(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007279
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】換気装置および換気方法
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20240111BHJP
F24F 13/08 20060101ALI20240111BHJP
E06B 7/10 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
F24F13/02 D
F24F13/08 A
E06B7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108682
(22)【出願日】2022-07-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 「公益社団法人 日本空気清浄協会」発行の「第39回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会予稿集」(発行日 令和4年4月)の第72頁~第75頁に掲載。 令和4年4月12日に早稲田大学国際会議場B会場およびWEBで開催された「公益社団法人 日本空気清浄協会」主催の「第39回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会」にて発表。
(71)【出願人】
【識別番号】503428703
【氏名又は名称】オイレスECO株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 好英
(72)【発明者】
【氏名】細川 清和
(72)【発明者】
【氏名】上野 祐行
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 大作
【テーマコード(参考)】
2E036
3L080
3L081
【Fターム(参考)】
2E036JA06
2E036KA05
2E036KA06
2E036LA01
3L080AA02
3L080AA03
3L080AA05
3L081AA01
3L081AB02
3L081BA01
(57)【要約】
【課題】メンテナンスが容易であり、かつ突風による影響を抑制することができる換気技術を提供する。
【解決手段】外気を室内に取り入れるための換気装置1は、室外側開口部100および室内側開口部101を有する主流路10と、主流路10の途中から分岐し、分岐部111を有する副流路11と、主流路10内に配置され、室外側開口部100に流入した所定値以上の風速の気流の一部を副流路11に分配する気流方向変更板12と、副流路11内あるいは副流路11の室内側開口部111に配置され、通過する気流の風量を制限する抵抗体13と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を室内に取り入れるための換気装置であって、
室外側開口部および室内側開口部を連結する主流路と、
前記主流路の途中から分岐し、室内側開口部に連結する副流路と、
前記主流路内に配置され、前記室外側開口部に流入した所定値以上の風速の気流の一部を前記副流路に分配する気流方向変更板と、
前記副流路内あるいは前記副流路の前記室内側開口部に配置され、通過する気流の風量を制限する抵抗体と、を備えている
ことを特徴とする換気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の換気装置であって、
前記気流方向変更板は、
前記主流路の上流側に対して凹面形状、または前記主流路の気流を前記副流路に導く角度に設置された平面である
ことを特徴とする換気装置。
【請求項3】
請求項1に記載の換気装置であって、
前記抵抗体は、通気性を有する多孔質体、メッシュ構造体、あるいは不織布で形成されている
ことを特徴とする換気装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の換気装置であって、
前記主流路の前記室内側開口部および前記副流路の前記室内側開口部は、同じ室内に向け設置された吹出口に繋がれている
ことを特徴とする換気装置。
【請求項5】
外気を室内に取り入れるための換気方法であって、
室外および前記室内を繋ぐ主流路と、前記主流路の途中から分岐して前記室内に繋がる副流路と、を設け、
前記主流路に流入した所定値以上の風速の気流の一部を、前記主流路内に配置された気流方向変更板により前記副流路に分配し、当該気流の残りを、前記主流路内を通過させて前記室内に送気し、
前記副流路に誘導された気流を、前記副流路内あるいはその出口に配置された抵抗体により風力を弱めて前記室内に送気する
ことを特徴とする換気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気を室内に取り入れるための換気技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窓の開閉による換気が困難な高層ビル等の建築物に換気装置が用いられている。例えば、特許文献1には、室内側開口部と、室外側開口部と、室内側開口部および室外側開口部間を連通する換気空間と、を有する枠体と、換気空間内に配置された風量調整板および複数の弾性体と、を有する換気装置が開示されている。ここで、風量調整板は、一方の端部を回転軸として、室外側開口部からの流入風量が増大すると室内側開口部を閉じる方向に回転する。また、複数の弾性体は、風量調整板が室内側開口部を閉じる方向に回転するのを段階的に抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の換気装置は、一方の端部を回転軸として回転可能に取り付けられた風量調整板が室内側開口部を閉じる方向に回転するのを、複数の弾性体により段階的に抑制する構造、つまり可動部を有する構造であるため、その性能を維持するためには定期的なメンテナンスが必要である。また、突風が室外側開口部に吹き込んだ場合に、風量調整板の室内側開口部を閉じる方向への回転の追従が遅れ、室内側開口部から吹き出す気流の風速が瞬間的に増大してしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、メンテナンスが容易であり、かつ突風による影響を抑制することができる換気技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、室外および室内を繋ぐ主流路と、主流路の途中から分岐して室内に繋がる副流路と、を設けた。そして、主流路に、所定値以上の風速の気流の一部を副流路に分配する気流方向変更板を配置するとともに、副流路に、通過する気流の風量を制限する抵抗体を配置した。ここで、抵抗体には、通気性を有する多孔質体、メッシュ構造体、不織布(例えばエアフィルタ)等が用いられる。
【0007】
例えば、本発明は、
外気を室内に取り入れるための換気装置であって、
室外側開口部および室内側開口部を連結する主流路と、
前記主流路の途中から分岐し、室内側開口部に連結する副流路と、
前記主流路内に配置され、前記室外側開口部に流入した所定値以上の風速の気流の一部を前記副流路に分配する気流方向変更板と、
前記副流路内あるいは前記副流路の前記室内側開口部に配置され、通過する気流の風量を制限する抵抗体と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、主流路の室外側開口部に流入した気流のうち、所定値以上の風速の気流の一部は、気流方向変更板により副流路に分配され、所定値未満の風速の気流は主流路内を通過して室内に送気される。また、副流路に誘導された所定値以上の風速の気流は、抵抗体により風量を制限されて室内に送気される。このように、本発明によれば、可動部を用いることなく、室内に取り入れる気流の風力を調整することができるので、使用により故障する可能性が低く、メンテナンスが容易である。また、突風が主流路に吹き込んだ場合でも、瞬時に応答して、室内に取り入れる気流の風力が瞬間的に増大するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(A)は、本発明の一実施の形態に係る換気装置1が適用された窓構造の概略正面図であり、
図1(B)は、
図1(A)に示す窓構造のA-A断面概略拡大図である。
【
図2】
図2は、換気装置1を通過する気流の第1の例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、換気装置1を通過する気流の第2の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1(A)は、本実施の形態に係る換気装置1が適用された窓構造の概略正面図であり、
図1(B)は、
図1(A)に示す窓構造のA-A断面概略拡大図である。なお、
図1(B)において、本実施の形態に係る換気装置1の部分の断面をハッチングで描画し、それ以外の窓構造の断面は主に線で描画している。
【0012】
図示するように、本実施の形態に係る換気装置1は、高層ビル等に設置される窓ガラス2の窓枠3のペリカウンタ(下枠部)30において、室外側の開口である吸込口31と、室内外の開口である吹出口32との間に配置される。
【0013】
換気装置1は、主流路10と、副流路11と、気流方向変更板12と、抵抗体13と、を備えている。
【0014】
主流路10は、ペリカウンタ30の吸込口31に繋がる室外側開口部100と、ペリカウンタ30の吹出口32に繋がる室内側開口部101とを連結している。
【0015】
副流路11は、主流路10の途中から分岐しており、主流路10の途中で壁面103側に設けられた分岐部110と、ペリカウンタ30の吹出口32に繋がる室内側開口部111と、を有する。
【0016】
気流方向変更板12は、主流路10内の分岐部110と反対側の壁面102において、分岐部110の近傍に配置される。ペリカウンタ30の吸込口31を介して室外側開口部100から流入した気流は、気流方向変更板12に衝突して、その進行方向を、その気流の勢い(慣性力)に応じて変更する。具体的には、所定の閾値風速(設置状況等に応じて異なる)未満の気流については気流方向変更板12に衝突後も、その殆どが主流路10内を通過するが、所定の閾値風速以上の気流については、気流方向変更板12に衝突後、その一部が進行方向を変更し、分岐部110から副流路11へ分配される。
【0017】
ここで、閾値風速は、気流方向変更板12のサイズL(
図1参照)、設置位置、設置角度を変更することにより調整することができる。
【0018】
例えば、気流方向変更板12のサイズLを大きくする程、閾値風速が低くなり、主流路10から副流路11に分配される気流が増加し、室内側開口部101を通過する気流が減少する。そして、気流方向変更板12のサイズLを所定サイズまで大きくすると、ペリカウンタ30の吸込口31を介して室外側開口部100に流入した気流の殆どが副流路11に分配される。
【0019】
また、気流方向変更板12を主流路10の室外側開口部100に近づく方向に移動すると、閾値風速が低くなり、分岐部110から副流路11に分配される気流が増加し、室内側開口部101を通過する気流が減少する。一方、気流方向変更板12を主流路10の室内側開口部101に近づけると、閾値風速が高くなり、分岐部110から副流路11に分配される気流が減少し、室内側開口部101を通過する気流が増加する。
【0020】
なお、気流方向変更板12は、室外側開口部100から流入した気流が衝突した際にその勢い(慣性力)に応じて気流の進行風向を効果的に変化させるとともに、その際に発生する渦、乱流を抑制できるような形状が好ましい。例えば、気流方向変更板12には、主流路10の室外側開口部100に対して断面円弧状となる凹面体(例えば半円筒体)が用いられる。
【0021】
抵抗体13は、副流路11の室内側開口部111に配置され、通過する気流の風量を限定する。抵抗体13には、通気性を有する多孔質体、メッシュ構造体、不織布(例えばエアフィルタ)等が用いられる。
【0022】
なお、本実施の形態では、抵抗体13を副流路11の室内側開口部111に配置しているが、抵抗体13は、副流路11の室内側開口部111より内側に配置してもよい。
【0023】
図2は、
図1(B)において、換気装置1を通過する気流の第1の例(室外側開口部100から流入した気流が閾値風速未満の場合)を説明するための図である。なお、
図2では、
図1(B)に示す換気装置1以外の窓構造の一部を省略している。
【0024】
図示するように、ペリカウンタ30の吸込口31を介して主流路10の室外側開口部100から流入した気流Sは、主流路10を通過して気流方向変更板12に衝突する。ここで、気流Sの風速が閾値風速未満の場合、気流Sの勢い(慣性力)が弱く、このため、殆どの気流が副流路11に分配されることなく、室内側開口部101を介してペリカウンタ30の吹出口32から吹き出す。なお、一部の気流が分岐部110から副流路11に分配されたとしても、副流路11内に設置された抵抗体13のため、室内側開口部111を通過することはない。
【0025】
図3は、換気装置1を通過する気流の第2の例(室外側開口部100から流入した気流が閾値風速以上の場合)を説明するための図である。なお、
図3では、
図2と同様に、
図1(B)に示す換気装置1以外の窓構造の一部を省略している。
【0026】
図示するように、ペリカウンタ30の吸込口31を介して主流路10の室外側開口部100から流入した気流S´は、主流路10を通過して気流方向変更板12に衝突する。ここで、気流S´の風速が閾値風速以上の場合、気流S´の勢い(慣性力)が強いため、気流方向が分岐部110の方向に変化し、その一部が副流路11に分配される。このとき、室内側開口部111に分配された気流は、抵抗体13によりここを通過する風量が限定された後、ペリカウンタ30の吹出口32から吹き出す。なお、気流方向変更板12に衝突した気流S´のうち、副流路11に分配されなかった残りの気流は、室内側開口部101を介してペリカウンタ30の吹出口32から吹き出す。
【0027】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0028】
本実施の形態では、主流路10の室外側開口部100に流入した気流のうち、閾値風速未満の気流は副流路11に誘導されることなく室内側開口部101を通過して室内に送気される。一方、閾値風速以上の気流は、気流方向変更板12によりその一部が副流路11に誘導されるが、抵抗体13により風量を制限されて室内に送気される。このように、本実施の形態によれば、可動部を用いることなく、室内に取り入れる気流の風力を調整することができるので、使用により故障する可能性が低く、メンテナンスが容易である。また、突風が主流路10に吹き込んだ場合でも、瞬時に応答して、室内に取り入れる気流の風力が瞬間的に増大するのを抑制することができる。
【0029】
また、本実施の形態では、抵抗体13として、通気性を有する多孔質体、メッシュ構造体、不織布等のエアフィルタを用いている。したがって、副流路11に流入する強風(閾値風速以上の気流)に含まれる粉塵を抵抗体13で除去する効果も期待できる。
【0030】
また、本実施の形態では、室内側開口部101および副流路11の室内側開口部111がペリカウンタ30の同じ吹出口32に繋がれている。したがって、吹出口32に開閉機構を設けることにより、室内側開口部101および副流路11の室内側開口部111の両方を同時に開閉することができ、利便性が向上する。
【0031】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で変更が可能である。
【0032】
例えば、上記実施の形態では、気流方向変更板12を気流の上流側に対して凹面としたが、本発明はこれに限定されない。主流路10の気流を副流路11に導くよう気流に対して適正な角度で設置された平面としてもよい。
【0033】
また、上記実施の形態では、主流路10が水平方向から垂直方向に約90度屈曲する箇所に気流方向変更板12および分岐部110を配置しているが、本発明はこれに限定されない。主流路10の水平方向あるいは垂直方向に直線的な箇所に気流方向変更板12および分岐部110を配置してもよい。また、本発明は、主流路10のすべてが水平方向あるいは垂直方向に直線的な構造を持つ換気装置にも適用することもできる。
【0034】
また、上記実施の形態では、主流路10の壁面102を外側、壁面103を内側として、主流路10が約90度屈曲しているため、気流は主流路10内の壁面102に近い部分を流れる。本発明では気流の勢い(慣性力)を利用するため、上記実施の形態ではその効果を得やすいよう、気流方向変更板12および室内側開口部101は、主流路10内の壁面102側に、分岐部110、副流路11、室内側開口部111および抵抗体13は壁面103側に配置されている。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0035】
特に、主流路10の水平方向、あるいは垂直方向に直線的な箇所に本発明を適用する場合、または主流路10のすべてが水平方向、あるいは垂直方向に直線的な構造を持つ換気装置に本発明を適用する場合には、主流路10に対して上記実施の形態を反転した向きに適用してもよい。すなわち、気流方向変更板12および室内側開口部101を壁面103側に、分岐部110、副流路11、室内側開口部111および抵抗体13を壁面102側に配置してもよい。この場合、気流方向変更板12のサイズLを大きくする程、閾値風速が低くなり、主流路側開口部110から副流路11に分配される気流が増加する特性や、気流方向変更板12を主流路10の室外側開口部100に近づける方向に移動することで閾値風速が低くなり、主流路側開口部110から副流路11に分配される気流が増加する特性は、上記実施の形態と同様に得ることができる。
【0036】
また、上記の実施の形態では、換気装置1を窓枠3のペリカウンタ(下枠部)30に設置している。しかし、本発明はこれに限定されない。換気装置1は、窓枠3の上枠部、左側枠部、あるいは右側枠部に設置してもよい。また、窓ガラス2のない建物の壁面に設置してもよい。すなわち、換気装置1は、外気を主流路10の室外側開口部100から取り込んで、主流路10の室内側開口部101あるいは副流路11の室内側開口部111から室内へ送気するように設置されていればよい。
【0037】
また、上記の実施の形態では、主流路10の室内側開口部101および副流路11の室内側開口部111を同じ吹出口32に繋いでいるが、本発明はこれに限定されない。主流路10の室内側開口部101および副流路11の室内側開口部111をそれぞれ別個の吹出口に繋ぐようにしてもかまわない。
【符号の説明】
【0038】
1:換気装置 2:窓ガラス 3:窓枠
10:主流路 11:副流路 12:気流方向変更板
13:抵抗体 30:ペリカウンタ
31:ペリカウンタ30の吸込口
32:ペリカウンタ30の吹出口
100:主流路10の室外側開口部
101:主流路10の室内外開口部
102、103:主流路10の壁面
110:主流路10から副流路11への分岐部
111:副流路11の室内側開口部