(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072731
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】情報処理装置、車両、情報処理方法、及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 12/00 20060101AFI20240521BHJP
G06F 3/06 20060101ALI20240521BHJP
G06F 12/02 20060101ALI20240521BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G06F12/00 550Z
G06F3/06 306Z
G06F12/02 510A
B60R16/02 650U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183752
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 淳
(72)【発明者】
【氏名】玉尾 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】河本 典秀
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 俊明
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 友裕
【テーマコード(参考)】
5B160
【Fターム(参考)】
5B160AA12
5B160NA02
(57)【要約】
【課題】本開示は、記録装置の製品としての保証期間を確保できる。
【解決手段】情報処理装置は、車両に搭載された記録装置の書き換えを制御する制御部と、前記記録装置の機能を保証する第1区間に対応した第1書き換え上限回数に基づいて、前記第1区間よりも短い区間の第2区間における第2書き換え上限回数を設定する設定部と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された記録装置の書き換えを制御する制御部と、
前記記録装置の機能を保証する第1区間に対応した第1書き換え上限回数に基づいて、前記第1区間よりも短い区間の第2区間における第2書き換え上限回数を設定する設定部と、
を含む情報処理装置。
【請求項2】
管理部を更に含み、
前記管理部は、前記第2区間において前記第2書き換え上限回数を超えると判定された場合に、書き換え制限を行う請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記記録装置にはアプリケーションごとに記憶領域の確保が要求され、
前記設定部は、前記確保の要求に応じて、前記アプリケーションごとに、前記第1書き換え上限回数、前記第2区間、及び当該アプリケーションが確保しようとする確保領域の割合に基づいて前記第2書き換え上限回数を設定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記アプリケーションの記憶領域の確保において、前記第2区間よりも短い所定の区間あたりの書き込み予定サイズの指定を受け付けた場合、
前記設定部は、前記書き込み予定サイズに対応する書き換え回数が、現時点の書き換え上限回数を超える場合は、前記書き込み予定サイズに対応する書き換え回数を前記第2書き換え上限回数として割り当て、当該書き換え上限回数を超えない場合は、当該現時点の書き換え上限回数を前記第2書き換え上限回数として割り当てる、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記現時点の書き換え上限回数は、前記記録装置の現時点の書き換え残回数及び所定の残りの製品寿命を用いて算出された前記記録装置の所定の区間あたりに書き換え可能な上限回数と、前記記録装置の物理サイズに対しての前記アプリケーションの確保領域の割合と、前記アプリケーションの確保区間である前記第2区間とに基づいて算出し、
前記書き込み予定サイズに対応した書き換え回数は、前記書き込み予定サイズに対応した書き換え回数と、前記アプリケーションの確保区間である前記第2区間とに基づいて算出する、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
管理部を更に含み、
前記管理部は、前記記録装置に対する書き込みごとに前記第1書き換え上限回数の残回数及び前記第2書き換え上限回数の残回数を更新する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1区間及び前記第2区間における区間の単位は、前記記録装置の工場出荷からの期間、又は前記記録装置が搭載された車両の走行距離とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載の情報処理装置と、
前記情報処理装置により管理されるアプリケーションの実行結果が出力される車載機器と、
を備えた車両。
【請求項9】
車両に搭載された記録装置の書き換えを制御し、
前記記録装置の機能を保証する第1区間に対応した第1書き換え上限回数に基づいて、前記第1区間よりも短い区間の第2区間における第2書き換え上限回数を設定する、
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項10】
車両に搭載された記録装置の書き換えを制御し、
前記記録装置の機能を保証する第1区間に対応した第1書き換え上限回数に基づいて、前記第1区間よりも短い区間の第2区間における第2書き換え上限回数を設定する、
処理をコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、車両、情報処理方法、及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、書き込み回数を記憶するための記憶領域を小さくしつつ、メモリの寿命判定を可能にする技術が開示されている。この技術では、動作期間においてカウントされた書き込み回数のうちの最大値と、メモリの回数記憶領域に記憶されている値とを加算した値を、最大書き込み回数として更新し、最大書き込み回数に基づいて、メモリの寿命が来たか否か判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ストレージには書き換えが可能な保証期間が定められている場合がある。このような保証期間が定められた製品について、保証期間を確保するための手法には改善の余地がある。
【0005】
本開示は、記録装置の製品としての保証期間を確保できる情報処理装置、車両、情報処理方法、及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の情報処理装置は、車両に搭載された記録装置の書き換えを制御する制御部と、前記記録装置の機能を保証する第1区間に対応した第1書き換え上限回数に基づいて、前記第1区間よりも短い区間の第2区間における第2書き換え上限回数を設定する設定部と、を含む。
【0007】
請求項1に記載の情報処理装置は、複数の区間を考慮して書き換え上限回数を設定する。ここで、区間とは期間、及び距離が例示される。期間は、記録装置の書き換えについて、記録装置が車両で使用される時間又は日数で設定される場合である。距離は、記録装置の書き換えについて、記録装置が搭載された車両の走行距離で設定される場合である。これにより、記録装置の製品としての保証期間を確保できる。また、記録装置の想定外の書き換えを抑止し、保証期間を確保できる。
【0008】
請求項2に記載の情報処理装置は、請求項1に記載の情報処理装置において、管理部を更に含み、前記管理部は、前記第2区間において前記第2書き換え上限回数を超えると判定された場合に、書き換え制限を行う、ようにできる。
【0009】
請求項2に記載の情報処理装置によれば、書き換え制限により、保証期間が確保できるように書き換えを制限し、保証期間前の故障を抑制する。
【0010】
請求項3に記載の情報処理装置は、請求項1に記載の情報処理装置において、前記記録装置にはアプリケーションごとに記憶領域の確保が要求され、前記設定部は、前記確保の要求に応じて、前記アプリケーションごとに、前記第1書き換え上限回数、前記第2区間、及び当該アプリケーションが確保しようとする確保領域の割合に基づいて前記第2書き換え上限回数を設定する、ようにできる。
【0011】
請求項3に記載の情報処理装置によれば、アプリケーションごとに書き換え上限回数を設定することで、例えば、特定のアプリケーションの高頻度の書き換えによる保証期間前の故障を抑制する。
【0012】
請求項4に記載の情報処理装置は、請求項3に記載の情報処理装置において、前記アプリケーションの記憶領域の確保において、前記第2区間よりも短い所定の区間あたりの書き込み予定サイズの指定を受け付けた場合、前記設定部は、前記書き込み予定サイズに対応する書き換え回数が、現時点の書き換え上限回数を超える場合は、前記書き込み予定サイズに対応する書き換え回数を前記第2書き換え上限回数として割り当て、当該書き換え上限回数を超えない場合は、当該現時点の書き換え上限回数を前記第2書き換え上限回数として割り当てる、ようにできる。
【0013】
請求項4に記載の情報処理装置によれば、書き込み予定サイズの指定がある場合に、指定に応じた書き換え上限回数を設定することで、アプリケーションの使用態様に応じた上限回数の管理ができる。
【0014】
請求項5に記載の情報処理装置は、請求項4に記載の情報処理装置において、前記設定部は、前記現時点の書き換え上限回数は、前記記録装置の現時点の書き換え残回数及び所定の残りの製品寿命を用いて算出された前記記録装置の所定の区間あたりに書き換え可能な上限回数と、前記記録装置の物理サイズに対しての前記アプリケーションの確保領域の割合と、前記アプリケーションの確保区間である前記第2区間とに基づいて算出し、前記書き込み予定サイズに対応した書き換え回数は、前記書き込み予定サイズに対応した書き換え回数と、前記アプリケーションの確保区間である前記第2区間とに基づいて算出する、ようにできる。請求項5に記載の情報処理装置によれば、書き込み予定サイズの指定がある場合に、指定に応じた書き換え上限回数の設定ができる。
【0015】
請求項6に記載の情報処理装置は、請求項1に記載の情報処理装置において、管理部を更に含み、前記管理部は、前記記録装置に対する書き込みごとに前記第1書き換え上限回数の残回数及び前記第2書き換え上限回数の残回数を更新する、ようにできる。請求項5に記載の情報処理装置によれば、残回数を更新して、製品保証期間の確保に必要な管理ができる。
【0016】
請求項7に記載の情報処理装置は、請求項1に記載の情報処理装置において、前記第1区間及び前記第2区間における区間の単位は、前記記録装置の工場出荷からの期間、又は前記記録装置が搭載された車両の走行距離とする、ようにできる。請求項7に記載の情報処理装置によれば、記録装置で扱われる書き換えの態様として、期間又は走行距離に応じて、書き換え上限回数を設定及び管理することできる。
【0017】
請求項8に記載の車両は、請求項1に記載の情報処理装置と、前記情報処理装置により管理されるアプリケーションの実行結果が出力される車載機器と、を備える。
【0018】
請求項9に記載の情報処理方法は、車両に搭載された記録装置の書き換えを制御し、
前記記録装置の機能を保証する第1区間に対応した第1書き換え上限回数に基づいて、前記第1区間よりも短い区間の第2区間における第2書き換え上限回数を設定する、処理をコンピュータが実行する。
【0019】
請求項10に記載の情報処理プログラムは、車両に搭載された記録装置の書き換えを制御し、前記記録装置の機能を保証する第1区間に対応した第1書き換え上限回数に基づいて、前記第1区間よりも短い区間の第2区間における第2書き換え上限回数を設定する、処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0020】
本開示の技術によれば、記録装置の製品としての保証期間を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係る車両の概略構成を示す図である。
【
図2】実施形態の車両のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態のセントラルECUの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態の設定処理のフローチャートである。
【
図5】第1実施形態の管理処理のフローチャートである。
【
図6】第2実施形態の設定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態の概要について説明する。車両では、ECU(Electronic Control Unit)で複数のアプリケーション(以下、単にアプリと記載する)を制御する場合がある。このような車両では、複数のアプリによる予測不可能なデータ書き換えに対して、ストレージの寿命を保証する必要がある。ストレージの寿命枯渇問題は、自動車関連事業においてリコール事例等もあり、ストレージの保証期間の確保は重要な課題となっている。
【0023】
従来技術では、書き換え回数が予測できず、ECUについて保証した保証期間内にストレージの寿命が尽き、書き換えができなくなる可能性がある。その場合、製品保証期間内に、OTA(Over the Air)によるソフトウェアアップデートができなくなる。
【0024】
また、ECUが提供するサービスとして、OTAによる不特定多数のアプリの追加及び活用や、ユーザや事業者が指定したタイミングでアプリの追加が計画される場合がある。ECUに追加されるアプリには、サービス用途に応じて多種多様なアプリがあり、サードパーティ製のアプリが追加されることもある。このような状況からアプリの数やアプリの書き換え回数を予測することは困難である。
【0025】
そこで、本実施形態では、製品の保証期間を考慮して、ECUに搭載されたアプリごとに一定期間内に書き換え可能な回数の上限を割り当てる。割り当てた上限回数を超える場合はアプリのデータ書き換えを禁止する。
【0026】
[第1実施形態]
図1に示されるように、本発明の第1実施形態は、車両12にセントラルECU20が搭載されている。セントラルECU20が本開示の技術の「情報処理装置」の一例である。
【0027】
第1実施形態では、アプリごとの確保期間あたりの書き換え上限回数を設定する。アプリの書き換え処理を行う場合は、書き換え完了のたびに、書き換え上限回数に対する残回数を更新する。書き換え時に書き換え残回数を超えているか否かを判定し、超えている場合、上限回数超過であるとして、書き換えを禁止する処理を行う。
【0028】
(車両)
図2に示されるように、本実施形態に係る車両12は、セントラルECU20と、ADAS-ECU22と、車載機器24と、を含んで構成されている。なお、ADAS-ECU22以外のECU(例えば、ボデーECU、マルチメディアECU等)がセントラルECU20に接続されていてもよい。
【0029】
セントラルECU20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、車内通信I/F(Interface)20D、及び無線通信I/F20Gを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C、車内通信I/F20D、ストレージ20E、及び無線通信I/F20Gは、内部バス20Hを介して相互に通信可能に接続されている。なお、CPU20Aは複数のCPUによって構成されていてもよい。ストレージ20Eが本開示の技術の記録装置の一例である。
【0030】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20Aは、ROM20Bからプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0031】
ROM20Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のROM20Bには、車両12の各種アプリケーションプログラムとしての機能を利用する制御プログラム40が記憶されている。また、ROM20Bには、情報処理プログラム50が記憶されている。本実施形態では、情報処理プログラム50は、ストレージ20Eのアプリごとの書き換え上限回数を管理し、アプリの書き込みの許可又は制限を実施する。また、ROM20Bには、デバイスドライバ60が記憶されている。デバイスドライバ60には、ストレージ20E本体の残り寿命となる残回数が記録される。情報処理プログラム50及びデバイスドライバ60は、ストレージコーデとしての機能を有する。ストレージコーデとは、ユーザが実行するアプリと、記憶領域とを仲介するためにセントラルECU20に設けられたコーディネーターである。ストレージコーデは、ストレージの利用領域の可変による利用効率向上、特定のアプリの占有防止、及びアクセスレベルの管理等の機能を提供する。
【0032】
RAM20Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。情報処理プログラム50が扱うデータはRAM20Cに保持される。
【0033】
車内通信I/F20Dは、ADAS-ECU22や車載機器24と接続するためのインタフェースである。当該インタフェースは、CANプロトコルによる通信規格が用いられる。車内通信I/F20Dは、外部バス20Hに対して接続されている。
【0034】
ストレージ20Eは、制御プログラム40などで実行される各種アプリケーションのデータが記憶される記憶領域(以下、単に領域と記載する)である。なお、ストレージ20Eは、情報処理プログラム50を介してアクセス及び書き込みが許可されるように設定されている。なお、ストレージ20Eには、アプリごとに確保できる領域の上限を定めてもよい。また、ストレージ20Eにはアプリが領域を確保できる期間の上限を定めてもよい。
【0035】
無線通信I/F20Gは、外部サーバと通信するための無線通信モジュールである。当該無線通信モジュールは、例えば、5G、LTE、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格が用いられる。無線通信I/F20Eは、ネットワークNに対して接続されている。
【0036】
また、セントラルECU20は、説明の便宜上図示を省略しているが、ステアリング制御、ブレーキ制御、エンジン制御、カーナビゲーションシステム及びオーディオ等の情報系制御、等を担う機能を備える。
【0037】
ADAS-ECU22は、先進運転支援システムを統括制御する。ADAS-ECU22には、車載機器24を構成する車速センサ25、及びヨーレートセンサ26が接続されている。
【0038】
なお、車載機器24には、この他にも、セントラルECU20の機能を実現に必要な機器として、舵角センサ、ブレーキアクチュエータ、スロットルアクチュエータ、ディスプレイ、及び他のセンサ類が含まれる。また、車載機器24には、セントラルECU20により管理されるアプリの実行結果がアプリの仕様に応じて出力される。
【0039】
図3に示されるように、本実施形態のセントラルECU20では、CPU20Aが、情報処理プログラム50を実行することで、制御部100、設定部200、及び管理部202として機能する。なお、以下の説明では日単位(24時間単位)を期間の単位とする場合を例に説明するが、任意の期間の単位を設定してもよい。
【0040】
制御部100は、車両12のセントラルECU20に搭載されたストレージ20Eのアプリによる書き換えを制御する。当該制御部100による書き換えの制御では、後述する管理部202により書き換えが制限され得る。
【0041】
設定部200は、アプリからストレージ20Eの領域確保要求を受け付け、アプリごとの書き換え上限回数を設定する。詳しくは後述する制御の流れで説明する。
【0042】
管理部202は、アプリから書き換え要求を受け付けて、書き換え要求を処理することで、ストレージ20E全体の書き換え回数と、アプリの書き換え上限回数とをストレージ20Eの書き換えに応じて管理する。詳しくは後述する制御の流れで説明する。
【0043】
(制御の流れ)
本実施形態のセントラルECU20で実行される情報処理方法としての設定処理及び管理処理の流れについて、
図4及び
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
図4のフローチャートに示す設定処理は、複数のアプリの各々からストレージ20Eの領域の確保要求を受け付けて、設定部200としてCPU20Aが実行する。設定処理は、車両12において使用される複数のアプリの各々に対して個々に行われる。設定処理は、例えば、アプリのインストール又は更新のたびに都度実行される。アプリのインストール又は更新は、例えば、イグニッションをオンにした場合や、新たにアプリが追加された場合に発生する。また、アプリがストレージ20Eからアンインストールされた場合、設定処理で設定された当該アプリの書き換え上限回数はリセット又は削除される。
【0045】
ステップS10において、CPU20Aは、アプリからの確保要求を受け付ける。確保要求には、確保サイズ[MB]、及び確保期間[日]の情報が含まれる。確保サイズ[MB]とは、ストレージ20Eが持つ記憶領域についてアプリが確保しようとするサイズである。
【0046】
ステップS12において、CPU20Aは、確保要求を受け付けたアプリの書き換え上限回数を算出する。アプリごとの書き換え上限回数は以下(1)式で算出できる。
【0047】
アプリごとの書き換え上限回数=全体の上限回数(回/日)×アプリの確保領域の割合[%]×確保期間[日] ・・・(1)
【0048】
アプリの確保領域の割合[%]は、ストレージ20Eが持つ記憶領域の全体サイズに対してアプリから確保要求された確保サイズ[MB]の割合である。確保期間[日]は、アプリがストレージ領域を確保し、占有する日数である。確保期間は、例えば、1.5日(36時間)、4日(96時間)等、アプリの指定に応じて定められる。確保期間[日]の経過後は、ストレージ20Eに確保された領域は適宜クリアされる。上記(1)式では、確保期間[日]におけるアプリごとの書き換え上限回数が算出される。
【0049】
全体の上限回数(回/日)は、1日あたりに書き換え可能なストレージ領域全体の書き換え上限回数(回/日)であり、以下(2)式で算出される。なお、ストレージ領域全体とは、ストレージ20Eの領域のうち、アプリが使用可能に割り当てられたストレージ20Eの共用領域を指す。
【0050】
全体の上限回数(回/日)=ストレージ領域全体の寿命となる書き換え上限回数÷製品保証期間[日] ・・・(2)
【0051】
製品保証期間[日]は、工場出荷時にストレージ20Eに付与されたストレージ20Eの機能を保証する製品保証期間の日数である。ストレージ領域全体の寿命となる書き換え上限回数は、工場出荷時にストレージ20Eに対して書き換え可能な回数として保証された書き換え上限回数である。ここで、ストレージ領域全体の寿命となる書き換え上限回数は、製造時における測定結果等から得られた書き換え上限として妥当な回数が定められる。また、測定結果等や将来の計画に応じて、日ごとに想定される平均的な書き換え回数が求められる。そのため、製品保証期間[日]は、日ごとに想定される平均的な書き換え回数、ストレージ領域全体の寿命となる書き換え上限回数、及び製品に最低限必要とされる保証日数等を総合的に考慮して、適切な日数が設定される。よって、ストレージ領域全体の寿命となる書き換え上限回数は、設定された製品保証期間[日]に関連性を持つように対応している。
【0052】
なお、工場出荷時の製品保証期間[日]が本開示の記録装置の機能を保証する第1区間の一例であり、ストレージ領域全体の寿命となる書き換え上限回数が本開示の第1区間に対応した第1書き換え上限回数の一例である。また、確保期間[日]が本開示の第1区間よりも短い区間であり、確保区間である第2区間の一例であり、アプリごとの書き換え上限回数が、本開示の第2書き換え上限回数の一例である。
【0053】
ステップS14において、CPU20Aは、確保要求を受け付けたアプリについて、書き換え上限回数を設定する。
【0054】
ステップS16において、CPU20Aは、確保要求を受け付けたアプリに設定された書き換え上限回数を当該アプリに通知すると共に、ストレージ20Eに当該アプリの領域を確保する。
【0055】
次に管理処理について説明する。
図5のフローチャートに示す管理処理は、複数のアプリの各々からストレージ20Eの書き換え要求を受け付けて、管理部202としてCPU20Aが実行する。管理処理は、車両12において使用される複数のアプリの各々に対して個々に行われる。管理処理は、アプリの実行中に書き換えが必要な処理が発生した場合に都度実行される。
【0056】
ステップS20において、CPU20Aは、書き換え要求を受け付けたアプリが指定した書き換えデータサイズを取得する。なお、ストレージ20Eには、書き換えデータサイズに対応する書き換え回数が規定されている。
【0057】
ステップS22において、CPU20Aは、書き換えデータサイズに対応する書き換え回数が、アプリの書き換え上限回数を超えるか否かを判定する。超えないと判定した場合には、ステップS24へ移行する。超えると判定した場合には、ステップS30へ移行する。
【0058】
ステップS24において、CPU20Aは、書き換え要求を受け付けたアプリに対する書き換えを許可する。当該許可により、アプリによるストレージ20Eのデータの書き換えが実行される。
【0059】
ステップS26において、CPU20Aは、書き換え要求を受け付けたアプリに対して書き換え完了を通知する。
【0060】
ステップS28において、CPU20Aは、書き換え要求を受け付けたアプリの書き換え残回数を更新する。なお、ストレージ20Eに生じるデータの書き換えのたびに、ストレージ20E全体の書き換え残回数も書き換え上限回数からマイナスカウントされ、全体の書き換え残回数が更新される。
【0061】
ステップS30において、CPU20Aは、書き換え要求を受け付けたアプリに対するデータ書き換えを禁止する。
【0062】
ステップS32において、CPU20Aは、書き換え要求を受け付けたアプリに対して書き換えが制限されたことを通知する。通知を受けたアプリでは、車載機器24のディスプレイ等を介してユーザに案内する。
【0063】
以上説明したように本実施形態の情報処理装置としてのセントラルECU20は、アプリごとに書き換え上限回数を設定し、アプリに設定された書き換え上限回数以上の書き換えを制限する。このようにアプリ単位で書き換えが管理されるため、アプリが予想外にストレージの書き換え回数を消費してしまうことを抑止できる。以上の本実施形態によれば、記録装置の製品としての保証期間を確保できる。
【0064】
[第2実施形態]
第2実施形態は、アプリの日あたりの書き込み予定サイズの指定の有無に応じて、書き込み予定サイズと残り製品寿命をもとに処理する態様である。第2実施形態は第1実施形態と構成が共通するため、以下では差異となる処理について説明する。第2実施形態は設定部200の設定処理が第1実施形態と異なってくる。なお、第2実施形態における書き込み予定サイズが指定された日あたりの一日の期間が、本開示の所定の区間の一例である。
【0065】
図6は、第2実施形態の設定処理のフローチャートである。
【0066】
ステップS100において、CPU20Aは、アプリからの確保要求を受け付ける。第2実施形態では確保要求には、確保サイズ[MB]、確保期間[日]、及び指定がある場合に「日あたりの書き込み予定サイズ」の情報が含まれる。
【0067】
ステップS102において、CPU20Aは、日あたりの書き込み予定サイズの指定があるか否かを判定する。指定がないと判定した場合にはステップS104へ移行し、指定があると判定した場合にはステップS108へ移行する。
【0068】
ステップS104において、CPU20Aは、確保要求を受け付けたアプリについて、確保領域の割合[%]及び確保期間[日]に応じた書き換え上限回数を算出する。算出手法は第1実施形態のステップS12と同様である。
【0069】
ステップS106において、CPU20Aは、確保要求を受け付けたアプリについて、ステップS104で算出された書き換え上限回数を設定する。
【0070】
ステップS108において、CPU20Aは、デバイスドライバ60から現時点の寿命となるストレージ20E全体の書き換え残回数を取得する。
【0071】
ステップS110において、CPU20Aは、ストレージ20E全体の現時点の書き換え残回数及び残りの製品寿命[日]に基づいて、ストレージ20E全体の日あたりに書き換え可能な上限回数を以下(3)式で算出する。
【0072】
ストレージ20E全体の日あたりに書き換え可能な上限回数(回/日)=ストレージ20E全体の書き換え残回数÷残りの製品寿命[日] ・・・(3)
【0073】
残りの製品寿命[日]は、製品保証期間[日]から工場出荷後の日数[日]を差し引いた日数である。
【0074】
ステップS112において、CPU20Aは、日あたりの書き込み予定サイズが割り当て可能か否かを判定する。可能と判定した場合にはステップS114へ移行し、可能でないと判定した場合にはステップS116へ移行する。判定は以下α1及びβ1の関係がα1>β1の条件を満たす場合に可能と判定する。α1は、ストレージ20Eの現時点の書き換え上限回数を示し、β1は、アプリが要求した書き込み予定サイズに対応した書き換え回数を示す。
【0075】
α1:日あたりに書き換え可能なストレージ20E全体の上限回数×ストレージ20Eの物理サイズに対してのアプリの確保領域の割合[%]×確保期間[日]
β1:日あたりの書き込み予定サイズに対応した書き換え回数×確保期間[日]
【0076】
ステップS114において、CPU20Aは、確保要求を受け付けたアプリについて、当該アプリが要求した書き込み予定サイズに対応した書き換え回数を当該アプリに割り当てる。上記β1で求まる回数である。また、ストレージ20Eに当該アプリの領域を確保する。
【0077】
ステップS116において、CPU20Aは、確保要求を受け付けたアプリについて、ストレージ20Eの現時点の書き換え上限回数を当該アプリに割り当てる。上記α1で求まる回数である。また、ストレージ20Eに当該アプリの領域を確保する。
【0078】
ステップS118において、CPU20Aは、確保要求を受け付けたアプリに割り当てられた書き換え上限回数を当該アプリに通知すると共に、ストレージ20Eに当該アプリの領域を確保する。
【0079】
以上の本実施形態によれば、現時点のストレージ20Eの書き換え残回数に応じて、割り当てられる書き換え上限回数を可変とする。これにより本実施形態では、ストレージ20E全体の書き換え残回数の更新を考慮して、記録装置の製品としての製品保証期間を確保できる。
【0080】
[変形例]
上述した第2実施形態の変形例を挙げる。実施形態では書き換え上限回数を設定する単位を確保期間とする場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、本開示の区間の単位を車両12の走行距離[km]とすることもできる。
【0081】
【0082】
ステップS200において、CPU20Aは、アプリからの確保要求を受け付ける。第2実施形態では確保要求には、確保サイズ[MB]、確保距離[km]、及び指定がある場合に「1kmあたりの書き込み予定サイズ」の情報が含まれる。確保距離[km]は、アプリが確保要求する走行距離である。確保距離[km]が、本開示の確保区間である第2区間の一例である。
【0083】
ステップS202において、CPU20Aは、1kmあたりの書き込み予定サイズの指定があるか否かを判定する。指定がないと判定した場合にはステップS204へ移行し、指定があると判定した場合にはステップS208へ移行する。
【0084】
ステップS204において、CPU20Aは、確保要求を受け付けたアプリについて、確保領域の割合[%]及び確保距離[km]に応じた書き換え上限回数を算出する。算出手法は第1実施形態のステップS22と同様の算出手法を用いて、期間を距離に置き換えて算出すればよい。
【0085】
ステップS206において、CPU20Aは、確保要求を受け付けたアプリについて、ステップS204で算出された書き換え上限回数を設定する。また、ストレージ20Eに当該アプリの領域を確保する。
【0086】
ステップS208において、CPU20Aは、デバイスドライバ60から現時点の寿命となるストレージ20E全体の書き換え残回数を取得する。
【0087】
ステップS210において、CPU20Aは、ストレージ20E全体の書き換え残回数及び残りの製品寿命[km]に基づいて、ストレージ20E全体の日あたりに書き換え可能な上限回数を以下(4)式で算出する。
【0088】
1kmあたりに書き換え可能なストレージ20E全体の上限回数(回/km)=ストレージ20E全体の書き換え残回数÷残りの製品寿命[km] ・・・(4)
【0089】
残りの製品寿命[km]は、製品保証の走行距離[km]から工場出荷後の走行距離[km]を差し引いた距離である。
【0090】
ステップS212において、CPU20Aは、1kmあたりの書き込み予定サイズが割り当て可能か否かを判定する。可能と判定した場合にはステップS214へ移行し、可能でないと判定した場合にはステップS216へ移行する。判定は以下α2及びβ2の関係がα2>β2の条件を満たす場合に可能と判定する。α2は、ストレージ20Eの現時点の書き換え上限回数を示し、β2は、アプリが要求した書き込み予定サイズに対応した書き換え回数を示す。
【0091】
α2:1kmあたりに書き換え可能なストレージ20E全体の上限回数×ストレージ20Eの物理サイズに対してのアプリの確保領域の割合[%]×確保距離[km]
β2:1kmあたりの書き込み予定サイズに対応した書き換え回数×確保距離[km]
【0092】
ステップS214において、CPU20Aは、確保要求を受け付けたアプリについて、当該アプリが要求した書き込み予定サイズに対応した書き換え回数を当該アプリに割り当てる。上記β2で求まる回数である。
【0093】
ステップS216において、CPU20Aは、確保要求を受け付けたアプリについて、ストレージ20Eの現時点の書き換え上限回数を当該アプリに割り当てる。上記α2で求まる回数である。
【0094】
ステップS218において、CPU20Aは、確保要求を受け付けたアプリに割り当てられた書き換え上限回数を当該アプリに通知すると共に、ストレージ20Eに当該アプリの領域を確保する。
【0095】
以上の変形例によれば、ストレージ20Eの寿命の管理を走行距離で行う場合に、ストレージ20E全体の書き換え残回数の更新を考慮して、記録装置の製品としての製品保証期間を確保できる。
【0096】
なお、上述した実施形態では、アプリごとに書き換え上限回数を設定及び管理する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、アプリごとの単位をアプリ群ごととして、アプリの種類に応じたアプリ群を設けて、アプリ群ごとに書き換え上限回数を設定及び管理するようにしてもよい。この場合、例えば、アプリ群の確保領域は、各アプリについてアプリ群の設定時にあらかじめ確保しておく確保領域の合計とし、確保区間はアプリ群のアプリのうちの最長の区間を用いる等する。これにより各アプリについて都度、設定処理を行うのではなく、アプリ群について設定処理を行って書き換え上限回数を設定すればよい。管理処理は、アプリごとに行うが、アプリ群に設定された書き換え残回数を更新する。これにより、アプリ数が多くなるような場合においても、書き換え上限回数の設定及び管理に必要なレコード数の削減を図り、処理量を削減して実施形態を実現できる。
【0097】
なお、上記実施形態でCPU20Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0098】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0099】
上記実施形態で説明した処理の流れは、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
12 車両
20 セントラルECU(情報処理装置)
20A CPU(プロセッサ)
20E ストレージ(記録装置)
50 情報処理プログラム