(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072719
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】太陽追尾装置
(51)【国際特許分類】
H02S 20/32 20140101AFI20240521BHJP
H02S 20/10 20140101ALI20240521BHJP
【FI】
H02S20/32
H02S20/10 B
H02S20/10 U
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183732
(22)【出願日】2022-11-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】722004171
【氏名又は名称】株式会社QDジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】玉浦 裕
(72)【発明者】
【氏名】川本 忠
(72)【発明者】
【氏名】栗田 篤
(72)【発明者】
【氏名】相賀 一彦
(72)【発明者】
【氏名】寺田 典広
(57)【要約】
【課題】乱流などによりフレームが揺れたとしても、その揺れを停止させることができる太陽追尾装置を提供する。
【解決手段】太陽追尾装置であって、太陽電池パネルを支持するフレームと、フレームを南北方向に回転させるための仰角回転軸を有する南北回転機構と、フレームを東西方向に回転させるための方位角回転軸を有する東西回転機構と、支柱とを備え、南北回転機構により太陽電池パネルのパネル面の南北方向の角度が調整され、東西回転機構により太陽電池パネルのパネル面の東西方向の角度が調整され、仰角回転軸と方位角回転軸はねじれの位置関係にあり、南北回転機構と東西回転機構の各々のトラス構造によりフレームが保持され、フレームの揺れ発生時に該揺れを自動的に停止させるブレーキシューをさらに備えている太陽追尾装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルを1枚以上備え、該太陽電池パネルのパネル面の角度を太陽の動きに追従させて調整する太陽追尾装置であって、
前記太陽電池パネルを支持するフレームと、
該フレームを南北方向に回転させるための東西方向を軸方向とする仰角回転軸を有する南北回転機構と、
前記フレームを東西方向に回転させるための南北方向を軸方向とする方位角回転軸を有する東西回転機構と、
前記フレームを支持する支柱とを備えており、
前記南北回転機構により、前記仰角回転軸を回転軸として、前記フレームと、前記太陽電池パネルとが一体的に南北方向に回転されることで、前記フレームに支持された太陽電池パネルのパネル面の南北方向の角度が調整されるものであり、
前記東西回転機構により、前記方位角回転軸を回転軸として、前記フレームと、前記太陽電池パネルとが一体的に東西方向に回転されることで、前記フレームに支持された太陽電池パネルのパネル面の東西方向の角度が調整されるものであり、
前記仰角回転軸と前記方位角回転軸はねじれの位置関係にあり、
前記南北回転機構と前記東西回転機構は、各々、トラス構造を有しており、該トラス構造により前記フレームが保持されているものであり、
前記フレームの揺れ発生時に該フレームの揺れを自動的に停止させるブレーキシューをさらに備えているものであることを特徴とする太陽追尾装置。
【請求項2】
前記南北回転機構は、
前記支柱を貫通して東西方向に揺動可能な中心横棒と、該中心横棒と前記フレームとを連結する南北回転用連結部材と、前記中心横棒と前記フレームとを連結する南北回転用アクチュエータとを有しており、
該南北回転用アクチュエータの伸縮により前記フレームが南北方向に回転されるものであり、
前記南北回転機構におけるトラス構造は、
前記南北回転用連結部材と前記フレームの連結部、前記中心横棒と前記南北回転用アクチュエータの連結部、前記南北回転用アクチュエータと前記フレームの連結部の3点により形成されているものであることを特徴とする請求項1に記載の太陽追尾装置。
【請求項3】
前記支柱は筒状であり、該支柱に形成された2つの対向する開口部を通って前記中心横棒が前記支柱を貫通しており、
前記ブレーキシューは、
前記筒状の支柱の内周面および外周面のうち少なくとも一つの面に固定配置されており、かつ、前記中心横棒に沿って前記支柱から突き出ている第1ブレーキ板を1つ以上有しており、
前記フレームの揺れ発生時における、前記第1ブレーキ板と前記中心横棒との対向面同士の接触摩擦により、前記中心横棒に連結された前記フレームの揺れを停止させるものであることを特徴とする請求項2に記載の太陽追尾装置。
【請求項4】
前記ブレーキシューは、
前記南北回転用連結部材に固定配置された第2ブレーキ板を有しており、
該第2ブレーキ板を介して前記南北回転用連結部材に前記フレームが回転可能に連結されており、
前記フレームの揺れ発生時における、前記第2ブレーキ板と前記フレームとの対向面同士の接触摩擦により、前記フレームの揺れを停止させるものであることを特徴とする請求項2に記載の太陽追尾装置。
【請求項5】
前記ブレーキシューは、
前記南北回転用連結部材に固定配置された第2ブレーキ板を有しており、
該第2ブレーキ板を介して前記南北回転用連結部材に前記フレームが回転可能に連結されており、
前記フレームの揺れ発生時における、前記第2ブレーキ板と前記フレームとの対向面同士の接触摩擦により、前記フレームの揺れを停止させるものであることを特徴とする請求項3に記載の太陽追尾装置。
【請求項6】
前記東西回転機構は、
前記支柱に一端側が回転可能に連結された東西回転部材と、該東西回転部材の他端側と前記フレームとを連結する東西回転用連結部材と、前記東西回転部材の前記他端側と前記支柱とを連結する東西回転用アクチュエータとを有しており、
該東西回転用アクチュエータの伸縮により前記フレームが東西方向に回転されるものであり、
前記東西回転機構におけるトラス構造は、
前記東西回転部材と前記支柱との連結部、前記支柱と前記東西回転用アクチュエータの連結部、前記東西回転用アクチュエータと前記東西回転部材の前記他端側の連結部の3点により形成されているものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の太陽追尾装置。
【請求項7】
前記方位角回転軸が、前記支柱の頂点を通過しているものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の太陽追尾装置。
【請求項8】
前記方位角回転軸が、前記支柱の頂点を通過しているものであることを特徴とする請求項6に記載の太陽追尾装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルを備えた太陽追尾装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の太陽光発電の追尾型の方式(経緯台方式)は、太陽高度軸と太陽方位軸とが互いに軸中心で交叉するもので、現在、この方式によるものが主として普及している。これに対して、二軸がねじれて交叉(両軸の各軸がそれぞれの軸受けに一本の軸として貫通することなく交叉)させることにより太陽電池パネル(太陽光パネル)の面を回転させる水平位置を自由に選択できる型(特許文献1)が、従来とは異なる原理による全く新しい追尾方式の設備として考案された(CROAS型)。
【0003】
CROAS追尾型太陽光発電装置の架台部分の二つの東西軸と南北軸の各軸は、それぞれの軸受けに一本の通し軸として貫通することなく、それぞれの2つの軸受を仮想的に一本の通し軸で回転する機構となっているので、これらの軸受の位置は自由に選択でき、そのため二軸をねじれて直交して交叉させることが出来る。従って、仮想的に二本の直線状の通し軸の交点からの距離(δ)を自由に選んで、ねじれて交差させることができるという特徴がある。
【0004】
このような特徴を利用すれば、組立工程においては、CROAS型は太陽電池パネルを、パネルを支持するフレームにフラットに設置した後に、追尾架台に取り付けることが可能であり、そのために、事前に地面上において太陽電池パネルと支持フレームへの取り付けを容易かつ迅速に組み立てることができる。またこの組立工程を追尾架台の組立や支柱工事と並行して進めることにより、工期を短縮でき、工事費の大幅な低減ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されている構造のうち、南北軸の軸受を支える支柱(東西軸受支柱)とパネル支持架台のスパン部とは、南北軸でつながっているだけであるので、南北方向に不安定に揺れることができ、特に強風時に乱流が発生する場合にはパネル面が東西の両方向に大きくずれて振動する。
【0007】
このように従来装置では、例えば乱流発生時に太陽電池パネルを支持するフレームが前後左右に揺れが発生してしまう。しかもその揺れがなかなか収まらずにいた。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、乱流などによりフレームが揺れたとしても、その揺れを停止させることができる太陽追尾装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、太陽電池パネルを1枚以上備え、該太陽電池パネルのパネル面の角度を太陽の動きに追従させて調整する太陽追尾装置であって、
前記太陽電池パネルを支持するフレームと、
該フレームを南北方向に回転させるための東西方向を軸方向とする仰角回転軸を有する南北回転機構と、
前記フレームを東西方向に回転させるための南北方向を軸方向とする方位角回転軸を有する東西回転機構と、
前記フレームを支持する支柱とを備えており、
前記南北回転機構により、前記仰角回転軸を回転軸として、前記フレームと、前記太陽電池パネルとが一体的に南北方向に回転されることで、前記フレームに支持された太陽電池パネルのパネル面の南北方向の角度が調整されるものであり、
前記東西回転機構により、前記方位角回転軸を回転軸として、前記フレームと、前記太陽電池パネルとが一体的に東西方向に回転されることで、前記フレームに支持された太陽電池パネルのパネル面の東西方向の角度が調整されるものであり、
前記仰角回転軸と前記方位角回転軸はねじれの位置関係にあり、
前記南北回転機構と前記東西回転機構は、各々、トラス構造を有しており、該トラス構造により前記フレームが保持されているものであり、
前記フレームの揺れ発生時に該フレームの揺れを自動的に停止させるブレーキシューをさらに備えているものであることを特徴とする太陽追尾装置を提供する。
【0009】
このように本発明の太陽追尾装置は、仰角回転軸と方位角回転軸はねじれの位置関係にあるため直交しておらず(すなわち、三次元的に交差していない)、南北回転機構および東西回転機構の両方において、フレームを回転および保持する機構として、トラス構造の形成が可能になる。そして実際にそのような双方のトラス構造によってフレームを保持するものであるので、フレーム(太陽電池パネル)を安定して保持することが可能である。そのため、風荷重による破壊が生じるのを抑制することができる。
【0010】
また特には上記のようなブレーキシューを備えているため、強風時に乱流が発生するなどして太陽電池パネルおよびそれを支持するフレームが揺れたとしても、ブレーキシューによりその揺れを最小限にし、かつ、自動的に即時に停止させることができる。それによって、フレームの回転機構(東西回転機構、南北回転機構)への負荷を軽減することができる。
【0011】
また、前記南北回転機構は、
前記支柱を貫通して東西方向に揺動可能な中心横棒と、該中心横棒と前記フレームとを連結する南北回転用連結部材と、前記中心横棒と前記フレームとを連結する南北回転用アクチュエータとを有しており、
該南北回転用アクチュエータの伸縮により前記フレームが南北方向に回転されるものであり、
前記南北回転機構におけるトラス構造は、
前記南北回転用連結部材と前記フレームの連結部、前記中心横棒と前記南北回転用アクチュエータの連結部、前記南北回転用アクチュエータと前記フレームの連結部の3点により形成されているものとすることができる。
また、前記東西回転機構は、
前記支柱に一端側が回転可能に連結された東西回転部材と、該東西回転部材の他端側と前記フレームとを連結する東西回転用連結部材と、前記東西回転部材の前記他端側と前記支柱とを連結する東西回転用アクチュエータとを有しており、
該東西回転用アクチュエータの伸縮により前記フレームが東西方向に回転されるものであり、
前記東西回転機構におけるトラス構造は、
前記東西回転部材と前記支柱との連結部、前記支柱と前記東西回転用アクチュエータの連結部、前記東西回転用アクチュエータと前記東西回転部材の前記他端側の連結部の3点により形成されているものとすることができる。
【0012】
これらのようなものであれば、各アクチュエータの伸縮によりフレーム(および太陽電池パネル)を南北方向、東西方向に効果的に回転可能である。しかも、より確実に上記トラス構造を形成し、フレームをより堅固に保持することができる。
【0013】
また、前記支柱は筒状であり、該支柱に形成された2つの対向する開口部を通って前記中心横棒が前記支柱を貫通しており、
前記ブレーキシューは、
前記筒状の支柱の内周面および外周面のうち少なくとも一つの面に固定配置されており、かつ、前記中心横棒に沿って前記支柱から突き出ている第1ブレーキ板を1つ以上有しており、
前記フレームの揺れ発生時における、前記第1ブレーキ板と前記中心横棒との対向面同士の接触摩擦により、前記中心横棒に連結された前記フレームの揺れを停止させるものとすることができる。
また、前記ブレーキシューは、
前記南北回転用連結部材に固定配置された第2ブレーキ板を有しており、
該第2ブレーキ板を介して前記南北回転用連結部材に前記フレームが回転可能に連結されており、
前記フレームの揺れ発生時における、前記第2ブレーキ板と前記フレームとの対向面同士の接触摩擦により、前記フレームの揺れを停止させるものとすることができる。
【0014】
これらのようなブレーキシューであれば、フレームの揺れの自動停止を簡便に行うことができる。
【0015】
また、前記方位角回転軸が、前記支柱の頂点を通過しているものとすることができる。
【0016】
方位角回転軸と支柱の頂点の位置関係が上記関係のものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば太陽電池パネルを安定保持することができ、風荷重による装置の破壊を効果的に防ぐことができる。また、乱流などが生じて太陽電池パネルおよびフレームが揺れたとしてもその揺れを最小限に抑え、瞬時に自動停止させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のヘリオスタット装置の一例を示す下側からの斜視図である。
【
図2】東西回転機構と南北回転機構の一例を示す部分拡大図である。
【
図3】太陽電池パネルの構成の一例を示す上面説明図である。
【
図4】ブレーキシュー(東西ブレーキシュー)の一例を示す説明図である。
【
図5】東側から見た東西ブレーキシューの一例をしめす説明図である。
【
図6】南側から見た東西ブレーキシューの一例をしめす説明図である。
【
図7】支柱の内周面に第1ブレーキ板を固定した場合の例を示す説明図である。
【
図8】ブレーキシュー(南北ブレーキシュー)の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
特許文献1の従来の太陽追尾装置では、太陽電池パネルが強風などを受けて太陽電池パネルおよびそれを支持するフレームが揺れ続けてしまっていた。
本発明者らは、上記のような場合に、両軸(仰角回転軸、方位角回転軸)周りの動きを摩擦力による制動によって停止させることができる構造について鋭意検討した。そしてブレーキシューを備えていれば強風時の乱流などによる不安定なフレーム揺れを完全にすぐに自動停止させることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。さらには制動性能が極めて強く発生する力学的な関係について鋭意検討し、効果的なブレーキシューの形態を見出した。
【0020】
図1、2に本発明の太陽追尾装置(ヘリオスタット装置)の一例を示す。
図1は装置下側からの斜視図である。
図2は
図1の部分拡大図であり、東西回転機構と南北回転機構を示す。
【0021】
図1、2に示すように、本発明の太陽追尾装置1(以下、単に装置1ともいう)は、太陽電池パネル2と、該太陽電池パネル2を支持するフレーム3と、該フレーム3を南北方向に回転させるための東西方向を軸方向とする仰角回転軸4を有する南北回転機構5と、フレーム3を東西方向に回転させるための南北方向を軸方向とする方位角回転軸6を有する東西回転機構7と、フレーム3を支持する支柱8とを備えている。南北回転機構5と東西回転機構7により、太陽の動きに追従させて太陽電池パネル2の角度調整が可能である。さらにはブレーキシュー30を備えている。
以下、各部の構成について詳述するが、これらの構成は一例であり、特に限定されるものではない。
【0022】
(太陽電池パネル、フレーム、支柱)
太陽電池パネル2は1枚以上であればよく、その数や大きさは特に限定されない。
図3に太陽電池パネル2の一例を示す(上面図)。ここでは長方形の4枚の太陽電池パネル2が備えられている。その4枚の太陽電池パネル2の組み合わせにより、全体がロの字型の形状となっている。
なお
図1は前述したように下側からの斜視図であり、太陽電池パネル2の裏面が表示されている。この裏面の反対側面(表面)が
図3であり、実際に太陽光を受けるパネル面2Aとなっている。
【0023】
フレーム3は、例えば南北方向に沿う2本の南北フレーム部材9と、東西方向に沿う4本の東西フレーム部材10からなっている。これらは例えば角柱部材とすることができる。そして、このフレーム3は太陽電池パネル2を下方から支持している。
このため、南北回転機構5(東西回転機構7)により、仰角回転軸4(方位角回転軸6)を回転軸として、フレーム3と太陽電池パネル2とが一体的に南北方向(東西方向)に回転されることで、フレーム3に支持された太陽電池パネル2のパネル面2Aの南北方向(東西方向)の角度が調整される。
【0024】
また支柱8は特に限定されないが、例えば筒状(支柱本体11)とすることができる。また、後に詳述する中心横棒21が貫通可能なように、東西側の外周面に2つの開口部12が対向して設けられている。
【0025】
(東西回転機構)
また、東西回転機構7は、例えば支柱8に一端側が回転可能に連結された東西回転部材13と、該東西回転部材13の他端側とフレーム3とを連結する東西回転用連結部材14と、東西回転部材13の他端側と支柱8とを連結する東西回転用アクチュエータ15とを有している。
なお、より具体的には、
図1、2に示す例においては東西回転用連結部材14は中心横棒21と連結されており、東西回転部材13の他端側は中心横棒21と連結されている。したがって、東西回転部材13の他端側は、中心横棒21と東西回転用連結部材14とを介してフレーム3と連結されている。
また、この例では方位角回転軸6は支柱8の頂点(すなわち、東西回転部材13の一端側と支柱8との連結部)を通過している。
【0026】
このような機構により、東西回転用アクチュエータ15の伸縮によって、方位角回転軸6を中心にして東西回転部材13が東西方向に回転する。同時に、東西回転用連結部材14を介して東西回転部材13と連結しているフレーム3が一体となって東西方向に回転する。
【0027】
しかも、東西回転機構7は、東西方向の回転面内において、上記のような構成によりフレーム3を保持するトラス構造を形成している。具体的には、
図2に示すように、東西回転部材13と支柱8との連結部O、支柱8と東西回転用アクチュエータ15の連結部P、東西回転用アクチュエータ15と東西回転部材13の他端側の連結部Qの3点によりトラス構造OPQが形成されている。
【0028】
この東西回転機構7は、
図1、2に示す例では東側かつ南側に1つ、西側かつ北側に1つ、それぞれ設けられている。しかしながらこれに限定されず、東西のどちらか一方に1つだけ設けても良いし、西側かつ南側に1つ、東側かつ北側に1つ、それぞれ設けることもできる。
【0029】
(南北回転機構)
次に、南北回転機構5は、例えば支柱8を貫通して東西方向に揺動可能な中心横棒21と、該中心横棒21とフレーム3とを連結する南北回転用連結部材22と、中心横棒21とフレーム3とを連結する南北回転用アクチュエータ23とを有している。
なお、
図1、2に示す例では南北回転用連結部材22は東西回転用連結部材14と同じ部材である。ただしこれに限定されず、別部材とすることも可能である。
南北回転用アクチュエータ23は直接的に中心横棒21と連結されていてもよいが、前述したように南北回転用連結部材22(東西回転用連結部材14)が中心横棒21と連結されていることから、南北回転用アクチュエータ23が直接的には南北回転用部材22と連結しており、該南北回転用部材22を介して中心横棒21と連結している構成とすることもできる。
また、仰角回転軸4はフレーム3と南北回転用連結部材22との連結部を通過している。
このような機構により、南北回転用アクチュエータ23の伸縮によって、仰角回転軸4を中心にしてフレーム3が南北方向に回転可能になっている。
【0030】
しかも、南北回転機構5は、南北方向の回転面内において、上記のような構成によりフレーム3を保持するトラス構造を形成している。具体的には、
図2に示すように、南北回転用連結部材22とフレーム3(南北フレーム部材9)の連結部R、中心横棒21と南北回転用アクチュエータ23の連結部S、南北回転用アクチュエータ23とフレーム3(南北フレーム部材9)の連結部Tの3点によりトラス構造RSTが形成されている。
【0031】
この南北回転機構5は、
図1、2に示す例では東側と西側に1つずつ設けられている。しかしながらこれに限定されず、東西のどちらか一方に1つだけ設けても良い。
【0032】
上記のように、南北回転機構5と東西回転機構7の両方においてフレーム3を保持するためのトラス構造OPQ、RSTが形成されているが、これは南北回転機構5における仰角回転軸4と、東西回転機構7における方位角回転軸6とがねじれの位置関係(三次元的に交差していない)にあるためである。
このような位置関係とすることで、双方の回転機構において同時にトラス構造という安定した構造を容易に形成することができる。これにより、フレーム3、さらには太陽電池パネル2を極めて安定して保持することができる。したがって、風が吹いても堅固にフレーム3を保持することができ、風の荷重によって装置1の部材が破壊されてしまうのを効果的に防ぐことができる。
【0033】
なお、東西回転用アクチュエータ15と南北回転用アクチュエータ23に関して、それらの配設向きは特に限定されないが、伸縮するロッド部が下方を向くように配設するのが好ましい。雨水等が各アクチュエータ内に入り込んで故障を引き起こすのを効果的に防ぐことができるためである。
【0034】
(ブレーキシュー)
次にブレーキシュー30について説明する。このブレーキシュー30は、フレーム3(および太陽電池パネル2)の揺れ発生時にその揺れを自動的に停止させるためのものである。ブレーキシュー30の例としては、支柱8に設けるもの(東西ブレーキシュー)と、南北回転用連結部材22(ここでは東西回転用連結部材14でもある)に設けるもの(南北ブレーキシュー)が挙げられる。
【0035】
まず前者の東西ブレーキシューについて説明する。
図4に東西ブレーキシューの一例を示す(南東からの斜視図)。また
図5は東側から見た説明図であり、
図6は南側から見た説明図である。
前述したように筒状の支柱8は、支柱本体11に、東西方向に沿った中心横棒21が貫通する開口部12が2つ設けられたものとなっている。
そしてブレーキシュー30は、支柱8の内周面および外周面のうち少なくとも一つの面に固定配置された第1ブレーキ板31を有している。この第1ブレーキ板31は、支柱8を貫通する中心横棒21に沿って支柱8から突き出ている。
なお、ここでは南側と北側に1つずつ第1ブレーキ板が配置されているが、これに限定されず、南側と北側のうちいずれか一方の側だけに配置してもよい。南北両側に配置した方がより効果的にフレーム3の揺れを停止させることができる。
【0036】
以下では主に南側に配置した第1ブレーキ板について説明するが、北側に配置した第1ブレーキ板も向き等が異なるだけで実質的に同様である。
南側の第1ブレーキ板31は、東側と西側において、南方向に突き出た2つのフランジ32を有している(
図4ではフランジ32の記載は省略している)。第1ブレーキ板31は支柱8の2つの開口部12を通って支柱8を東西方向に貫通しており、中心横棒21と開口部12の縁との間に位置するように固定配置されている。具体的には前述した2つのフランジ32が、支柱本体11の外周面33(東側外周面と西側外周面)に例えばビス等を用いて固定されている。
【0037】
前述したように中心横棒21は南北回転用連結部材22(ここでは東西回転用連結部材14でもある)を介してフレーム3と連結されており、フレーム3が揺れたとき中心横棒21も揺れる。このときブレーキシュー30(第1ブレーキ板31)が存在することで、第1ブレーキ板31と中心横棒21との対向面同士の接触摩擦により、中心横棒21の揺れを即座に軽減して停止させることができる。その結果、中心横棒21に連結されたフレーム3の揺れを停止させることができる。
【0038】
なお、第1ブレーキ板31の大きさや長さは特に限定されないが、中心横棒21のサイズ等に応じて適宜調整可能であり、中心横棒21と対向する面積(接触面積)ができるだけ大きくなるようなものを用いるのが好ましい。さらには、中心横棒21(さらには、太陽電池パネル2のパネル面2A)が最大角度(水平面に対して±45°)回転して傾いた場合においても十分な接触面積が得られるようなものが好ましい。
また、支柱本体11の東側外周面と西側外周面へフランジ32を取り付け固定する際には、その固定位置を調整することで、第1ブレーキ板31と中心横棒21との隙間の大小を調整することができる。第1ブレーキ板31と中心横棒21との位置関係が、無風状態で僅かに隙間があるような場合であっても、乱流等によるひねりを有する揺れで第1ブレーキ板31と中心横棒21とが面接触することになる。
あるいは上記取付固定時に、第1ブレーキ板31と中心横棒21とを最初から面接触させておき、その接触圧を調整することもできる。
これらの調整により、揺れが生じたときの摩擦力(ブレーキ)の度合いを調整可能である。
【0039】
また他の固定方法として、筒状の支柱8の内周面に第1ブレーキ板31を固定した例を
図7に示す。
図7は開口部12付近を上側から見た説明図である。ここでも南側の第1ブレーキ板31のみ説明するが、これに限定されず北側にも配置することもできる。
開口部12を通り、中心横棒21と支柱本体11との間に位置する第1ブレーキ板31は、筒状の支柱8内において、支柱本体11の内周面34に向かって突き出た凸部を有しており、該凸部においてビス等により内周面34に固定されている。
【0040】
次に南北ブレーキシューについて説明する。
図8に南北ブレーキシューの一例を示す。
ここでのブレーキシュー30は、南北回転用連結部材22に固定配置された第2ブレーキ板35を有している。そして、この第2ブレーキ板35を介して南北回転用連結部材22にフレーム3が回転可能に連結されている。
より具体的には第2ブレーキ板35は鍔36を有しており、該鍔36の部分がビス等により南北回転用連結部材22に固定されている。
フレーム3が揺れたとき、ブレーキシュー30(第2ブレーキ板35)が存在することで、第2ブレーキ板35とフレーム3との対向面同士の接触摩擦により、フレーム3の揺れを即座に軽減して停止させることができる。
【0041】
なお、第2ブレーキ板35の大きさや長さは特に限定されない。フレーム3のサイズ等に応じて適宜調整可能であり、フレーム3と対向する面積(接触面積)ができるだけ大きくなるようなものを用いるのが好ましい。さらには、フレーム3(さらには、太陽電池パネル2のパネル面2A)が最大角度(水平面に対して±45°)回転して傾いた場合においても十分な接触面積が得られるようなものが好ましい。
また、南北回転用連結部材22に第2ブレーキ板35を面接触させて固定するとともに、該第2ブレーキ板35とフレーム3も面接触させて連結し、これら三者の連結の締め付け具合を適宜調整することができる。
これにより、揺れが生じたときの摩擦力(ブレーキ)の度合いを調整可能である。
【0042】
以上のような本発明の装置1であれば、ブレーキシュー30の存在により、強風時の乱流の発生を起因とする太陽電池パネル2およびフレーム3の揺れが生じても、最小限の揺れに抑え、直ぐに自動停止させることができるので実に簡便である。そのため、フレーム3の各回転機構(特に東西回転用アクチュエータ15、南北回転用アクチュエータ23)への負荷を軽減することができ、故障の発生を防止できる。
【0043】
以下、本発明の装置1で得られる効果についてさらに詳述する。
無風状態の時には乱流は発生しない。微風であれば摩擦力は小さいが揺れはほとんどない。また、乱流が発生するような強風時には、揺れ方向に瞬時にアンバランスとなって風荷重が強くかかるが、ブレーキシューに接する構造体(中心横棒21やフレーム3)との面接触のために(特には第1ブレーキ板31、第2ブレーキ板35のサイズ等が大きな場合は接触面が大きいために)、ブレーキシューの接触部で局所的なせん断力が発生しないで摩擦力による制動がかかり、制動がかかった瞬間において回転軸中心モーメントのバランスが崩れて揺れ方向が反転する。そのために反転が繰り返され一定の振幅範囲で振り子運動(揺れ)を繰り返すようになるものの、それでも従来装置の場合に比べて極めて速やかに停止する。
【0044】
つまり、強風による乱流で風荷重が強くかかったとしても、ブレーキシューの接触部で局所的なせん断力が発生しない範囲で、ブレーキシューに接する構造体との摩擦力での制動が掛かって損傷やせんだん破損を起こすことなく、太陽電池パネルが一定の範囲で一旦揺れはするが、揺れ幅は最小にすることができるし、短時間で自動停止させることができる。
【0045】
CROAS(特許文献1)の基本構造に取り付けてある2つのアクチュエータには、両軸の中心モーメントがバランスしているので、理論的には2つのアクチュエータのストローク方向に掛かる荷重はゼロである。しかし強風時の乱流によって両軸の中心モーメントがアンバランスとなってアクチュエータのストローク方向に荷重が発生する。ここでブレーキシューがない場合にはアンバランスとなって発生する風荷重が大きくストローク方向に発生(ストローク方向風荷重)することになるが、本発明のようにブレーキシューがあれば、ブレーキシューに生ずる摩擦力によってストローク方向風荷重を軽減することができる。
【0046】
強風時には振り子運動(揺れ)を繰り返すので、ストローク方向の風荷重は振り子振動の加速度に依存する。しかしパネル支持架台スパン(すなわち、中心横棒21)が南北軸(すなわち、仰角回転軸4)からの距離があるので振動数が低い。そのため加速度が大きくならないことから、ストローク方向の風荷重は強風の割には小さく設定することが出来、アクチュエータの推力を小さくすることができる効果がある。
【0047】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]: 太陽電池パネルを1枚以上備え、該太陽電池パネルのパネル面の角度を太陽の動きに追従させて調整する太陽追尾装置であって、
前記太陽電池パネルを支持するフレームと、
該フレームを南北方向に回転させるための東西方向を軸方向とする仰角回転軸を有する南北回転機構と、
前記フレームを東西方向に回転させるための南北方向を軸方向とする方位角回転軸を有する東西回転機構と、
前記フレームを支持する支柱とを備えており、
前記南北回転機構により、前記仰角回転軸を回転軸として、前記フレームと、前記太陽電池パネルとが一体的に南北方向に回転されることで、前記フレームに支持された太陽電池パネルのパネル面の南北方向の角度が調整されるものであり、
前記東西回転機構により、前記方位角回転軸を回転軸として、前記フレームと、前記太陽電池パネルとが一体的に東西方向に回転されることで、前記フレームに支持された太陽電池パネルのパネル面の東西方向の角度が調整されるものであり、
前記仰角回転軸と前記方位角回転軸はねじれの位置関係にあり、
前記南北回転機構と前記東西回転機構は、各々、トラス構造を有しており、該トラス構造により前記フレームが保持されているものであり、
前記フレームの揺れ発生時に該フレームの揺れを自動的に停止させるブレーキシューをさらに備えているものである太陽追尾装置。
[2]: 前記南北回転機構は、
前記支柱を貫通して東西方向に揺動可能な中心横棒と、該中心横棒と前記フレームとを連結する南北回転用連結部材と、前記中心横棒と前記フレームとを連結する南北回転用アクチュエータとを有しており、
該南北回転用アクチュエータの伸縮により前記フレームが南北方向に回転されるものであり、
前記南北回転機構におけるトラス構造は、
前記南北回転用連結部材と前記フレームの連結部、前記中心横棒と前記南北回転用アクチュエータの連結部、前記南北回転用アクチュエータと前記フレームの連結部の3点により形成されているものである上記[1]の太陽追尾装置。
[3]: 前記支柱は筒状であり、該支柱に形成された2つの対向する開口部を通って前記中心横棒が前記支柱を貫通しており、
前記ブレーキシューは、
前記筒状の支柱の内周面および外周面のうち少なくとも一つの面に固定配置されており、かつ、前記中心横棒に沿って前記支柱から突き出ている第1ブレーキ板を1つ以上有しており、
前記フレームの揺れ発生時における、前記第1ブレーキ板と前記中心横棒との対向面同士の接触摩擦により、前記中心横棒に連結された前記フレームの揺れを停止させるものである上記[2]の太陽追尾装置。
[4]: 前記ブレーキシューは、
前記南北回転用連結部材に固定配置された第2ブレーキ板を有しており、
該第2ブレーキ板を介して前記南北回転用連結部材に前記フレームが回転可能に連結されており、
前記フレームの揺れ発生時における、前記第2ブレーキ板と前記フレームとの対向面同士の接触摩擦により、前記フレームの揺れを停止させるものである上記[2]または上記[3]の太陽追尾装置。
[5]: 前記東西回転機構は、
前記支柱に一端側が回転可能に連結された東西回転部材と、該東西回転部材の他端側と前記フレームとを連結する東西回転用連結部材と、前記東西回転部材の前記他端側と前記支柱とを連結する東西回転用アクチュエータとを有しており、
該東西回転用アクチュエータの伸縮により前記フレームが東西方向に回転されるものであり、
前記東西回転機構におけるトラス構造は、
前記東西回転部材と前記支柱との連結部、前記支柱と前記東西回転用アクチュエータの連結部、前記東西回転用アクチュエータと前記東西回転部材の前記他端側の連結部の3点により形成されているものである上記[1]から上記[4]のいずれかの太陽追尾装置。
[6]: 前記方位角回転軸が、前記支柱の頂点を通過しているものである上記[1]から上記[5]のいずれかの太陽追尾装置。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0049】
上記例では、南北回転機構における中心横棒や、東西回転機構における東西回転部材などの具体的な部材を挙げて説明したが、これらの部材・構成に限定されるものではない。仰角回転軸と方位角回転軸がねじれの位置関係にあり、各回転機構におけるフレームを支持するためのトラス機構や、フレームの揺れを自動停止可能なブレーキシューが備わっているものであれば良い。
【符号の説明】
【0050】
1…本発明の太陽追尾装置(ヘリオスタット装置)、 2…太陽電池パネル、
2A…パネル面、 3…フレーム、 4…仰角回転軸、
5…南北回転機構、 6…方位角回転軸、
7…東西回転機構、 8…支柱、
9…南北フレーム部材、 10…東西フレーム部材、
11…支柱本体、 12…開口部、
13…東西回転部材、 14…東西回転用連結部材、
15…東西回転用アクチュエータ、
21…中心横棒、 22…南北回転用連結部材、
23…南北回転用アクチュエータ、
30…ブレーキシュー、 31…第1ブレーキ板、 32…フランジ、
33…支柱の外周面、 34…支柱の内周面、 35…第2ブレーキ板、 36…鍔、
OPQ…東西回転機構におけるトラス構造、
RST…南北回転機構におけるトラス構造。