(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072753
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
H01G4/30 516
H01G4/30 201G
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039198
(22)【出願日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0153746
(32)【優先日】2022-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユーン、ダエ ウー
(72)【発明者】
【氏名】カン、バン スク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ダ ミ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ス ジン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG12
(57)【要約】
【課題】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【解決手段】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置され、上記内部電極と連結される電極層と、を含み、上記電極層はCu粒子及びガラスを含み、上記Cu粒子と上記ガラスの界面の少なくとも一部には、Cuを含む酸化物が配置される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置され、前記内部電極と連結される電極層と、を含み、
前記電極層はCu粒子及びガラスを含み、
前記Cu粒子と前記ガラスの界面の少なくとも一部には、Cuを含む酸化物が配置される、積層型電子部品。
【請求項2】
前記Cuを含む酸化物はCu2Oを含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記Cuを含む酸化物はCu2Oである、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記Cuを含む酸化物は、前記Cu粒子の一部が酸化されて形成される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記ガラスは、Fe、Sn、Ni、Mn、Ag、及びInの少なくとも何れか1つを含む酸化物を含む、請求項1から4の何れか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記ガラスは、Co及びGeの少なくとも何れか1つを含む酸化物をさらに含む、請求項5に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記ガラスは、Ti及びPの少なくとも何れか1つを含む酸化物をさらに含む、請求項5に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記ガラスは、SiまたはAlを含む酸化物を含み、前記Fe、Sn、Ni、Mn、Ag、及びInの少なくとも何れか1つは、前記SiまたはAlの合計100モルに対して0.005モル以上4.5モル以下である、請求項5に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記ガラスはFe3O4を含む、請求項1から4の何れか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記ガラスと前記Cu粒子が接する界面の少なくとも一部での、O元素に対するCu元素の割合が2以上である、請求項1から4の何れか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記電極層の平均厚さが7μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記Cuを含む酸化物は、前記Cu粒子と前記ガラスとの間に層の形態で配置され、Cuを含む酸化物層を成す、請求項1から4の何れか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記Cuを含む酸化物層の平均厚さが10nm以上50nm以下である、請求項12に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記Cuを含む酸化物は、前記Cu粒子と前記ガラスの界面の少なくとも一部にのみ配置される、請求項1から4の何れか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記電極層上にNiを含む第1めっき層が配置される、請求項1から4の何れか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
前記第1めっき層上にSnを含む第2めっき層が配置される、請求項15に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の1つである積層セラミックキャパシター(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピューター、スマートフォン、及び携帯電話などの種々の電子製品のプリント回路基板に取り付けられ、電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサーである。
【0003】
かかる積層セラミックキャパシターは、小型でありながらも高容量が保障され、且つ実装が容易であるという利点を有するため、種々の電子装置の部品として用いられることができる。コンピューター、モバイル機器などの各種電子機器の小型化、高出力化に伴い、積層セラミックキャパシターに対する小型化及び高容量化の要求も増大している。
【0004】
また、近年、自動車用電装部品に対する業界の関心が高くなっており、積層セラミックキャパシターにおいても、自動車もしくはインフォテインメントシステムに用いられるために、高信頼性特性が求められている。
【0005】
積層セラミックキャパシターの外部電極の基礎電極として機能する焼結電極がガラスを含む場合、めっき溶液などの酸性条件下でガラスの溶出が発生する可能性がある。
【0006】
そこで、耐食性ガラスを外部電極に含ませてめっき液からの浸食を防止しようとする試みがあったが、外部電極の金属粒子との濡れ性が低下し、外部電極の緻密度が低下する副効果が発生することがある。
【0007】
よって、ガラスと金属粒子との濡れ性を改善し、外部電極の緻密度を向上させるために、ガラスと金属粒子を含む外部電極の微細構造を改善する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の様々な目的の1つは、焼結電極がガラスを含む場合、焼結電極のCu粒子とガラスの濡れ性を改善することにある。
【0009】
本発明の様々な目的の1つは、焼結電極がガラスを含む場合、めっき液などの酸性条件下でガラスの溶出が発生する現象を防止するとともに、外部電極の緻密度を向上させることにある。
【0010】
但し、本発明の目的は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置され、上記内部電極と連結される電極層と、を含み、上記電極層はガラス及びCu粒子を含み、上記ガラスと上記Cu粒子の界面の少なくとも一部には、Cuを含む酸化物が配置されることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の様々な効果の1つは、焼結電極に含まれるCu粒子と、焼結電極に含まれるガラスとの界面の少なくとも一部に、Cuを含む酸化物を配置することで、Cu粒子とガラスの濡れ性を向上させることにより、積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させることである。
【0013】
本発明の様々な効果の1つは、めっき液からの耐食性を確保するために焼結電極に耐食性ガラスを含ませた場合にも、焼結電極中のCu粒子と耐食性ガラスの濡れ性を確保することである。
【0014】
但し、本発明の多様で且つ有益な利点と効果は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
【
図4】
図1の本体を分解して示した分解斜視図である。
【
図5】
図2のP1領域を拡大して示した模式図である。
【
図6】
図5のP2領域を拡大して示した模式図である。
【
図7】
図6のP2領域を透過型電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)で観察した画像である。
【
図8】
図7のA-A'線に沿って、TEM-EDX(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)によりCu元素の分布を分析したラインコンセントレーションプロファイル(line concentration profile)である。
【
図9】
図7のA-A'線に沿って、TEM-EDX(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)によりO元素の分布を分析したラインコンセントレーションプロファイルである。
【
図10】
図7のA-A'線に沿って、TEM-EDX(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)によりSi元素の分布を分析したラインコンセントレーションプロファイルである。
【
図11】
図1のK1領域を拡大して示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0017】
なお、本発明を明確に説明すべく、図面において説明と関係ない部分は省略し、様々な層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」とは、特に異なる趣旨の説明がされていない限り、他の構成要素を除外する趣旨ではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0018】
図面において、第1方向は積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義されることができる。
【0019】
図1は本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図であり、
図2は
図1のI-I'の断面図であり、
図3は
図1のII-II'の断面図であり、
図4は
図1の本体を分解して示した分解斜視図であり、
図5は
図2のP1領域を拡大して示した模式図であり、
図6は
図5のP2領域を拡大して示した模式図であり、
図7は
図1のP1領域を透過型電子顕微鏡(TEM、 Transmission Electron Microscope)で観察した画像であり、
図8は
図7のA-A'線に沿って、TEM-EDX(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)によりCu元素の分布を分析したラインコンセントレーションプロファイルであり、
図9は
図7のA-A'線に沿って、TEM-EDX(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)によりO元素の分布を分析したラインコンセントレーションプロファイルであり、
図10は
図7のA-A'線に沿って、TEM-EDX(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)によりSi元素の分布を分析したラインコンセントレーションプロファイルであり、
図11は
図2のK1領域を拡大して示した模式図である。
【0020】
以下、
図1から
図11を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品100と多様な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1から
図6を参照すると、本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、本体110上に配置され、内部電極121、122と連結される電極層131、141と、を含み、電極層131、141はCu粒子131a及びガラス131bを含み、Cu粒子131aとガラス131bの界面の少なくとも一部には、Cuを含む酸化物131cが配置される。
【0022】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0023】
本体110の具体的な形状は特に制限されないが、図示されたように、本体110は、六面体形状またはそれに類似の形状からなることができる。焼成過程における、本体110に含まれているセラミック粉末の収縮により、本体110は、完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0024】
本体110は、第1方向(厚さ方向)に互いに対向する第1及び第2面1、2と、上記第1及び第2面1、2と連結されて第2方向(長さ方向)に互いに対向する第3及び第4面3、4と、第1及び第2面1、2と連結され、且つ第3及び第4面3、4と連結されて第3方向(幅方向)に互いに対向する第5及び第6面5、6と、を有することができる。
【0025】
本体110を成す複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111の間の境界は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いずには確認が困難な程度に一体化されていることができる。
【0026】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量を得ることができれば特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、またはチタン酸ストロンチウム系材料などが使用できる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)、またはBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0027】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粉末に、本発明の目的に応じて、種々のセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0028】
一方、誘電体層111の平均厚さtdは、特に限定する必要はない。但し、一般に、誘電体層を0.6μm未満の平均厚さで薄く形成する場合、特に、誘電体層の平均厚さtdが0.35μm以下である場合には、信頼性が低下する恐れがある。
【0029】
本発明の一実施形態によると、電極層131、141に含まれるCu粒子131aとガラス131bの界面の少なくとも一部にCuを含む酸化物が配置されることで、信頼性を向上させることができるため、誘電体層の平均厚さtdが0.35μm以下である場合にも、優れた信頼性を確保することができる。
【0030】
したがって、誘電体層の平均厚さtdが0.35μm以下である場合、本発明による効果がより顕著になることができ、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
【0031】
誘電体層111の平均厚さtdは、上記第1内部電極121と第2内部電極122との間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味し得る。
【0032】
誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされた画像での1つの誘電体層において、長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層に拡張して行うと、誘電体層の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0033】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含み、容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部Acの上部及び下部に形成されたカバー部112、113と、を含むことができる。
【0034】
また、上記容量形成部Acは、キャパシターの容量形成に寄与する部分であり、誘電体層111を挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層することで形成されることができる。
【0035】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層することで形成されることができ、基本的に、物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0036】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。
【0037】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0038】
カバー部112、113の平均厚さtcは、特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の平均厚さtcは15μm以下であることができる。また、本発明の一実施形態によると、電極層131、141に含まれるCu粒子131aとガラス131bの界面の少なくとも一部にCuを含む酸化物が配置されることで、信頼性を向上させることができるため、カバー部112、113の平均厚さtcが15μm以下である場合にも、優れた信頼性を確保することができる。
【0039】
カバー部112、113の平均厚さtcは第1方向のサイズを意味し、容量形成部Acの上部または下部において等間隔の5個の地点で測定したカバー部112、113の第1方向のサイズを平均した値であることができる。
【0040】
上記容量形成部Acの側面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0041】
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置されたマージン部114と、第6面6に配置されたマージン部115と、を含む。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両側面に配置されることができる。
【0042】
マージン部114、115は、
図3に示されたように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面において、第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味し得る。
【0043】
マージン部114、115は、基本的に、物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0044】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上に、マージン部が形成されるべき箇所を除いて導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであることができる。
【0045】
また、内部電極121、122による段差を抑えるために、積層後に内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に幅方向に積層することでマージン部114、115が形成されてもよい。
【0046】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に積層される。
【0047】
内部電極121、122は第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0048】
図2を参照すると、第1内部電極121は、第4面4から離隔して第3面3を介して露出し、第2内部電極122は、第3面3から離隔して第4面4を介して露出することができる。
【0049】
この時、第1及び第2内部電極121、122は、その間に配置された誘電体層111により互いに電気的に分離されることができる。
【0050】
図3を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成することで形成されることができる。
【0051】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気伝導性に優れた材料を用いることができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含むことができる。
【0052】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷することで形成されることができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0053】
一方、内部電極121、122の平均厚さteは、特に限定する必要はない。但し、一般に、内部電極を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に、内部電極の厚さが0.35μm以下である場合には、信頼性が低下する恐れがある。
【0054】
本発明の一実施形態によると、電極層131、141に含まれるCu粒子131aとガラス131bの界面の少なくとも一部にCuを含む酸化物が配置されることで、信頼性を向上させることができるため、内部電極121、122の平均厚さが0.35μm以下である場合にも、優れた信頼性を確保することができる。
【0055】
したがって、内部電極121、122の平均厚さが0.35μm以下である場合、本発明による効果がより顕著になることができ、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
【0056】
内部電極121、122の平均厚さteは、内部電極121、122の平均厚さを意味し得る。
【0057】
内部電極121、122の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされた画像での1つの内部電極において、長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極に拡張して行うと、内部電極の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0058】
本体110上には、内部電極121、122と連結される電極層131、141が配置されることができる。具体的に、電極層131、141は本体110の第3面3及び第4面4に配置されることができ、本体110の第3面3に配置され、第1内部電極121と連結される第1電極層131と、本体110の第4面4に配置され、第2内部電極122と連結される第2電極層141と、を含むことができる。
【0059】
本実施形態では、積層型電子部品100が2つの電極層131、141を有する構造を説明しているが、電極層131、141の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的によって変わり得る。
【0060】
また、本明細書において、第1電極層131を基準として説明した実施形態は、第2電極層141にも同様に適用可能である。
【0061】
電極層131、141はCu粒子を含むことができる。これにより、内部電極121、122との電気的連結性を確保することができ、特に、内部電極121、122がNiを含む場合、Ni-Cu合金を形成することで、内部電極121、122と電極層131、141との電気的連結性及び固着強度を向上させることができる。
【0062】
電極層131、141は、Cu粒子のような導電性金属粒子の他にも、ガラスを含むことができる。電極層131、141は、複数のCu粉末粒子とガラスを含む導電性ペーストを本体110の第3面3及び第4面4に塗布し、乾燥過程を経て860℃以下の温度で焼成することで形成されることができる。焼成過程で、導電性ペーストに含まれる複数のCu粉末粒子はネッキング(Necking)が起こり、導電性粒子同士の電気的連結性を確保することができる。導電性ペーストに含まれるガラスは、かかる焼成過程で電極層131、141の間に生じ得る空隙を満たし、電極層131、141の緻密度を高める役割を果たすことができ、セラミック材料を主成分とする本体110との接着力を向上させる役割を果たすことができる。
【0063】
電極層131、141の焼成過程で、ガラスは焼成変形(plastic deformation)を起こして液体のような挙動を示すことができる。この時、ガラスは、Cu粒子に対して濡れ性(wettability)を示すことができる。Cu粒子とガラスとの濡れ性が大きいほど、最終的に形成される電極層131、141でCu粒子とガラスの接触面積が広くなり、それらの接着性が改善されるだけでなく、電極層131、141自体の緻密性も向上するため、積層型電子部品100の外部水分及びめっき液に対する信頼性も改善されることができる。
【0064】
本発明では、Cu粒子とガラスとの濡れ性を向上させるために、電極層131、141に含まれるCu粒子131aとガラス131bの界面の少なくとも一部に反応層を形成し、最終的には電極層131、141の緻密度を向上させ、積層型電子部品100の信頼性を向上させようとする。
【0065】
本発明の一実施形態によると、電極層131、141はCu粒子131a及びガラス131bを含み、Cu粒子131aとガラス131bの界面の少なくとも一部には、Cuを含む酸化物131cが配置される。
【0066】
図5は
図2のP1領域を拡大して示した模式図である。
【0067】
図5を参照すると、電極層131はCu粒子131a及びガラス131bを含んでおり、Cu粒子131a及びガラス131bは焼成された状態で電極層131を形成することができる。この時、Cu粒子131a及びガラス131bには互いに接する界面が存在し、この界面の一部に、Cuを含む酸化物131cが配置されることができる。
【0068】
図6は
図5のP2領域を拡大して示した模式図である。
【0069】
図6を参照すると、P2領域は、電極層131、141のうち、Cu粒子131aとガラス131bの界面にCu粒子を含む酸化物131cが形成された領域の1つを拡大したものである。すなわち、P2領域では、Cu粒子131aとガラス131bが直接接するのではなく、Cuを含む酸化物131cを介して接する。上述のように、ガラス131bは、Cu粒子131aよりも、Cuを含む酸化物131cに対してより優れた濡れ性を示すため、Cuを含む酸化物131cがCu粒子131aとガラス131bの界面の一部に配置され、電極層131の緻密度を向上させることで積層型電子部品100の信頼性を向上させることができる。
【0070】
図7は
図6のP2領域を透過型電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)で観察した画像である。
図7を参照すると、P2領域で、Cu粒子131aとガラス131bの界面の少なくとも一部には、Cuを含む酸化物131cが配置されていることが確認できる。以下、
図8から
図10では、A-A'線に沿って含まれる元素の含量と分布について説明する。
【0071】
図8は、
図7のA-A'線に沿って、TEM-EDX(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)によりCu元素の分布を分析したラインコンセントレーションプロファイルである。
【0072】
図8を参照すると、Cu元素はA-A'線に沿って次第に減少し、Intensityが0に収束することが確認できる。A-A'線において、Cu元素のIntensityが急激に減少して0に収束する部分(B-B')を、Cu粒子131aとガラス131bの界面と定義することができる。すなわち、Cu元素のIntensity値は、Cu粒子131aとガラス131bの界面(B-B')からガラス131bに向かって次第に減少することができる。
【0073】
図9は、
図7のA-A'線に沿って、TEM-EDX(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)によりO元素の分布を分析したラインコンセントレーションプロファイルである。
【0074】
図9を参照すると、O元素のIntensityは、Cu粒子131aとガラス131bの界面(B-B')からガラス131bに向かって次第に増加することができる。また、O元素のIntensityは、Cu粒子131aとガラス131bの界面(B-B')で勾配の傾斜の符号が変わる地点である変曲点を1つ以上有することができる。TEM-EDX分析でIntensityの大きさは該当元素の含量に比例するため、O元素の含量は、Cu粒子131aとガラス131bの界面(B-B')で勾配の傾斜の符号が変わる地点である変曲点を1つ以上有することができる。
【0075】
図10は、
図7のA-A'線に沿って、TEM-EDX(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)によりSi元素の分布を分析したラインコンセントレーションプロファイルである。
【0076】
図10を参照すると、Si元素のIntensityは、Cu粒子131aとガラス131bの界面(B-B')からガラス131bに向かって次第に増加することができる。また、Si元素のIntensityは、Cu粒子131aとガラス131bの界面(B-B')で勾配の傾斜の符号が変わる地点である変曲点を1つ以上有することができる。TEM-EDX分析でIntensityの大きさは該当元素の含量に比例するため、Si元素の含量は、Cu粒子131aとガラス131bの界面(B-B')で勾配の傾斜の符号が変わる地点である変曲点を1つ以上有することができる。
【0077】
一実施形態において、ガラス131bは、Fe、Sn、Ni、Mn、Ag、及びInの少なくとも何れか1つを含む酸化物を含むことができる。これにより、Cu粒子131aをより容易に酸化させ、Cu粒子131aとガラス131bが接する界面の少なくとも一部に反応層を形成し、ガラス131bのCu粒子131aに対する濡れ性をさらに向上させることができる。
【0078】
Fe、Sn、Ni、Mn、Ag、及び、Inの少なくとも何れか1つを含む酸化物の含量は特に制限されない。但し、Cuを含む酸化物131cの形成面積をより広くするために、Fe、Sn、Ni、Mn、Ag、及びInの少なくとも何れか1つの含量は、Si及びAlの合計100モルに対して0.005モル以上4.5モル以下であることができる。
【0079】
Fe、Sn、Ni、Mn、Ag、及びInの少なくとも何れか1つの含量がSi及びAlの合計100モルに対して0.005モル未満である場合、Cuを含む酸化物131cがCu粒子131aとガラス131bの界面に十分に形成されず、電極層131、141の緻密度向上の効果が不足する可能性があり、4.5モルを超える場合、Fe、Sn、Ni、Mn、Ag、及びInの少なくとも何れか1つを含む結晶相が形成されてガラス131bの内部に拡散し、却ってCuを含む酸化物131cが十分に形成されない可能性がある。
【0080】
一実施形態によると、ガラス131bに含まれるFe、Sn、Ni、Mn、Ag、及びInの少なくとも何れか1つを含む酸化物の含量を、Si及びAlの合計100モルに対して0.005モル以上4.5モル以下に調節することで、Cu粒子131aとガラス131bの界面にCuを含む酸化物131cを十分に形成し、電極層131、141の緻密度を著しく向上させることができる。
【0081】
一実施形態において、Cuを含む酸化物131cは、Cu粒子131aの一部が酸化されて形成されたものであることができる。Cu粒子131aとガラス131bを含む電極層131、141を形成する過程で、ガラス131bに含まれる金属酸化物の成分と含量を調節する場合、Cu粒子131aの酸化を促進し、Cu粒子131aとガラス131bの界面の少なくとも一部にCu粒子131aの一部が酸化されて形成されたCuを含む酸化物131cを形成することができる。この時、Cu粒子131aの酸化を促進できるガラス131bに含まれる金属酸化物は、上述のFe、Sn、Ni、Mn、Ag、及びInの少なくとも何れか1つを含む酸化物であることが好適である。特に、電極層131、141を焼成する前に、ガラス131bにFe2O3を添加する場合、電極層131、141の焼成過程でCu粒子131aが酸化される現象を促進することができる。電極層131、141の焼成前後に、Cu粒子131aとガラス131bの界面でCu粒子131aの一部が酸化され、Cuを含む酸化物131cが形成される反応は、下記の(化1)式で表されることができる。
【0082】
【0083】
上記(化1)式によると、焼成前のCu粒子(metal、本発明での131a)の一部は、660℃以上の酸化または還元雰囲気でFe2O3(glass、本発明での焼成前のガラス)と反応してCu2O(interlayer、本発明でのCu粒子とガラスの界面)を形成することができる。Fe2O3は、Cuを酸化した後、焼成後の電極層131、141に含まれるガラス131b内においてFe3O4として存在することができる。すなわち、電極層131、141の焼成過程で(化1)式が進行されると、焼成後の電極層131、141は、Cu粒子131aとガラス131bの界面に、Cu粒子131aの一部が酸化されたCuを含む酸化物131cが配置されることができ、Cuを含む酸化物131cはCu2Oであることができる。
【0084】
Cuを含む酸化物131cの組成を分析する方法は特に制限されない。上述のように、TEM-EDXにより、Cuを含む酸化物131cが形成された電極層131、141の領域で元素の種類と含量を分析することができる。また、Cuを含む酸化物の種類を分析する時には、XRD(X-Ray Diffraction)を用いることができる。積層型電子部品100の第3方向の中央部で第1方向及び第2方向に切断し、電極層131、141の第1方向及び第2方向の切断面を研磨して試料を製作した後、XRD分析により、Cuを含む酸化物131cの結晶の種類を突き止めることで、Cuを含む酸化物の種類を突き止めることができる。
【0085】
一方、本発明によると、焼成前のガラスの材料や電極層の材料に、Cuを含む酸化物を別に添加しなくても、Cu粒子131aとガラス131bの界面にCuを含む酸化物131cを形成することができるため、Cuを含む酸化物131cは、Cu粒子131aとガラス131bの界面の少なくとも一部にのみ配置されることができ、Cu粒子131aとガラス131bの界面の少なくとも一部を除いた他の領域には配置されないことができる。これにより、電極層131、141の緻密度を向上させるとともに、Cu粒子131aの過度な酸化を防止して電極層131、141の導電性を確保することができる。
【0086】
一方、一実施形態のように、Cu粒子131aとガラス131bの界面にCuを含む酸化物131cが形成される場合、Cu粒子131aとガラス131bが接する界面の少なくとも一部において、O元素に対するCu元素の割合は2以上であることができる。
【0087】
一方、一実施形態において、Cuを含む酸化物131cは、Cu粒子131aとガラス131bとの間に層の形態で配置され、Cuを含む酸化物層を成すことができる。
【0088】
この時、Cuを含む酸化物層の平均厚さは、10nm以上50nm以下であることができるが、これに制限されるものではない。Cuを含む酸化物層の平均厚さが10nm未満である場合、Cu粒子131aとガラス131bが接する界面での濡れ性を向上させる効果が不足する可能性がある。Cuを含む酸化物層の平均厚さが50nmを超える場合、Cu粒子131aの過度な酸化により、電極層131、141の導電性を十分に確保することができない可能性がある。したがって、酸化物層の平均厚さを10nm以上50nm以下に調節することで、電極層131、141の緻密度を向上させるとともに、適切な導電性を確保することにより、積層型電子部品100のESRの増加を抑制することができる。
【0089】
Cuを含む酸化物層の平均厚さは、第3方向の中央で第1及び第2方向に切断した電極層131、141の断面を観察して測定されることができ、Cuを含む酸化物131cが形成された任意の5個以上の地点で測定された値の平均値であることができる。具体的に、TEM-EDXにより、Cu元素の含量が急激に減少する部分から0に収束する地点までの距離を測定し、これらの平均値を取ることができる。
【0090】
一実施形態において、ガラス131bは、Co及びGeの少なくとも何れか1つを含む酸化物をさらに含むことができる。これにより、ガラス131bの相互間の架橋酸素の量を増大させ、電極層131、141の緻密度をさらに向上させることができる。
【0091】
一実施形態において、ガラス131bは、Ti及びPの少なくとも何れか1つを含む酸化物をさらに含むことができる。これにより、Cu粒子131aの反応性を高め、Cuを含む酸化物131cがより多く生成されるようにすることで、電極層131、141の緻密度をさらに向上させることができるだけでなく、耐薬品性を向上させることができる。
【0092】
一実施形態において、ガラス131bは、Si、Al、及びBの少なくとも何れか1つを含む酸化物をさらに含むことができる。Si、Al、及びBの少なくとも何れか1つを含む酸化物は、ガラスマトリックス構造を形成することで、ガラス131bの結合力を向上させる役割を果たすことができる。一方、Si、Al、及びBの少なくとも何れか1つを含む酸化物の含量を調節すると、ガラスの結合力を調節することができる。
【0093】
一方、焼成前のガラスフリットにSiを含む酸化物の含量を40wt%以上にして電極層131、141に含まれるガラスを形成する場合、Si-Oの強い結合により、外部めっき液に対する耐食性に優れるため、めっき過程でガラス131bの浸食に対する抵抗性が大きいという利点がある。
【0094】
しかし、このようなSiの含量が相対的に高いガラスは、ガラスとCu粒子の界面での高い界面エネルギーにより、ガラスのCu粒子に対する濡れ性が減少して電極層の緻密度を減少させる結果をもたらす可能性がある。かかる問題は、優れた耐食性を確保するためにAlまたはBを含む酸化物の含量を高くしてガラスを形成する場合にも、同様に起こる恐れがある。
【0095】
本発明の一実施形態によると、電極層131、141はCu粒子131a及びガラス131bを含み、Cu粒子131aとガラス131bの界面の少なくとも一部には、Cuを含む酸化物131cが配置されることで、Cu粒子131aとガラス131bの界面での濡れ性を改善することができるため、ガラス131bにSi、Al、及びBの何れか1つを4.5wt%以上含有する高耐食性のガラスを適用した場合にも、電極層131、141の耐食性を確保するとともに、緻密性の低下を防止することができる。これにより、積層型電子部品100の信頼性がさらに向上することができる。すなわち、一実施形態に従って、ガラス131bがSi、Al、及びBの何れか1つを4.5wt%以上含む場合、本発明による積層型電子部品の信頼性向上の効果がさらに顕著になることができる。
【0096】
一実施形態において、ガラス131bは、Li、Na及びK、Ba、Ca、Srの少なくとも何れか1つを含む酸化物をさらに含むことができる。Li、Na及びK、Ba、Ca、Srの少なくとも何れか1つを含む酸化物は、ガラス131bの融点と流動性を制御する役割を果たすことができる。
【0097】
一実施形態において、ガラス131bは、Znを含む酸化物をさらに含むことができる。Znを含む酸化物がガラス131bに含まれる場合、ガラス131bのめっき液に対する耐食性がさらに向上することができる。
【0098】
一方、ガラス131bに含まれる元素の組成を分析する方法は特に制限されない。
【0099】
積層型電子部品100の単位体積当たりの容量を増加させるためには、電極層131、141が積層型電子部品100の全体に占める割合を最小化する必要がある。そこで、電極層131、141を薄層化しようとする試みがあった。すなわち、積層型電子部品100の単位体積当たりの容量を最大化するために、電極層131、141の平均厚さは7μm以下であることが好ましい。但し、電極層の平均厚さが7μm以下である場合、電極層131、141に含まれるガラス131bがめっき液により溶出されやすいという問題が発生する可能性がある。しかし、本発明の一実施形態によると、Cu粒子131aとガラス131bの界面の少なくとも一部にCuを含む酸化物131cが配置されることで、Cu粒子131aとガラス131bの界面での濡れ性を改善することができるため、電極層131、141の緻密性を改善することができることから、平均厚さが7μm以下である電極層131、141の場合にも、ガラスの溶出による信頼性の低下を防止することができる。これにより、積層型電子部品100の信頼性がさらに向上することができる。すなわち、一実施形態に従って、電極層131、141の平均厚さが7μm以下である場合、本発明による積層型電子部品の信頼性向上の効果がより顕著になることができる。電極層131、141の平均厚さの下限は特に制限されない。但し、内部電極121、122との電気的連結性を確保するために、5μm以上であることが好ましい。
【0100】
図11は
図2のK1領域を拡大して示した模式図である。
【0101】
図11を参照すると、電極層131の平均厚さは、第3方向の中央で第1及び第2方向に切断した断面を観察して測定されることができ、第3面または第4面上に配置された厚さ方向に等間隔である5個の地点で測定した電極層131の第1方向のサイズを平均した値であることができる。具体的に、本体の幅方向(第3方向)の中央で長さ方向(第2方向)及び厚さ方向(第1方向)に切断した断面(L-T断面)で、最下部に配置された内部電極から最上部に配置された内部電極121まで、厚さ方向に均等な間隔を有する5個の地点(E1、E2、E3、E4、E5)における電極層131の第1方向のサイズの平均値であることができる。
【0102】
一方、本発明は、第1電極層131を基準として電極層131、141の平均厚さを測定する方法を述べているが、このような方法は、第2電極層141の平均厚さを測定する時にも同様に適用可能である。
【0103】
電極層131、141上にはめっき層132、133、142、143が配置されることができる。
【0104】
めっき層は、実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層の種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd、及びこれらの合金のうち1つ以上を含むめっき層であってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0105】
めっき層のより具体的な例としては、めっき層は、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層上にNiめっき層及びSnめっき層が順に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層が順に形成された形態であってもよい。また、めっき層は複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0106】
図1を参照すると、一実施形態において、電極層131上にはNiを含む第1めっき層132、142が配置されることができる。これにより、積層型電子部品100を基板に実装した場合に、半田リフローによる熱衝撃を緩和することができる。
【0107】
図1を参照すると、一実施形態において、Niを含む第1めっき層132、142上には、Snを含む第2めっき層133、143を含むことができる。すなわち、積層型電子部品は、電極層131、141、Niを含む第1めっき層132、142、及びSnを含む第2めっき層133、143が順に積層された形態で外部電極130、140を形成することができる。
【0108】
第2めっき層133、143はSnを含み、外部電極130、140の最外層に配置された場合に、実装特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0109】
(実施例)
表1は、Cuを含む酸化物の形成有無による、Cu粒子とガラスの界面の接着力と積層型電子部品の耐湿信頼性を評価した結果である。
【0110】
試験番号毎に500個の積層型電子部品のサンプルを作製し、焼成温度を除いては同一の条件下でサンプルを作製して特性を評価した。
【0111】
積層型電子部品のサンプルは、本発明の一実施形態のように、内部電極及び誘電体層を含む本体上に、Cu粒子とガラスフリット、バインダー及び分散剤を含む導電性ペーストを塗布及び乾燥した後、焼成炉での焼成過程を完了して電極層を形成した。その後、電極層上に、Niを含む第1めっき層とSnを含む第2めっき層を形成することで、積層型電子部品のサンプルを完成した。
【0112】
Cu粒子とガラスの界面にCuを含む酸化物が形成される場合、Cu粒子とガラスの接着力に優れる場合、耐湿信頼性に優れる場合を良品と判断し、表1で、サンプル000個のうち良品の割合が0%である場合をX、良品の割合が60%未満である場合を△、60%以上90%未満である場合を○、90%以上100%未満である場合を◎と表示した。
【0113】
Cu粒子とガラスの界面にCuを含む酸化物が形成されたか否かは、積層型電子部品100の第3方向の中央部で第1方向及び第2方向に切断し、電極層131、141の第1方向及び第2方向の切断面を研磨して試料を製作した後、電極層131、141の一領域に含まれている元素の種類と含量をTEM-EDXにより分析して確認した。
【0114】
Cu粒子とガラスの接着力(接合強度)は、せん断強度測定機を用いて、0.001mm/sのクロスヘッド移送速度で、実験条件当たりに3個の試験片のせん断強度の平均及び標準偏差を測定した。せん断強度の全平均に対して130%以上の値を超えるサンプルを良品と評価した。
【0115】
耐湿信頼性の評価は、85℃、85%の湿度で、2.5Vで10時間印加し、絶縁抵抗(IR、Insulation Resistance)値が1個以上でも1e4Ω未満に劣化してNGと判定される場合を不良、そうではない場合を良品と評価した。
【0116】
【0117】
表1を参照すると、Cu粒子とガラスの界面にCuを含む酸化物が形成された試験番号12~22は、Cu粒子とガラスの界面の接着力に優れており、積層型電子部品の耐湿信頼性に優れることが確認できる。
【0118】
特に、焼成温度が550℃以上900℃以下である試験番号15~22は、各特性を満たす良品の割合が60%以上であって、積層型電子部品の信頼性向上の効果に優れることが確認でき、焼成温度が650℃以上800℃以下である場合、積層型電子部品の耐湿信頼性向上の効果がさらに優れることが確認できる。
【0119】
したがって、本発明の一実施形態に従って、Cu粒子131aとガラス131bの界面の少なくとも一部にCuを含む酸化物131cを配置させることで、Cu粒子131aとガラス131bの接着力を向上させることができ、これにより、積層型電子部品100の耐湿信頼性を向上させることができる。
【0120】
一方、一実施形態によると、電極層131、141の焼成温度を550℃以上900℃以下、好ましくは650℃以上800℃以下に調節することで、Cuを含む酸化物131cを十分に配置させることにより、Cu粒子131aとガラス131bの接着力を効果的に向上させることができ、これにより、積層型電子部品100の耐湿信頼性を著しく向上させることができる。
【0121】
本発明で用いられた一実施例という表現は、互いに同一の実施例を意味せず、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されるものである。しかし、上記提示された一実施例は、他の実施例の特徴と結合して実施される場合を排除しない。例えば、特定の一実施例で説明された事項が他の実施例で説明されていなくても、他の実施例でその事項と反対の説明がされているかその事項と矛盾する説明がされていない限り、他の実施例に関連する説明であると解釈することもできる。
【0122】
また、本発明で用いられた用語は、一例を説明するために説明されたものであるだけで、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は文脈上明確に異なる意味でない限り、複数を含む。
【0123】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態及び添付図面により限定されず、添付の特許請求の範囲により限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0124】
100 積層型電子部品
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
121、122 内部電極
130、140 外部電極
131、141 電極層
131a Cu粒子
131b ガラス
131c Cuを含む酸化物
132、142 第1めっき層
133、143 第2めっき層