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特開2024-727443次元情報生成システム及びプログラム
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  • 特開-3次元情報生成システム及びプログラム 図1
  • 特開-3次元情報生成システム及びプログラム 図2
  • 特開-3次元情報生成システム及びプログラム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072744
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】3次元情報生成システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022194513
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】311004393
【氏名又は名称】ニシオティーアンドエム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前田 智之
(72)【発明者】
【氏名】福田 優太
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】従来の施工に用いる重機に設置した計測機器による3次元計測だけでは計測不能箇所が発生するケースが多い。
【解決手段】3次元情報処理装置に、複数の3次元計測結果から複数の3次元点群データを生成する取得部と、前記複数の3次元点群データ間の同一特徴点を抽出する抽出部と、前記同一特徴点を基に前記複数の3次元点群データ間を位置合わせし一つの3次元点群合成データを生成する合成部と、位置座標値を設定した設計図面データから3次元メッシュデータを生成する生成部と、位置座標データを前記3次元点群合成データに設定する取込部と、前記3次元メッシュデータと前記3次元点群合成データ間の差分データを特定した差分算出前データを生成する特定部と、前記差分算出前データの情報に基づき演算処理し、差分データを生成する演算部と、前記差分データを基に差分算出結果を出力する出力部と、前記差分算出結果を表示する表示部と、を備えた。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の3次元計測機器による計測結果から複数の3次元計測データを取得し、複数の3次元点群データを生成する取得部と、前記取得部により生成された複数の3次元点群データ間の重複するデータ範囲に存在する同一特徴点を抽出する抽出部と、前記同一特徴点を基に前記複数の3次元点群データ間を位置合わせし一つの3次元点群合成データを生成する合成部と、設計図面データに位置座標値を設定し、設定した位置座標値を有する設計図面データから所定のサイズにメッシュ化した3次元メッシュデータを生成する生成部と、計測対象の位置座標データを生成し、生成した前記位置座標データを前記3次元点群合成データに設定する取込部と、前記3次元メッシュデータと前記位置座標データが設定された前記3次元点群合成データを、前記位置座標データと前記位置座標値に基づき重ね合わせ、前記3次元メッシュデータと前記位置座標データが設定された前記3次元点群合成データ間の差分データを特定した差分算出前データを生成する特定部と、前記差分算出前データの情報に基づき演算処理し、差分データを生成する演算部と、前記差分データを基にマッピング処理した差分算出結果を出力する出力部と、出力された前記差分算出結果を表示する表示部と、前記3次元メッシュデータと、前記複数の3次元点群データと、前記3次元点群合成データと、前記位置座標データが設定された3次元点群合成データと、前記差分算出前データと、前記差分データと前記差分算出結果(点群)を記憶する記憶部と、を備える3次元情報処理装置。
【請求項2】
コンピュータに、施工対象の設計図面データを取得し、取得した前記設計図面データに位置座標値を割り当てし、前記位置座標値を有した所定のサイズにメッシュ化された3次元メッシュデータを生成し、記録するステップと、前記施工対象の範囲が略同時に複数の3次元計測機器により計測された複数の3次元点群データを前記複数の3次元計測機器から取得し記録するステップと、前記取得された複数の3次元点群データ間の重複範囲内における同一特徴点を抽出するステップと、抽出された前記同一特徴点に基づき、前記取得された複数の3次元点群データを重ね合わせて一つの3次元点群合成データを生成し、記録するステップと、前記施工対象範囲の位置座標データを取得し、前記位置座標データを前記3次元点群合成データに割り当て、前記位置座標データが割り当てられた3次元点群合成データを記録するステップと、前記3次元メッシュデータと前記位置座標データが割り当てられた3次元点群合成データとを、前記位置座標データと前記位置座標値とに基づき重ね合わせ、重ねあわされた前記3次元メッシュデータと前記3次元点群合成データ間の差分を特定し、差分算出前データを生成し、記録するステップと、前記差分算出前データに基づく演算処理により差分データを生成し、記録するステップと、前記差分データに基づき、差分算出結果を生成し、記録するステップと、前記差分算出結果を表示するステップと、を実行させるためのプログラム。
【請求項3】
前記コンピュータが前記生成するステップから、前記特定するステップまでを略リアルタイムで行なう請求項2に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元情報生成システム及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、我が国における少子高齢化の労働力減少による生産性低下を打開するために、建設業では、「i―Construction」と呼ばれる施策が推し進められており、その一つに情報通信技術(ICT)を活用した技術開発が促進されている。
【0003】
情報化施工とは、この情報通信技術(ICT)の活用により、高効率かつ高精度な施工を実現するものであるが、その一例として、GNSS(全地球航法衛星システム)又はトータルステーションなどの位置計測装置を用いて建設機械の位置を取得し、施工箇所の設計データと現況地形データとの差分に関する情報を建設機械の運転席モニタへ提供し、当該情報に基づき重機作業のオペレータが差分への対応を行うマシンガイダンスなどの技術が提案されている。
【0004】
このマシンガイダンス技術による高効率かつ高精度な施工を実現するためには、作業効率の良い3次元計測や、取得する情報(3次元計測データ)の精度の高さ、および差分算出の処理速度(モニタ等への差分算出結果表示や半自動機械制御を含む。)が重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献】特開2019-218766号公報
【0005】
【非特許文献1】国土交通省近畿地方整備局近畿技術事務所「マシンコントロール/マシンガイダンス技術(バックホウ編)」の手引書[施工者用](平成30年2月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら建設工事におけるLiDAR等の3次元計測機器を用いた3次元計測は他の製造業とは違い、施工現場によっては計測対象範囲が広く単一の計測機器だけでは対応できず複数の計測機器による計測が同時並行で行われる必要がある。また法面や起伏のある地盤(掘削部)或いは混み合う機械装置が計測の障害(死角の発生)になることがあり、施工の進捗により現場に配置される機械装置の位置も変わるため従来の施工に用いる重機に設置した計測機器による3次元計測だけでは計測不能箇所が発生するケースが多い。またトータルステーション利用時も自動追尾解除や誤追尾などの不具合が生じることがあり、これを補完するため複数回の計測(やり直し含む)や計測機器移設などの作業負担が課題となっている。
【0007】
また、トータルステーション利用時で複数の建設機械により施工する「移動局(例えばバックホウ)の輻輳」を防ぐため施工範囲を分割することを要し施工性が悪い。
【0008】
さらに、従来の3次元計測情報システムを用いた施工においては、3次元計測情報内の情報量が多いとシステムの処理作業に時間を要するため更新する情報の表示が遅く、施工に伴う状況の変化への確認に時間がかかるためリアルタイム性がなく、作業効率が悪いという問題があった。また、施工対象範囲全体を対象とした差分確認は、各3次元計測機器による情報を一体となった施工対象範囲全体の情報となるよう別途各計測情報を連結処理する必要があるため、施工後の結果確認となり、余掘りなどの施工不良による手直しが発生した。このため作業難易度が高く熟練工を要するなど人手不足の課題もあった。
【0009】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであり、3次元計測情報を用いた差分の処理に要する時間を短くし、重機のオペレータ等に対し略リアルタイムでかつ広範囲の情報を提供することで施工性を向上させる3次元情報生成システム及びプログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1の発明は、3次元情報処理装置に、複数の3次元計測機器による計測結果から複数の3次元計測データを取得し、複数の3次元点群データを生成する取得部と、前記取得部により生成された複数の3次元点群データ間の重複するデータ範囲に存在する同一特徴点を抽出する抽出部と、前記同一特徴点を基に前記複数の3次元点群データ間を位置合わせし一つの3次元点群合成データを生成する合成部と、設計図面データに位置座標値を設定し、設定した位置座標値を有する設計図面データから所定のサイズにメッシュ化した3次元メッシュデータを生成する生成部と、計測対象の位置座標データを生成し、生成した前記位置座標データを前記3次元点群合成データに設定する取込部と、前記3次元メッシュデータと前記位置座標データが設定された前記3次元点群合成データを、前記位置座標データと前記位置座標値に基づき重ね合わせ、前記3次元メッシュデータと前記位置座標データが設定された前記3次元点群合成データ間の差分データを特定した差分算出前データを生成する特定部と、前記差分算出前データの情報に基づき演算処理し、差分データを生成する演算部と、前記差分データを基にマッピング処理した差分算出結果を出力する出力部と、出力された前記差分算出結果を表示する表示部と、前記3次元メッシュデータと、前記複数の3次元点群データと、前記3次元点群合成データと、前記位置座標データが設定された3次元点群合成データと、前記差分算出前データと、前記差分データと前記差分算出結果(点群)を記憶する記憶部と、を備えていることにある。
【0011】
請求項2の発明は、コンピュータに、施工対象の設計図面データを取得し、取得した前記設計図面データに位置座標値を割り当てし、前記位置座標値を有した所定のサイズにメッシュ化された3次元メッシュデータを生成し、記録するステップと、前記施工対象の範囲が略同時に複数の3次元計測機器により計測された複数の3次元点群データを前記複数の3次元計測機器から取得し記録するステップと、前記取得された複数の3次元点群データ間の重複範囲内における同一特徴点を抽出するステップと、抽出された前記同一特徴点に基づき、前記取得された複数の3次元点群データを重ね合わせて一つの3次元点群合成データを生成し、記録するステップと、前記施工対象範囲の位置座標データを取得し、前記位置座標データを前記3次元点群合成データに割り当て、前記位置座標データが割り当てられた3次元点群合成データを記録するステップと、前記3次元メッシュデータと前記位置座標データが割り当てられた3次元点群合成データとを、前記位置座標データと前記位置座標値とに基づき重ね合わせ、重ねあわされた前記3次元メッシュデータと前記3次元点群合成データ間の差分を特定し、差分算出前データを生成し、記録するステップと、前記差分算出前データに基づく演算処理により差分データを生成し、記録するステップと、前記差分データに基づき、差分算出結果を生成し、記録するステップと、前記差分算出結果を表示するステップと、を実行させるプログラムである。
【0012】
請求項3の発明は、コンピュータが、前記生成するステップから、前記特定するステップまでを略リアルタイムで行う請求項2に記載のプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来よりも広範囲の3次元計測ができ、また単一の計測機器では計測不能箇所がでる計測対象であっても対応できる。これにより計測作業負担が軽減する。また特徴点として立体指標を使用することで合成時の精度の向上や作業の簡略化が図れる。また一旦トータルステーションから情報処理装置に位置座標を取込み設定すると、以後は取込んだ位置座標を基に連続計測を行うので、再度位置座標を取込む必要がなくなる。またトータルステーション利用時の自動追尾解除や誤追尾の不具合や施工範囲分割の課題が解決する。また3次元点群データを取得するステップから推定した差分データを出力するステップまでを即時的に実施するので、建設機械による作業と略リアルタイムで表示部に刻刻と差分算出結果(点群)を表示することができる。そのため例えば掘削で使用する場合には掘削深度の状況を略リアルタイムに確認することができ、これによりバックホウに備えられた表示部を確認することでオペレータが掘削深度の状況を把握しながら作業効率よく掘削作業を行うことができる。このため余掘りなどの施工不良により手直しも無くなり、熟練オペレータでなくとも設計図面に沿った掘削作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)本発明の実施の形態に係る3次元情報処理装置のハードウェア構成を示した図、(B)同3次元情報処理装置の機能構成を示した図
図2】(A)本発明の実施の形態を示す3次元情報処理装置のインバート掘削での使用時の機器の配置を示した簡略図、(B)同3次元情報処理装置の計測方法を示した図
図3】(A)本発明の実施の形態を示す3次元情報生成システムのプログラムの動作フローを示した図、(B)同インバート掘削作業で使用する3次元情報生成システムの差分算出結果(点群)を示した切断箇所302における矢視断面図と平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る3次元計測システムについて図1を用いて説明する。図1(A)は、3次元情報処理装置2のハードウェア構成を模式的に示した図である。3次元情報処理装置2は、コンピュータ1、表示装置5、操作装置6、通信装置3、集線装置7、計測機器9及び各装置間のネットワーク4より構成される。
【0016】
コンピュータ1は、プロセッサ101、メモリ102、インターフェース103、ストレージ104より構成される。プロセッサ101はメモリ102に記憶されているプログラムに従い各種データ処理を行う演算装置である。これらの各装置は図示せぬ電源から供給される電源によって動作する。なお、以下の説明において「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることが出来る。3次元情報処理装置2の各機能は、プロセッサ101、メモリ102などのハードウェア上に所定のプログラムを読み込ませることによりプロセッサ101が演算を行い、他の装置から送信されてきたデータを取得したり、メモリ102及びストレージ104におけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。各種の処理は、1つのプロセッサ101によって実行されてもよいが、2以上のプロセッサ101により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサ101は、1以上のチップによって実装されてもよい。なお、プログラムは、クラウド上の他の装置から電気通信回線を介して3次元情報処理装置に送信されてもメモリ102にインストールされてもよい。
【0017】
メモリ102は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ102は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ102は、本実施形態に係る方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0018】
ストレージ104は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つによって構成されてもよい。ストレージ104は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。
【0019】
通信装置3は、有線又は無線の少なくとも一方を介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、集線装置7とネットワーク4経由で通信を行う。また、3次元情報処理装置2と別個にi-Padやスマートフォンなどの携帯式端末を表示装置5aとして用いるときにも、コンピュータ1と表示装置5aとの間の通信をネットワーク4経由で行う。
【0020】
操作装置6は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタンなど)である。表示装置5は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、携帯端末、スマートグラス、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、表示装置5は一つではなく、例えば工事事務所と施工現場とに複数設置してもよく、別途施工現場の建設機械の操作室に設けるようにしてもよい。
【0021】
コンピュータ1は、インターフェース103を介して、通信装置3経由で入力された情報に対し所定のプログラムに基づいて処理した結果を表示装置5、操作装置6に受渡しを行う。表示装置5は出力された各種データ処理の結果を表示し、操作装置6はユーザーのコンピュータ1に対する操作を受付ける。コンピュータ1は、表示装置5及び操作装置6が一体となっている所謂ノート型パソコンが扱い易いが特に拘らない。
【0022】
集線装置7は、3次元点群データを取得する複数の計測機器9,9・・・と、各計測機器9,9・・・からの3次元点群情報を取得する取得装置37と、取得した情報をコンピュータ1に送信する送信装置38とから構成されている、本実施の形態では、集線装置7は、計測機器9,9・・・とは有線で、コンピュータ1とは、通信装置3経由で接続されており、通信装置3はコンピュータ1との距離に応じて通信手段として有線又は無線が設定される。集線装置7は、送信装置38を介して、コンピュータ1と計測機器9,9・・・からの3次元データの受渡しを行う。なお、計測機器9,9・・・が無線で接続される場合は、集線装置7を介さず、直接通信装置3経由でコンピュータ1と接続する。
【0023】
計測機器9,9・・・は、作業が行われる施工対象の範囲に設置され、有線又は無線によるネットワーク4で集線装置7に接続されている3D-LiDARと呼ばれるレーザー光を用いて距離、形状等を測定する空間計測機器であり、対象物の表面上の多数の点にレーザー光を照射し、その反射光によりそれらの多数の点の各々までの距離を計測し、計測した距離に基づき対象物の3次元形状を複数の点の位置で表す3次元点群データを略リアルタイムに生成する機能を持つ。但し、同じ役割を果たせる3次元計測機器であれば3D-LiDARに拘らない。
【0024】
本実施の形態では、計測機器9,9・・・の設置台数は3台としているが、最低設置台数は2台とし、互いの計測対象範囲が必ず一部重複するように配置する。なお、計測対象範囲や計測方向及び計測条件により4台以上に設置台数を増やしても構わない。例えば、計測対象範囲として2台の計測機器9,9で対応可能だとしても、計測対象範囲内に重機等により死角が生ずるときには、当該死角を解消するために計測機器9を1台追加し、計測対象範囲内で死角が生じないようにする。
【0025】
取得装置37は、ハードディスク等の情報記録装置で、計測機器9,9・・・から有線又は無線によるネットワーク4経由で施工者が建設機械等で施工を行う施工対象範囲の3次元点群データを取得する。この複数の3次元点群データは、所定の時間間隔(例えば1秒)で計測された情報であってもよい。なお、計測機器9,9・・・が有する時刻は同調していることが望ましい。
【0026】
送信装置38は、取得装置37が取得した情報を通信装置3経由で随時コンピュータ1に送信する。送信に用いるネットワークは、有線であっても無線であっても構わない。なお、集線装置7又は計測機器9とコンピュータ1間の距離が長い際には、途中に通信用中継部を設けることが望ましい。
【0027】
次に、本実施形態の動作について説明する。コンピュータ1は、本実施の形態に係るプログラムに従い各処理を行うことにより、図1(B)に示す構成を備える3次元情報処理装置2のデータ処理装置21として機能する。すなわち、本実施形態に係るプログラムは、コンピュータ1に、以下に説明する記憶部201、取得部202、生成部205、合成部206、特定部207、取込部208、演算部209、出力部210、抽出部211が行う処理を実行させる。
【0028】
またデータ処理装置21は、設計図面情報と計測情報間のデータ処理により特定される差分算出結果を表す画像を、表示装置5に表示させる。以下、データ処理装置21が行う各処理(部)について図1(B)により説明する。
【0029】
記憶部201は、後述する設計図面から作成される所定のサイズでメッシュ化された3次元メッシュデータと、計測機器9,9・・・が計測した複数の3次元点群データと、複数の3次元点群データから作成される3次元点群合成データと、位置座標データが設定された3次元点群合成データと、差分算出前データと、差分データと、差分算出結果(点群)とを記録する。
【0030】
取得部202は、計測機器9,9・・・による計測結果から直接、又は集線装置7の送信装置38を介して複数の3次元計測データを取得し複数の3次元点群データを生成する。
【0031】
生成部205は、2次元の設計図面データに、位置座標値を設定し、設定した位置座標値を有する設計図面データから所定のサイズにメッシュ化した3次元メッシュデータを生成する。但し、3次元の設計図面データを使用する場合は取込方法を変更する。
【0032】
抽出部211は、取得部202により生成された複数の3次元点群データ間の重複するデータ範囲に存在する同一特徴点を抽出する。
【0033】
合成部206は、複数の3次元点群データ間の重複計測範囲内における同一特徴点を基に複数の3次元点群データ間を位置合わせし一つの3次元点群合成データを生成する。なお、3次元点群合成データは、計測機器9,9・・・が所定の時間間隔(例えば1秒)で計測した3次元計測データに基づき随時上書きされ更新される。なお、同一特徴点は1点ではなく複数点用いるようにしてもよい。また、計測対象範囲が広く、複数の計測機器9,9・・・の計測対象範囲で計測範囲が重なる範囲39が一つだけでは3次元点群合成データを生成できないときには、複数の計測機器9,9・・・間で互いの計測対象範囲が一部重複する範囲39を複数箇所設け、当該複数の箇所の重複範囲39内にある各同一特徴点を用いることでより大きな対象範囲の3次元点群合成データを生成することができる。
【0034】
取込部208は、施工現場内に設置されたトータルステーション(図示せず)からターゲット部26を介して位置座標情報を取込み、計測対象の位置座標データを生成し、生成した位置座標データを合成部206が生成した3次元点群合成データに設定する。
【0035】
特定部207は、3次元メッシュデータと取込部208が生成した位置座標データを設定した3次元点群合成データを、位置座標データと位置座標値に基づき重ね合わせ、3次元メッシュデータと位置座標データが設定された3次元点群合成データ間の差分データを特定した差分算出前データを生成する。
【0036】
演算部209は、特定部207によって生成された差分算出前データの情報に基づき演算処理し、差分データを生成する。
【0037】
出力部210は、演算部209が生成した差分データを基にマッピング処理した差分算出結果(点群)を表示装置5に出力する。
【0038】
表示装置5の表示部212は、出力部210から出力された差分算出結果(点群)を表示する。
【0039】
記憶部201、取得部202、生成部205、合成部206、特定部207、取込部208、演算部209、出力部210及び抽出部211はプロセッサ101の制御下で動作するメモリ102により実現される。
【0040】
次に、前記ハードウェア構成とデータ処理装置21を備える3次元情報処理装置2を使った作業方法の一実施形態として、トンネル工事におけるインバート掘削時の実施の形態を例にとり、以下図2を用いて説明する。
【0041】
まず機器配置について、図2(A)に示す22はバックホウであって、インバート掘削工事で一般的に用いられる建設機械であり、本実施の形態では運転室内の操作盤(図示せず)位置に別途表示装置5aを備える。
【0042】
計測機器9a、計測機器9b及び計測機器9cはトンネル内壁17に取付けられるが、図2(B)で示す通り、計測機器9aの計測範囲23と計測機器9bの計測範囲24と計測機器9cの計測範囲25との3つの計測範囲を用い、各計測範囲に死角部分があってもその他の計測機器がその死角部分を計測し、互いに補完し合うように計測対象範囲18全体を死角部分が無く計測できるようにかつ、計測対象範囲18内に3つの計測範囲が重なる範囲39ができるような向きと位置にして設置する。なお、計測機器9a、9b及び9cを設置する前に各計測機器が保有する時計の時刻を同調しておく。
【0043】
また計測機器9a、計測機器9b及び計測機器9cは、トンネル内壁17に取付けられた集線装置7とそれぞれ有線(図示せず)で接続されている。また集線装置7はWiFi機能を有し、所定の場所に設置されたコンピュータ1と無線接続している。
【0044】
26はターゲット部であって、指標27とピンポール28とプリズム29とで構成され、計測機器9a、計測機器9b、計測機器9cのキャリブレーション用に用いられる計測対象物上に設置する特徴点である。
【0045】
指標27は、レーザー光の反射時間で距離を算出し立体把握する3D-LiDARの特性上、平面を計測してモニタ表示される3次元点群データの中心点等を基準点として視認するよりも、多面体を計測してモニタ表示される点群データの多角形の頂点を基準点とした方が視認し易いので、本実施の形態では立体指標としている。
【0046】
またピンポール28とプリズム29は通常の測定で用いる標準的なもので構わない。本実施の形態では、ターゲット部26を前記それぞれ合成されたデータの範囲内に3本設置する。但し、合成された範囲内では3本以上であれば特に拘らない。
【0047】
次に3次元情報生成システム及びプログラムを利用するインバート掘削作業について、図3により説明する。まず始めにデータ処理21が実施する実施形態の動作フローについて、図3(A)により説明する。
【0048】
まず始めに生成部205に建設機械が行う作業の設計図面データを取得させ、取得した設計図面データに位置座標値を割り当てし、位置座標値を有した所定のサイズにメッシュ化された3次元メッシュデータを生成し、記録する(ステップS01)。
【0049】
次に取得部202は、施工対象の範囲18が同時に複数の3次元計測機器により計測された複数の3次元点群データを複数の3次元計測機器(本実施の形態では計測機器9a、計測機器9b、計測機器9c)から取得し記録する(ステップS02)。なお、複数の3次元計測機器は同調していることが望ましい。
【0050】
次に、抽出部211に前記複数の3次元点群データ間の重複範囲39内における同一特徴点を抽出させる(ステップS03)。
【0051】
次に合成部206において、同一特徴点に基づき、取得された複数の3次元点群データを重ね合わせて一つの3次元点群合成データを生成し、生成した3次元点群合成データを記憶部201に記録させる(ステップS04)。
【0052】
次に取込部208により、施工対象の範囲の位置座標データを取得し、取得した位置座標データを3次元点群合成データに割り当てし、位置座標データが割り当てられた3次元点群合成データを記憶部201に記録させる。(ステップS05)
【0053】
次に特定部207により、3次元メッシュデータと位置座標データが割り当てられた3次元点群合成データを、位置座標データと位置座標値とに基づき重ね合わせ、重ねあわされた3次元メッシュデータと前記3次元点群合成データ間の差分を特定し、差分算出前データを生成し、記憶部201に記録させる(ステップS06)。
【0054】
次に演算部209において、差分算出前データを基に演算処理させ、差分データを生成し、記憶部201に記録し(ステップS07)、次に出力部210により、差分データの情報を基に差分算出結果(点群)を生成し記憶部201に記録し(ステップS08)、次に出力された差分算出結果(点群)を表示装置5に表示する(ステップ09)。
【0055】
前記動作フロー初回はステップS01からステップS09までのサイクルで処理され、それ以降の動作フローは、設定変更がない限り設計図面データは変更されないためステップS01及び、施工現場内から位置座標情報を入手する処理は建設機械が作業を行う空間、計測対象範囲18毎に1度行えば次のデータに引き継がれるためステップS05の取込部208による位置座標データの生成及び3次元点群合成データへの割り当てを除く、ステップS02からステップS09までのステップを計測機器9,9・・・が所定の時間間隔(例えば1秒)で計測した3次元計測データに基づき随時上書きされ繰り返し処理される。また計測データ毎にと前記動作フローが略リアルタイム(0.5秒程度の差)で実施されるので、計測と略同じタイミング(例えば1秒ごと)で表示装置5に差分算出結果(点群)が随時更新されて表示される。
【0056】
次に、表示装置5に表示される差分算出結果(点群)を確認しながらのインバート掘削作業方法について、図3(B)により説明する。
【0057】
31は計測対象範囲18の平面図におけるヒートマップであって、出力部210のマッピング処理により、設計図面からの3次元メッシュデータと掘削状況との差分算出結果(点群)を距離毎に領域分け(色分け)されて出力され、表示装置5で表示される画像である。また本実施の形態では差分距離50mm毎に設計掘削深度と乖離する距離によって領域分け(色分け)表示がなされている。
【0058】
32は矢視断面画像であって、ヒートマップ31の同じ差分算出結果(点群)を、断面302で切った画像を表示する。本実施の形態の断面表示数は3つとなっているが必要に応じて断面表示箇所、断面表示数を設定できる。
【0059】
35は作業機画像であって、本実施の形態では計測範囲内にあるバックホウ22が計測対象範囲に含まれ点群で表示されているものである。差分算出結果(点群)が計測サイクル(例えば1秒ごと)と略同じタイミングで更新表示されるので、バックホウ22が移動すると作業機画像35も略リアルタイムに移動状況が表示される。
【0060】
以上のヒートマップ31と断面画像32を表示する表示装置5aを備えたバックホウ22により、オペレータが作業機画像35の動きと領域(色)の変化を確認しながら差分の発生している箇所を対象に掘削作業を実施する。但し、作業機画像35の表示が無くともバックホウ22の移動は目視にして、表示の確認は領域(色)の変化のみ確認しながらでも作業は実施できる。
【0061】
まず掘削前の差分算出結果(点群)により、ヒートマップ31及び断面画像32に、設計掘削深度と乖離する距離によって領域分け(色分け)表示される。
【0062】
このとき仕上がり領域分けとして、本実施の形態では設計図面との差分許容範囲を領域36の範囲(差分数量0mmから-50mm)に設定した場合、領域36以外が掘削を要する作業領域となる。但し、現場の状況によっては埋戻しを要する作業領域もある。
【0063】
次に領域36以外の作業領域を確認し作業位置を定め、定めた作業位置までヒートマップ31上の作業機画像35の移動表示も確認しながらバックホウ22を移動させる。
【0064】
次に掘削作業を開始し、表示装置5aで作業領域を確認しながら掘削する。差分算出結課(点群)が略リアルタイムで更新表示されているので、作業の進行により掘削深度が差分許容範囲に達したとき、瞬時に作業領域の表示から領域36の表示に切り替わるので直ぐに掘削作業を止めることができる。(このため施工精度が向上するとともに余掘りによるやり直しが無くなる。)このように略リアルタイムに変化する差分算出結果(点群)表示に従い掘削或いは埋戻し作業を行う。
【0065】
以上の作業を、ヒートマップ31及び断面画像32に表示される作業領域すべてが差分許容範囲領域36内に収まるようになるまで繰り返し作業を行う。
【0066】
また施工範囲すべてを同時計測しながら作業するので、計測作業中は計測機器9a、計測機器9b、計測機器9c、集線装置7は配置を変えないでよい。これにより施工範囲を分割する必要も無くなる。ただし、当初の状況と異なり、仮に作業機や発電機などを追加するときなどは以降死角が生じないよう各計測機器9,9・・・の配置を見直すことが望ましい。
【0067】
以上、本発明の一実施の形態としてインバート掘削作業時の使用方法を示したが、その他本発明が実施できる形態として、設計図面と現況との差分算出でトンネル工事のコソク作業では当りを確認したい領域に設定、或いはコンクリート吹付けや打設ではコンクリートの厚みを確認したい領域に設定して3次元情報生成システム及びプログラムを使用する方法としても用いることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 コンピュータ
2 3次元情報処理装置
3 通信装置
4 ネットワーク
5 表示装置
5a 表示装置
6 操作装置
7 集線装置
9 計測機器
9a 計測機器
9b 計測機器
9c 計測機器
17 トンネル内壁
18 計測対象範囲
21 データ処理装置
22 バックホウ
23 計測範囲
24 計測範囲
25 計測範囲
26 ターゲット部
27 指標
28 ピンホール
29 プリズム
31 ヒートマップ
32 矢視断面画像
35 作業機画像
36 領域
37 取得装置
38 送信装置
39 範囲
101 プロセッサ
102 メモリ
103 インターフェース
104 ストレージ
201 記憶部
202 取得部
205 生成部
206 合成部
207 特定部
208 取込部
209 演算部
210 出力部
211 抽出部
212 表示部
302 断面
図1
図2
図3