(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072785
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】分包用積層体、分包袋、分包体及び分包用積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240521BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176479
(22)【出願日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2022183071
(32)【優先日】2022-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591143951
【氏名又は名称】ジェイフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】松原 章人
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AD30
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3E086CA28
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(57)【要約】
【課題】本発明は、優れた防湿性を有し、かつ、リサイクル性に優れた分包用積層体を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも2つの層を有し2つの層が同種の樹脂を含む、分包用積層体に関する。また、本発明は分包用積層体から形成された分包袋及び分包体に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの層を有し、前記2つの層が同種の樹脂を含む、分包用積層体。
【請求項2】
ヘイズが異なる領域を有する、請求項1に記載の分包用積層体。
【請求項3】
前記分包用積層体は高ヘイズ部を有し、前記高ヘイズ部のヘイズが60%以上である、請求項2に記載の分包用積層体。
【請求項4】
前記分包用積層体は低ヘイズ部を有し、前記低ヘイズ部のヘイズが30%以下である、請求項2に記載の分包用積層体。
【請求項5】
前記分包用積層体は高ヘイズ部と低ヘイズ部を有し、前記高ヘイズ部のヘイズと前記低ヘイズ部のヘイズの差が30%以上である、請求項2に記載の分包用積層体。
【請求項6】
前記2つの層の間にアンカーコート層をさらに有する、請求項1に記載の分包用積層体。
【請求項7】
前記2つの層のうち少なくとも1層が押出ラミネート層である、請求項1に記載の分包用積層体。
【請求項8】
透湿度が27g/m2・day以下である、請求項1に記載の分包用積層体。
【請求項9】
少なくとも1方向のエルメンドルフ引裂強度が300mN以下である、請求項1に記載の分包用積層体。
【請求項10】
少なくとも1方向のトラウザー引裂強度が2.5N以下である、請求項1に記載の分包用積層体。
【請求項11】
前記2つの層はそれぞれポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1に記載の分包用積層体。
【請求項12】
前記2つの層はそれぞれポリエチレン系樹脂を含むか、もしくは、前記2つの層はそれぞれポリプロピレン系樹脂を含む、請求項1に記載の分包用積層体。
【請求項13】
前記2つの層のうち少なくとも一方の層は帯電防止剤を含む、請求項1に記載の分包用積層体。
【請求項14】
前記2つの層のうち少なくとも一方の層は、少なくとも一方向に延伸されている、請求項1に記載の分包用積層体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の分包用積層体を構成する2つの層のうち、いずれか1つの層同士が対面しており、端部に熱溶着部を有する分包袋。
【請求項16】
薬剤の収容部を有する、請求項15に記載の分包袋。
【請求項17】
請求項15に記載の分包袋で包装された、分包体。
【請求項18】
薬剤を収容した、請求項17に記載の分包体。
【請求項19】
少なくとも第1層と第2層を有する分包用積層体の製造方法であって、
前記第1層上に前記第2層を押出ラミネート成形する工程を含み、
前記第1層と前記第2層は同種の樹脂を含む、分包用積層体の製造方法。
【請求項20】
前記第1層は少なくとも一方向に延伸されている、請求項19に記載の分包用積層体の製造方法。
【請求項21】
前記第2層を押出ラミネートする工程の前に、前記第1層上にアンカーコート層を形成する工程をさらに含む、請求項19に記載の分包用積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分包用積層体、分包袋、分包体及び分包用積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬局等では、サプリメントや薬剤を分包機によって分包し、分包パック帯とした上で、所定日数分を患者に手渡すことが行われている。このような分包パック帯を用いることで、朝・昼・夕など、服用するタイミングが同じ複数種の薬剤等をひとまとめにして1袋ずつパックすることも可能となる。この場合、患者は所定時間に分包パック帯から1パック分を切り離し、開封することで必要な薬剤等を迅速かつ確実に接種することができる。また、分包パック帯には、患者の名前や、飲むタイミング、日付などの印字をすることができ、誤処方や飲み忘れ、飲み間違い等を防ぐこともできる。
【0003】
食品や薬剤等を分包する包装材としては、プラスチックフィルムと紙等の素材を積層した積層フィルムが多用されている。例えば、特許文献1には、内面側をグラシンまたはセロハン紙とし、外面側をポリエチレン膜とする薬剤包装紙を用いて形成される薬剤分包パック帯が開示されている。また、特許文献2には、基材と該基材に積層された溶着層を有する熱溶着性シートどうしの該溶着層を向い合わせてヒートシールをしたヒートシール部を設けることで該ヒートシール部の内側に収納部を形成した包装体が開示されており、熱溶着性シートの基材として、グラシン紙またはセロファンが用いられることが開示されている。ここでは、熱溶着性シートの基材として、グラシン紙またはセロファンを用いることや包装体の端縁部に切断開始部を形成することで、包装体の易開封を高めることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58-125465号公報
【特許文献2】特開2007-290771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
食品や薬剤を包装する包装材には高い防湿性が要求される。特に薬剤を分包する包装材には高い防湿性が要求される傾向がある。しかしながら、従来の包装材の防湿性には改善の余地があった。
【0006】
また、従来の包装材において、グラシン紙やセロハンからなる基材上に樹脂フィルムを積層してなる積層フィルムをリサイクル処理する場合、各層を構成する素材が異なるため、それらの素材を分離する工程を経る必要があり、その工程が煩雑になる場合があった。
【0007】
そこで本発明者は、このような従来技術の課題を解決するために、優れた防湿性を有し、かつ、リサイクル性に優れた分包用積層体を提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者は、同種の樹脂を含む各層を少なくとも2層積層することで、優れた防湿性を有し、かつ、リサイクル性に優れた分包用積層体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1] 少なくとも2つの層を有し、2つの層が同種の樹脂を含む、分包用積層体。
[2] ヘイズが異なる領域を有する、[1]に記載の分包用積層体。
[3] 分包用積層体は高ヘイズ部を有し、高ヘイズ部のヘイズが60%以上である、[2]に記載の分包用積層体。
[4] 分包用積層体は低ヘイズ部を有し、低ヘイズ部のヘイズが30%以下である、[2]又は[3]に記載の分包用積層体。
[5] 分包用積層体は高ヘイズ部と低ヘイズ部を有し、高ヘイズ部のヘイズと低ヘイズ部のヘイズの差が30%以上である、[2]~[4]のいずれかに記載の分包用積層体。
[6] 2つの層の間にアンカーコート層をさらに有する、[1]~[5]のいずれかに記載の分包用積層体。
[7] 2つの層のうち少なくとも1層が押出ラミネート層である、[1]~[6]のいずれかに記載の分包用積層体。
[8] 透湿度が27g/m2・day以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の分包用積層体。
[9] 少なくとも1方向のエルメンドルフ引裂強度が300mN以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の分包用積層体。
[10] 少なくとも1方向のトラウザー引裂強度が2.5N以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の分包用積層体。
[11] 2つの層はそれぞれポリオレフィン系樹脂を含む、[1]~[10]のいずれかに記載の分包用積層体。
[12] 2つの層はそれぞれポリエチレン系樹脂を含むか、もしくは、2つの層はそれぞれポリプロピレン系樹脂を含む、[1]~[11]のいずれかに記載の分包用積層体。
[13] 2つの層のうち少なくとも一方の層は帯電防止剤を含む、[1]~[12]のいずれかに記載の分包用積層体。
[14] 2つの層のうち少なくとも一方の層は、少なくとも一方向に延伸されている、[1]~[13]のいずれかに記載の分包用積層体。
[15] [1]~[14]のいずれかに記載の分包用積層体を構成する2つの層のうち、いずれか1つの層同士が対面しており、端部に熱溶着部を有する分包袋。
[16] 薬剤の収容部を有する、[15]に記載の分包袋。
[17] [15]又は[16]に記載の分包袋で包装された、分包体。
[18] 薬剤を収容した、[17]に記載の分包体。
[19] 少なくとも第1層と第2層を有する分包用積層体の製造方法であって、
第1層上に第2層を押出ラミネート成形する工程を含み、
第1層と第2層は同種の樹脂を含む、分包用積層体の製造方法。
[20] 第1層は少なくとも一方向に延伸されている、[19]に記載の分包用積層体の製造方法。
[21] 第2層を押出ラミネートする工程の前に、第1層上にアンカーコート層を形成する工程をさらに含む、[19]又は[20]に記載の分包用積層体の製造方法。
【0010】
[A]少なくとも2つの層を有し、2つの層が同種の樹脂を含む積層体を用いた薬剤分包方法。
[B]薬剤分包に使用するための積層体であって、少なくとも2つの層を有し、2つの層が同種の樹脂を含む積層体。
[C]薬剤を分包するための積層体の使用であって、少なくとも2つの層を有し、2つの層が同種の樹脂を含む積層体の使用。
[D]少なくとも2つの層を有し、2つの層が同種の樹脂を含む積層体を用いた食品分包方法。
[E]食品分包に使用するための積層体であって、少なくとも2つの層を有し、2つの層が同種の樹脂を含む積層体。
[F]食品を分包するための積層体の使用であって、少なくとも2つの層を有し、2つの層が同種の樹脂を含む積層体の使用。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた防湿性を有し、かつ、リサイクル性に優れた分包用積層体を得ることができる。また、本発明によれば、優れた防湿性を有し、かつ、リサイクル性に優れた分包袋や分包体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、分包用積層体の一実施形態を説明する断面図である。
【
図2】
図2は、分包用積層体の一実施形態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、以下の説明において使用される「フィルム」と「シート」は明確に区別されるものではなく、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0014】
(分包用積層体)
本発明は、少なくとも2つの層を有し、これら2つの層が同種の樹脂を含む分包用積層体に関する。すなわち、本発明の分包用積層体は少なくとも第1層と第2層を有し、第1層と第2層のそれぞれが含む樹脂が同種の樹脂である。本発明の分包用積層体は上記構成を有するため、優れた防湿性を有し、かつ、リサイクル性に優れている。
【0015】
本実施形態では、分包用積層体は
図1に示される構成であってもよい。
図1に示される分包用積層体10は、第1層20と第2層30を有している。分包用積層体10は、第1層20と第2層30の間に他の層を有していてもよく、第1層20上に他の層を有していてもよく、第2層30上に他の層を有していてもよい。また、本実施形態の分包用積層体10は
図1に示されるように、第1層20と第2層30が直接積層されていてもよく、第1層20と第2層30からなる構成であってもよい。
【0016】
本明細書において、「同種の樹脂」とは、樹脂(重合体)を構成する主たる単量体の少なくとも一部が共通である樹脂をいう。より具体的には、「同種の樹脂」では、樹脂(重合体)を構成する全単量体数のうち、50%以上の単量体が共通していることが好ましく、60%以上の単量体が共通していることがより好ましく、70%以上の単量体が共通していることがさらに好ましく、80%以上の単量体が共通していることがよりさらに好ましく、90%以上の単量体が共通していることが一層好ましく、95%以上の単量体が共通していることが特に好ましい。各層を構成する樹脂が複数種ある場合は、複数種の樹脂を構成する単量体を合計して全単量体数とした上で、共通する単量体数が上記の数値範囲を満たすことが好ましい。
【0017】
本実施形態の分包用積層体は、優れた防湿性を有する。例えば、分包用積層体の透湿度は、27g/m2・day以下であることが好ましく、25g/m2・day以下であることがより好ましく、20g/m2・day以下であることがさらに好ましく、15g/m2・day以下であることが一層好ましく、12g/m2・day以下であることがより一層好ましく、10g/m2・day以下であることが特に好ましい。なお、分包用積層体の透湿度の下限値は特に限定されるものではなく、例えば、0g/m2・dayであってもよい。ここで、分包用積層体の透湿度は、JIS K 7129-2:2019に準じて測定される値である。測定装置としては、例えば、モコン社製 PERMATRAN W3/33を用いることができる。
【0018】
また、本実施形態の分包用積層体は、リサイクル性に優れている。本明細書においてリサイクル性に優れているとは、リサイクル工程において、積層体を構成する各素材を分離する必要がなく、リサイクル工程を簡略化できることを言う。すなわち、本実施形態では、分包用積層体を構成する2つの層が同種の樹脂から構成されており、分包用積層体が単一素材(モノマテリアル)から構成されているため、リサイクル工程において、積層体を構成する各素材を分離する必要がなくリサイクル性が向上している。
【0019】
さらに、本実施形態の分包用積層体は、耐カール性を有している。より具体的には、本実施形態の分包用積層体は、吸湿によるカールの発生が抑制されている。ここで、分包用積層体に生じるカール性は、分包用積層体を、高湿度条件(例えば、相対湿度75%)に長時間静置した後に、カール発生の有無を目視確認することで評価することができる。分包用積層体が優れた耐カール性を有することで、分包包装機等で分包する際のフィルムの通紙性等の機械適性を、通年で安定的にすることができる。
【0020】
本実施形態の分包用積層体から形成された包装袋や包装体は、易開封性にも優れている。本明細書における易開封性とは、包装袋や包装体の切断開始部から人の手によって、容易に包装袋や包装体が切断される性質を言う。例えば、包装袋や包装体の切断開始部から所定方向に所定以上の力が付与されれば、略一定方向に包装袋や包装体が引き裂かれ開封されることになる。本明細書においては、易開封性は手切れ性とも呼ぶことができ、本実施形態の分包用積層体はハサミ等の特段の道具を使用せずとも、人の手で包装袋や包装体を容易に引き裂くことができる。なお、包装袋や包装体の切断開始部は、ヒートシール部であることが好ましく、ヒートシール部には、切断が容易となるようにスリットや多数の孔(マジックカット加工)が形成されていてもよい。
【0021】
本実施形態の分包用積層体の少なくとも1方向のエルメンドルフ引裂強度は300mN以下であることが好ましく、250mN以下であることがより好ましく、200mN以下であることがさらに好ましく、150mN以下であることが一層好ましく、120mN以下であることがより一層好ましく、100mN以下であることが特に好ましい。分包用積層体の少なくとも1方向のエルメンドルフ引裂強度の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、20mN以上であることが好ましい。分包用積層体の少なくとも1方向のエルメンドルフ引裂強度が上記範囲内であれば、分包用積層体から形成された包装袋や包装体の易開封性が良好であると判定できる。ここで、分包用積層体のエルメンドルフ引裂強度は、JIS K 7128-2:1998に準じて測定される値である。測定装置としては、例えば、(株)東洋精機製作所製 デジタルエルメンドルフ引裂試験機SA型を用いることができる。
【0022】
本実施形態の分包用積層体の少なくとも1方向のトラウザー引裂強度は2.5N以下であることが好ましく、2.0N以下であることがより好ましく、1.7N以下であることがさらに好ましく、1.5N以下であることが一層好ましく、1.0N以下であることがより一層好ましく、0.5N以下であることが特に好ましい。分包用積層体の少なくとも1方向のトラウザー引裂強度の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、0.05N以上であることが好ましい。分包用積層体の少なくとも1方向のトラウザー引裂強度が上記範囲内であれば、分包用積層体から形成された包装袋や包装体の易開封性が良好であると判定できる。ここで、分包用積層体のトラウザー引裂強度は、JIS K 7128-1:1998に準じて測定される値である。測定装置としては、例えば、(株)島津製作所製 引張試験機 AGS-500NXを用いることができる。
【0023】
本実施形態においては、分包用積層体の2方向以上のエルメンドルフ引裂強度及び/又はトラウザー引裂強度が上記範囲内であってもよいが、1方向のエルメンドルフ引裂強度及び/又はトラウザー引裂強度が上記範囲内にあることが好ましい。分包用積層体から形成された包装袋や包装体においては、開封の方向が予め決定されているため、1方向のみのエルメンドルフ引裂強度及び/又はトラウザー引裂強度が上記範囲内にある方が、略一定方向に包装袋や包装体を引き裂きやすくなる。すなわち、包装袋や包装体における開封の方向と、エルメンドルフ引裂強度及び/又はトラウザー引裂強度が上記範囲内にある方向を合わせることで、略一定方向に包装袋や包装体を引き裂きやすくなる。また、1方向のみのエルメンドルフ引裂強度及び/又はトラウザー引裂強度を上記範囲内とすることにより、開封時に分包用積層体が意図しない方向に引き裂かれ、収容物が飛び散ってしまうといった不具合が発生することを効果的に抑制することができる。
【0024】
本実施形態において、分包用積層体を構成する2つの層のうち少なくとも一方の層は、少なくとも一方向に延伸されていることが好ましい。中でも、分包用積層体を構成する2つの層のうち1つの層のみが少なくとも一方向に延伸されていることが好ましく、二方向に延伸されていていてもよい。分包用積層体から形成された包装袋や包装体の易開封性の観点からは、1つの層のみが一方向にのみ延伸されていることが好ましく、1つの層のみがTD方向に延伸されていることがより好ましい。すなわち、分包用積層体を構成する2つの層のうち1つの層は、一軸延伸フィルムからなる層であることが好ましく、横軸延伸フィルムからなる層であることがより好ましい。なお、本明細書において、層(フィルム)の樹脂流れ方向をMD方向といい、MD方向に直交する方向をTD方向という。
【0025】
本実施形態においては、分包用積層体を構成する2つの層のうち少なくとも1層が押出ラミネート層であることが好ましい。この場合、例えば、第1層を延伸フィルムから形成し、当該第1層を押出ラミネート成形機において基材として巻出しつつ、第1層上に第2層を形成する樹脂を押出ラミネート成形する。このように、分包用積層体を構成する1つの層を押出ラミネート成形法にて形成することにより、第1層と第2層の間の層間接着強度をより効果的に高めることができる。具体的には、第1層と第2層の間の層間接着強度は、1N/15mm以上であることが好ましく、1.5N/15mm以上であることがより好ましく、2N/15mm以上であることがさらに好ましい。なお、第1層と第2層の間の層間接着が強固であり、剥離ができないほど(すなわち層間接着強度が測定不可である)に密着していることが最も好ましい。
【0026】
上述したように、本実施形態では、分包用積層体を構成する1つの層を押出ラミネート成形法にて形成することにより、第1層と第2層の層間接着強度を高めることができる。このため、本実施形態の分包用積層体は接着層を有していなくてもよい。その結果、分包用積層体の薄膜化が可能となる。なお、第1層と第2層を形成するフィルムを接着層を介して貼り合わせる方法をドライラミネート法と呼ぶ。本実施形態において、接着層を用いずに各層を形成する場合、本実施形態で得られる分包用積層体は、ドライラミネート法により形成されるものではなく、押出しラミネート法やサーマルラミネート法により形成されるものである。
【0027】
本実施形態の分包用積層体を分包袋や分包体として使用した際、密封性の観点から、ヒートシール強度は、通常2N/15mm以上であることが好ましく、3N/15mm以上であることがより好ましく、4N/15mm以上であることがさらに好ましい。本実施形態では、分包用積層体を分包袋や分包体とする際には、上記ヒートシール強度が発揮されるヒートシール温度を適宜選択することが好ましい。
【0028】
本実施形態における分包用積層体は、ヘイズの異なる領域を有することが好ましい。分包用積層体がヘイズの異なる領域を有するとは、分包用積層体の平面方向において、平均ヘイズ値よりもヘイズの高い高ヘイズ部(高ヘイズ領域)と、平均ヘイズ値よりもヘイズの低い低ヘイズ部(低ヘイズ領域)を有することを意味する。また、分包用積層体において高ヘイズ部は梨地部、低ヘイズ部は鏡面部とも呼ぶ。
【0029】
分包用積層体が高ヘイズ部を有する場合、高ヘイズ部のヘイズは60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。また、高ヘイズ部のヘイズの上限値は特に限定されるものではないが、100%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましく、90%以下であることがさらに好ましく、85%以下であることが一層好ましく、80%以下であることが特に好ましい。
【0030】
分包用積層体が低ヘイズ部を有する場合、低ヘイズ部のヘイズは30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。また、低ヘイズ部のヘイズの下限値は特に限定されるものではないが、0%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、3%以上であることがさらに好ましく、5%以上であることが特に好ましい。
【0031】
分包用積層体における高ヘイズ部のヘイズと低ヘイズ部のヘイズの差は、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、45%以上であることが一層好ましく、50%以上であることが特に好ましい。また、高ヘイズ部のヘイズと低ヘイズ部のヘイズの差は99%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましく、90%以下であることがさらに好ましく、85%以下であることが特に好ましい。
【0032】
分包用積層体のヘイズは、JIS K 7136:2000に準じて測定される値である。測定装置としては、例えば、日本電色工業(株) NDH4000を用いることができる。
【0033】
分包用積層体が高ヘイズ部を有する場合、高ヘイズ部の算術平均粗さ(Ra)は、0.4μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、0.55μm以上であることがさらに好ましく、0.6μm以上であることが特に好ましい。また、高ヘイズ部の算術平均粗さ(Ra)は、0.95μm以下であることが好ましい。高ヘイズ部の算術平均粗さ(Ra)を上記範囲内とすることにより、高ヘイズ部のヘイズをより好ましい範囲に調整しやすくなる。
【0034】
分包用積層体が低ヘイズ部を有する場合、低ヘイズ部の算術平均粗さ(Ra)は、0.15μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、0.25μm以上であることがさらに好ましく、0.3μm以上であることが特に好ましい。また、低ヘイズ部の算術平均粗さ(Ra)は、0.7μm以下であることが好ましい。低ヘイズ部の算術平均粗さ(Ra)を上記範囲内とすることにより、低ヘイズ部のヘイズをより好ましい範囲に調整しやすくなる。
【0035】
分包用積層体が高ヘイズ部を有する場合、高ヘイズ部の最大高さ粗さ(Rz)は、2.5μm以上であることが好ましく、2.7μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましく、3.2μm以上であることが特に好ましい。また、高ヘイズ部の最大高さ粗さ(Rz)は、6.5μm以下であることが好ましい。高ヘイズ部の最大高さ粗さ(Rz)を上記範囲内とすることにより、高ヘイズ部のヘイズをより好ましい範囲に調整しやすくなる。
【0036】
分包用積層体が低ヘイズ部を有する場合、低ヘイズ部の最大高さ粗さ(Rz)は、1μm以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることがさらに好ましく、1.8μm以上であることが一層好ましく、2.2μm以上であることが特に好ましい。また、低ヘイズ部の最大高さ粗さ(Rz)は、4.5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましく、3.8μm以下であることがさらに好ましい。低ヘイズ部の最大高さ粗さ(Rz)を上記範囲内とすることにより、低ヘイズ部のヘイズをより好ましい範囲に調整しやすくなる。
【0037】
なお、分包用積層体の算術平均粗さ(Ra)と最大高さ粗さ(Rz)は、例えば、(株)東京精密 HANDYSURF+35を用いて測定することができる。
【0038】
分包用積層体において高ヘイズ部を形成する場合には、例えば、当該領域に梨地加工を施してもよい。第1層と第2層を圧着、冷却するクーリングロールの表面に鏡面部と梨地部を予め形成しておくことで、圧着と同時にヒートシール面(例えば第2層上)に低ヘイズ部(鏡面部)、高ヘイズ部(梨地部)を形成することができる。ヘイズの調整は、この鏡面部と梨地部の表面粗さ等の表面状態によって調整することができる。また、高ヘイズ部に白色等の印刷を施したりしてもよい。本実施形態では、分包用積層体の幅方向(TD方向)に高ヘイズ部と低ヘイズ部が交互に配置されるように、高ヘイズ部と低ヘイズ部がそれぞれ複数形成されてもよい。この場合、高ヘイズ部と低ヘイズ部はそれぞれ長手方向(MD方向)の延びるように形成される。
【0039】
分包用積層体が高ヘイズ部と低ヘイズ部を有する場合、高ヘイズ部と低ヘイズ部の境界領域において、2つ折りすることで、例えば、低ヘイズ部(鏡面部)からなる表面と、高ヘイズ部(梨地部)からなる裏面を備える分包袋(分包体)を製造することができる。このように、例えば、薬剤等を収容する分包体において表面を高透明とし、裏面を低透明とすることで、分包体に収容された内容物の視認性を高めることができる。例えば、薬剤の形状や個数、色彩等をより鮮明に視認することができる。また、表面を高透明とし、裏面を低透明とすることで、表面側に施された印字等の視認性も高まる。
【0040】
分包用積層体の全体の厚みは、20μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、35μm以上であることが特に好ましい。また、分包用積層体の全体の厚みは、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、70μm以下であることがさらに好ましく、60μm以下であることが特に好ましい。
【0041】
本実施形態の分包用積層体の突刺し強度は3N以上であることが好ましく、4N以上であることがより好ましく、5N以上であることがさらに好ましく、5.5N以上であることが特に好ましい。突刺し強度が上記下限値以上であると、錠剤等の固形物による突刺し破れが生じにくくなり好ましい。分包用積層体の突刺し強度の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、15N以下であることが好ましい。ここで、分包用積層体の突刺し強度は、JIS Z 1707:2019に準じて測定される値である。測定装置としては、例えば、(株)島津製作所製 引張試験機 AGS-500NXを用いることができる。
【0042】
本実施形態の分包用積層体の少なくとも1方向の剛性は0.5mN/15mm以上であることが好ましく、0.7mN/15mm以上であることがより好ましく、1mN/15mm以上であることがさらに好ましく、1.4mN/15mm以上であることが特に好ましい。分包用積層体の少なくとも1方向の剛性の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、15mN/15mm以下であることが好ましく、10mN/15mm以下であることがより好ましく、6mN/15mm以下であることがさらに好ましい。分包用積層体の少なくとも1方向の剛性が上記範囲内であれば取扱い性に優れる傾向となり好ましい。ここで、分包用積層体の剛性は、例えば、(株)東洋精機製作所製 ループステフネステスターDA型を用いて測定することができる。
【0043】
<樹脂>
分包用積層体に含まれる第1層及び第2層はそれぞれ同種の樹脂を含む。同種の樹脂はポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、第1層及び第2層はそれぞれ同種のポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。
【0044】
第1層及び第2層は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むことが好ましい。第1層及び第2層に含まれるポリオレフィン系樹脂の含有量は、第1層及び第2層の全質量に対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることがより特に好ましい。なお、第1層及び第2層はそれぞれ、ポリオレフィン系樹脂を100質量%含む層であってもよい。
【0045】
第1層に用いるポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)(荷重2.16kg)は、0.1g/10分以上であることが好ましく、0.3g/10分以上であることがより好ましく、0.5g/10分以上であることがさらに好ましく、1g/10分以上であることが特に好ましい。また、MFRは、30g/10分以下であることが好ましく、20g/10分以下であることがより好ましく、15g/10分以下であることがさらに好ましく、10g/10分以下であることが一層好ましく、8g/10分以下であることが特に好ましい。
第2層に用いるポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)(荷重2.16kg)は、1g/10分以上であることが好ましく、3g/10分以上であることがより好ましく、5g/10分以上であることがさらに好ましく、8g/10分以上であることが特に好ましい。また、MFRは、60g/10分以下であることが好ましく、50g/10分以下であることがより好ましく、45g/10分以下であることがさらに好ましく、40g/10分以下であることが一層好ましく、35g/10分以下であることが特に好ましい。
各層に用いるポリオレフィン系樹脂のMFRを上記下限値以上とすることにより、流動性がよく加工性が向上する傾向となり、また、押出ラミネート成形時等の樹脂圧も低く抑えることができ設備に負荷がかかりにくく、メヤニも生じにくいという利点がある。また、低い温度での加工もより容易となる。また、MFRを上記上限値以下とすることにより、フィルム成形時に厚みムラが発生することを抑制しやすくなり、フィルムの生産効率を高めることができる。なお、ポリオレフィンのMFRは、JIS K 7210-1:2014に準拠して測定される値であり、ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂の場合は190℃、ポリプロピレン系樹脂の場合は230℃で測定できる。
【0046】
第1層及び第2層に用いるポリオレフィン系樹脂の数平均分子量は特に限定されるものではないが、例えば、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量は200000以下であることが好ましく、150000以下であることがより好ましい。ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量を上記範囲内とすることにより、フィルムの製造工程に置いて溶融樹脂に適度な流動性を付与することができ、生産効率を高めることができる。なお、ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー法によって算出でき、具体的には、溶媒としてオルトジクロロベンゼンを用い、140℃で測定できる。
【0047】
第1層に用いるポリオレフィン系樹脂の融点は、95℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、105℃以上であることがさらに好ましく、110℃以上であることが一層好ましく、115℃以上であることが特に好ましい。第1層に用いるポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂の場合、ポリエチレン系樹脂の融点は、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましく、125℃以上であることが一層好ましく、130℃以上であることが特に好ましい。第1層に用いるポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂の場合、ポリプロピレン系樹脂の融点は、120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましく、150℃以上であることが一層好ましく、160℃以上であることが特に好ましい。
また、第1層に用いるポリオレフィン系樹脂の融点は、170℃以下であることが好ましく、165℃以下であることがより好ましい。第1層に用いるポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂の場合、ポリエチレン系樹脂の融点は、150℃以下であることが好ましく、145℃以下であることがより好ましい。第1層に用いるポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂の場合、ポリプロピレン系樹脂の融点は、170℃以下であることが好ましく、165℃以下であることがより好ましい。
【0048】
第2層に用いるポリオレフィン系樹脂の融点は、70℃以上であることが好ましく、75℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましく、85℃以上であることが特に好ましい。第2層に用いるポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂の場合、ポリエチレン系樹脂の融点は、70℃以上であることが好ましく、75℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましく、85℃以上であることが特に好ましい。第2層に用いるポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂の場合、ポリプロピレン系樹脂の融点は、80℃以上であることが好ましく、85℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることがさらに好ましい。
また、第2層に用いるポリオレフィン系樹脂の融点は、155℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。第2層に用いるポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂の場合、ポリエチレン系樹脂の融点は、130℃以下であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがさらに好ましく、115℃以下であることがよりさらに好ましい。第2層に用いるポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂の場合、ポリプロピレン系樹脂の融点は、155℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。
【0049】
第1層に用いるポリオレフィン系樹脂と第2層に用いるポリオレフィン系樹脂の融点の差は20℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがより好ましく、28℃以上であることがさらに好ましい。ヒートシール性の観点からは融点の差は高い方が好ましいが、上限は通常は60℃程度である。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂の融点を上記範囲内とすることにより、流動性がよく加工性が向上する傾向となり、また、低い温度での加工もより容易となる。なお、融点とは、示差走査熱量測定による結晶融解ピークのピークトップが示す温度をいい、JIS K 7121:2012に準じ、10℃/分の速度で昇温し、一度室温に戻したあとの再昇温時のピークトップ温度をいう。なお、結晶融解ピークが複数存在する場合は、低温側のピークトップ温度を融点とする。
【0051】
本実施形態において、例えば、第1層を延伸フィルムから形成し、第1層を押出ラミネート成形機において基材として巻出しつつ、第1層上に第2層を形成する樹脂を押出ラミネート成形する場合、第1層を形成するポリオレフィン系樹脂の密度は、0.93g/cm3以上であることが好ましく、0.94g/cm3以上であることがより好ましく、0.95g/cm3以上であることがさらに好ましく、0.955g/cm3以上であることが一層好ましい。また、第1層を形成するポリオレフィン系樹脂の密度は、0.98g/cm3以下であることが好ましく、0.97g/cm3以下であることがより好ましい。
【0052】
また、第2層を形成するポリオレフィン系樹脂の密度は、0.87g/cm3以上であることが好ましく、0.88g/cm3以上であることがより好ましく、0.89g/cm3以上であることがさらに好ましい。また、第2層を形成するポリオレフィン系樹脂の密度は、0.93g/cm3以下であることが好ましく、0.925g/cm3以下であることがより好ましく、0.92g/cm3以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、ポリオレフィン系樹脂の密度は、JIS K 7112:1999 A法に準じて測定される値である。
【0053】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、α-オレフィン共重合体や、これらのポリオレフィン系樹脂を変性させた樹脂等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0054】
本実施形態においては、第1層及び第2層はそれぞれポリエチレン系樹脂を含むか、もしくは、第1層及び第2層はそれぞれポリプロピレン系樹脂を含むことが好ましい。ポリエチレン系樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)等が挙げられ、ラミネート加工性、層間接着性の観点からLLDPE、LDPE、MDPE、HDPEを用いることが好ましい。中でも、第1層は高密度ポリエチレン(HDPE)を含み、第2層は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)もしくは低密度ポリエチレン(LDPE)を含むことがより好ましい。
【0055】
ポリプロピレン系樹脂はプロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン(hPP))であってもよく、プロピレンと例えばα-オレフィン等の他の成分との共重合体であってもよいが、ヒートシール性、製膜性の観点から共重合体であることが好ましい。共重合体である場合は、ランダムポリプロピレン(rPP)、ブロックポリプロピレン(bPP)のいずれであってもよいが、ヒートシール性、製膜性の観点からrPPであることが好ましい。ポリプロピレンがプロピレンとα-オレフィンとの共重合体である場合は、α-オレフィンの炭素原子数は特に制限はないが、汎用性の観点から、2以上20以下であることが好ましく、2以上10以下であることがより好ましく、2以上5以下であることがさらに好ましく、2以上4以下であることがよりさらに好ましい。中でも、ポリプロピレンは、プロピレンとエチレンの共重合体、特にランダム共重合体であることが、ラミネート加工性、層間接着性、ヒートシール性の点から好ましい。他のポリプロピレン系樹脂と併用することで、ラミネート加工性、層間接着性、ヒートシール性を向上させることもできる。プロピレンとα-オレフィンとの共重合体中のα-オレフィンの含有量は、成形性と剛性のバランスの点から0.1質量%以上30質量%以下とすることが好ましく、1質量%以上20質量%以下がより好ましく、2質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、3質量%以上7質量%以下が特に好ましい。他のポリプロピレン系樹脂と併用する場合、ポリプロピレン系樹脂中のプロピレンとα-オレフィンとの共重合体の含有量は、ラミネート加工性、層間接着性、ヒートシール性、フィルムの成形性、剛性のバランスの点から、5質量%以上60質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0056】
また、ポリオレフィン系樹脂としてはシングルサイト触媒を用いて製造されたものが好ましく、メタロセン系ポリプロピレンやメタロセン系ポリエチレンを用いることがより好ましい。メタロセン系ポリプロピレンやメタロセン系ポリエチレンは、メタロセン触媒を用いて重合したポリプロピレンやポリエチレンである。メタロセン触媒を用いて重合したポリオレフィン系樹脂を用いることで、分量分布が狭いポリオレフィン系樹脂を製造しやすくフィルム強度が向上する傾向となる。
【0057】
ポリオレフィン系樹脂は、バイオマスポリオレフィンであってもよい。バイオマスポリオレフィンとは、原料として少なくとも一部にバイオマス由来(植物由来)の原料を用いたものであって、再生可能なバイオマス資源を原料に、化学的または生物学的に合成することで得られるポリオレフィン系樹脂を意味する。バイオマスポリオレフィンとしては、例えば、バイオマスポリエチレンやバイオマスポリプロピレンを用いることが好ましく、バイオマスポリプロピレンを用いることが特に好ましい。バイオポリオレフィンは、これを焼却処分した場合でも、バイオマスのもつカーボンニュートラル性から、大気中の二酸化炭素濃度を上昇させないという特徴がある。
【0058】
例えば、バイオマスポリエチレンにおいては、植物原料から得られたバイオエタノールから誘導された植物由来エチレンを用いることが好ましい。すなわち、バイオマスポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であることが好ましい。なお、バイオマスポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。バイオマスポリエチレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンのモノマーおよび/または化石燃料由来のα-オレフィンのモノマーをさらに含んでもよく、バイオマス由来のα-オレフィンのモノマーをさらに含んでもよい。バイオマス由来のα-オレフィンとしては、炭素数3~20のα-オレフィンを用いることが好ましく、ブチレン、ヘキセンまたはオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが容易である。
【0059】
第1層及び第2層を構成するポリエチレン系樹脂としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、日本ポリエチレン(株)製 メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン 商品名「カーネル」、低密度ポリエチレン 商品名「ノバテックLD」、東ソー(株)製 低密度ポリエチレン 商品名「ペトロセン」等を挙げることができる。また、第1層を延伸フィルムから形成する場合、第1層を形成するフィルムとして、例えば、デンカ(株)製 カラリヤンYA2、フタムラ化学(株)製 PE3M-XH、東京インキ(株)製 ハイブロンP等を挙げることができる。
【0060】
第1層及び第2層を構成するポリプロピレン系樹脂としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、日本ポリプロ(株)製 商品名「ノバテックPP」、「ウインテック」、プライムポリマー(株)製 商品名「プライムPP」等を挙げることができる。第1層を延伸フィルムから形成する場合、第1層を形成するフィルムとして、例えば、フタムラ化学(株)製 FOH、東洋紡(株)製 P3162、三井化学東セロ(株)HC-OP等を挙げることができる。
【0061】
<帯電防止剤>
本実施形態においては、2つの層のうち少なくとも一方の層は帯電防止剤を含むことが好ましい。帯電防止剤を含有することで分包用積層体が帯電防止性を発揮することができ、例えば、収容物が粉末状である場合などにおいて、収容物が分包用積層体に付着することを防ぐことができる。また、少なくとも一方の層が帯電防止剤を含むことにより、分包用積層体の製造工程において、積層体同士が意図しない密着をしたり、積層体に異物が付着することを抑制することも可能となり、品質も向上する。
【0062】
本実施形態において、例えば、第1層を延伸フィルムから形成し、第1層を押出ラミネート成形機において基材として巻出しつつ、第1層上に第2層を形成する樹脂を押出ラミネート成形する場合、帯電防止剤は、第2層に含まれることが好ましい。例えば、第2層を形成する樹脂として、帯電防止剤が配合された樹脂を用いたり、第2層を形成する際に溶融樹脂に帯電防止剤を添加してもよい。第2層に帯電防止剤を配合することにより、第2層を内側面として分包袋を形成した際、より効果的に帯電防止性能を発揮することができ、収容物が分包用積層体に付着することを防ぐことができる。
【0063】
帯電防止剤の含有量は、各樹脂層(例えば第2層)の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、帯電防止剤の含有量は、各樹脂層の全質量に対して、0.7質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。帯電防止剤の含有量を上記範囲内とすることにより、より効果的に帯電防止性能を発揮することができ、分包用積層体表面にべたつきが生じにくくなる。
【0064】
帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、公知の帯電防止剤を使用することができる。例えば耐熱性や耐湿熱性が良好であることから、高分子タイプの帯電防止剤を用いることが好ましい。高分子タイプの帯電防止剤としては、例えば、アンモニウム基を有する化合物、ポリエーテル化合物、スルホン酸基を有する化合物、ベタイン化合物、導電性有機高分子等が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等の界面活性剤を帯電防止剤として使用することもできる。
【0065】
アンモニウム基を有する化合物は、分子内にアンモニウム基を有する化合物であり、脂肪族アミン、脂環族アミンや芳香族アミンのアンモニウム化物等が挙げられる。アンモニウム基を有する化合物は、高分子タイプのアンモニウム基を有する化合物であることが好ましく、当該アンモニウム基は、カウンターイオンとしてではなく、高分子の主鎖や側鎖中に組み込まれている構造であることが好ましい。このような化合物としては、例えば、アンモニウム基またはアミン等のアンモニウム基の前駆体を含有する付加重合性のモノマーを重合し、必要に応じて、アンモニウム基の前駆体基をアンモニウム基に変換し、アンモニウム基を有する高分子化合物としたものが挙げられる。重合体としては、付加重合性のアンモニウム基またはアミン等のアンモニウム基の前駆体を含有するモノマーを単独で重合しても良いし、これらを含有するモノマーと他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0066】
アンモニウム基を有する化合物としては、帯電防止性、耐熱安定性が優れているという点で、ピロリジニウム環を有する化合物を用いてもよい。ピロリジニウム環を有する化合物の窒素原子に結合している2つの置換基は、それぞれ独立してアルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。置換可能な基は、例えば、ヒドロキシル基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、チオアルコキシ、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、シアノ基、ハロゲンである。また、窒素原子に結合している2つの置換基は化学的に結合していてもよく、2つの置換基が化学的に結合した基としては、例えば、-(CH2)m-(m=2~5の整数)、-CH(CH3)CH(CH3)-、-CH=CH-CH=CH-、-CH=CH-CH=N-、-CH=CH-N=C-、-CH2OCH2-、-(CH2)2O(CH2)2-等が挙げられる。
【0067】
ピロリジニウム環を有する化合物は、ピロリジニウム環を有するポリマーであってもよい。ピロリジニウム環を有するポリマーは、例えば、ジアリルアミン誘導体を、ラジカル重合触媒を用いて環化重合させることにより得られる。重合は、溶媒として水あるいはメタノール、エタノール、イソプロパノール、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、アセトニトリル等の極性溶媒中で過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、第3級ブチルパーオキサイド等の重合開始剤により、公知の方法で実施できるが、これらに限定するものではない。本実施形態においては、ジアリルアミン誘導体と重合性のある炭素-炭素不飽和結合を有する化合物を共重合成分としてもよい。
【0068】
上述したアンモニウム基を有する化合物のアンモニウム基の対イオン(カウンターイオン)となるアニオンとしては例えば、ハロゲンイオン、スルホナート、ホスファート、ニトラート、アルキルスルホナート、カルボキシラート等のイオンが挙げられる。
【0069】
ポリエーテル化合物としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエチレングリコールを側鎖に有するアクリル樹脂等が挙げられる。
【0070】
スルホン酸基を有する化合物において、スルホン酸基は、中和剤で中和されて塩の形態となっていてもよい。スルホン酸基を有する化合物としては、ポリスチレンスルホン酸及びその塩等、分子内に複数のスルホン酸基を有する化合物を用いてもよい。
【0071】
導電性有機高分子としては、従来公知の材料を使用することができるが、例えば、ポリチオフェン系、ポリアニリン系、ポリピロール系、ポリアセチレン系、ポリフェニレンサルファイド系等が挙げられる。
【0072】
<任意成分>
分包用積層体に含まれる第1層及び第2層は上述した樹脂に加えて、他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)等が例示される。ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニルが例示される。アクリル系樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が例示される。
【0073】
また、分包用積層体に含まれる第1層及び第2層は、任意成分として添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、着色剤、無機充填材、有機充填材、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤(スリップ剤)、耐ブロッキング剤、加水分解防止剤、可塑剤、難燃剤などが挙げられる。
【0074】
熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩、有機ホスファイト化合物、有機ホスフェート化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられる。また、有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などは、金属塩を使用してもよい。
【0075】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2,4-ビス(1,1-ジメチルプロピル)フェニル〕ホスファイト、トリス(モノー/ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニルホスファイト)、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン等の各種の亜リン酸エステルが挙げられる。これらの中でも、トリステアリルホスファイト等のトリアルキルホスファイトが好ましい。
【0076】
有機ホスフェート化合物は、好ましくは、有機リン酸エステル化合物、又は有機リン酸エステル化合物の金属塩であり、金属としては、周期律表第Ia、IIa、IIb、IIIa及びIIIbから選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、中でも、マグネシウム、バリウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウムがさらに好ましい。
【0077】
有機リン酸エステル化合物の好ましい具体例としては、酸性有機リン酸エステルとして、ジステアリルアシッドホスフェート、モノステアリルアシッドホスフェートが挙げられる。また、酸性有機リン酸エステルの金属塩としては、ビス(ジステアリルアシッドホスフェート)亜鉛塩、モノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩、トリス(ジステアリルアッシドホスフェート)アルミニウム塩、モノステアリルアッシドホスフェートと2個のモノステアリルアッシドホスフェートアルミニウム塩との塩、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0078】
有機ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-iso-プロピルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-n-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-iso-プロピルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
【0079】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などを用いることができる。
【0080】
フェノール系酸化防止剤としては、α-トコフェロール、4-メトキシフェノール、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、β-トコフェロール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-4-メトキシフェノール、2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(ジブチルヒドロキシトルエン、BHT)、プロピオン酸ステアリル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)等が挙げられる。
【0081】
イオウ系酸化防止剤としては、チオジプロピオン酸、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリル-β,β’-チオジブチレート、チオビス(β-ナフトール)、チオビス(N-フェニル-β-ナフチルアミン、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート等が挙げられる。
【0082】
滑剤としては、一般的に分子中に酸、エステル、水酸基、アミド基、金属塩などの極性部分と、脂肪族基などの非極部分を有する化合物が挙げられる。具体的な滑剤としては、ポリアルキレングリコール、脂肪酸エステル、脂肪族基を有する金属塩、フッ素系ポリマー、脂肪酸アミド、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪族炭化水素系化合物、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0083】
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどでもよいし、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体などでもよい。また、ポリアルキレングリコールは分子骨格に分岐を有するものであってもよい。これらの中では、ポリエチレングリコールが好ましい。ポリアルキレングリコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
脂肪酸エステルとしては、滑剤として使用される公知の脂肪酸エステルを使用できる。脂肪酸エステルは、脂肪酸と各種のアルコールとを原料とするエステルであり、分子内に長鎖脂肪族基とエステル基を持つものが好ましい。脂肪酸エステル系滑剤の具体例としては、例えば、一価アルコールの高級脂肪酸エステル、多価アルコールの高級脂肪酸エステル又は部分エステル、又はこれらの部分ケン化物などが挙げられる。高級脂肪酸エステルに使用される高級脂肪酸としては、例えば炭素原子数10以上、好ましくは炭素原子数12以上、より好ましくは炭素原子数16以上、さらに好ましくは炭素原子数20以上であり、また、好ましくは炭素原子数36以下、より好ましくは炭素原子数32以下である。
【0085】
具体的には、モンタン酸エステル、モンタン酸部分ケン化エステル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ベヘニン酸メチル、ラウリン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ヤシ脂肪酸オクチルエステル、ステアリン酸オクチル、牛脂肪酸オクチルエステル、ラウリン酸ラウリル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ミリスチン酸セチル、ネオペンチルグリコールジオレート、ネオペンチルグリコールジカプリン酸エステルなどのネオペンチルポリオール脂肪酸エステル、トリメチロールプロパントリオレートなどのトリメチロールプロパントリ脂肪酸エステル、トリメチロールプロパンジカプリン酸エステルなどのトリメチロールプロパンジ脂肪酸エステルなどの各種のトリメチロールプロパン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールテトラオレートなどのペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトールヘキサイソノナン酸エステルなどのジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、オレイン酸ジグリセライド、オレイン酸トリグリセライドなどの脂肪酸グリセライド、ペンタエリスリトール脂肪酸縮合エステル、トリメチロールプロパン脂肪酸縮合エステルなどが挙げられる。これらの中では、モンタン酸エステルが好ましい。
脂肪酸エステルは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
滑剤として使用される金属塩は、脂肪族基を有する金属塩であればよい。脂肪族基としては、脂肪族炭化水素基、脂肪族アシル基などが挙げられる。脂肪族基としては、特に限定されないが、好ましくは炭素原子数8以上、より好ましくは炭素原子数10以上であり、また、好ましくは炭素原子数30以下、より好ましくは炭素原子数24以下、さらに好ましくは炭素原子数16以下である。
【0087】
脂肪酸金属塩としては、脂肪酸、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ひまし油脂肪酸などの炭素原子数8~30程度、好ましくは炭素原子数10~24の高級脂肪酸とアルミニウム、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、鉛およびバリウムなどの金属との塩であり、好ましくは、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸金属塩としては、アルキル基の炭素原子数が好ましくは8~24、より好ましくは10~16のアルキルベンゼンスルホン酸金属塩が挙げられる。また、使用される金属としては、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムなどが好ましい。金属塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
フッ素系ポリマーとしては、分子内に炭素-フッ素結合を有するフッ素樹脂が挙げられる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ三フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリマー鎖の両末端または片末端にフルオロアルキル基を有するフッ素系重合体、パーフルオロカルボン酸エステル等が挙げられる。フッ素系ポリマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
脂肪酸アミドとしては、滑剤として使用できる公知の脂肪酸アミドが挙げられる。脂肪酸アミドは、脂肪酸とアミンからなるアミドであり、分子内に長鎖脂肪族基とアミド基を持つものであり、脂肪酸アマイドとも呼ばれる。具体的には、モノアミド、置換アミド、ビスアミド、メチロールアミド、エタノールアミド、エステルアミド、置換尿素、脂肪酸とアミンの重縮合物などがある。使用される脂肪酸は、飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。また、脂肪酸の炭素原子数は、例えば8~30程度、好ましくは10~24である。好ましい脂肪酸アミドの例としては、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、N-オレイルパルミトアミド、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物などが挙げられる。脂肪酸アミドは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
脂肪族アルコールとしては、滑剤として使用できる公知の脂肪族アルコールが挙げられる。脂肪族アルコールは、例えば炭素原子数6~30、好ましくは炭素原子数10~24の脂肪族アルコールである。脂肪族アルコールの具体例としては、例えば、カプロイルアルコール、カプリリルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコールなどが挙げられる。脂肪酸アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
脂肪酸としては、滑剤として使用できる公知の脂肪酸が挙げられる。脂肪酸としては、例えば、炭素原子数6~30、好ましくは炭素原子数10~24の脂肪酸が挙げられる。脂肪酸の具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、エルカ酸などの不飽和脂肪酸などが挙げられる。脂肪酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
脂肪族炭化水素系化合物としては、滑剤として使用できる公知の脂肪族炭化水素系化合物が挙げられる。脂肪族炭化水素系化合物の具体例としては、例えば、炭素原子数16以上の流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィンなどのパラフィンワックス、ポリエチレンワックスなどのポリオレフィンワックス、およびこれらの部分酸化物、あるいはフッ化物、塩化物などが挙げられる。脂肪族炭化水素化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0093】
オルガノポリシロキサンとしては、滑剤として使用できる公知のオルガノポリシロキサンが挙げられる。オルガノポリシロキサンの具体例としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンが挙げられ、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されていてもよく、直鎖状であってもよいし一部分岐していてもよい。オルガノポリシロキサンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
耐ブロッキング防止剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、シリカ、ゼオライト、タルク、珪藻土、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム等の無機フィラー、デンプン、球状ガラス、球状アクリル樹脂、超高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、脂肪酸エステル等が挙げられる。なかでも、フィルム表面に微細な凹凸を形成して、隣接するフィルム同士の密着抑制効果が高いことから、無機フィラーであることが好ましい。
【0095】
上記した添加剤の含有量は、各層の全質量に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0096】
(アンカーコート層)
本実施形態では、分包用積層体は、2つの層の間にアンカーコート層をさらに有していてもよい。例えば、
図2に示されるように、分包用積層体10は、第1層20、アンカーコート層40及び第2層30をこの順で有していてもよい。なお、本実施形態の分包用積層体10は
図2に示されるように、第1層20、アンカーコート層40及び第2層30からなる構成であってもよい。
【0097】
アンカーコート層は、第1層と第2層の接着性を高めることができる。また、本実施形態では、第1層と第2層の間にアンカーコート層を設けることで、分包用積層体から形成された包装袋や包装体の易開封性(手切れ性)をより効果的に高めることもできる。
【0098】
アンカーコート層はアンカーコート剤から形成することができる。アンカーコート剤としては、特に限定されないが、イソシアネート系(ウレタン系)、有機チタン系、ポリアルキレンイミン系、ポリブタジエン系のものが好ましい。イソシアネート系(ウレタン系)のアンカーコート剤としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。有機チタン系のアンカーコート剤としては、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラステアリルチタネート等のアルキルチタネート;ブトキシチタニウムステアレート等のチタンアシレート;チタニウムアセチルアセトネート等のチタンキレート等が挙げられる。ポリアルキレンイミン系のアンカーコート剤としては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン等が挙げられる
【0099】
アンカーコート層の厚さは0.005μm以上であることが好ましく、0.01μm以上であることがより好ましい。また、アンカーコート層の厚さは、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましい。
【0100】
(任意層)
本実施形態では、分包用積層体は上述した層以外にさらに任意層を備えていてもよい。任意層としては、例えば、バリア層、印刷層等を挙げることができる。任意層は、第1層及び/又は第2層上に設けられてもよく、第1層と第2層の間に設けられてもよい。
【0101】
バリア層としては、例えば、無機物や無機酸化物を含む層を挙げることができる。このようなバリア層を構成する無機物としては、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属を挙げることができる。なお、バリア層は蒸着により形成されてもよい。バリア層を設けることで、ガスバリア性をより高めることができる。
【0102】
印刷層は、例えば、文字、図形、記号、模様、その他等からなる所望の印刷模様を印刷して、印刷模様を形成する層である。印刷層は、インキ組成物を、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリ-ン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式を使用し、第1層又は第2層の片面に印刷することで形成することができる。インキ組成物は、必要に応じて、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤等を含んでもよい。印刷層は、第1層上に設けられることが好ましいが、第1層と第2層の間に設けられてもよい。
【0103】
(用途)
本実施形態の分包用積層体の分包対象は特に限定されるものではないが、食品や薬剤を分包するために用いられることが好ましい。中でも、実施形態の分包用積層体は、薬剤分包用積層体であることが好ましい。薬剤としては、例えば、錠剤や粉末が挙げられる。本実施形態においては、薬剤分包用積層体は紙層を含まないものであるが、薬剤分包用積層体はいわゆる薬包紙と呼ばれるものである。
【0104】
(分包用積層体の製造方法)
本実施形態の分包用積層体の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、Tダイ法、インフレーション成形法などの押出成形、押出ラミネート、ドライラミネート等、公知の積層方法により適宜製造可能である。また、分包用積層体を共押出ラミネートにより製造することもでき、公知の共押出法を用いることができる。例えば、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、或いはそれらを組み合わせた方法を用いることができる。
【0105】
中でも、本実施形態の製造方法では、押出ラミネート成形する工程を設けることが好ましく、分包用積層体を構成する少なくとも1つの層を押出ラミネートにより形成することが好ましい。本実施形態は、少なくとも第1層と第2層を有する分包用積層体の製造方法であって、第1層上に第2層を押出ラミネート成形する工程とを含み、第1層と第2層は同種の樹脂を含む、分包用積層体の製造方法に関するものであることが好ましい。
【0106】
本実施形態において、第1層は、少なくとも一方向に延伸されているものであることが好ましい。第1層としては、予め一方向のみに延伸が施されたフィルムを用いてもよく、上記製造工程において、第1層を少なくとも一方向に延伸する工程を設けてもよい。
【0107】
上記製造工程において、第1層を少なくとも一方向に延伸する工程を設ける場合、第1層を形成する未延伸フィルムを、少なくとも一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する工程が設けられることが好ましい。この際、延伸温度は、通常25~120℃、好ましくは35~100℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは2.8~6倍である。延伸後、引き続き130~270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱固定処理を行うことが好ましい。熱固定処理を行うことで、耐熱性などを向上させることができる。
【0108】
本実施形態において、第1層は、二軸延伸フィルムからなる層であってもよい。この場合、一方向の延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは2.8~6倍であり、一段目の延伸方向と直交する方向の延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは2.8~6倍である。延伸後、引き続き130~270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱固定処理を行うことが好ましい。
【0109】
本実施形態では、第1層は一方向のみに延伸されているものであることが好ましく、第1層は一軸延伸フィルムからなる層であることが好ましく、横軸延伸フィルムからなる層であることがより好ましい。
【0110】
第2層を形成する工程は、上記工程で延伸が施された第1層(延伸フィルム)上に第2層を押出ラミネート成形する工程であることが好ましい。第2層を押出ラミネート成形する工程では、第2層を構成する樹脂を溶融し、溶融樹脂をダイスから押し出すことで、第1層との貼り合わせを行うことが好ましい。
【0111】
また、本実施形態では、第2層を押出ラミネートする工程の前に、第1層上にアンカーコート層を形成する工程をさらに含んでいてもよい。アンカーコート層を形成する工では、アンカーコート剤を第1層上に塗布することでアンカーコート層を形成することが好ましい。アンカーコート剤の塗布方法としては、公知の方法を採用することができる。塗布方法として、例えばコンマコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、スライドコート法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法等を挙げることができる。その後、形成されたアンカーコート層上に、第2層を形成する溶融樹脂を押出すことで第2層を形成する。第2層を形成する溶融樹脂を押出す工程の前には、アンカーコート剤に含まれる溶剤等を除去するために乾燥工程が設けられてもよい。
【0112】
アンカーコート剤の塗布量(乾燥後)は、0.005g/m2以上であることが好ましく、0.01g/m2以上であることがより好ましい。また、アンカーコート剤の塗布量(乾燥後)は、5g/m2以下であることが好ましく、3g/m2以下であることがより好ましく、1g/m2以下であることがさらに好ましく、0.5g/m2以下であることが特に好ましい。
【0113】
さらに、必要に応じて、アンカーコート層を形成する工程の前に、第1層上に印刷層を形成する工程を含んでもよい。例えば、第1層上に印刷層を形成した後に、印刷層上にアンカーコート層を形成する工程を設けてもよい。
【0114】
さらに、本実施形態では、必要に応じてバリア層を形成してもよく、第1層上にバリア層を形成してもよい。バリア層は蒸着工程により形成されることが好ましい。
【0115】
本実施形態では、分包用積層体に低ヘイズ部(鏡面部)、高ヘイズ部(梨地部)を形成する工程を設けることが好ましい。例えば、第1層と第2層を圧着し、冷却するクーリングロールの表面に鏡面部と梨地部を予め形成しておくことで、圧着と同時にヒートシール面(例えば第2層上)に低ヘイズ部(鏡面部)、高ヘイズ部(梨地部)を形成する工程を設けることが好ましい。低ヘイズ部(鏡面部)、高ヘイズ部(梨地部)を形成する工程では、例えば、クーリングロールの表面に形成した鏡面部と梨地部の表面粗さ等の表面状態を適切にコントロールすることにより、低ヘイズ部と高ヘイズ部のヘイズを調整することができる。また、包用積層体に低ヘイズ部(鏡面部)、高ヘイズ部(梨地部)を形成する工程は、高ヘイズ部に白色等の印刷を施す工程であってもよい。
【0116】
上記工程を経て製造された分包用積層体は、巻回されロール状とされてもよい。ロール状の分包用積層体は、分包機において、巻出しながら袋状に成形され、収容物を収容したあとに熱溶着(ヒートシール)により密封することで一連の包装体となる。また、分包袋や包装体には、切断が容易となるようにスリットや多数の孔(マジックカット加工)が形成されていてもよい。
【0117】
(分包袋/分包体)
本実施形態は、上述した分包用積層体を構成する2つの層のうち、いずれか1つの層同士が対面しており、端部に熱溶着部を有する分包袋に関するものでもある。例えば、分包用積層体の第2層が内面側になるように2つ折りし、次いで、端部を熱溶着(ヒートシール)することによって、熱溶着部を形成することで収容物を収容し得る区画を形成することができる。分包用積層体が高ヘイズ部と低ヘイズ部を有する場合、高ヘイズ部と低ヘイズ部の境界領域において、2つ折りすることが好ましい。
【0118】
分包袋に収容される対象収容物は特に限定されるものではないが、食品や薬剤が挙げられる。中でも、分包袋は薬剤の収容部(区画)を有していることが好ましい。
【0119】
本実施形態の分包用積層体を用いることで、ヒートシール温度を例えば、150℃以下の温度とすることができる。より具体的には、ヒートシール温度は低い方が好ましいが、90~145℃であることが好ましく、140℃以下であってもよい。ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂の場合は、130℃以下であることがさらに好ましく、125℃以下であることがよりさらに好ましい。ヒートシール温度を上記範囲とすることにより、分包用積層体の熱変形等を効果的に防ぐことができる。
【0120】
分包袋に対象収容物を収容した後には、残りの端部を熱溶着(ヒートシール)することで分包袋を密封することができる。本実施形態は、上記分包袋で包装された分包体に関するものでもある。分包体は、複数の分包パックが一連となった分包パック帯であってもよい。また、分包体は、各区画に薬剤を収容したものであることが好ましい。
【実施例0121】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0122】
(実施例1)
横一軸延伸高密度ポリエチレンフィルム(デンカ(株)製 カラリヤンYA2、融点133℃、ヘイズ12%、18μm)の一方の面上に2液反応型イソシアネート系アンカーコート剤(東洋インキ(株) 製 2液反応型イソシアネート系AC剤 商品名 「オリバイン」)を乾燥塗布量が0.2g/m2となるように塗布し、第1層上にアンカーコート層を形成した。次いで、アンカーコート層上に、第2層として帯電防止剤入りメタロセン系低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株) 製 メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン 商品名 「カーネル」、MFR(190℃、荷重2.16kg)14g/10分、密度0.911g/cm3、融点102℃)を押出ラミネート成形(層厚み22μm)し、クーリングロールを用いて、第1層と第2層を圧着、冷却することで、積層体を得た。その際、クーリングロールの表面に鏡面部と梨地部を形成しておくことで、第2層上に低ヘイズ部(鏡面部)、高ヘイズ部(梨地部)を形成した。
【0123】
(実施例2)
アンカーコート層を形成せず、横一軸延伸高密度ポリエチレンフィルム上に直接帯電防止剤入りメタロセン系低密度ポリエチレンを押出ラミネート成形した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0124】
(実施例3)
縦一軸延伸高密度ポリエチレンフィルム(フタムラ化学(株)製 PE3M-XH、融点136℃、ヘイズ8%、25μm)の一方の面上に2液反応型イソシアネート系アンカーコート剤(東洋インキ(株)製 2液反応型イソシアネート系AC剤 商品名 「オリバイン」)を乾燥塗布量が0.2g/m2となるように塗布し、第1層上にアンカーコート層を形成した。次いで、アンカーコート層上に、第2層として帯電防止剤入りメタロセン系低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製 メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン 商品名「カーネル」)を押出ラミネート成形(層厚み15μm)し、クーリングロールを用いて、第1層と第2層を圧着、冷却することで、積層体を得た。その際、クーリングロールの表面に鏡面部と梨地部を形成しておくことで、第2層上に低ヘイズ部(鏡面部)、高ヘイズ部(梨地部)を形成した。
【0125】
(実施例4)
横一軸延伸高密度ポリエチレンフィルム(デンカ(株)製 カラリヤンYA2 18μm)の一方の面上に2液反応型ポリエーテル系接着剤(三井化学(株) 製 2液反応型ポリエーテル系接着剤 商品名「タケラック/タケネート」)を乾燥塗布量が2.0g/m2となるように塗布し、接着層を形成した。次いで、接着層上にメタロセン系低密度ポリエチレンフィルム(フタムラ化学(株)製 メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンフィルム 商品名 「太閤 L-LDPEフィルム LL-X」、融点109℃、120℃)を貼合し、積層体(ドライラミネート)を得た。
【0126】
(実施例5)
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学(株)製 FOH、融点163℃、ヘイズ2.6%、25μm)の一方の面上に、第2層として帯電防止剤入りポリプロピレン系樹脂配合物[日本ポリプロ(株)製ポリプロピレン系樹脂70質量%(ノバテックPP、MFR(230℃、加重2.16kg) 19g/10分、密度0.90g/cm3、融点141℃)、プロピレンα-オレフィン共重合体25質量%、エチレンα-オレフィン共重合体5質量%]を押出しラミネート成形(層厚み15μm)し、クーリングロールを用いて、圧着、冷却することで、積層体を得た。その際、クーリングロールの表面に鏡面部と梨地部を形成しておくことで、第2層上に低ヘイズ部(鏡面部)と高ヘイズ部(梨時部)を形成した。
【0127】
(実施例6)
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学(株)製 FOH、融点163℃、ヘイズ2.6%、25μm)の一方の面上に、第2層として帯電防止剤入りポリプロピレン系樹脂[日本ポリプロ(株)製ポリプロピレン系樹脂、ノバテックPP、MFR(230℃、加重2.16kg) 19g/10分、密度0.90g/cm3、融点141℃]を押出しラミネート成形(層厚み15μm)し、クーリングロールを用いて、圧着、冷却することで、積層体を得た。
【0128】
(実施例7)
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学(株)製 FOABT、融点164℃、ヘイズ3.6%、25μm)のコロナ処理面上に、第2層として帯電防止剤入りポリプロピレン系樹脂[日本ポリプロ(株)製ポリプロピレン系樹脂、ノバテックPP、MFR(230℃、加重2.16kg) 19g/10分、密度0.90g/cm3、融点141℃]を押出しラミネート成形(層厚み15μm)し、クーリングロールを用いて、圧着、冷却することで、積層体を得た。
【0129】
(実施例8)
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡(株)製 パイレンOT、融点165℃、ヘイズ2.4%、20μm)のコロナ処理面上に2液反応型ポリエーテル系接着剤(三井化学(株)製2液反応型ポリエーテル系接着剤「タケラック/タケネート」を乾燥塗布量2.0g/m2となるように塗布し、接着層を形成した。次いで、接着層上に無延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学(株)製 太閤ポリプリロピレンフィルムFC、融点146℃、ヘイズ3.3%、20μm)のコロナ処理面を貼り合わせ積層体(ドライラミネート)を得た。
【0130】
(比較例1)
セロハン(フタムラ化学(株)製 普通セロハン 商品名「太閤セロハン」、ヘイズ4%)の一方の面上に1液型ポリエチレンイミン系アンカーコート剤(東ソー(株)製 ポリエチレンイミン系AC剤 商品名「トヨバイン」)を乾燥塗布量が0.02g/m2となるように塗布し、第1層上にアンカーコート層を形成した。次いで、アンカーコート層上に、第2層として帯電防止剤入りメタロセン系低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 低密度ポリエチレン 商品名「ペトロセン」)を押出ラミネート成形(層厚み20μm)し、クーリングロールを用いて、第1層と第2層を圧着、冷却することで、積層体を得た。その際、クーリングロールの表面に鏡面部と梨地部を形成しておくことで、第2層上に低ヘイズ部(鏡面部)、高ヘイズ部(梨地部)を形成した。
【0131】
(測定及び評価方法)
(ヒートシール強度)
ヒートシール強度は、各表に記載した各ヒートシール温度で積層体の第2層同士をヒートシールした場合、第2層間の引張破断時または剥離時の最大応力である。具体的には、積層体の第2層の表面同士が積層するように重ね、JIS Z 1707:2019に準じて、テスター産業(株)製 ヒートシーラー TP-701-Bにおいて、0.2MPa、1秒の条件で、MD方向及びTD方向にそれぞれヒートシールした。その後、(株)島津製作所製 引張試験機 AGS-500NXを用いて引張破断時または剥離時の最大応力を測定した。具体的にはヒートシールしたMD方向及びTD方向に15mm幅、長さ100mmで試料を切り出し、ヒートシール部を中央にして、180°に開いて、その両端を引張試験機の両つかみ具に取り付け、引張速度300mm/分の速度でヒートシール部が破断または剥離するまで引張応力を加え、その間の最大応力を測定した。
【0132】
(層間接着強度)
積層体の層間接着強度は、(株)島津製作所製 引張試験機 AGS-500NXを用いて測定した。具体的には、TD方向に15mm幅、MD方向に長さ200mmで試料を切り出し、MD方向の先端のラミネート層間の一部を剥離し、第1層を上側、第2層を下側のつかみ具で挟み、引っ張り速度50mm/分のT型剥離にて測定した。
【0133】
(エルメンドルフ引裂強度)
積層体のエルメンドルフ引裂強度は、JIS K 7128-2:1998に準じて、(株)東洋精機製作所製 デジタルエルメンドルフ引裂試験機SA型を用いて測定した。
【0134】
(トラウザー引裂強度)
積層体のトラウザー引裂強度は、JIS K 7128-1:1998に準じて、(株)島津製作所製 引張試験機 AGS-500NXを用いて測定した。
【0135】
(透湿度)
積層体の透湿度は、JIS K 7129-2:2019に準じて、モコン社製 PERMATRAN W3/33を用いて測定した。
【0136】
(ヘイズ)
積層体のヘイズは、JIS K 7136:2000に準じて、日本電色工業(株) NDH4000を用いて測定した。
【0137】
(算術平均粗さ(Ra))
積層体の算術平均粗さ(Ra)は、(株)東京精密 HANDYSURF+35を用いて測定した。なお、条件は以下の通りとした。
・触針先半径 2μm
・測定長さ 4.0mm
・測定速度 0.6mm/s
・カットオフ値 λc0.8mm、λs2.5μm
【0138】
(最大高さ粗さ(Rz))
積層体の最大高さ粗さ(Rz)は、(株)東京精密 HANDYSURF+35を用いて測定した。なお、条件は以下の通りとした。
・触針先半径 2μm
・測定長さ 4.0mm
・測定速度 0.6mm/s
・カットオフ値 λc0.8mm、λs2.5μm
【0139】
(カールの有無の評価)
実施例及び比較例で得た積層体から切り出した大きさ10cm×10cmのサンプルを、23℃、相対湿度50%環境下に48時間置き、その後、40℃、相対湿度75%環境下に48時間置き、再度23℃、相対湿度50%環境下に48時間置いた。その後、積層体のカールの有無について以下の評価基準で評価した。なお表中の「-」はNo dataを意味する。
A:積層体にカールの発生がなく、積層体はフラットな状態である
B:積層体に若干のカールが発生している
C:積層体に強いカールが発生している
【0140】
【0141】
【0142】
比較例に比べて実施例では、防湿性が良好であり、吸湿によるカールの発生が抑制されていた。また、実施例で得られた積層シートは、各層が単一素材(同種の樹脂)で形成されているため、リサイクル性に優れている。
【0143】
さらに、実施例の積層体は、高ヘイズ部と低ヘイズ部を有しているため、積層体から分包袋を形成し、錠剤を収容した際、錠剤の形状や個数、色彩等がより鮮明に確認できた。