IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎油工株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-プレス成形装置 図1
  • 特開-プレス成形装置 図2
  • 特開-プレス成形装置 図3
  • 特開-プレス成形装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072675
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】プレス成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/58 20060101AFI20240521BHJP
   B30B 9/00 20060101ALI20240521BHJP
   B30B 15/18 20060101ALI20240521BHJP
   B30B 15/22 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B29C43/58
B30B9/00 C
B30B15/18 E
B30B15/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183652
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000199810
【氏名又は名称】川崎油工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】魚住 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 練
【テーマコード(参考)】
4E089
4F204
【Fターム(参考)】
4E089EA01
4E089EB01
4E089EB03
4E089EC05
4E089ED03
4E089EE03
4E089FA01
4E089FC03
4F204AA36
4F204AC03
4F204AD16
4F204AP02
4F204AP06
4F204AR20
4F204FA01
4F204FB01
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F204FQ01
(57)【要約】
【課題】成形時間を短縮することができるプレス成形装置を提供する。
【解決手段】プレス成形装置1は、ベッド11、スライド15、複数のレベリングシリンダ4および制御装置8を含む。制御装置8は、圧力センサ6で検出されるレベリングシリンダ4の受圧室44の圧力が減少から増加に転じるまでは位置検出器7で検出されるレベリングシリンダ4のロッド42の上端位置に基づいてレベリングシリンダ4用のサーボバルブ5を制御し、その後は圧力センサ6で検出される圧力に基づいてサーボバルブ5を制御する。さらに、制御装置8は、圧力センサ6で検出される圧力に基づいてサーボバルブ5を制御する際、位置検出器7のうちの少なくとも1つで検出されるロッド42の上端位置が、圧力センサ6で検出される圧力が設定値になったときから所定量だけ下降したときに、FRP材2の硬化が終了したと判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟化したFRP材を下金型と上金型で形成されるキャビティの形状に成形するプレス成形装置であって、
前記下金型が取り付けられたベッドと、
前記上金型が取り付けられたスライドと、
上端が前記スライドと当接した後に前記スライドと共に下降するロッドを含む複数のレベリングシリンダと、
前記複数のレベリングシリンダへの作動油の供給および前記複数のレベリングシリンダからの作動油の排出を制御する複数のサーボバルブと、
前記複数のレベリングシリンダの前記ロッドの上端位置を検出する複数の位置検出器と、
前記複数のレベリングシリンダの受圧室の圧力を検出する複数の圧力センサと、
前記複数の圧力センサで検出される圧力が減少から増加に転じるまでは前記複数の位置検出器で検出される前記ロッドの上端位置に基づいて前記複数のサーボバルブを制御し、前記複数の圧力センサで検出される圧力が減少から増加に転じた後は前記複数の圧力センサで検出される圧力に基づいて前記複数のサーボバルブを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記複数の圧力センサで検出される圧力に基づいて前記複数のサーボバルブを制御する際、前記複数の位置検出器のうちの少なくとも1つで検出される前記ロッドの上端位置が、前記複数の圧力センサで検出される圧力が設定値になったときから所定量だけ下降したときに、前記FRP材の硬化が終了したと判定する、プレス成形装置。
【請求項2】
前記複数の圧力センサで検出される圧力が前記設定値になったときの前記ロッドの上端位置を100%、成形工程における前記ロッドの上端位置の下限を0%としたき、
前記制御装置は、前記複数の位置検出器のうちの少なくとも1つで検出される前記ロッドの上端位置が百分率で所定値となったときに、前記ロッドの上端位置が前記所定量だけ下降したと判定する、請求項1に記載のプレス成形装置。
【請求項3】
前記設定値は、前記受圧室の圧力を一定に維持するときの圧力である、請求項1または2に記載のプレス成形装置。
【請求項4】
軟化したFRP材を下金型と上金型で形成されるキャビティの形状に成形するプレス成形装置であって、
前記下金型が取り付けられたベッドと、
前記上金型が取り付けられたスライドと、
上端が前記スライドと当接した後に前記スライドと共に下降するロッドを含む複数のレベリングシリンダと、
前記複数のレベリングシリンダへの作動油の供給および前記複数のレベリングシリンダからの作動油の排出を制御する複数のサーボバルブと、
前記複数のレベリングシリンダの前記ロッドの上端位置を検出する複数の位置検出器と、
前記複数のレベリングシリンダの受圧室の圧力を検出する複数の圧力センサと、
前記複数の圧力センサで検出される圧力が減少から増加に転じるまでは前記複数の位置検出器で検出される前記ロッドの上端位置に基づいて前記複数のサーボバルブを制御し、前記複数の圧力センサで検出される圧力が減少から増加に転じた後は前記複数の圧力センサで検出される圧力に基づいて前記複数のサーボバルブを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記複数の圧力センサで検出される圧力に基づいて前記複数のサーボバルブを制御する際、前記複数の位置検出器のうちの少なくとも1つで検出される前記ロッドの上端位置の所定時間での変化量が閾値を下回ったときに、前記FRP材の硬化が終了したと判定する、プレス成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FRP(Fiber Reinforced Plastic)材を成形するプレス成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、炭素繊維やガラス繊維などの繊維を含む、軟化したFRP材を、下金型と上金型とで形成されるキャビティ形状に成形するプレス成形装置が知られている。このようなプレス成形装置は、下金型が取り付けられるベッドと、上金型が取り付けられるスライドを含む。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数のレベリングシリンダを用いてスライドの平衡を保ちながらスライドを下降させるプレス成形装置が開示されている。各レベリングシリンダへの作動油の供給および当該レベリングシリンダからの作動油の排出はサーボバルブにより制御される。
【0004】
具体的に、各レベリングシリンダは、上端がスライドと当接した後にスライドと共に下降するロッドを含む。ロッドの上端位置は位置検出器によって検出され、ロッドがスライドと共に下降する際はロッドの上端位置に基づいてサーボバルブが制御される。つまり、ロッドの下降速度(ロッドの上端位置の時間変化率)が設定速度となるようにレベリングシリンダからの作動油の排出量が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-222216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、プレス成形装置では、FRP材が硬化するのに十分な比較的に長い時間が成形時間として設定され、この成形時間の経過後に成形工程が完了したものとしてスライドが上昇される。これに対し、成形時間を短縮したいという要望がある。
【0007】
そこで、本発明は、成形時間を短縮することができるプレス成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一つの側面から、軟化したFRP材を下金型と上金型で形成されるキャビティの形状に成形するプレス成形装置であって、前記下金型が取り付けられたベッドと、前記上金型が取り付けられたスライドと、上端が前記スライドと当接した後に前記スライドと共に下降するロッドを含む複数のレベリングシリンダと、前記複数のレベリングシリンダへの作動油の供給および前記複数のレベリングシリンダからの作動油の排出を制御する複数のサーボバルブと、前記複数のレベリングシリンダの前記ロッドの上端位置を検出する複数の位置検出器と、前記複数のレベリングシリンダの受圧室の圧力を検出する複数の圧力センサと、前記複数の圧力センサで検出される圧力が減少から増加に転じるまでは前記複数の位置検出器で検出される前記ロッドの上端位置に基づいて前記複数のサーボバルブを制御し、前記複数の圧力センサで検出される圧力が減少から増加に転じた後は前記複数の圧力センサで検出される圧力に基づいて前記複数のサーボバルブを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記複数の圧力センサで検出される圧力に基づいて前記複数のサーボバルブを制御する際、前記複数の位置検出器のうちの少なくとも1つで検出される前記ロッドの上端位置が、前記複数の圧力センサで検出される圧力が設定値になったときから所定量だけ下降したときに、前記FRP材の硬化が終了したと判定する、プレス成形装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、別の側面から、軟化したFRP材を下金型と上金型で形成されるキャビティの形状に成形するプレス成形装置であって、前記下金型が取り付けられたベッドと、前記上金型が取り付けられたスライドと、上端が前記スライドと当接した後に前記スライドと共に下降するロッドを含む複数のレベリングシリンダと、前記複数のレベリングシリンダへの作動油の供給および前記複数のレベリングシリンダからの作動油の排出を制御する複数のサーボバルブと、前記複数のレベリングシリンダの前記ロッドの上端位置を検出する複数の位置検出器と、前記複数のレベリングシリンダの受圧室の圧力を検出する複数の圧力センサと、前記複数の圧力センサで検出される圧力が減少から増加に転じるまでは前記複数の位置検出器で検出される前記ロッドの上端位置に基づいて前記複数のサーボバルブを制御し、前記複数の圧力センサで検出される圧力が減少から増加に転じた後は前記複数の圧力センサで検出される圧力に基づいて前記複数のサーボバルブを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記複数の圧力センサで検出される圧力に基づいて前記複数のサーボバルブを制御する際、前記複数の位置検出器のうちの少なくとも1つで検出される前記ロッドの上端位置の所定時間での変化量が閾値を下回ったときに、前記FRP材の硬化が終了したと判定する、プレス成形装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成形時間を短縮することができるプレス成形装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るプレス成形装置の概略構成図である。
図2】前記実施形態におけるレベリングシリンダのロッドの上端位置および受圧室の圧力の経時的変化を示すグラフである。
図3】変形例におけるレベリングシリンダのロッドの上端位置および受圧室の圧力の経時的変化を示すグラフである。
図4】別の変形例におけるレベリングシリンダのロッドの上端位置および受圧室の圧力の経時的変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本発明の一実施形態に係るプレス成形装置1を示す。このプレス成形装置1は、軟化したFRP材2を下金型31と上金型32で形成されるキャビティ30の形状に成形するものである。この成形により、キャビティ30と同形状のFRP成形品が得られる。つまり、FRP材2は未成形の原材料である。
【0013】
FRP材2は、例えばシート状であるが、不定形のゲル状であってもよい。FRP材2中の繊維は、方向性を有してもよいし、方向性を有さなくてもよい。FRP材2中の繊維が方向性を有する場合、FRP材2の大きさは、キャビティ30を平面展開した大きさとほぼ同じであってもよい。
【0014】
本実施形態では、FRP材2のマトリクス樹脂が熱硬化性樹脂である。このような熱硬化性樹脂としては、エポキシ(EP)、ポリエステル(PEs)、フェノール(PH)などが挙げられる。ただし、FRP材2のマトリクス樹脂は熱可塑性樹脂であってもよい。このような熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネイト(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)などが挙げられる。
【0015】
FRP材2のマトリクス樹脂が熱硬化性樹脂である場合、FRP材2の軟化はマトリクス樹脂の流動性によってもたらされ、FRP材2のマトリクス樹脂が熱可塑性樹脂の場合、FRP材2がマトリクス樹脂のガラス転移点または融点以上に加熱されることで軟化する。
【0016】
具体的に、プレス成形装置1は、上面に下金型31が取り付けられたベッド11と、ベッド11の上方に位置するクラウン13と、ベッド11の四隅から立ち上がってクラウン13を支持するアップライト12と、ベッド11、クラウン13およびアップライト12で囲まれる空間内に配置されたスライド15を含む。
【0017】
スライド15の下面には、上金型32が取り付けられている。クラウン13には、スライド15を昇降させる少なくとも1つの加圧シリンダ14が設けられている。加圧シリンダ14の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。本実施形態では、加圧シリンダ14が油圧シリンダであるが、加圧シリンダ14は電動シリンダであってもよい。
【0018】
図示は省略するが、下金型31および上金型32にはヒータが組み込まれている。上述したように、本実施形態ではFRP材2のマトリクス樹脂が熱硬化性樹脂であるため、ヒータは下金型31および上金型32をFRP材2のマトリクス樹脂の硬化に適した温度(例えば、マトリクス樹脂がEPである場合は180℃)に保つ役割を果たす。FRP材2のマトリクス樹脂が熱可塑性樹脂である場合、ヒータは下金型31および上金型32をマトリクス樹脂のガラス転移点または融点未満の成形温度(例えば、マトリクス樹脂がPPである場合は140℃)に保つ役割を果たす。
【0019】
さらに、ベッド11には、スライド15の下面の四隅に対応する位置に、4つ(図1ではそのうちの2つのみを図示)のレベリングシリンダ4が設けられている。各レベリングシリンダ4は、上下方向に延びる管体ならびにこの管体の両端を閉塞する上カバーおよび下カバーを有するハウジング41と、ハウジング41内に配置されたピストン43と、ピストン43から上向きに延びてハウジング41の上カバーを貫通するロッド42を含む。ピストン43とハウジング41の下カバーとの間には受圧室44が形成されている。
【0020】
本実施形態では、ロッド42がピストン43から下向きにも延びてハウジング41の下カバーも貫通している。ただし、ロッド42は、ピストン43から上向きのみに延びてもよい。
【0021】
各レベリングシリンダ4のロッド42は、受圧室44に作動油が供給されることによって上昇し、上端がスライド15と当接した後にスライド15と共に下降する。各レベリングシリンダ4には、受圧室44への作動油の供給および受圧室44からの作動油の排出を制御するサーボバルブ5が設けられている。サーボバルブ5は制御装置8により制御される。
【0022】
制御装置8は、レベリングシリンダ4にそれぞれ設けられた4つの位置検出器7、およびレベリングシリンダ4にそれぞれ設けられた4つの圧力センサ6と電気的に接続されている。各位置検出器7は、対応するレベリングシリンダ4のロッド42の上端位置を検出し、各圧力センサ6は、対応するレベリングシリンダ4の受圧室44の圧力を検出する。例えば、位置検出器7は、ロッド42の内部に配置されたリニアスケールである。
【0023】
例えば、制御装置8は、ROMやRAMなどのメモリと、HDDやSSDなどのストレージと、CPUを有するコンピュータであり、ROMまたはストレージに格納されたプログラムがCPUにより実行される。
【0024】
次に、制御装置8が行う制御を具体的に説明する。制御装置8は、使用者から図略の入力装置(例えば、押しボタン)を介して成形開始が入力されると、図略の切換弁を制御して加圧シリンダ14を伸長させることでスライド15を下降させるとともに、サーボバルブ5を制御して各レベリングシリンダ4の受圧室44へ作動油を供給することで各レベリングシリンダ4のロッド42を上昇させる。
【0025】
スライド15が下降して全てのレベリングシリンダ4のロッド42の上端に当接した後は、制御装置8は、まずは、図2に示すように、各圧力センサ6で検出される受圧室44の圧力が減少から増加に転じるまでは各位置検出器7で検出されるロッド42の上端位置に基づいて対応するサーボバルブ5を制御する。具体的には、受圧室44からの作動油の排出量が、ロッド42の上端位置の時間変化率、すなわちロッド42の下降速度が設定速度となるように調整される。これにより、ロッド42およびスライド15が同一速度で下降する。
【0026】
上金型32がFRP材2に当接すると、スライド15に対する反力の一部をFRP材2が負担するため、レベリングシリンダ4の受圧室44の圧力が減少する。その後、キャビティ30内にFRP材2が充填されると、レベリングシリンダ4の受圧室44の圧力が増加する。
【0027】
制御装置8は、各圧力センサ6で検出される受圧室44の圧力が減少から増加に転じた後は、各圧力センサ6で検出される受圧室44の圧力に基づいて対応するサーボバルブ5を制御する。本実施形態では、FRP材2のマトリクス樹脂が熱硬化性樹脂であるので、FRP材2がキャビティ30充填後のゲル化によって膨張する。このため、レベリングシリンダ4の受圧室44の圧力は膨張が収まるまで増加した後に減少する。
【0028】
制御装置8は、各圧力センサ6で検出される受圧室44の圧力が設定値Psまで減少すると、各圧力センサ6で検出される受圧室44の圧力が設定値Psに維持されるように対応するサーボバルブ5を制御する。すなわち、受圧室44への作動油の供給量または受圧室44からの作動油の排出量が調整される。これにより、スライド15に対する反力が一定に保たれる。つまり、設定値Psは、受圧室44の圧力を一定に維持するときの圧力である。設定値Psは、使用者により任意に設定可能である。
【0029】
その後、制御装置8は、4つの位置検出器7のうちの少なくとも1つで検出されるロッド42の上端位置が、各圧力センサ6で検出される圧力が設定値Psになったときから所定量αだけ下降したときに、FRP材2の硬化が終了したと判定する。FRP材2の硬化が終了したと判定すると、制御装置8はスライド15を上昇させる。
【0030】
制御装置8は、4つの位置検出器7のうちのいずれか1つで検出されるロッド42の上端位置を使用してもよいし、4つの位置検出器7の全てで検出されるロッド42の上端位置を使用してもよい。4つの位置検出器7の全てで検出されるロッド42の上端位置を使用する場合は、例えば、4つの位置検出器7の全てで検出されるロッド42の上端位置の平均値を使用してもよい。
【0031】
本実施形態では、制御装置8が、4つの位置検出器7のうちの少なくとも1つで検出されるロッド42の上端位置が百分率で所定値であるβ%となったときに、ロッド42の上端位置が所定量αだけ下降したと判定する。この場合、各圧力センサ6で検出される圧力が設定値Psになったときのロッド42の上端位置が100%、成形工程におけるロッド42の上端位置の下限が0%である。成形工程におけるロッド42の上端位置の下限は、上金型32が下金型31に当接するときの位置であってもよいし、上金型32が下金型31に当接する直前の、使用者により設定された位置であってもよい。
【0032】
上記のβ%は、FRP材2のマトリクス樹脂に応じて適宜決定される。例えば、マトリクス樹脂がPEsである場合、β%は80~99%である。マトリクス樹脂がPEsである場合にβ%はより好ましくは86~97%であり、さらに好ましくは91~93%である。なお、図2では、ロッド42の上端位置の推移を誇張して描いているため、β%の位置が実際の位置と異なる位置に描かれている。
【0033】
以上説明したように、本実施形態のプレス成形装置1では、キャビティ30内にFRP材2が充填されるまでは位置検出器7の検出結果に基づく位置制御によってスライド15の平衡を保ちながらレベリングシリンダ4のロッド42をスライド15と共に下降させることができ、その後は圧力センサ6の検出結果に基づく圧力制御によってスライド15の平衡を保つとともにスライド15に対する反力を一定に保ちながら上金型32をFRP材2に押し付けることができる。しかも、FRP材2の硬化の終了が制御装置8によって自動的に判定されるので、成形時間を短縮することができる。
【0034】
<変形例>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0035】
例えば、制御装置8は、FRP材2の硬化が終了したと判定する際に、4つの位置検出器7の結果からロッド42の上端位置が所定量αだけ下降したことを直接的に判定してもよい。この場合、所定量α(単位:mm)は、FRP材2のマトリクス樹脂に応じて適宜決定される。例えば、マトリクス樹脂がPEsである場合、所定量αは、成形前のFRP材2の厚さの1~20%である。マトリクス樹脂がPEsである場合に所定量αはより好ましくは成形前のFRP材2の厚さの3~14%であり、さらに好ましくは成形前のFRP材2の厚さの7~9%である。
【0036】
あるいは、図3に示すように、制御装置8は、4つの位置検出器7のうちの少なくとも1つで検出されるロッド42の上端位置の所定時間γでの変化量ΔHが閾値Thを下回ったときに、FRP材2の硬化が終了したと判定してもよい。例えば、成形前の厚さが3mm、マトリクス樹脂がPEsであるFRP材2に対しては、所定時間γは10~40秒間であり、閾値Thは0.01~0.6mmである。当該FRP材2に対してより好ましくは、所定時間は20~30秒間であり、閾値Thは0.02~0.2mmである。
【0037】
また、FRP材2に含まれる樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、図4に示すようにFRP材2の膨張は発生しないが、前記実施形態および上述した変形例の制御装置8によるFRP材2の硬化の終了の判定は、FRP材2に含まれる樹脂が熱可塑性樹脂である場合にも適用可能である。
【0038】
<まとめ>
第1の態様として、本開示は、一つの側面から、軟化したFRP材を下金型と上金型で形成されるキャビティの形状に成形するプレス成形装置であって、前記下金型が取り付けられたベッドと、前記上金型が取り付けられたスライドと、上端が前記スライドと当接した後に前記スライドと共に下降するロッドを含む複数のレベリングシリンダと、前記複数のレベリングシリンダへの作動油の供給および前記複数のレベリングシリンダからの作動油の排出を制御する複数のサーボバルブと、前記複数のレベリングシリンダの前記ロッドの上端位置を検出する複数の位置検出器と、前記複数のレベリングシリンダの受圧室の圧力を検出する複数の圧力センサと、前記複数の圧力センサで検出される圧力が減少から増加に転じるまでは前記複数の位置検出器で検出される前記ロッドの上端位置に基づいて前記複数のサーボバルブを制御し、前記複数の圧力センサで検出される圧力が減少から増加に転じた後は前記複数の圧力センサで検出される圧力に基づいて前記複数のサーボバルブを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記複数の圧力センサで検出される圧力に基づいて前記複数のサーボバルブを制御する際、前記複数の位置検出器のうちの少なくとも1つで検出される前記ロッドの上端位置が、前記複数の圧力センサで検出される圧力が設定値になったときから所定量だけ下降したときに、前記FRP材の硬化が終了したと判定する、プレス成形装置を提供する。
【0039】
上記の構成によれば、キャビティ内にFRP材が充填されまでは位置検出器の検出結果に基づく位置制御によってスライドの平衡を保ちながらレベリングシリンダのロッドをスライドと共に下降させることができ、その後は圧力センサの検出結果に基づく圧力制御によってスライドの平衡を保つとともにスライドに対する反力を一定に保ちながら上金型をFRP材に押し付けることができる。しかも、FRP材の硬化の終了が制御装置によって自動的に判定されるので、成形時間を短縮することができる。
【0040】
第2の態様として、第1の態様において、例えば、前記複数の圧力センサで検出される圧力が前記設定値になったときの前記ロッドの上端位置を100%、成形工程における前記ロッドの上端位置の下限を0%としたき、前記制御装置は、前記複数の位置検出器のうちの少なくとも1つで検出される前記ロッドの上端位置が百分率で所定値となったときに、前記ロッドの上端位置が前記所定量だけ下降したと判定してもよい。
【0041】
第3の態様として、第1または第2の態様において、例えば、前記設定値は、前記受圧室の圧力を一定に維持するときの圧力であってもよい。
【0042】
第4の態様として、本開示は、別の側面から、軟化したFRP材を下金型と上金型で形成されるキャビティの形状に成形するプレス成形装置であって、前記下金型が取り付けられたベッドと、前記上金型が取り付けられたスライドと、上端が前記スライドと当接した後に前記スライドと共に下降するロッドを含む複数のレベリングシリンダと、前記複数のレベリングシリンダへの作動油の供給および前記複数のレベリングシリンダからの作動油の排出を制御する複数のサーボバルブと、前記複数のレベリングシリンダの前記ロッドの上端位置を検出する複数の位置検出器と、前記複数のレベリングシリンダの受圧室の圧力を検出する複数の圧力センサと、前記複数の圧力センサで検出される圧力が減少から増加に転じるまでは前記複数の位置検出器で検出される前記ロッドの上端位置に基づいて前記複数のサーボバルブを制御し、前記複数の圧力センサで検出される圧力が減少から増加に転じた後は前記複数の圧力センサで検出される圧力に基づいて前記複数のサーボバルブを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記複数の圧力センサで検出される圧力に基づいて前記複数のサーボバルブを制御する際、前記複数の位置検出器のうちの少なくとも1つで検出される前記ロッドの上端位置の所定時間での変化量が閾値を下回ったときに、前記FRP材の硬化が終了したと判定する、プレス成形装置を提供する。
【0043】
上記の構成によれば、キャビティ内にFRP材が充填されまでは位置検出器の検出結果に基づく位置制御によってスライドの平衡を保ちながらレベリングシリンダのロッドをスライドと共に下降させることができ、その後は圧力センサの検出結果に基づく圧力制御によってスライドの平衡を保つとともにスライドに対する反力を一定に保ちながら上金型をFRP材に押し付けることができる。しかも、FRP材の硬化の終了が制御装置によって自動的に判定されるので、成形時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 プレス成形装置
11 ベッド
15 スライド
2 FRP材
30 キャビティ
31 下金型
32 上金型
4 レベリングシリンダ
42 ロッド
44 受圧室
5 サーボバルブ
6 圧力センサ
7 位置検出器
8 制御装置
図1
図2
図3
図4