IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -ブッシング、及びガラス繊維の製造方法 図1
  • -ブッシング、及びガラス繊維の製造方法 図2
  • -ブッシング、及びガラス繊維の製造方法 図3
  • -ブッシング、及びガラス繊維の製造方法 図4
  • -ブッシング、及びガラス繊維の製造方法 図5
  • -ブッシング、及びガラス繊維の製造方法 図6
  • -ブッシング、及びガラス繊維の製造方法 図7
  • -ブッシング、及びガラス繊維の製造方法 図8
  • -ブッシング、及びガラス繊維の製造方法 図9
  • -ブッシング、及びガラス繊維の製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072770
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ブッシング、及びガラス繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/083 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
C03B37/083
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122500
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2022183579
(32)【優先日】2022-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松浦 禅
(72)【発明者】
【氏名】松林 達也
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 博司
【テーマコード(参考)】
4G021
【Fターム(参考)】
4G021MA02
(57)【要約】
【課題】ノズルの寿命を延ばす場合であっても、ノズルの材料の使用量の増加を抑えることを可能にしたブッシング、及びガラス繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】ブッシング11は、水平方向に沿って延びる底面を有するベースプレート11bと、ベースプレート11bに設けられ、ガラスフィラメントが引き出されるノズル群とを有する。ブッシングのベースプレート11bの外周縁に最も近い位置に設けられる外周ノズル群14は、異形ノズル16を含む。異形ノズル16は、異形ノズル16の周方向において、壁厚寸法が相対的に小さい第1壁部W1と、壁厚寸法が相対的に大きい第2壁部W2とを有する。異形ノズル16の第2壁部W2は、ベースプレート11bの外周縁に向かって延びる外壁部W2aを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿って延びる底面を有するベースプレートと、
前記ベースプレートに設けられ、ガラスフィラメントが引き出されるノズル群と、を有するブッシングであって、
前記ベースプレートの外周縁に最も近い位置に設けられる外周ノズル群は、異形ノズルを含み、
前記異形ノズルは、前記異形ノズルの周方向において、壁厚寸法が相対的に小さい第1壁部と、壁厚寸法が相対的に大きい第2壁部と、を有し、
前記第2壁部は、前記ベースプレートの前記外周縁に向かって延びる外壁部を含む、ブッシング。
【請求項2】
水平方向に沿って延びる底面を有するベースプレートと、
前記ベースプレートに設けられ、ガラスフィラメントが引き出されるノズル群と、を有するブッシングであって、
前記ベースプレートの外周縁に最も近い位置に設けられる外周ノズル群は、異形ノズルを含み、
前記異形ノズルは、前記異形ノズルの周方向において、壁厚寸法が相対的に小さい第1壁部と、壁厚寸法が相対的に大きい第2壁部と、を有し、
前記外周ノズル群において、隣り合う第1ノズル及び第2ノズルの少なくとも一方が前記異形ノズルであり、
前記異形ノズルの前記第2壁部は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの間に向かって延びる中間壁部を含む、ブッシング。
【請求項3】
水平方向に沿って延びる底面を有するベースプレートと、
前記ベースプレートに設けられ、ガラスフィラメントが引き出されるノズル群と、を有するブッシングであって、
前記ベースプレートの外周縁に最も近い位置に設けられる外周ノズル群は、異形ノズルを含み、
前記異形ノズルは、前記異形ノズルの周方向において、壁厚寸法が相対的に小さい第1壁部と、壁厚寸法が相対的に大きい第2壁部と、を有し、
前記外周ノズル群において、第1ノズルと前記第1ノズルの両側で隣り合う第2ノズル及び第3ノズルの3つのノズルのうち、少なくとも前記第1ノズルが前記異形ノズルであり、
前記第1ノズルの前記第2壁部は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの間に向かって延びる第1中間壁部と、前記第1ノズルと前記第3ノズルとの間に向かって延びる第2中間壁部とを含む、ブッシング。
【請求項4】
前記異形ノズルは、前記第1壁部の最小となる壁厚寸法をT1とし、前記第2壁部の最大となる壁厚寸法をT2とした場合、T2≧1.2×T1の関係を満たす、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のブッシング。
【請求項5】
前記異形ノズルにおけるノズル孔の横断面の形状は、円形状である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のブッシング。
【請求項6】
前記異形ノズルの外形は、底面視で四角形状である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のブッシング。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のブッシングを用いてガラス繊維を製造するガラス繊維の製造方法であって、
前記ブッシングに溶融ガラスを供給し、前記ブッシングの前記ノズル群から複数のガラスフィラメントを引き出す工程と、前記複数のガラスフィラメントを集束する工程と、を備えるガラス繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブッシング、及びガラス繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスフィラメントの製造には、溶融ガラスが供給されるブッシングが用いられている。ブッシングは、ベースプレートと、このベースプレートに設けられるノズル群とを有している。このブッシングのノズル群からガラスフィラメントが引き出されることで、複数のガラスフィラメントが得られる。ここで、特許文献1に記載されるように、ブッシングのノズルの劣化を抑える技術が知られている。特許文献1におけるブッシングのノズル群は、例えば、ノズルの壁厚が互いに異なる複数のノズルを含んでいる。これにより、劣化し易い環境下に配置されるノズルの寿命を、劣化し難い環境下に配置されるノズルの寿命に近づけることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-001956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、例えば、壁厚寸法の大きいノズルを用いることで、ノズルの寿命を延ばす場合、ノズルの材料の使用量が増加する。これにより、ノズルの材料コストの上昇を招くおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、ノズルの寿命を延ばす場合であっても、ノズルの材料の使用量の増加を抑えることを可能にしたブッシング、及びガラス繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するブッシング、及びガラス繊維の製造方法の各態様について説明する。
態様1のブッシングは、水平方向に沿って延びる底面を有するベースプレートと、前記ベースプレートに設けられ、ガラスフィラメントが引き出されるノズル群と、を有するブッシングであって、前記ベースプレートの外周縁に最も近い位置に設けられる外周ノズル群は、異形ノズルを含み、前記異形ノズルは、前記異形ノズルの周方向において、壁厚寸法が相対的に小さい第1壁部と、壁厚寸法が相対的に大きい第2壁部と、を有し、前記第2壁部は、前記ベースプレートの前記外周縁に向かって延びる外壁部を含む。
【0007】
この構成によれば、外周ノズル群において摩耗し易い環境下に配置されるノズルの寿命を、異形ノズルの外壁部によって延ばすことができる。また、異形ノズルは、壁厚寸法が相対的に小さい第1壁部を有するため、ノズルの材料の使用量の増加を抑えることが可能となる。
【0008】
ここで、異形ノズルの外壁部の配置は、異形ノズルのノズル孔の中心を通るとともに、ベースプレートの外周縁と直交する垂線に基づいて定義される。異形ノズルの外壁部は、ノズル孔の中心を回転中心として、上記垂線を時計回りと反時計回りに45°の角度で回転させた範囲に設けられる。
【0009】
態様2のブッシングは、水平方向に沿って延びる底面を有するベースプレートと、前記ベースプレートに設けられ、ガラスフィラメントが引き出されるノズル群と、を有するブッシングであって、前記ベースプレートの外周縁に最も近い位置に設けられる外周ノズル群は、異形ノズルを含み、前記異形ノズルは、前記異形ノズルの周方向において、壁厚寸法が相対的に小さい第1壁部と、壁厚寸法が相対的に大きい第2壁部と、を有し、前記外周ノズル群において、隣り合う第1ノズル及び第2ノズルの少なくとも一方が前記異形ノズルであり、前記異形ノズルの前記第2壁部は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの間に向かって延びる中間壁部を含む。
【0010】
この構成によれば、第1ノズル及び第2ノズルよりも内側に配置される内側ノズルに向けて流入する気流を、異形ノズルの中間壁部によって抑えることが可能となる。これにより、内側ノズルの摩耗を抑えることが可能となる。このため、内側ノズルの壁厚寸法の増大を抑えたとしても、内側ノズルの寿命を延ばすことが可能となる。また、異形ノズルは、壁厚寸法が相対的に小さい第1壁部を有するため、ノズルの材料の使用量の増加を抑えることが可能となる。
【0011】
ここで、異形ノズルの中間壁部の配置は、異形ノズルのノズル孔の中心を通る直線に基づいて定義される。異形ノズルの中間壁部は、異形ノズルのノズル孔の中心を回転中心として、上記直線を隣り合うノズルの第1の外周縁と接する位置から、第2の外周縁と接する位置まで回転させた範囲に設けられる。
【0012】
態様3のブッシングは、水平方向に沿って延びる底面を有するベースプレートと、前記ベースプレートに設けられ、ガラスフィラメントが引き出されるノズル群と、を有するブッシングであって、前記ベースプレートの外周縁に最も近い位置に設けられる外周ノズル群は、異形ノズルを含み、前記異形ノズルは、前記異形ノズルの周方向において、壁厚寸法が相対的に小さい第1壁部と、壁厚寸法が相対的に大きい第2壁部と、を有し、前記外周ノズル群において、第1ノズルと前記第1ノズルの両側で隣り合う第2ノズル及び第3ノズルの3つのノズルのうち、少なくとも前記第1ノズルが前記異形ノズルであり、前記第1ノズルの前記第2壁部は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの間に向かって延びる第1中間壁部と、前記第1ノズルと前記第3ノズルとの間に向かって延びる第2中間壁部とを含む。
【0013】
この構成によれば、第1ノズルと第2ノズルとの間、及び第1ノズルと第3ノズルとの間からベースプレートの中央側に流入する気流を、異形ノズルである第1ノズルの第1中間壁部及び第2中間壁部によって抑えることが可能となる。これにより、第1ノズル、第2ノズル、及び第3ノズルよりも内側に配置される内側ノズルの摩耗を抑えることが可能となる。このため、内側ノズルの壁厚寸法の増大を抑えたとしても、内側ノズルの寿命を延ばすことが可能となる。また、第1ノズルは、壁厚寸法が相対的に小さい第1壁部を有するため、ノズルの材料の使用量の増加を抑えることが可能となる。
【0014】
態様4のブッシングでは、態様1から態様3のいずれか一つの態様において、前記異形ノズルは、前記第1壁部の最小となる壁厚寸法をT1とし、前記第2壁部の最大となる壁厚寸法をT2とした場合、T2≧1.2×T1の関係を満たしてもよい。この構成によれば、第2壁部に基づくノズルの寿命を延ばす効果をより高めることが可能となる。
【0015】
態様5のブッシングでは、態様1から態様4のいずれか一つの態様において、前記異形ノズルにおけるノズル孔の横断面の形状は、円形状であってもよい。
態様6のブッシングでは、態様1から態様5のいずれか一つの態様において、前記異形ノズルの外形は、底面視で四角形状であってもよい。
【0016】
態様7のガラス繊維の製造方法は、態様1から態様6のいずれか一つの態様に記載のブッシングを用いてガラス繊維を製造するガラス繊維の製造方法であって、前記ブッシングに溶融ガラスを供給し、前記ブッシングの前記ノズル群から複数のガラスフィラメントを引き出す工程と、前記複数のガラスフィラメントを集束する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、ノズルの寿命を延ばす場合であっても、ノズルの材料の使用量の増加を抑えることが可能となる効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)は、実施形態におけるガラス繊維の製造装置を示す概略図であり、図1(b)は、ブッシングの部分断面図である。
図2図2は、ブッシングにおけるノズルの配置を説明する底面図である。
図3図3は、異形ノズルを示す底面図である。
図4図4は、ブッシングの一部を示す底面図である。
図5図5は、第1の変更例におけるブッシングの一部を示す底面図である。
図6図6は、第2の変更例におけるブッシングの一部を示す底面図である。
図7図7は、第3の変更例におけるブッシングの一部を示す底面図である。
図8図8は、第4の変更例におけるブッシングの一部を示す底面図である。
図9図9(a)は、参考例におけるブッシングを示す部分断面図であり、図9(b)は、ブッシングの要部を示す部分断面図である。
図10図10は、ブッシングにおけるノズルの配置を説明する底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、ブッシング及びガラス繊維の製造方法の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。まず、ブッシングを備えるガラス繊維の製造装置について説明する。
【0020】
<ガラス繊維の製造装置の概要>
図1(a)に示すように、ガラス繊維の製造装置は、ブッシング11と、アプリケータ12と、ギャザリングシュー13とを備えている。ブッシング11は、溶融ガラスMGを繊維状に成形することで、多数のガラスフィラメントGFを製造する。アプリケータ12は、ブッシング11から引き出された多数のガラスフィラメントGFに液体状の集束剤を塗布する。ギャザリングシュー13は、集束剤が塗布された多数のガラスフィラメントGFを集束させることで、ガラスストランドGSを製造する。なお、図示を省略するが、ガラス繊維の製造装置は、ガラスストランドGSを往復移動させるトラバースと、トラバースを通過したガラスストランドGSを巻き取るコレットとを備えている。
【0021】
<ブッシング11>
図1(b)に示すように、ブッシング11は、溶融ガラスMGが供給されるブッシング本体11aと、ブッシング本体11aの底部に設けられたベースプレート11bとを備えている。なお、図示を省略するが、ブッシング本体11aは、溶融ガラスMGが供給される供給口、ベースプレート11b上に異物が堆積するのを抑制するスクリーン、抵抗加熱用のターミナル等を有している。
【0022】
図2に示すように、ブッシング11の底面(ベースプレート11bの底面)の形状は、長方形状である。すなわち、ブッシング11の底面は、対向する一対の長辺L1,L2と、対向する一対の短辺S1,S2とを有している。
【0023】
ブッシング11は、ガラスフィラメントGFが引き出されるノズル群を有している。ノズル群は、ベースプレート11bに設けられている。ノズル群は、外周ノズル群14と内側ノズル群15とから構成されている。外周ノズル群14は、ベースプレート11bの外周縁に最も近い位置に設けられている。詳述すると、外周ノズル群14は、ベースプレート11bの外周縁に沿って環状に配列されるノズル列により構成されている。外周ノズル群14は、ベースプレート11bの各長辺L1,L2に沿ったノズル列と、ベースプレート11bの各短辺S1,S2に沿ったノズル列とから構成されている。
【0024】
内側ノズル群15は、外周ノズル群14よりもベースプレート11bの底面の中央側(二点鎖線で囲まれる範囲内)に設けられている。内側ノズル群15は、両長辺L1,L2と両短辺S1,S2とに沿って列をなしている。
【0025】
内側ノズル群15のノズル数は、外周ノズル群14のノズル数よりも多いことが好ましい。ブッシング11のノズル数は、800~10000本であることが好ましく、2000~8000本であることがより好ましい。
【0026】
図2に示すように、外周ノズル群14は、異形ノズル16を含んでいる。異形ノズル16は、異形ノズル16の周方向において異なる壁厚を有している。内側ノズル群15を構成する内側ノズル17は、内側ノズル17の周方向で一定の壁厚を有している。異形ノズル16及び内側ノズル17は、それぞれノズル孔16a及びノズル孔17aを有している。
【0027】
図3に示すように、各異形ノズル16は、異形ノズル16の周方向において壁厚寸法が相対的に小さい第1壁部W1と、壁厚寸法が相対的に大きい第2壁部W2とを有している。異形ノズル16は、第1壁部W1の最小となる壁厚寸法をT1とし、第2壁部W2の最大となる壁厚寸法をT2とした場合、T2≧1.2×T1の関係を満たすことが好ましく、T2≧1.4×T1の関係を満たすことがより好ましく、T2≧1.6×T1の関係を満たすことがさらに好ましい。
【0028】
図4に示すように、外周ノズル群14は、第1ノズルN1と、第1ノズルN1の両側で隣り合う第2ノズルN2及び第3ノズルN3とを含んでいる。第1ノズルN1、第2ノズルN2、及び第3ノズルN3は、いずれも異形ノズル16である。
【0029】
図3及び図4に示すように、各異形ノズル16の第2壁部W2は、ベースプレート11bの外周縁(例えば、長辺L2)に向かって延びる外壁部W2aを含んでいる。図3に示すように、異形ノズル16の外壁部W2aの配置は、異形ノズル16のノズル孔16aの中心P1を通るとともに、ベースプレート11bの外周縁と直交する垂線A1に基づいて定義される。異形ノズル16の外壁部W2aは、異形ノズル16のノズル孔16aの中心P1を回転中心として、上記垂線A1を時計回りと反時計回りに45°の角度で回転させた範囲に設けられる。本実施形態の異形ノズル16の外壁部W2aは、上記垂線A1と重なる位置に設けられている。なお、図3の第1ノズルN1に示す二点鎖線は、第1ノズルN1の最小の壁厚寸法で一定の壁厚とした場合のノズルの外形を示している。この第2壁部W2は、上記二点鎖線で示す外形よりも外方に突出している。
【0030】
図3及び図4に示すように、第1ノズルN1の第2壁部W2は、第1ノズルN1と第2ノズルN2との間に向かって延びる第1中間壁部W2bを含んでいる。第1ノズルN1の第2壁部W2は、第1ノズルN1と第3ノズルN3との間に向かって延びる第2中間壁部W2cを含んでいる。第2ノズルN2の第2壁部W2は、第1ノズルN1と第2ノズルN2との間に向かって延びる第3中間壁部W2dを含んでいる。第3ノズルN3の第2壁部W2は、第1ノズルN1と第3ノズルN3との間に向かって延びる第4中間壁部W2eを含んでいる。
【0031】
図3に示すように、第1ノズルN1の第1中間壁部W2bの配置は、第1ノズルN1のノズル孔16aの中心P1を通る直線A2に基づいて定義される。第1ノズルN1の第1中間壁部W2bは、ノズル孔16aの中心P1を回転中心として、上記直線A2を第2ノズルN2の第1の外周縁E1と接する位置から、第2の外周縁E2と接する位置まで回転させた範囲に設けられる。第1ノズルN1の第2中間壁部W2c、第2ノズルN2の第3中間壁部W2d、及び第3ノズルN3の第4中間壁部W2eの配置についても、第1ノズルN1の第1中間壁部W2bの配置と同様に定義される。
【0032】
図4に示すように、第1ノズルN1の第1中間壁部W2bは、第1ノズルN1のノズル孔16aの中心P1と、第2ノズルN2のノズル孔16aの中心P2とを通る直線A2と重なる位置に設けられている。第1ノズルN1の第2中間壁部W2cは、第1ノズルN1のノズル孔16aの中心P1と、第3ノズルN3のノズル孔16aの中心P3とを通る直線A3と重なる位置に設けられている。第2ノズルN2の第3中間壁部W2dは、上記直線A2と重なる位置に設けられている。第3ノズルN3の第4中間壁部W2eは、上記直線A3と重なる位置に設けられている。
【0033】
異形ノズル16のノズル孔16aの横断面の形状と、内側ノズル17のノズル孔17aの横断面の形状とは、同一形状であることが好ましい。本実施形態の異形ノズル16のノズル孔16aの横断面の形状、及び内側ノズル17のノズル孔17aの横断面の形状は、いずれも円形状である。なお、ノズル孔16a,17aの横断面の形状は、円形状(丸形状)以外の形状であってもよい。円形状以外の形状としては、長円形状、楕円形状等が挙げられる。本実施形態の異形ノズル16の外形は、底面視で四角形状である。本実施形態の内側ノズル17の外形は、底面視で円形状である。このように異形ノズル16は、内側ノズル17の外形に対して、異形となる外形を有している。
【0034】
異形ノズル16のノズル孔16aの内径寸法と内側ノズル17のノズル孔17aの内径寸法とは、同一であることが好ましい。異形ノズル16のノズル孔16aの内径寸法は、異形ノズル16の基端(上端)から先端(下端)にわたって一定であることが好ましい。内側ノズル17のノズル孔17aの内径寸法は、内側ノズル17の基端(上端)から先端(下端)にわたって一定であることが好ましい。
【0035】
外周ノズル群14を構成するノズルの壁厚寸法の平均値AW1と、ブッシング11のノズル群を構成する全てのノズルの壁厚寸法の平均値AWTとは、下記式(1)で表される関係を満たすことが好ましい。
【0036】
AW1>AWT・・・(1)
なお、異形ノズル16等の壁厚寸法が一定ではないノズルの場合、そのノズルの壁厚寸法は、壁厚寸法の平均値を言う。ブッシング11のノズル群を構成する全てのノズルの壁厚寸法の平均値AWTに対する外周ノズル群14を構成するノズルの壁厚寸法の平均値AW1の比率R1(R1=AW1/AWT)は、1.1以上であることが好ましく、より好ましくは1.2以上である。なお、この比率R1は、2.0以下であることが好ましい。
【0037】
ブッシング11のノズル群を構成する全てのノズルの壁厚寸法は、ノズル群の耐久性をより高めるという観点から、例えば、0.2mm以上であることが好ましい。ブッシング11のノズル群を構成する全てのノズルの壁厚寸法は、ノズル群の材料コストを低く抑えるという観点から、例えば、1mm以下であることが好ましい。ブッシング11のノズル群を構成する全てのノズルは、例えば、0.70mm以上、2.00mm以下の範囲内における所定の内径寸法を有していることが好ましい。
【0038】
ブッシング本体11a、ベースプレート11b、及びノズルの材料としては、貴金属又は貴金属合金が挙げられる。貴金属は、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、又はオスミウムである。
【0039】
ノズルの材料は、ノズルの耐久性を高めるという観点から、白金、又は白金ロジウム合金であることが好ましく、白金ロジウム合金であることがより好ましい。なお、ブッシング本体11a及びベースプレート11bの材料についても、ノズルの材料と同種の材料であることが好ましい。つまり、ブッシング本体11a及びベースプレート11bの材料は、白金、又は白金ロジウム合金であることが好ましく、白金ロジウム合金であることがより好ましい。
【0040】
<ガラス繊維の製造方法及びブッシング11の主な作用>
ガラス繊維(ガラスストランドGS)の製造方法は、ブッシング11に溶融ガラスMGを供給し、ブッシング11のノズル群から複数のガラスフィラメントGFを引き出す工程(引出工程)を備えている。ガラス繊維の製造方法は、複数のガラスフィラメントGFを集束する工程(集束工程)を備えている。
【0041】
ガラス繊維の製造方法における引出工程では、図3に白抜き矢印で示すように、ブッシング11のベースプレート11bの外周縁の外方からノズルに向かって流入する気流FLが発生する。この気流FLは、随伴気流と呼ばれる。ここで、ブッシング11の外周ノズル群14は、異形ノズル16である第1ノズルN1を含んでいる。この第1ノズルN1の周方向において、壁厚寸法が相対的に大きい第2壁部W2は、ベースプレート11bの外周縁に向かって延びる外壁部W2aを含んでいる。この構成によれば、上記の気流FLを受け易い位置、すなわち、外周ノズル群14において摩耗(劣化)し易い位置に配置されるノズルの寿命を、異形ノズル16によって延ばすことができる。
【0042】
また、第1ノズルN1の第2壁部W2は、第1ノズルN1と第2ノズルN2との間に向かって延びる第1中間壁部W2bを含んでいる。この構成によれば、第1ノズルN1と第2ノズルN2との間からベースプレート11bの中央側に向けて流入する気流FLを、異形ノズル16の第1中間壁部W2bによって抑えることが可能となる。これにより、第1ノズルN1及び第2ノズルN2よりも内側に配置される内側ノズル17の摩耗を抑えることが可能となる。
【0043】
ガラス繊維の製造方法における集束工程では、アプリケータ12により集束剤が塗布された複数のガラスフィラメントGFをギャザリングシュー13によって集束する。これにより、ガラスストランドGS(ガラス繊維)が得られる。
【0044】
ガラス繊維の形態としては、例えば、ガラスストランドGSを巻回したケーキが挙げられる。ガラスストランドGSは、例えば、所定長さにカットされたチョップドストランド、ミルドファイバ、ロービング、ヤーン、マット、クロス、テープ、又は組布等として利用することができる。ガラス繊維の用途としては、例えば、車両用途、電子材料用途、建材用途、土木用途、航空機関連用途、造船用途、物流用途、産業機械用途、及び日用品用途が挙げられる。
【0045】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)ブッシング11は、水平方向に沿って延びる底面を有するベースプレート11bと、ベースプレート11bに設けられ、ガラスフィラメントGFが引き出されるノズル群とを有している。ブッシング11のベースプレート11bの外周縁に最も近い位置に設けられる外周ノズル群14は、異形ノズル16を含んでいる。異形ノズル16は、異形ノズル16の周方向において、壁厚寸法が相対的に小さい第1壁部W1と、壁厚寸法が相対的に大きい第2壁部W2とを有している。異形ノズル16の第2壁部W2は、ベースプレート11bの外周縁に向かって延びる外壁部W2aを含んでいる。
【0046】
この構成によれば、上述したように外周ノズル群14において摩耗し易い位置に配置されるノズルの寿命を、異形ノズル16の外壁部W2aによって延ばすことができる。また、異形ノズル16は、壁厚寸法が相対的に小さい第1壁部W1を有するため、ノズルの材料の使用量の増加を抑えることが可能となる。従って、ノズルの寿命を延ばす場合であっても、ノズルの材料の使用量の増加を抑えることが可能となる。
【0047】
(2)ブッシング11の外周ノズル群14において、異形ノズル16である第1ノズルN1の第2壁部W2は、第1ノズルN1と第2ノズルN2との間に向かって延びる第1中間壁部W2bを含んでいる。この構成によれば、第1ノズルN1及び第2ノズルN2よりも内側に配置される内側ノズル17に向けて流入する気流FLを、異形ノズル16の第1中間壁部W2bによって抑えることが可能となる。これにより、内側ノズル17の摩耗を抑えることが可能となる。このため、内側ノズル17の壁厚寸法の増大を抑えたとしても、内側ノズル17の寿命を延ばすことが可能となる。また、第1ノズルN1は、壁厚寸法が相対的に小さい第1壁部W1を有するため、ノズルの材料の使用量の増加を抑えることが可能となる。従って、ノズルの寿命を延ばす場合であっても、ノズルの材料の使用量の増加を抑えることが可能となる。
【0048】
また、本実施形態では、ブッシング11の外周ノズル群14において、異形ノズル16である第2ノズルN2の第2壁部W2についても、第1ノズルN1と第2ノズルN2との間に向かって延びる第3中間壁部W2dを含んでいる。このような第2ノズルN2によっても、第1ノズルN1及び第2ノズルN2よりも内側に配置される内側ノズル17の摩耗を抑えることが可能となる。本実施形態のように、第1ノズルN1が第1中間壁部W2bを有し、かつ第2ノズルN2が第3中間壁部W2dを有することで、上記内側ノズル17の摩耗をより抑えることが可能となる。
【0049】
(3)ブッシング11の外周ノズル群14において、異形ノズル16である第1ノズルN1の第2壁部W2は、第1中間壁部W2bと、第2中間壁部W2cとを含んでいる。第1中間壁部W2bは、第1ノズルN1と第2ノズルN2との間に向かって延びる。第2中間壁部W2cは、第1ノズルN1と第3ノズルN3との間に向かって延びる。この構成によれば、第1ノズルN1、第2ノズルN2、及び第3ノズルN3よりも内側に配置される内側ノズル17に向けて流入する気流FLを、異形ノズル16である第1ノズルN1の第1中間壁部W2b及び第2中間壁部W2cによって抑えることが可能となる。これにより、内側ノズル17の摩耗を抑えることが可能となる。このため、内側ノズル17の壁厚寸法の増大を抑えたとしても、内側ノズル17の寿命を延ばすことが可能となる。また、第1ノズルN1は、壁厚寸法が相対的に小さい第1壁部W1を有するため、ノズルの材料の使用量の増加を抑えることが可能となる。従って、ノズルの寿命を延ばす場合であっても、ノズルの材料の使用量の増加を抑えることが可能となる。
【0050】
(4)異形ノズル16は、第1壁部W1の最小となる壁厚寸法をT1とし、第2壁部W2の最大となる壁厚寸法をT2とした場合、T2≧1.2×T1の関係を満たすことが好ましい。この場合、第2壁部W2に基づくノズルの寿命を延ばす効果をより高めることが可能となる。
【0051】
(5)異形ノズル16の外壁部W2aは、上記垂線A1と重なる位置に設けられている。この場合、例えば、垂線A1に沿った気流FLが生じ易い環境下において、異形ノズル16の耐久性をより高めることが可能となる。
【0052】
(6)第1ノズルN1の第1中間壁部W2bは、上記直線A2と重なる位置に設けられている。この場合、直線A2と交差する方向に沿った気流FLが生じ易い環境下において、内側ノズル17の摩耗をより抑えることが可能となる。また、第2ノズルN2の第3中間壁部W2dは、上記直線A2と重なる位置に設けられている。第1ノズルN1の第2中間壁部W2c及び第3ノズルN3の第4中間壁部W2eは、上記直線A3と重なる位置に設けられている。これらの場合も、直線A2や直線A3と交差する方向に沿った気流FLが生じ易い環境下において、内側ノズル17の摩耗を抑えることが可能となる。
【0053】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
・上記ブッシング11において、第1ノズルN1の第1中間壁部W2b及び第2中間壁部W2cの少なくとも一方を省略することもできる。また、上記ブッシング11において、第2ノズルN2の第3中間壁部W2d及び第3ノズルN3の第4中間壁部W2eの少なくとも一方を省略することもできる。このように第1ノズルN1の第1中間壁部W2b等の中間壁部を省略する場合、気流FLにより劣化し易い内側ノズル17の耐久性を高めるという観点から、その内側ノズル17の壁厚寸法を大きくすることが好ましい。また、気流FLにより劣化し易い内側ノズル17の一部を異形ノズル16に変更することで、ノズルの耐久性を高めることもできる。
【0055】
・上記ブッシング11において、例えば、第1ノズルN1の外壁部W2aを省略することもできる。
図5図6、及び図8に示す第1ノズルN1、図6図8に示す第2ノズルN2のように、ブッシング11において、異形ノズル16の外形は、底面視で正方形以外の四角形状や、四角形状以外の多角形状であってもよい。
【0056】
図5に示す第2ノズルN2のように、ブッシング11において、異形ノズル16の外形は、底面視で楕円形状であってもよい。
図7に示す第1ノズルN1のように、ブッシング11において、異形ノズル16の外形は、底面視で曲線部分と直線部分とを有していてもよい。
【0057】
・ブッシング11の外周ノズル群14を異形ノズル16のみから構成せずに、外周ノズル群14の一部のノズルを異形ノズル16から構成することもできる。すなわち、外周ノズル群14に含まれる異形ノズル16は、単数であってもよいし、複数であってもよい。例えば、外周ノズル群14のうち、特に劣化し易い環境下で使用される一部のノズルを異形ノズル16から構成することができる。また、例えば、外周ノズル群14において、内側ノズル群15に向かって流入する気流FLが生じ易い部分に対応させて異形ノズル16を配置することができる。
【0058】
・第1ノズルN1の第1中間壁部W2bは、上記直線A2と重なる位置に設けられているが、例えば、図5に示す第1ノズルN1のように、第1中間壁部W2bを直線A2と重ならない位置に設けることもできる。また、第1ノズルN1の第2中間壁部W2cを直線A3と重ならない位置に設けることもできる。また、第2ノズルN2の第3中間壁部W2dを直線A2と重ならない位置に設けることもできる。第3ノズルN3の第4中間壁部W2eを直線A3と重ならない位置に設けることもできる。
【0059】
・異形ノズル16の外壁部W2aは、垂線A1と重なる位置に設けられているが、例えば、図6に示す第1ノズルN1のように、外壁部W2aを垂線A1と重ならない位置に設けることもできる。
【0060】
・異形ノズル16の第1壁部W1の最小の壁厚寸法であるT1は、内側ノズル17の壁厚寸法と同一であってもよいし、内側ノズル17の壁厚寸法よりも大きくてもよい。異形ノズル16の第1壁部W1の最小の壁厚寸法であるT1は、異形ノズル16の耐久性を高めるという観点から、内側ノズル17の壁厚寸法よりも大きいことが好ましい。
【0061】
・ブッシング11のベースプレート11bの底面は、例えば、正方形等、長方形以外の多角形状であってもよい。
・上記ブッシング11の異形ノズル16は、基端から先端(下端)にわたって一定の外径を有しているが、異形ノズル16の形状を基端から先端に向かうにつれて外径が小さくなる先細形状に変更してもよい。先細形状の異形ノズル16では、異形ノズル16の基端から先端にわたって流路径が一定の場合、異形ノズル16の壁厚寸法は、基端から先端に向かうにつれて小さくなる。ここで、ブッシング11の使用時のノズルは、先端により近い部分の劣化が進行し易い。ノズルの先端の劣化が進行することで、ノズルの流路径や流路長が変化すると、ガラスフィラメントGFの引き出しが不能となる。すなわち、ブッシング11のノズルの寿命は、ノズルの先端部分の寿命ともいえる。このため、本明細書では、基端から先端にわたって壁厚が変化する異形ノズル16を用いる場合、第1壁部W1と第2壁部W2との壁厚寸法の関係は、異形ノズル16の流路の先端位置における壁厚寸法の関係をいう。
【0062】
・上記ブッシング11のノズルは、ブッシングプレートの底面の両長辺L1,L2に沿って直線状に配列されているが、ブッシングプレートの底面の両長辺L1,L2に沿って千鳥状に配列されていてもよい。上記ブッシングのノズルは、ブッシングプレートの底面の両短辺S1,S2に沿って直線状に配列されているが、ブッシングプレートの底面の両短辺S1,S2に沿って千鳥状に配列されていてもよい。
【0063】
<参考例>
次に、ブッシングの参考例について説明する。ここでは、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。参考例においても、技術的に矛盾しない範囲で上記変更例のように変更したり、変更例と組み合わせたりすることができる。
【0064】
図9(a)及び図10に示すように、参考例のブッシング111は、上記実施形態と同様にブッシング本体111aと、ベースプレート111bとを備えている。ブッシング111の外周ノズル群114は、異形ノズル116を含んでいる。
【0065】
図9(a)、図9(b)及び図10のX軸及びY軸は、水平面内で互いに直交する方向を表し、Z軸は、XY平面に直交する方向を表している。図9(a)及び図9(b)に示すように、異形ノズル116は、異形ノズル116の周方向において異なる長さ寸法を有している。異形ノズル116は、異形ノズル116の周方向において一定の壁厚を有している。各異形ノズル116の先端面は、例えば、水平面及び垂直面に対して傾斜する傾斜面を形成している。なお、各異形ノズル116の先端面は、段差状の部分を有していてもよい。
【0066】
図9(a)及び図10に示すように、内側ノズル群115を構成する内側ノズル117は、内側ノズル117の周方向で一定の長さ寸法及び一定の壁厚を有している。上記異形ノズル116は、内側ノズル117の外形に対して、異形となる外形を有する。異形ノズル116及び内側ノズル117は、それぞれノズル孔116a及びノズル孔117aを有している。異形ノズル116のノズル孔116aの横断面の形状、及び内側ノズル117のノズル孔117aの横断面の形状は、いずれも円形状である。
【0067】
図9(a)及び図9(b)に示すように、各異形ノズル116は、異形ノズル116の周方向において長さ寸法が相対的に小さい第1壁部W11と、長さ寸法が相対的に大きい第2壁部W12とを有している。異形ノズル16の第2壁部W12は、ベースプレート111bの外周縁に向かって配置されている。
【0068】
各異形ノズル116は、第1壁部W11の最小となる長さ寸法をD1とし、第2壁部W12の最大となる長さ寸法をD2とした場合、D2≧1.2×D1の関係を満たすことが好ましく、D2≧1.4×D1の関係を満たすことがより好ましく、D2≧1.6×D1の関係を満たすことがさらに好ましい。なお、異形ノズル116の長さ寸法は、ベースプレート111bの貫通孔に固定されている異形ノズル116において、ベースプレート111bから下方に突出している部分の長さ寸法である。内側ノズル117の長さ寸法は、異形ノズル116における上記D2よりも小さい。内側ノズル117の長さ寸法は、例えば、異形ノズル116における上記D1と同一の長さ寸法であってもよい。
【0069】
次に、参考例の作用及び効果について説明する。
参考例のブッシング111によれば、外周ノズル群114において摩耗し易い位置に配置されるノズルの寿命を、異形ノズル116の第2壁部W12によって延ばすことができる。詳述すると、異形ノズル116の壁部のうち、ベースプレート111bの外周縁側の壁部の先端における摩耗が進行し易い場合であっても、第2壁部W12によって異形ノズル16の寿命を延ばすことができる。また、異形ノズル116は、長さ寸法が相対的に小さい第1壁部W11を有するため、ノズルの材料の使用量の増加を抑えることが可能となる。従って、ノズルの寿命を延ばす場合であっても、ノズルの材料の使用量の増加を抑えることが可能となる。
【0070】
次に、上記参考例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
ブッシングにおいて、劣化し易い環境下に配置されるノズルの寿命は、ノズルの長さ寸法をより長くすることで、劣化し難い環境下に配置されるノズルの寿命に近づけることが可能となる。ところが、このように長さ寸法の大きいノズルを用いることでノズルの寿命を延ばす場合、ノズルの材料の使用量が増加する。これにより、ノズルの材料のコストの上昇を招くおそれがある。このような課題を解決するブッシングは、水平方向に沿って延びる底面を有するベースプレートと、前記ベースプレートに設けられ、ガラスフィラメントが引き出されるノズル群と、を有するブッシングであって、前記ベースプレートの外周縁に最も近い位置に設けられる外周ノズル群は、異形ノズルを含み、前記異形ノズルは、長さ寸法が相対的に小さい第1壁部と、長さ寸法が相対的に大きい第2壁部と、を有し、前記第2壁部は、前記ベースプレートの前記外周縁に向かって配置されている。また、上記課題を解決するブッシングの製造方法は、上記ブッシングを用いてガラス繊維を製造するガラス繊維の製造方法であって、前記ブッシングに溶融ガラスを供給し、前記ブッシングの前記ノズル群から複数のガラスフィラメントを引き出す工程と、前記複数のガラスフィラメントを集束する工程と、を備える。
【符号の説明】
【0071】
11…ブッシング
11b…ベースプレート
14…外周ノズル群
16…異形ノズル
16a…ノズル孔
GF…ガラスフィラメント
GS…ガラスストランド(ガラス繊維)
MG…溶融ガラス
N1…第1ノズル
N2…第2ノズル
N3…第3ノズル
W1…第1壁部
W2…第2壁部
W2a…外壁部
W2b…第1中間壁部
W2c…第2中間壁部
W2d…第3中間壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10