(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072717
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】眼科組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/737 20060101AFI20240521BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240521BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A61K31/737
A61P27/02
A61K9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183722
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100135242
【弁理士】
【氏名又は名称】江守 英太
(72)【発明者】
【氏名】木村 宏美
(72)【発明者】
【氏名】能美 君人
(72)【発明者】
【氏名】上田 真之介
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA26
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
(57)【要約】
【課題】目の異物感、目ヤニ、かすみ目及び涙目等の症状を改善することのできる眼科組成物を提供すること。
【解決手段】コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、目の異物感、目ヤニ、かすみ目及び涙目からなる群より選択される少なくとも1種の症状の改善用眼科組成物であって、該コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の総含有量が該眼科組成物の総量を基準として1w/v%である、眼科組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、目の異物感、目ヤニ、かすみ目及び涙目からなる群より選択される少なくとも1種の症状の改善、緩和、治療、又は予防用眼科組成物であって、該コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の総含有量が該眼科組成物の総量を基準として1w/v%である、眼科組成物。
【請求項2】
前記コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の重量平均分子量が8000~60000である、請求項1記載の眼科組成物。
【請求項3】
点眼剤である、請求項1又は2に記載の眼科組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
角膜は、外界から順に、角膜上皮、ボーマン膜、角膜実質、デスメ膜及び角膜内皮の5層で形成された、眼球最表面に構成された組織であり、外界と直接接することから、角膜には抗原、微生物及び砂埃等、種々の異物が侵入しやすい。
【0003】
炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインは細胞同士の情報を伝達し免疫機能を調節しているが、角膜への異物の侵入等により炎症性サイトカインが過剰に分泌され免疫機能のバランスが崩れると、目の異物感、目ヤニ、かすみ目及び涙目等の症状が惹起される。これらの症状を緩和するために、抗炎症剤等を配合した眼科組成物が提案されている。
【0004】
コンドロイチン硫酸又はその塩は、エネルギー代謝、新陳代謝、及び細胞呼吸の促進作用、並びに保水作用等を有しており、眼科組成物に配合されることがある(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかしながら、コンドロイチン硫酸又はその塩が、目の異物感、目ヤニ、かすみ目及び涙目に及ぼす影響はもちろん、角膜上皮細胞における炎症性サイトカインの発現に及ぼす影響について何ら知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、目の異物感、目ヤニ、かすみ目及び涙目等の症状を改善することのできる眼科組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を特定量含有する眼科組成物が、意外にも角膜上皮細胞における炎症性サイトカインの遺伝子発現を抑制すること、並びに目の異物感、目ヤニ、かすみ目及び涙目等の症状を改善することを見出した。
【0009】
本発明は、例えば、以下の各発明を提供する。
[1]
コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、目の異物感、目ヤニ、かすみ目及び涙目からなる群より選択される少なくとも1種の症状の改善、緩和、治療、又は予防用眼科組成物であって、該コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の総含有量が該眼科組成物の総量を基準として1w/v%である、眼科組成物。
[2]
前記コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の重量平均分子量が8000~60000である、[1]記載の眼科組成物。
[3]
点眼剤である、[1]又は[2]に記載の眼科組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、目の異物感、目ヤニ、かすみ目及び涙目等の症状を改善することのできる眼科組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において、特に記載のない限り、含有量の単位「%」は「w/v%」を意味し、「g/100mL」と同義である。
【0012】
本実施形態に係る眼科組成物は、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種(単に「(A)成分」とも表記する。)を含有する。
【0013】
コンドロイチン硫酸及びその塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0014】
コンドロイチン硫酸の塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩が挙げられる。
【0015】
コンドロイチン硫酸及びその塩としては、コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸のアルカリ金属塩が好ましく、コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸ナトリウムがより好ましく、コンドロイチン硫酸ナトリウムが更に好ましい。
【0016】
コンドロイチン硫酸及びその塩を配合する場合、有効成分として配合してもよく、目の異物感、目ヤニ、かすみ目及び涙目等の症状を改善する他の成分の効果を高めるものであってもよい。
【0017】
本明細書において「重量平均分子量」は、多角度光散乱検出器(MALS検出器)と示差屈折率検出器(RI検出器)をオンライン接続したゲル浸透クロマトグラフィーを使用することによって求めることができる。具体的には、下記の条件が提示される。
<標準試料調製>
コンドロイチン硫酸又はその塩5mgに、0.1M硝酸ナトリウム水溶液10mLを加え、室温で緩やかに攪拌し、完全に溶解させたもの。
<重量平均分子量の測定条件>
装置 :ゲル浸透クロマトグラフ-多角度光散乱計
検出器 :示差屈折率検出器(Wyatt Technology製 Optilab rEX)
多角度光散乱検出器(Wyatt Technology製 DAWN HELEOS)
カラム :Shodex OHpak SB-806M HQ 2本(φ7.8mm×30cm、昭和電工製)
溶媒 :0.1M硝酸ナトリウム水溶液
流速 :0.7mL/min
カラム温度 :23℃
検出器温度 :23℃
注入量 :0.2mL
データ処理 :Wyatt Technology製データ処理システム(ASTRA)
【0018】
コンドロイチン硫酸及びその塩の分子量は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されることを限度として特に制限されないが、上記の方法で算出された重量平均分子量の下限値としては、8000以上、10000以上、15000以上、及び20000以上が例示される。また、上記の方法で算出された重量平均分子量の上限値としては、60000以下、50000以下、45000以下、40000以下、35000以下、及び30000以下が例示される。好ましい重量平均分子量の範囲としては、8000~60000、20000~45000、及び20000~30000が例示される。
【0019】
コンドロイチン硫酸及びその塩は、市販のものを用いることもできる。コンドロイチン硫酸及びその塩は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。コンドロイチン硫酸及びその塩は、様々な重量平均分子量のコンドロイチン硫酸及びその塩を組み合わせて使用することができる。例えば、重量平均分子量56000のコンドロイチン硫酸ナトリウムと重量平均分子量25000のコンドロイチン硫酸ナトリウムとを組み合わせて使用することができる。そのように組み合わせて使用する場合には、重量平均分子量が8000~60000、好ましくは9000~45000、より好ましくは10000~40000のコンドロイチン硫酸及びその塩を原料として含有することが好ましい。
【0020】
本実施形態に係る眼科組成物における(A)成分の総含有量は特に限定されず、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分の総含有量の下限値は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、0.7w/v%以上であることが好ましく、0.9w/v%以上であることがより好ましい。(A)成分の総含有量の上限値は本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば1.2w/v%以下であってよく、1.1w/v%以下であることが好ましい。また、本実施形態に係る眼科組成物における(A)成分の総含有量は、眼科組成物の総量を基準として、1.0w/v%であることが特に好ましい。
【0021】
本実施形態に係る眼科組成物は、緩衝剤を更に含有してもよい。眼科組成物が緩衝剤を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。緩衝剤としては、ホウ酸緩衝剤(例えば、ホウ酸とホウ砂の組み合わせ等)、リン酸緩衝剤(例えば、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムの組み合わせ等)、トリス緩衝剤(例えば、トロメタモール)が好ましく、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤がより好ましく、ホウ酸及びその塩が更に好ましく、ホウ酸とホウ砂の組み合わせが更により好ましい。
【0022】
本実施形態に係る眼科組成物における緩衝剤の含有量は特に限定されず、緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。緩衝剤の含有量は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科組成物の総量を基準として、緩衝剤の総含有量が、0.01~10w/v%であることが好ましく、0.05~5w/v%であることがより好ましく、0.1~3w/v%であることが更に好ましい。
【0023】
本実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対する緩衝剤の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する緩衝剤の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、緩衝剤の総含有量が、0.01~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましく、0.1~3質量部であることが更に好ましい。
【0024】
本実施形態に係る眼科組成物のpHは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。本実施形態に係る眼科組成物のpHとしては、例えば、4.0~9.5であってよく、4.0~9.0であることが好ましく、4.5~9.0であることがより好ましく、4.5~8.5であることが更に好ましく、5.0~8.5であることが更により好ましく、5.0~8.0であることが特に好ましく、5.5~8.0であることがさらに特に好ましい。また、6.0~8.0、6.5~8.0、6.0~8.5、又は6.5~8.5であってもよい。
【0025】
本実施形態に係る眼科組成物は、必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧比に調節することができる。適切な浸透圧比は、眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定され得るが、例えば、0.4~5.0とすることができ、0.6~3.0とすることが好ましく、0.8~2.2とすることがより好ましく、0.8~2.0とすることが更に好ましい。また、0.7~2.0、又は0.7~1.5であってもよい。浸透圧比は、第十七改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(凝固点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
【0026】
本実施形態に係る眼科組成物の粘度は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば、特に限定されるものではない。本実施形態に係る眼科組成物の粘度としては、例えば、回転粘度計(TV-20型粘度計、東機産業社製、ローター;1°34’×R24)で測定した20℃における粘度が1~10000mPa・sであることが好ましく、1~8000mPa・sであることがより好ましく、1~1000mPa・sであることが更に好ましく、1~100mPa・sであることが更により好ましく、1~20mPa・sであることが特に好ましく、1.5~10mPa・sであることが最も好ましい。
【0027】
本実施形態に係る眼科組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記成分の他に種々の薬理活性成分及び生理活性成分から選択される成分を組み合わせて適当量含有していてもよい。当該成分は特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造販売承認基準2017年版(一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会 監修)に記載された眼科用薬における有効成分が例示できる。眼科用薬において用いられる成分として、具体的には、例えば、次のような成分が挙げられる。
抗アレルギー剤:例えば、クロモグリク酸又はその塩(例えば、クロモグリク酸ナトリウム)、トラニラスト、ペミロラストカリウム、アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト等。
抗ヒスタミン剤:例えば、クロルフェニラミン又はその塩(例えば、マレイン酸クロルフェニラミン)、ジフェンヒドラミン又はその塩(例えば、塩酸ジフェンヒドラミン)、イプロヘプチン又はその塩(例えば、塩酸イプロヘプチン)、レボカバスチン又はその塩(例えば、塩酸レボカバスチン)、ケトチフェン又はその塩(例えば、フマル酸ケトチフェン)、ペミロラストカリウム、オロパタジン又はその塩(例えば、オロパタジン塩酸塩)、エピナスチン又はその塩(例えば、エピナスチン塩酸塩)等。
ステロイド剤:例えば、プロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン酸フルチカゾン、フランカルボン酸モメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、フルニソリド等。
充血除去剤:例えば、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、dl-塩酸メチルエフェドリン等。
眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはトロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピン、塩酸ピロカルピン等。
消炎剤:例えば、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アラントイン、トラネキサム酸、リゾチーム、塩化リゾチーム、インドメタシン、プラノプロフェン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ケトプロフェン、フェルビナク、ベンダザック、ピロキシカム、ブフェキサマク、フルフェナム酸ブチル、イプシロン-アミノカプロン酸、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸又はその塩(例えば、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム)、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛等。
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム等。
アミノ酸類:例えば、L-アルギニン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、リジン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ吉草酸、トリメチルグリシン、タウリン、アスパラギン酸及びそれらの塩等。
収斂剤:例えば、亜鉛華等。
【0028】
本実施形態に係る眼科組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途及び製剤形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択し、1種又はそれ以上を併用して適当量含有させてもよい。このような添加物として、例えば、医薬品添加物事典2021(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性溶媒。
キレート剤:例えば、(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等。
基剤:例えば、オクチルドデカノール、酸化チタン、臭化カリウム、プラスチベース等。
pH調節剤:例えば、塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等。
界面活性剤:例えば、チロキサポール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポロクサマー類等の非イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、N-アシルタウリン塩等の陰イオン界面活性剤;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性イオン界面活性剤等。
香料又は清涼化剤:例えば、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、チモール、シメン、テルピネオール、ピネン、カンフェン、イソボルネオール、フェンチェン、ネロール、ミルセン、ミルセノール、酢酸リナロール、ラバンジュロール、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油、樟脳油等。これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。
増粘剤:例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系高分子化合物;グアーガム;ヒドロキシプロピルグアーガム;アラビアゴム;カラヤガム;キサンタンガム;寒天;アルギン酸及びその塩(ナトリウム塩等);ヘパリン類似物質、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリノイド、ヒアルロン酸及びその塩(ナトリウム塩等)のムコ多糖類;デンプン;キチン及びその誘導体;キトサン及びその誘導体;カラギーナン;ブドウ糖等の単糖類等。
緩衝剤:例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、乳酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、トリス緩衝剤、AMPD緩衝剤等。
安定化剤:例えば、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、シクロデキストリン、モノエタノールアミン、ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等。
防腐剤:例えば、アルキルポリアミノエチルグリシン類第四級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等)、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ポリドロニウム、安息香酸ナトリウム、エタノール、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、塩酸ポリヘキサニド(ポリヘキサメチレンビグアニド)、アレキシジン等)、グローキル(ローディア社製 商品名)等。
等張化剤:例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン等。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
油類:例えば、ゴマ油、ヒマシ油、ダイズ油、オリーブ油等の植物油;スクワラン等の動物油;流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油等。
【0029】
本実施形態に係る眼科組成物が水を含有する場合、水の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、眼科組成物の総量を基準として、水の含有量が、80w/v%以上100w/v%未満であることが好ましく、85w/v%以上99.5w/v%以下であることがより好ましく、90w/v%以上99.2w/v%以下であることが更に好ましい。
【0030】
本実施形態に係る眼科組成物に使用される水は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであればよい。このような水として、例えば、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水及び注射用蒸留水等を挙げることができる。それらの定義は第十七改正日本薬局方に基づく。
【0031】
本実施形態に係る眼科組成物は、所望量のコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種及び必要に応じて他の成分を所望の濃度となるように添加及び混和することにより調製することができる。例えば、精製水でそれらの成分を溶解又は分散させ、所定のpH及び浸透圧に調整し、濾過滅菌等により滅菌処理することで調製できる。
【0032】
本実施形態に係る眼科組成物は、目的に応じて種々の製剤形態をとることができる。製剤形態として、例えば、液剤、ゲル剤、半固形剤(軟膏等)等が挙げられる。
【0033】
本実施形態に係る眼科組成物は、例えば、点眼剤(点眼液又は点眼薬ともいう。また、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む。)、人工涙液、洗眼剤(洗眼液又は洗眼薬ともいう。また、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む。)、コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)、コンタクトレンズパッケージ液等]として用いることができる。なお、「コンタクトレンズ」は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ(イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの双方を包含する)を含む。
【0034】
本実施形態に係る眼科組成物は、本発明による効果をより顕著に発揮できることから、点眼剤(コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む。)であることが好ましい。本実施形態に係る眼科組成物が点眼剤である場合、その用法・用量としては、効果を奏し、副作用の少ない用法・用量であれば特に限定されないが、例えば成人(15歳以上)及び7歳以上の小児の場合、1回1~3滴、1~2滴、又は2~3滴を1日2~4回、又は5~6回点眼して用いる方法を例示でき、1回1~2滴を1日4回点眼して用いる方法が好ましい。
【0035】
本実施形態に係る眼科組成物は、任意の容器に収容して提供される。本実施形態に係る眼科組成物を収容する容器については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。好ましくはプラスチック製である。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド及びこれらを構成するモノマーの共重合体、並びにこれら2種以上を混合したものが挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートである。また、本実施形態に係る眼科組成物を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。好ましくは透明容器である。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器及び有色透明容器の双方が含まれる。
【0036】
本実施形態に係る眼科組成物を収容する容器には、ノズルが装着されてもよい。ノズルの材質については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。好ましくはプラスチック製である。プラスチックとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びこれらを構成するモノマーの共重合体、並びにこれら2種以上を混合したものが挙げられる。ノズルの材質としては、本発明の効果をより一層高めるという観点から、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0037】
本実施形態に係る眼科組成物を収容する容器は、複数回の使用量が収容されるマルチドーズ型であってもよく、単回の使用量が収容されるユニットドーズ型であってもよい。
【0038】
本実施形態に係る眼科組成物は、内容積が4~30mLである容器に充填されてなることが好ましく、内容積が5~20mLである容器に充填されてなることがより好ましく、内容積が6~16mLである容器に充填されてなることが更に好ましく、内容積が10~15mLである容器に充填されてなることが更により好ましい。また、内容積が0.1~3mLである容器に充填されてもよく、内容積が0.2~1mLである容器に充填されてもよい。
【0039】
本実施形態に係る眼科組成物は、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有しており、後述の実施例において確認されているように角膜上皮細胞において炎症性サイトカイン、特にIL-1α、IL-1β、IL-6及びIL-8の遺伝子発現を顕著に抑制する。ここで、目の異物感についてはIL-1α、IL-1β(参考文献:Am J Ophthalmol. 2011 Dec;152(6):900-909.及びInvest Ophthalmol Vis Sci. 2009 Feb;50(2):597-603.)及びIL-6(参考文献:Transl Vis Sci Technol. 2021 Jun 1;10(7):17.)が関与している。また、異物感から反射性流涙が生じるため、(参考文献:解決!目と視覚の不定愁訴・不明愁訴(金原出版))、目の異物感に関与するIL-1α、IL-1β及びIL-6が涙目にも関与する。IL-8は目ヤニの発生に関与し(参考文献:J Leukoc Biol. 2019 Jun;105(6):1087-1098.)、目ヤニに関連するかすみ目といった症状の発生に関与している。これらのことから、本実施形態に係る眼科組成物は、目の異物感、目ヤニ、かすみ目及び涙目からなる群より選択される少なくとも1種の症状の改善、緩和、治療、又は予防用眼科組成物として好適に用いることができる。また、本発明の一実施形態として、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する眼科組成物を対象に投与する、目の異物感、目ヤニ、かすみ目及び涙目からなる群より選択される少なくとも1種の症状を改善、緩和、治療、又は予防する方法が提供される。さらに、本発明の一実施形態として、目の異物感、目ヤニ、かすみ目及び涙目からなる群より選択される少なくとも1種の症状の改善、緩和、治療、又は予防用眼科組成物の製造のための、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の使用が提供される。
【0040】
なお、本明細書における症状は、花粉やハウスダストなどによる目の症状を含む。また、本明細書において「目の異物感」はコロコロする感じを含み、「かすみ目」は目ヤニの多いときのかすみ目を含む。
【実施例0041】
以下、試験例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
〔試験例1 角膜上皮細胞株に対する抗炎症作用〕
角膜上皮細胞株をラミニン511E8フラグメント(0.5μg/cm2)でコーティングした細胞培養皿上でコンフルエントになるまで培養した。培養には分化培地(2% B27 Supplement(Life Technologies)、1% penicillin-streptomycin solution(Life Technologies)、20ng/mL KGF(Keratinocyte Growth Factor)(Wako)、10μM Y-27632(Wako)を含有させたDMEM/F-12(2:1(v/v))培地(Life Technologies))を使用した。続いて、基礎培地(1% penicillin-streptomycin solutionを含有させたDMEM/F-12(2:1(v/v))培地)で一晩培養し、細胞を飢餓状態にさせた。その後、基礎培地に炎症誘発因子としてTNFを添加(10ng/mL)し、次いで、基礎培地に重量平均分子量が約25000のコンドロイチン硫酸ナトリウムを濃度が1.0w/v%となるように添加し、4時間培養後、Maxwell RSC simplyRNA Tissue Kit(プロメガ)を用いて細胞を回収した。その後RT-qPCRに供し、GAPDHに対するIL-1α、IL-1β、IL-6及びIL-8の遺伝子発現量を測定した。また、TNF及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの何れも無添加の培養条件を陰性対照、TNFを添加しコンドロイチン硫酸ナトリウム無添加の培養条件を陽性対照とした。下記式1を用い、陰性対照に対するコンドロイチン硫酸ナトリウム処理による各遺伝子発現率(%)を算出した。
式1:陰性対照に対するTNF処理またはTNFかつコンドロイチン硫酸ナトリウム処理による各遺伝子発現率=(TNF処理並びにTNF及びコンドロイチン硫酸ナトリウム添加時のGAPDHに対する各遺伝子発現量/陰性対照のGAPDHに対する各遺伝子発現量)×100
結果を表1~表4に示す。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
表1~表4より、コンドロイチン硫酸ナトリウムを添加することで、IL-1α、IL-1β、IL-6及びIL-8のmRNA発現量が顕著に減少することが確認された。
【0048】
〔試験例2 点眼剤の官能評価〕
〔点眼剤(処方A及びB)の調製〕
表5に記載の処方に基づき、定法に従い、点眼剤を調整した。このサンプルを点眼瓶(容器容量14‐14.5mL、ポリエチレンテレフタレート素材)に13mL充填(充填率89.7~92.9%)し、評価サンプルとした。処方Aの粘度は2.1mPa・sであった。
処方A及びBをそれぞれ表6に記載の人数の訓練されたパネラー(目ヤニ、目の異物感、かすみ目、涙目いずれかの症状がある人)に、1日4回、1回1~2滴の用法・用量で4日間右眼に投与した。評価はVAS(Visual Analogue Scale)法を用い、目ヤニ、目の異物感、かすみ目及び涙目について10cmの線分を用いて、主観的な程度を直線状に印をつけることによって評定した。そして、式2に従い、改善値を算出した。
式2:改善値=(投与前のVAS値の平均値)-(4日間投与後のVAS値の平均値)
結果を表6に示す。
【0049】
【0050】
【0051】
表6より、処方Bに対して処方Aの改善値が高く、処方Aの方が処方Bよりも有効であったことが明らかとなった。かすみ目についても、処方Bに対して処方Aの改善値が高い結果となった。これは試験例1の結果と符号し、1w/v%のコンドロイチン硫酸ナトリウムは目ヤニ、目の異物感、かすみ目及び涙目の改善に効果があることが確認された。
【0052】
[製剤例]
以下の表7~9に記載の処方に従い、眼科組成物を調製し、PET容器に充填した。なお、下記の表7~9において、各成分の単位は(w/v%)である。
【0053】
【0054】
【0055】