(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072763
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/14 20060101AFI20240521BHJP
A47C 3/18 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B60N2/14
A47C3/18 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110098
(22)【出願日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】63/425,758
(32)【優先日】2022-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香取 孝宜
【テーマコード(参考)】
3B087
3B091
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BA07
3B087BB12
3B087BC19
3B091EA04
(57)【要約】
【課題】車両用シート装置において、摺接部材のずれを抑制する。
【解決手段】車両用シート(1)は、フロア5とシートクッション11との間に設けられ、フロアに対してシートクッションを回転可能に支持する回転装置2を有する。回転装置は、フロアに設けられたベース部51と、シートクッションに設けられ、ベース部に回転可能に支持された回転部52とを有する。ベース部は、面が上下方向を向くベースプレート55と、ベースプレートから上方に延びる固定部材66とを有する。回転部は、軸受77を介してベースプレートの上面に回転可能に支持された回転板71を有する。固定部材の上端には、摺接部材85を介して回転板の上面と対向するフランジ部68が設けられる。摺接部材は、軸受よりも回転板の径方向外方に配置され、かつ回転板に形成された係止孔89に突入する係止部87を有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートであって、
フロアとシートクッションとの間に設けられ、前記フロアに対して前記シートクッションを回転可能に支持する回転装置を有し、
前記回転装置は、前記フロアに設けられたベース部と、前記シートクッションに設けられ、前記ベース部に回転可能に支持された回転部とを有し、
前記ベース部は、面が上下方向を向くベースプレートと、前記ベースプレートから上方に延びる固定部材とを有し、
前記回転部は、軸受を介して前記ベースプレートの上面に回転可能に支持された回転板を有し、
前記固定部材の上端には、摺接部材を介して前記回転板の上面と対向するフランジ部が設けられ、
前記摺接部材は、前記軸受よりも前記回転板の径方向外方に配置され、かつ前記回転板に形成された係止孔に突入する係止部を有する車両用シート。
【請求項2】
前記軸受は、複数のボールと、前記ボールを支持するリテーナとを含み、
前記回転板の径方向から見て、前記係止部は前記軸受と重なりを有する請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記回転板は、上方に向けて凹むと共に、前記回転板の回転軸線を中心として周方向に環状に延び、前記軸受を収容する軸受溝を有し、
前記摺接部材は、前記軸受溝よりも前記回転板の径方向外方に配置されている請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記摺接部材は、前記回転板の前記回転軸線を中心として円環状に延びるリング部を有し、
前記係止部は、前記リング部の下面に複数設けられ、
前記リング部の下面は前記回転板に当接し、
前記リング部の上面は前記フランジ部の下面に摺接する請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記リング部の上面は、前記回転板の径方向外方に向けて下方に傾斜している請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記リング部は、前記回転板の径方向外方に向けて、上下方向の厚みが小さくなっている請求項4に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記係止孔は、前記回転板を上下方向に貫通し、
前記係止部は、前記係止孔を貫通して、前記係止孔の下方に突出している請求項4に記載の車両用シート。
【請求項8】
複数の前記係止部は、前記係止孔を貫通し、前記係止孔の下縁に係止される爪部を有する第1係止部を含む請求項7に記載の車両用シート。
【請求項9】
複数の前記係止部は、前記回転板の前記回転軸線を中心とした前記周方向に延びた複数の第2係止部を有する請求項8に記載の車両用シート。
【請求項10】
前記回転板は、前記軸受溝の上側に、前記回転板の前記回転軸線を中心として前記円環状に延びる凸部を有し、
前記リング部の上面は、前記凸部の上端よりも下方に配置されている請求項4に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フロアに対して鉛直軸回りに回転可能な車両用シートが開示されている。車両用シート装置は、フロアにスライド装置を介して設けられたベース部材と、シートクッションに設けられ、ベース部に回転可能に支持された回転部材と、ベース部材に対して回転部材を回転させる電動アクチュエータとを有する。回転部材は、ベース部材の上面にボールを介して回転可能に支持されている。ベース部材に固定された固定部材(カバー部材)は、回転部材の上方に延び、環状の摺接部材を介して回転部材と対向し、ベース部材に対する回転部材の脱離を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
摺接部材は回転部材及びカバー部材から荷重を受けたときに、回転部材及びカバー部材に対してずれる虞がある。摺接部材がずれると回転部材の回転抵抗が増加し、回転部材の円滑な回転が阻害される虞がある。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、車両用シート装置において、摺接部材のずれを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、車両用シート(1)であって、フロア(5)とシートクッション(11)との間に設けられ、前記フロアに対して前記シートクッションを回転可能に支持する回転装置(2)を有し、前記回転装置は、前記フロアに設けられたベース部(51)と、前記シートクッションに設けられ、前記ベース部に回転可能に支持された回転部(52)とを有し、前記ベース部は、面が上下方向を向くベースプレート(55)と、前記ベースプレートから上方に延びる固定部材(66)とを有し、前記回転部は、軸受(77)を介して前記ベースプレートの上面に回転可能に支持された回転板(71)を有し、前記固定部材の上端には、摺接部材(85)を介して前記回転板の上面と対向するフランジ部(68)が設けられ、前記摺接部材は、前記軸受よりも前記回転板の径方向外方に配置され、かつ前記回転板に形成された係止孔(89)に突入する係止部(87)を有する。
【0007】
この態様によれば、摺接部材の係止部が回転板の係止孔に突入することによって、摺接部材が回転板に固定される。これにより、車両用シート装置において、摺接部材のずれを抑制することができる。
【0008】
上記の態様において、前記軸受は、前記軸受は、複数のボール(78)と、前記ボールを支持するリテーナ(79)とを含み、前記回転板の径方向から見て、前記係止部は前記ボールと重なりを有してもよい。
【0009】
この態様によれば、回転装置の上下方向の厚さを抑制することができる。
【0010】
上記の態様において、前記回転板は、上方に向けて凹むと共に、前記回転板の回転軸線を中心として周方向に環状に延び、前記軸受を収容する軸受溝(81)を有し、前記摺接部材は、前記軸受溝よりも前記回転板の径方向外方に配置されてもよい。
【0011】
この態様によれば、上下方向から見て、軸受溝と摺接部材とが重ならないため、回転装置の上下方向の厚さを抑制することができる。
【0012】
上記の態様において、前記摺接部材は、前記回転板の前記回転軸線を中心として円環状に延びるリング部(86)を有し、前記係止部は、前記リング部の下面に複数設けられ、前記リング部の下面は前記回転板に当接し、前記リング部の上面は前記フランジ部の下面に摺接してもよい。
【0013】
この態様によれば、回転板の全周にわたって回転板とフランジ部と接触が回避される。
【0014】
上記の態様において、前記リング部の上面は、前記回転板の径方向外方に向けて下方に傾斜してもよい。
【0015】
この態様によれば、摺接部材の上面とフランジ部との接触面積が小さくなり、回転板の回転抵抗が小さくなる。一方、回転板がベースプレート及び固定部材に対して傾斜するときには、摺接部材の上面とフランジ部との接触面積が大きくなり、固定部材が回転板を安定性良く押さえることができる。
【0016】
上記の態様において、前記リング部は、前記回転板の径方向外方に向けて、上下方向の厚みが小さくなってもよい。
【0017】
この態様によれば、摺接部材の上面とフランジ部との接触面積が小さくなり、回転板の回転抵抗が小さくなる。一方、回転板がベースプレート及び固定部材に対して傾斜するときには、摺接部材の上面とフランジ部との接触面積が大きくなり、固定部材が回転板を安定性良く押さえることができる。
【0018】
上記の態様において、前記係止孔は、前記回転板を上下方向に貫通し、前記係止部は、前記係止孔を貫通して、前記係止孔の下方に突出してもよい。
【0019】
この態様によれば、係止部が係止孔から抜け出し難くなり、摺接部材が回転板に安定性良く固定される。
【0020】
上記の態様において、複数の前記係止部は、前記係止孔を貫通し、前記係止孔の下縁に係止される爪部を有する第1係止部(87A)を含んでもよい。
【0021】
この態様によれば、係止部が係止孔から抜け出し難くなり、摺接部材が回転板に安定性良く固定される。
【0022】
上記の態様において、前記回転板の前記回転軸線を中心とした前記周方向に延びた複数の第2係止部(87B)を有してもよい。
【0023】
この態様によれば、係止部が係止孔から抜け出し難くなり、摺接部材が回転板に安定性良く固定される。
【0024】
上記の態様において、前記回転板は、前記軸受溝の上側に、前記回転板の前記回転軸線を中心として前記円環状に延びる凸部(72)を有し、前記リング部の上面は、前記凸部の上端よりも下方に配置されてもよい。
【0025】
この態様によれば、回転装置の上下方向の厚さを抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、車両用シート(1)であって、フロア(5)とシートクッション(11)との間に設けられ、前記フロアに対して前記シートクッションを回転可能に支持する回転装置(2)を有し、前記回転装置は、前記フロアに設けられたベース部(51)と、前記シートクッションに設けられ、前記ベース部に回転可能に支持された回転部(52)とを有し、前記ベース部は、面が上下方向を向くベースプレート(55)と、前記ベースプレートから上方に延びる固定部材(66)とを有し、前記回転部は、軸受(77)を介して前記ベースプレートの上面に回転可能に支持された回転板(71)を有し、前記固定部材の上端には、摺接部材(85)を介して前記回転板の上面と対向するフランジ部(68)が設けられ、前記摺接部材は、前記軸受よりも前記回転板の径方向外方に配置され、かつ前記回転板に形成された係止孔(89)に突入する係止部(87)を有する。
【0027】
この態様によれば、摺接部材の係止部が回転板の係止孔に突入することによって、摺接部材が回転板に固定される。これにより、車両用シート装置において、摺接部材のずれを抑制することができる。
【0028】
上記の態様において、前記軸受は、前記軸受は、複数のボール(78)と、前記ボールを支持するリテーナ(79)とを含み、前記回転板の径方向から見て、前記係止部は前記ボールと重なりを有してもよい。
【0029】
この態様によれば、回転装置の上下方向の厚さを抑制することができる。
【0030】
上記の態様において、前記回転板は、上方に向けて凹むと共に、前記回転板の回転軸線を中心として周方向に環状に延び、前記軸受を収容する軸受溝(81)を有し、前記摺接部材は、前記軸受溝よりも前記回転板の径方向外方に配置されてもよい。
【0031】
この態様によれば、上下方向から見て、軸受溝と摺接部材とが重ならないため、回転装置の上下方向の厚さを抑制することができる。
【0032】
上記の態様において、前記摺接部材は、前記回転板の前記回転軸線を中心として円環状に延びるリング部(86)を有し、前記係止部は、前記リング部の下面に複数設けられ、前記リング部の下面は前記回転板に当接し、前記リング部の上面は前記フランジ部の下面に摺接してもよい。
【0033】
この態様によれば、回転板の全周にわたって回転板とフランジ部と接触が回避される。
【0034】
上記の態様において、前記リング部の上面は、前記回転板の径方向外方に向けて下方に傾斜してもよい。
【0035】
この態様によれば、摺接部材の上面とフランジ部との接触面積が小さくなり、回転板の回転抵抗が小さくなる。一方、回転板がベースプレート及び固定部材に対して傾斜するときには、摺接部材の上面とフランジ部との接触面積が大きくなり、固定部材が回転板を安定性良く押さえることができる。
【0036】
上記の態様において、前記リング部は、前記回転板の径方向外方に向けて、上下方向の厚みが小さくなってもよい。
【0037】
この態様によれば、摺接部材の上面とフランジ部との接触面積が小さくなり、回転板の回転抵抗が小さくなる。一方、回転板がベースプレート及び固定部材に対して傾斜するときには、摺接部材の上面とフランジ部との接触面積が大きくなり、固定部材が回転板を安定性良く押さえることができる。
【0038】
上記の態様において、前記係止孔は、前記回転板を上下方向に貫通し、前記係止部は、前記係止孔を貫通して、前記係止孔の下方に突出してもよい。
【0039】
この態様によれば、係止部が係止孔から抜け出し難くなり、摺接部材が回転板に安定性良く固定される。
【0040】
上記の態様において、複数の前記係止部は、前記係止孔を貫通し、前記係止孔の下縁に係止される爪部を有する第1係止部(87A)を含んでもよい。
【0041】
この態様によれば、係止部が係止孔から抜け出し難くなり、摺接部材が回転板に安定性良く固定される。
【0042】
上記の態様において、前記回転板の前記回転軸線を中心とした前記周方向に延びた複数の第2係止部(87B)を有してもよい。
【0043】
この態様によれば、係止部が係止孔から抜け出し難くなり、摺接部材が回転板に安定性良く固定される。
【0044】
上記の態様において、前記回転板は、前記軸受溝の上側に、前記回転板の前記回転軸線を中心として前記円環状に延びる凸部(72)を有し、前記リング部の上面は、前記凸部の上端よりも下方に配置されてもよい。
【0045】
この態様によれば、回転装置の上下方向の厚さを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図5】補強板が取り付けられた状態の回転板の底面図
【
図6】摺接部材が取り付けられた状態の回転板の平面図
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を参照して、本発明に係る回転装置2を自動車のシートに適用した実施形態について説明する。他の実施形態では、回転装置2は、鉄道や飛行機、船舶等の他の乗物のシートに適用されてもよい。以下、自動車を基準として、前後、左右、及び、上下の各方向を定める。
【0048】
図1に示すように、車両用シート装置1は、回転装置2を有する。また、車両用シート装置1は、シート本体3と、スライド装置4とを有する。回転装置2は、スライド装置4を介してフロア5に設けられている。シート本体3は、シートクッション11と、シートバック12とを有する。シートクッション11は、使用者の臀部を下方から支持する。シートバック12は、シートクッション11の後部から上方に延びている。シートバック12は、使用者の背部を後方から支持する。
【0049】
シートクッション11は、骨格をなすシートクッションフレーム14と、シートクッションフレーム14に支持されるパッドと、パッドの表面を覆う表皮材とを有する。シートクッションフレーム14は、前後に延びる左右のシートクッションサイドメンバ18と、左右に延び、左右のシートクッションサイドメンバ18の前端に結合された前メンバ19と、左右に延び、左右のシートクッションサイドメンバ18の後端に結合された後メンバ21とを有する。前メンバ19と後メンバ21との間には、使用者の臀部を支持する可撓性の支持部材22が架け渡されている。支持部材22は、複数の金属製のワイヤと、各ワイヤに結合された可撓性の樹脂板とを有するとよい。シートクッション11の左右の側部には、サイドカバー23が設けられている。サイドカバー23は、シートクッションサイドメンバ18に支持され、パッド及び表皮材の端末を隠蔽する。サイドカバー23は樹脂材料によって形成されているとよい。
【0050】
シートバック12は、骨格をなすシートバックフレーム25と、シートバックフレーム25に支持されるパッドと、パッドの表面を覆う表皮材とを有する。シートバックフレーム25は、上下に延びる左右のシートバックサイドメンバ29と、左右に延び、左右のシートバックサイドメンバ29の上端に結合された上メンバ31と、左右に延び、左右のシートバックサイドメンバ29の下端に結合された下メンバ32と、上メンバ31と下メンバ32の間を左右に延び、左右のシートバックサイドメンバ29に結合された中間メンバ33とを有する。左右のシートバックサイドメンバ29、上メンバ31、下メンバ32、及び中間メンバ33は、金属板を折り曲げ成形することによって形成されている。左右のシートバックサイドメンバ29、中間メンバ33、及び下メンバ32には、使用者の背部を支持する可撓性の支持部材34が架け渡されている。支持部材34は、複数の金属製のワイヤによって形成されているとよい。左右のシートバックサイドメンバ29の下端は、リクライニング装置35を介して対応するシートクッションサイドメンバ18の後端に結合されている。
【0051】
図1~
図3に示すように、スライド装置4は、前後に延びる左右のロアレール37と、各ロアレール37に前後にスライド移動可能に支持された左右のアッパレール38とを有する。各ロアレール37は、前後のフット39を介してフロア5に結合されている。各ロアレール37と対応するアッパレール38との間にはスライドロック装置(不図示)が設けられている。左右のスライドロック装置は、左右に延びるスライド操作レバー41によって互いに接続されている。使用者は、スライド操作レバー41を操作することによって、ロアレール37に対してアッパレール38をスライド移動可能にすることができる。
【0052】
図1~
図3に示すように、回転装置2は、フロア5とシートクッション11との間に設けられ、フロア5に対してシートクッション11を第1軸線A(回転軸線)の回りに回転可能に支持する。回転装置2は、ベース部51と、回転部52と、回転アクチュエータ53と、回転ロック装置54とを有する。
【0053】
ベース部51は、フロア5側に設けられている。本実施形態では、ベース部51は、スライド装置4を介してフロア5に設けられている。ベース部51は、面が上下方向を向く、ベースプレート55を有する。ベースプレート55は、円形状の板状をなす。またベース部51は、ベースプレート55の縁部から上方に突出する立壁56を有する。ベースプレート55は、前後一対のクロスメンバ57を介して、左右のアッパレール38に支持されている。各クロスメンバ57は、左右に延び、両端において左右のアッパレール38に結合されている。前側のクロスメンバ57の左右の両端は、左右において対応するアッパレール38の前端に結合されている。後前側のクロスメンバ57の左右の両端は、左右において対応するアッパレール38の後端に結合されている。
【0054】
図2及び
図3に示すように、前後のクロスメンバ57は、前後に互いに距離をおいて配置されている。ベースプレート55及び前後のクロスメンバ57は、金属板によって形成されているとよい。各クロスメンバ57の中央部には、左右方向に延びる複数の補強構造が形成されているとよい。
【0055】
図3に示すように、前後のクロスメンバ57は、ベースプレート55によって互いに結合されている。
【0056】
図3、
図7~
図9に示すように、ベースプレート55の中央部には、下方に向けて膨出した第1膨出部61が形成されている。第1膨出部61は、有底の円筒形に形成されている。第1膨出部61の中央には、厚み方向に貫通する円形の第1軸受孔62が形成されている。第1軸受孔62は、上下に延びる第1軸線Aを中心としている。第1軸受孔62の縁部には、上方又は下方に突出した環状の縁壁63が形成されているとよい(
図8参照)。
【0057】
図2、
図7~
図9に示すように、ベース部51は、ベースプレート55から上方に延びる固定部材66を更に有する。固定部材66は、ベースプレート55から上方に延びる円筒形の筒壁67と、筒壁67の上端から径方向内方に延出した内側フランジ部68とを有する。内側フランジ部68は、環状に形成され、面が上下を向いている。筒壁67の外周面は、ベースプレート55の立壁56の内周面よりも内側に配置されているとよい。固定部材66は、例えば固定部材66の筒壁67の外周面の下部とベースプレート55の立壁56の内周面の上部とが溶接されてベースプレート55に結合しているとよい。内側フランジ部68とベースプレート55との間には隙間が形成されている。固定部材66は、複数の部材を組み合わせて形成されてもよい。筒壁67と内側フランジ部68との境界部には、複数の補強構造が設けられてもよい。補強構造は、例えば凹部やリブ等であるとよい。
【0058】
図2~
図9に示すように、回転部52は、シートクッション11に設けられ、かつベース部51に回転可能に支持されている。回転部52は、ベースプレート55の上面に回転可能に支持された回転板71を有する。回転板71は、面が上下を向く円板状に形成されている。回転板71は金属板により形成されている。回転板71の中央部は、上方に向けて膨出した凸部をなす第2膨出部72を有する。第2膨出部72は、第1軸線Aを中心として円環状に延びている。第2膨出部72の内周縁により、回転板71の中央には厚み方向に貫通する円形の第2軸受孔73が画定されている。第2軸受孔73は、第1軸線Aを中心としている。第2膨出部72の内周縁部には、上方又は下方に突出した環状の縁壁74が形成されているとよい(
図8参照)。
【0059】
図2及び
図6に示すように、回転板71は、上方に向けて膨出した複数の第3膨出部75を更に有する。第3膨出部75は、第2膨出部72と一体に形成されているとよい。具体的には第3膨出部75は、第2膨出部72の外周部から径方向外方に張り出すように設けられている。本実施形態では4つの第3膨出部75が、第2膨出部72の周方向に等間隔で配置されている。第3膨出部75の上面には、上方に延びる対応するボルト76が設けられている。ボルト76は、スタッドボルトであってよい。
【0060】
図8及び
図9に示すように、回転板71の周縁部の上面は、内側フランジ部68の下面に対向している。具体的には回転板71の周縁部は、固定部材66の内側フランジ部68とベースプレート55との間に形成された隙間に配置されている。
【0061】
図7~
図9に示すように、回転板71は、ベースプレート55の上面に軸受77を介して支持されている。本実施形態では軸受77は、複数のボール78と、複数のボール78を回転可能に支持する環状のリテーナ79とを有する公知のスラスト軸受けである。リテーナ79は第1軸線Aを中心とした環状である。軸受77は、ベースプレート55の外周部の上面と、回転板71の外周部の下面との間に配置されている。具体的にはリテーナ79は、上方から見て第3膨出部75よりも回転板71の径方向外方、且つ固定部材66の内側フランジ部68の内周縁よりも回転板71の径方向内方に配置されている。
【0062】
回転板71は、上方に向けて凹むと共に、回転板71の第1軸線Aを中心として周方向に環状に延び、軸受77を収容する第1軸受溝81を有する。第1軸受溝81は、回転板71の外周部の下面から上方に向けて凹んでいる。また、ベースプレート55の外周部の上面には、軸受77の下部を受容するべく、下方に向けて凹む第2軸受溝82が形成されているとよい。ベースプレート55の第1膨出部61と回転板71の第2膨出部72との間には、空間84が形成されている。
【0063】
図5、
図7~
図9に示すように、回転板71には、固定部材66の内側フランジ部68に摺接する摺接部材85が設けられている。摺接部材85は、金属よりも摩擦係数が小さい樹脂材料によって形成されている。摺接部材85は、軸受77よりも回転板71の径方向外方に配置されている。即ち摺接部材85は、第1軸受溝81よりも回転板71の径方向外方に設けられている。摺接部材85は、回転板71の第1軸線Aを中心として円環状に延びるリング部86と、リング部86の下面に設けられた複数の係止部87とを有する。リング部86の面は上下方向を向く。リング部86の上面は固定部材66の内側フランジ部68の下面に摺接している。リング部86は、回転板71の径方向外方に向けて、上下方向の厚みが小さくなっている。即ちリング部86の上面は、回転板71の径方向外方に向けて下方に傾斜しているとよい。リング部86の下面は、回転板71に当接している。リング部86は回転板71の全周にわたって配置されるため、回転板71と内側フランジ部68との接触が回避される。摺接部材85は、複数の部材に分割されてもよい。
【0064】
係止部87は、リング部86の下面から下方に突出している。係止部87は、複数の第1係止部87Aと、複数の第2係止部87Bとを有する。第1係止部87Aは、前後一対をなし、リング部86の前部及び後部にそれぞれ設けられている。第1係止部87Aの下端には、回転板71の径方向内方に延びる爪部88が設けられているとよい。第2係止部87Bは、リング部86の周方向に等間隔で配置されているとよい。本実施形態では、第2係止部87Bは第1係止部87Aの左方及び右方にそれぞれ3つずつ配置されている。
【0065】
回転板71は、摺接部材85の各係止部87A、87Bを受容するための対応する係止孔89を有する。係止孔89は回転板71を上下方向に貫通している。各係止部87A、87Bは対応する係止孔89を上方から突入し、係止孔89の下方に突出する。第1係止部87Aの下端に設けられた爪部88は、対応する係止孔89の下縁に係止される。第2係止部87Bは、対応する係止孔89に嵌め込まれるとよい。これらにより、摺接部材85は回転板71に取り付けられる。
【0066】
摺接部材85が回転板71に取り付けられたとき、係止部87は回転板71の径方向から見て、軸受77と重なりを有する。またリング部86の上面は、第2膨出部72の上端、即ち上面よりも下方に配置されている。回転板71にはリング部86を受容するべく、下方に凹む円環状の受容溝が設けられてもよい。
【0067】
固定部材66の内側フランジ部68は、摺接部材85を介して回転板71をベースプレート55の側に押圧するとよい。これにより回転板71の上方の変位が抑制される。
【0068】
図7に示すように、回転部52は、回転板71とシートクッションフレーム14とを結合する固定ブラケット91を更に有する。固定ブラケット91は、面が上下を向く板状に形成されている。固定ブラケット91は、左右のシートクッションサイドメンバ18に結合されるとよい。固定ブラケット91の中央には上下に貫通する開口部93が形成されている。開口部93の周囲には、第3膨出部75に設けられたボルト76が通過する対応する締結孔94が形成されている。各ボルト76にナットが装着されることによって、回転板71と固定ブラケット91とは互いに締結されている。
【0069】
図7~
図9に示すように、第1軸受孔62及び第2軸受孔73には、上下に延びる支持筒101が挿入されている。支持筒101は、上下両端が開口した円筒である。支持筒101は、金属によって形成されている。支持筒101の外周には外方に膨出した環状リブ102が形成されている。ベースプレート55の第1軸受孔62は、環状リブ102より下方に配置されている。回転板71の第2軸受孔73の縁部には、筒状のブッシュ103が装着されている。ブッシュ103は、支持筒101の環状リブ102より上側の部分に支持されている。支持筒101は、ブッシュ103を介して回転板71の第2軸受孔73に回転可能に支持されている。支持筒101によって、ベースプレート55及び回転板71は第1軸線A上に配置される。
【0070】
回転アクチュエータ53は、ベースプレート55に対して回転板71を回転させる。
図3及び
図8に示すように、回転アクチュエータ53は、ベースプレート55の下面に取り付けられている。回転アクチュエータ53は、電動モータ111と、減速機構112とを有する。本実施形態では、減速機構112は電動モータ111の出力軸113に結合されたピニオン115と、回転板71に結合されたギヤ116とを有する。ピニオン115及びギヤ116は平歯車である。ギヤ116は、第1軸線Aを中心としたギヤである。ギヤ116は回転板71の下面にスペーサ117を介して結合され、空間84内に配置されている。ギヤ116の歯数はピニオン115の歯数よりも多い。
【0071】
回転アクチュエータ53は、ベースプレート55の下面に結合されているとよい。回転アクチュエータ53の出力軸113は、減速機構112から上方に延びている。出力軸113は、ベースプレート55に形成された貫通孔119を通過して空間84内に延びている。出力軸113に結合されたピニオン115は空間84内に配置され、ギヤ116と噛み合っている。電動モータ111及び減速機構112は、ベースプレート55より下方に配置されている。
【0072】
回転ロック装置54は、ベースプレート55に対する回転板71の回転を選択的に禁止する。
図3、
図9及び
図10に示すように、回転ロック装置54は、ベースプレート55の下面に取り付けられている。回転ロック装置54は、例えばベースプレート55の下面に設けられたホルダ122と、ホルダ122に回動可能に支持されるロック爪121と、ロック爪121を回動させるロック解除アクチュエータ151とを有する公知の構成であってよい。ロック爪121は、ホルダ122に第2軸線Bを中心として回動可能に支持されている。
【0073】
図4及び
図9に示すように、ベースプレート55には、上下方向に貫通し、ロック爪121が通過可能な挿通孔131が形成されている。回転板71には、ロック爪121が選択的に係合可能な複数のロック孔132が形成されている。各ロック孔132は、第1軸線Aを中心として互いに90度間隔で配置されているとよい。ロック孔132は、各第3膨出部75の間に配置されているとよい。ベースプレート55に対して回転板71が所定の回転位置にあるときに、挿通孔131は複数のロック孔132の1つと対向する。
【0074】
図5、
図7~
図9に示すように、回転板71の下面には補強板141が結合されている。補強板141は、上下を向く面を有し、第1軸線Aを中心とした周方向に延びている。補強板141は、第1軸線Aを中心とする環状の部材を分割して形成されてよい。本実施形態では4つの補強板141が配置されている。補強板141の中央部は、対応するロック孔132に対向するとよい。補強板141の周方向の両端部は、第3膨出部75の開口を覆うとよい。補強板141は例えばボルト及びナット等締結具により回転板71に取り付けられてよい。あるいは補強板141は、回転板71に溶接されて結合してもよい。補強板141の厚みは、回転板71の厚みよりも厚く形成されているとよい。補強板141によって回転板71の各ロック孔132の周囲の断面係数及び断面二次モーメントが増加する。
図5に示すように、補強板141の中央部のそれぞれには、各ロック孔132と対向する貫通孔142が形成されている。
【0075】
図9に示すように、ロック爪121は、回転板71に係合したロック位置と、回転板71から離れた解除位置との間で変位する。ロック位置では、ロック爪121が挿通孔131を通過して、複数のロック孔132及び対応する貫通孔142のいずれかに嵌合する。
図10に示すように、ロック爪121とホルダ122との間には、ロック爪121をロック位置に向けて付勢する付勢部材134が設けられている。付勢部材134は引張コイルばねであってよい。
【0076】
ロック解除アクチュエータ151は、ロック爪121をロック位置から解除位置に移動させる。
図9及び
図10に示すように、ロック解除アクチュエータ151は、電動モータ152と、減速機構153と、減速機構153の出力軸に設けられたアーム154とを有する。アーム154は、ロック爪121に係合している。電動モータ152が駆動すると、付勢部材134の付勢力に抗してアーム154が回動し、アーム154がロック爪121をロック位置から解除位置に移動させる。電動モータ152が停止すると、付勢部材134の付勢力によってロック爪121が解除位置からロック位置に移動する。
【0077】
なお、他の実施形態では、回転ロック装置54は、使用者の手動操作によってロック状態と解除状態との間で変化してもよい。
【0078】
図2に示すように、前後のクロスメンバ57の上面には複数のベース側剥離抑制ユニット161が設けられているとよい。ベース側剥離抑制ユニット161は、例えば第1ベース側フック163及び第2ベース側フック164を有する公知の構成であってよい。
【0079】
固定ブラケット91の下面には複数の回転側剥離抑制ユニットが設けられているとよい。回転側剥離抑制ユニットは例えば、第1ベース側フック163と上下に間隔をおいて対向する回転側フックと、第2ベース側フック164と上下に間隔をおいて対向する係止片とを有する公知の構成であってよい。
【0080】
シート本体3に荷重が加わったときには、ベース側剥離抑制ユニット161の第1ベース側フック163と対応する回転側剥離抑制ユニットの回転側フックとが互いに係合し、ベース部51に対する回転部52の剥離が抑制される。また、シート本体3に更に荷重が加わったときには、ベース側剥離抑制ユニット161の第2ベース側フック164と対応する回転側剥離抑制ユニットの係止片とが互いに係合し、ベース部51に対する回転部52の剥離が抑制される。
【0081】
次に、車両用シート装置1の製造方法について説明する。最初に、支持筒101のバルジ加工が行われ、環状リブ102が形成される。次に、回転板71の第2軸受孔73にブッシュ103が装着され、ギヤ116が結合される。その後に第2軸受孔73に支持筒101が挿入される。このようにして、支持筒101に回転板71が回転可能に支持される。
【0082】
次に、ベースプレート55、軸受77、及び回転板71が重ねて配置され、かつベースプレート55及び回転板71の外周に固定部材66が配置される。最初に、摺接部材85が回転板71に装着される。具体的には、摺接部材85の各係止部87A、87Bが対応する係止孔89を通過した後、第1係止部87Aの下端に設けられた爪部88が対応する係止孔89に下縁に係止される。これにより係止部87が係止孔89から抜け出し難くなり、摺接部材85が回転板71に安定性良く固定される。次に支持筒101の下部がベースプレート55の第1軸受孔62に挿入される。このとき、回転板71とベースプレート55との間に軸受77が介装される。次に、固定部材66が、ベースプレート55に結合される。具体的には固定部材66の外周面の下部とベースプレート55の立壁56の内周面の上部とが溶接されるとよい。このとき、内側フランジ部68の下面は、摺接部材85の上面に当接する。このようして、ベースプレート55、軸受77、回転板71、固定部材66、及び摺接部材85が組み合わされる。
【0083】
次に、回転アクチュエータ53がベースプレート55に取り付けられ、ピニオン115とギヤ116とが噛み合う。また、ベースプレート55にロック解除アクチュエータ151を含む回転ロック装置54が取り付けられる。このようにして、回転装置2が組み立てられる。
【0084】
その後、フロア5に設けられたスライド装置4の左右のアッパレール38に前後のクロスメンバ57が結合される。そして、固定ブラケット91に、シート本体3が取り付けられる。以上のようにして、車両用シート装置1が組み立てられる。
【0085】
このように摺接部材85は、回転板71に固定されるため、摺接部材85のずれを抑制することができる。係止部87は、回転板71の径方向から見て、軸受77と重なるため、回転装置2の上下方向の厚さを抑制することができる。また摺接部材85は、上下方向から見て、第1軸受溝81と重ならず、且つ第2膨出部72の上面よりも下方に配置されるため、回転装置2の上下方向の厚さを更に抑制することができる。
【0086】
リング部86の上面は、回転板71の径方向外方に向けて下方に傾斜している。これによりリング部86の上面と内側フランジ部68との接触面積が小さくなるため、回転板71の回転抵抗が小さくなる。一方、回転板71がベースプレート55及び固定部材66に対して傾斜するとき、例えばシート本体3に荷重が加わったときには、摺接部材85の上面と内側フランジ部68との接触面積が大きくなるため、固定部材66が回転板71を安定性良く押さえることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 :車両用シート装置(車両用シート)
2 :回転装置
5 :フロア
11 :シートクッション
51 :ベース部
52 :回転部
55 :ベースプレート
66 :固定部材
68 :内側フランジ部(フランジ部)
71 :回転板
72 :第2膨出部
77 :軸受
81 :第1軸受溝(軸受溝)
85 :摺接部材
86 :リング部
87 :係止部
87A :第1係止部
87B :第2係止部
89 :係止孔