IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社新川の特許一覧

特開2024-72673実装装置、実装方法および実装制御プログラム
<>
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図1
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図2
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図3
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図4
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図5
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図6
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図7
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図8
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図9
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図10
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図11
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図12
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図13
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図14
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図15
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図16
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図17
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図18
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図19
  • 特開-実装装置、実装方法および実装制御プログラム 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072673
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】実装装置、実装方法および実装制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
H01L21/52 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183647
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 耕平
(72)【発明者】
【氏名】関川 陽
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047FA08
5F047FA73
5F047FA79
5F047FA83
(57)【要約】
【課題】専用の検出ユニットを追加することなくステージ面または実装作業の対象となる作業平面の傾斜を検出することができ、実装処理の作業効率を向上させることができる実装装置等を提供する。
【解決手段】実装装置は、基準平面に平行な平面が焦点面となるようにそれぞれの光学系と撮像素子がシャインプルーフ条件を満たして配置された第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットと、実装作業を行う実装ツールとを支持するヘッド部をステージに対して変位させ、ステージ面または実装処理の対象である作業平面の複数箇所を第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットのそれぞれに撮像させて出力させた第1俯瞰画像および第2俯瞰画像に基づいて算出される当該複数箇所のそれぞれの高さ情報を用いて、ステージ面または作業平面の基準平面に対する傾斜を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装体を実装する基板を載置するステージと、
前記ステージに載置された前記基板および前記基板に既に実装された他の前記実装体の少なくともいずれかに対して実装作業を行う実装ツールと、
基準平面に平行な平面が焦点面となるようにそれぞれの光学系と撮像素子がシャインプルーフ条件を満たして配置された、前記実装作業を行う作業領域を俯瞰して撮像するための第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットと、
前記実装ツール、前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットを支持すると共に前記ステージに対して変位可能なヘッド部と、
前記ヘッド部を変位させ、前記ステージのステージ面または前記作業領域を包含する作業平面の複数箇所を前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットのそれぞれに撮像させて出力させた第1俯瞰画像および第2俯瞰画像に基づいて算出される前記複数箇所のそれぞれの高さ情報を用いて、前記ステージ面または前記作業平面の前記基準平面に対する傾斜を検出する検出部と
を備える実装装置。
【請求項2】
前記検出部が検出した前記傾斜に基づいて、前記ステージ面または前記作業平面が前記基準平面と平行になるように前記ステージを駆動する駆動制御部を備える請求項1に記載の実装装置。
【請求項3】
前記実装ツールを含む制御対象を制御することにより、前記実装体を前記作業領域へ実装させる実装制御部を備え、
前記検出部は、前記実装制御部が前記実装体を実装させる一連の作業において前記ステージ面または前記作業平面の特定箇所の面内座標を前記第1俯瞰画像および前記第2俯瞰画像に基づいて算出するときに、併せて算出される前記特定箇所の高さ座標を前記高さ情報として利用する請求項2に記載の実装装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記実装制御部が前記ステージに対する前記基板の載置位置を確認する作業において算出された前記高さ座標を利用することにより前記傾斜を検出し、
前記駆動制御部は、前記実装制御部が前記実装体を前記作業領域へ載置する前に前記作業平面が前記基準平面と平行になるように前記ステージを駆動する請求項3に記載の実装装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記実装制御部が3つ以上の前記実装体を実装させる間に算出されたそれぞれにおける前記作業平面の前記高さ座標を利用することにより前記傾斜を検出し、
前記駆動制御部は、前記実装体をさらに実装させる場合に前記作業領域へ載置する前に前記作業平面が前記基準平面と平行になるように前記ステージを駆動する請求項3に記載の実装装置。
【請求項6】
前記実装ツールに保持された状態の前記実装体を、前記ステージ面に対して前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットとは反対の側から仰視して撮像するための第3撮像ユニットと、
前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットのそれぞれが出力する前記第1俯瞰画像および前記第2俯瞰画像に基づいて算出される座標値と前記第3撮像ユニットが出力する仰視画像に基づいて算出される座標値との差分を較正する較正値を、予め設定された較正指標を前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットにそれぞれ撮像させて出力させた前記第1俯瞰画像および前記第2俯瞰画像と前記較正指標を前記第3撮像ユニットに撮像させて出力させた前記仰視画像とに基づいて演算する較正制御部と
を備え、
前記実装制御部は、前記作業平面が前記較正指標の指標面と同一の高さになるように前記実装ツールの位置を調整して前記第3撮像ユニットに前記実装体の実装面を撮像させ出力させた前記仰視画像に基づいて前記実装体の基準位置を認識し、前記指標面と同一の高さの前記作業平面に対して前記焦点面が同一の高さになるように前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットの位置を調整して前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットのそれぞれに前記作業領域を撮像させた第1俯瞰画像および第2俯瞰画像と前記較正値に基づいて前記作業領域の目標位置を認識し、前記基準位置が前記目標位置に合致するように前記実装体を前記作業領域に載置させ、実装させる請求項3から5のいずれか1項に記載の実装装置。
【請求項7】
実装体を実装する基板を載置するステージと、前記ステージに載置された前記基板および前記基板に既に実装された他の前記実装体の少なくともいずれかに対して実装作業を行う実装ツールと、基準平面に平行な平面が焦点面となるようにそれぞれの光学系と撮像素子がシャインプルーフ条件を満たして配置された、前記実装作業を行う作業領域を俯瞰して撮像するための第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットと、前記実装ツール、前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットを支持すると共に前記ステージに対して変位可能なヘッド部とを備える実装装置を用いた前記実装体の実装方法であって、
前記ヘッド部を変位させ、前記ステージのステージ面または前記作業領域を包含する作業平面の複数箇所を前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットのそれぞれに撮像させて出力させた第1俯瞰画像および第2俯瞰画像に基づいて算出される前記複数箇所のそれぞれの高さ情報を取得する取得ステップと、
前記高さ情報を用いて、前記ステージ面または前記作業平面の前記基準平面に対する傾斜を検出する検出ステップと
を有する実装方法。
【請求項8】
実装体を実装する基板を載置するステージと、前記ステージに載置された前記基板および前記基板に既に実装された他の前記実装体の少なくともいずれかに対して実装作業を行う実装ツールと、基準平面に平行な平面が焦点面となるようにそれぞれの光学系と撮像素子がシャインプルーフ条件を満たして配置された、前記実装作業を行う作業領域を俯瞰して撮像するための第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットと、前記実装ツール、前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットを支持すると共に前記ステージに対して変位可能なヘッド部とを備える実装装置を制御する実装制御プログラムであって、
前記ヘッド部を変位させ、前記ステージのステージ面または前記作業領域を包含する作業平面の複数箇所を前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットのそれぞれに撮像させて出力させた第1俯瞰画像および第2俯瞰画像に基づいて算出される前記複数箇所のそれぞれの高さ情報を取得する取得ステップと、
前記高さ情報を用いて、前記ステージ面または前記作業平面の前記基準平面に対する傾斜を検出する検出ステップと
をコンピュータに実行させる実装制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装装置、実装方法および実装制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを基板へ実装する実装装置において、実装対象である基板を基準面と平行に保つことは、半導体チップを精度よく目標位置へ実装する上で重要である。例えば、実装時にはんだ接合部の接合まで行うTCB工法においては、接合面の水平維持がはんだギャップのコントロールに大きな影響を及ぼす。半導体チップの実装装置に限らず、広く半導体処理装置においてステージの水平調整は重要であり、例えばレーザ光をステージに照射して水平調整を行う技術が普及している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-114141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ光照射ユニットは、ステージの水平調整のために専用に設けられ、装置構成を複雑にする。また、レーザ光照射ユニットを用いたステージの水平調整は、半導体チップを基板へ実装する実装処理とは別個に実施されるので、作業効率を下げる原因ともなっていた。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、専用の検出ユニットを追加することなくステージ面または実装作業の対象となる作業平面の傾斜を検出することができ、実装処理の作業効率を向上させることができる実装装置等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様における実装装置は、実装体を実装する基板を載置するステージと、ステージに載置された基板および基板に既に実装された他の実装体の少なくともいずれかに対して実装作業を行う実装ツールと、基準平面に平行な平面が焦点面となるようにそれぞれの光学系と撮像素子がシャインプルーフ条件を満たして配置された、実装作業を行う作業領域を俯瞰して撮像するための第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットと、実装ツール、第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットを支持すると共にステージに対して変位可能なヘッド部と、ヘッド部を変位させ、ステージのステージ面または作業領域を包含する作業平面の複数箇所を第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットのそれぞれに撮像させて出力させた第1俯瞰画像および第2俯瞰画像に基づいて算出される複数箇所のそれぞれの高さ情報を用いて、ステージ面または作業平面の基準平面に対する傾斜を検出する検出部とを備える。
【0007】
また、本発明の第2の態様における実装方法は、実装体を実装する基板を載置するステージと、ステージに載置された基板および基板に既に実装された他の実装体の少なくともいずれかに対して実装作業を行う実装ツールと、基準平面に平行な平面が焦点面となるようにそれぞれの光学系と撮像素子がシャインプルーフ条件を満たして配置された、実装作業を行う作業領域を俯瞰して撮像するための第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットと、実装ツール、第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットを支持すると共にステージに対して変位可能なヘッド部とを備える実装装置を用いた実装体の実装方法であって、ヘッド部を変位させ、ステージのステージ面または作業領域を包含する作業平面の複数箇所を第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットのそれぞれに撮像させて出力させた第1俯瞰画像および第2俯瞰画像に基づいて算出される複数箇所のそれぞれの高さ情報を取得する取得ステップと、高さ情報を用いて、ステージ面または作業平面の基準平面に対する傾斜を検出する検出ステップとを有する。
【0008】
また、本発明の第3の態様における実装制御プログラムは、実装体を実装する基板を載置するステージと、ステージに載置された基板および基板に既に実装された他の実装体の少なくともいずれかに対して実装作業を行う実装ツールと、基準平面に平行な平面が焦点面となるようにそれぞれの光学系と撮像素子がシャインプルーフ条件を満たして配置された、実装作業を行う作業領域を俯瞰して撮像するための第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットと、実装ツール、第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットを支持すると共にステージに対して変位可能なヘッド部とを備える実装装置を制御する実装制御プログラムであって、ヘッド部を変位させ、ステージのステージ面または作業領域を包含する作業平面の複数箇所を第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットのそれぞれに撮像させて出力させた第1俯瞰画像および第2俯瞰画像に基づいて算出される複数箇所のそれぞれの高さ情報を取得する取得ステップと、高さ情報を用いて、ステージ面または作業平面の基準平面に対する傾斜を検出する検出ステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、専用の検出ユニットを追加することなくステージ面または実装作業の対象となる作業平面の傾斜を検出することができ、実装処理の作業効率を向上させることができる実装装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るボンディング装置を含むフリップチップボンダの全体構成図である。
図2】ボンディング装置のシステム構成図である。
図3】シャインプルーフ光学系を説明するための説明図である。
図4】3つの撮像ユニットが較正指標を撮像する様子を示す図である。
図5】ボンディングツールが半導体チップを拾得する様子を示す図である。
図6】第3撮像ユニットが半導体チップを撮像する様子を示す図である。
図7】第3撮像ユニットが出力した仰視画像を模式的に示す図である。
図8】第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットがリードフレームを撮像する様子を示す図である。
図9図8の部分斜視図である。
図10】第1俯瞰画像および第2俯瞰画像から半導体チップを載置する目標座標を算出するまでの手順を示す図である。
図11】ボンディングツールが半導体チップを目標位置へ載置してボンディングする様子を示す図である。
図12】ボンディングツールが退避する様子を示す図である。
図13】基準平面に対するフレーム面の傾斜を検出する検出原理を説明する図である。
図14】フレーム面の平行調整を行っている様子を示す図である。
図15】半導体チップのボンディング手順を説明するフロー図である。
図16】較正制御ステップの手順を説明するサブフロー図である。
図17】実装制御ステップの手順を説明するサブフロー図である。
図18】平行調整ステップの手順を説明するサブフロー図である。
図19】第1の応用例を説明するためのフリップチップボンダの部分斜視図である。
図20】第2の応用例を説明するためのワイヤボンダの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。なお、各図において、同一又は同様の構成を有する構造物が複数存在する場合には、煩雑となることを回避するため、一部に符号を付し、他に同一符号を付すことを省く場合がある。
【0012】
図1は、本実施形態に係るボンディング装置100を含むフリップチップボンダの全体構成図である。フリップチップボンダは、主に実装装置の一例としてのボンディング装置100とチップ供給装置500から構成される。チップ供給装置500は、実装体としてのダイシングされた半導体チップ310をその上面に載置してボンディング装置100へ供給する装置である。具体的には、チップ供給装置500は、ピックアップ機構510および反転機構520を含む。ピックアップ機構510は、載置された任意の半導体チップ310を反転機構520へ向けて押し上げる装置である。反転機構520は、ピックアップ機構510に押し上げられた半導体チップ310を吸着し反転することにより、その上下方向の向きを入れ替える装置である。ボンディング装置100は、反転機構520により反転された状態で吸着されている半導体チップ310を後述するボンディングツール120によって拾得し、リードフレーム330の目標位置へ載置して接着する装置である。リードフレーム330は、ステージ190に載置される基板の一例である。
【0013】
ボンディング装置100は、主に、ヘッド部110、ボンディングツール120、第1撮像ユニット130、第2撮像ユニット140、第3撮像ユニット150、較正ユニット170、ステージ190を備える。ヘッド部110は、ボンディングツール120、第1撮像ユニット130、第2撮像ユニット140を支持し、ヘッド駆動モータ111によって平面方向および垂直方向へ移動可能である。すなわち、ヘッド部110は、ステージ190に対して変位可能である。本実施形態において平面方向は、図示するように、X軸方向とY軸方向で定められる水平方向であり、垂直方向(高さ方向)は、X軸方向およびY軸方向に直交するZ軸方向である。
【0014】
ボンディングツール120は、ツール駆動モータ121によって、ヘッド部110に対して高さ方向へ移動可能である。ボンディングツール120は、実装ツールの一例であり、先端部に半導体チップ310を吸着するコレット122、およびコレット122が吸着する半導体チップ310を加熱するヒータ124を有する。ボンディングツール120は、コレット122によって吸着した半導体チップ310をステージ190に載置されたリードフレーム330のフレーム面330aに設定された所定位置に載置し、コレット122の先端部で加圧しつつヒータ124で加熱して接着する。
【0015】
第1撮像ユニット130と第2撮像ユニット140は、リードフレーム330を俯瞰して撮像する撮像ユニットである。第1撮像ユニット130は、第1光学系131と第1撮像素子132を備え、その光軸をボンディングツール120の下方へ向けてヘッド部110に斜設されている。第1光学系131と第1撮像素子132は、基準平面に平行な平面が焦点面110aとなるようにシャインプルーフ条件を満たして配置されている。本実施形態において基準平面は水平面である。いずれの平面を基準平面とするかは、実装装置の性質やその利用状況に応じて定められる。
【0016】
第2撮像ユニット140は、第2光学系141と第2撮像素子142を備え、ボンディングツール120に対して第1撮像ユニット130とは反対側に、その光軸をボンディングツール120の下方へ向けてヘッド部110に斜設されている。第2光学系141と第2撮像素子142は、第1光学系131と第1撮像素子132と同様に、基準平面に平行な平面が焦点面110aとなるようにシャインプルーフ条件を満たして配置されている。なお、以下の説明においては、第1撮像ユニット130および第2撮像ユニット140を纏めて「俯瞰用撮像ユニット」と称する場合がある。
【0017】
第3撮像ユニット150は、ボンディングツール120のコレット122に保持された状態の前記半導体チップを、仰視して撮像するための撮像ユニットである。図示するように、第3撮像ユニット150は、ステージ190のステージ面190aを分割面とすると、俯瞰用撮像ユニットが配置される空間とは反対の側の空間に配置されている。
【0018】
第3撮像ユニット150は、第3光学系151と第3撮像素子152を備え、その光軸を上方へ向けて設置されている。第3撮像ユニット150は、第3光学系151と第3撮像素子152が光軸と直交するように配置された一般的な撮像ユニットであり、その焦点面150aは第3撮像素子152の受光面と平行である。また、焦点面150aは、リードフレーム330のフレーム面330aと一致するように設定されている。なお、第3光学系151は、焦点面150aを挟む一定の奥行き範囲を被写界深度とする。したがって、焦点面150aをフレーム面330aに一致させる設置調整は、被写界深度DPの範囲であればずれが許容される。また、以下の説明においては、第3撮像ユニット150を「仰視用撮像ユニット」と称する場合がある。
【0019】
較正ユニット170は、主に、指標駆動モータ171、指標プレート172、較正指標173を備える。較正指標173は、例えば十字マークの交点といった基準位置が定められたリファレンスマークである。指標プレート172は、例えばガラスや透明樹脂の薄板であり、その一面に較正指標173が印刷されている。すなわち、較正指標173は、指標プレート172のいずれの面側からも観察できる。本実施形態においては、較正指標173は、指標プレート172のうち第3撮像ユニット150と対向する表面とは反対側の表面に印刷されている。本実施形態においては、較正指標173が印刷された表面を指標面173aと称する。なお、較正指標173は、印刷に限らず、シールの貼着や、指標プレート172表面のケガキ等により設けられてもよい。
【0020】
指標駆動モータ171は、指標プレート172をZ軸周りに旋回させることにより、較正指標173を第3撮像ユニット150の視野中心付近へ移動させたり、当該視野から退避させたりする。較正指標173が第3撮像ユニット150の視野中心付近へ移動されると、指標面173aは、リードフレーム330のフレーム面330aおよび第3撮像ユニット150の焦点面150aと同一面となる。
【0021】
ステージ190は、架台180上に設置され、ステージ駆動モータ191を駆動させることにより架台180に対する高さと傾斜を所定範囲で調整することができる。高さの調整は、ステージ190のステージ面190aをZ軸方向へ移動させる調整であり、傾斜の調整は、ステージ190のステージ面190aをX軸周りおよびY軸周りに回動させる調整である。
【0022】
図2は、ボンディング装置100のシステム構成図である。ボンディング装置100の制御システムは、主に、演算処理部210、記憶部220、入出力デバイス230、第1撮像ユニット130、第2撮像ユニット140、第3撮像ユニット150、ヘッド駆動モータ111、ツール駆動モータ121、指標駆動モータ171、ステージ駆動モータ191によって構成される。
【0023】
演算処理部210は、ボンディング装置100の制御とプログラムの実行処理を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)である。プロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理チップと連携する構成であってもよい。演算処理部210は、記憶部220に記憶されたボンディング制御プログラムを読み出して、ボンディング制御に関する様々な処理を実行する。
【0024】
記憶部220は、不揮発性の記憶媒体であり、例えばHDD(Hard Disk Drive)によって構成されている。記憶部220は、ボンディング制御プログラムの他にも、制御や演算に用いられる様々なパラメータ値、関数、ルックアップテーブル等を記憶し得る。記憶部220は、特に、較正データ221を記憶している。較正データ221は、具体的には後述するが、同一の観察対象に対して俯瞰画像に基づいて算出される座標値と仰視画像に基づいて算出される座標値の差分を較正する較正値に関するデータである。
【0025】
入出力デバイス230は、例えばキーボード、マウス、表示モニタを含み、ユーザによるメニュー操作を受け付けたり、ユーザへ情報を提示したりするデバイスである。例えば、演算処理部210は、取得した俯瞰画像や仰視画像を入出力デバイス230の一つである表示モニタへ表示してもよい。
【0026】
第1撮像ユニット130は、演算処理部210から撮像要求信号を受けて撮像を実行し、第1撮像素子132が出力した第1俯瞰画像を画像信号として演算処理部210へ送信する。第2撮像ユニット140は、演算処理部210から撮像要求信号を受けて撮像を実行し、第2撮像素子142が出力した第2俯瞰画像を画像信号として演算処理部210へ送信する。第3撮像ユニット150は、演算処理部210から撮像要求信号を受けて撮像を実行し、第3撮像素子152が出力した仰視画像を画像信号として演算処理部210へ送信する。
【0027】
ヘッド駆動モータ111は、演算処理部210から駆動信号を受けてヘッド部110を水平面方向および高さ方向へ移動させる。ツール駆動モータ121は、演算処理部210から駆動信号を受けてボンディングツール120を高さ方向へ移動させ、Z軸周りに回転させる。指標駆動モータ171は、演算処理部210から駆動信号を受けて指標プレート172を旋回させる。ステージ駆動モータ191は、演算処理部210から駆動信号を受けてステージ190をZ軸方向へ移動させX軸周りおよびY軸周りに回動させる。
【0028】
演算処理部210は、ボンディング制御プログラムが指示する処理に応じて様々な演算を実行する機能演算部としての役割も担う。演算処理部210は、画像取得部211、駆動制御部212、較正制御部213、実装制御部214、検出部215として機能し得る。画像取得部211は、第1撮像ユニット130、第2撮像ユニット140、第3撮像ユニット150へ撮像要求信号を送信し、第1俯瞰画像、第2俯瞰画像、仰視画像の画像信号を取得する。駆動制御部212は、ヘッド駆動モータ111、ツール駆動モータ121、指標駆動モータ171、ステージ駆動モータ191へ制御量に応じた駆動信号を送信することにより、ヘッド部110、ボンディングツール120、指標プレート172、ステージ190を目標状態へ変位させる。また、ピックアップ機構510や反転機構520のへ駆動信号を送信することにより、ターゲットとなる半導体チップ310を押し上げたり、吸着させて反転させたりする。
【0029】
較正制御部213は、画像取得部211や駆動制御部212等を制御することにより、上述の較正値を、較正指標173を俯瞰用撮像ユニットに撮像させ出力させた俯瞰画像と仰視用撮像ユニットに撮像させ出力させた仰視画像とに基づいて演算する。実装制御部214は、画像取得部211や駆動制御部212等を制御することにより、ボンディングツール120に保持された半導体チップ310を仰視用撮像ユニットに撮像させ出力させた仰視画像に基づいて半導体チップ310の基準位置を認識する。そして、当該半導体チップ310を載置しようとする載置予定領域を俯瞰用撮像ユニットに撮像させて出力させた俯瞰画像と上述の較正値に基づいて決定した目標位置に当該基準位置が合致するように、ボンディングツール120に当該半導体チップ310を載置予定領域に載置させてボンディングさせる。
【0030】
検出部215は、ヘッド部110を変位させ、ステージ面190aまたはフレーム面330aなどの作業平面の複数箇所を第1撮像ユニット130および第2撮像ユニット140のそれぞれに撮像させて出力させた第1俯瞰画像および第2俯瞰画像に基づいて算出される当該複数箇所のそれぞれの高さ情報を用いて、ステージ面または作業平面の基準平面に対する傾斜を検出する。較正制御部213、実装制御部214、検出部215の具体的な制御や処理については後に詳述する。
【0031】
図3は、第1撮像ユニット130に採用されているシャインプルーフ光学系を説明するための説明図である。第2撮像ユニット140にも同様のシャインプルーフ光学系が採用されているが、ここでは代表して第1撮像ユニット130のシャインプルーフ光学系について説明する。
【0032】
図3において、平面S1は、基準平面に対して平行である焦点面110aである。仮想面S2は、物側レンズ群131aと像側レンズ群131bを構成群とする第1光学系131の主平面を含む平面である。平面S3は、第1撮像素子132の受光面を含む平面である。本実施形態においてシャインプルーフ光学系は、シャインプルーフ条件を満たして配置されている第1光学系131と第1撮像素子132を含む。シャインプルーフ条件を満たす配置とは、平面S1、仮想面S2、仮想面S3が共通の直線P上で互いに交差する配置である。
【0033】
絞り133は、物側レンズ群131aと像側レンズ群131bの間に配置され、通過する光束を制限する。絞り133の径により、被写界深度DPを調整することができる。したがって、実装作業を行う対象作業領域がこの被写界深度内に位置すれば、当該作業領域を合焦状態で撮像することができる。
【0034】
第2撮像ユニット140は、第1撮像ユニット130と同様の構成を備え、ボンディングツール120の中心軸を含むYZ平面に対して対称にヘッド部110に配設されている。したがって、第2撮像ユニット140も第1撮像ユニット130と同様に、対象作業領域を合焦状態で撮像することができる。第1撮像ユニット130の焦点面と第2撮像ユニット140の焦点面は、焦点面110aで一致することが好ましいが、ずれが生じたとしても、互いの被写界深度の一部が重なっている限り、対象作業領域を共に合焦状態で撮像することができる。
【0035】
さて、このようなシャインプルーフ光学系を採用した撮像ユニットを採用すると、ボンディングツール120の直下を斜め方向から観察できる。したがって、ボンディングツール120に半導体チップ310を保持させ、その載置予定領域であるダイパッドの直上にボンディングツール120移動させた状態でも、当該ダイパッドを俯瞰用撮像ユニットで観察することができる。すなわち、載置予定領域であるダイパッドの直上にボンディングツール120を移動させてから、俯瞰用撮像ユニットが出力する俯瞰画像に基づいて半導体チップ310を載置する目標位置を決定することができる。すると、その状態から半導体チップ310を目標位置まで移動させればよいので、ヘッド部110やボンディングツール120の移動を大幅に抑制することができ、移動に伴う位置ずれの低減やリードタイムの短縮を実現できるようになった。
【0036】
しかし、シャインプルーフ光学系を採用する撮像ユニットは、光学系の構造上の特性から、光学系や撮像素子が周辺環境の温度変化に伴って変位すると、出力画像が平面方向へ変位しやすいことがわかってきた。すなわち、周辺環境の温度変化により、像がシフトすることがわかってきた。このような現象は、俯瞰画像に基づいて半導体チップ310を載置する目標位置を決定する場合に、その目標位置に誤差を生じさせ得る。したがって、より高精度に当該半導体チップを目標位置へボンディングしたい場合には、このような誤差を吸収する補償処理を実行するとよい。具体的には、例えば周辺環境の温度変化が想定される所定のタイミングで、同一の観察対象に対して俯瞰画像に基づいて算出される座標値と仰視画像に基づいて算出される座標値の差分を較正する較正値を算出する較正処理を実行する。そして、半導体チップ310をリードフレーム330の目標位置にボンディングする実装処理においては、算出しておいた較正値を用いて精確な目標位置を決定する。以下に、較正処理と実装処理を順に説明する。
【0037】
較正処理は、較正制御部213が実行を担う。較正制御部213は、まず、第1撮像ユニット130、第2撮像ユニット140および第3撮像ユニット150に較正指標173を撮像させる。図4は、3つの撮像ユニットが較正指標173を撮像する様子を示す図である。
【0038】
図示するように、較正制御部213は、較正処理を開始するにあたり、駆動制御部212を介して指標駆動モータ171を駆動することにより、指標プレート172を第3撮像ユニット150の視野内へ移動させる。指標プレート172が第3撮像ユニット150の視野内へ移動されると、指標プレート172に設けられた較正指標173は、固定された第3撮像ユニット150の視野に対してほぼ中心に位置する。
【0039】
較正制御部213は、続いて、駆動制御部212を介してヘッド駆動モータ111を駆動することにより、俯瞰用撮像ユニットの焦点面110aが指標面173aと一致するように、かつボンディングツール120の直下に較正指標173が位置するようにヘッド部110を移動させる。なお、ボンディングツール120は、俯瞰用撮像ユニットの視野に入り込まない位置へ退避されている。
【0040】
このようにそれぞれが配置された状態で、較正制御部213は、画像取得部211を介して、第1撮像ユニット130から第1俯瞰画像を、第2撮像ユニット140から第2俯瞰画像を、第3撮像ユニット150から仰視画像を取得する。そして、第1俯瞰画像と第2俯瞰画像にそれぞれ写り込む較正指標173の像の画像座標から、較正指標173の三次元座標(Xhr,Yhr,Zhr)を算出する。また、仰視画像に写り込む較正指標173の像の画像座標から、較正指標173の三次元座標(Xsr,Ysr,Zsr)を算出する。もし、俯瞰用撮像ユニットが周辺環境の温度変化の影響を受けておらず、ボンディング装置100の初期状態において撮像ユニット間の座標が正しく調整された状態を保っているのであれば、少なくともXhr=Xsr、Yhr=Ysrとなるはずである。
【0041】
しかし、上述のように、ボンディング装置100の使用を開始してしばらく経過すると、俯瞰画像から算出される三次元座標が周辺環境の温度変化の影響を受けて誤差を含むようになる。そこで、その誤差である(ΔX,ΔY)を較正値とする。具体的には、誤差は差分として表され、ΔX=Xsr-Xhr、ΔY=Ysr-Yhrとすることができる。このように較正値を算出しておけば、その後に俯瞰用撮像ユニットがある観察対象を撮像してその俯瞰画像から算出した三次元座標が(Xht,Yht,Zht)であったとすると、較正値を加味して(Xht+ΔX,Yht+ΔY,Zht)と補正することができる。この補正された座標値は、仮に同じ観察対象を仰視用撮像ユニットで撮像できたとして、その場合に得られた仰視画像から算出される座標値に対して誤差がないと言える。
【0042】
較正制御部213は、このように算出した較正値を、較正データ221として記憶部220に記憶する。較正データ221は、さらに周辺環境の温度が変化している可能性があり再度の較正処理が必要であると評価されるまで、後述する実装処理において参照される。換言すれば、再度の較正処理が必要であると評価されると、較正制御部213は、上述の処理を繰り返して較正値を更新する。
【0043】
再度の較正処理が必要であると評価される例としては、実装制御部214が予め設定されたロット分の半導体チップ310のボンディングを完了するタイミングが考えられる。具体的には、チップ供給装置500に新たなロットの半導体チップ310が供給されるタイミングに合わせて、較正制御部213が較正処理を実行するようにしてもよい。また、実装制御部214が実行するボンディング作業の作業時間を目安としてもよい。例えば、60分間継続してボンディング作業を実行した場合に較正処理を実行すると定めることができる。さらには、ヘッド部110に俯瞰用撮像ユニットの温度を検出する温度検出部を設けておき、当該温度検出部が予め設定された温度を検出したタイミングであってもよい。具体的には、複数の温度を予め設定しておき、周辺温度が当該温度を跨いで変動したことが検出された場合に較正処理を実行する。このように較正値を更新すれば、実装処理を継続する期間に亘って、俯瞰画像から算出される座標値の誤差を一定範囲に抑制することが可能となる。
【0044】
実装処理は、実装制御部214が実行を担う。実装制御部214は、まず、対象となる半導体チップ310を拾得する。図5は、ボンディングツール120が半導体チップ310を拾得する様子を示す図である。
【0045】
実装制御部214は、駆動制御部212を介してヘッド駆動モータ111を駆動することによりヘッド部110をチップ供給装置500の上部へ移動させ、ツール駆動モータ121を駆動することによりボンディングツール120を降下させる。これに並行して、ピックアップ機構510は、チップ供給装置500に載置された半導体チップ310のうち、実装対象となる半導体チップ310を反転機構520へ向けて押し上げ、反転機構520は、当該半導体チップ310を吸着して反転させる。そして、降下されたボンディングツール120は、当該半導体チップ310をコレット122によって吸着して拾得し、ボンディングツール120を上昇させる。
【0046】
実装制御部214は、指標プレート172が第3撮像ユニット150の視野内に位置する場合には、ボンディングツール120が半導体チップ310を拾得する作業に前後して、指標プレート172を第3撮像ユニット150の視野から退避させる。具体的には、実装制御部214は、駆動制御部212を介して指標駆動モータ171を駆動することにより指標プレート172を移動する。
【0047】
実装制御部214は、次に、ボンディングツール120が吸着した半導体チップ310を第3撮像ユニット150に撮像させる。図6は、第3撮像ユニット150がボンディングツール120に吸着された半導体チップ310を撮像する様子を示す図である。
【0048】
実装制御部214は、駆動制御部212を介してヘッド駆動モータ111を駆動することにより、俯瞰用撮像ユニットの焦点面110aが指標面173aと一致するように、かつボンディングツール120の直下に第3撮像ユニット150が位置するようにヘッド部110を移動させる。そして、ツール駆動モータ121を駆動することにより、保持している半導体チップ310のうちリードフレーム330への接触予定面が指標面173aと一致するように、ボンディングツール120を降下させる。このような配置の調整が完了したら、実装制御部214は、画像取得部211を介してボンディングツール120に保持された半導体チップ310を第3撮像ユニット150に撮像させる。
【0049】
図7は、第3撮像ユニット150がボンディングツール120に保持された半導体チップ310を撮像して出力した仰視画像を模式的に示す図である。なお、図中の各被写体像には、そのまま対応する被写体の符番を付して説明する。
【0050】
上述のように、ボンディングツール120は、チップ供給装置500で準備された半導体チップ310をコレット122で吸着することにより拾得され、保持される。このとき、ボンディングツール120は、半導体チップ310の中心を予め設定された向きで吸着しようとするが、実際にはこれらに対してずれを含んで吸着することもある。そこで、実装制御部214は、半導体チップ310が実際にどのような位置にどのような向きで保持されているかを確認し、当該半導体チップ310をリードフレーム330へ載置するための基準位置を認識する。
【0051】
図7に示す仰視画像は、第3撮像ユニット150が半導体チップ310を見上げるように撮像した画像であるので、半導体チップ310を保持するコレット122も写り込んでいる。そこで、実装制御部214は、コレット122の輪郭である円を検出することにより、コレット中心123の画像座標を算出する。
【0052】
また、本実施形態における半導体チップ310はリードフレーム330への接触予定面にチップ基準マーク311が設けられており、実装制御部214は、仰視画像に写り込んでいるチップ基準マーク311の画像座標を算出する。このように算出したコレット中心123の画像座標とチップ基準マーク311の画像座標から、実装制御部214は、半導体チップ310がコレット122に対して実際にどのような位置にどのような向きで保持されているかを認識できる。例えば、チップ基準マーク311が設けられている位置が半導体チップ310をリードフレーム330へ載置するための基準位置だとすれば、実装制御部214は、仰視画像を撮像した時点における半導体チップ310の基準位置の三次元座標を算出できる。したがって、その後にボンディングツール120やヘッド部110が移動されても、コレット122が当該半導体チップ310を保持し続ける限り、基準位置の三次元座標を追跡することができる。
【0053】
実装制御部214は、基準位置の三次元座標を認識したら、ツール駆動モータ121を駆動することにより、保持している半導体チップ310が俯瞰用撮像ユニットの視野から退避する位置までボンディングツール120を上昇させる。そして、ヘッド駆動モータ111を駆動することにより、ボンディングツール120が、これから半導体チップ310を載置するダイパッド320の直上となるように、かつ俯瞰用撮像ユニットの焦点面110aがリードフレーム330の載置予定面であるフレーム面330aと一致するようにヘッド部110を移動させる。なお、ボンディングツール120の上昇とヘッド部110の移動は、並列して行っても構わない。
【0054】
図8は、ヘッド部110とボンディングツール120がそのように配置された状態で、第1撮像ユニット130と第2撮像ユニット140がリードフレーム330の作業領域を撮像する様子を示す図である。また、図9は、図8の部分斜視図である。本実施形態におけるリードフレーム330は、将来的に切り出されて一つのパッケージに収められる単位領域322のそれぞれに、一つのダイパッド320を有する。本実施形態において単位領域322は、ボンディング作業を行う作業領域であって、半導体チップ310を載置する載置予定領域を含む。また、フレーム面330aは、作業領域を含む作業平面である。それぞれの単位領域322には、その基準位置を示すパッド基準マーク321が設けられている。本実施形態においては、パッド基準マーク321を作業平面の特定箇所と認識し得る。
【0055】
図8および図9のように配置された状態において、第1撮像ユニット130および第2撮像ユニット140はそれぞれ、同一の単位領域322に含まれるダイパッド320とパッド基準マーク321を視野内に捉えて合焦状態で撮像することができる。実装制御部214は、第1撮像ユニット130が出力する第1俯瞰画像と第2撮像ユニット140が出力する第2俯瞰画像とを用いて、半導体チップ310をダイパッド320に載置するときにその基準位置を合致させるべき目標位置の座標を算出する。
【0056】
図10は、第1俯瞰画像および第2俯瞰画像から半導体チップ310を載置する目標座標を算出するまでの手順を示す図である。第1撮像ユニット130は、ダイパッド320に対してパッド基準マーク321側からこれらを撮像するので、その出力画像である第1俯瞰画像には、単位領域322がパッド基準マーク321側に拡がった台形状に写り込む。逆に第2撮像ユニット140は、ダイパッド320に対してパッド基準マーク321の反対側からこれらを撮像するので、その出力画像である第2俯瞰画像には、単位領域322がパッド基準マーク321側に狭まった台形状に写り込む。
【0057】
実装制御部214は、第1俯瞰画像からパッド基準マーク321の画像座標(x1k,y1k)を決定し、また、第2俯瞰画像からパッド基準マーク321の画像座標(x2k,y2k)を決定する。そして、例えば画像座標を三次元座標に変換する変換テーブルを参照することにより、これらの画像座標からパッド基準マーク321の三次元座標である指標座標(Xk,Yk,Zk)を算出する。この指標座標の座標値は、精確な目標位置を算出するための仮目標位置であり、上述のように周辺環境の温度変化の影響を受けて誤差を含むものである。そこで、較正データ221から較正値(ΔX,ΔY)を読み出して補正する。このようにして得られた補正後の指標座標(Xk+ΔX,Yk+ΔY,Zk)の座標値は、仰視画像から算出される空間座標に対して誤差がないものと期待し得る。
【0058】
予め設定されたダイパッド320の目標位置とパッド基準マーク321の相対位置は既知であるので、実装制御部214は、補正された指標座標(Xk+ΔX,Yk+ΔY,Zk)から目標位置の座標(XT,YT,ZT)を精確に算出することができる。
【0059】
目標位置の座標が確定したら、半導体チップ310を当該目標位置へ載置してボンディングする。図11は、ボンディングツール120が半導体チップ310を目標位置へ載置してボンディングする様子を示す図である。
【0060】
実装制御部214は、上述のように、ボンディングツール120やヘッド部110の移動に対して半導体チップ310の基準位置の三次元座標を追跡して把握しており、この基準位置がダイパッド320の目標位置に合致するように、半導体チップ310を移動させる。具体的には、駆動制御部212を介してヘッド駆動モータ111を駆動することによりヘッド部110のXY方向の位置を微調整し、ツール駆動モータ121を駆動することにボンディングツール120のZ軸周りの回転量を微調整する。そして、基準位置のX座標およびY座標と目標位置のX座標およびY座標がそれぞれ一致した状態でボンディングツール120を下降させ、半導体チップ310をダイパッド320上に載置する。その後、半導体チップ310をコレット122の先端部で加圧しつつ、ヒータ124で加熱して、ダイパッド320に接着する。
【0061】
本実施形態においては、リードフレーム330のフレーム面330aに俯瞰用撮像ユニットの焦点面110aと較正指標173の指標面173aを揃えて較正値を算出している。すなわち、較正値を算出したときのヘッド部110のZ方向の位置は、俯瞰用撮像ユニットがチップ基準マーク311を撮像するときのヘッド部110のZ方向の位置と同じである。また、図6および図7を用いて説明したように、リードフレーム330のフレーム面330aにコレット122に保持された半導体チップ310の接触予定面を揃えてチップ基準マーク311の三次元座標を算出している。すなわち、チップ基準マーク311の三次元座標を算出したときのボンディングツール120のZ方向の位置は、半導体チップ310をダイパッド320に載置するときのボンディングツール120のZ方向の位置と同じである。
【0062】
したがって、ヘッド部110やボンディングツール120をZ方向に移動した場合に生じ得る、実際の三次元座標と認識した三次元座標のXY方向に対する誤差を考慮する必要がない。例えば、図8の状態ではボンディングツール120は半導体チップ310を保持して俯瞰用撮像ユニットの視野から退避しているが、この状態における実際の基準位置のX座標およびY座標は、ボンディングツール120を上下させる移動機構の要素間のあそび等の影響により、実装制御部214が認識しているX座標およびY座標とは一致しない場合もある。しかし、図11のように半導体チップ310をフレーム面330aに載置するときのボンディングツール120高さは、チップ基準マーク311の三次元座標を算出したときのボンディングツール120高さと同一となり、移動機構による誤差要因が除去される。つまり、半導体チップ310をフレーム面330aに載置するときの実際の基準位置のX座標およびY座標は、実装制御部214が認識しているX座標およびY座標と一致することになる。このような観点において、較正値を算出する場合に、フレーム面330aに対して焦点面110aと較正指標173の指標面173aを一致させることや、チップ基準マーク311の三次元座標を算出する場合に、フレーム面330aに対して半導体チップ310の接触予定面を一致させることが有効である。
【0063】
なお、フレーム面330aと指標面173aを一致させる場合には、指標面173aの高さを調整してフレーム面330aに一致させてもよいし、フレーム面330aの高さを調整して指標面173aに一致させてもよい。指標面173aの高さを調整する場合には、例えば、指標面173aと焦点面150aが一致した状態を保つように第3撮像ユニット150と共に、指標面173aをZ軸方向へ指標駆動モータ171の駆動により変位させればよい。フレーム面330aの高さを調整する場合には、例えば、フレーム面330aをZ軸方向へステージ駆動モータ191の駆動により変位させればよい。
【0064】
図12は、ボンディングツール120が退避する様子を示す図である。図示するように半導体チップ310のボンディングが完了したら、実装制御部214は、駆動制御部212を介してツール駆動モータ121を駆動することにより、ボンディングツール120を上昇させる。さらに新たな半導体チップ310をボンディングする場合には、再び図5の状態へ戻して処理を繰り返す。
【0065】
さて、以上の較正処理と実装処理は、俯瞰用撮像ユニットの焦点面150a、較正指標173の指標面173a、およびリードフレーム330のフレーム面330aは、それぞれ基準平面の一例である水平面に平行に調整され、また、指標面173aとフレーム面330aは、同一平面となるように調整されているものとして説明した。しかし、ステージ190がステージ面190aの高さや傾斜を調整できる機構を備えていたり、あるいは、リードフレーム330が製造上のばらつきにより表裏面が互いに平行でなかったりするような場合には、実装作業の作業平面であるフレーム面330aが基準平面から傾いている場合がある。
【0066】
半導体チップの実装処理において作業平面が傾斜していることは、様々な不都合を生じさせる原因となり得る。例えば、本実施形態においては、フレーム面330aが基準平面に対して傾斜していると、俯瞰用撮像ユニットがある作業領域に対しては合焦させることができても、同一のフレーム面330a上の他の作業領域に対しては、ヘッド部110の高さを再調整しない限り合焦させることができないという状況を生じ得る。そうすると、合焦させることができない作業領域が出現するたびにヘッド部110の高さを再調整するための工程を要し、リードタイム短縮の要請に反することになる。特に、本実施形態のように高精度化のために較正値を用いるときには、当該作業領域の高さに対する補正値を、再度較正処理を実行して算出する必要がある場合もある。
【0067】
本実施形態において実装制御部214は、図10を用いて説明したように、単位領域322に設けられたパッド基準マーク321の平面座標(Xk,Yk)を算出するときに、同時にパッド基準マーク321の高さ座標Zkも算出する。また、リードフレーム330がステージ面190a上のどの位置にどのような向きで載置されたかを確認するために、ステージ面190a上に設けられた指標やリードフレーム330の周縁部に設けられた指標を観察して、その平面座標を算出する場合もある。このような場合にも、実装制御部214は、同時に高さ座標も算出する。三次元座標を算出する対象となる3つ以上の指標が一つの直線上に配列されていなければ、それらの指標から算出される三次元座標を利用することにより、それら複数の指標が設けられた平面の傾斜を検出することができる。
【0068】
本実施形態のボンディング装置100は、このように実装制御部214が半導体チップ310を実装させる一連の作業においてステージ面190aまたはフレーム面330aの3つ以上の特定箇所の面内座標(すなわち平面座標)を算出するときに、併せて算出される高さ座標を利用して、ステージ面190aまたはフレーム面330aの基準平面に対する傾斜を検出する検出部215を備える。
【0069】
図13は、基準平面に対するフレーム面330aの傾斜を検出する検出原理を説明する図である。図13は、具体的には、模式的に表したリードフレーム330を俯瞰して観察した図である。リードフレーム330は、左下端に第1単位領域322aを、左上端に第2単位領域322bを、右上端に第3単位領域322cを有する。ここでは、半導体チップ310を第1単位領域322a→第2単位領域322b→第3単位領域322cの順に連続して実装し、他の単位領域へはその後順次実装するものとする。
【0070】
実装制御部214が第1単位領域322a内に設けられた第1パッド基準マーク321aの三次元座標(XTa,YTa,ZTa)を取得して、これに基づいて半導体チップ310を実装したら、検出部215は、実装制御部214から当該三次元座標を受け取る。同様に、第2単位領域322b内に設けられた第2パッド基準マーク321bの三次元座標(XTb,YTb,ZTb)と、第3単位領域322c内に設けられた第3パッド基準マーク321cの三次元座標(XTc,YTc,ZTc)も実装制御部214から受け取る。そして、3つの三次元座標を用いてフレーム面330aの傾斜を算出する。ここで、当該傾斜は、フレーム面330aの法線ベクトルとして算出したり、X軸周りの傾斜角度とY軸周りのそれぞれの傾斜角度として算出したりすることができる。
【0071】
また、4点以上の三次元座標を用いて傾斜を算出する場合には、それらの三次元座標に当てはめられる回帰平面を求めてからその回帰平面の傾斜を算出すればよい。また、上記においては、算出したパッド基準マーク321の平面座標(XTx,YTx)の情報も利用して傾斜を算出したが、リードフレーム330上における各パッド基準マーク311のフレーム面330a内における位置は既知であるので、その既知情報と、算出した高さ座標Zkを組み合わせて傾斜を算出してもよい。また、上記においては、算出する傾斜の精度を高めるために、それぞれがリードフレーム330の周縁部に設けられた3つのパッド基準マーク321を選択したが、傾斜を算出するために計測する基準マーク321は、これらに限らない。
【0072】
図14は、フレーム面330aの平行調整を行っている様子を示す図である。検出部215がフレーム面330aの傾斜を算出したら、実装制御部214は、次に半導体チップ310を実装する実装処理を実行する前に、駆動制御部212を介してステージ駆動モータ191を駆動することにより、フレーム面330aが基準平面と平行になるように平行調整を行う。このとき、実装制御部214は、図示するように、ボンディングツール120がチップ供給装置500から次に実装する半導体チップ310を拾得する作業を並行して行ってもよい。以上のように、複数の半導体チップ310を実装する一連の実装処理中にフレーム面330aの傾斜を解消できれば、実装処理に要するリードタイムを短縮させることができ、また、より精度の高い実装処理を実現することができる。
【0073】
なお、フレーム面330aの傾斜度合いによっては、いずれかの単位領域においてパッド基準マークが俯瞰用撮像ユニットの被写界深度Dpに収まらず、三次元座標を算出できない場合もある。そのような場合には、実装制御部214は、ヘッド部110を上下させて当該単位領域を被写界深度Dpの範囲に収めた上で、その単位領域内に設けられたパッド基準マークの三次元座標を算出する。このとき、半導体チップ310の当該単位領域への実装は保留する。そして、検出部215がそれらの三次元座標に基づいてフレーム面330aの傾斜を算出する。実装制御部214は、その結果に基づいてステージ駆動モータ191を駆動させて、当該傾斜を解消すると共に指標面173aと同一面となるようにフレーム面330aを調整する。その後、改めてヘッド部110を上下させてパッド基準マークの三次元座標を算出し、その三次元座標に基づいて半導体チップ310を当該単位領域へ実装する。
【0074】
次に、以上説明した較正処理、実装処理、平行調整処理を含む全体のボンディング手順をフロー図に沿って纏める。図15は、半導体チップ310のボンディング手順を説明するフロー図である。
【0075】
較正制御部213は、ステップS11で、較正処理を行うべく較正制御ステップを開始する。詳しくは後にサブフローとして説明する。なお、撮像ユニット間の座標が正しく調整された初期状態から実装処理を開始する場合には、最初の較正制御ステップをスキップしても構わない。
【0076】
較正制御部213が較正制御ステップの実行を終えたら、ステップS12へ進み、実装制御部214は、実装処理を行うべく実装制御ステップを開始する。詳しくは後にサブフローとして説明する。
【0077】
実装制御部214が実装制御ステップの実行を終えたら、ステップS13へ進み、較正制御部213は、その時点におけるボンディング装置100の状態が予め設定された較正タイミングの条件を満たすか否かを判断する。予め設定される較正タイミングの条件は、再度の較正処理が必要と考え得る条件が設定される。例えば、上述のように、処理が完了したロット数や、ボンディング作業の作業時間、温度検出部によって検出される温度等が設定条件の候補となる。
【0078】
ステップS13で、較正制御部213が条件を満たすと判断した場合には、ステップS11へ戻る。満たさないと判断した場合には、ステップS14へ進む。ステップS14へ進んだ場合は、実装制御部214は、その時点におけるボンディング装置100の状態が予め設定された平行調整タイミングの条件を満たすか否かを判断する。予め設定される平行調整タイミングの条件は、平行調整処理が必要と考え得る条件が設定される。例えば、上述のように周縁部に設定された3つの単位領域322へ半導体チップ310を実装し終えた時点や、所定個数や所定ロット数の半導体チップ310を実装し終えた時点が設定条件の候補となる。なお、上述のように、リードフレーム330をステージ190上に載置した時点を設定条件としてもよい。
【0079】
ステップS14で、実装制御部214が条件を満たすと判断した場合には、ステップS15へ進み、検出部215は、平行調整ステップを開始する。平行調整ステップが完了したらステップS12へ戻る。ステップS14で条件を満たさないと判断した場合には、ステップS16へ進む。
【0080】
ステップS16へ進むと、実装制御部214は、予定された全ての実装処理が完了したか否かを判断する。実装処理すべき半導体チップ310が残っていると判断したらステップS12へ戻り、すべての実装処理が完了したと判断したら一連の処理を終了する。
【0081】
図16は、較正制御ステップの手順を説明するサブフロー図である。較正制御ステップでは、主に、図4を用いて説明した処理を実行する。較正制御部213は、ステップS1101で、指標プレート172を移動して較正指標173を第3撮像ユニット150の視野中心へ投入する。続いてステップS1102で、較正制御部213は、較正指標173が第1撮像ユニット130および第2撮像ユニット140の焦点面110aとなるように、かつボンディングツール120の直下に較正指標173が位置するようにヘッド部110を移動させる。
【0082】
較正制御部213は、ステップS1103へ進み、画像取得部211を介して各撮像ユニットに撮像を行わせ、第1撮像ユニット130から第1俯瞰画像を、第2撮像ユニット140から第2俯瞰画像を、第3撮像ユニット150から仰視画像を取得する。そして、続くステップS1104で、第1俯瞰画像と第2俯瞰画像にそれぞれ写り込む較正指標173の像の画像座標に基づいて較正指標173の三次元座標を算出し、仰視画像に写り込む較正指標173の像に基づいて較正指標173の三次元座標を算出する。較正制御部213は、このように算出されたそれぞれの三次元座標のうち、XY平面方向の差分を較正値として算出する。算出した較正値は、較正データ221として記憶部220へ記憶する。
【0083】
その後、較正制御部213は、ステップS1105で、指標プレート172を移動して較正指標173を第3撮像ユニット150の視野から退避させる。較正指標173の退避が完了したら、メインのフローへ戻る。なお、較正指標173の退避は、続く実装処理の中で行ってもよい。
【0084】
図17は、実装制御ステップの手順を説明するサブフロー図である。実装制御ステップでは、主に、図5から図12を用いて説明した処理を実行する。
【0085】
実装制御部214は、ステップS1201で、ヘッド部110をチップ供給装置500の上部へ移動させ、ボンディングツール120を降下させる。そして、チップ供給装置500に載置された半導体チップ310のうち、実装対象となる半導体チップ310をピックアップ機構510と反転機構520により反転させ、これをコレット122によって吸着して拾得し、ボンディングツール120を上昇させる。
【0086】
実装制御部214は、ステップS1202で、俯瞰用撮像ユニットの焦点面110aが指標面173aと一致するように、かつボンディングツール120の直下に第3撮像ユニット150が位置するようにヘッド部110を移動させる。さらにステップS1203で、保持している半導体チップ310のうちリードフレーム330への接触予定面が指標面173aと一致するように、ボンディングツール120を降下させる。
【0087】
このような配置の調整が完了したら、実装制御部214は、ステップS1204で、ボンディングツール120に保持された半導体チップ310の接触予定面を第3撮像ユニット150に撮像させる。そして、ステップS1205で、第3撮像ユニット150が出力した仰視画像を取得し、写り込んでいるチップ基準マーク311の画像座標等に基づいて半導体チップ310の基準位置の三次元座標を認識する。
【0088】
実装制御部214は、ステップS1206で、保持している半導体チップ310が俯瞰用撮像ユニットの視野から退避する位置までボンディングツール120を上昇させると共に、ボンディングツール120が、これから半導体チップ310を載置するダイパッド320の直上となるようにヘッド部110を移動させる。続くステップS1207で、俯瞰用撮像ユニットの焦点面110aがリードフレーム330のフレーム面330aと一致するようにヘッド部110の高さを調整する。
【0089】
このような配置の調整が完了したら、実装制御部214は、ステップS1208で、載置予定面のうち対象とするダイパッド320とパッド基準マーク321を含む単位領域322を第1撮像ユニット130と第2撮像ユニット140に撮像させる。そして、ステップS1209で、第1撮像ユニット130が出力した第1俯瞰画像と第2撮像ユニット140が出力した第2俯瞰画像を取得し、写り込んでいるパッド基準マーク321の画像座標および較正値等に基づいて目標位置の三次元座標を算出する。
【0090】
目標位置が確定したら、ステップS1210へ進み、半導体チップ310の基準位置が当該目標位置と合致するようにヘッド部110とボンディングツール120を移動させ、半導体チップ310をダイパッド320上に載置する。その後、半導体チップ310を加圧/加熱し、ボンディングを完了させる。ボンディングが完了したら、ボンディングツール120を上昇させ、メインのフローへ戻る。
【0091】
図18は、平行調整ステップの手順を説明するサブフロー図である。平行調整ステップでは、主に、図13図14を用いて説明した処理を実行する。
【0092】
検出部215は、ステップS1501で、実装制御ステップで算出された3点以上のパッド基準マークの三次元座標を取得する。続くステップS1502で、取得した三次元座標に基づいてフレーム面330aの基準平面に対する傾斜を検出する。駆動制御部212は、ステップS1503で、検出部215が検出した傾斜を0とするように、本実施形態においては特にフレーム面330aが水平となるように、ステージ駆動モータ191を駆動する。このとき、フレーム面330aの高さが指標面173aの高さとずれている場合には、同一高さとなるように高さ調整を併せて行うとよい。フレーム面330aの調整が完了したら、メインのフローへ戻る。
【0093】
以上の説明においては、リードフレーム330にフレーム面330aに半導体チップ310をボンディングする実施形態を説明したが、半導体チップを既に基板面に実装した別の半導体チップに積層して実装する実施形態においても、上記の平行調整を実施し得る。図19は、当該実施形態に係る第1の応用例を説明するためのボンディング装置100の部分斜視図である。第1の応用例に係るボンディング装置100は、上述のボンディング装置100と同様のハードウェア構成であるが、半導体チップを積層して実装する実装制御を行う点が異なる。図19は、図9に対応する図であるが、既に説明した要素と同一の要素については、特に言及しない限り同一の符番を付してその説明を省略する。
【0094】
リードフレーム330のそれぞれの単位領域322に、第一層となる第1半導体チップ310aを実装するまでは、上記の説明において半導体チップ310をそれぞれの単位領域322に実装するまでの処理と同様である。図19は、第二層となる第2半導体チップ310bを、第1半導体チップ310aに重ねて実装する様子を表す。具体的には、これから実装しようとする第2半導体チップ310bをコレット122が吸着した状態であり、俯瞰用撮像ユニットが、当該第2半導体チップ310bを載置する載置面である既に実装された第1半導体チップ310aの上面を撮像する様子である。
【0095】
第1半導体チップ310aの上面には、基準位置を示す積層基準マーク323が設けられており、第1俯瞰画像、第2俯瞰画像には共に当該積層基準マーク323が写り込む。実装制御部214は、これらの画像から積層基準マーク323の三次元座標(Xj,Yj,Zj)を算出する。ここで、既に他の2つ以上の積層基準マーク323の三次元座標を算出していれば、検出部215は、それぞれの第1半導体チップ310aの上面を包含する作業平面の基準平面に対する傾斜を算出することができる。もし、当該作業平面が基準平面に対して許容範囲以上に傾斜しているのであれば、駆動制御部212は、当該傾斜が解消されるようにステージ駆動モータ191を駆動する。傾斜が解消されたら、あるいは許容範囲以上の傾斜が検出されなければ、実装制御部214は、ボンディングツール120を降下させて、第1半導体チップ310aの上面に第2半導体チップ310bをボンディングする。
【0096】
上記の平行調整は、ワイヤボンダにおいても実施し得る。図20は、当該実施形態に係る第2の応用例を説明するためのワイヤボンダとしてのボンディング装置100’の部分斜視図である。図20は、図9に対応する図であるが、既に説明した要素と同一の要素については、特に言及しない限り同一の符番を付してその説明を省略する。
【0097】
ボンディング装置100’は、半導体チップ340のパッド電極341とリードフレーム330’のリード電極342をボンディングワイヤであるワイヤ350により結線するボンディング装置である。パッド電極341とリード電極342は、三次元座標を計測してワイヤ350を供給する対象である。
【0098】
ヘッド部110’は、ボンディングツール120’、第1撮像ユニット130、第2撮像ユニット140を支持する。ボンディングツール120’は、例えば金線であるワイヤ350を供給する機能を担い、ワイヤクランパ、トランスデューサ、キャピラリを包含する。パッド電極341へのファーストボンド時には図示するように先端部からワイヤ350が延出され、不図示のトーチ電極によりワイヤ350の先端部にFAB(Free Air Ball)が形成される。
【0099】
実装制御部214は、ワイヤ350により結線するパッド電極341とリード電極342を俯瞰用撮像ユニットによって撮像し、それぞれの三次元座標を算出する。ここで、既に他の2つ以上のリード電極342の三次元座標を算出していれば、検出部215は、リードフレーム330’のフレーム面の基準平面に対する傾斜を算出することができる。もし、当該フレーム面が基準平面に対して許容範囲以上に傾斜しているのであれば、駆動制御部212は、当該傾斜が解消されるようにステージ駆動モータ191を駆動する。傾斜が解消されたら、あるいは許容範囲以上の傾斜が検出されなければ、実装制御部214は、ボンディングツール120’を降下させて、結線処理を実行する。
【0100】
以上、2つの変形例と共に本実施形態を説明したが、これらのボンディング装置に限らず、ステージに載置された基板および基板に既に実装された他の実装体の少なくともいずれかに対して実装作業を行う実装ツールが俯瞰用撮像ユニットと共にヘッド部に支持され、当該ヘッド部がステージに対して変位して実装処理を行う半導体装置であれば、第1俯瞰画像および第2俯瞰画像に基づいて算出される複数箇所のそれぞれの高さ情報を用いて、ステージ面または作業平面の基準平面に対する傾斜を検出することができる。本実施形態においては、検出した傾斜を解消するようにステージを駆動して実装処理を継続する場合を説明したが、検出した傾斜に基づくその後の処理は、ステージを駆動する処理に限らない。例えば、許容範囲以上の傾斜を検出した時点で、実装処理を中止しても構わない。
【符号の説明】
【0101】
100、100’…ボンディング装置、110、110’…ヘッド部、110a…焦点面、111…ヘッド駆動モータ、120、120’…ボンディングツール、121…ツール駆動モータ、122…コレット、123…コレット中心、124…ヒータ、130…第1撮像ユニット、131…第1光学系、131a…物側レンズ群、131b…像側レンズ群、132…第1撮像素子、133…絞り、140…第2撮像ユニット、141…第2光学系、142…第2撮像素子、150…第3撮像ユニット、150a…焦点面、151…第3光学系、152…第3撮像素子、170…較正ユニット、171…指標駆動モータ、172…指標プレート、173…較正指標、173a…指標面、180…架台、190…ステージ、190a…ステージ面、191…ステージ駆動モータ、210…演算処理部、211…画像取得部、212…駆動制御部、213…較正制御部、214…実装制御部、215…検出部、220…記憶部、221…較正データ、230…入出力デバイス、310…半導体チップ、310a…第1半導体チップ、310b…第2半導体チップ、311…チップ基準マーク、320…ダイパッド、321…パッド基準マーク、321a…第1パッド基準マーク、321b…第2パッド基準マーク、321c…第3パッド基準マーク、322…単位領域、322a…第1単位領域、322b…第2単位領域、322c…第3単位領域、323…積層基準マーク、330、330’…リードフレーム、330a…フレーム面、340…半導体チップ、341…パッド電極、342…リード電極、350…ワイヤ、500…チップ供給装置、510…ピックアップ機構、520…反転機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20