(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072787
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】糸加熱装置及び仮撚加工機
(51)【国際特許分類】
D02J 13/00 20060101AFI20240521BHJP
D02G 1/02 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
D02J13/00 E
D02G1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177837
(22)【出願日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2022183391
(32)【優先日】2022-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】今中 昭仁
(72)【発明者】
【氏名】北川 重樹
【テーマコード(参考)】
4L036
【Fターム(参考)】
4L036PA05
4L036PA18
(57)【要約】
【課題】装置を大型化させることなく、消費電力を削減する。
【解決手段】延在方向に沿って延びた糸走行溝56が形成されており、糸走行溝56を走行する糸Yを加熱する加熱部50と、加熱部50を収容するボックス60と、複数の板部材71、72、73、74と、第1封止部材82と、第2封止部材83と、を備える。板部材71、72、73、74並びにボックス60の本体部61は、互いに対向しつつ離隔して並んでおり、延在方向と直交し且つ加熱部50と交わる仮想平面において、加熱部50から遠ざかる方向に並んでいる。第1封止部材82及び第2封止部材83は、対向する2枚の板部材の間及び板部材74と本体部61との間の板間空間75の端部を封止する。板間空間75に形成された空気層が、延在方向と直交し且つ加熱部50と交わる仮想平面において、加熱部50から遠ざかる方向に並んで複数設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸が走行する糸走行通路が形成された糸加熱装置であって、
前記糸走行通路が延びる方向である所定方向に沿って延びており、前記糸走行通路を走行する前記糸を加熱する加熱部と、
互いに対向しつつ離隔して並んだ複数の板部材であって、前記所定方向と直交し且つ前記加熱部と交わる仮想平面において、前記加熱部から遠ざかる方向に並んだ複数の板部材と、
対向する2枚の前記板部材の間の板間空間の端部の少なくとも一部を封止する封止部材と、を備えており、
前記板間空間に形成された空気層が、前記仮想平面において、前記加熱部から遠ざかる方向に並んで複数設けられていることを特徴とする糸加熱装置。
【請求項2】
前記板間空間が密閉されていることを特徴とする請求項1に記載の糸加熱装置。
【請求項3】
前記各板部材は、前記所定方向に沿って延びており、
前記封止部材は、断熱材で構成されており、且つ、前記板間空間における前記所定方向の両端部をそれぞれ封止する第1封止部材を含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の糸加熱装置。
【請求項4】
前記第1封止部材は、密度が80kg/m3以上であることを特徴とする請求項3に記載の糸加熱装置。
【請求項5】
前記各板間空間に配置されたスペーサ部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の糸加熱装置。
【請求項6】
隣り合う2つの前記板間空間にそれぞれ配置された前記スペーサ部材は、前記所定方向に関して異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の糸加熱装置。
【請求項7】
少なくとも1つの前記板間空間における前記所定方向と直交する直交方向の一方側の端部は、該板間空間を構成する2枚の前記板部材の前記直交方向の前記一方側の端部が折り曲げられた折曲部により封止されており、
隣り合う2つの前記板間空間において、一方の前記板間空間を封止する前記折曲部と、他方の前記板間空間に配置された前記スペーサ部材とは、前記直交方向に関して異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の糸加熱装置。
【請求項8】
前記折曲部は、前記2枚の板部材の間隔を確保するスペーサとして機能することを特徴とする請求項7に記載の糸加熱装置。
【請求項9】
前記複数の板部材のうち隣り合う3枚の前記板部材を第1板部材、第2板部材及び第3板部材としたとき、
前記第1板部材と前記第2板部材との間の前記板間空間における前記直交方向の前記一方側の端部は、前記第1板部材及び前記第2板部材の前記直交方向の前記一方側の端部が折り曲げられた前記折曲部により封止されており、
前記封止部材は、断熱材で構成されており、且つ、前記第2板部材と前記第3板部材との間の前記板間空間における前記直交方向の前記一方側の端部を封止する第2封止部材を含んでいることを特徴とする請求項7又は8に記載の糸加熱装置。
【請求項10】
隣り合う3つの前記板間空間のうち、最も前記加熱部の近くに位置する前記板間空間と最も前記加熱部から遠くに位置する前記板間空間との2つの前記板間空間が、前記折曲部により封止されているとき、
前記2つの板間空間をそれぞれ封止する前記折曲部は、前記直交方向に関する位置が互いに異なっていることを特徴とする請求項9に記載の糸加熱装置。
【請求項11】
断熱材で構成されており、且つ、前記折曲部により封止された前記板間空間のうち、少なくとも最も前記加熱部の近くに位置する前記板間空間を封止する前記折曲部における前記板間空間側とは反対側の表面を覆う被覆部材をさらに備えていることを特徴とする請求項9又は10に記載の糸加熱装置。
【請求項12】
前記第2封止部材は、前記被覆部材を兼ねていることを特徴とする請求項11に記載の糸加熱装置。
【請求項13】
前記第2封止部材は、前記板間空間のうち前記折曲部により封止されていない全ての板間空間における前記直交方向の前記一方側の端部を封止し、且つ、前記板間空間のうち前記折曲部により封止されている全ての板間空間にかかる前記折曲部における前記板間空間側とは反対側の表面を被覆することを特徴とする請求項12に記載の糸加熱装置。
【請求項14】
前記各板部材は、前記直交方向に関して前記加熱部の全体を覆っており、
前記折曲部により封止された前記板間空間のうち、最も前記加熱部の近くに位置する前記板間空間を封止する前記折曲部である第1折曲部は、その他の前記板間空間を封止する前記折曲部である第2折曲部に比べて、前記直交方向に関して、前記加熱部の近くに位置しており、
前記第2封止部材は、前記第1折曲部を被覆する部分の前記直交方向に関する厚みが、前記第2折曲部を被覆する部分の前記直交方向に関する厚みに比べて大きいことを特徴とする請求項12又は13に記載の糸加熱装置。
【請求項15】
前記板部材同士を接続する接続部材をさらに備えており、
前記第1板部材と前記第2板部材とは、前記折曲部において互いに固定されており、
前記第2板部材と前記第3板部材とは、前記直交方向の前記一方側とは反対側の他方側の端部において前記接続部材により互いに固定されていることを特徴とする請求項9~14のいずれか1項に記載の糸加熱装置。
【請求項16】
前記封止部材は、断熱材で構成されており、且つ、前記板間空間における前記所定方向と直交する直交方向の一方側の端部を封止する第2封止部材を含んでいることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の糸加熱装置。
【請求項17】
前記第2封止部材は、密度が80kg/m3以上であることを特徴とする請求項9~16のいずれか1項に記載の糸加熱装置。
【請求項18】
前記空気層の層厚は、5mm以上、且つ、15mm未満であることを特徴とする請求項1~17のいずれか1項に記載の糸加熱装置。
【請求項19】
前記複数の板部材のうち最も前記加熱部の近くに配置された前記板部材と前記加熱部との間に配置された断熱部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1~18のいずれ1項に記載の糸加熱装置。
【請求項20】
前記糸走行通路は、少なくとも一部が前記加熱部に画定されており、且つ、前記所定方向と直交する開放方向に開放された糸走行溝であることを特徴とする請求項1~19のいずれか1項に記載の糸加熱装置。
【請求項21】
前記複数の板部材は、前記糸走行溝における前記開放方向の開放端と対向する領域には配置されていないことを特徴とする請求項20に記載の糸加熱装置。
【請求項22】
前記各板部材は、前記所定方向に沿って延びており、且つ、前記開放方向に開放した溝型であり、
前記複数の板部材は、入れ子状に配置されており、最も内側に配置された前記板部材が前記加熱部を囲むように配置されていることを特徴とする請求項21に記載の糸加熱装置。
【請求項23】
複数の前記板間空間のうち最も前記加熱部の近くに位置する前記板間空間を構成する2枚の前記板部材の対向する表面のうち、少なくとも前記加熱部に近い方の前記板部材の表面が、鏡面仕上げされていることを特徴とする請求項1~22のいずれか1項に記載の糸加熱装置。
【請求項24】
糸に仮撚加工を施す仮撚加工機であって、
請求項1~23のいずれか1項に記載の糸加熱装置を備えていることを特徴とする仮撚加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸を加熱する糸加熱装置及び当該糸加熱装置を備える仮撚加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維からなる糸に合糸加工や仮撚加工等の種々の加工を施す加工機において走行する糸を加熱する糸加熱装置が、従来から知られている。特許文献1に開示されている仮撚加工機には、ボックス(保温ボックス)と、ボックスの収容空間に収容された加熱装置(加熱部)と、加熱装置が収容された収容空間の隙間を埋めるように配置された断熱材と、を備えた一次加熱ユニット(糸加熱装置)が設けられている。加熱装置には、糸走行溝が形成されており、糸走行溝を走行する糸が加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような糸加熱装置では、消費電力の低減が望まれている。ここで、消費電力を低減する手法として、断熱材の厚みを増し、加熱部からの熱の外部への放出量を減らすことが考えられる。しかしながら、断熱材の厚みを増すことで、糸加熱装置が大型化してしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、装置を大型化させることなく、消費電力を削減できる糸加熱装置及び当該糸加熱装置を備える仮撚加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明にかかる糸加熱装置は、糸が走行する糸走行通路が形成された糸加熱装置であって、前記糸走行通路が延びる方向である所定方向に沿って延びており、前記糸走行通路を走行する前記糸を加熱する加熱部と、互いに対向しつつ離隔して並んだ複数の板部材であって、前記所定方向と直交し且つ前記加熱部と交わる仮想平面において、前記加熱部から遠ざかる方向に並んだ複数の板部材と、対向する2枚の前記板部材の間の板間空間の端部の少なくとも一部を封止する封止部材と、を備えており、前記板間空間に形成された空気層が、前記仮想平面において、前記加熱部から遠ざかる方向に並んで複数設けられている。
【0007】
ここで、「対向する2枚の前記板部材の間の板間空間の端部」とは、板間空間の境界部であって、板間空間において対向する2枚の板部材で画定されていない部分を意味する。
【0008】
本発明では、仮想平面において加熱部から遠ざかる方向に並んで設けられた複数の空気層によって、加熱部からの熱の外部への放出を抑えることができる。また、空気層は、熱伝導率が比較的小さいので、厚みが小さくとも十分な断熱性能を発揮する。さらに、板間空間の端部の少なくとも一部が封止部材で封止されているので、板間空間の内側と外側とでの空気の出入りを抑えることができる。これにより、空気層における対流の発生を抑制することができる。したがって、板間空間を構成する2枚の板部材間での熱の移動を起こりにくくし、空気層の断熱性能を一層向上させることができる。よって、装置を大型化させることなく、消費電力を削減することができる。
【0009】
第2の発明にかかる糸加熱装置では、第1の発明において、前記板間空間が密閉されている。
【0010】
本発明では、板間空間が密閉されているので、板間空間の内側と外側とでの空気の出入りを確実に抑えることができる。したがって、空気層の断熱性能をさらに向上させることができる。
【0011】
第3の発明にかかる糸加熱装置は、第1又は第2の発明において、前記各板部材は、前記所定方向に沿って延びている。前記封止部材は、断熱材で構成されており、且つ、前記板間空間における前記所定方向の両端部をそれぞれ封止する第一封止部材を含んでいる。
【0012】
本発明では、第1封止部材で板間空間における所定方向の両端部を封止することにより、該両端部からの空気の出入りを抑えることができる。また、板間空間における所定方向の両端部を封止する第1封止部材が断熱材で構成されているので、第1封止部材を介して隣り合う板部材間で熱が伝わるのを抑制することができる。これにより、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0013】
第4の発明にかかる糸加熱装置では、第1の発明において、前記第1封止部材は、密度が80kg/m3以上である。
【0014】
本発明では、第1封止部材を高密度とすることで、第1封止部材を介して板間空間の内側と外側とで空気が出入りするのをより確実に抑えることができる。したがって、板間空間をより確実に密閉することができる。
【0015】
第5の発明にかかる糸加熱装置は、第1~第4のいずれかの発明において、前記各板間空間に配置されたスペーサ部材をさらに備えている。
【0016】
板間空間の厚みが均一でない場合には、板間空間に生じる温度差に起因して板間空間に形成された空気層に対流が生じやすい。本発明では、板間空間にスペーサ部材を配置することで、板間空間の厚みを均一にすることができる。したがって、空気層での対流の発生が抑制されるので、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0017】
第6の発明にかかる糸加熱装置では、第5の発明において、隣り合う2つの前記板間空間にそれぞれ配置された前記スペーサ部材は、前記所定方向に関して異なる位置に配置されている。
【0018】
隣り合う2つの板間空間にそれぞれ配置されたスペーサ部材が所定方向に関して同じ位置に配置されている場合には、これら2つのスペーサ部材を介して板部材間で熱が移動しやすい。本発明では、2つのスペーサ部材を介して板部材間で熱が移動しにくくし、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0019】
第7の発明にかかる糸加熱装置では、第5又は第6の発明において、少なくとも1つの前記板間空間における前記所定方向と直交する直交方向の一方側の端部は、該板間空間を構成する2枚の前記板部材の前記直交方向の前記一方側の端部が折り曲げられた折曲部により封止されており、隣り合う2つの前記板間空間において、一方の前記板間空間を封止する前記折曲部と、他方の前記板間空間に配置された前記スペーサ部材とは、前記直交方向に関して異なる位置に配置されている。
【0020】
本発明では、板部材の一部である折曲部で板間空間を封止することで、板間空間を密閉することができる。また、折曲部及びスペーサ部材を介して板部材間で熱が移動しにくくし、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0021】
第8の発明にかかる糸加熱装置では、第7の発明において、前記折曲部は、前記2枚の板部材の間隔を確保するスペーサとして機能する。
【0022】
本発明では、折曲部により、板間空間の厚みを均一にすることができる。
【0023】
第9の発明にかかる糸加熱装置は、第7又は第8の発明において、前記複数の板部材のうち隣り合う3枚の前記板部材を第1板部材、第2板部材及び第3板部材としたとき、前記第1板部材と前記第2板部材との間の前記板間空間における前記直交方向の前記一方側の端部は、前記第1板部材及び前記第2板部材の前記直交方向の前記一方側の端部が折り曲げられた前記折曲部により封止されている。前記封止部材は、断熱材で構成されており、且つ、前記第2板部材と前記第3板部材との間の前記板間空間における前記直交方向の前記一方側の端部を封止する第2封止部材を含んでいる。
【0024】
隣り合う複数の板間空間(すなわち、第1板部材と第2板部材との間の板間空間及び第2板部材と第3板部材との間の板間空間)が、いずれも折曲部で封止されている場合、各板間空間を封止する折曲部を介して、複数の板部材間で次々と熱が伝わる。本発明では、第2板部材と第3板部材との間の板間空間を断熱材で構成された第2封止部材により封止する。よって、板部材の折曲部を介して第1板部材と第2板部材との間で伝わった熱が、第3板部材まで伝わるのを抑制することができる。これにより、各板間空間の気密を保ちつつ、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0025】
第10の発明にかかる糸加熱装置では、第9の発明において、隣り合う3つの前記板間空間のうち、最も前記加熱部の近くに位置する前記板間空間と最も前記加熱部から遠くに位置する前記板間空間との2つの前記板間空間が、前記折曲部により封止されているとき、前記2つの板間空間をそれぞれ封止する前記折曲部は、前記直交方向に関する位置が互いに異なっている。
【0026】
2つの板間空間をそれぞれ封止する折曲部の直交方向に関する位置が同じである場合には、これら2つの折曲部を介して、異なる板部材間で熱が移動するおそれがある。本発明では、2つの折曲部を介して異なる板部材間で熱が移動しにくく、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0027】
第11の発明にかかる糸加熱装置は、第9又は10の発明において、断熱材で構成されており、且つ、前記折曲部により封止された前記板間空間のうち、少なくとも最も前記加熱部の近くに位置する前記板間空間を封止する前記折曲部における前記板間空間側とは反対側の表面を覆う被覆部材をさらに備えている。
【0028】
本発明では、被覆部材により、折曲部から熱が放出されるのを抑制することができる。とりわけ、加熱部の近くに位置しており高温となる板部材の折曲部から熱が放出されるのを確実に抑制することができる。
【0029】
第12の発明にかかる糸加熱装置は、第11の発明において、前記第2封止部材は、前記被覆部材を兼ねている。
【0030】
本発明では、被覆部材が第2封止部材とは別部材である場合に比べて、糸加熱装置の構成を簡略化することができる。
【0031】
第13の発明にかかる糸加熱装置は、第12の発明において、前記第2封止部材は、前記板間空間のうち前記折曲部により封止されていない全ての板間空間における前記直交方向の前記一方側の端部を封止し、且つ、前記板間空間のうち前記折曲部により封止されている全ての板間空間にかかる前記折曲部における前記板間空間側とは反対側の表面を被覆する。
【0032】
本発明では、1つの第2封止部材により、全ての板間空間の気密を保ちつつ、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる構成を実現できる。
【0033】
第14の発明にかかる糸加熱装置では、第12又は13の発明において、前記各板部材は、前記直交方向に関して前記加熱部の全体を覆っており、前記折曲部により封止された前記板間空間のうち、最も前記加熱部の近くに位置する前記板間空間を封止する前記折曲部である第1折曲部は、その他の前記板間空間を封止する前記折曲部である第2折曲部に比べて、前記直交方向に関して、前記加熱部の近くに位置しており、前記第2封止部材は、前記第1折曲部を被覆する部分の前記直交方向に関する厚みが、前記第2折曲部を被覆する部分の前記直交方向に関する厚みに比べて大きい。
【0034】
本発明では、直交方向に関して加熱部の近くに位置しており、高温となる第1折曲部から熱が放出されるのを確実に抑制することができる。
【0035】
第15の発明にかかる糸加熱装置は、第9~第14のいずれかの発明において、前記板部材同士を接続する接続部材をさらに備えており、前記第1板部材と前記第2板部材とは、前記折曲部において互いに固定されており、前記第2板部材と前記第3板部材とは、前記直交方向の前記一方側とは反対側の他方側の端部において前記接続部材により互いに固定されている。
【0036】
本発明では、第1板部材と第2板部材とが固定される折曲部によって、第1板部材と第2板部材との間の層厚を保つことができる。第2板部材と第3板部材とを固定する接続部材によって、第2板部材と第3板部材との間の層厚を保つことができる。ここで、第1板部材と第2板部材との固定部分と、第2板部材と第3板部材との固定部分と、が近くに配置されている場合には、これら2つの固定部分を介して第1板部材と第3板部材との間で熱が移動しやすい。本発明では、第1板部材と第2板部材との固定部分(折曲部が形成されている部分)と、第2板部材と第3板部材との固定部分(接続部材により接続されている部分)と、を直交方向に関して離すことができる。したがって、2つの固定部分を介して第1板部材と第3板部材との間で熱が移動しにくくし、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0037】
第16の発明にかかる糸加熱装置では、第1~第8のいずれかの発明において、前記封止部材は、断熱材で構成されており、且つ、前記板間空間における前記所定方向と直交する直交方向の一方側の端部を封止する第2封止部材を含んでいる。
【0038】
本発明では、第2封止部材で板間空間における直交方向の一方側の端部を封止することにより、該端部からの空気の出入りを抑えることができる。また、第2封止部材が断熱材で構成されているので、第2封止部材を介して隣り合う板部材間で熱が伝わるのを抑制することができる。これにより、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0039】
第17の発明にかかる糸加熱装置では、第9~第16のいずれかの発明において、前記第2封止部材は、密度が80kg/m3以上である。
【0040】
本発明では、第2封止部材を高密度とすることで、第2封止部材を介して板間空間の内側と外側とで空気が出入りするのをより確実に抑えることができる。したがって、板間空間をより確実に密閉することができる。
【0041】
第18の発明にかかる糸加熱装置では、第1~第17のいずれかの発明において、前記空気層の層厚は、5mm以上、且つ、15mm未満である。
【0042】
空気層の厚みが大きいと、対流が発生しやすい。空気層で対流が発生すると、空気層が形成された板間空間を構成する2枚の板部材の間での熱の移動が起こりやすくなる。一方、空気層の厚みが小さいと、隣り合う板部材同士が接触してしまうおそれがある。その場合、接触部分を介して隣り合う板部材間で熱が移動する。本発明によると、空気層の厚みを、空気層における対流の発生を抑制可能な大きさとしつつ、且つ、板部材同士が接触しにくい大きさとすることができる。これにより、空気層による断熱性能を一層向上させることができる。
【0043】
第19の発明にかかる糸加熱装置は、第1~第18のいずれかの発明において、前記複数の板部材のうち最も前記加熱部の近くに配置された前記板部材と前記加熱部との間に配置された断熱部材をさらに備えている。
【0044】
加熱部の表面には、加熱部を構成する各部材を固定するためのボルト等が露出しており、その表面に凹凸がある。したがって、加熱部の表面と板部材との間に、厚みが均一であり断熱性能が高い空気層を形成することは困難である。本発明では、加熱部と板部材との間に断熱部材を配置することで、加熱部からの熱の外部への放出をさらに抑制することができる。
【0045】
第20の発明にかかる糸加熱装置では、第1~第19のいずれかの発明において、前記糸走行通路は、少なくとも一部が前記加熱部に画定されており、且つ、前記所定方向と直交する開放方向に開放された糸走行溝である。
【0046】
本発明では、糸を効率よく加熱することができる。
【0047】
第21の発明にかかる糸加熱装置では、第20の発明において、前記複数の板部材は、前記糸走行溝における前記開放方向の開放端と対向する領域には配置されていない。
【0048】
本発明では、糸走行溝に糸を挿入する際に糸が通過する領域となる、糸走行溝の開放端と対向する領域を空けておくことができる。
【0049】
第22の発明にかかる糸加熱装置では、請求項21の発明において、前記各板部材は、前記所定方向に沿って延びており、且つ、前記開放方向に開放した溝型であり、前記複数の板部材は、入れ子状に配置されており、最も内側に配置された前記板部材が前記加熱部を囲むように配置されている。
【0050】
本発明では、糸走行溝に糸を挿入する際に糸が通過する領域を空けつつ、隣り合う2枚の板部材の間の板間空間に形成された空気層により加熱部を囲むことができる。したがって、加熱部からの熱の外部への放出を効果的に抑えることができる。
【0051】
第23の発明にかかる糸加熱装置では、第1~第22のいずれかの発明において、複数の前記板間空間のうち最も前記加熱部の近くに位置する前記板間空間を構成する2枚の前記板部材の対向する表面のうち、少なくとも前記加熱部に近い方の前記板部材の表面が、鏡面仕上げされている。
【0052】
本発明では、板部材の鏡面仕上げされた表面により、加熱部からの輻射熱を抑制することができる。したがって、輻射による伝熱を抑制し、消費電力をさらに削減することができる。また、多くの板部材の表面を鏡面仕上げするとコストが増大する。本発明では、最も加熱部の近くに位置する板間空間を画定する表面を鏡面仕上げとすることで、加熱部からの輻射熱を最も効果的に抑制しつつ、コストの増大を抑えることができる。さらに、鏡面仕上げされた表面は、汚れが目立ちやすい。本発明では、外からは見えない板間空間を画定する表面を鏡面仕上げとしているので、鏡面に付着した汚れが人目につきにくい。
【0053】
第24の発明にかかる仮撚加工機は、糸に仮撚加工を施す仮撚加工機であって、第1~第23のいずれか1つの発明にかかる糸加熱装置を備えている。
【0054】
本発明では、糸加熱装置を大型化させることなく、消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる仮撚加工機の側面図である。
【
図2】糸の経路に沿って仮撚加工機を展開した模式図である。
【
図4】
図3に示す第1加熱装置のIV-IV線に沿う断面図である。
【
図5】(a)は
図4に示す加熱部の拡大図であり、(b)は(a)に示す加熱部のb-b線に沿う断面図である。
【
図6】
図4に示す第1加熱装置のVI-VI線に沿う断面図である。
【
図7】
図4に示す第1加熱装置のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】寸法を説明するための図であり、
図3に示す第1加熱装置のIV-IV線に沿う断面図である。
【
図9】実施形態の一変形例について説明するための図であり、第2加熱装置の上下方向と直交する面での断面図である。
【
図11】(a)は
図9に示す加熱部の拡大図であり、(b)は(a)のb-b線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の好適な一実施形態にかかる仮撚加工機1について、
図1を参照しつつ説明する。なお、
図1の紙面垂直方向を機台長手方向とし、紙面左右方向を機台幅方向とする。機台長手方向及び機台幅方向の両方と直交する方向を、重力の作用する上下方向とする。機台長手方向及び機台幅方向は、水平方向と略平行な方向である。
【0057】
(仮撚加工機1の全体構成)
仮撚加工機1は、例えばナイロン(ポリアミド系繊維)やポリエステル等の合成繊維からなる糸Yを仮撚加工可能に構成されている。仮撚加工機1は、糸Yを供給するための給糸部2と、給糸部2から供給された糸Yを仮撚加工する加工部3と、加工部3によって加工された糸Yを巻取ボビンBwに巻き取る巻取部4とを備える。給糸部2、加工部3及び巻取部4が有する各構成要素は、機台長手方向において複数配列されている(
図2参照)。機台長手方向は、給糸部2から加工部3を通って巻取部4に至る糸道によって形成される、糸Yの走行面(
図1の紙面)と直交する方向である。
【0058】
給糸部2は、複数の給糸パッケージPsを保持するクリールスタンド5を有する。給糸部2は、加工部3に複数の糸Yを供給する。加工部3は、給糸パッケージPsから供給された糸Yを仮撚りする。加工部3は、糸走行方向の上流側から順に、第1フィードローラ11、撚止ガイド12、第1加熱装置13(本発明の「糸加熱装置」に相当する)、冷却装置14、仮撚装置15、第2フィードローラ16、交絡装置17、第3フィードローラ18、第2加熱装置19、第4フィードローラ20が配置された構成となっている。巻取部4は、複数の巻取装置21を有する。各巻取装置21は、加工部3で仮撚加工された糸Yを巻取ボビンBwに巻き取って巻取パッケージPwを形成する。
【0059】
仮撚加工機1は、機台幅方向に間隔を置いて配置された主機台8及び巻取台9を有する。主機台8及び巻取台9は、機台長手方向に略同じ長さに延設されている。主機台8及び巻取台9は、機台幅方向において互いに対向するように配置されている。主機台8の上部と巻取台9の上部とは、支持フレーム10によって連結されている。加工部3を構成する各装置は、主に主機台8や支持フレーム10に取り付けられている。巻取部4を構成する各装置は、巻取台9に取り付けられている。主機台8と巻取台9と支持フレーム10とによって、作業者が各装置に対して糸掛け等の作業を行うための作業空間Aが形成されている。糸道は、糸Yが主に作業空間Aの周りを走行するように形成されている。
【0060】
仮撚加工機1は、互いに対向配置された1組の主機台8及び巻取台9を含むスパンと呼ばれる単位ユニットを有する。1つのスパンには、加工部3を構成する各装置を通るように糸道が形成されている加工ユニット(錘とも呼ばれる)が、機台長手方向に複数並んで配置されている。これによって、1つのスパンでは、機台長手方向に並んだ状態で走行する複数の糸Yに対して、同時に仮撚加工を行うことができる。仮撚加工機1は、スパンが、主機台8における機台幅方向の中心線Cを対称軸として、紙面左右対称に配置されている。主機台8は左右のスパンで共通のものとなっている。
【0061】
(加工部の構成)
加工部3の構成について、
図1及び
図2を参照しつつ説明する。第1フィードローラ11は、給糸部2に装着された給糸パッケージPsから糸Yを解舒して第1加熱装置13へ送るように構成されている。第1フィードローラ11は、例えば、
図2に示すように、1本の糸Yを第1加熱装置13へ送るように構成されている。第1フィードローラ11は、隣り合う複数の糸Yをそれぞれ糸走行方向における下流側へ送ることが可能に構成されていても良い。撚止ガイド12は、仮撚装置15で糸Yに付与された撚りが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側に伝播しないように構成されている。
【0062】
第1加熱装置13は、第1フィードローラ11から送られてきた糸Yを所定の加工温度に加熱するための装置である。第1加熱装置13は、例えば、
図2に示すように、2本の糸Yを加熱可能に構成されている。第1加熱装置13のより詳細については後述する。
【0063】
冷却装置14は、第1加熱装置13で加熱された糸Yを冷却するように構成されている。冷却装置14は、例えば、
図2に示すように、1本の糸Yを冷却するように構成されている。冷却装置14は、複数の糸Yを同時に冷却可能に構成されていても良い。
【0064】
仮撚装置15は、冷却装置14の糸走行方向下流側に配置されている。仮撚装置15は、糸Yに撚りを付与するように構成されている。仮撚装置15は、例えば、いわゆるディスクフリクション方式の仮撚装置であるが、これには限られない。
【0065】
第2フィードローラ16は、仮撚装置15で処理された糸Yを交絡装置17へ送るように構成されている。第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度は、第1フィードローラ11による糸Yの搬送速度よりも速い。これにより、糸Yは、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸仮撚される。
【0066】
交絡装置17は、糸Yに交絡を付与するように構成されている。交絡装置17は、例えば、空気流によって糸Yに交絡を付与する公知のインターレースノズルを有する。
【0067】
第3フィードローラ18は、交絡装置17よりも糸走行方向における下流側を走行している糸Yを第2加熱装置19へ送るように構成されている。第3フィードローラ18は、例えば、
図2に示すように、1本の糸Yを第2加熱装置19へ送るように構成されている。第3フィードローラ18は、隣り合う複数の糸Yをそれぞれ糸走行方向における下流側へ送ることが可能に構成されていても良い。なお、第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度は、第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度よりも遅い。このため、糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩される。
【0068】
第2加熱装置19は、第3フィードローラ18から送られてきた糸Yを加熱するように構成されている。第2加熱装置19は、鉛直方向に沿って延びており、1つのスパンに1つずつ設けられている。
【0069】
第4フィードローラ20は、第2加熱装置19によって加熱された糸Yを巻取装置21へ送るように構成されている。第4フィードローラ20は、例えば、
図2に示すように、1本の糸Yを巻取装置21へ送ることが可能に構成されている。第4フィードローラ20は、隣り合う複数の糸Yをそれぞれ糸走行方向における下流側へ送ることが可能に構成されていても良い。第4フィードローラ20による糸Yの搬送速度は、第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度よりも遅い。このため、糸Yは、第3フィードローラ18と第4フィードローラ20との間で弛緩される。
【0070】
以上のように構成された加工部3では、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸された糸Yが、仮撚装置15によって撚られる。仮撚装置15により形成される撚りは、撚止ガイド12までは伝播するが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側には伝播しない。延伸されつつ撚りが付与された糸Yは、第1加熱装置13で加熱されて熱固定された後、冷却装置14で冷却される。仮撚装置15よりも糸走行方向下流側では糸Yは解撚されるが、上記の熱固定によって糸Yが波状に仮撚りされた状態が維持される(すなわち、糸Yの捲縮が維持される)。
【0071】
仮撚りが施された糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩されながら、交絡装置17によって交絡が付与された後、糸走行方向下流側へ案内される。さらに、糸Yは、第3フィードローラ18と第4フィードローラ20との間で弛緩されながら、第2加熱装置19で熱処理される。最後に、第4フィードローラ20から送られた糸Yは、巻取装置21によって巻き取られる。
【0072】
(巻取部の構成)
巻取部4の構成について、
図2を参照しつつ説明する。巻取部4は、複数の巻取装置21を有する。各巻取装置21は、1つの巻取ボビンBwに糸Yを巻取可能に構成されている。巻取装置21は、支点ガイド31と、トラバース装置32と、クレードル33とを有する。支点ガイド31は、糸Yが綾振りされる際の支点となるガイドである。トラバース装置32は、トラバースガイド34によって糸Yを綾振りすることが可能に構成されている。クレードル33は、巻取ボビンBwを回転自在に支持するように構成されている。クレードル33の近傍には、接触ローラ35が配置されている。接触ローラ35は、巻取パッケージPwの表面に接触して接圧を付与する。以上のように構成された巻取部4では、上述した第4フィードローラ20から送られた糸Yが各巻取装置21によって巻取ボビンBwに巻き取られ、巻取パッケージPwが形成される。
【0073】
(第1加熱装置)
次に、第1加熱装置13のより具体的な構成について、
図3~
図8をさらに参照しつつ説明する。なお、
図7においては、説明のため、第2封止部材83の図示を省略している。
図8は、後述する厚みTa1、Tb1、Ta2、Tb2を説明するための図であり、説明に不要な符号等は適宜省略している。
【0074】
図3に示すように、第1加熱装置13は、機台長手方向と直交する所定の延在方向(本発明の「所定方向」に相当する)に延びている。本実施形態においては、延在方向は機台幅方向と平行である。延在方向は、機台幅方向に対して傾斜していても良い。
【0075】
第1加熱装置13には、後で詳述するように、延在方向に沿って延びる糸走行溝56(
図5参照)が形成されている。糸走行溝56は、本発明の「糸走行通路」に相当する。第1加熱装置13は、糸走行溝56において延在方向の一方側から他方側に向かって走行する糸Yを加熱するように構成されている。本実施形態では、第1加熱装置13は、2本の糸Y(糸Ya、Yb:
図5参照)を加熱可能に構成されている。
【0076】
第1加熱装置13は、
図4に示すように、加熱部50、断熱ブロック91、92、93、ボックス60、板部材71、72、73、74を主に備えている。加熱部50には、
図5(b)に示すように、延在方向に沿って延びた糸走行溝56(56a、56b)が形成されている。糸走行溝56(56a、56b)は、下方に開放されている。加熱部50は、糸走行溝56(56a、56b)を走行する糸Y(糸Ya、Yb)を加熱する。
図4に示すように、ボックス60は、加熱部50及び断熱ブロック91、92、93を収容する。板部材71、72、73、74は、加熱部50とボックス60の内壁面との間に配置されている。
【0077】
加熱部50は、
図5(a)に示すように、熱源51、2つの加熱ブロック52(52a、52b)及び2つの接糸部54(54a、54b)を主に有している。熱源51は、例えば、シーズヒータである。熱源51は、
図6に示すように、延在方向に沿って延びている。加熱ブロック52及び接糸部54は、熱源51が生成する熱によって加熱されるように構成されている。加熱ブロック52及び接糸部54は、熱源51に沿って延在方向に延びている。
図4に示すように、加熱部50の表面には、加熱部50を構成する各部材を固定するためのボルト59等が露出している。
【0078】
加熱ブロック52a及び接糸部54aは、糸Yaを加熱するための部材である。加熱ブロック52b及び接糸部54bは、糸Ybを加熱するための部材である。糸Yaを加熱するための部材と糸Ybを加熱するための部材は、機台長手方向において、熱源51を挟んで互いに反対側の位置に配置されている。
【0079】
図5を参照しつつ、糸Yaを加熱するための部材について説明する。加熱ブロック52aは、例えば、黄銅などの比熱が大きい金属材料によって構成されている。加熱ブロック52aは、熱源51に接触するように配置されている。加熱ブロック52aは、熱源51の機台長手方向における一方側(
図5(a)の紙面左側)に配置されている。加熱ブロック52aには、延在方向に延びた凹部53(53a)が形成されている。凹部53aは、下方側に開口している。凹部53a内には、接糸部54(54a)が収容されている。
【0080】
接糸部54aは、例えばSUS製の長尺の部材である。接糸部54aは、加熱ブロック52aと接触した状態で加熱ブロック52aに固定されている。接糸部54aは、加熱ブロック52aを介して熱源51から伝わる熱によって昇温される。接糸部54aは、糸Yを接触させるための接糸面55(55a)を有する。接糸面55aは、下方を向いている。接糸面55aは、
図5(b)に示すように、機台長手方向と直交する断面において、下側へ凸状に膨らんだ略U字状に湾曲している。接糸面55aは、
図5(a)に示すように、延在方向から視たときに、上側へ凸状に膨らんだ逆U字状に湾曲している。
【0081】
糸走行溝56(56a)は、加熱ブロック52aの凹部53aを画定する壁面と、接糸部54aの接糸面55aと、によって画定されている。糸走行溝56(56a)は、加熱ブロック52aにおける下面において開放している。糸走行溝56(56a)は、下方に開放されている。換言すると、糸走行溝56(56a)の内側から外側に向かう方向は下方である。本発明の「開放方向」は、下方である。
【0082】
また、糸Ybを加熱するための部材について説明する。加熱ブロック52bは、熱源51の機台長手方向における他方側(
図5(a)の紙面右側)に配置されている。加熱ブロック52bは、熱源51と接触している。加熱ブロック52bは、凹部53aと同様の形状の凹部53bが形成されている。凹部53b内には、接糸部54aと同様の構造の接糸部54bが収容されている。接糸部54bは、接糸面55aと同様の形状の接糸面55bを有する。糸走行溝56bは、加熱ブロック52bの凹部53bを画定する壁面と、接糸部54bの接糸面55bと、によって画定されている。さらなる詳細については省略する。
【0083】
第1加熱装置13内に送り込まれた糸Y(Ya、Yb)は、糸走行溝56(56a、56b)において接糸面55(55a、55b)に接触しつつ走行する。これにより、糸Y(Ya、Yb)は、接糸面55(55a、55b)を介して加熱ブロック52(52a、52b)から熱を受け取り、加熱される。糸Yの種類、糸Yの銘柄(太さ)、糸Yの走行速度及び加熱温度を適切に設定することにより、糸Yの温度を最適な加工温度にすることができる。
【0084】
図4及び
図6に示すように、断熱ブロック91、92、93は、加熱部50の下方に配置されている。断熱ブロック91、92、93は、例えば石膏ボード等からなる。断熱ブロック91、92、93は、いずれも延在方向に沿って延びている。断熱ブロック91、92、93は、機台長手方向に沿って並んでいる。断熱ブロック91、92間のすき間は、糸走行溝56aに糸Yaを挿入する際の通路となる。断熱ブロック92、93間のすき間は、糸走行溝56bに糸Ybを挿入する際の通路となる。
【0085】
ボックス60は、
図4に示すように、本体部61及び扉62を主に有している。本体部61は、延在方向を長手方向とする略直方体形状を有する中空の部材である。扉62は、本体部61に形成された後述する開口68を閉鎖可能である。
【0086】
本体部61は、板金で構成されている。本体部61は、例えばSUS製である。本体部61は、上壁61a、2つの側壁61b、2つの側壁61c及び下壁61dを有している。上壁61aは、
図4に示すように、延在方向から視て、機台長手方向に沿って延びている。2つの側壁61bは、機台長手方向に関して上壁61aの両端部にそれぞれ接続されている。2つの側壁61cは、
図6に示すように、延在方向に関して上壁61aの両端部にそれぞれ接続されている。側壁61b、61cは、いずれも上下方向に沿って延びている。下壁61dは、
図4に示すように、上壁61aの下方に位置している。下壁61dは、上壁61aと平行である。本体部61の上壁61a及び2つの側壁61bは、本発明の「板部材」に相当する。
【0087】
本体部61は、
図4に示すように、上下方向に関して糸走行溝56の開放端(下端)と対向する箇所に開口68が形成されている。なお、糸走行溝56の開放端とは、加熱ブロック52の下面において糸走行溝56が開口している部分を意味する。開口68は、延在方向に関して本体部61の全長にわたって形成されている。開口68は、下壁61dに形成されている。
【0088】
下壁61dは、機台側長手方向に関して開口68の両側で高さ方向の位置が異なっている。すなわち、下壁61dにおける機台長手方向の一方側(
図4の紙面左側)の第1部分61d1の下面は、上下方向と直交する仮想平面P1上に位置している。一方、下壁61dにおける機台長手方向の他方側(
図4の紙面右側)の第2部分61d2の下面は、上下方向と直交する仮想平面P2上に位置している。仮想平面P1は、仮想平面P2よりも上方に位置している。
【0089】
また、
図6及び
図7に示すように、本体部61における延在方向の両端の側壁61cには、開口69がそれぞれ形成されている。開口69は、側壁61cにおける機台長手方向の中央に形成されている。開口69は、下側が開放されている。開口69は、糸走行溝56を走行する糸Yの出入口として機能する。
【0090】
図4及び
図6に示すように、扉62は、延在方向に沿って延びる板状の部材である。扉62は、延在方向に沿って延びる軸62aを中心に搖動可能に構成されている。軸62aは、本体部61に取り付けられている。軸62aは、本体部61の下壁61dにおける第1部分61d1の下方に位置している。
【0091】
図4に示すように、扉62は、閉位置に位置しているとき、本体部61の下壁61dにおける第1部分61d1と開口68とを覆う。これにより、開口68が扉62によって閉鎖される。閉位置に位置する扉62が軸62aを中心に下方(
図4中時計回り方向)に搖動して、
図4において破線で示す開位置となったとき、本体部61の開口68は開放される。すなわち、扉62は、本体部61の開口68を閉鎖する閉位置と、開口68を開放する開位置と、の間で移動可能に構成されている。扉62が開位置であるとき、開口68を介してボックス60の本体部61内に糸Yを挿入し、糸走行溝56に糸Yをセットすることができる。
【0092】
各板部材71、72、73、74は、1枚の板金で構成されている。板部材71、72、73、74は、例えばSUS製である。各板部材71、72、73、74は、複数枚の板金により構成されていてもよい。板部材71、72、73、74は、いずれも延在方向に沿って延びている。板部材71、72、73、74は、いずれも下方向(糸走行溝56の開放方向)に開放した略溝型である。
【0093】
板部材71は、
図4に示すように、上壁71a及び2つの側壁71bを有する。上壁71aは、延在方向から視て、機台長手方向に沿って延びている。2つの側壁71bは、機台長手方向に関して上壁71aの両端部にそれぞれ接続されている。側壁71bは、上下方向に沿って延びている。板部材72、73、74は、板部材71と同様の形状の上壁72a、73a、74aと、2つの側壁72b、73b、74bと、をそれぞれ有している。
【0094】
4つの板部材71、72、73、74及びボックス60の本体部61における上壁61a及び2つの側壁61bは、入れ子状に配置されている。最も内側に配置された板部材71は、加熱部50を取り囲むように配置されている。板部材72は、板部材71を取り囲むように配置されている。板部材73は、板部材72を取り囲むように配置されている。板部材74は、板部材73を取り囲むように配置されている。さらに、ボックス60の本体部61における上壁61a及び2つの側壁61bが、板部材74を取り囲むように配置されている。4つの板部材71、72、73、74及び本体部61の上壁61a及び2つの側壁61b(本発明の「板部材」に相当する部材)は、糸走行溝56の下端(本発明の「開放端」に相当する)と対向する領域には配置されていない。
【0095】
4つの板部材71、72、73、74及び本体部61は、延在方向と直交し且つ加熱部50と交わる仮想平面(例えば
図4の紙面)において、加熱部50から遠ざかる方向に、この順で並んでいる。すなわち、板部材71は、4つの板部材71、72、73、74及び本体部61の中で、最も加熱部50の近くに配置されている。板部材71と加熱部50との間には、断熱部材80が配置されている。断熱部材80は、例えばセラミックファイバーやグラスウールである。また、本体部61の上壁61a及び2つの側壁61bは、本発明の「加熱部から最も遠くに位置する板部材」に相当する。
【0096】
板部材71、72、73、74及び本体部61の上壁71a、72a、73a、74a、61aは、加熱部50の上方に位置している。板部材71、72、73、74及び本体部61の側壁71b、72b、73b、74b、61bにおける下端部は、加熱部50よりも下方に位置している。すなわち、板部材71、72、73、74及び本体部61は、いずれも上下方向(本発明の「直交方向」に相当する)に関して加熱部50の全体を覆っている。
【0097】
4つの板部材71、72、73、74並びに本体部61の上壁61a及び2つの側壁61bは、互いに対向しつつ離隔して並んでいる。対向する2枚の板部材の間に、板間空間75a、75b、75cが形成される。隣り合う板部材71、72の間には、板間空間75aが形成される。隣り合う板部材72、73の間には、板間空間75bが形成される。隣り合う板部材73、74の間には、板間空間75cが形成される。また、板部材74と本体部61の上壁61a及び2つの側壁61bとの間には、板間空間75dが形成される。以降、板間空間75a、75b、75c、75dを区別しない場合は、板間空間75と称する。各板間空間75は、
図4に示すように、延在方向から視て、下方向に開放した溝型である。各板間空間75は、区切られていない1つの空間である。各板間空間75は、密閉されている。
【0098】
これら4つの板間空間75には、それぞれ空気層が形成される。すなわち、延在方向と直交し且つ加熱部50と交わる仮想平面(例えば
図4の紙面)において、加熱部50から遠ざかる方向に並んで、各板間空間75に形成された4つの空気層が並んでいる。空気層の層厚は、5mm以上、且つ、15mm未満であることが好ましい。空気層の層厚は、0より大きく5mm未満であってもよい。空気層の層厚は、15mm以上であってもよい。本実施形態においては、4つの空気層の層厚は、いずれも10mmである。4つの空気層の層厚は、互いに異なっていてもよい。
【0099】
4つの板間空間75のうち、最も加熱部50の近くに位置する板間空間75aを構成する2枚の板部材71、72の対向する表面は、いずれも鏡面仕上げされている。すなわち、2枚の板部材71、72のうち、加熱部50に近い方の板部材71における加熱部50とは反対側の表面は、鏡面仕上げされている。また、2枚の板部材71、72のうち、加熱部50から遠い板部材72における加熱部50側の表面は、鏡面仕上げされている。
【0100】
図6及び
図7に示すように、延在方向に関して、板部材71、72、73、74の両端部とボックス60の本体部61における側壁61cとの間には、第1封止部材82がそれぞれ配置されている。第1封止部材82は、4つの板間空間75における延在方向の両端部をそれぞれ封止する。ここで、各板間空間75における延在方向の両端部は、板間空間75の境界部であって、板間空間75において板間空間75を構成する2枚の板部材で画定されていない部分である。第1封止部材82により板間空間75における延在方向の両端部が封止されることで、該端部を介する板間空間75に対する空気の出入りを抑えることができる。
【0101】
第1封止部材82は、例えばロックウール等の断熱材で構成されている。第1封止部材82の材質は、ロックウールに限定されるものではない。第1封止部材82の密度は、80kg/m3以上であることが好ましい。第1封止部材82の密度は、80kg/m3未満であってもよい。第1封止部材82を構成する断熱材の密度は、第1封止部材82の通気性能を考慮して定めることが好ましい。第1封止部材82は、通気性能が低い(密度が大きい)ほど板間空間75からの空気の漏れ量が少なくなり、板間空間75の密閉度が向上する。
【0102】
図4及び
図7に示すように、板部材71の下方側の端部には、折曲部71cが形成されている。
図7においては、折曲部71cを分かりやすくするために折曲部71cの下面にハッチングを付している。折曲部71cは、板部材71における2つの側壁71bの下端部にそれぞれ形成されている。2つの側壁71bのうち機台長手方向に関して断熱ブロック92の一方側(
図4の紙面左側)の側壁71bの折曲部71cは、該側壁71bの下端部を機台長手方向の一方側に略90°折り曲げることによって形成されている。2つの側壁71bのうち機台長手方向に関して断熱ブロック92の他方側(
図4の紙面右側)の側壁71bの折曲部71cは、該側壁71bの下端部を機台長手方向の他方側に略90°折り曲げることによって形成されている。
【0103】
折曲部71cは、
図7に示すように、延在方向に関して板部材71の全長にわたっている。各側壁71bの折曲部71cには、3つの突出部71dが形成されている。3つの突出部71dは、延在方向に関して折曲部71cの両端部及び中央部に位置している。折曲部71cの機台長手方向に関する長さは、突出部71dが形成されている部分以外の部分では、板部材71と板部材72との機台長手方向に関する間隔とほぼ同じである。突出部71dが形成されている部分における折曲部71cの機台長手方向に関する長さは、板部材71と板部材73との機台長手方向に関する間隔とほぼ同じである。
【0104】
図4に示すように、板部材72の下方側の端部には、折曲部72cが形成されている。折曲部72cは、板部材72における2つの側壁72bの下端部にそれぞれ形成されている。2つの側壁72bのうち機台長手方向に関して断熱ブロック92の一方側(
図4の紙面左側)の側壁72bの折曲部72cは、該側壁72bの下端部を機台長手方向の他方側に略90°折り曲げることによって形成されている。2つの側壁72bのうち機台長手方向に関して断熱ブロック92の他方側(
図4の紙面右側)の側壁72bの折曲部72cは、該側壁72bの下端部を機台長手方向の一方側に略90°折り曲げることによって形成されている。
【0105】
折曲部72cは、延在方向に関して板部材72の全長にわたっている。折曲部72cの機台長手方向に関する長さは、板部材71と板部材72との機台長手方向に関する間隔とほぼ同じである。折曲部72cは、板部材71の折曲部71cの上方に位置している。
【0106】
板部材71の折曲部71cと板部材72の折曲部72cとは、ボルト(不図示)等によって固定されている。すなわち、板部材71、72は、折曲部71c、72cにおいて互いに固定されている。
【0107】
板間空間75aにおける下方側(本発明の「直交方向の一方側」に相当する)の端部は、板間空間75aを構成する2枚の板部材71、72の折曲部71c、72cによって封止されている。折曲部71c、72cは、2枚の板部材71、72の間隔を確保するスペーサとしても機能する。また、板部材71の折曲部71cにおける突出部71dは、板部材72、73の間隔を確保するスペーサとして機能する。
【0108】
図4及び
図7に示すように、板部材73の下方側の端部には、折曲部73cが形成されている。
図7においては、折曲部73cを分かりやすくするために折曲部73cの下面にハッチングを付している。折曲部73cは、板部材73における2つの側壁73bの下端部にそれぞれ形成されている。2つの側壁73bのうち機台長手方向の一方側(
図4の紙面左側)の側壁73bの折曲部73cは、該側壁73bの下端部を機台長手方向の一方側に略90°折り曲げることによって形成されている。2つの側壁73bのうち機台長手方向の他方側(
図4の紙面右側)の側壁73bの折曲部73cは、該側壁73bの下端部を機台長手方向の他方側に略90°折り曲げることによって形成されている。
【0109】
折曲部73cは、
図7に示すように、延在方向に関して板部材73の全長にわたっている。折曲部73cの機台長手方向に関する長さは、板部材73と板部材74との機台長手方向に関する間隔とほぼ同じである。
【0110】
図7に示すように、板部材73における2つの側壁73bにそれぞれ形成された折曲部73cの下面には、添板78が取り付けられている。板部材73の2つの側壁73bのうち機台長手方向に関して断熱ブロック92の一方側(
図7の紙面上側)に位置する側壁73bの折曲部73cに取り付けられた添板78は、折曲部73cよりも機台長手方向の一方側に本体部61の側壁61bまで延びている。板部材73の2つの側壁73bのうち機台長手方向に関して断熱ブロック92の他方側(
図7の紙面下側)に位置する側壁73bの折曲部73cに取り付けられた添板78は、折曲部73cよりも機台長手方向の他方側に本体部61の側壁61bまで延びている。添板78は、板部材74と本体部61との間隔を確保するスペーサとしても機能する。
【0111】
添板78は、板部材73の2つの側壁73bに形成された各折曲部73cに3つずつ取り付けられている。1つの折曲部73cに取り付けられた3つの添板78は、延在方向に関して互いに異なる位置に配置されている。3つの添板78のうち延在方向の一方側(
図7の紙面左側)に位置する添板78は、延在方向に関して、折曲部71cに形成された3つの突出部71dのうち延在方向の一方側に位置する突出部71dと中央に位置する突出部71dとの間に位置する。3つの添板78のうち延在方向の他方側(
図7の紙面右側)に位置する添板78は、延在方向に関して、折曲部71cに形成された3つの突出部71dのうち延在方向の他方側に位置する突出部71dと中央に位置する突出部71dとの間に位置する。3つの添板78のうち延在方向の中央に位置する添板78は、延在方向に関して、折曲部71cに形成された3つの突出部71dのうち中央に位置する突出部71dと同じ位置に位置する。
【0112】
図4に示すように、板部材74の下方側の端部には、折曲部74cが形成されている。折曲部74cは、板部材74における2つの側壁74bの下端部にそれぞれ形成されている。2つの側壁74bのうち機台長手方向に関して断熱ブロック92の一方側(
図4の紙面左側)の側壁74bの折曲部74cは、該側壁74bの下端部を機台長手方向の他方側に略90°折り曲げることによって形成されている。2つの側壁74bのうち機台長手方向に関して断熱ブロック92の他方側(
図4の紙面右側)の側壁74bの折曲部74cは、該側壁74bの下端部を機台長手方向の一方側に略90°折り曲げることによって形成されている。
【0113】
折曲部74cは、延在方向に関して板部材74の全長にわたっている。折曲部74cの機台長手方向に関する長さは、板部材73と板部材74との機台長手方向に関する間隔とほぼ同じである。折曲部74cは、板部材73の折曲部73cの上方に位置している。
【0114】
板部材73の折曲部73cと板部材74の折曲部74cとは、ボルト(不図示)等によって固定されている。すなわち、板部材73、74は、折曲部73c、74cにおいて互いに固定されている。
【0115】
板間空間75cにおける下方側(本発明の「直交方向の一方側」に相当する)の端部は、板間空間75cを構成する2枚の板部材73、74の折曲部73c、74cによって封止されている。折曲部73c、74cは、2枚の板部材73、74の間隔を確保するスペーサとしても機能する。
【0116】
上述のように、4つの板間空間75のうち、最も加熱部50の近くに位置する板間空間75aは、折曲部71c、72c(本発明の「第1折曲部」に相当する)によって封止されている。また、板間空間75cは、折曲部73c、74c(本発明の「第2折曲部」に相当する)によって封止されている。
【0117】
これら2つの板間空間75a、75cをそれぞれ封止する折曲部71c、72cと折曲部73c、74cとは、いずれも加熱部50よりも下方に位置している。また、折曲部71c、72cと折曲部73c、74cとは、上下方向に関する位置が互いに異なっている。より詳細には、折曲部71c、72cは、折曲部73c、74cよりも上方に位置している。折曲部71c、72cは、折曲部73c、74cに比べて、上下方向に関して加熱部50の近くに位置している。
【0118】
図4に示すように、上下方向に関して、板部材71、72、73、74の下端部とボックス60の本体部61における下壁61dとの間には、第2封止部材83が配置されている。第2封止部材83は、機台長手方向に関してボックス60の本体部61に形成された開口68の両側にそれぞれ配置されている。第2封止部材83は、板間空間75b、75dにおける下方側の端部を封止する。すなわち、第2封止部材83は、板間空間75のうち折曲部により封止されていない全ての板間空間75である板間空間75b、75dにおける下方側の端部を封止する。
【0119】
すなわち、板部材71、72、73、74及び本体部61(上壁61a及び2つの側壁61b)のうち、隣り合う3枚(本発明の「第1板部材、第2板部材及び第3板部材」に相当する)で構成される2つの板間空間は、一方が折曲部71c、72c、折曲部73c、74cにより封止され、他方が第2封止部材83により封止される。例えば、隣り合う3枚の板部材71、72、73で考えた場合、板部材71、72の間の板間空間75aは折曲部71c、72cにより封止され、板部材72、73の間の板間空間75bは第2封止部材83により封止される。
【0120】
ここで、板間空間75bにおける下方側の端部は、板間空間75bの境界部であって、板間空間75bにおいて板間空間75bを構成する板部材72、73で画定されていない部分である。また、板間空間75dにおける下方側の端部は、板間空間75dの境界部であって、板間空間75dにおいて板間空間75dを構成する板部材74及び本体部61で画定されていない部分である。第2封止部材83により板間空間75b、75dにおける下方側の端部が封止されることで、該端部を介する板間空間75b、75dに対する空気の出入りを抑えることができる。
【0121】
第2封止部材83は、板間空間75aを封止する折曲部71cにおける下面(板間空間75a側とは反対側の表面)を被覆する。また、第2封止部材83は、板間空間75cを封止する折曲部73cにおける下面(板間空間75c側とは反対側の表面)を被覆する。すなわち、第2封止部材83は、本発明の「被覆部材」に相当する。つまり、第2封止部材83は、板間空間75のうち折曲部により封止されている全ての板間空間75である板間空間75a、75cにかかる折曲部71c、73cにおける下面を被覆する。
【0122】
ここで、
図8に示すように、機台長手方向に関して開口68の一方側(
図8の紙面左側)に位置する第2封止部材83において、板間空間75aを封止する折曲部71cを被覆する部分の上下方向に関する厚みを厚みTa1とする。また、該第2封止部材83において、板間空間75cを封止する折曲部73cを被覆する部分の上下方向に関する厚みを厚みTb1とする。このとき、厚みTa1は厚みTb1よりも大きい。
【0123】
また、機台長手方向に関して開口68の他方側(
図8の紙面右側)に位置する第2封止部材83において、板間空間75aを封止する折曲部71cを被覆する部分の上下方向に関する厚みを厚みTa2とする。さらに、該第2封止部材83において、板間空間75cを封止する折曲部73cを被覆する部分の上下方向に関する厚みを厚みTb2とする。このとき、厚みTa2は厚みTb2よりも大きい。
【0124】
第2封止部材83は、例えばロックウール等の断熱材で構成されている。第2封止部材83の材質は、ロックウールに限定されるものではない。第2封止部材83の密度は、80kg/m3以上であることが好ましい。第2封止部材83の密度は、80kg/m3未満であってもよい。第2封止部材83を構成する断熱材の密度は、第2封止部材83の通気性能を考慮して定めることが好ましい。第2封止部材83は、通気性能が低い(密度が大きい)ほど板間空間75a、75cからの空気の逃げ量が少なくなり、板間空間75a、75cの密閉度が向上する。
【0125】
図4及び
図6に示すように、各板間空間75には、複数のスペーサ部材81が配置されている。
図4に示すように、スペーサ部材81は、下方向に開放した溝型を有する板間空間75の角部に配置されている。換言すると、スペーサ部材81は、板間空間75の上部における機台長手方向の両端部にそれぞれ配置されている。
【0126】
板間空間75aを封止する折曲部71c、72cと、板間空間75aの隣の板間空間75bに配置されたスペーサ部材81とは、上下方向に関して異なる位置に配置されている。板間空間75cを封止する折曲部73c、74cと、板間空間75cの両隣の板間空間75b、75dにそれぞれ配置されたスペーサ部材81とは、上下方向に関して異なる位置に配置されている。また、
図6に示すように、隣り合う2つの板間空間75にそれぞれ配置されたスペーサ部材81は、延在方向に関して異なる位置に配置されている。
【0127】
上述のように、隣り合う板部材71、72は、折曲部71c、72cにおいて互いに固定されている。また、隣り合う板部材73、74は、折曲部73c、74cにおいて互いに固定されている。隣り合う板部材72、73は、接続部材84によって互いに固定されている。さらに、板部材74とボックス60の本体部61とは、接続部材85によって互いに固定されている。
【0128】
図4及び
図6に示すように、接続部材84は、板間空間75bに配置されている。接続部材84は、下方向に開放した溝型を有する板間空間75bの上部における機台長手方向の中央に配置されている。接続部材84は、板間空間75bにおける延在方向の両端部に配置されている。板部材72、73は、上端部において接続部材84によって互いに固定されている。
【0129】
図4及び
図6に示すように、接続部材85は、板間空間75dに配置されている。接続部材85は、下方向に開放した溝型を有する板間空間75dの上部における機台長手方向の中央に配置されている。接続部材85は、板間空間75dにおける延在方向の両端部に配置されている。板部材74とボックス60の本体部61とは、上端部において接続部材85によって互いに固定されている。
【0130】
(実施形態の特徴)
以上のように、本実施形態の第1加熱装置13は、延在方向に沿って延びた糸走行溝56が形成されており、糸走行溝56を走行する糸Yを加熱する加熱部50と、加熱部50を収容するボックス60と、複数の板部材71、72、73、74と、第1封止部材82と、第2封止部材83と、を備えている。板部材71、72、73、74並びにボックス60の本体部61における上壁61a及び2つの側壁61bは、互いに対向しつつ離隔して並んでおり、延在方向と直交し且つ加熱部50と交わる仮想平面において、加熱部50から遠ざかる方向に並んでいる。第1封止部材82及び第2封止部材83は、対向する2枚の板部材の間及び板部材74と本体部61との間の板間空間75の端部の少なくとも一部を封止する。板間空間75に形成された空気層が、延在方向と直交し且つ加熱部50と交わる仮想平面において、加熱部50から遠ざかる方向に並んで複数設けられている。
【0131】
上述の構成によると、延在方向と直交し且つ加熱部50と交わる仮想平面において加熱部50から遠ざかる方向に並んだ複数の空気層によって、加熱部50からの熱の外部への放出を抑えることができる。また、空気層は、熱伝導率が比較的小さいので、厚みが小さくとも十分な断熱性能を発揮する。さらに、板間空間75の端部の少なくとも一部が第1封止部材82及び第2封止部材83で封止されているので、板間空間75の内側と外側とでの空気の出入りを抑えることができる。これにより、空気層における対流の発生を抑制することができる。したがって、板間空間75を構成する2枚の板部材間や板部材74とボックス60の本体部61との間での熱の移動を起こりにくくし、空気層の断熱性能を一層向上させることができる。よって、装置を大型化させることなく、消費電力を削減することができる。
【0132】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、板間空間75が密閉されている。この構成によると、板間空間75が密閉されているので、板間空間75の内側と外側とでの空気の出入りを確実に抑えることができる。したがって、空気層の断熱性能をさらに向上させることができる。
【0133】
さらに、本実施形態の第1加熱装置13では、各板部材71、72、73、74並びに本体部61の上壁61a及び2つの側壁61bは、延在方向に沿って延びている。第1封止部材82は、断熱材で構成されており、板間空間75における延在方向の両端部をそれぞれ封止する。この構成によると、第1封止部材82で板間空間75における所定方向の両端部を封止することにより、該両端部からの空気の出入りを抑えることができる。また、板間空間75における延在方向の両端部を封止する第1封止部材82が断熱材で構成されているので、第1封止部材82を介して隣り合う板部材間や板部材74とボックス60の本体部61との間で熱が伝わるのを抑制することができる。これにより、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0134】
加えて、本実施形態の第1加熱装置13では、第1封止部材82は、密度が80kg/m3以上である。この構成によると、第1封止部材82を高密度とすることで、第1封止部材82を介して板間空間75の内側と外側とで空気が出入りするのをより確実に抑えることができる。したがって、板間空間75をより確実に密閉することができる。
【0135】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、各板間空間75に配置されたスペーサ部材81をさらに備えている。板間空間75の厚みが均一でない場合には、板間空間75に生じる温度差に起因して板間空間75に形成された空気層に対流が生じやすい。本構成によると、板間空間75にスペーサ部材81を配置することで、板間空間75の厚みを均一にすることができる。したがって、空気層での対流の発生が抑制されるので、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0136】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、隣り合う2つの板間空間75にそれぞれ配置されたスペーサ部材81は、延在方向に関して異なる位置に配置されている。隣り合う2つの板間空間75にそれぞれ配置されたスペーサ部材81が延在方向に関して同じ位置に配置されている場合には、これら2つのスペーサ部材81を介して板部材間や板部材とボックス60の本体部61との間で熱が移動しやすい。本構成では、2つのスペーサ部材81を介して板部材間や板部材とボックス60の本体部61との間で熱が移動しにくくし、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0137】
加えて、本実施形態の第1加熱装置13では、板間空間75aにおける下方側の端部は、板間空間75aを構成する板部材71、72の下方側の端部が折り曲げられた折曲部71c、72cにより封止されている。また、板間空間75cにおける下方側の端部は、板間空間75cを構成する板部材73、74の下方側の端部が折り曲げられた折曲部73c、74cにより封止されている。隣り合う2つの板間空間75において、一方の板間空間75(75a、75c)を封止する折曲部71c、72c、折曲部73c、74cと、他方の板間空間75(75b、75d)に配置されたスペーサ部材81とは、上下方向に関して異なる位置に配置されている。この構成によると、板部材71、72、73、74の一部である折曲部71c、72c、73c、74cで板間空間75a、75cを封止することで、板間空間75a、75cを密閉することができる。また、折曲部71c、72c、73c、74c及びスペーサ部材81を介して板部材間や板部材とボックス60の本体部61との間で熱が移動しにくくし、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0138】
さらに、本実施形態の第1加熱装置13では、折曲部71c、72cは板部材71、72の間隔を確保するスペーサとして機能する。また、折曲部73c、74cは板部材73、74の間隔を確保するスペーサとして機能する。本構成によると、折曲部71c、72c、折曲部73c、74cにより、板間空間75a、75cの厚みを均一にすることができる。
【0139】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、板間空間75a、75cにおける下方側の端部は、折曲部71c、72c、折曲部73c、74cにより封止されている。板間空間75b、75dにおける下方側の端部は、断熱材で構成された第2封止部材83により封止されている。隣り合う複数の板間空間75が、いずれも折曲部で封止されている場合、各板間空間75を封止する折曲部を介して、複数の板部材間で次々と熱が伝わる。本構成によると、板間空間75b、75dは、断熱材で構成された第2封止部材83により封止される。したがって、折曲部71c、72cを介して板部材71、72間で伝わった熱が、板部材73まで伝わるのを抑制することができる。また、折曲部73c、74cを介して板部材73、74間で伝わった熱が、ボックス60の本体部61まで伝わるのを抑制することができる。これにより、各板間空間75の気密を保ちつつ、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0140】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、板間空間75aを封止する折曲部71c、72cと板間空間75cを封止する折曲部73c、74cとは、上下方向に関する位置が互いに異なっている。板間空間75a、75cをそれぞれ封止する折曲部71c、72c、折曲部73c、74cの上下方向に関する位置が同じである場合には、これら折曲部71c、72c、折曲部73c、74cを介して、異なる板部材間で熱が移動するおそれがある。本構成では、折曲部71c、72c、折曲部73c、74cを介して異なる板部材間で熱が移動しにくく、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0141】
さらに、本実施形態の第1加熱装置13では、第2封止部材83は、板間空間75aを封止する折曲部71cにおける板間空間75a側とは反対側の表面と、板間空間75cを封止する折曲部73cにおける板間空間75c側とは反対側の表面と、をそれぞれ覆う。この構成によると、第2封止部材83により、折曲部71c、73cから熱が放出されるのを抑制することができる。とりわけ、加熱部50の近くに位置しており高温となる板部材71の折曲部71cから熱が放出されるのを確実に抑制することができる。
【0142】
加えて、本実施形態の第1加熱装置13では、第2封止部材83は、板間空間75a、75cを封止する折曲部71c、73cの表面を覆う被覆部材を兼ねている。この構成によると、被覆部材が第2封止部材83とは別部材である場合に比べて、第1加熱装置13の構成を簡略化することができる。
【0143】
さらに、本実施形態の第1加熱装置13では、第2封止部材83は、板間空間75のうち折曲部により封止されていない全ての板間空間75b、75dにおける下端部を覆い、且つ、板間空間75のうち折曲部により封止されている全ての板間空間75a、75cにかかる折曲部71c、73cの下面を被覆する。この構成によると、1つの第2封止部材83により、全ての板間空間75の気密を保ちつつ、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる構成を実現できる。
【0144】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、板間空間75aを封止する折曲部71c、72cは、板間空間75cを封止する折曲部73c、74cに比べて、上下方向に関して加熱部50の近くに位置している。そして、第2封止部材83は、折曲部71cを被覆する部分の上下方向に関する厚みTa1、Ta2が、折曲部73cを被覆する部分の上下方向に関する厚みを厚みTb1、Tb2に比べて大きい。この構成によると、上下方向に関して加熱部50の近くに位置しており、高温となる折曲部71cから熱が放出されるのを確実に抑制することができる。
【0145】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、板部材71、72とは、その下端部に形成された折曲部71c、72cにおいて互いに固定されている。板部材73、74とは、その下端部に形成された折曲部73c、74cにおいて互いに固定されている。板部材72、73は、上端部において接続部材84により互いに固定されている。板部材74とボックス60の本体部61とは、上端部において接続部材85により互いに固定されている。この構成によると、板部材71、72が固定される折曲部71c、72cによって、板部材71、72間の層厚を保つことができる。板部材73、74が固定される折曲部73c、74cによって、板部材73、74間の層厚を保つことができる。さらに、板部材72、73を固定する接続部材84によって、板部材72、73間の層厚を保つことができる。板部材74とボックス60の本体部61とを固定する接続部材85によって、板部材74とボックス60の本体部61との間の層厚を保つことができる。ここで、板部材間や板部材74とボックス60の本体部61と間の固定部分同士が近くに配置されている場合には、これら固定部分を介して板部材間や板部材とボックス60の本体部61との間で熱が移動しやすい。本構成では、板部材71、72の固定部分(折曲部71c、72cが形成されている部分)及び板部材73、74の固定部分(折曲部73c、74cが形成されている部分)と、板部材72、73の固定部分(接続部材84により接続されている部分)及び板部材74とボックス60の本体部61との固定部分(接続部材85により接続されている部分)と、を上下方向に関して離すことができる。したがって、固定部分を介して板部材間や板部材とボックス60の本体部61との間で熱が移動しにくくし、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0146】
さらに、本実施形態の第1加熱装置13では、第2封止部材83は、断熱材で構成されており、板間空間75b、75dにおける下方側の端部を封止する。この構成によると、第2封止部材83で板間空間75b、75dにおける下方側の端部を封止することにより、該端部からの空気の出入りを抑えることができる。また、第2封止部材83が断熱材で構成されているので、第2封止部材83を介して隣り合う板部材72、73間や板部材74とボックス60の本体部61との間で熱が伝わるのを抑制することができる。これにより、空気層による断熱性能をより一層向上させることができる。
【0147】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、第2封止部材83は、密度が80kg/m3以上である。この構成によると、第2封止部材83を高密度とすることで、第2封止部材83を介して板間空間75b、75dの内側と外側とで空気が出入りするのを確実に抑えることができる。したがって、板間空間75b、75dをより確実に密閉することができる。
【0148】
加えて、本実施形態の第1加熱装置13では、空気層の層厚は、5mm以上、且つ、15mm未満である。空気層の厚みが大きいと、対流が発生しやすい。空気層で対流が発生すると、空気層が形成された板間空間75を構成する2枚の板部材の間や板部材74とボックス60の本体部61との間での熱の移動が起こりやすくなる。一方、空気層の厚みが小さいと、隣り合う板部材同士や板部材74とボックス60の本体部61とが接触してしまうおそれがある。その場合、接触部分を介して隣り合う板部材間や板部材74とボックス60の本体部61との間で熱が移動する。本構成によると、空気層の厚みを、空気層における対流の発生を抑制可能な大きさとしつつ、且つ、板部材同士や板部材74とボックス60の本体部61とが接触しにくい大きさとすることができる。これにより、空気層による断熱性能を一層向上させることができる。
【0149】
さらに、本実施形態の第1加熱装置13は、複数の板部材71、72、73、74のうち最も加熱部50の近くに配置された板部材71と加熱部50との間に配置された断熱部材80をさらに備えている。加熱部50の表面には、加熱部50を構成する各部材を固定するためのボルト59等が露出しており、その表面に凹凸がある。したがって、加熱部50の表面と板部材71との間に、厚みが均一であり断熱性能が高い空気層を形成することは困難である。本構成では、加熱部50と板部材71との間に断熱部材80を配置することで、加熱部50からの熱の外部への放出をさらに抑制することができる。
【0150】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、糸走行溝56は、加熱部50に画定されている。この構成によると、糸Yを効率よく加熱することができる。
【0151】
加えて、本実施形態の第1加熱装置13では、糸走行溝56は下方に開放しており、4つの板部材71、72、73、74及び本体部61の上壁61a及び2つの側壁61bは、糸走行溝56の下端と対向する領域には配置されていない。この構成によると、糸走行溝56に糸Yを挿入する際に糸Yが通過する領域となる、糸走行溝56の下端と対向する領域を空けておくことができる。
【0152】
また、本実施形態の第1加熱装置13では、各板部材71、72、73、74は、延在方向に沿って延びており、且つ、下方向に開放した溝型である。複数の板部材71、72、73、74並びに本体部61の上壁61a及び2つの側壁61bは、入れ子状に配置されており、最も内側に配置された板部材71が加熱部50を囲むように配置されている。この構成によると、糸走行溝56に糸Yを挿入する際に糸が通過する領域を空けつつ、隣り合う2枚の板部材間や板部材74と本体部61との間の板間空間75に形成された空気層により加熱部50を囲むことができる。したがって、加熱部50からの熱の外部への放出を効果的に抑えることができる。
【0153】
さらに、本実施形態の第1加熱装置13では、4つの板間空間75のうち、最も加熱部50の近くに位置する板間空間75aを構成する2枚の板部材71、72の対向する表面は、いずれも鏡面仕上げされている。この構成によると、板部材71、72の鏡面により、加熱部50からの輻射熱を抑制することができる。したがって、輻射による伝熱を抑制し、消費電力をさらに削減することができる。また、多くの板部材の表面を鏡面仕上げするとコストが増大する。本構成では、最も加熱部50の近くに位置する板間空間75aを画定する表面を鏡面仕上げとすることで、加熱部50からの輻射熱を最も効果的に抑制しつつ、コストの増大を抑えることができる。さらに、鏡面仕上げされた表面は、汚れが目立ちやすい。本構成では、板間空間75aを画定する表面は外からは見えないので、鏡面に付着した汚れが人目につきにくい。
【0154】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0155】
上述の実施形態においては、仮撚加工機1の第1加熱装置13に本発明を適用する場合について説明したが、本発明は第2加熱装置19に適用することもできる。以下、上述の実施形態の一変形例として、第2加熱装置19に本発明を適用する場合について説明する。
【0156】
上述のように、第2加熱装置19は1つのスパンに1つずつ設けられるものである。
図9及び
図10に示すように、第2加熱装置19は、複数の加熱部150を備えている。加熱部150は、
図10及び
図11(b)に示すように上下方向に沿って延びている。すなわち、本変形例においては、上下方向が、本発明の「所定方向」に相当する。
【0157】
図11(a)、(b)に示すように、加熱部150は、上下方向に沿って延びるパイプ151と、パイプ151内に差し通された2本のパイプ152a、152bと、を有している。パイプ151内は、熱媒体154が充填されている。なお、
図10に示すように、複数の加熱部150のパイプ151における上端部は、パイプ153によって互いに接続されている。パイプ153により、複数の加熱部150のパイプ151間で熱媒体154が流通する。パイプ152a、152b内は、それぞれ糸Ya、Ybの糸走行通路となっている。第2加熱装置19は、熱媒体154が加熱されることで、パイプ152a、152b内の空間の空気を加熱し、パイプ152a、152b内を走行する糸Ya、Ybを加熱する。
【0158】
図9及び
図10に示すように、複数の加熱部150は、ボックス160に収容されている。複数の加熱部150とボックス160の内壁面との間には、板部材171、172、173、174が配置されている。ボックス160の本体部161及び板部材171、172、173、174は、いずれも上下方向と直交する断面において、機台長手方向に関して長尺な矩形形状を有している。ボックス160の本体部161は、本発明の「板部材」に相当する。
【0159】
板部材171、172、173、174は、互いに対向しつつ離隔して並んでいる。板部材171、172、173、174は、上下方向と直交し且つ加熱部150と交わる仮想平面(例えば
図9の紙面)において、加熱部150から遠ざかる方向に並んでいる。最も内側に配置された板部材171が、複数の加熱部150を取り囲んでいる。
【0160】
対向する2枚の板部材の間に、板間空間175a、175b、175cが形成される。また、板部材174と本体部161との間には、板間空間175dが形成される。これら4つの板間空間175a、175b、175c、175d(175)には、それぞれ空気層が形成される。すなわち、上下方向と直交し且つ加熱部150と交わる仮想平面(例えば
図9の紙面)において、加熱部150から遠ざかる方向に並んで、各板間空間175に形成された4つの空気層が並んでいる。
【0161】
図10に示すように、板間空間175の上端部は封止部材182によって封止されている。また、板間空間175の下端部は封止部材183によって封止されている。封止部材182、183は、本発明の「第1封止部材」に相当する。封止部材182及び封止部材183は、いずれか一方のみが設けられていればよい。封止部材182によって封止されるのは、複数の175a、175b、175c、175dのうちの少なくとも1つであってもよい。封止部材183によって封止されるのは、複数の175a、175b、175c、175dのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0162】
かかる第2加熱装置19においては、上述の実施形態の第1加熱装置13と同様に、装置を大型化させることなく、消費電力を削減することができる。
【0163】
さらに、上述の実施形態においては、第1封止部材82により、板間空間75における延在方向の両端部がそれぞれ封止され、第2封止部材83によって板間空間75における下方側の端部が封止される場合について説明したが、これには限定されない。第1加熱装置13は、第1封止部材82及び第2封止部材83のいずれか一方のみを備えていればよい。第1加熱装置13は、板間空間75の端部の少なくとも一部を封止する封止部材を備えていればよい。
【0164】
また、上述の実施形態においては、全ての板間空間75が密閉されている場合について説明した。しかしながら、板間空間75は必ずしも密閉されていなくてもよい。また、複数の板間空間75のうちの一部の板間空間75のみが密閉されていてもよい。
【0165】
さらに、上述の実施形態においては、断熱材で構成された第1封止部材82により、板間空間75における延在方向の両端部をそれぞれ封止する場合について説明したが、これには限定されない。第1封止部材82により封止されるのは、板間空間75における延在方向の両端部のうちの一方のみであってもよい。また、第1封止部材82により封止されるのは、複数の板間空間75a、75b、75c、75dのうちの少なくとも1つであってもよい。第1封止部材82は、断熱材で構成されたものでなくてもよい。
【0166】
また、上述の実施形態においては、各板間空間75に複数のスペーサ部材81が配置されている場合について説明したが、これには限定されない。スペーサ部材81は、各板間空間75に1つずつ配置されていてもよい。スペーサ部材81は、複数の板間空間75のうちの一部の板間空間75のみに配置されていてもよい。いずれも板間空間75にもスペーサ部材81が配置されていなくてもよい。
【0167】
さらに、上述の実施形態においては、隣り合う2つの板間空間75にそれぞれ配置されたスペーサ部材81が、延在方向に関して異なる位置に配置されている場合について説明した。しかしながら、隣り合う2つの板間空間75にそれぞれ配置されたスペーサ部材81は、延在方向に関して同じ位置に配置されていてもよい。
【0168】
加えて、上述の実施形態においては、隣り合う2つの板間空間75において、一方の板間空間75(75a、75c)を封止する折曲部71c、72c、折曲部73c、74cと、他方の板間空間75(75b、75d)に配置されたスペーサ部材81とは、上下方向に関して異なる位置に配置されている場合について説明した。しかしながら、折曲部71c、72c、折曲部73c、74cと、板間空間75b、75dに配置されたスペーサ部材81とは、上下方向に関して同じ位置に配置されていてもよい。
【0169】
さらに、上述の実施形態においては、板間空間75a、75cにおける下方側の端部は、折曲部71c、72c、折曲部73c、74cにより封止されており、板間空間75b、75dにおける下方側の端部は、断熱材で構成された第2封止部材83により封止されている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、折曲部が形成されておらず、全ての板間空間75の下方側の端部が第2封止部材83により封止されていてもよい。また例えば、折曲部が形成されておらず、複数の板間空間75、75a、75b、75c、75dのうちの少なくとも1つが第2封止部材83により封止されていてもよい。さらに、第2封止部材83は、断熱材で構成されていなくてもよい。
【0170】
また、上述の実施形態においては、1つの第2封止部材83が、板間空間75b、75dにおける下方側の端部を封止し、且つ、板間空間75a、75cを封止する折曲部71c、73cの表面を覆う場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、板間空間75b、75dにおける下方側の端部を封止する部材と、板間空間75a、75cを封止する折曲部71c、73cの表面を覆う部材とは、別部材であってもよい。さらに、折曲部により封止された板間空間(すなわち板間空間75a、75c)のうち、加熱部50の最も近くに位置する板間空間75aを封止する折曲部71cの表面のみが、断熱材で構成された第2封止部材83で覆われていてもよい。板間空間75a、75cを封止する折曲部71c、73cの両方の表面が、断熱材で構成された第2封止部材83で覆われていなくてもよい。
【0171】
さらに、上述の実施形態においては、板間空間75aを封止する折曲部71c、72cと板間空間75cを封止する折曲部73c、74cとは、上下方向に関する位置が互いに異なっている場合について説明した。しかしながら、折曲部71c、72cと折曲部73c、74cとの、上下方向に関する位置は同じであってもよい。
【0172】
加えて、上述の実施形態においては、第2封止部材83は、折曲部71cを被覆する部分の上下方向に関する厚みTa1、Ta2が、折曲部73cを被覆する部分の上下方向に関する厚みを厚みTb1、Tb2に比べて大きい場合について説明した。しかしながら、厚みTa1、Ta2は、厚みTb1、Tb2以下であってもよい。
【0173】
さらに、上述の実施形態においては、板部材72、73は、上壁72a、73aにおいて接続部材84により互いに固定されており、板部材74とボックス60の本体部61とは、上壁74a、61aにおいて接続部材85により互いに固定されている場合について説明した。板部材72、73の固定部分(接続部材84により接続されている部分)及び板部材74とボックス60の本体部61との固定部分(接続部材85により接続されている部分)は、各部材の上端部に限定されるものではなく、例えば下端部であってもよい。
【0174】
また、上述の実施形態においては、板部材71と加熱部50との間に断熱部材80が配置されている場合について説明したが、断熱部材80は配置されていなくてもよい。
【0175】
また、上述の実施形態においては、ボックス60の本体部61と加熱部50との間に4枚の板部材71、72、73、74が配置されており、板部材71、72、73、74及び本体部61の間に4つの板間空間75が形成されている場合について説明したが、これには限定されない。板間空間75は、少なくとも2つ形成されていればよい。換言すると、本発明の板部材に相当する部材は、少なくとも3枚あればよい。板間空間75は、5つ以上形成されていてもよい。
【0176】
さらに、上述の実施形態においては、4つの板部材71、72、73、74及び本体部61の上壁61a及び2つの側壁61bは、糸走行溝56の下端と対向する領域には配置されていない場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、糸走行溝56の下端と対向する領域に、板間空間を構成する板部材が配置されていてもよい。この場合、糸走行溝56の下端と対向する領域に配置された板部材は、該領域から移動可能、又は、装置に対して取り外し可能に構成されていることが好ましい。
【0177】
また、上述の実施形態においては、各板部材71、72、73、74は、延在方向に沿って延びており、且つ、下方向に開放した溝型である場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、板部材は、折り曲げられていない平板であってもよい。
【0178】
また、上述の実施形態においては、4つの板間空間75のうち、最も加熱部50の近くに位置する板間空間75aを構成する2枚の板部材71、72の対向する表面が、鏡面仕上げされている場合について説明したが、これには限定されない。2枚の板部材71、72の対向する表面のうち、少なくとも加熱部50に近い方の板部材71における板間空間75aを画定する表面が鏡面仕上げされていることが好ましい。全ての板部材71~74及び本体部61の表面が、鏡面仕上げされていてもよい。板部材71~74及び本体部61の表面が、いずれも鏡面仕上げされていなくてもよい。
【0179】
さらに、上述の実施形態では、加熱部50に糸走行溝56の全体が形成されている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、加熱部50は、糸走行溝56の一部を画定するものであってもよい。つまり、加熱部50は、糸走行溝56の底部のみを画定してもよい。また例えば、加熱部50は、糸走行溝56の側部のみを画定してもよい。
【0180】
また、上述の実施形態では、糸Yは、加熱部50において接糸面55と接触することにより、接糸面55を介して加熱ブロック52から熱を受け取る場合について説明したが、これには限定されない。加熱部50は、温めた空気によって糸Yを加熱する非接触方式であってもよい。
【0181】
加えて、上述の実施形態では、加熱部50は、熱源51と、熱源51により加熱される加熱ブロック52と、を備えている場合について説明したが、これには限定されない。例えば、加熱部は、中空の部材の内部にダウサム等の熱媒体を循環させる構造であってもよい。
【0182】
さらに、上述の実施形態では、本発明にかかる糸加熱装置を糸Yに仮撚加工を施す仮撚加工機1に適用する場合について説明したが、これには限定されない。本発明の糸加熱装置は、仮撚加工に限定されず、合糸加工等の種々の加工を合成繊維からなる糸に施す加工機に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0183】
1 仮撚加工機
13 第1加熱装置(糸加熱装置)
19 第2加熱装置(糸加熱装置)
50 加熱部
56 糸走行溝(糸走行通路)
61a 上壁(板部材)
61b 側壁(板部材)
71、72、73、74 板部材
71c、72c 折曲部(第1折曲部)
73c、74c 折曲部(第2折曲部)
75、75a、75b、75c、75d 板間空間
80 断熱部材
81 スペーサ部材
82 第1封止部材(封止部材)
83 第2封止部材(封止部材、被覆部材)
84、85 接続部材
150 加熱部
161 本体部(板部材)
171、172、173、174 板部材
175、175a、175b、175c、175d 板間空間
182、183 封止部材
Y 糸