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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072782
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20240521BHJP
   G01D 5/14 20060101ALI20240521BHJP
   G01D 5/20 20060101ALI20240521BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20240521BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G01D5/12 N
G01D5/14 E
G01D5/20 K
G01B7/30 M
G01B7/00 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023166407
(22)【出願日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2022183453
(32)【優先日】2022-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 光一郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 鮎奈
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 成時
(72)【発明者】
【氏名】小野田 渚
【テーマコード(参考)】
2F063
2F077
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063AA35
2F063BB02
2F063BB03
2F063BC03
2F063BC06
2F063CA09
2F063DA01
2F063DA05
2F063DB04
2F063DB07
2F063DC08
2F063DD02
2F063DD03
2F063GA03
2F063GA08
2F063KA03
2F063KA04
2F077AA20
2F077AA25
2F077CC02
2F077FF03
2F077FF31
2F077JJ01
2F077JJ03
2F077JJ06
2F077JJ21
2F077TT33
2F077TT42
2F077UU18
2F077UU20
(57)【要約】
【課題】検出精度を向上可能な位置検出装置を提供すること。
【解決手段】
検出体の位置を検出する位置検出装置は、正弦波状の第1信号V1と、余弦波状の第2信号V2とを出力する信号出力部32、33と、信号出力部が設けられ、検出体と対向して配置される配置部30と、第1信号および第2信号に基づいて検出体位置を算出する信号処理部50とを備える。信号処理部は、第1信号および第2信号を補正する信号補正部54と、補正した第1信号および第2信号に基づいて補正前検出体位置を算出する位置算出部55と、検出範囲の複数の区間毎の補正前検出体位置を補正する区間補正部56とを有する。信号補正部は、配置部が、基準ギャップ、1つ以上の近ギャップ、1つ以上の遠ギャップそれぞれとなるように配置された際の誤差がそれぞれ0に近づくように第1信号および前記第2信号を補正する。区間補正部は、複数の区間毎に補正関数における補正値を導出する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出体(20、100)の位置を検出する位置検出装置であって、
前記検出体の位置に応じた正弦波状の第1信号(V1)と、前記第1信号と位相が異なる余弦波状の前記検出体の位置に応じた第2信号(V2)とを出力する信号出力部(32、33、61、62)と、
前記信号出力部が設けられ、前記検出体と離隔した状態で前記検出体と対向して配置される配置部(30、10)と、
前記第1信号および前記第2信号に基づいて、前記検出体が所定の検出範囲において変位する際の前記検出体の位置である検出体位置を算出する信号処理部(50)と、を備え、
前記信号処理部は、
前記第1信号および前記第2信号を補正し、補正した前記第1信号および前記第2信号に基づいて補正前の前記検出体位置である補正前検出体位置を算出し、算出する前記補正前検出体位置の誤差に基づいた補正関数を演算して、前記検出範囲を複数の区間に区分けした際の前記複数の区間毎に算出する前記補正前検出体位置を補正可能であって、
前記検出体と前記配置部とが対向する方向である対向方向における前記検出体と前記配置部との間隔をギャップ(G)とし、基準となる前記ギャップを基準ギャップとし、前記基準ギャップより前記検出体と前記配置部との間隔が小さい前記ギャップを近ギャップとし、前記基準ギャップより前記検出体と前記配置部との間隔が大きい前記ギャップを遠ギャップとしたとき、
前記配置部が、前記基準ギャップ、1つ以上の前記近ギャップ、1つ以上の前記遠ギャップそれぞれとなるように配置された際の前記補正前検出体位置の誤差がそれぞれ0に近づくように前記第1信号および前記第2信号を補正するとともに、前記複数の区間毎に前記補正関数における補正値を導出する位置検出装置。
【請求項2】
検出体(20、100)の位置を検出する位置検出装置であって、
前記検出体の位置に応じた正弦波状の第1信号(V1)と、前記第1信号と位相が異なる余弦波状の前記検出体の位置に応じた第2信号(V2)とを出力する信号出力部(32、33、61、62)と、
前記信号出力部が設けられ、前記検出体と離隔した状態で前記検出体と対向して配置される配置部(30、10)と、
前記第1信号および前記第2信号に基づいて、前記検出体が所定の検出範囲において変位する際の前記検出体の位置である検出体位置を算出する信号処理部(50)と、を備え、
前記信号処理部は、
前記第1信号および前記第2信号を補正する信号補正部(54)と、
前記信号補正部が補正した前記第1信号および前記第2信号に基づいて補正前の前記検出体位置である補正前検出体位置を算出する位置算出部(55)と、
前記位置算出部が算出する前記補正前検出体位置の誤差に基づいた補正関数を演算して、前記検出範囲を複数の区間に区分けした際の前記複数の区間毎の前記位置算出部が算出する前記補正前検出体位置を補正する区間補正部(56)と、を有し、
前記検出体と前記配置部とが対向する方向である対向方向における前記検出体と前記配置部との間隔をギャップ(G)とし、基準となる前記ギャップを基準ギャップとし、前記基準ギャップより前記検出体と前記配置部との間隔が小さい前記ギャップを近ギャップとし、前記基準ギャップより前記検出体と前記配置部との間隔が大きい前記ギャップを遠ギャップとしたとき、
前記信号補正部は、前記配置部が、前記基準ギャップ、1つ以上の前記近ギャップ、1つ以上の前記遠ギャップそれぞれとなるように配置された際の前記補正前検出体位置の誤差がそれぞれ0に近づくように前記第1信号および前記第2信号を補正し、
前記区間補正部は、前記複数の区間毎に前記補正関数における補正値を導出する位置検出装置。
【請求項3】
前記検出体は、回転体であって、0°から360°より小さい所定の回転範囲内で回転可能であって、
前記信号出力部は、前記検出体が前記所定の回転範囲内で回転する際の前記検出体の回転角度に応じて前記第1信号および前記第2信号を出力し、
前記信号補正部は、前記位置算出部が算出する前記所定の回転範囲内の前記補正前検出体位置の誤差が0に近づくように前記第1信号および前記第2信号を補正し、
前記位置算出部は、前記信号補正部が補正した前記第1信号および前記第2信号に基づいて前記所定の回転範囲内の前記補正前検出体位置を算出する請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記基準ギャップは、1つ以上の前記近ギャップのうちの前記基準ギャップから最も離れた前記近ギャップの大きさと、1つ以上の前記遠ギャップのうちの前記基準ギャップから最も離れた前記遠ギャップの大きさとの中心の大きさに設定される請求項2または3に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記信号補正部は、前記第1信号の位相、ゲイン、オフセットのうちの少なくとも1つを補正するとともに、前記第2信号の位相、ゲイン、オフセットのうちの少なくとも1つを補正する請求項2または3に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記信号補正部は、前記配置部が前記基準ギャップとなるように配置された際の前記補正前検出体位置の誤差と、前記配置部が前記遠ギャップとなるように配置された際の前記補正前検出体位置の誤差との差が0に近づくように前記第1信号のオフセットを補正するとともに、前記第2信号のオフセットを補正する請求項5に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記信号処理部は、前記第1信号および前記第2信号に基づいて、逆正接関数を演算してアークタンジェント変換することで前記検出体の位置を算出し、
前記信号補正部は、前記配置部が前記遠ギャップとなるように配置された場合に前記信号処理部が前記第1信号および前記第2信号をアークタンジェント変換して得られる1次成分が、前記配置部が前記近ギャップとなるように配置された場合に前記信号処理部が前記第1信号および前記第2信号をアークタンジェント変換して得られる1次成分に近づくように前記第1信号のオフセットを補正するとともに、前記第2信号のオフセットを補正する請求項5に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記第1信号のオフセットは、前記第1信号の振幅の変化によらないオフセット成分である第1定量オフセットおよび前記第1信号の振幅の変化に応じて信号の大きさが変化するオフセット成分である第1可変オフセットを含み、
前記第2信号のオフセットは、前記第2信号の振幅の変化によらないオフセット成分である第2定量オフセットおよび前記第2信号の振幅の変化に応じて信号の大きさが変化するオフセット成分である第2可変オフセットを含み、
前記信号補正部は、前記第1信号の振幅の変化量と前記第1信号の振幅の変化量に基づく前記第1信号のオフセットの変化量との関係が比例関係となるように前記第1定量オフセットを調整するとともに、前記第2信号の振幅の変化量と前記第2信号の振幅の変化量に基づく前記第2信号のオフセットの変化量との関係が比例関係となるように前記第2定量オフセットを調整し、
前記区間補正部は、前記第1信号および前記第2信号をアークタンジェント変換して算出した前記検出体の位置に含まれる1次成分を除去するように、前記複数の区間毎の前記位置算出部が算出する前記補正前検出体位置を補正する請求項7に記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記配置部は、基板であって、
前記信号出力部は、前記基板に形成されるとともに、送信コイル(31)と、前記送信コイルへの通電による電磁誘導によって、誘導結合する第1受信コイル(32)および第2受信コイル(33)と、を含み、
前記第1受信コイルは、通電する前記送信コイルからの電磁誘導によって前記検出体に流れる渦電流の影響を受けて変化する、前記検出体の位置に応じた前記第1信号を第1電圧値として出力し、
前記第2受信コイルは、通電する前記送信コイルからの電磁誘導によって前記検出体に流れる渦電流の影響を受けて変化する、前記検出体の位置に応じた前記第2信号を第2電圧値として出力し、
前記信号処理部は、前記第1電圧値および前記第2電圧値に基づいて、前記検出体位置を算出する請求項2または3に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記配置部は、基板であって、
前記信号出力部は、前記基板に設けられるとともに、前記検出体の位置に応じてインダクタンスが変化する第1受信コイル(32)および第2受信コイル(33)を含み、
前記第1受信コイルは、前記検出体の位置に応じて変化する自身のインダクタンスの変化を前記第1信号として出力し、
前記第2受信コイルは、前記検出体の位置に応じて変化する自身のインダクタンスの変化を前記第2信号として出力し、
前記信号処理部は、前記第1受信コイルのインダクタンスの変化および前記第2受信コイルのインダクタンスの変化に基づいて、前記検出体位置を算出する請求項2または3に記載の位置検出装置。
【請求項11】
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルは、渦巻状のパターン形状である部分を含む請求項9に記載の位置検出装置。
【請求項12】
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルは、前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルのうちの一方が正弦曲線を描くパターン形状を含み、前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルのうちの他方が前記正弦曲線と位相が異なる余弦曲線を描くパターン形状を含む請求項9に記載の位置検出装置。
【請求項13】
前記検出体には、磁石(110、120、130)が配置されており、
前記信号出力部は、前記検出体の位置に応じて変化する前記磁石から受ける磁界の変化に基づいて、前記第1信号を出力する第1磁気検出部(61)および前記第2信号を出力する第2磁気検出部(62)を有する請求項2または3に記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検出体に配置された複数の磁石から受ける磁界の変化に基づいて、検出体の位置を検出するリニアポジションセンサが知られている(例えば、特許文献1参照)。このリニアポジションセンサは、移動する検出体における複数の磁石の位置に対応した位相の正弦信号及び余弦信号を取得する検出部を備え、検出部が取得する正弦信号及び余弦信号に基づいて検出体の位置を検出する。
【0003】
また、特許文献1に記載のリニアポジションセンサは、検出体における複数の磁石の間隔を不等間隔に配置し、または、磁石の高さを不均等に配置して検出部が受ける磁界をアンバランスに調整することで、特定の位置の検出精度を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-16309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らの鋭意検討によれば、特許文献1に記載のリニアポジションセンサのような正弦信号及び余弦信号に基づいて検出体の位置を検出する位置検出装置において、特定の位置に限定されず、検出精度を向上させる余地があることが分かった。
【0006】
本開示は、検出精度を向上可能な位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
検出体(20、100)の位置を検出する位置検出装置であって、
前記検出体の位置に応じた正弦波状の第1信号(V1)と、前記第1信号と位相が異なる余弦波状の前記検出体の位置に応じた第2信号(V2)とを出力する信号出力部(32、33、61、62)と、
前記信号出力部が設けられ、前記検出体と離隔した状態で前記検出体と対向して配置される配置部(30、10)と、
前記第1信号および前記第2信号に基づいて、前記検出体が所定の検出範囲において変位する際の前記検出体の位置である検出体位置を算出する信号処理部(50)と、を備え、
前記信号処理部は、
前記第1信号および前記第2信号を補正し、補正した前記第1信号および前記第2信号に基づいて補正前の前記検出体位置である補正前検出体位置を算出し、算出する前記補正前検出体位置の誤差に基づいた補正関数を演算して、前記検出範囲を複数の区間に区分けした際の前記複数の区間毎に算出する前記補正前検出体位置を補正可能であって、
前記検出体と前記配置部とが対向する方向である対向方向における前記検出体と前記配置部との間隔をギャップ(G)とし、基準となる前記ギャップを基準ギャップとし、前記基準ギャップより前記検出体と前記配置部との間隔が小さい前記ギャップを近ギャップとし、前記基準ギャップより前記検出体と前記配置部との間隔が大きい前記ギャップを遠ギャップとしたとき、
前記配置部が、前記基準ギャップ、1つ以上の前記近ギャップ、1つ以上の前記遠ギャップそれぞれとなるように配置された際の前記補正前検出体位置の誤差がそれぞれ0に近づくように前記第1信号および前記第2信号を補正するとともに、前記複数の区間毎に前記補正関数における補正値を導出する。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、
検出体(20、100)の位置を検出する位置検出装置であって、
検出体の位置に応じた正弦波状の第1信号(V1)と、第1信号と位相が異なる余弦波状の検出体の位置に応じた第2信号(V2)とを出力する信号出力部(32、33、61、62)と、
信号出力部が設けられ、検出体と離隔した状態で検出体と対向して配置される配置部(30、10)と、
第1信号および第2信号に基づいて、検出体が所定の検出範囲において変位する際の検出体の位置である検出体位置を算出する信号処理部(50)と、を備え、
信号処理部は、
第1信号および第2信号を補正する信号補正部(54)と、
信号補正部が補正した第1信号および第2信号に基づいて補正前の検出体位置である補正前検出体位置を算出する位置算出部(55)と、
位置算出部が算出する補正前検出体位置の誤差に基づいた補正関数を演算して、検出範囲を複数の区間に区分けした際の複数の区間毎の位置算出部が算出する補正前検出体位置を補正する区間補正部(56)と、を有し、
検出体と配置部とが対向する方向である対向方向における検出体と配置部との間隔をギャップ(G)とし、基準となるギャップを基準ギャップとし、基準ギャップより検出体と配置部との間隔が小さいギャップを近ギャップとし、基準ギャップより検出体と配置部との間隔が大きいギャップを遠ギャップとしたとき、
信号補正部は、配置部が、基準ギャップ、1つ以上の近ギャップ、1つ以上の遠ギャップそれぞれとなるように配置された際の補正前検出体位置の誤差がそれぞれ0に近づくように第1信号および第2信号を補正し、
区間補正部は、複数の区間毎に補正関数における補正値を導出する。
【0009】
これによれば、配置部との間隔が基準ギャップ、近ギャップおよび遠ギャップのいずれかとなるように配置された場合において、検出体位置の誤差が0に近づくように補正項を導出することで、検出誤差を抑制することができる。したがって、位置検出装置における検出精度を向上させることができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る位置検出装置の概略構成図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3図1のIII-III断面図である。
図4】第1実施形態に係る基板を示す図である。
図5】第1実施形態に係る位置検出装置のブロック図である。
図6】第1実施形態に係る第1受信コイルに発生する第1電圧値の波形および第2受信コイルに発生する第2電圧値の波形の一例を示す図である。
図7】第1実施形態に係る位置検出装置のブロック図において、角度算出部の詳細を示した図である。
図8】理想的な第1受信コイルに発生する第1電圧値の波形および第2受信コイルに発生する第2電圧値の波形の一例を示す図である。
図9】機械角と電気角との相対関係を示す図である。
図10】回転角度の誤差の一例を示す図である。
図11】第1実施形態に係る位置算出部が算出する補正前の回転角度θの誤差の一例を示す図である。
図12】第1変換信号および第2変換信号それぞれのオフセットがギャップに応じて変化することを説明するための図である。
図13】第1実施形態に係る区間補正部によって補正された補正回転角度θaの誤差の一例を示す図である。
図14】第1実施形態に係る位置検出装置のブロック図である。
図15】第2実施形態に係る基板を示す図である。
図16】第2実施形態に係る回転部材を示す図である。
図17】第3実施形態に係る位置検出装置および検出体を示す図である。
図18】第3実施形態に係る位置検出装置のブロック図である。
図19】第4実施形態に係る位置算出部が算出する回転角度θの誤差の一例を示す図である。
図20】第4実施形態に係る区間補正部によって補正された補正回転角度θaの誤差の一例を示す図である。
図21】第5実施形態に係る基板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態について、図1図12を参照して説明する。本実施形態では、位置検出装置1が車両用ペダル装置のブレーキペダルまたはアクセルペダルの回転位置を検出するために用いられた例について説明する。なお、以下の説明では、ブレーキペダルまたはアクセルペダルを単にペダルと称する場合がある。
【0014】
図1図3に示すように、本実施形態の位置検出装置1は、回転部材20と基板30とを備えている。なお、図1図3に表示された回転軸心CLは、ペダルの回転軸70および回転部材20の回転中心である。本実施形態では、回転軸心CLが延びる方向を軸方向Daとし、回転軸心CLの軸を中心に放射状に拡がる方向を径方向Drとし、回転軸心CLの回転方向を周方向Dcとして説明する。これら軸方向Da、径方向Drおよび周方向Dcは、互いに交差する方向、厳密にいえば互いに垂直な方向である。
【0015】
回転部材20は、金属で構成され、軸方向Daに厚みを有する平板状に形成されている。回転部材20は、ペダルの回転軸70に対し相対回転不能に連結されている。例えば、回転部材20は、回止めキー部材を介することで回転軸70に対し相対回転不能とされていてもよいし、回転軸70に対し溶接されることで相対回転不能とされていてもよい。
【0016】
回転部材20は、所定の回転軸心CLを中心に回転可能なように回転軸70を介して非回転部材に支持された回転体であり、ペダルおよび回転軸70と共に一体回転する。したがって、位置検出装置1は、回転部材20の回転位置を検出することでペダルの回転位置を検出することができる。すなわち、回転軸70の回転位置は、ペダルの回転位置でもあり、検出体としての回転部材20の回転位置でもある。本実施形態の位置検出装置1は、回転部材20の回転位置を検出することで、ペダルの回転位置を検出する。
【0017】
また、回転部材20は、ペダルの回転軸70に連結されているので、回転軸心CLまわりに一回転するのではなく、回転軸心CLまわりの所定の角度範囲内で、ペダルの踏込み操作に伴って往復運動する。例えば、本実施形態の回転部材20は、ペダルの踏込み操作が行われることによって、回転軸心CLまわりに0°から360°より小さい範囲である0°から24°までの角度範囲内で往復運動する。図1では、その往復運動での端位置における回転部材20の4つのターゲット22、23、24、25の外形の一部が二点鎖線で図示されている。
【0018】
図1に示すように、回転部材20は、連結部21と、4つのターゲット22、23、24、25とを有している。すなわち、回転部材20に含まれる4つのターゲット22、23、24、25は、回転軸心CLを中心に一体回転する。そして、ペダルの踏込み操作に伴って、4つのターゲット22、23、24、25は、共に、周方向Dcに往復移動する。
【0019】
例えば、回転部材20は、連結部21と4つのターゲット22、23、24、25とを含んだ単一の部品として構成されている。また、回転部材20は、軸方向Daの厚みが均一な平板状に形成されている。このため、4つのターゲット22~25の軸方向Daの厚みは、互いに同じ大きさになっている。なお、本実施形態の説明では、4つのターゲット22、23、24、25をまとめて、4つのターゲット22~25と称する場合がある。また、4つのターゲット22~25をそれぞれ第1ターゲット22、第2ターゲット23、第3ターゲット24、第4ターゲット25と称する場合がある。
【0020】
連結部21は、回転部材20の中で中央部分に配置され、回転軸心CLを中心とした円環形状を成している。連結部21の内側には、連結部21を軸方向Daに貫通した嵌入孔21aが形成されている。そして、嵌入孔21aには、回転軸70が、連結部21に対し相対回転不能となるように嵌入されている。すなわち、回転部材20は、この連結部21にて回転軸70に連結している。
【0021】
4つのターゲット22~25は、それぞれ、連結部21から径方向Drの外側に突き出るように形成されている。4つのターゲット22~25は、周方向Dcに等ピッチで並ぶように配置されている。具体的に、第1ターゲット22、第2ターゲット23、第3ターゲット24、第4ターゲット25は、周方向Dcにこの順に90度ピッチ間隔で並ぶように配置されている。そして、4つのターゲット22~25それぞれの周方向Dcの間隔は、第1受信コイル32の後述する第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bのどちらか一方を覆うことが可能に設定されている。また、4つのターゲット22~25それぞれの周方向Dcの間隔は、第2受信コイル33の後述する第2正渦巻部33aおよび第2反渦巻部33bのどちらか一方を、第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bの一方と同時に覆うことが可能に設定されている。
【0022】
第1ターゲット22は、第3ターゲット24に対し回転軸心CLを挟んだ反対側に配置されている。また、第2ターゲット23は、第4ターゲット25に対し回転軸心CLを挟んだ反対側に配置されている。そして、軸方向Daに沿う方向視で、4つのターゲット22~25は全体として、回転軸心CLを中心に点対称となるように配置されている。
【0023】
図3に示すように、第1ターゲット22は、軸方向Daの一方側に形成され、基板30に対向する第1対向面22aを有する。図2に示すように、第2ターゲット23は、軸方向Daの一方側に形成され、基板30に対向する第2対向面23aを有している。第3ターゲット24は、軸方向Daの一方側に形成され、基板30に対向する第3対向面24aを有する。第4ターゲット25は、軸方向Daの一方側に形成され、基板30に対向する第4対向面25aを有している。これらの第1対向面22a、第2対向面23a、第3対向面24aおよび第4対向面25aは、基板30の後述する他面30bに対し平行に形成されている。
【0024】
そして、図1に示すように、第1ターゲット22は、径方向Drの最も内側の部分から径方向Drにおける略中央の部分まで、径方向Drの外側に向かうほど周方向Dcの大きさが小さくなっている。そして、第1ターゲット22は、径方向Drの略中央の部分から径方向Drにおける最も外側の部分まで、径方向Drの外側に向かうほど周方向Dcの大きさが大きくなっている。したがって、第1ターゲット22の周方向Dcにおける一方側の端部および他方側の端部は、それぞれ軸方向Daに沿う方向視で曲線状に延伸している。
【0025】
また、第2ターゲット23、第3ターゲット24、および第4ターゲット25は、第1ターゲット22と同様の形状を成している。本実施形態では、4つのターゲット22~25は全て同一の形状を成している。
【0026】
したがって、第2ターゲット23の周方向Dcにおける一方側の端部および他方側の端部は、それぞれ軸方向Daに沿う方向視で曲線状に延伸している。また、第3ターゲット24の周方向Dcにおける一方側の端部および他方側の端部は、それぞれ軸方向Daに沿う方向視で曲線状に延伸している。そして、第4ターゲット25の周方向Dcにおける一方側の端部および他方側の端部は、それぞれ軸方向Daに沿う方向視で曲線状に延伸している。
【0027】
本実施形態では、上記したように4つのターゲット22~25は、全て同一の形状であり一体回転する。このため、4つのターゲット22~25の動作範囲は、周方向Dcに同じ長さとなる。ここで、第1ターゲット22の動作範囲を第1動作範囲W1、第2ターゲット23の動作範囲を第2動作範囲W2、第3ターゲット24の動作範囲を第3動作範囲W3、第4ターゲット25の動作範囲を第4動作範囲W4とする。
【0028】
第1動作範囲W1は、第1ターゲット22の往復移動に伴って第1ターゲット22が及ぶ周方向Dcの最大範囲である。このため、第1ターゲット22は、その第1動作範囲W1内で周方向Dcに往復移動する。また、第2動作範囲W2は、第2ターゲット23の往復移動に伴って第2ターゲット23が及ぶ周方向Dcの最大範囲である。このため、第2ターゲット23は、その第2動作範囲W2内で周方向Dcに往復移動する。第3動作範囲W3は、第3ターゲット24の往復移動に伴って第3ターゲット24が及ぶ周方向Dcの最大範囲である。このため、第3ターゲット24は、その第3動作範囲W3内で周方向Dcに往復移動する。第4動作範囲W4は、第4ターゲット25の往復移動に伴って第4ターゲット25が及ぶ周方向Dcの最大範囲である。このため、第4ターゲット25は、その第4動作範囲W4内で周方向Dcに往復移動する。
【0029】
基板30は、配線パターンが形成され不図示の電気部品が実装された多層のプリント基板である。具体的には、基板30は、絶縁膜と配線層とが交互に積層された多層基板とされている。そして、基板30には、特に図示していないが、例えば、抵抗体等の各種の電子部品も適宜配置されている。
【0030】
また、基板30は、軸方向Daに直交する平面状の一面30aと他面30bとを有している。すなわち、基板30の法線方向は軸方向Daに一致する。基板30の一面30aは、基板30のうち軸方向Daの一方側に設けられている。基板30の他面30bは、基板30のうち軸方向Daの一方側とは反対側の他方側に設けられている。
【0031】
基板30は、ペダルに対し回転しない非回転部材である。したがって、回転部材20は、基板30に対し相対回転する。
【0032】
基板30は、4つのターゲット22~25に対し軸方向Daの一方側に配置されている。そして、基板30の他面30bは、4つのターゲット22~25の第1対向面22a、第2対向面23a、第3対向面24aおよび第4対向面25aそれぞれに対し、軸方向Daに所定の間隔をあけて対向している。換言すれば、基板30は、回転部材20に対向する方向である対向方向において回転部材20に対して離隔した状態で回転部材20に対向して配置される。基板30と回転部材20との軸方向Daの所定の間隔は、基板30と4つのターゲット22~25のそれぞれとの間のいずれにおいても同じ大きさになっている。以下、基板30と回転部材20との軸方向Daの所定の間隔をギャップGとも呼ぶ。
【0033】
また、基板30は、回転軸心CLを中心とした円盤形状で形成されている。そして、基板30の中央には、基板30を軸方向Daに貫通した貫通孔30cが形成されている。この貫通孔30cには、回転軸70が挿通されている。
【0034】
図1図4図5に示すように、基板30は、配線パターンとして形成された1つの送信コイル31と、8つの第1受信コイル32と、8つの第2受信コイル33と、後述の信号処理回路40とを有している。位置検出装置1に設けられる1つの送信コイル31と、8つの第1受信コイル32と、8つの第2受信コイル33と、後述の信号処理回路40とは、単一の基板30に形成されている。また、1つの送信コイル31、8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33は、多層基板の各層に形成された配線層に形成されている。そして、各層に形成された1つの送信コイル31、8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33それぞれがビア34を介して適宜接続されている。
【0035】
これら1つの送信コイル31、8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33はそれぞれ、不図示の接続配線パターンを介して、基板30に実装されたICなどで構成される後述の信号処理回路40へ接続されている。基板30は、これら1つの送信コイル31、8つの第1受信コイル32、8つの第2受信コイル33および信号処理回路40が配置される配置部に対応する。
【0036】
送信コイル31は、複数回巻き回され円環状に形成されている。そして、送信コイル31は、軸方向Daに沿う方向視において、基板30が有する8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33を囲むように形成されている。別言すれば、軸方向Daに沿う方向視において、送信コイル31は、8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33の外側に配置されている。そして、送信コイル31の内側において、8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33は、周方向Dcに交互に並んで配置されている。
【0037】
本実施形態の8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33それぞれは、図4に示すように、主に渦巻形状となっている。そして、8つの第1受信コイル32それぞれは、第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bを有する。第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bは、8つの第1受信コイル32それぞれにおいて渦巻形状を形成する部分である。そして、8つの第1受信コイル32それぞれの第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bは、軸方向Daにおいて4つのターゲット22~25のいずれかに対向する。また、8つの第1受信コイル32は、それぞれの第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bを介して、それらが一筆書きにて電気的に接続されている。
【0038】
また、本実施形態の8つの第2受信コイル33それぞれは、第2正渦巻部33aおよび第2反渦巻部33bを有する。第2正渦巻部33aおよび第2反渦巻部33bは、8つの第2受信コイル33それぞれにおいて渦巻形状を形成する部分である。そして、8つの第2受信コイル33それぞれの第2正渦巻部33aおよび第2反渦巻部33bは、軸方向Daにおいて4つのターゲット22~25のいずれかに対向する。また、8つの第2受信コイル33は、それぞれの第2正渦巻部33aおよび第2反渦巻部33bを介して、それらが一筆書きにて電気的に接続されている。
【0039】
8つの第1受信コイル32それぞれの第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bは、それぞれの形状が同様である。このため、以下では、ターゲット22に対向する第1受信コイル32についてのみ、その詳細を説明し、残り3つのターゲット23~25に対向する第1受信コイル32の詳細な説明は省略する。
【0040】
また、8つの第2受信コイル33それぞれの第2正渦巻部33aおよび第2反渦巻部33bは、それぞれの形状が同様である。このため、以下では、ターゲット22に対向する第2受信コイル33についてのみ、その詳細を説明し、残り3つのターゲット23~25に対向する第2受信コイル33の詳細な説明は省略する。
【0041】
第1受信コイル32の第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bと、第2受信コイル33の第2正渦巻部33aおよび第2反渦巻部33bは、周方向Dcに沿って所定の間隔を空けて並んで形成されている。具体的には、第1正渦巻部32a、第2正渦巻部33a、第1反渦巻部32bおよび第2反渦巻部33bは、基板30の周方向Dcの一方側から他方側に向かってこの順に並んで形成されている。
【0042】
第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bは、径を変えながら四角形を描くように形成された渦巻状のパターン形状となっている。そして、第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bは、基板30の複数の配線層それぞれにおいてコイルが複数回ずつ同じ方向に巻かれている。基板30の複数の配線層それぞれに形成された第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bは、法線方向において重なるように形成されている。ただし、第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bは、コイルの巻き方向(すなわち、渦巻きの方向)が互いに逆方向となっている。例えば、第1正渦巻部32aは、法線方向に沿う方向視でコイルの巻き方向が時計回りになっている。これに対し、第1反渦巻部32bは、法線方向に沿う方向視でコイルの巻き方向が反時計回りになっている。
【0043】
第2正渦巻部33aおよび第2反渦巻部33bは、第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bと同様、径を変えながら四角形を描くように形成された渦巻状のパターン形状となっている。そして、第2正渦巻部33aおよび第2反渦巻部33bは、第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bと同様、基板30の複数の配線層それぞれにおいてコイルが複数回ずつ同じ方向に巻かれている。基板30の複数の配線層それぞれに形成された第2正渦巻部33aおよび第2反渦巻部33bは、法線方向において重なるように形成されている。ただし、第2正渦巻部33aおよび第2反渦巻部33bは、渦巻きの方向が互いに逆方向となっている。例えば、第2正渦巻部33aは、時計回りにコイルが巻かれている。これに対し、第2反渦巻部33bは、反時計回りにコイルが巻かれている。
【0044】
8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33のうち、第1ターゲット22に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33は、周方向Dcにおける第1ターゲット22の位置を検出するためのコイルである。
【0045】
そして、第1受信コイル32の第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bは、第1ターゲット22の第1動作範囲W1内のいずれかの位置で、第1ターゲット22に対し少なくとも一部が軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。また、第2受信コイル33の第2正渦巻部33aおよび第2反渦巻部33bは、第1ターゲット22の第1動作範囲W1内のいずれかの位置で、第1ターゲット22に対し少なくとも一部が軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。
【0046】
このため、8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33のうち、第1ターゲット22に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33は、第1ターゲット22の位置に応じた検出信号を出力する。第1ターゲット22に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33は、回転部材20の回転位置に応じた信号を出力する信号出力部として機能する。
【0047】
第1受信コイル32および第2受信コイル33が出力する検出信号は、例えば電圧値である。また、第1受信コイル32が出力する検出信号は、信号出力部として第1受信コイル32が出力する第1信号であって、例えば後述の図5に示された第1電圧値V1に該当する。また、第2受信コイル33が出力する検出信号は、信号出力部として機能する第2受信コイル33が出力する第2信号であって、例えば後述の図5に示された第2電圧値V2に該当する。
【0048】
また、第2ターゲット23に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33は、周方向Dcにおける第2ターゲット23の位置を検出するためのコイルである。このため、第2ターゲット23に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33は、第2ターゲット23の位置に応じた検出信号を出力する。
【0049】
そして、第3ターゲット24に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33は、周方向Dcにおける第3ターゲット24の位置を検出するためのコイルである。このため、第3ターゲット24に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33は、第3ターゲット24の位置に応じた検出信号を出力する。
【0050】
また、第4ターゲット25に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33は、周方向Dcにおける第4ターゲット25の位置を検出するためのコイルである。このため、第4ターゲット25に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33は、第4ターゲット25の位置に応じた検出信号を出力する。このため、第2ターゲット23、第3ターゲット24および第4ターゲット25それぞれに対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33は、それぞれが回転部材20の回転位置に応じた信号を出力する信号出力部として機能する。
【0051】
そして、図4に示すように、8つの第1受信コイル32の第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bと、8つの第2受信コイル33の第2正渦巻部33aおよび第2反渦巻部33bとは、回転軸心CLを中心とした円環形状を成すように周方向Dcに並んでいる。具体的には、8つの第1受信コイル32の第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bと、8つの第2受信コイル33の第2正渦巻部33aおよび第2反渦巻部33bとは、それぞれが回転軸心CLを中心として周方向Dcに20度ピッチで並んで配置されている。
【0052】
第1ターゲット22は、上述したとおり、第1動作範囲W1内で周方向Dcに往復移動する。そして、第1ターゲット22は、第2ターゲット23、第3ターゲット24および第4ターゲット25に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33とは軸方向Daに重ならないように構成されている。
【0053】
また、第2ターゲット23は、第2動作範囲W2内で周方向Dcに往復移動する。そして、第2ターゲット23は、第1ターゲット22、第3ターゲット24および第4ターゲット25に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33とは軸方向Daに重ならないように構成されている。
【0054】
そして、第3ターゲット24は、第3動作範囲W3内で周方向Dcに往復移動する。そして、第3ターゲット24は、第1ターゲット22、第2ターゲット23および第4ターゲット25に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33とは軸方向Daに重ならないように構成されている。
【0055】
また、第4ターゲット25は、第4動作範囲W4内で周方向Dcに往復移動する。そして、第4ターゲット25は、第1ターゲット22、第2ターゲット23および第3ターゲット24に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33とは軸方向Daに重ならないように構成されている。
【0056】
また、基板30には、図5に示すように、1つの送信コイル31、8つの第1受信コイル32、8つの第2受信コイル33および信号処理回路40のほかにも種々の電気部品が実装されている。例えば、基板30には、1つの送信コイル31、8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33を信号処理回路40に接続する接続配線35が形成されている。そして、信号処理回路40は、接続配線35を介してこれら1つの送信コイル31、8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33と接続されている。
【0057】
信号処理回路40は、CPUや、ROM、RAM、不揮発性RAM等の記憶部を備えたマイクロコンピュータ等を含んで構成されており、送信コイル31、第1受信コイル32および第2受信コイル33と接続されている。そして、信号処理回路40は、CPUがROM、または不揮発性RAMからプログラムを読み出して実行することで各種の制御作動を実現する。なお、ROM、または不揮発性RAMには、プログラムの実行の際に用いられる各種のデータ(例えば、初期値、ルックアップテーブル、マップ等)が予め格納されている。また、ROM等の記憶媒体は、非遷移的実体的記憶媒体である。CPUは、Central Processing Unitの略であり、ROMは、Read Only Memoryの略であり、RAMは、Random Access Memoryの略である。
【0058】
具体的には、信号処理回路40は、図5に示すように、1つの送信コイル31、8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33と接続されて所定の処理を行う信号処理部50を備えている。信号処理部50は、発振部51、復調部52、AD変換部53、角度算出部80、出力部57および電源部58を有している。なお、以下では、デジタル信号に変換して処理する例を代表例として説明するが、アナログ信号で処理する場合には、信号処理部50は、AD変換部53等を備えていなくてもよい。
【0059】
なお、本実施形態では、8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33それぞれが4つのターゲット22~25の位置に応じた電圧値を出力する。そして、8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33それぞれから信号処理部50に電圧値が出力された際に信号処理部50が実行する制御処理は同様である。
【0060】
このため、図5では、8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33のうち、第1ターゲット22に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33のみを記載している。そして、以下では、第1ターゲット22に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33が第1ターゲット22の位置に応じた電圧値を出力する際の第1電圧値V1および第2電圧値V2について説明する。第1電圧値V1は、第1ターゲット22の位置に応じて第1受信コイル32が出力する電圧値である。第2電圧値V2は、第1ターゲット22の位置に応じて第2受信コイル33が出力する電圧値である。
【0061】
まず、送信コイル31は、発振部51から所定の周波数の交流電流が印加される。これにより、送信コイル31には電磁誘導が生じる。すると、生じる電磁誘導によって、送信コイル31と、第1受信コイル32および第2受信コイル33とが誘導結合する。そして、第1受信コイル32の第1正渦巻部32aおよび第1反渦巻部32bの周囲と、第2受信コイル33の第2正渦巻部33aおよび第2反渦巻部33bの周囲とに、第1受信コイル32および第2受信コイル33を軸方向Daに通過する磁界が発生する。また、交流電流によって発生した磁界が変化するため、電磁誘導により、第1受信コイル32に発生する誘導起電力である第1電圧値V1および第2受信コイル33に発生する誘導起電力である第2電圧値V2が変化する。
【0062】
そして、第1ターゲット22が第1受信コイル32および第2受信コイル33と対向すると、電磁誘導によって第1ターゲット22に誘導電流である渦電流が発生すると共に渦電流に起因する磁界が発生する。このため、第1受信コイル32および第2受信コイル33を通過する軸方向Daの磁界のうち、第1ターゲット22と対向する部分を通過する磁界は、渦電流を起因とする磁界によって相殺される。これにより、第1受信コイル32に発生する第1電圧値V1および第2受信コイル33に発生する第2電圧値V2が変化する。
【0063】
そして、回転部材20の回転に伴って第1受信コイル32および第2受信コイル33における第1ターゲット22と対向する面積が変化する。すると、第1受信コイル32および第2受信コイル33を通過する軸方向Daの磁界のうちの第1ターゲット22に対向する部分の大きさが周期的に変化する。このように、本実施形態の回転部材20は、自身の回転位置に応じて第1受信コイル32に発生する第1電圧値V1および第2受信コイル33に発生する第2電圧値V2を変化させる。
【0064】
このため、図6に示すように、回転部材20の回転位置が変更する伴い、第1受信コイル32に発生する第1電圧値V1および第2受信コイル33に発生する第2電圧値V2は、周期的に変化する。
【0065】
そして、例えば、第1ターゲット22が第1受信コイル32における第1正渦巻部32aに比較して第1反渦巻部32bに対向する部分が大きい場合、第1電圧値V1は、正弦波状の第1電圧値V1のうち振幅の中央よりもプラス側の電圧値となる。また、例えば、第1ターゲット22が第1受信コイル32における第1反渦巻部32bに比較して第1正渦巻部32aに対向する部分が大きい場合、正弦波状の第1電圧値V1のうち振幅の中央よりもマイナス側の電圧値を出力する。
【0066】
そして、例えば、第1ターゲット22が第2受信コイル33における第2正渦巻部33aに比較して第2反渦巻部33bに対向する部分が大きい場合、第2電圧値V2は、余弦波状の第2電圧値V2のうち振幅の中央よりもプラス側の電圧値となる。また、例えば、第1ターゲット22が第2受信コイル33における第2反渦巻部33bに比較して第2正渦巻部33aに対向する部分が大きい場合、余弦波状の第2電圧値V2のうち振幅の中央よりもマイナス側の電圧値を出力する。
【0067】
そして、第1受信コイル32および第2受信コイル33は、第1電圧値V1の波形と第2電圧値V2の波形とが電気角で90°異なるように形成されている。このため、本実施形態では、第1受信コイル32に発生する第1電圧値V1は、第1ターゲット22の回転位置に応じた正弦波状となる。また、第2受信コイル33に発生する第2電圧値V2は、第1電圧値V1と位相が異なる波状であって、第1ターゲット22の回転位置に応じた余弦波状となる。
【0068】
なお、本実施形態の基板30は、8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33が回転軸心CLを中心とした円環形状を成すように周方向Dcに並んでいる。そして、仮に回転部材20が360°回転可能であった場合、回転部材20が1周する間に、8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33それぞれの前を4つのターゲット22~25が通過することとなる。
【0069】
このような構成となっている位置検出装置1は、基板30の第1受信コイル32および第2受信コイル33が4極構成となっている。そして、4極構成となっている第1受信コイル32および第2受信コイル33は、回転部材20が1周する間に8つの第1受信コイル32および8つの第2受信コイル33それぞれが出力する電圧値は、正負に4回変化する。すなわち、回転部材20の回転角である機械角が0°~360°の範囲で1周する間に、第1受信コイル32および第2受信コイル33の電気角は0°~360°の範囲で4周する。換言すれば、電気角の1周、すなわち、0°~360°の回転範囲は、機械角の0°~90°の回転範囲に相当する。
【0070】
続いて、信号処理部50の作動について説明する。信号処理部50は、第1受信コイル32が出力する第1電圧値V1および第2受信コイル33が出力する第2電圧値V2に基づいて、回転部材20の回転位置を算出する算出部である。すなわち、信号処理部50は、検出体である回転部材20の位置としての検出体位置を算出する算出部である。
【0071】
発振部51は、図5に示されるように、送信コイル31の両端と接続されており、所定の周波数の交流電流を印加する。なお、送信コイル31の両端と発振部51との間には、2つのコンデンサ36、37が直列に接続されていると共に、2つのコンデンサ36、37同士を接続する部分がグランドに接続されている。そして、送信コイル31は、第1受信コイル32および第2受信コイル33を通過する軸方向Daの磁界を発生させる。但し、送信コイル31と発振部51との接続の仕方は適宜変更可能であり、例えば、送信コイル31の両端と発振部51との間に1つのコンデンサを配置するようにしてもよい。
【0072】
復調部52は、第1受信コイル32の両端および第2受信コイル33の両端と接続されている。そして、復調部52は、第1受信コイル32の第1電圧値V1を復調した第1復調信号VD1を生成すると共に、第2受信コイル33の第2電圧値V2を復調した第2復調信号VD2を生成する。
【0073】
AD変換部53は、復調部52および角度算出部80と接続されている。そして、AD変換部53は、第1復調信号VD1をAD変換した第1変換信号Siおよび第2復調信号VD2をAD変換した第2変換信号Coを角度算出部80に出力する。
【0074】
ところで、第1受信コイル32および第2受信コイル33を通過する軸方向Daの磁界は、回転部材20と基板30とのギャップGの大きさに基づいて磁束が変化する。このため、第1受信コイル32および第2受信コイル33を軸方向Daに通過する磁界に起因する第1受信コイル32に発生する第1電圧値V1および第2受信コイル33に発生する第2電圧値V2は、回転部材20と基板30とのギャップGに基づいて変化する。
【0075】
したがって、第1受信コイル32の第1電圧値V1に基づく第1変換信号Siおよび第2受信コイル33の第2電圧値V2に基づく第2変換信号Coは、図6に示されるように、ギャップGに応じて、その振幅が変化する。具体的には、第1電圧値V1に基づく第1変換信号Siおよび第2電圧値V2に基づく第2変換信号Coは、ギャップGが長くなるほど振幅が小さくなり、ギャップGが短くなるほど振幅が大きくなる。
【0076】
ここで、図6において、回転部材20の回転範囲が機械角0°~90°であって、第1受信コイル32および第2受信コイル33の電気角が0°から360°であった場合のギャップGに応じた第1変換信号Siおよび第2変換信号Coの振幅の変化の一例を示す。具体的には、実線aは、ギャップGを2mmに設定した場合の第1変換信号Siを示す。実線bは、ギャップGを2.5mmに設定した場合の第1変換信号Siを示す。実線cは、ギャップGを3mmに設定した場合の第1変換信号Siを示す。実線dは、ギャップGを3.5mmに設定した場合の第1変換信号Siを示す。実線eは、ギャップGを4mmに設定した場合の第1変換信号Siを示す。
【0077】
また、図6の実線fは、ギャップGを2mmに設定した場合の第2変換信号Coを示す。実線gは、ギャップGを2.5mmに設定した場合の第2変換信号Coを示す。実線hは、ギャップGを3mmに設定した場合の第2変換信号Coを示す。実線iは、ギャップGを3.5mmに設定した場合の第2変換信号Coを示す。実線jは、ギャップGを4mmに設定した場合の第2変換信号Coを示す。
【0078】
なお、上記実線a、実線b、実線c、実線d、実線e、実線f、実線g、実線h、実線i、実線jの説明は後述の図8においても同様である。
【0079】
このように、第1電圧値V1に基づく第1変換信号Siおよび第2電圧値V2に基づく第2変換信号Coは、ギャップGに応じて振幅が変化する。また、具体的には後述するが、位置算出部55が回転角度θを算出する場合、位置算出部55は、第1電圧値V1に基づく第1変換信号Siおよび第2電圧値V2に基づく第2変換信号Coに基づいて回転角度θを算出する。このため、回転軸70に回転部材20および基板30を組付ける際に、ギャップGを予め設定した設計値とすることが望ましい。これにより、位置算出部55によって角度算出を行う際に、ギャップGに応じた振幅の大きさを考慮して回転角度θを算出させることができる。
【0080】
しかし、回転部材20と基板30とのギャップGは、回転軸70に回転部材20および基板30を組付ける際の組付け誤差や製造誤差によって、設計値からずれる場合がある。例えば、ギャップGの設計値が3mmであった場合であっても、回転軸70に回転部材20および基板30を組付ける際の組付け誤差や製造誤差によって、実際のギャップGが3mmから2mmや4mmへずれることがある。そして、ギャップGが設計値からずれることで第1変換信号Siおよび第2変換信号Coの振幅が変化すると、位置算出部55が第1変換信号Siおよび第2変換信号Coに基づいて回転角度θを算出する際の算出結果に対する誤差が生じる要因となる。
【0081】
また、第1電圧値V1に基づく第1変換信号Siは、正弦波状となるところ、ギャップGに応じて、正弦波状である第1変換信号Siのゲイン、オフセット、位相が変化する。これにより、第1電圧値V1に基づく第1変換信号Siは、ギャップGに応じて理想的な正弦波状から歪む場合がある。この場合、第1電圧値V1に基づく第1変換信号Siが示す形状は、理想的な正弦波の形状に対して歪んだ正弦波状となる。換言すれば、第1電圧値V1は、歪みを含む正弦波状となる。
【0082】
また、第2電圧値V2に基づく第2変換信号Coは、余弦波状となるところ、ギャップGに応じて、余弦波状である第2変換信号Coのゲイン、オフセット、位相が変化する。これにより、第2電圧値V2に基づく第2変換信号Coは、ギャップGに応じて理想的な正弦波状から歪む場合がある。この場合、第2電圧値V2に基づく第2変換信号Coが示す形状は、理想的な余弦波の形状に対して歪んだ余弦波状となる。換言すれば、第2電圧値V2は、歪みを含む余弦波状となる。
【0083】
このような理想的な正弦波状からの第1変換信号Siの歪みや理想的な余弦波状からの第2変換信号Coの歪みも、位置算出部55が回転角度θを算出する際の算出結果に対する誤差が生じる要因となる。
【0084】
このため、角度算出部80は、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを用いて回転角度θを算出する際に用いられるゲイン(G)、オフセット(O)、位相(P)それぞれを補正して第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを補正する。そして、角度算出部80は、補正した第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを用いて逆正接(すなわち、アークタンジェント)関数を演算して角度算出を行うための後述するtanθを導出し、導出したtanθに基づいて回転部材20の位置を算出する。本実施形態の角度算出部80は、例えば、図7に示すように、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを補正するGOP補正部54と、回転角度θを算出する位置算出部55と、位置算出部55が算出した回転角度θを補正する区間補正部56を含む。
【0085】
本実施形態の信号処理部50は、GOP補正部54、位置算出部55、区間補正部56として機能可能に構成されている。なお、信号処理部50は、GOP補正部54、位置算出部55および区間補正部56の機能を発揮可能な1つの回路モジュールを有する構成であってもよい。または、信号処理部50は、GOP補正部54、位置算出部55、区間補正部56に1対1に対応する複数の回路モジュールを備えて構成されていてもよい。
【0086】
GOP補正部54は、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coそれぞれに対するゲイン用補正項、オフセット用補正項、位相用補正項のうち、少なくとも1つの補正項を用いて第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを補正する。そして、補正した第1変換信号Siおよび第2変換信号Coと、下記数式1とを用いてtanθを導出する。このように第1補正項および第2補正項を用いて第1変換信号Siに変換した第1電圧値V1および第2変換信号Coに変換した第2電圧値V2を補正するGOP補正部54は、信号補正部として機能する。換言すれば、GOP補正部54は、第1電圧値V1に基づく第1変換信号Siおよび第2電圧値V2に基づく第2変換信号Coを補正する。
【0087】
(数1)
なお、上記数式1において、A1が第1変換信号Siのゲインを補正するゲイン用補正項であり、A2が第2変換信号Coのゲインを補正するゲイン用補正項である。また、上記数式1において、B1が第1変換信号Siのオフセットを補正するオフセット用補正項であり、B2が第2変換信号Coのオフセットを補正するオフセット用補正項である。そして、上記数式1において、Cが第1変換信号Siおよび第2変換信号Coそれぞれの位相を補正する位相用補正項である。数式1に示すように、数式1は、正弦波状の第1電圧値V1に基づく第1変換信号Siと、余弦形状の第2電圧値V2に基づく第2変換信号Coに基づくものである。
【0088】
以下、第1変換信号Siのゲインを補正するゲイン用補正項を第1ゲイン用補正項、第1変換信号Siのオフセットを補正するオフセット用補正項を第1オフセット用補正項とも呼ぶ。また、第2変換信号Coのゲインを補正するゲイン用補正項を第2ゲイン用補正項、第2変換信号Coのオフセットを補正するオフセット用補正項を第2オフセット用補正項とも呼ぶ。そして、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coそれぞれの位相を補正する位相用補正項を単に位相用補正項とも呼ぶ。
【0089】
また、本実施形態では、第1ゲイン用補正項および第1オフセット用補正項が第1補正項に対応し、第2ゲイン用補正項および第2オフセット用補正項が第2補正項に対応する。そして、以下において、第1ゲイン用補正項および第1オフセット用補正項を単に第1補正項と呼び、第2ゲイン用補正項および第2オフセット用補正項を呼ぶ場合がある。
【0090】
これら第1補正項、第2補正項および位相用補正項は、例えば、予め回転軸70に回転部材20および基板30を組付けた状態で得られる第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを、例えば、位置検出装置1とは別の外部装置に取り込むことで求めることができる。外部装置は、CPUや、ROM、RAM、不揮発性RAM等の記憶部や、入出力インタフェースを備えたマイクロコンピュータ等で構成されてもよい。この場合、外部装置は、ROM等に記憶された制御プログラムと、入力される第1変換信号Siおよび第2変換信号Coとに基づいて、第1補正項、第2補正項および位相用補正項を導出することができる。
【0091】
外部装置は、導出した第1補正項、第2補正項および位相用補正項の情報をGOP補正部54に送信することでGOP補正部54に記憶させる。これにより、GOP補正部54は、AD変換部53が出力する第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを受信すると、記憶された第1補正項、第2補正項および位相用補正項を用いて、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを補正する。そして、GOP補正部54は、数式1によって、位置算出部55が角度算出を行うためのtanθを導出する。
【0092】
ここで、本実施形態のGOP補正部54は、第1ゲイン用補正項、第1オフセット用補正項、第2ゲイン用補正項、第2オフセット用補正項および位相用補正項のうち、第1ゲイン用補正項、第1オフセット用補正項、第2ゲイン用補正項および第2オフセット用補正項を用いて第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを補正する。このため、本実施形態のGOP補正部54は、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coそれぞれの位相を補正しない。したがって、本実施形態のGOP補正部54は、位相用補正項であるCに1が代入された数式1を用いてtanθを導出する。
【0093】
ここで、第1ゲイン用補正項、第1オフセット用補正項、第2ゲイン用補正項および第2オフセット用補正項の導出方法について説明する。第1ゲイン用補正項および第1オフセット用補正項は、第1変換信号Siが図8に示すような理想的な正弦波状に近付くように導出される。また、第2ゲイン用補正項および第2オフセット用補正項は、第2変換信号Coが図8に示すような理想的な余弦波状に近付くように導出される。さらに、第1ゲイン用補正項、第1オフセット用補正項、第2ゲイン用補正項および第2オフセット用補正項は、ギャップGが設計値である場合の誤差と、ギャップGが設計値から外れた場合の誤差との差がそれぞれ小さくなるように導出される。
【0094】
ここで、第1変換信号Siが図6に示すような正弦波状であって、第2変換信号Coが図6に示すような余弦波状であったとする。図6に示す第1変換信号Siは、理想的な正弦波の形状に対して歪みを含むとともに、不図示の周波数成分が重畳した正弦波状である。また、図6に示す第2変換信号Coは、理想的な余弦波の形状に対して歪みを含むとともに、不図示の周波数成分が重畳した余弦波状である。
【0095】
このような場合に、第1ゲイン用補正項および第1オフセット用補正項は、第1変換信号Siが理想的な正弦波状に近付くように導出される。また、第2ゲイン用補正項および第2オフセット用補正項は、第2変換信号Coが理想的な余弦波状に近付くように導出される。
【0096】
ところで、本実施形態の位置検出装置1は、回転軸心CLまわりの所定の角度範囲内で往復運動するペダルの回転位置を検出するために用いられている。具体的に、本実施形態の位置検出装置1は、ペダルの踏込み操作が行われることによって、回転軸心CLまわりに0°から24°までの角度範囲内で往復運動する回転部材20の回転位置を検出する。この場合、位置検出装置1が検出する回転部材20の検出範囲は、0°から24°までである。
【0097】
このため、0°から24°までの検出範囲を検出する位置検出装置1では、検出範囲外における回転位置の誤差を小さくするように第1ゲイン用補正項、第1オフセット用補正項、第2ゲイン用補正項および第2オフセット用補正項を導出する必要が無い。換言すれば、0°から24°までの検出範囲を検出する位置検出装置1は、検出範囲内における回転位置の誤差が小さくなるように第1ゲイン用補正項、第1オフセット用補正項、第2ゲイン用補正項および第2オフセット用補正項を導出すればよい。
【0098】
このため、本実施形態では、第1ゲイン用補正項および第1オフセット用補正項は、検出範囲である0°から24°までの角度範囲内において、第1変換信号Siが理想的な正弦波状に近づくように導出される。また、第2ゲイン用補正項および第2オフセット用補正項は、検出範囲である0°から24°までの角度範囲内において、第2変換信号Coが理想的な余弦波状に近づくように導出される。
【0099】
このように、位置検出装置1が検出する角度範囲に限定して第1補正項および第2補正項を導出したとする。そして、導出した第1補正項および第2補正項を用いて回転部材20の回転角度である機械角を求めたとする。すると、回転部材20の回転角度と第1受信コイル32の電気角との関係は図9のようになる。具体的に、回転部材20の回転角度(すなわち、機械角)は、第1受信コイル32の電気角に比例する。そして、ギャップGに関わらず、回転部材20の機械角と第1受信コイル32の電気角との相対関係は略同じになる。
【0100】
これによれば、回転角度は、ギャップGの大きさにかかわらず、図10に示すように、24°より大きい角度範囲内における誤差より0°から24°までの角度範囲内における誤差を比較的小さくできる。
【0101】
なお、図10に示す実線Aは、回転軸70に回転部材20および基板30を組付ける際のギャップGの設計値が3mmに設定された場合において、実際のギャップGが2mmに設定された場合の回転角度の誤差を示す。また、実線Bは、ギャップGの設計値が3mmに設定された場合において、実際のギャップGが2.5mmに設定された場合の回転角度の誤差を示す。また、実線Cは、ギャップGの設計値が3mmに設定された場合において、実際のギャップGが設計値である3mmに設定された場合の回転角度の誤差を示す。また、実線Dは、ギャップGの設計値が3mmに設定された場合において、実際のギャップGが3.5mmに設定された場合の回転角度の誤差を示す。また、実線Eは、ギャップGの設計値が3mmに設定された場合において、実際のギャップGが4mmに設定された場合の回転角度の誤差を示す。回転角の誤差は、ギャップGが長くなるほど振幅が小さくなり、ギャップGが短くなるほど振幅が大きくなる。
【0102】
ただし、図10に示すように、ギャップGが設計値から外れた場合の誤差は、ギャップGが設計値である場合の誤差に比較して大きくなっている。ここで、設計値とは、回転軸70に回転部材20および基板30を組付ける際の基準となるギャップGの大きさである。このため、ギャップGの大きさが基準ギャップから外れた大きさである2mm、2.5mm、3.5mm、4mmである場合の誤差は、基準ギャップとなる3mmである場合の誤差に比較して大きくなっている。したがって、ギャップGが設計値である場合の誤差と、ギャップGが設計値から外れた場合の誤差との差がそれぞれ小さくなるように第1補正項および第2補正項が導出される。
【0103】
以下では設計値から外れたこれらギャップGのうち、基準ギャップより回転部材20と基板30との間隔が小さい2mmおよび2.5mmのギャップGを近ギャップとする。また、設計値から外れたこれらギャップGのうち、基準ギャップより回転部材20と基板30との間隔が大きい3.5mm、4mmのギャップGを遠ギャップとする。
【0104】
そして、近ギャップである2mmおよび2.5mmのうちの最も基準ギャップから離れたギャップGの大きさと、遠ギャップである3.5mmおよび4mmのうちの最も基準ギャップから離れたギャップGとの中心である3mmに基準ギャップが設定されている。
【0105】
そして、図10に示すギャップGが3mmである場合の誤差を基準誤差、ギャップGが2mm、2.5mm、3.5mm、4mmそれぞれの場合の誤差を基準外誤差とする。
【0106】
第1補正項および第2補正項は、0°から24°までの角度範囲内における機械角毎の基準誤差および基準外誤差がそれぞれ0に近づくように導出される。本実施形態の第1補正項および第2補正項は、基準誤差を基準として、基準誤差と4つの基準外誤差それぞれとの差が小さくなるように導出される。具体的に、第1ゲイン用補正項および第1オフセット用補正項は、0°から24°までの角度範囲内における機械角毎の基準誤差から4つの基準外誤差それぞれを減算して得られる値の絶対値が小さくなるように導出される。また、第2ゲイン用補正項および第2オフセット用補正項は、0°から24°までの角度範囲内における機械角毎の基準誤差から4つの基準外誤差それぞれを減算して得られる値の絶対値が小さくなるように導出される。
【0107】
このように、ギャップGが設計値である場合の誤差と、ギャップGが設計値から外れた場合の誤差との差がそれぞれ小さくなるように第1補正項および第2補正項を導出し、回転部材20の回転角度である機械角を求めたとする。すると、図11に示すように、ギャップGが設計値である場合も、ギャップGが設計値から外れる場合であっても、位置算出部55が算出する回転角度θの機械角毎の誤差を小さくすることができる。
【0108】
このように、ギャップGが設計値である場合の誤差と、ギャップGが設計値から外れた場合の誤差との差がそれぞれ小さくなるように第1補正項および第2補正項を導出する理由について説明する。
【0109】
上述したように、第1受信コイル32および第2受信コイル33を通過する軸方向Daの磁界では、回転部材20と基板30とのギャップGの大きさに基づいて磁束が変化する。このため、第1受信コイル32に発生する第1電圧値V1および第2受信コイル33に発生する第2電圧値V2は、回転部材20と基板30とのギャップGに基づいて変化する。したがって、第1電圧値V1に基づく第1変換信号Siおよび第2電圧値V2に基づく第2変換信号Coそれぞれの振幅及びオフセットは、ギャップGに応じて変化する。そして、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coそれぞれの振幅の変化およびオフセットの変化は、位置算出部55が算出する回転角度θに誤差を発生させる要因となる。
【0110】
発明者らの鋭意検討によれば、図12に示すように、ギャップGに応じて変化する第1変換信号Siおよび第2変換信号Coそれぞれのオフセットには、振幅の変化によらないオフセット成分と、振幅の変化に応じて変化するオフセット成分とを含むことが判った。具体的には、振幅の変化によらないオフセット成分は、振幅の変化に応じて変化するオフセット成分に比較してギャップGの変化に伴う変化量が少ないことが判った。例えば、図12に示す一例では、振幅の変化によらないオフセット成分は、ギャップGの大きさによらず、その大きさがほとんど変化せず、略一定であった。このような振幅の変化によらないオフセット成分は、例えば、基板30における送信コイル31、第1受信コイル32および第2受信コイル33とは異なる配線パターンなどがコイル成分を有すること等に起因するものである。
【0111】
これに対して、振幅の変化に応じて変化するオフセット成分は、ギャップGが小さいほど大きくなり、ギャップGが大きいほど小さくなる。換言すれば、振幅の変化に応じて変化するオフセット成分は、ギャップGが近ギャップである場合、ギャップGが遠ギャップである場合に比較して大きくなる。本実施形態では、振幅の変化に応じて変化するオフセット成分は、ギャップGが小さくなるにしたがい、その大きさが比例的に小さくなった。
【0112】
なお、図12では、振幅の変化によらないオフセット成分を白抜きで示し、振幅の変化に応じて変化するオフセット成分をハッチングで示す。以下、第1変換信号Siのオフセットのうち、第1変換信号Siの振幅の変化によらないオフセット成分を第1定量オフセット、第1変換信号Siの振幅の変化に応じて信号の大きさが変化するオフセット成分を第1可変オフセットとも呼ぶ。また、第2変換信号Coのオフセットのうち第2変換信号Coの振幅の変化によらないオフセット成分を第2定量オフセット、第2変換信号Coの振幅の変化に応じて信号の大きさが変化するオフセット成分を第2可変オフセットとも呼ぶ。
【0113】
なお、第1定量オフセットは、第1変換信号Siの振幅の変化によってその大きさがほとんど変化しないものの、必ずしも一定であることを意味するものではない。また、第2定量オフセットは、第2変換信号Coの振幅の変化によってその大きさがほとんど変化しないものの、必ずしも一定であることを意味するものではない。
【0114】
ところで、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coそれぞれの振幅は、ギャップGが小さいほど大きくなり、ギャップGが大きいほど小さくなる。このため、ギャップGが大きくなるほど、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coのオフセットの変化の影響が大きくなる。
【0115】
また、上述したように、第1変換信号Siは、周波数成分が重畳した正弦波状である。第2変換信号Coは、周波数成分が重畳した余弦波状である。発明者らのさらなる鋭意検討によれば、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coに重畳する周波数成分には0次成分、1次成分に加えて高次成分が含まれるところ、ギャップGに応じて、周波数成分に含まれるこれらの成分が異なることが判った。具体的には、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coに重畳する高次成分は、ギャップGが小さいほど高次成分の周波数成分が多くなり、ギャップGが大きいほど高次成分の周波数成分が少なくなる傾向があることが判った。
【0116】
例えば、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coに重畳する高次成分は、ギャップGが近ギャップである場合、ギャップGが遠ギャップである場合に比較して2次以上の高次成分が多くなる。また、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coに重畳する高次成分は、ギャップGが近ギャップである場合、ギャップGが遠ギャップである場合に比較して1次以下の成分が少なくなり、ギャップGの大きさが小さいほど、0次成分の成分が少なくなる。
【0117】
これに対して、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coに重畳する高次成分は、ギャップGが遠ギャップである場合、ギャップGが近ギャップである場合に比較して0次成分が多く含まれる。また、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coに重畳する高次成分は、ギャップGが遠ギャップである場合、他の成分に比較して0次成分が多く含まれる。第1変換信号Siに重畳する0次成分は、第1定量オフセットおよび第1可変オフセットに起因するものである。また、第2変換信号Coに重畳する0次成分は、第2定量オフセットおよび第2可変オフセットに起因するものである。
【0118】
このようなことは、発明者らが回転部材20と基板30とのギャップGの設定値を様々に変化させて、各ギャップGの設定値における第1変換信号Siおよび第2変換信号CoそれぞれをFFT解析することによって見出された。
【0119】
ところで、位置算出部55は、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを用いて逆正接関数を演算してアークタンジェント変換することで回転角度θを算出する。このため、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coに重畳する周波数成分は、位置算出部55が算出する回転角度θの算出結果に誤差を生じさせる要因となる。そして、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coに重畳する周波数成分は、アークタンジェント変換されることで、アークタンジェント変換される前に比較して各成分の次数がそれぞれ1つ大きくなる。
【0120】
例えば、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coに重畳する2次成分は、アークタンジェント変換することで3次成分となる。また、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coに重畳する0次成分は、アークタンジェント変換することで1次成分となる。
【0121】
このため、ギャップGが1次以下の成分に比較して2次以上の高次成分が大きく含まれる近ギャップの場合、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coをアークタンジェント変換して算出する回転角度θには、3次以上の高次成分の誤差が含まれることとなる。ただし、ギャップGが近ギャップの場合の第1変換信号Siおよび第2変換信号Coは、ギャップGが遠ギャップである場合に比較して1次以下の成分が少ない。このため、ギャップGが近ギャップの場合の回転角度θの誤差には、ギャップGが遠ギャップである場合に比較して2次以下の成分があまり含まれない。この場合、位置算出部55が算出する0°から24°までの角度範囲内における回転角度θには、全角度範囲内において3次以上の高次成分の誤差が重畳する。
【0122】
これに対して、ギャップGが他の成分に比較して0次成分が大きく含まれる遠ギャップの場合、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coをアークタンジェント変換して算出する回転角度θには、1次成分の誤差が多く含まれることとなる。この場合、位置算出部55が算出する0°から24°までの角度範囲内における回転角度θには、算出する回転角度θが大きくなるほど比例的に大きくなる誤差が重畳する。
【0123】
このように、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coに周波数成分が重畳する場合、高次成分の周波数成分より0次成分の方が回転角度θの算出結果に与える影響が大きくなる。そして、第1変換信号Siに重畳する0次成分は、第1定量オフセットおよび第1可変オフセットに起因するものである。また、第2変換信号Coに重畳する0次成分は、第2定量オフセットおよび第2可変オフセットに起因するものである。このため、ギャップGが大きくなるほど、これら第1変換信号Siおよび第2変換信号Coそれぞれのオフセット成分の影響が大きくなる。
【0124】
本実施形態では、GOP補正部54は、ギャップGが設計値である場合の誤差と、ギャップGが遠ギャップである場合の誤差との差が小さくなるように第1補正項および第2補正項を導出する。具体的に、GOP補正部54は、ギャップGが遠ギャップである場合における位置算出部55が第1変換信号Siおよび第2変換信号Coをアークタンジェント変換して得られる1次成分が、ギャップGが近ギャップである場合における位置算出部55が第1変換信号Siおよび第2変換信号Coをアークタンジェント変換して得られる1次成分に近づくように第1オフセット用補正項および第2オフセット用補正項を導出する。
【0125】
さらに、GOP補正部54は、第1定量オフセットを調整することによって、第1変換信号Siの振幅の変化量と第1変換信号Siの振幅の変化量に基づく第1変換信号Siのオフセットの変化量との関係が比例関係となるように第1オフセット用補正項を導出する。換言すれば、第1定量オフセットを調整後の第1変換信号Siのオフセットが、第1変換信号Siの振幅が小さくなるに比例して直線的に小さくなるように第1オフセット用補正項を導出する。
【0126】
例えば、本実施形態のように、第1変換信号Siの振幅が小さくなるに比例して第1可変オフセットが直線的に小さくなる場合、GOP補正部54は、オフセットのうちの第1定量オフセット分の除去を可能とする第1オフセット用補正項を導出してもよい。これにより、第1変換信号Siの振幅の変化量と第1変換信号Siの振幅の変化量に基づく第1変換信号Siのオフセットの変化量との関係を、比例定数が負の値である比例関係とすることができる。そしてこれにより、GOP補正部54がオフセット調整した第1変換信号Siには、第1変換信号Siの振幅の変化量に応じて比例的に変化するオフセットが残存することとなる。
【0127】
また、GOP補正部54は、第2定量オフセットを調整することによって、第2変換信号Coの振幅の変化量と第2変換信号Coの振幅の変化量に基づく第2変換信号Coのオフセットの変化量との関係が比例関係となるように第2オフセット用補正項を導出する。換言すれば、第2定量オフセットを調整後の第2変換信号Coのオフセットが、第2変換信号Coの振幅が小さくなるに比例して直線的に小さくなるように第2オフセット用補正項を導出する。
【0128】
例えば、本実施形態のように、第2変換信号Coの振幅が小さくなるに比例して第2可変オフセットが直線的に小さくなる場合、GOP補正部54は、オフセットのうちの第2定量オフセット分の除去を可能とする第2オフセット用補正項を導出してもよい。これにより、第2変換信号Coの振幅の変化量と第2変換信号Coの振幅の変化量に基づく第2変換信号Coのオフセットの変化量との関係を、比例定数が負の値である比例関係とすることができる。そしてこれにより、GOP補正部54がオフセット調整した第2変換信号Coには、第2変換信号Coの振幅の変化量に応じて比例的に変化するオフセットが残存することとなる。
【0129】
このように、第1変換信号Siに残存する第1変換信号Siの振幅の変化量に応じて比例的に変化するオフセットは、第1変換信号Siに重畳する周波数成分のうち0次成分の発生要因となるものである。また、第2変換信号Coに残存する第2変換信号Coの振幅の変化量に応じて比例的に変化するオフセットは、第2変換信号Coに重畳する周波数成分のうち0次成分の発生要因となるものである。そして、オフセット調整後の第1変換信号Siおよび第2変換信号Coそれぞれに残存するこれらオフセットは、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを用いてアークタンジェント変換することで1次成分となるものである。
【0130】
オフセット調整後の第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを用いてアークタンジェント変換することで得られる回転角度θに残存する1次成分は、後述の区間補正部56が実行する処理によって除去することができる。
【0131】
上記したように第1補正項および第2補正項を導出することで、ギャップGが設計値である場合の誤差と、ギャップGが近ギャップである場合の誤差との差を小さくすることができる。また、振幅の変化によらないオフセット成分の影響を小さくすることができる。
【0132】
なお、基準誤差および基準外誤差がそれぞれ0に近づくように第1補正項および第2補正項を導出する方法は、上記に限定されない。
【0133】
例えば、第1補正項および第2補正項を導出する方法は、機械角毎の基準誤差の絶対値と基準外誤差の絶対値との和が最小値となるように導出してもよい。また、第1補正項および第2補正項を導出する方法は、最小二乗法を用いて導出してもよい。最小二乗法による導出方法によれば、第1電圧値V1および第2電圧値V2にノイズが重畳する場合であっても、ノイズの影響を低減可能な第1補正項および第2補正項を導出することができる。
【0134】
そして、このように導出される第1補正項および第2補正項を用いてGOP補正部54は、ギャップGが設計値である場合の誤差と、ギャップGが設計値から外れた場合の誤差がそれぞれ0に近づくように第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを補正する。そして、GOP補正部54は、数式1を用いてtanθを導出する。GOP補正部54は、導出したtanθの情報を位置算出部55に送信する。
【0135】
なお、本実施形態に示す一例では、図11に示すように、機械角が0°から24°の角度範囲において、0°、12°および21°である際に、基準誤差が0となっている。そして、基準誤差は、機械角が0°から12°の範囲および21°から24°までの範囲において0より大きいプラス側となっており、機械角が12°から21°までの範囲において0より小さいマイナス側となっている。すなわち、基準誤差は、機械角が0°から24°までの角度範囲において、プラス側とマイナス側とに交互に変化する波形状となっている。
【0136】
また、ギャップGが近ギャップである2mmおよび2.5mmである場合の基準外誤差は、機械角が約2°から約10°までの範囲において、その誤差の値が同じ機械角で比較した場合の基準誤差より大きくなっている。また、ギャップGが近ギャップである2mmおよび2.5mmである場合の基準外誤差は、機械角が0°から約2°までの範囲および10°から約24°までまでの範囲において、その誤差の値が同じ機械角で比較した場合の基準誤差より小さくなっている。
【0137】
このように、ギャップGが近ギャップである場合の基準外誤差は、基準誤差と同様、機械角が0°から24°までの角度範囲において波形状に変化するとともに、基準誤差と交差してその値が変化する。そして、波形状に変化するギャップGが近ギャップである場合の基準外誤差は、基準誤差の値の変化に沿ってその値が変化する。すなわち、ギャップGが近ギャップである場合の基準外誤差は、基準誤差がプラス側である機械角の範囲と略同じ範囲において、その値がプラス側となっている。そして、ギャップGが近ギャップである場合の基準外誤差は、基準誤差がマイナス側である機械角の範囲と略同じ範囲において、その値がマイナス側となっている。
【0138】
また、ギャップGが遠ギャップである3.5mmおよび4mmである場合の基準外誤差は、機械角が約0°から約13°までの範囲および22°から約24°までまでにおいて、その誤差の値が同じ機械角で比較した場合の基準誤差より小さくなっている。また、ギャップGが遠ギャップである3.5mmおよび4mmである場合の基準外誤差は、機械角が13°から約22°までの範囲において、その誤差の値が同じ機械角で比較した場合の基準誤差より大きくなっている。
【0139】
このように、ギャップGが遠ギャップである場合の基準外誤差は、基準誤差と同様、機械角が0°から24°までの角度範囲において、波形状に変化するとともに、基準誤差と交差してその値が変化する。そして、波形状に変化するギャップGが遠ギャップである場合の基準外誤差は、基準誤差の値の変化に沿ってその値が変化する。すなわち、ギャップGが遠ギャップである場合の基準外誤差は、基準誤差がプラス側である機械角の範囲と略同じ範囲において、その値がプラス側となっている。そして、ギャップGが遠ギャップである場合の基準外誤差は、基準誤差がマイナス側である機械角の範囲と略同じ範囲において、その値がマイナス側となっている。
【0140】
位置算出部55は、GOP補正部54が導出したtanθの情報を用いて回転部材20の補正前の検出体位置(すなわち、補正前検出体位置)である回転角度θを算出する。本実施形態では、位置算出部55は、数式1によって導出されるtanθを用いて回転部材20の回転角度θを算出するものである。
【0141】
区間補正部56は、位置算出部55および出力部57と接続されており、位置算出部55が算出した補正前検出体位置である回転角度θを補正した補正回転角度θaを出力部57に出力する。本実施形態では、区間補正部56は、算出した回転角度θの誤差および下記数式2に示す補正関数を用いて、区間補正を行って補正回転角度θaを算出する。
【0142】
(数2)
y=αx+β・・・(数式2)
数式2におけるyは、出力値である補正回転角度θaを示し、xは、位置算出部55が算出する回転角度θを示す。また、数式2におけるαは、傾き補正値を示し、βは、オフセット補正値を示す。
【0143】
そして、区間補正部56は、予め設定された区間毎において、基準誤差が0に近づくように、複数の区間(すなわち、回転角度範囲)毎に傾き補正値αとオフセット補正値βとを導出する。なお、本実施形態の例では、図13に示すように、検出範囲である0°から24°までの角度範囲が7つの区間に区分けされている。
【0144】
数式2に示す補正関数は、7つの区間それぞれにおける機械角と回転角度θの誤差の関係を示すものであって、位置算出部55が算出した回転角度θに基づいている。区間補正部56は、当該7つの区間毎に傾き補正値αとオフセット補正値βとを導出する。そして、区間補正部56は、位置算出部55が算出する回転角度θと、導出した傾き補正値αと、オフセット補正値βとを用いて7つの区間毎の回転角度θを補正して補正回転角度θaを算出する。
【0145】
これにより、図13に示すように、ギャップGが設計値である3mmにおいて、図13に示した回転角度θの基準誤差に比較して、補正回転角度θaの基準誤差を0に近付けることができる。
【0146】
ところで、区間補正部56は、位置算出部55が第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを用いてアークタンジェント変換した回転角度θに基づいて補正回転角度θaを算出する。そして、回転角度θを求めるために用いられる第1変換信号Siおよび第2変換信号Coには、上述したように、0次成分の周波数成分が重畳する。第1変換信号Siおよび第2変換信号Coに重畳する0次成分は、高次成分の周波数成分に比較して回転角度θに含まれる誤差が大きくなる要因となる。これは、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coをアークタンジェント変換して回転角度θを求める際に、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coに重畳する0次成分が1次成分となるためである。
【0147】
そして、GOP補正部54によって補正された第1変換信号Siには、0次成分の発生要因となる第1変換信号Siの振幅の変化量に応じて変化するオフセットが含まれる。また、GOP補正部54によって補正された第2変換信号Coには、0次成分の発生要因となる第2変換信号Coの振幅の変化量に応じて変化するオフセットが含まれる。
【0148】
そこで、本実施形態の区間補正部56は、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを用いてアークタンジェント変換した回転角度θに含まれる1次成分を除去するように、数式2に示す補正関数を用いて区間補正を行う。換言すれば、区間補正部56は、GOP補正部54によってオフセット調整された後の第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを用いてアークタンジェント変換することで得られる回転角度θに残存する1次成分を除去するために区間補正を行う。
【0149】
なお、区間補正部56は、7つのより少ない区間毎や7つより多い区間毎に傾き補正値αおよびオフセット補正値βを導出してもよい。
【0150】
また、全基準外誤差における最も大きい誤差と最も小さい誤差との差を小さくすることができる。本実施形態に示す一例では、全基準外誤差のうち、最も誤差が大きい基準外誤差は、ギャップGが近ギャップである2mmであって機械角が8°の場合であった。また、全基準外誤差のうち、最も誤差が小さい基準外誤差は、ギャップGが近ギャップである2mmであって機械角が16°の場合であった。そして、最も大きい誤差と最も小さい誤差との差は、0.18degとすることができた。
【0151】
ここで、上述したように、ギャップGが2mm、2.5mm、3.5mmおよび4mmそれぞれの基準外誤差は、基準誤差と同様、機械角が0°から24°までの角度範囲において、波形状にその値が変化する。これら基準外誤差は、基準誤差がプラス側である機械角の範囲と略同じ範囲において、その値がプラス側となっており、基準誤差がマイナス側である機械角の範囲と略同じ範囲において、その値がマイナス側となっている。
【0152】
このため、回転部材20および基板30の組付け誤差等によって、ギャップGが設計値から外れる場合であっても、基準誤差が0に近づくように導出した傾き補正値αおよびオフセット補正値βを用いて基準外誤差を0に近付けることができる。
【0153】
例えば、基準誤差は、機械角が0°から12°の範囲および21°から24°の範囲において0より大きいプラス側となっている。このため、基準誤差が0に近づくように導出した傾き補正値αおよびオフセット補正値βを用いることで、機械角が0°から12°の範囲および21°から24°までの範囲における基準誤差は、小さくされて0に近づけられる。すなわち、基準誤差は、機械角が0°から12°の範囲および21°から24°までの範囲において、マイナス側に補正される。
【0154】
そして、基準外誤差を、これら傾き補正値αおよびオフセット補正値βを用いて補正することによって、基準外誤差は、基準誤差がプラス側となっている機械角の範囲においてマイナス側に補正される。このため、基準誤差と略同じ機械角の範囲においてプラス側となっている基準外誤差を、傾き補正値αおよびオフセット補正値βを用いて補正することで、0に近づけることができる。
【0155】
また、基準誤差は、機械角が12°から21°の範囲において0より小さいマイナス側となっている。このため、基準誤差が0に近づくように導出した傾き補正値αおよびオフセット補正値βを用いることで、機械角が12°から21°の範囲における基準誤差は、大きくされて0に近づけられる。すなわち、基準誤差は、機械角が12°から21°の範囲において、プラス側に補正される。
【0156】
そして、基準外誤差を、これら傾き補正値αおよびオフセット補正値βを用いて補正することによって、基準外誤差は、基準誤差がマイナス側となっている機械角の範囲においてプラス側に補正される。このため、基準誤差と略同じ機械角の範囲においてマイナス側となっている基準外誤差を、傾き補正値αおよびオフセット補正値βを用いて補正することで、0に近づけることができる。
【0157】
このように、数式2を用いて補正回転角度θaを算出する場合において、ギャップG毎に傾き補正値αおよびオフセット補正値βを導出することなく、基準外誤差を0に近づけることができる。
【0158】
以上の如く、本実施形態の信号処理部50は、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを補正するGOP補正部54と、GOP補正部54が補正した第1変換信号Siおよび第2変換信号Coに基づいて補正前の回転角度θを算出する位置算出部55と、を有する。さらに、信号処理部50は、7つの区間毎に回転角度θを補正して補正回転角度θaを算出する区間補正部56を有する。GOP補正部54は、ギャップGが2mm、2.5mm、3mm、3.5mmおよび4mmとなるように回転部材20と基板30とが配置された際の回転角度θの誤差がそれぞれ0に近づくように第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを補正する。区間補正部56は、7つの区間毎に補正関数における傾き補正値αおよびオフセット補正値βを導出する。
【0159】
これによれば、回転部材20と基板30との間隔が設計値のギャップGとなるように配置された場合において、回転角度θを補正回転角度θaに補正することで、補正しない場合に比較して、検出誤差を小さくすることができる。すなわち、位置検出装置1における検出精度を向上させることができる。
【0160】
また、回転部材20と基板30との間隔が設計値から外れたギャップGで配置された場合においても、設計値のギャップGとなるように配置された場合の傾き補正値αおよびオフセット補正値βを用いて補正することで、検出誤差を小さくすることができる。
【0161】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0162】
(1)上記実施形態では、回転部材20は、回転体であって、0°から360°より小さい0°から24°までの回転範囲内で回転可能に構成されている。第1受信コイル32は、回転部材20が0°から24°までの回転範囲内で回転する際の回転部材20の回転角度θに応じた第1電圧値V1を出力する。第2受信コイル33は、回転部材20が0°から24°までの回転範囲内で回転する際の回転部材20の回転角度θに応じた第2電圧値V2を出力する。位置算出部55は、回転部材20の回転角度θに応じた第1電圧値V1および第2電圧値V2に基づいて0°から24°までの回転範囲内で回転する回転部材20の回転角度θを算出する。GOP補正部54は、位置算出部55が算出する0°から24°までの回転範囲内の回転角度θの誤差が0に近づくように第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを補正する。
【0163】
これによれば、回転角度θの誤差を0に近づける角度範囲が限定されているため、誤差を0に近づける角度範囲が限定されていない場合に比較して、回転範囲内における角度毎の誤差の絶対値を小さくし易い。
【0164】
(2)上記実施形態では、基準ギャップが2つの近ギャップである2mmおよび2.5mmのうちの最も基準ギャップから離れた2mmと、2つの遠ギャップである3.5mmおよび4mmのうちの最も基準ギャップから離れた4mmとの中心に設定されている。
【0165】
これによれば、基準ギャップがこのように設定されていない場合に比較して、回転角度θの誤差を小さくし易い。すなわち、位置検出装置1における検出精度を向上させ易い。
【0166】
(第1実施形態の第1の変形例)
上述の第1実施形態では、位置検出装置1が0°から360°より小さい0°から24°までの角度範囲内で回転する回転部材20の回転位置を算出する例について説明したが、位置検出装置1が算出する回転位置はこれに限定されない。例えば、位置検出装置1は、0°~360°より小さい範囲内であって、0°から24°までとは異なる角度範囲内で回転する回転部材20の回転位置を算出してもよい。また、位置検出装置1は、0°~360°の角度範囲内で回転する回転部材20の回転位置を算出してもよい。また、位置検出装置1が算出する検出体は、回転体である場合においてペダルに限定されない。
【0167】
(第1実施形態の第2の変形例)
上述の第1本実施形態では、GOP補正部54が、基準誤差を基準として、基準誤差と4つの基準外誤差それぞれとの差が小さくなるように第1補正項および第2補正項を導出する例について説明したが、これに限定されない。
【0168】
例えば、基準誤差および4つの基準外誤差の5つの誤差における中心値を基準値としたとする。そして、当該基準値と、基準誤差および4つの基準外誤差それぞれとの差が小さくなるように第1補正項および第2補正項を導出してもよい。
【0169】
(第1実施形態の第3の変形例)
上述の第1実施形態では、第1補正項および第2補正項を位置検出装置1とは別の外部装置が導出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、位置検出装置1が上記した導出方法によって第1補正項および第2補正項を導出してもよい。具体的に、位置検出装置1における信号処理部50の構成機器(例えば、GOP補正部54)が導出してもよい。また、位置検出装置1は、第1補正項および第2補正項を導出するための補正項導出部を有する構成であってもよい。
【0170】
(第1実施形態の第4の変形例)
上述の第1実施形態では、GOP補正部54が第1変換信号Siおよび第2変換信号Coそれぞれを補正し、補正した第1変換信号Siおよび第2変換信号Coと、数式1とを用いてtanθを導出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、GOP補正部54が補正した第1変換信号Siおよび第2変換信号Coと、数式1とを用いて位置算出部55がtanθを導出する構成であってもよい。
【0171】
このような構成の場合、図14に示すように、GOP補正部54は、ゲイン用補正項、オフセット用補正項、位相用補正項のうち、少なくとも1つの補正項を用いて第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを補正する。そして、補正した第1変換信号Siおよび第2変換信号Coの情報を位置算出部55に出力する。
【0172】
位置算出部55は、GOP補正部54から補正した第1変換信号Siおよび第2変換信号Coの情報を受信すると、数式1によって、tanθを算出し、算出したtanθを用いて回転部材20の回転角度θを算出してもよい。
【0173】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図15および図16を参照して説明する。本実施形態では、第1受信コイル32および第2受信コイル33のパターン形状が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0174】
本実施形態の第1受信コイル32および第2受信コイル33は、図15に示すように、基板30の周方向Dcに沿って延びる円環状に形成されている。
【0175】
また、第1受信コイル32および第2受信コイル33は、法線方向に沿う方向視において、送信コイル31の内側に配置されている。また、第1受信コイル32および第2受信コイル33は、互いに干渉しない(すなわち、同じ層内で重ならない)ように、ビア34を介して異なる配線層に適宜接続されることで構成されている。
【0176】
第1受信コイル32は、閉ループの正弦波状となるように正弦曲線を描くパターン形状で形成されている。そして、第1受信コイル32は、順に積層された配線層のうちの隣り合う2つの配線層がビア34で接続されて構成されている。
【0177】
第2受信コイル33は、閉ループの余弦波状となるように正弦曲線と位相が異なる余弦曲線を描くパターン形状で形成されている。そして、第2受信コイル33は、順に積層された配線層のうちの隣り合う2つの配線層がビア34で接続されて構成されている。
【0178】
図15における第1受信コイル32および第2受信コイル33の表示に関しては、分かり易くするため、積層された複数の配線層に亘って形成される第1受信コイル32および第2受信コイル33を全て実線で表示している。
【0179】
なお、第1受信コイル32は、閉ループの余弦波状となるように余弦曲線を描くパターン形状で形成されていてもよい。この場合、第2受信コイル33は、閉ループの正弦波状となるように余弦曲線と位相が異なる正弦曲線を描くパターン形状で形成される。
【0180】
また、本実施形態の回転部材20の4つのターゲット22~25は、図16に示すように、径方向Drの外側ほど周方向Dcに拡幅する扇形形状を成している。このため、4つのターゲット22~25それぞれの周方向Dcにおける一方側端部および他方側端部は、軸方向Daに沿う方向視で径方向Drに沿った直線状に延伸している。
【0181】
本実施形態によれば、第1受信コイル32および第2受信コイル33が、法線方向に沿う方向視で正弦曲線または余弦曲線を描くパターン形状を成している。したがって、第1受信コイル32は、回転部材20の回転位置に応じた正弦波状の第1電圧値V1を出力する。また、第2受信コイル33は、回転部材20の回転位置に応じた余弦波状の第2電圧値V2を出力する。
【0182】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0183】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図17および図18を参照して説明する。本実施形態では、位置検出装置1の形状および構成が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0184】
本実施形態の位置検出装置1は、検出体のストローク方向における位置を検出可能に構成されている。検出体は、例えば車両に搭載された可動部品100である。位置検出装置1は、ストローク方向に沿って移動する検出体である可動部品100の位置を検出する。
【0185】
本実施形態の可動部品100は、ストローク方向に沿って所定の範囲内で直進するとともに、往復する。図17に示すように、可動部品100は、複数の磁石110、120、130を有する。複数の磁石110、120、130は、ストローク方向に沿って離隔して配置される。複数の磁石110、120、130それぞれは、N極またはS極の極性を有する磁極面111、121、131を有する。そして、複数の磁石110、120、130は、互いに隣り合う磁極面111、121、131がそれぞれN極とS極とで反対の極となるように配置される。
【0186】
位置検出装置1は、可動部品100の側の先端部に後述する検出部60が設けられるケース部10を有する。そして、位置検出装置1は、複数の磁石110、120、130それぞれの磁極面111、121、131とケース部10との間に所定の間隔が設けられる。換言すれば、ケース部10は、複数の磁石110、120、130それぞれと離隔した状態で可動部品100に対して対向して配置される。また、ケース部10は、それぞれの磁極面111、121、131とケース部10との間の所定の間隔が一定となるように配置されている。本実施形態におけるギャップGは、それぞれの磁極面111、121、131とケース部10との間の距離に相当する。
【0187】
また、本実施形態の位置検出装置1は、外部から磁界の影響を受けたときに抵抗値が変化する図18に示す磁気抵抗素子61、62を用いた磁気検出方式が採用されており、ケース部10の内部に、当該磁気抵抗素子61、62が設けられている。磁気抵抗素子61、62は、例えば、異方向性磁気抵抗素子、すなわちAMR(Anisotropic Magneto Resistive)素子、巨大磁気抵抗素子、すなわちGMR(Giant Magneto Resistive)素子、トンネル磁気抵抗素子、すなわちTMR(Tunnel Magneto Resistive)素子等を採用することができる。
【0188】
なお、磁気抵抗素子61、62の代わりにホール素子を採用して、位置検出装置1をホール素子を用いた磁気検出方式として用いることもできる。
【0189】
図18に示すよう、検出部60は、磁気検出部として機能する2個の磁気抵抗素子61、62を有する。2個の磁気抵抗素子61、62は、磁界の影響を受けたときの抵抗値の変化を電圧値として取得する。以下、2個の磁気抵抗素子61、62のうち、一方を第1磁気検出部61、他方を第2磁気検出部62と呼ぶ。
【0190】
第1磁気検出部61は、可動部品100の位置に応じて正弦波状の第1電圧値V1を出力する。第2磁気検出部62は、可動部品100の位置に応じて余弦波状の第2電圧値V2を出力する。このため、本実施形態では、検出部60が検出体である可動部品100の位置に応じた正弦波状の第1信号および余弦波状の第2信号を出力する信号出力部として機能する。また、ケース部10が配置部として機能する。
【0191】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0192】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図19および図20を参照して説明する。本実施形態では、第1補正項および第2補正項の導出方法が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0193】
本実施形態では、第1補正項および第2補正項は、0°から24°までの角度範囲内において、ギャップGが設計値である場合の誤差が最も小さくなるように導出される。
【0194】
具体的に、第1ゲイン用補正項、第1オフセット用補正項、第2ゲイン用補正項および第2オフセット用補正項は、0°から24°までの角度範囲内における機械角毎の基準誤差が0に近づくように導出される。この際、本実施形態では、0°から24°までの角度範囲内における機械角毎の基準外誤差は考慮せずに第1ゲイン用補正項、第1オフセット用補正項、第2ゲイン用補正項および第2オフセット用補正項が導出される。
【0195】
これにより、図19に示すように、ギャップGが設計値である場合の回転角度θの機械角毎の誤差を小さくすることができる。また、ギャップGが設計値である場合の回転角度θの機械角毎の誤差を小さくなるように導出した第1補正項および第2補正項を用いることで、ギャップGが設計値から外れる場合の回転角度θの機械角毎の誤差も小さくすることができる。
【0196】
また、図19に示すように、基準誤差は、機械角が0°から24°までの角度範囲において、プラス側とマイナス側とに交互に変化する波形状となっている。
【0197】
そして、ギャップGが近ギャップである2mmおよび2.5mmである場合の基準外誤差は、基準誤差と同様、波形状に変化するとともに、基準誤差の値の変化に沿ってその値が変化する。また、機械角が0°から24°までまで全検出範囲において、その誤差の値が同じ機械角で比較した場合の基準誤差より小さくなっている。このため、近ギャップである場合の基準外誤差は、基準誤差と交差しないでその値が変化する。
【0198】
また、ギャップGが遠ギャップである3.5mmおよび4mmである場合の基準外誤差は、基準誤差と同様、波形状に変化するとともに、基準誤差の値の変化に沿ってその値が変化する。また、機械角が0°から24°までの全検出範囲において、その誤差の値が同じ機械角で比較した場合の基準誤差より大きくなっている。このため、遠ギャップである場合の基準外誤差は、基準誤差と交差しないでその値が変化する。
【0199】
そして、GOP補正部54は、このように導出される第1ゲイン用補正項、第1オフセット用補正項、第2ゲイン用補正項および第2オフセット用補正項を用いて第1変換信号Siおよび第2変換信号Coを補正する。そして、GOP補正部54は、数式1を用いてtanθを導出する。GOP補正部54は、導出したtanθの情報を位置算出部55に送信する。
【0200】
位置算出部55は、GOP補正部54が導出したtanθの情報を用いて回転部材20の補正前の回転角度θを算出する。そして、区間補正部56は、位置算出部55が算出した補正前の回転角度θおよび第1実施形態で説明した数式2を用いて、区間補正を行って補正回転角度θaを算出する。
【0201】
また、区間補正部56は、第1実施形態と同様、検出範囲である0°から24°までの角度範囲における7つの区間毎に、基準誤差が0に近づくように、傾き補正値αとオフセット補正値βとを導出する。そして、区間補正部56は、位置算出部55が算出する回転角度θと、導出した傾き補正値αと、オフセット補正値βとを用いて補正回転角度θaを算出する。
【0202】
これにより、図20に示すように、ギャップGが設計値である3mmにおいて、図19に示した回転角度θの基準誤差に比較して、補正回転角度θaの基準誤差を0に近付けることができる。
【0203】
また、全基準外誤差における最も大きい誤差と最も小さい誤差との差を小さくすることができる。本実施形態では、全基準外誤差のうち、最も誤差が大きい基準外誤差は、ギャップGが4mmであって機械角が18°の場合であった。また、全基準外誤差のうち、最も誤差が小さい基準外誤差は、ギャップGが2mmであって機械角が16°の場合であった。そして、最も大きい誤差と最も小さい誤差との差は、0.50degとすることができた。
【0204】
(第4実施形態のまとめ)
第4実施形態は、上記のように構成されている。このため、まとめると、以下の観点を備えているといえる。
【0205】
(観点1)
検出体(20、100)の位置を検出する位置検出装置であって、
前記検出体の位置に応じた正弦波状の第1信号(V1)と、前記第1信号と位相が異なる余弦波状の前記検出体の位置に応じた第2信号(V2)とを出力する信号出力部(32、33、61、62)と、
前記信号出力部が設けられ、前記検出体と離隔した状態で前記検出体と対向して配置される配置部(30、10)と、
前記信号出力部が出力する前記第1信号および前記第2信号に基づいて、前記検出体が所定の検出範囲において変位する際の前記検出体の位置である検出体位置を算出する信号処理部(50)と、を備え、
前記信号処理部は、
前記第1信号および前記第2信号を補正する信号補正部(54)と、
前記信号補正部が補正した前記第1信号および前記第2信号に基づいて補正前の前記検出体の位置である補正前検出体位置を算出する位置算出部(55)と、
前記位置算出部が算出する前記補正前検出体位置の誤差に基づいた補正関数を演算して、前記検出範囲を複数の区間に区分けした際の前記複数の区間毎の前記位置算出部が算出する前記補正前検出体位置を補正する区間補正部(56)と、を有し、
前記検出体と前記配置部とが対向する方向である対向方向における前記検出体と前記配置部との間隔をギャップ(G)とし、基準となる前記ギャップを基準ギャップとし、前記基準ギャップより前記検出体と前記配置部との間隔が小さい前記ギャップを近ギャップとし、前記基準ギャップより前記検出体と前記配置部との間隔が大きい前記ギャップを遠ギャップとしたとき、
前記信号補正部は、前記配置部が、前記基準ギャップとなるように配置された前記補正前検出体位置の誤差が0に近づくように前記第1信号および前記第2信号を補正することで、前記配置部が、前記近ギャップおよび前記遠ギャップの少なくともどちらかとなるように配置された際の各ギャップの前記補正前検出体位置の誤差をそれぞれ0に近づけ、
前記区間補正部は、前記複数の区間毎に前記補正関数における補正値を導出する位置検出装置。
【0206】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、図21を参照して説明する。本実施形態では、基板30に送信コイル31が形成されていない点が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0207】
本実施形態の基板30は、図21に示すように、第1実施形態と異なり、送信コイル31の配線パターンが形成されていない。そして、第1受信コイル32および第2受信コイル33は、第1実施形態で説明した通り、主に渦巻形状となっている。本実施形態では、基板30に形成される第1受信コイル32および第2受信コイル33は、発振部51から交流電流が印加された際に所定のインダクタンスの大きさを有するインダクタンス素子として機能する。なお、図21では、接続配線35の図示を省略している。
【0208】
このような基板30が送信コイル31を有さない構成の場合、回転部材20の回転位置に応じて回転部材20に発生する渦電流が変化する。例えば、回転部材20が回転して第1受信コイル32および第2受信コイル33に対向する第1ターゲット22の回転位置が変化すると、第1ターゲット22に発生する渦電流が変化する。
【0209】
すると、第1ターゲット22に対向する第1受信コイル32および第2受信コイル33のインダクタンスが変化する。このようなインダクタンスの変化は、不図示の検出回路によって検出することができる。検出回路は、例えば、コイルおよびコンデンサなどを含む共振回路によって構成される。換言すれば、第1受信コイル32は、回転部材20の回転位置に応じて変化する自身のインダクタンスの変化を出力する。また、第2受信コイル33は、回転部材20の回転位置に応じて変化する自身のインダクタンスの変化を出力する。
【0210】
検出回路が検出する第1受信コイル32および第2受信コイル33それぞれのインダクタンスの変化は、回転部材20の回転位置に応じて周期的に変化する。検出回路は、検出する第1受信コイル32および第2受信コイル33それぞれのインダクタンスの変化の情報をAD変換部53に出力する。検出回路が出力する第1受信コイル32のインダクタンスの変化の情報は、第1実施形態における第1電圧値V1に相当する。また、検出回路が出力する第2受信コイル33のインダクタンスの変化の情報は、第1実施形態における第2電圧値V2に相当する。
【0211】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0212】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0213】
上述の実施形態では、基準ギャップが設計値である3mmであって、設計値から外れたギャップGが2mm、2.5mm、3.5mm、4mmである例について説明した。また、基準ギャップが、基準ギャップから最も離れた2mmと4mmとの中心である3mmである例について説明したが、これに限定されない。
【0214】
基準ギャップは、3mmに限定されず、適宜変更可能である。また、設計値から外れたギャップGは、2mmより小さい大きさのものが含まれていてもよいし、4mmより大きいものが含まれていてもよい。また、設計値から外れたギャップGのうち、近ギャップが1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、設計値から外れたギャップGのうち、遠ギャップが1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、基準ギャップは、複数の近ギャップのうちの最も基準ギャップから離れた大きさと、複数の遠ギャップのうちの最も基準ギャップから離れた大きさとの中心から外れた大きさで設定されていてもよい。
【0215】
上述の実施形態では、GOP補正部54が第1変換信号Siおよび第2変換信号Coそれぞれに対するゲイン用補正項、オフセット用補正項、位相用補正項のうち、ゲイン用補正項およびオフセット用補正項を導出する例について説明したが、これに限定されない。
【0216】
例えば、GOP補正部54は、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coそれぞれに対するゲイン用補正項、オフセット用補正項、位相用補正項のうち、少なくとも1つを導出すればよい。具体的には、GOP補正部54は、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coそれぞれに対するゲイン用補正項、オフセット用補正項、位相用補正項のうち、例えば、いずれか1つのみの補正項を導出してもよい。また、GOP補正部54は、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coそれぞれに対するゲイン用補正項、オフセット用補正項、位相用補正項のうち、任意の2つの補正項を導出してもよい。さらに、GOP補正部54は、第1変換信号Siおよび第2変換信号Coそれぞれに対するゲイン用補正項、オフセット用補正項、位相用補正項の全てを導出してもよい。
【0217】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0218】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0219】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0220】
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0221】
(本発明の特徴)
[請求項1]
検出体(20、100)の位置を検出する位置検出装置であって、
前記検出体の位置に応じた正弦波状の第1信号(V1)と、前記第1信号と位相が異なる余弦波状の前記検出体の位置に応じた第2信号(V2)とを出力する信号出力部(32、33、61、62)と、
前記信号出力部が設けられ、前記検出体と離隔した状態で前記検出体と対向して配置される配置部(30、10)と、
前記第1信号および前記第2信号に基づいて、前記検出体が所定の検出範囲において変位する際の前記検出体の位置である検出体位置を算出する信号処理部(50)と、を備え、
前記信号処理部は、
前記第1信号および前記第2信号を補正し、補正した前記第1信号および前記第2信号に基づいて補正前の前記検出体位置である補正前検出体位置を算出し、算出する前記補正前検出体位置の誤差に基づいた補正関数を演算して、前記検出範囲を複数の区間に区分けした際の前記複数の区間毎に算出する前記補正前検出体位置を補正可能であって、
前記検出体と前記配置部とが対向する方向である対向方向における前記検出体と前記配置部との間隔をギャップ(G)とし、基準となる前記ギャップを基準ギャップとし、前記基準ギャップより前記検出体と前記配置部との間隔が小さい前記ギャップを近ギャップとし、前記基準ギャップより前記検出体と前記配置部との間隔が大きい前記ギャップを遠ギャップとしたとき、
前記配置部が、前記基準ギャップ、1つ以上の前記近ギャップ、1つ以上の前記遠ギャップそれぞれとなるように配置された際の前記補正前検出体位置の誤差がそれぞれ0に近づくように前記第1信号および前記第2信号を補正するとともに、前記複数の区間毎に前記補正関数における補正値を導出する位置検出装置。
[請求項2]
検出体(20、100)の位置を検出する位置検出装置であって、
前記検出体の位置に応じた正弦波状の第1信号(V1)と、前記第1信号と位相が異なる余弦波状の前記検出体の位置に応じた第2信号(V2)とを出力する信号出力部(32、33、61、62)と、
前記信号出力部が設けられ、前記検出体と離隔した状態で前記検出体と対向して配置される配置部(30、10)と、
前記第1信号および前記第2信号に基づいて、前記検出体が所定の検出範囲において変位する際の前記検出体の位置である検出体位置を算出する信号処理部(50)と、を備え、
前記信号処理部は、
前記第1信号および前記第2信号を補正する信号補正部(54)と、
前記信号補正部が補正した前記第1信号および前記第2信号に基づいて補正前の前記検出体位置である補正前検出体位置を算出する位置算出部(55)と、
前記位置算出部が算出する前記補正前検出体位置の誤差に基づいた補正関数を演算して、前記検出範囲を複数の区間に区分けした際の前記複数の区間毎の前記位置算出部が算出する前記補正前検出体位置を補正する区間補正部(56)と、を有し、
前記検出体と前記配置部とが対向する方向である対向方向における前記検出体と前記配置部との間隔をギャップ(G)とし、基準となる前記ギャップを基準ギャップとし、前記基準ギャップより前記検出体と前記配置部との間隔が小さい前記ギャップを近ギャップとし、前記基準ギャップより前記検出体と前記配置部との間隔が大きい前記ギャップを遠ギャップとしたとき、
前記信号補正部は、前記配置部が、前記基準ギャップ、1つ以上の前記近ギャップ、1つ以上の前記遠ギャップそれぞれとなるように配置された際の前記補正前検出体位置の誤差がそれぞれ0に近づくように前記第1信号および前記第2信号を補正し、
前記区間補正部は、前記複数の区間毎に前記補正関数における補正値を導出する位置検出装置。
[請求項3]
前記検出体は、回転体であって、0°から360°より小さい所定の回転範囲内で回転可能であって、
前記信号出力部は、前記検出体が前記所定の回転範囲内で回転する際の前記検出体の回転角度に応じて前記第1信号および前記第2信号を出力し、
前記信号補正部は、前記位置算出部が算出する前記所定の回転範囲内の前記補正前検出体位置の誤差が0に近づくように前記第1信号および前記第2信号を補正し、
前記位置算出部は、前記信号補正部が補正した前記第1信号および前記第2信号に基づいて前記所定の回転範囲内の前記補正前検出体位置を算出する請求項2に記載の位置検出装置。
[請求項4]
前記基準ギャップは、1つ以上の前記近ギャップのうちの前記基準ギャップから最も離れた前記近ギャップの大きさと、1つ以上の前記遠ギャップのうちの前記基準ギャップから最も離れた前記遠ギャップの大きさとの中心の大きさに設定される請求項2または3に記載の位置検出装置。
[請求項5]
前記信号補正部は、前記第1信号の位相、ゲイン、オフセットのうちの少なくとも1つを補正するとともに、前記第2信号の位相、ゲイン、オフセットのうちの少なくとも1つを補正する請求項2ないし4のいずれか1つに記載の位置検出装置。
[請求項6]
前記信号補正部は、前記配置部が前記基準ギャップとなるように配置された際の前記補正前検出体位置の誤差と、前記配置部が前記遠ギャップとなるように配置された際の前記補正前検出体位置の誤差との差が0に近づくように前記第1信号のオフセットを補正するとともに、前記第2信号のオフセットを補正する請求項5に記載の位置検出装置。
[請求項7]
前記信号処理部は、前記第1信号および前記第2信号に基づいて、逆正接関数を演算してアークタンジェント変換することで前記検出体の位置を算出し、
前記信号補正部は、前記配置部が前記遠ギャップとなるように配置された場合に前記信号処理部が前記第1信号および前記第2信号をアークタンジェント変換して得られる1次成分が、前記配置部が前記近ギャップとなるように配置された場合に前記信号処理部が前記第1信号および前記第2信号をアークタンジェント変換して得られる1次成分に近づくように前記第1信号のオフセットを補正するとともに、前記第2信号のオフセットを補正する請求項5に記載の位置検出装置。
[請求項8]
前記第1信号のオフセットは、前記第1信号の振幅の変化によらないオフセット成分である第1定量オフセットおよび前記第1信号の振幅の変化に応じて信号の大きさが変化するオフセット成分である第1可変オフセットを含み、
前記第2信号のオフセットは、前記第2信号の振幅の変化によらないオフセット成分である第2定量オフセットおよび前記第2信号の振幅の変化に応じて信号の大きさが変化するオフセット成分である第2可変オフセットを含み、
前記信号補正部は、前記第1信号の振幅の変化量と前記第1信号の振幅の変化量に基づく前記第1信号のオフセットの変化量との関係が比例関係となるように前記第1定量オフセットを調整するとともに、前記第2信号の振幅の変化量と前記第2信号の振幅の変化量に基づく前記第2信号のオフセットの変化量との関係が比例関係となるように前記第2定量オフセットを調整し、
前記区間補正部は、前記第1信号および前記第2信号をアークタンジェント変換して算出した前記検出体の位置に含まれる1次成分を除去するように、前記複数の区間毎の前記位置算出部が算出する前記補正前検出体位置を補正する請求項7に記載の位置検出装置。
[請求項9]
前記配置部は、基板であって、
前記信号出力部は、前記基板に形成されるとともに、送信コイル(31)と、前記送信コイルへの通電による電磁誘導によって、誘導結合する第1受信コイル(32)および第2受信コイル(33)と、を含み、
前記第1受信コイルは、通電する前記送信コイルからの電磁誘導によって前記検出体に流れる渦電流の影響を受けて変化する、前記検出体の位置に応じた前記第1信号を第1電圧値として出力し、
前記第2受信コイルは、通電する前記送信コイルからの電磁誘導によって前記検出体に流れる渦電流の影響を受けて変化する、前記検出体の位置に応じた前記第2信号を第2電圧値として出力し、
前記信号処理部は、前記第1電圧値および前記第2電圧値に基づいて、前記検出体位置を算出する請求項1ないし8のいずれか1つに記載の位置検出装置。
[請求項10]
前記配置部は、基板であって、
前記信号出力部は、前記基板に設けられるとともに、前記検出体の位置に応じてインダクタンスが変化する第1受信コイル(32)および第2受信コイル(33)を含み、
前記第1受信コイルは、前記検出体の位置に応じて変化する自身のインダクタンスの変化を前記第1信号として出力し、
前記第2受信コイルは、前記検出体の位置に応じて変化する自身のインダクタンスの変化を前記第2信号として出力し、
前記信号処理部は、前記第1受信コイルのインダクタンスの変化および前記第2受信コイルのインダクタンスの変化に基づいて、前記検出体位置を算出する請求項1ないし8のいずれか1つに記載の位置検出装置。
[請求項11]
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルは、渦巻状のパターン形状である部分を含む請求項9または10に記載の位置検出装置。
[請求項12]
前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルは、前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルのうちの一方が正弦曲線を描くパターン形状を含み、前記第1受信コイルおよび前記第2受信コイルのうちの他方が前記正弦曲線と位相が異なる余弦曲線を描くパターン形状を含む請求項9または10に記載の位置検出装置。
[請求項13]
前記検出体には、磁石(110、120、130)が配置されており、
前記信号出力部は、前記検出体の位置に応じて変化する前記磁石から受ける磁界の変化に基づいて、前記第1信号を出力する第1磁気検出部(61)および前記第2信号を出力する第2磁気検出部(62)を有する請求項1ないし8のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【符号の説明】
【0222】
20 検出体
30 配置部
32、33 信号出力部
50 信号処理部
54 補正項導出部
55 位置算出部
56 区間補正部
G ギャップ
V1 第1信号
V2 第2信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21