(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007278
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】切替開閉器内蔵盤及び電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240111BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240111BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20240111BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/14
H02J7/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108680
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(74)【代理人】
【識別番号】100198719
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 良裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 豪朗
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5G066LA01
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】下げDRの要請に対して商用電力の消費を確実に抑制することが可能な切替開閉器内蔵盤及びこれに関連する技術の提供。
【解決手段】電力供給システム1は、商用電源21を含む商用電源系統2と、太陽光発電装置31及び蓄電池33を含む蓄電系統3と、負荷系統4と、切替開閉器50を含む電源自動切替盤5と、指令受信部を含む遠隔操作用開閉器7とを備える。アグリゲーター6は、下げDRを発動する。切替開閉器50は、商用電源系統2、蓄電系統3及び負荷系統4の各々に電気的に接続され、商用電源系統2と負荷系統4との接続状態を切り替えると共に蓄電系統3と負荷系統4との接続状態を切り替える。切替開閉器50は、遠隔操作用開閉器7の指令受信部が下げDRを受信していることを条件として、商用電源系統2と負荷系統4とを電気的に切り離し、かつ、蓄電系統3と負荷系統4とを電気的に接続する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源を含む商用電源系統と、
発電装置及び蓄電池を含む蓄電系統と、
負荷を含む負荷系統と、
前記商用電源系統、前記蓄電系統及び前記負荷系統の各々に電気的に接続される切替開閉器であって、前記商用電源系統と前記負荷系統との接続状態を切り替えると共に前記蓄電系統と前記負荷系統との接続状態を切り替える切替開閉器を含む電源自動切替盤と、
下げDR(Demand Response)を発動するアグリゲーターと、
前記アグリゲーターからネットワークを介して前記下げDRを受信する指令受信部と、
を備え、
前記切替開閉器は、前記指令受信部が前記下げDRを受信していることを条件として、前記商用電源系統と前記負荷系統とを電気的に切り離し、かつ、前記蓄電系統と前記負荷系統とを電気的に接続することを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記商用電源系統と前記切替開閉器とに電気的に接続される第一端子を含む第一回路部と、
前記蓄電系統と前記切替開閉器とに電気的に接続される第二端子を含む第二回路部と、
前記第一端子に電圧を出力する通常運転モードと前記第二端子に電圧を出力する自立運転モードとを切替可能なパワーコンディショナーと、
を更に備え、
前記商用電源系統と前記第一回路との間には、前記指令受信部を含む遠隔操作用開閉器が設けられ、
前記遠隔操作用開閉器は、前記指令受信部が前記下げDRを受信している間、前記商用電源系統と前記切替開閉器とを電気的に切り離し、前記商用電源系統からの電力供給を遮断し、
前記パワーコンディショナーは、前記商用電源系統からの電力供給が遮断している間、前記自立運転モードに切り替わり、
前記切替開閉器は、前記第二端子に電圧が入力されたことに応答して、前記商用電源系統と前記負荷系統とを電気的に切り離し、かつ、前記蓄電系統と前記負荷系統とを電気的に接続することを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記商用電源系統と前記切替開閉器とに電気的に接続される第一端子を含む第一回路部と、
前記蓄電系統と前記切替開閉器とに電気的に接続される第二端子を含む第二回路部と、
前記第一端子に電圧を出力する通常運転モードと前記第二端子に電圧を出力する自立運転モードとを切替可能なパワーコンディショナーと、
を更に備え、
前記指令受信部は、前記パワーコンディショナーに設けられる第一指令受信部と、前記切替開閉器に設けられる第二指令受信部とを有し、
前記パワーコンディショナーは、前記第一指令受信部が前記下げDRを受信している間、前記自立運転モードに切り替わり、
前記切替開閉器は、前記第二指令受信部が前記下げDRを受信している間に前記第二端子に電圧が入力されると、前記商用電源系統と前記負荷系統とを電気的に切り離し、かつ、前記蓄電系統と前記負荷系統とを電気的に接続することを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記蓄電池の電池残量を測定する電池残量測定部を更に備え、
前記切替開閉器は、前記電池残量が閾値以上であることを追加条件として、前記商用電源系統と前記負荷系統とを電気的に切り離し、かつ、前記蓄電系統と前記負荷系統とを電気的に接続することを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記切替開閉器は、
前記下げDRに伴う前記蓄電系統の使用電力量を測定する使用電力測定部と、
前記使用電力量を前記アグリゲーターに送信する送信部と、
を備えることを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載の電力供給システム。
【請求項6】
商用電源を含む商用電源系統、発電装置及び蓄電池を含む蓄電系統及び負荷を含む負荷系統の各々に電気的に接続される切替開閉器であって、前記商用電源系統と前記負荷系統との接続状態を切り替えると共に前記蓄電系統と前記負荷系統との接続状態を切り替える切替開閉器と、
アグリゲーターから発動される下げDR(Demand Response)を受信する指令受信部と、
を備え、
前記切替開閉器は、前記指令受信部が前記下げDRを受信していることを条件として、前記商用電源系統と前記負荷系統とを電気的に切り離し、かつ、前記蓄電系統と前記負荷系統とを電気的に接続することを特徴とする切替開閉器内蔵盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下げDRに応じて電源を切り替え可能な切替開閉器内蔵盤及びこれに関連する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
企業・自治体などが所有する生産設備や自家用発電設備、蓄電池やEV(電気自動車)などのエネルギーリソースを相互につなぎ、IoT技術を活用して制御することで一つの発電所のように機能させるVPP(Virtual Power Plant)が知られている。
【0003】
また、需要家側のエネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要をコントロールする仕組みとしてDR(Demand Response)が知られている。DRは、需要制御のパターンによって、需要を減らす「下げDR」と、需要を増やす「上げDR」との二つに区分される。
【0004】
特許文献1では、既設の設備をVPPに対応させることのできる電力制御ユニット、及び分電盤システムが開示されている。具体的には、電力制御ユニット(1)は、指令受信部(111)と出力部(12)とを備えている(特許文献1の
図1参照)。指令受信部(111)は、アグリゲータ(A1)からの指令を受信する。出力部(12)は、分散型電源(4)から出力される電力に関する電力情報、及びアグリゲータ(A1)からの指令に基づいて、分電盤(2)に電気的に接続される負荷(5)を制御する制御信号を出力する。
【0005】
アグリゲーター(A1)からの指令が下げDRの場合、出力部(12)は、需要機器(6)の動作を抑制させる又は停止させる制御指令を含む制御信号を、対応する需要機器(6)に向けて送信する。あるいは、出力部(12)は、蓄電池(42)を放電させる制御指令を含む制御信号を、蓄電池(42)に向けて送信する。これにより、負荷(5)の消費電力が低減する。
【0006】
一方、アグリゲーター(A1)からの指令が上げDRの場合、出力部(12)は、需要機器(6)での電力消費を増大させる制御指令を含む制御信号を、対応する需要機器(6)に向けて送信する。あるいは、蓄電池(42)を充電させる制御指令を含む制御信号を、蓄電池(42)に向けて送信する。これにより、負荷(5)の消費電力が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に記載の技術によれば、アグリゲーターから下げDRを受信した場合、需要機器(6)の動作を抑制又は停止させたり、蓄電池(42)を放電させたりすることで、電力系統(9)からの電力供給が抑制される。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、下げDRの指令を受信した場合であっても電力系統(9)からの電力供給が完全には停止せず、電力系統(9)からの電力を一定程度消費し続ける。そのため、下げDRの要請に対して商用電力の消費を十分に抑制できないという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、下げDRの要請に対して商用電力の消費を確実に抑制することが可能な切替開閉器内蔵盤及びこれに関連する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、商用電源を含む商用電源系統と、発電装置及び蓄電池を含む蓄電系統と、負荷を含む負荷系統と、前記商用電源系統、前記蓄電系統及び前記負荷系統の各々に電気的に接続される切替開閉器であって、前記商用電源系統と前記負荷系統との接続状態を切り替えると共に前記蓄電系統と前記負荷系統との接続状態を切り替える切替開閉器を含む電源自動切替盤と、下げDR(Demand Response)を発動するアグリゲーターと、前記アグリゲーターからネットワークを介して前記下げDRを受信する指令受信部と、を備え、前記切替開閉器は、前記指令受信部が前記下げDRを受信していることを条件として、前記商用電源系統と前記負荷系統とを電気的に切り離し、かつ、前記蓄電系統と前記負荷系統とを電気的に接続することを特徴とする電力供給システムを提供している。
【0012】
ここで、前記商用電源系統と前記切替開閉器とに電気的に接続される第一端子を含む第一回路部と、前記蓄電系統と前記切替開閉器とに電気的に接続される第二端子を含む第二回路部と、前記第一端子に電圧を出力する通常運転モードと前記第二端子に電圧を出力する自立運転モードとを切替可能なパワーコンディショナーと、を更に備え、前記商用電源系統と前記第一回路との間には、前記指令受信部を含む遠隔操作用開閉器が設けられ、前記遠隔操作用開閉器は、前記指令受信部が前記下げDRを受信している間、前記商用電源系統と前記切替開閉器とを電気的に切り離し、前記商用電源系統からの電力供給を遮断し、前記パワーコンディショナーは、前記商用電源系統からの電力供給が遮断している間、前記自立運転モードに切り替わり、前記切替開閉器は、前記第二端子に電圧が入力されたことに応答して、前記商用電源系統と前記負荷系統とを電気的に切り離し、かつ、前記蓄電系統と前記負荷系統とを電気的に接続するのが好ましい。
【0013】
また、前記商用電源系統と前記切替開閉器とに電気的に接続される第一端子を含む第一回路部と、前記蓄電系統と前記切替開閉器とに電気的に接続される第二端子を含む第二回路部と、前記第一端子に電圧を出力する通常運転モードと前記第二端子に電圧を出力する自立運転モードとを切替可能なパワーコンディショナーと、を更に備え、前記指令受信部は、前記パワーコンディショナーに設けられる第一指令受信部と、前記切替開閉器に設けられる第二指令受信部とを有し、前記パワーコンディショナーは、前記第一指令受信部が前記下げDRを受信している間、前記自立運転モードに切り替わり、前記切替開閉器は、前記第二指令受信部が前記下げDRを受信している間に前記第二端子に電圧が入力されると、前記商用電源系統と前記負荷系統とを電気的に切り離し、かつ、前記蓄電系統と前記負荷系統とを電気的に接続するのが好ましい。
【0014】
また、前記蓄電池の電池残量を測定する電池残量測定部を更に備え、前記切替開閉器は、前記電池残量が閾値以上であることを追加条件として、前記商用電源系統と前記負荷系統とを電気的に切り離し、かつ、前記蓄電系統と前記負荷系統とを電気的に接続するのが好ましい。
【0015】
更に、前記切替開閉器は、前記下げDRに伴う前記蓄電系統の使用電力量を測定する使用電力測定部と、前記使用電力量を前記アグリゲーターに送信するための送信部と、を備えるのが好ましい。
【0016】
また、本発明は、商用電源を含む商用電源系統、発電装置及び蓄電池を含む蓄電系統及び負荷を含む負荷系統の各々に電気的に接続される切替開閉器であって、前記商用電源系統と前記負荷系統との接続状態を切り替えると共に前記蓄電系統と前記負荷系統との接続状態を切り替える切替開閉器と、アグリゲーターから発動される下げDR(Demand Response)を受信する指令受信部と、を備え、前記切替開閉器は、前記指令受信部が前記下げDRを受信していることを条件として、前記商用電源系統と前記負荷系統とを電気的に切り離し、かつ、前記蓄電系統と前記負荷系統とを電気的に接続することを特徴とする切替開閉器内蔵盤を更に提供している。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、指令受信部が下げDRを受信していることを条件として、商用電源系統と負荷系統とが電気的に切り離され、かつ、蓄電系統と負荷系統とが電気的に接続される。すなわち、下げDRを受信している間、商用電源系統からの電力が負荷系統に一切供給されない。そのため、下げDRの要請に対して商用電力の消費を確実に抑制することが可能である。
【0018】
なお、本発明の切替開閉器内蔵盤及び電力供給システムのように、指令受信部が下げDRを受信していることを条件として、商用電源系統と負荷系統とが電気的に切り離され、かつ、蓄電系統と負荷系統とが電気的に接続される点は、上述した特許文献1には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電力供給システムのシステム構成を示す概略図。
【
図2】第1実施形態に係る電源自動切替盤の概略構成を示す機能ブロック図。
【
図3】第1実施形態に係る遠隔操作用開閉器の概略構成を示す機能ブロック図。
【
図4】第1実施形態における下げDR受信時の回路切替動作を示すフローチャート。
【
図5】第1実施形態における商用電力供給時の負荷系統への電流の流れを示す概略図。
【
図6】第1実施形態における商用電力非供給時の切替開閉器の接続状態を示す概略図。
【
図7】第1実施形態における商用電力非供給時の負荷系統への電流の流れを示す概略図。
【
図8】第2実施形態に係る電力供給システムのシステム構成を示す概略図。
【
図9】第2実施形態に係る電源自動切替盤の概略構成を示す機能ブロック図。
【
図10】第2実施形態に係るパワーコンディショナーの概略構成を示す機能ブロック図。
【
図11】第2実施形態における下げDR受信時の回路切替動作を示すフローチャート。
【
図12】第2実施形態における商用電力供給時の負荷系統への電流の流れを示す概略図。
【
図13】第2実施形態における商用電力非供給時の切替開閉器の接続状態を示す概略図。
【
図14】第2実施形態における商用電力非供給時の負荷系統への電流の流れを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<1.第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る切替開閉器内蔵盤及び電力供給システムについて、
図1から
図7に基づいて説明する。なお、以下では、電力供給システムの一例として、
図1に示す電力供給システム1を例示する。また、切替開閉器内蔵盤の一例として、
図1に示す電源自動切替盤5を例示する。
【0021】
図1に示すように、電力供給システム1は、商用電源系統2と、蓄電系統3と、負荷系統4と、電源自動切替盤5と、アグリゲーター6と、遠隔操作用開閉器7とを備えている。
【0022】
商用電源系統2は、電力会社からの電力系統であり、電力会社の商用電源21を備えている。蓄電系統3は、太陽光発電装置31と、蓄電池33と、パワーコンディショナー35とを備えて構成される。負荷系統4は、住宅用分電盤などで構成され、負荷41を備えている。
【0023】
電源自動切替盤5は、切替開閉器50と、第1回路部51と、第2回路部52と、中継回路部53と、負荷回路部54とを備えて構成される。
【0024】
切替開閉器50は、
図1に示す商用電力供給状態ST1と、
図6に示す商用電力非供給状態ST2とを切り替える開閉器である。
図1に示す商用電力供給状態ST1は、商用電源21の電力が負荷系統4に供給される接続状態である。また、
図6に示す商用電力非供給状態ST2は、商用電源21の電力が負荷系統4に供給されない接続状態である。
【0025】
第1回路部51は、商用電源系統2と切替開閉器50とに電気的に接続される回路である。第1回路部51は、商用電源系統2と切替開閉器50と中継回路部53に電気的に接続される第1端子部511を備えている。
【0026】
第2回路部52は、蓄電系統3と切替開閉器50とに電気的に接続される回路である。第2回路部52は、蓄電系統3と切替開閉器50とに電気的に接続される第2端子部521を備えている。
【0027】
中継回路部53は、第1回路部51に電気的に接続される回路である。中継回路部53は、商用電力供給状態ST1において、蓄電系統3からの電力を商用電力に追加するための中継電気機器(図示せず)を備えている。
【0028】
負荷回路部54は、負荷41と切替開閉器50とに電気的に接続される回路である。負荷回路部54は、切替開閉器50からの電力を受ける負荷電気機器(図示せず)などを備えている。
【0029】
パワーコンディショナー35は、太陽光発電装置31や蓄電池33の電気を交流に変換し、第1回路部51または第2回路部52に供給するための装置である。パワーコンディショナー35は、商用電源系統2から電力が供給されている間は、蓄電系統3からの電圧を第1回路部51の第1端子部511に出力する。以下では、パワーコンディショナー35が蓄電系統3からの電圧を第1回路部51の第1端子部511に出力することを、通常運転モードとも称する。
【0030】
一方、パワーコンディショナー35は、停電(すなわち、商用電源系統2からの電力供給が停止したこと)を検知すると、通常運転モードから自立運転モードに切り替わる。自立運転モードにおいて、パワーコンディショナー35は、蓄電系統3の電圧を第2回路部52の第2端子部521に出力する。
【0031】
図2に示すように、電源自動切替盤5は、上述した切替開閉器50に加え、使用電力測定部502と送信部504とを備えている。また、切替開閉器50は、切替制御部503を備えている。なお、切替制御部503、使用電力測定部502及び送信部504の各部は、公知のコントローラーなどによって実現される。
【0032】
切替制御部503は、切替開閉器50を商用電力供給状態ST1又は商用電力非供給状態ST2に切り替えるための処理部である。
【0033】
具体的には、切替制御部503は、商用電源系統2の電圧が第1回路部51の第1端子部511に入力されている間、切替開閉器50が商用電力供給状態ST1(
図1)となるように切替開閉器50を制御する。
【0034】
図5に示すように、商用電力供給状態ST1では、商用電源系統2からの電力及び蓄電系統3からの電力が太破線矢印で示す経路を通って負荷41に供給される。つまり、商用電力供給状態ST1では、商用電源系統2の電力に蓄電系統3からの電力を加えたものが負荷41で消費される。
【0035】
一方、切替制御部503は、商用電源系統2の電圧が第1回路部51の第1端子部511に入力されず、かつ、蓄電系統3の電圧が第2端子部521に入力されている間、切替開閉器500が商用電力非供給状態ST2(
図6)となるように切替開閉器50を制御する。
【0036】
図7に示すように、商用電力非供給状態ST2では、蓄電系統3からの電力が太破線矢印で示す経路を通って負荷41に供給される。つまり、商用電力非供給状態ST2では、下げDRの要請に応じて、負荷41が商用電源系統2から切り離され、蓄電系統3からの電力のみが負荷41で消費される。
【0037】
再び
図2を参照する。使用電力測定部502は、下げDRの要請に応じて消費した蓄電系統3の電力に関して使用電力量を測定する処理部である。
【0038】
送信部504は、使用電力測定部502で測定した使用電力量をインターネット及びルーターを介してアグリゲーター6に送信する処理部である。
【0039】
再び
図1を参照する。アグリゲーター6は、上げDRや下げDRを発動し、需要家の需要量を制御して電力の需要と供給のバランスを保つ事業者のコンピューターである。
【0040】
遠隔操作用開閉器7は、商用電源系統2と第1回路部51との間に設けられる開閉器である。遠隔操作用開閉器7は、インターネット及びルーターを介してアグリゲーター6に接続されている。
【0041】
遠隔操作用開閉器7がオン状態(接続された状態)の場合(
図1参照)、電源自動切替盤5に対する商用電源系統2からの電力供給が許容される。一方、遠隔操作用開閉器7がオフ状態(切断された状態)の場合(
図6参照)、電源自動切替盤5に対する商用電源系統2からの電力供給が停止する。つまり、遠隔操作用開閉器7をオフ状態にする(切断する)ことで、擬似的な停電(以下、疑似停電とも称する)が発生する。
【0042】
図3に示すように、遠隔操作用開閉器7は、指令受信部71と、切替制御部73と、電池残量測定部75とを備えて構成される。なお、指令受信部71、切替制御部73及び電池残量測定部75の各部は、公知のコントローラーなどによって実現される。
【0043】
指令受信部71は、インターネット及びルーターを介して下げDRを電力抑制指令としてアグリゲーター6から受信する処理部である。また、電池残量測定部75は、蓄電池33の電池残量を測定する処理部である。
【0044】
切替制御部73は、指令受信部71における下げDR(電力抑制指令)の受信状況に応じて、遠隔操作用開閉器7の接続又は切断を切り替える処理部である。
【0045】
具体的には、切替制御部73は、指令受信部71が下げDR(電力抑制指令)を受信していない場合に、遠隔操作用開閉器7を接続する。
【0046】
一方、切替制御部73は、指令受信部71が下げDR(電力抑制指令)を受信し且つ電池残量が閾値以上である場合に、遠隔操作用開閉器7を切断し、疑似停電を発生させる。
【0047】
続いて、
図4に示すフローチャートに沿って、下げDR受信時の回路切替動作について詳細に説明する。
【0048】
アグリゲーター6からの下げDR(電力抑制指令)を指令受信部71(
図3)が受信すると(ステップS1でYES)、電池残量測定部75(
図3)は、蓄電池33の電池残量を測定する(ステップS2)。
【0049】
ステップS2で測定された電池残量が予め設定された閾値以上であると判定されると(ステップS3でYES)、切替制御部73(
図3)は、遠隔操作用開閉器7を切断し、疑似停電を発生(疑似停電モードON)させる(ステップS4)。
【0050】
疑似停電が発生すると、上述したように、パワーコンディショナー35は、自立運転モードに切り替わる。自立運転モードでは、蓄電系統3の電圧が第2回路部52の第2端子部521に出力される。
【0051】
その結果、第1回路部51の第1端子部511には商用電源系統2の電圧が入力されず、第2回路部52の第2端子部521には蓄電系統3の電圧が入力される状態となる。これに伴い、切替制御部503(
図2)は、切替開閉器50が商用電力非供給状態ST2(
図6)となるように切替開閉器50を制御する(ステップS5)。
【0052】
切替開閉器50が商用電力非供給状態ST2に切り替えられると、電池残量測定部75によって蓄電池33の電池残量が監視される。ここで、蓄電池33が閾値以上(ステップS6でYES)、かつ、下げDRを受信している間(ステップS7でYES)は、切替制御部503は、切替開閉器50を商用電力非供給状態ST2に維持し続ける。
【0053】
他方、蓄電池33が閾値未満になった場合(ステップS6でNO)あるいは下げDRを受信しなくなった場合(ステップS7でNO)、切替制御部73(
図3)は、遠隔操作用開閉器7を接続し、疑似停電を終了(疑似停電モードOFF)させる(ステップS8)。疑似停電が終了すると、パワーコンディショナー35は、自立運転モードから通常運転モードに復帰する。
【0054】
その結果、第1回路部51の第1端子部511には商用電源系統2の電圧が入力されると共に蓄電系統3の電圧が入力される。これに伴い、切替制御部503(
図2)は、切替開閉器50が商用電力供給状態ST1(
図1)となるように切替開閉器50を制御する(ステップS9)。
【0055】
また、使用電力測定部502は、下げDRの要請に応じて消費した蓄電系統3の電力に関して使用電力量を測定する(ステップS10)。そして、送信部504は、使用電力測定部502で測定した使用電力量を、インターネット及びルーターを介してアグリゲーター6に送信する(ステップS11)。
【0056】
上述した第1実施形態によれば、指令受信部71が下げDRを受信していることを条件として、商用電源系統2と負荷系統4とが電気的に切り離され、かつ、蓄電系統3と負荷系統4とが電気的に接続される。すなわち、下げDRを受信している間、商用電源系統2からの電力が負荷系統4に一切供給されなくなる。そのため、下げDRの要請に対して商用電力の消費を確実に抑制することが可能である。
【0057】
また、上述した第1実施形態によれば、蓄電池33の電池残量が閾値以上の場合に、遠隔操作用開閉器7が切断され、商用電源系統2と負荷系統4とが電気的に切り離される。逆に言えば、蓄電池33の電池残量が閾値未満の場合には、商用電源系統2と負荷系統4とが電気的に接続された状態を維持する。つまり、アグリゲーター6から下げDRを受信したとしても、蓄電池33の電池残量が少なく、蓄電池33による負荷系統4への電力供給能力が不十分な場合には、商用電源系統2と負荷系統4とが電気的に切り離されない。そのため、負荷系統4への安定的な電力供給を確保できる。
【0058】
また、上述した第1実施形態によれば、下げDRの解除後、下げDRの要請に応じて消費した蓄電系統3の電力に関して使用電力量がアグリゲーター6に送信される。そのため、アグリゲーター6からの下げDRの要請に応じた需要家に対し、使用電力量に応じた報酬を与えることが可能になる。
【0059】
<2.第2実施形態>
続いて、
図8から
図14を参照しながら、第2実施形態に係る切替開閉器内蔵盤及び電力供給システムについて説明する。なお、第2実施形態は、上述した第1実施形態の変形例である。そこで、以下では、第1実施形態と相違する箇所を中心に説明を行い、第1実施形態と共通する箇所については同様の参照符号を用いることで説明を省略する。
【0060】
図8に示すように、第2実施形態に係る電力供給システム1は、第1実施形態とは異なり、遠隔操作用開閉器7を備えていない。
【0061】
また、第2実施形態では、切替開閉器50及びパワーコンディショナー35の各々が、インターネット及びルーターを介してアグリゲーター6に接続されている。
【0062】
また、
図9に示すように、第2実施形態に係る切替開閉器50は、切替制御部503に加え、指令受信部501及び電池残量測定部505を備えている。指令受信部501は、本発明に係る第二指令受信部の一例である。
【0063】
更に、
図10に示すように、第2実施形態に係るパワーコンディショナー35は、指令受信部351を備えている。指令受信部351は、本発明に係る第一指令受信部の一例である。
【0064】
指令受信部501及び指令受信部351は、いずれも、同じタイミングでインターネット及びルーターを介して下げDRを電力抑制指令としてアグリゲーター6から受信する。
【0065】
第2実施形態では、切替制御部503による切替開閉器50の制御方法が第1実施形態と大きく相違する。
【0066】
具体的には、切替制御部503は、指令受信部501が下げDRを受信していない間、切替開閉器50が商用電力供給状態ST1(
図8)となるように切替開閉器50を制御する。
【0067】
図12に示すように、商用電力供給状態ST1では、商用電源系統2からの電力及び蓄電系統3からの電力が太破線矢印で示す経路を通って負荷41に供給される。
【0068】
一方、切替制御部503は、指令受信部501が下げDRを受信している状態で、蓄電系統3の電圧が第2端子部521に入力されたことに応答して、切替開閉器50が商用電力非供給状態ST2(
図13)となるように切替開閉器50を制御する。
【0069】
図14に示すように、商用電力非供給状態ST2では、蓄電系統3からの電力が太破線矢印で示す経路を通って負荷41に供給される。
【0070】
続いて、
図11に示すフローチャートを参照しながら、第2実施形態における下げDR受信時の回路切替動作について説明する。
【0071】
第2実施形態では、
図11のフローチャートの処理のうちステップS40及びステップS80が第1実施形態(
図4のフローチャート)と相違する。
【0072】
具体的には、ステップS40では、下げDRを受信中であることを示す制御信号が切替開閉器50の切替制御部503に出力される。また、自立運転モードへの切替指示を示す制御信号がパワーコンディショナー35に出力される。
【0073】
パワーコンディショナー35が自立運転モードに切り替わると、蓄電系統3の電圧が第2回路部52の第2端子部521に出力される。
【0074】
その結果、下げDR(詳細には、下げDRを受信中であることを示す制御信号)を受信している状態で、蓄電系統3の電圧が第2回路部52の第2端子部521に入力される。これに伴い、切替制御部503は、切替開閉器50が商用電力非供給状態ST2(
図13)となるように切替開閉器50を制御する(ステップS5)。
【0075】
ステップS80では、商用電力供給状態ST1への切替を指示する制御信号が切替開閉器50の切替制御部503に出力される。また、通常運転モードへの切替指示を示す制御信号がパワーコンディショナー35に出力される。
【0076】
切替制御部503は、切替開閉器50が商用電力供給状態ST1となるように切替開閉器50を制御する(ステップS9)。また、パワーコンディショナー35は、通常運転モードに復帰する。
【0077】
上述した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に下げDRの要請に対して商用電力の消費を確実に抑制することが可能である。また、第1実施形態で説明したその他の効果も得られる。
【0078】
また、上述した第2実施形態によれば、遠隔操作用開閉器7を設けずに済むため、電力供給システム1のシステム構成を簡略化することが可能である。
【0079】
<3.変形例>
本発明による切替開閉器内蔵盤及び電力供給システムは上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0080】
例えば、上述した各実施形態では、蓄電池33の電池残量が閾値以上の場合に商用電源系統2と負荷系統4とが電気的に切り離される場合を例示したが、これに限定されない。蓄電池33の電池残量に関係なく、商用電源系統2と負荷系統4とが電気的に切り離されるように構成してもよい。
【0081】
その場合、蓄電池33の電池残量がゼロになった時点で、切替開閉器50が商用電力供給状態ST1となるように切替開閉器50を制御し、商用電源系統2と負荷系統4とが再度電気的に接続されるようにすればよい。
【0082】
また、上述した各実施形態では、
図4及び
図11のステップS10,11において、下げDRの解除後、下げDRの要請に応じて消費した蓄電系統3の電力に関して使用電力量がアグリゲーター6に送信される場合を例示したが、これに限定されない。需要家に報酬を与えない場合には、
図4及び
図11のステップS10,11を省略してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 電力供給システム
2 商用電源系統
3 蓄電系統
4 負荷系統
5 電源自動切替盤
6 アグリゲーター
7 遠隔操作用開閉器
21 商用電源
31 太陽光発電装置
33 蓄電池
35 パワーコンディショナー
41 負荷
50 切替開閉器
51 第1回路部
52 第2回路部
53 中継回路部
54 負荷回路部
71 指令受信部
73 切替制御部
75 電池残量測定部
351 指令受信部
500 切替開閉器
501 指令受信部
502 使用電力測定部
503 切替制御部
504 送信部
505 電池残量測定部
511 第1端子部
521 第2端子部
ST1 商用電力供給状態
ST2 商用電力非供給状態