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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072725
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ガラス繊維およびガラス繊維用組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 13/02 20060101AFI20240521BHJP
   C03C 13/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C03C13/02
C03C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183742
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】中村 文
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA05
4G062BB01
4G062DA06
4G062DB04
4G062DB05
4G062DC01
4G062DC02
4G062DC03
4G062DD01
4G062DE01
4G062DF01
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4G062ED04
4G062EE01
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4G062FL01
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4G062HH01
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4G062HH05
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4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM15
4G062NN33
4G062NN34
(57)【要約】
【課題】 耐酸性およびヤング率のバランスに優れたガラス繊維に適したガラス組成物を提供する。
【解決手段】 質量%で表示して、SiO2:50~65%、Al23:10~35%、MgO:10~20%、CaO:0~7%、TiO2:0~5%、ZrO2:0~5%を含み、SiO2、TiO2およびZrO2の含有率の合計が58%以上であり、TiO2およびZrO2の含有率の合計が0.1%以上であり、MgOの含有率が10%以上16%未満である場合には、0.1%以上のZrO2を含む、ガラス繊維用ガラス組成物。とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で表示して、
SiO2 50~65%
Al23 10~35%
MgO 10~20%
CaO 0~7%
TiO2 0~5%
ZrO2 0~5%
を含み、
SiO2、TiO2およびZrO2の含有率の合計が58%以上であり、
TiO2およびZrO2の含有率の合計が0.1%以上であり、
MgOの含有率が10%以上16%未満である場合には、0.1%以上のZrO2を含む、ガラス繊維用ガラス組成物。
【請求項2】
質量%で表示して、
SiO2 55~62%
Al23 15~30%
MgO 12~20%
CaO 0~4%
TiO2 0~3%
ZrO2 0~3%
を含む、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
質量%で表示して、TiO2の含有率とZrO2の含有率との合計が0.5%以上5%以下である、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項4】
質量%で表示して、SiO2の含有率が57.5~61.5%の範囲にある、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項5】
質量%で表示して、Li2Oの含有率が0~1.5%の範囲にある、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項6】
質量%で表示して、Na2Oの含有率とK2Oの含有率との合計が0~1%の範囲にある、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項7】
質量%で表示して、B23の含有率が0~1.5%の範囲にある、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項8】
質量%で表示して、Y23の含有率とLa23の含有率との合計が0~5%の範囲にある、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項9】
ヤング率が98GPa以上である、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項10】
ΔWが0.3質量%以下である、請求項1に記載のガラス組成物。
ここで、前記ΔWは、質量を前記ガラス組成物の比重と同じ値のグラム数とした前記ガラス組成物を、比重1.2、温度99℃の硫酸80mLに60分間浸漬したときの質量減少率である。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のガラス組成物を含むガラス繊維。
【請求項12】
ストランド、ロービング、ヤーン、クロス、チョップドストランド、グラスウール、及びミルドファイバーからなる群より選択される少なくとも1つに該当する形態を有する、請求項11に記載のガラス繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維と、ガラス繊維に適したガラス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
実用に供されているガラス繊維の多くはそのヤング率が90GPa以下であるガラス組成物により構成されている。ただし、ヤング率が90GPaを超えるガラス組成物も知られている。例えば、特許文献1には、多量の希土類酸化物を配合したガラス組成物が開示されている。特許文献1のガラス組成物におけるY23およびLa23の含有率の合計は、20~60重量%の範囲にある。しかし、希土類酸化物の含有率が高いと製造コストが上昇する。これを考慮し、特許文献2には、多量の希土類酸化物を必要とすることなく、ガラス組成物のヤング率を向上させる技術が開示されている。特許文献2のガラス組成物は、ヤング率を向上させる成分として、モル%で表示して15~30%のMgOを含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/057405号
【特許文献2】特許第6391875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2では、ガラス組成物の耐酸性については検討されていない。そこで、本発明は、ヤング率が高く、耐酸性に優れたガラス繊維と、そのようなガラス繊維の製造に適したガラス組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、ガラス成分の配合比率について検討を重ね、耐酸性およびヤング率のバランスに優れたガラス繊維に適したガラス組成物を完成させた。
【0006】
本発明は、
質量%で表示して、
SiO2 50~65%
Al23 10~35%
MgO 10~20%
CaO 0~7%
TiO2 0~5%
ZrO2 0~5%
を含み、
SiO2、TiO2およびZrO2の含有率の合計が58%以上であり、
TiO2およびZrO2の含有率の合計が0.1%以上であり、
MgOの含有率が10%以上16%未満である場合には、0.1%以上のZrO2を含む、ガラス繊維用ガラス組成物、を提供する。
【0007】
また、本発明は、本発明によるガラス繊維用ガラス組成物を含むガラス繊維、を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐酸性およびヤング率のバランスに優れたガラス繊維と、そのようなガラス繊維に適したガラス繊維用ガラス組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の説明は本発明を特定の実施形態に限定する趣旨ではない。本明細書において、以降のガラス組成物の成分の含有率は、すべて質量%により示し、基本的に質量%は「%」と表示する。本明細書において、「実質的に含有しない」および「実質的に含有されていない」は、含有率が、0.1質量%未満、0.05質量%未満、0.01質量%未満、0.005質量%未満、さらに0.003質量%未満、場合によっては0.001質量%未満であることを意味する。「実質的に」は、ガラス原料、製造装置などに由来する微量の不純物の含有を許容する趣旨である。「アルカリ金属酸化物」は、Li2O、Na2OおよびK2Oを意味し、R2Oと表記することがある。以下に述べる含有率の上限および下限は、上限および下限が個別に記載されている場合、上限および下限が範囲として記載されている場合の両方において、任意に組み合わせることができる。
【0010】
[ガラス組成物]
<成分>
以下、本実施形態のガラス組成物を構成しうる各成分について説明する。
【0011】
(SiO2
SiO2は、ガラスの骨格を形成する成分であり、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整し、耐酸性を向上させる成分でもある。SiO2の含有率は、例えば50~65%である。SiO2の含有率の下限は、55%以上、57%以上、57.5%以上、58%以上、59%以上、59.6%以上、59.8%以上、さらに60%以上であってもよい。SiO2の含有率の上限は、63%以下、62.3%以下、62%以下、61.8%、61.5%以下、さらに61%以下であってもよい。SiO2の含有率は、55~62%、さらに57.5~61.5%であってもよい。
【0012】
(Al23
Al23は、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整し、ガラスの耐水性の向上に寄与する成分である。Al23の含有率は、例えば10~35%である。Al23の含有率の下限は、例えば15%以上、17%以上、19%以上、19.5%以上、19.7%以上、さらに20%以上であってもよい。Al23の含有率の上限は、30%以下、28%以下、25%以下、22%以下、21%以下、20.8%以下、さらに20.6%以下であってもよい。Al23の含有率は、15~30%、さらに19.7~20.6%であってもよい。ただし後述するとおり、MgOの含有率が16%未満の範囲にある場合、Al23の含有率は、22~29%、さらに23.5~28%であってもよい。
【0013】
(B23
23は、ガラスの骨格を形成し、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する任意成分である。B23の含有率は、例えば0~1.5%である。B23の含有率の下限は、0.02%以上であってもよい。B23の含有率の上限は、1.2%以下、1%以下、0.5%以下、0.3%以下、0.1%以下、さらに0.08%以下であってもよい。B23は、実質的に含有されていなくてもよい。
【0014】
(MgO)
MgOは、ヤング率の向上に寄与し、失透温度、粘度等に影響を与える成分である。MgOの含有率は、例えば10~20%である。MgOの含有率の下限は、12%以上、14%以上、16%以上、16.5%以上、16.6%以上、16.8%以上、さらに17%以上であってもよい。MgOの含有率の上限は、19%以下、18%以下、17.8%以下、17.7%以下、さらに17.6%以下であってもよい。MgOの含有率は、12~20%、さらに、14~19%であってもよい。MgOの含有率が16%未満である場合は、ZrO2の添加が推奨される。
【0015】
(CaO)
CaOは、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する任意成分である。CaOの含有率は、例えば0~7%である。CaOの含有率の下限は、0.1%以上、0.3%以上、0.5%以上、さらに0.7%以上であってもよい。CaOの含有率の上限は、5%以下、3%以下、2%以下、1.5%以下、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下、さらに1%以下であってもよい。
【0016】
(アルカリ金属酸化物)
アルカリ金属酸化物(R2O)は、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する任意成分である。アルカリ金属酸化物の含有率の合計、具体的には[Li2O]+[Na2O]+[K2O]、は、例えば0~3%である。アルカリ金属酸化物の含有率の下限は、0.05%以上、0.1%以上、0.2%以上、さらに0.3%以上であってもよい。R2Oの含有率の上限は、2%以下、1.5%以下、1.2%以下、1.0%以下、0.9%以下、さらに0.8%以下であってもよい。R2Oの含有率が高いと、ヤング率が十分に上昇しない場合がある。
【0017】
Li2Oの含有率は、例えば0~1.5%である。Li2Oの含有率の下限は、0.1%以上、0.2%以上であり、0.3%以上、さらに0.4%以上であってもよい。Li2Oの含有率の上限は、1%以下、0.8%以下、0.6%以下、さらに0.5%以下であってもよい。Li2Oの含有率の好ましい一例は、0.1~0.8%である。Li2Oは、ヤング率を低下させる影響を抑制しながら失透温度等の特性を調整することに関しては、Na2OおよびK2Oより有利である。Li2Oの含有率は、Na2Oの含有率より高くてもよく、K2Oの含有率より高くてもよく、Na2Oの含有率およびK2Oの含有率の合計より高くてもよい。もっとも、Li2Oは、実質的に含有されていなくてもよい。
【0018】
Na2Oの含有率は、例えば0~1%である。Na2Oの含有率の上限は、0.5%以下、0.2%以下、0.18%以下、0.15%以下、0.13%以下、0.1%以下、さらに0.08%以下であってもよい。Na2Oは、実質的に含有されていなくてもよい。K2Oの含有率は、例えば0~0.5%である。K2Oの含有率の上限は、0.3%以下、0.1%以下、0.08%以下、さらに0.06%以下、さらに0.04%以下であってもよい。K2Oは、実質的に含有されていなくてもよい。
【0019】
Na2Oの含有率およびK2Oの含有率の合計は、0~1%、0~0.5%、さらに0~0.3%の範囲内にあってもよい。
【0020】
(TiO2およびZrO2
TiO2およびZrO2は、耐酸性の向上に寄与しうる任意成分である。ただし、TiO2およびZrO2から選択される少なくとも1つは添加することが望ましい。特にZrO2は、MgOによるヤング率向上の効果を補い得る成分であることが見い出された。TiO2の含有率およびZrO2の含有率の合計の下限は、0.1%以上、0.3%以上、0.5%以上、0.8%以上、1%以上、さらに1.5%以上であってもよい。TiO2の含有率およびZrO2の含有率の合計の上限は、5%以下、4%以下、3.5%以下、3%以下、さらに2.5%以下であってもよい。本実施形態では、例えば、TiO2の含有率およびZrO2の含有率の合計は、0.5~5%、0.8~4%、1~3.5%の範囲にあってもよい。
【0021】
TiO2およびZrO2は、それぞれ例えば0~5%の範囲で添加される。TiO2の含有率およびZrO2の含有率は、それぞれ0.1%以上、0.3%以上、0.5%以上、1%以上、さらに1.2%以上であってもよい。TiO2の含有率およびZrO2の含有率は、それぞれ4%以下、3%以下、2.5%以下、さらに2%以下であってもよい。ただし、TiO2またはZrO2は、実質的に含有されていなくてもよい。
【0022】
(ZnO)
ZnOは添加が許容される任意成分である。ZnOは、例えば0~3%、さらに0~1.5%の範囲で添加される。ZnOの含有率の上限は、1.4%以下、1%以下、さらに0.5%以下であってもよい。ZnOは、実質的に含有されていなくてもよい。
【0023】
(F2
2も清澄などのために添加が許容される任意成分である。F2は、例えば0~0.5%、さらに0~0.1%の範囲で添加される。F2の含有率の上限は、0.08%以下であってもよい。F2は、実質的に含有されていなくてもよい。
【0024】
(SiO2+TiO2+ZrO2
SiO2、TiO2およびZrO2の含有率の合計(SiO2+TiO2+ZrO2)は、例えば58%以上である。SiO2、TiO2およびZrO2の含有率の合計は、58.5%以上、59%以上、59.5%以上、60%以上、60.5%以上、さらに61%以上であってもよい。(SiO2+TiO2+ZrO2)が高いガラス組成物は、優れた耐酸性の実現に適している。(SiO2+TiO2+ZrO2)の上限は、特に制限されないが、例えば、63.5%以下、63%以下、さらに62.5%以下である。
【0025】
(SiO2+Al23+MgO)
SiO2、Al23、およびMgOの成分の含有率の合計(SiO2+Al23+MgO)は、95%以上、96%以上、97%以上、さらに97.5%以上であってもよい。(SiO2+Al23+MgO)は、例えば99%以下、さらに98.5%以下であってもよい。
【0026】
(CaO+R2O)
CaOおよびアルカリ金属酸化物(R2O)の添加は、ガラス組成物の失透温度の調整に適している。CaOの含有率およびR2Oの含有率の合計(CaO+R2O)は、0~2.5%であってもよい。(CaO+R2O)の下限は、0.05%以上、0.1%以上、0.3%以上、0.5%以上、0.7%以上、さらに1%以上であってもよい。(CaO+R2O)の上限は、例えば2.3%以下、2.2%以下、2%以下、さらに1.8%以下であってもよい。
【0027】
(その他の成分)
ガラス組成物は、上記以外の成分を含んでいてもよい。ガラス組成物が含みうるその他の成分としては、Fe23、Y23、La23、SrO、BaO、Cl2、SnO2、CeO2、P25、SO3を例示できる。
【0028】
Fe23は、例えば0~1%の範囲で添加される。Fe23の含有率の上限は、0.5%、0.3%以下、0.2%以下、0.15%以下、さらに0.1%以下であってもよい。Fe23は、実質的に含有されていなくてもよい。なお、酸化鉄は、その一部がFeOとしてもガラス組成物中に存在するが、その含有率は、慣用に従ってFe23に換算して示すこととする。
【0029】
23およびLa23は、ヤング率の向上に寄与する任意成分である。ただし、これらの成分は、その原料が相対的に高価である。Y23およびLa23の含有率の合計は、例えば0~5%である。Y23およびLa23の含有率の合計の上限は、3%以下、2%以下、1%以下、さらに0.5%以下であってもよい。Y23は、実質的に含有されていなくてもよい。La23も、実質的に含有されていなくてもよい。
【0030】
SrO、BaO、Cl2、SnO2、CeO2、P25、およびSO3の含有率は、それぞれ例えば0~0.5%である。これらの成分のそれぞれの含有率の上限は、0.3%以下、0.2%以下、さらに0.1%以下であってもよい。これらの各成分は、それぞれ実質的に含有されていなくてもよい。
【0031】
(MgOを16%以上含有する組成例)
本実施形態のガラス組成物は、以下の成分を含んでいてもよい。
SiO2 50~65%
23 0~1.5%
Al23 10~35%
MgO 16~20%
CaO 0~7%
Li2O 0~1.0%
Na2O 0~0.2%
2O 0~0.1%
TiO2 0~5%
ZrO2 0~5%
を含み、
SiO2、TiO2およびZrO2の含有率の合計が58%以上であり、
TiO2およびZrO2の含有率の合計が0.1%以上である。
【0032】
(MgOの含有率が16%未満であり、ZrO2を含む組成例)
本実施形態のガラス組成物は、以下の成分を含んでいてもよい。
SiO2 50~65%
23 0~1.5%
Al23 10~35%
MgO 10~16%(ただし16%を除く)
CaO 0~7%
Li2O 0~1.0%
Na2O 0~0.2%
2O 0~0.1%
TiO2 0~5%
ZrO2 0.1~5%
を含み、
SiO2、TiO2およびZrO2の含有率の合計が58%以上である。
【0033】
MgOの含有率がやや低く、ZrO2を含む上述の組成例においても、各成分の含有率は、上述した範囲を参照して適宜調整するとよい。ただし、Al23の含有率は、やや高めに調整してもよく、例えば、22~29%、さらに23.5~28%であってもよい。
【0034】
<特性>
(ヤング率)
本実施形態のガラス組成物のヤング率は、例えば98GPa以上である。ヤング率の下限は、99GPa以上、99.5GPa以上、場合によっては100GPa以上とすることもできる。ヤング率の上限は、特に限定されないが、例えば115GPa以下、さらに110GPa以下であってもよい。
【0035】
(耐酸性)
耐酸性は、実施例の欄において述べる試験により得た質量減少率ΔW(%)により評価することができる。本実施形態のガラス組成物のΔWは、例えば0.3質量%以下である。ΔWの上限は、0.25質量%以下、さらに0.1質量%以下とすることもできる。
【0036】
[ガラス繊維]
本実施形態のガラス組成物は、ガラス繊維の製造に適している。ガラス繊維は、ガラス長繊維であってもガラス短繊維であってもよい。ガラス繊維は、例えばストランド、ロービング、ヤーン、クロス、チョップドストランド、グラスウール、及びミルドファイバーからなる群より選択される少なくとも1つに該当する形態であってよい。クロスは、例えばロービングクロス、ヤーンクロスである。
【0037】
ただし、上記各形態のガラス組成物は、その優れた特性から、ガラス繊維以外のガラス成形体としても使用できる。ガラス成形体の一例は、粒子状ガラスである。粒子状ガラスは、ガラス繊維としての外形が失われる程度にまで微細に破断し、或いはガラス繊維と同様、目的とする形状に応じたノズルを使用して、製造されうる。上記各形態のガラス組成物は、失透を回避しながら粒子状ガラスを製造することにも適している。本発明の一形態において、粒子状ガラスは、上記各形態のガラス組成物を含み、或いは上記各形態のガラス組成物により構成されている。
【0038】
粒子状ガラスは、例えば、鱗片状ガラス、ガラス粉末、ガラスビーズ、およびファインフレークからなる群から選ばれる少なくとも1種に相当するものであってもよい。粒子状ガラスは、FRPへの使用、すなわち樹脂に代表される被補強体の補強その他に使用できる。
【0039】
粒子状ガラスにも使用できることを考慮すると、上述のガラス組成物は、ガラス繊維または粒子状ガラス用のガラス組成物としても把握できる。
【0040】
[不織布、ゴム補強用コード]
本発明により提供される各ガラス繊維は、従来のガラス繊維と同様の用途に供することができる。本発明の一形態からは、ガラス繊維を含むガラス繊維不織布が提供される。また、本発明の一形態からは、ガラス繊維が束ねられたストランドを含むゴム補強用コードが提供される。ガラス繊維はその他の用途に供することもできる。その他の用途には、樹脂に代表される被補強体の補強が挙げられる。
【0041】
[実施例]
以下、実施例および比較例により本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。なお、以下の表においても、組成の含有率は、質量%により表示されている。
<ガラス組成物の調製>
表1及び2に示した各組成となるように、珪砂等の通常のガラス原料を調合し、実施例および比較例ごとにガラス原料のバッチを作製した。電気炉を用いて、各バッチを1500~1600℃まで加熱して溶融させ、組成が均一になるまで約4時間そのまま維持した。その後、溶融したガラス(ガラス溶融物)の一部を鉄板上に流し出し、電気炉中で室温まで徐冷し、バルクとしてのガラス組成物(板状物、ガラス試料)を得た。これらのガラス組成物について、以下のとおり特性を評価した。結果を表1及び2に併せて示す。
【0042】
(ヤング率)
ヤング率は、通常の超音波法により、ガラス中を伝播する弾性波の縦波速度vlと横波速度vtを測定し、別にアルキメデス法により測定したガラスの密度ρから、E=3ρ・vt 2・(vl 2-4/3・vt 2)/(vl 2-vt 2)の式により求めた。
【0043】
(耐酸性)
直径15μmのガラス単繊維を長さ20mmに切断し、ガラスの比重と同じグラム数量り取り、このガラス繊維を99℃、比重1.2の硫酸水溶液80mLに60分間浸漬したときの質量減少率を求め、この質量減少率をΔWとした。
【0044】
なお、上記質量減少率は、浸漬前の質量をWa、浸漬後の質量をWbとして、以下の式に基づいて算出した。
質量減少率(%)={(Wa-Wb)/Wa}×100
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
各実施例によると、98GPa以上のヤング率および0.3質量%以下のΔWが達成された。一方、各比較例ではこれらの特性を満たすことはできなかった。
【0048】
以上のとおり、本明細書は、以下の技術を開示する。
【0049】
(技術1)
質量%で表示して、
SiO2 50~65%
Al23 10~35%
MgO 10~20%
CaO 0~7%
TiO2 0~5%
ZrO2 0~5%
を含み、
SiO2、TiO2およびZrO2の含有率の合計が58%以上であり、
TiO2およびZrO2の含有率の合計が0.1%以上であり、
MgOの含有率が10%以上16%未満である場合には、0.1%以上のZrO2を含む、ガラス繊維用ガラス組成物。
【0050】
(技術2)
質量%で表示して、
SiO2 55~62%
Al23 15~30%
MgO 12~20%
CaO 0~4%
TiO2 0~3%
ZrO2 0~3%
を含む、技術1のガラス組成物。
【0051】
(技術3)
質量%で表示して、TiO2の含有率とZrO2の含有率との合計が0.5%以上5%以下である、技術1または2に記載のガラス組成物。
【0052】
(技術4)
質量%で表示して、SiO2の含有率が57.5~61.5%の範囲にある、技術1~3のいずれか1つのガラス組成物。
【0053】
(技術5)
質量%で表示して、Li2Oの含有率が0~1.5%の範囲にある、技術1~4のいずれか1つのガラス組成物。
【0054】
(技術6)
質量%で表示して、Na2Oの含有率とK2Oの含有率との合計が0~1%の範囲にある、技術1~5のいずれか1つのガラス組成物。
【0055】
(技術7)
質量%で表示して、B23の含有率が0~1.5%の範囲にある、技術1~6のいずれか1つのガラス組成物。
【0056】
(技術8)
質量%で表示して、Y23の含有率とLa23の含有率との合計が0~5%の範囲にある、技術1~7のいずれか1つのガラス組成物。
【0057】
(技術9)
ヤング率が98GPa以上である、技術1~8のいずれか1つのガラス組成物。
【0058】
(技術10)
ΔWが0.3質量%以下である、技術1~9のいずれか1つのガラス組成物。
ここで、前記ΔWは、質量を前記ガラス組成物の比重と同じ値のグラム数とした前記ガラス組成物を、比重1.2、温度99℃の硫酸液80mLに60分間浸漬したときの質量減少率である。
【0059】
(技術11)
技術1~10のいずれか1つのガラス組成物を含むガラス繊維。
【0060】
(技術12)
ストランド、ロービング、ヤーン、クロス、チョップドストランド、グラスウール、及びミルドファイバーからなる群より選択される少なくとも1つに該当する形態を有する、技術11のガラス繊維。