため、理論的には、予備判定中に演算される充電時推定温度TB_esは一定値をとる。一方で、現実の電動車両の走行シーンにおいては、現在地から充電設備までの移動過程における走行状態(加減速の頻度や渋滞状況など)に応じて充電時推定温度TB_esの演算に誤差が生じる。このため、図8の時刻t1~時刻t3では、この誤差の影響で充電時推定温度TB_esが経時的に増加する例を示している。
【0064】
上記充電時推定温度TB_esの増加によって、充電時推定温度TB_esと充電目標温度TB_tの差により定まる推定温度差ΔTB_t-esも増加して閾値温度差Aに近づく。そして、推定温度差ΔTB_t-esが閾値温度差Aに到達する時刻t2において、予備判定フラグfがOFFからONに切り替わる。このため、時刻t2から第1温調判定(S400)が開始される。
【0065】
第1温調判定は、充電ゲイン量Gが温調消費電力量ΔEtemcを下回る時刻t2~時刻t3の間継続する。そして、充電ゲイン量Gが温調消費電力量ΔEtemcを超え始める時刻t3において、第1温調判定フラグfがOFFからONに切り替わる。このため、時刻t3からプレ温調制御(特にバッテリ34に対する冷却)が開始される。併せて終了判定(S700)も開始される。
【0066】
ここで、バッテリ34の冷却が開始される時刻t3以降において、当該冷却の影響を考慮して演算される充電時推定温度TB_esは経時的に減少する。このため、推定温度差ΔTB_t-esも減少する。
【0067】
その後、推定温度差ΔTB_t-esが閾値温度差Aまで減少した時刻t4において、終了判定フラグfがOFFからONに切り替わる。これによりプレ温調制御が終了する。なお、図8に示す例では、時刻t4以降でプレ温調制御を実行していない状態が継続されたまま、時刻t5で充電設備に到着する。一方で、プレ温調制御を終了させた後であっても、再び予備判定以降の処理を繰り返す構成を採用しても良い。
【0068】
以上説明した本実施形態のバッテリ温調方法の構成及びそれによる作用効果について説明する。
【0069】
本実施形態のバッテリ温調方法では、電動車両に搭載されるバッテリ34に対する外部充電の実行要求を示す外部充電要求信号Sを受信すると、バッテリ34を暖機又は冷却するプレ温調制御(S600)を実行するか否かを判定する第1温調判定(S400)を行い、第1温調判定の結果が肯定的であると、プレ温調制御を実行する。
【0070】
特に、第1温調判定では、プレ温調制御の実行による充電電力量の増加分を示唆する充電ゲイン量Gを演算し(S401)、プレ温調制御の実行により消費される電力量を示唆する温調消費電力量ΔEb_temcを演算し、充電ゲイン量Gが温調消費電力量ΔEtemcを超える場合にプレ温調制御を実行すべきと判断する(S403、S404)。
【0071】
これにより、充電時間の短縮により削減される電力量が、プレ温調制御によって消費される電力量を上回るシーンを適切に検知し、当該シーンにおいてプレ温調制御を実行することができる。したがって、実質的な充電電力量の利得が得られる状況においてプレ温調制御を実行することができるので、車両ユーザが負う充電電力量の負担を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態では、外部充電要求信号Sを受信すると、第1温調判定を実行するか否か判定する予備判定(S200)をさらに実行し、予備判定の結果が肯定的であると、第1温調判定を実行する。
【0073】
特に、予備判定では、充電時にバッテリ温度Tが到達すべき充電目標温度TB_tを演算し(S202)、充電時の推定バッテリ温度である充電時推定温度TB_esを演算し(S203)、充電時推定温度TB_esと充電目標温度TB_tの差として与えられる推定温度差ΔTB_t-esを演算する。そして、推定温度差ΔTB_t-esが所定の閾値温度差Aを超えると、第1温調判定を実行すべきと判断する。
【0074】
これにより、予備的にプレ温調制御を実行すべきシーンをスクリーニングした上で、第1温調判定を実行することができ、演算負担が軽減される。
【0075】
そして、第1温調判定では、充電時推定温度TB_esに基づいて、プレ温調制御を実行しないと仮定した場合の充電電力量である第1推定充電電力量ΔEb_es1を演算し、充電目標温度TB_tに基づいて、プレ温調制御を実行すると仮定した場合の充電電力量である第2推定充電電力量ΔEb_es2を演算する。また、第1推定充電電力量ΔEb_es1と第2推定充電電力量ΔEb_es2の差に基づいて、充電ゲイン量Gを演算する(充電ゲイン量演算部531)。
【0076】
これにより、事前の予備判定で使用した各パラメータを用いつつ充電ゲイン量Gを定めるための具体的な制御ロジックが実現される。
【0077】
また、プレ温調制御の実行中に、該プレ温調制御を終了するか否か判定する終了判定(S700)を実行し、終了判定の結果が肯定的であるとプレ温調制御を終了する。特に、終了判定では、推定温度差ΔTB_t-esが閾値温度差Aを下回るか、充電ゲイン量G及び温調消費電力量ΔEb_temcを下回ると、プレ温調制御を終了すべきと判断する(S701、S702、S704)。
【0078】
これにより、予備判定及び第1温調判定の結果に応じてプレ温調制御が実行されている状況下においても、当該プレ温調制御を中断すべきシーンに至った場合にこれを適切に検知して、これを終了することができる。
【0079】
さらに、本実施形態のプレ温調制御(S600)では、充電時推定温度TB_esが充電目標温度TB_tよりも低い場合には、バッテリ34を暖機し、充電時推定温度TB_esが充電目標温度TB_tよりも高い場合には、バッテリ34を冷却する。
【0080】
これにより、外部充電の際にバッテリ温度Tが充電目標温度TB_tを下回るか、或いは上回るかに応じて、プレ温調制御における暖機と冷却を適切に実行することができる。
【0081】
特に、本実施形態では、冷却時には、温調アクチュエータ36としてチラー301又はラジエータ305を用いる。より具体的に、ラジエータ305による冷却で所望の冷却量は確保できる場合にはラジエータ305を用いて冷却を行い、そうでない場合にはチラー301を作動させて冷却を行う。これにより、プレ温調制御におけるバッテリ34の冷却をより効率的に行うことができる。
【0082】
なお、本実施形態では、上記バッテリ温調方法の実行に適したバッテリ温調装置として機能するコントローラ50が提供される。
【0083】
このコントローラ50は、電動車両に搭載されるバッテリ34に対する外部充電の実行要求を示す外部充電要求信号Sを受信すると、バッテリ34を暖機又は冷却するプレ温調制御(S600)を実行するか否か判定する第1温調判定部53と、第1温調判定の結果が肯定的であると、プレ温調制御を実行するプレ温調制御部55と、を有する。
【0084】
特に、第1温調判定部53は、プレ温調制御の実行による充電電力量の増加分を示唆する充電ゲイン量Gを演算し(531)、プレ温調制御の実行により消費される電力量を示唆する温調消費電力量ΔEb_temcを演算し(532)、充電ゲイン量Gが温調消費電力量ΔEb_temcを超える場合にプレ温調制御を実行すべきと判断する(533、534)。
【0085】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態について説明する。なお、先の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
図9は、本実施形態によるバッテリ温調方法における全体処理を示すフローチャートである。なお、図9においては、図面簡略化のため、図3と共通する処理の一部は図示を省略している。
【0087】
図示のように、本実施形態では、特に第1温調判定に加えて第2温調判定(S450)を実行し、第1温調判定及び第2温調判定の結果が双方とも肯定的である場合にプレ温調制御を実行し、何れかが否定的である場合にはプレ温調制御を実行せずに処理を終了する(S500、S550、S600)。
【0088】
図10Aは、第2温調判定の詳細を説明するフローチャートである。また、図10Bは、第2温調判定部54の詳細構成を示すブロック図である。
【0089】
図示のように、第2温調判定では、先ず、現在バッテリ温度TB_c及び充電目標温度TB_tを入力とし、温調必要時間Δtreqを演算する(S451、温調必要時間演算部541)。
【0090】
より詳細には、温調必要時間演算部541は、現在バッテリ温度TB_cが充電目標温度TB_tより高い場合には、上述の必要温調量として、現在バッテリ温度Tを充電目標温度TB_tまで下げるために要する冷却量(以下、「必要冷却量」と称する)を演算する。さらに、当該必要冷却量から、図6に示したロジックで選択される冷却方法(チラー301を作動させる冷却又はラジエータ305を用いた冷却)に応じた冷却量(チラー冷却可能量又はラジエータ冷却可能量)を除算することで温調必要時間Δtreqを求める。
【0091】
特に、必要冷却量は、現在バッテリ温度TB_cと充電目標温度TB_tの差温に既知のバッテリ熱容量を乗じた値(熱マス冷却量)に、走行中のバッテリ総発熱量Qを加算して求めることができる。
【0092】
一方、現在バッテリ温度TB_cが充電目標温度TB_tより低い場合には、上述の必要温調量として、現在バッテリ温度Tを充電目標温度TB_tまで上げるために要する熱量(以下、「必要暖機量」と称する)を演算する。さらに、当該必要暖機量からPTCヒータ304の出力に応じた単位加熱量(PTC暖機量)を除算することで温調必要時間Δtreqを求める。
【0093】
特に、必要暖機量は、現在バッテリ温度TB_cと充電目標温度TB_tの差温に既知のバッテリ熱容量を乗じた値(熱マス冷却量)から、走行中のバッテリ総発熱量Qを減算して求めることができる。
【0094】
そして、現在地から充電設備までの走行に要する予測移動時間Δttraを取得し、上記のロジック演算した温調必要時間Δtreqが予測移動時間Δttra以上であるかを判定する(S452、S453)。温調必要時間Δtreqが予測移動時間Δttra以上である場合には第2温調判定フラグfをONに設定し、そうでない場合には第2温調判定フラグfをOFFに設定する(S454、S455、減算部542、第2温調判定フラグ設定部543)。
【0095】
以上説明した本実施形態のバッテリ温調方法による制御結果について説明する。
【0096】
図11は、本実施形態のバッテリ温調方法による制御結果の一例を示すタイミングチャートである。なお、図11では、プレ温調制御として、バッテリ温度Tを充電目標温度TB_tまで下げるための暖機シーンを想定する。また、説明の簡略化のため、第2温調判定フラグfがONとなるタイミングでは、第1温調判定フラグfがONであることを前提とする。
【0097】
図示のように、予備判定フラグfがOFFからONに切り替わる時刻t11において、第1温調判定と並行して第2温調判定が開始される。時刻t11以降、走行中における電力消費に起因して現在バッテリ温度TB_cが経時的に上昇する。一方で、現在バッテリ温度TB_cの上昇に伴い、温調必要時間Δtreqは緩やかに減少する。さらに、電動車両は充電設備に向かって走行するため、予測移動時間Δttraも経時的に減少する。
【0098】
ここで、予備判定フラグfがONに切り替わる時刻t11の時点では、予測移動時間Δttraは温調必要時間Δtreqよりも大きい。一方で、予測移動時間Δttraの減少幅が温調必要時間Δtreqの減少幅よりも大きく、時刻t12において予測移動時間Δttraと温調必要時間Δtreqの大小関係が入れ替わる。このため、時刻t12において、第2温調判定フラグfがOFFからONに切り替わる。したがって、時刻t12からプレ温調制御(S600)、より詳細にはバッテリ34に対する暖機が開始される。また、併せて終了判定(S700)も開始される。
【0099】
その後、終了判定(S700)のロジックに基づき終了判定フラグfがOFFからONに切り替わる時刻t13において、プレ温調制御が終了する。
【0100】
以上説明した本実施形態のバッテリ温調方法では、外部充電要求信号Sを取得するとさらに、第1温調判定(S400)とは別にプレ温調制御を実行するか否か判定する第2温調判定(S450)を行い、第1温調判定及び第2温調判定の判定結果が肯定的である場合に、プレ温調制御を実行する。
【0101】
特に、第2温調判定では、プレ温調制御の開始から終了までに要する時間として定まる温調必要時間Δtreqを演算し(S451)、電動車両の現在地から外部充電を行う充電設備までに要する予測移動時間Δttraを取得する(S452)。そして、温調必要時間Δtreqが予測移動時間Δttraを超えると、プレ温調制御を実行すべきと判断する(S453、S454、S455)。
【0102】
これにより、プレ温調制御を行う時間を必要最低限とすることができる。したがって、外部充電要求がキャンセルされるなどの理由でプレ温調制御を中断する場合に、それまでプレ温調制御を実行していた分のエネルギー損失が生じるが、プレ温調制御を行う時間を必要最低限とすることにより当該エネルギー損失を最小化することができる。
【0103】
なお、上記第2実施形態の構成を前提とした図6のS602に示す判定(チラー301を作動させるか否かの判定)では、第1実施形態で説明した判定に代えて又はこれとともに、温調必要時間Δtreqと予測移動時間Δttraの大小関係に基づく判定ロジックを採用しても良い。より具体的には、温調必要時間Δtreqが予測移動時間Δttra以下である場合にはチラー301による冷却を行わず、温調必要時間Δtreqが予測移動時間Δttraを超える場合に、チラー301を作動させて冷却を行う判定ロジックを採用することができる。この判定ロジックにより、プレ温調制御の実行とチラー301の作動が実質的に同一の判断(タイミング)で行われることとなるため、プレ温調制御におけるバッテリ34の冷却をより効率的に行うことができる。
【0104】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態及び各変形例で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0105】
1 車両システム
20 ナビシステム
30 温調システム
34 バッテリ
36 温調アクチュエータ
50 コントローラ
51 温調判定部
52 予備判定部
53 第1温調判定部
54 第2温調判定部
55 プレ温調制御部
56 終了判定部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11