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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072790
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】紡糸巻取設備
(51)【国際特許分類】
   D01D 7/00 20060101AFI20240521BHJP
   B65H 63/032 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
D01D7/00 A
B65H63/032 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179262
(22)【出願日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2022183258
(32)【優先日】2022-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】金子 雅彦
【テーマコード(参考)】
3F115
4L045
【Fターム(参考)】
3F115CA18
3F115CB02
3F115CC08
3F115CC23
4L045DC01
4L045DC12
4L045DC40
4L045DC41
(57)【要約】
【課題】断糸の発生要因の分析のための情報を取得可能な紡糸巻取設備を提供する。
【解決手段】紡糸巻取設備1は、紡糸装置2から紡出された糸Yを引取ってボビンBに巻き取る紡糸巻取機3を備える。さらに、紡糸巻取設備1は、紡糸装置2から紡糸巻取機3に至る糸道上における互いに異なる位置において、糸Yの動画を撮影可能なカメラ31~35と、カメラ31~35で撮影された動画の動画データを記憶する動画データ記憶部19と、糸道における糸Yの状態に関する情報を取得可能な糸情報取得部17と、巻取制御装置18と、を備える。巻取制御装置18は、糸情報取得部17から糸Yの状態に関する情報についての所定信号を受信したときに、動画データ記憶部19の通常記憶領域19aに記憶された動画データの中から、所定信号を受信した時刻を基準とする所定範囲Rの時間に撮影された動画に対応する動画データを抽出するデータ抽出処理を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸装置から紡出された糸を引取ってボビンに巻き取る紡糸巻取機を備えた紡糸巻取設備であって、
前記紡糸装置から前記紡糸巻取機に至る糸道上における互いに異なる位置において、前記糸の動画を撮影可能な複数の撮像装置と、
前記複数の撮像装置で撮影された動画の動画データを記憶する記憶部と、
前記糸道における糸の状態に関する情報を取得可能な糸情報取得部と、
制御部と、を備えており、
前記制御部は、前記糸情報取得部から前記糸の状態に関する情報についての所定信号を受信したときに、前記記憶部に記憶された前記動画データの中から、前記所定信号を受信した時刻を基準とする所定範囲の時間に撮影された動画に対応する動画データを抽出するデータ抽出処理を実行する紡糸巻取設備。
【請求項2】
前記糸情報取得部は、断糸の発生に関する情報を取得可能であり、
前記制御部は、前記データ抽出処理において、断糸が発生した旨の前記所定信号を受信したときに、前記記憶部に記憶された前記動画データの中から、少なくとも前記所定信号を受信した時刻よりも前の時刻を含んでおり、且つ、前記所定信号を受信した時刻を基準とする前記所定範囲の時間に撮影された動画に対応する動画データを抽出する請求項1に記載の紡糸巻取設備。
【請求項3】
前記糸情報取得部は、糸の張力の大きさに関する情報を取得可能であり、
前記制御部は、前記データ抽出処理において、糸の張力の大きさが所定の閾値以下である前記所定信号を受信したときに、前記記憶部に記憶された前記動画データの中から、前記所定信号を受信した時刻から前記所定範囲の時間に撮影された動画に対応する前記動画データを抽出し、
前記所定の閾値は、糸の張力の大きさが、断糸が発生していないことを示す値である請求項1に記載の紡糸巻取設備。
【請求項4】
前記糸情報取得部は、糸の静電気量に関する情報を取得可能であり、
前記制御部は、前記データ抽出処理において、糸の静電気量が所定の閾値以上である前記所定信号を受信したときに、前記記憶部に記憶された前記動画データの中から、前記所定信号を受信した時刻から前記所定範囲の時間に撮影された動画に対応する前記動画データを抽出し、
前記所定の閾値は、糸の静電気量が、断糸が発生していないことを示す値である請求項1に記載の紡糸巻取設備。
【請求項5】
前記紡糸巻取機は、前記紡糸装置から紡出された複数の糸を引取って複数のボビンにそれぞれ巻き取り可能であり、
前記複数の糸を切断して吸引可能な切断吸引装置をさらに備えており、
前記各撮像装置は、前記複数の糸の動画を撮影可能であり、
前記糸情報取得部は、前記複数の糸について断糸の発生に関する情報をそれぞれ取得可能であり、
前記制御部は、
前記糸情報取得部から前記複数の糸のうちの少なくとも1本の糸について断糸が発生した旨の前記所定信号を受信したときに、前記切断吸引装置により前記複数の糸の切断及び吸引を実行する断糸処理の実行を指令する指令信号を生成する指令信号生成処理を実行し、
前記指令信号生成処理を実行したことを契機に、前記データ抽出処理を実行する請求項2に記載の紡糸巻取設備。
【請求項6】
前記複数の撮像装置のうちの少なくとも1つの撮像装置は、前記紡糸巻取設備の機器を撮影可能である請求項1~5の何れか1項に記載の紡糸巻取設備。
【請求項7】
前記撮像装置で撮影された動画を表示可能な表示装置をさらに備えている請求項1~6のいずれか1項に記載の紡糸巻取設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸装置から紡出された糸を巻き取る紡糸巻取機を備えた紡糸巻取設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紡糸装置から紡出された糸を引取ってボビンに巻き取る紡糸巻取機を備えた紡糸巻取設備が開示されている。かかる紡糸巻取設備においては、紡糸装置から紡出された糸は、複数のゴデットローラに引き取られる。その後、糸は、支点ガイドを支点としてトラバースガイドによって綾振りされつつボビンに巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-050440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような紡糸巻取設備は、断糸が発生した場合に、紡糸巻取機の稼働を一旦停止させ、複数のゴデットローラ、支点ガイド及びボビン等への糸掛け作業を行う必要がある。したがって、断糸の発生により糸の生産効率が低下する。そこで、断糸の発生を抑制するために、断糸の兆候や断糸の発生要因の分析を可能とすることが望まれている。しかしながら、現状では断糸の兆候や断糸の発生要因の分析のために必要な情報を取得する手段がなく、断糸の兆候や断糸の発生要因の分析は困難である。
【0005】
本発明の目的は、断糸の兆候や断糸の発生要因の分析のための情報を取得可能な紡糸巻取設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明にかかる紡糸巻取設備は、紡糸装置から紡出された糸を引取ってボビンに巻き取る紡糸巻取機を備えた紡糸巻取設備であって、前記紡糸装置から前記紡糸巻取機に至る糸道上における互いに異なる位置において、前記糸の動画を撮影可能な複数の撮像装置と、前記複数の撮像装置で撮影された動画の動画データを記憶する記憶部と、前記糸道における糸の状態に関する情報を取得可能な糸情報取得部と、制御部と、を備えている。前記制御部は、前記糸情報取得部から前記糸の状態に関する情報についての所定信号を受信したときに、前記記憶部に記憶された前記動画データの中から、前記所定信号を受信した時刻を基準とする所定範囲の時間に撮影された動画に対応する動画データを抽出するデータ抽出処理を実行する。
【0007】
本発明では、複数の撮像装置により、紡糸装置から紡糸巻取機に至る糸道上における複数箇所で糸の動画を撮影できる。よって、オペレータは、複数の撮像装置で撮影された動画により、糸道上の複数個所における糸の様子を確認できる。したがって、オペレータは、断糸の兆候や断糸が発生した際に、動画に基づいて糸道上の複数個所における糸の様子を確認し、断糸の兆候や断糸の発生要因の分析を行うことができる。例えば、オペレータは、動画に基づいて糸道上における断糸の兆候や断糸が生じた箇所を確認し、それに基づいて断糸の兆候や断糸の発生要因の分析を行うことができる。このように、本発明では、断糸の兆候や断糸の発生要因の分析のための情報として、複数の撮像装置で撮影された糸の動画を取得可能である。さらに、本発明では、糸道における糸の状態に応じて、記憶部に記憶された動画データの中から一部の動画データを抽出することができる。これにより、記憶部に記憶された動画データの中から、断糸の兆候や断糸の発生要因の分析のために必要な情報を抜き出すことができる。したがって、オペレータは、記憶部に記憶された動画データにかかる動画の中から必要な動画を探す手間なく、情報を取得できる。
【0008】
第2の発明にかかる紡糸巻取設備では、前記糸情報取得部は、断糸の発生に関する情報を取得可能であり、前記制御部は、前記データ抽出処理において、断糸が発生した旨の前記所定信号を受信したときに、前記記憶部に記憶された前記動画データの中から、少なくとも前記所定信号を受信した時刻よりも前の時刻を含んでおり、且つ、前記所定信号を受信した時刻を基準とする前記所定範囲の時間に撮影された動画に対応する動画データを抽出する。
【0009】
本発明では、断糸の発生に応じて動画データを抽出し、断糸が発生した際の糸の様子を確認することができる動画を取得できる。よって、断糸の発生要因の分析を確実に行うための情報を容易に取得することができる。
【0010】
第3の発明にかかる紡糸巻取設備では、前記糸情報取得部は、糸の張力の大きさに関する情報を取得可能であり、前記制御部は、前記データ抽出処理において、糸の張力の大きさが所定の閾値以下である前記所定信号を受信したときに、前記記憶部に記憶された前記動画データの中から、前記所定信号を受信した時刻から前記所定範囲の時間に撮影された動画に対応する前記動画データを抽出し、前記所定の閾値は、糸の張力の大きさが、断糸が発生していないことを示す値である。
【0011】
本発明では、糸情報取得部が取得した糸の張力の大きさに関する情報により、断糸の兆候となる糸揺れが生じていることが分かる。そして、データ抽出処理において、断糸が発生する前に糸揺れが生じているときの動画に対応する動画データを抽出することができる。したがって、断糸の兆候の分析を確実に行うための情報を容易に取得することができる。
【0012】
第4の発明にかかる紡糸巻取設備では、前記糸情報取得部は、糸の静電気量に関する情報を取得可能であり、前記制御部は、前記データ抽出処理において、糸の静電気量が所定の閾値以上である前記所定信号を受信したときに、前記記憶部に記憶された前記動画データの中から、前記所定信号を受信した時刻から前記所定範囲の時間に撮影された動画に対応する前記動画データを抽出し、前記所定の閾値は、糸の静電気量が、断糸が発生していないことを示す値である。
【0013】
本発明では、糸情報取得部が取得した糸の静電気量に関する情報により、断糸の兆候となる糸揺れが生じていることが分かる。そして、データ抽出処理において、断糸が発生する前に糸揺れが生じているときの動画に対応する動画データを抽出することができる。したがって、断糸の兆候の分析を確実に行うための情報を容易に取得することができる。
【0014】
第5の発明にかかる紡糸巻取設備では、前記紡糸巻取機は、前記紡糸装置から紡出された複数の糸を引取って複数のボビンにそれぞれ巻き取り可能であり、前記複数の糸を切断して吸引可能な切断吸引装置をさらに備えており、前記各撮像装置は、前記複数の糸の動画を撮影可能であり、前記糸情報取得部は、前記複数の糸について断糸の発生に関する情報をそれぞれ取得可能であり、前記制御部は、前記糸情報取得部から前記複数の糸のうちの少なくとも1本の糸について断糸が発生した旨の前記所定信号を受信したときに、前記切断吸引装置により前記複数の糸の切断及び吸引を実行する断糸処理の実行を指令する指令信号を生成する指令信号生成処理を実行し、前記指令信号生成処理を実行したことを契機に、前記データ抽出処理を実行する。
【0015】
本発明では、切断吸引装置により複数の糸を切断及び吸引する断糸処理の実行を指令する指令信号の生成を利用してデータ抽出処理を実行することから、糸情報取得部から断糸が発生した旨の信号を受信したことを契機に、データ抽出処理を実行する場合に比べて、制御を簡略にすることができる。
【0016】
第6の発明にかかる紡糸巻取設備では、前記複数の撮像装置のうちの少なくとも1つの撮像装置は、紡糸巻取設備の機器を撮影可能である。
【0017】
本発明では、オペレータは、断糸の兆候や断糸が発生した際に、動画に基づいて糸の様子に加えて機器の動きや機器における糸の様子を確認することができる。したがって、オペレータは、断糸の兆候や断糸の発生要因の分析をより確実に行うことができる。このように、本発明では、断糸の兆候や断糸の発生要因の分析のための情報として、機器の動画も取得可能である。
【0018】
第7の発明にかかる紡糸巻取設備は、前記撮像装置で撮影された動画を表示可能な表示装置をさらに備えている。
【0019】
本発明では、オペレータは、表示装置に表示された動画を確認して、断糸の兆候や断糸の発生要因の分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態にかかる紡糸巻取設備が備える紡糸巻取機の1つを示す正面図である。
図2】紡糸巻取設備の電気的構成を示すブロック図である。
図3】データ抽出処理で抽出する所定範囲について説明するための図である。
図4】巻取制御装置で行われる制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な一実施形態について図面を参照しつつ説明する。以下、図1において示す各方向を、上下方向、左右方向、前後方向として説明する。上下方向は、重力が作用する鉛直方向である。左右方向は、上下方向と直交し、後述の紡糸巻取機3が並べて配置された方向である。前後方向は、上下方向及び左右方向の両方と直交する方向である。
【0022】
(紡糸巻取設備)
本実施形態に係る紡糸巻取設備1の概略について、図1及び図2を参照しつつ説明する。紡糸巻取設備1は、複数の紡糸装置2(図1参照)と、各紡糸装置2に対応して設けられた複数の紡糸巻取機3と、統括制御装置4(図2参照)と、を備える。図1においては、1つの紡糸装置2と、該紡糸装置2に対応して設けられた1つの紡糸巻取機3と、を示す。各紡糸装置2は、合成繊維からなる複数の糸Yを紡出するように構成されている。複数の紡糸巻取機3は、左右方向に配列されている。各紡糸巻取機3の上方には、対応する紡糸装置2が配置されている。各紡糸巻取機3は、対応する紡糸装置2から紡出される複数の糸Yを引き取り、複数のボビンBにそれぞれ巻き取って複数のパッケージPを形成する。統括制御装置4は、複数の紡糸巻取機3を統括的に制御する。
【0023】
(紡糸装置)
各紡糸装置2は、図1に示すように、加熱箱体21と、冷却箱体25と、を主に有している。冷却箱体25は、加熱箱体21の下方に配置されている。
【0024】
加熱箱体21は、ポリマーの融点以上に加熱されている。加熱箱体21には、複数の紡糸パック22が装着されている。各紡糸パック22には、加熱箱体21の内部に形成されたポリマー流路(不図示)を介して溶融ポリマーが供給される。各紡糸パック22は、溶融したポリマーを複数のフィラメントFとして下方に紡出する。各紡糸パック22から紡出された複数のフィラメントFが、後述する給油ガイド11で束ねられることによって1本の糸Yが形成される。
【0025】
冷却箱体25の内部には、フィルターによって形成された複数の冷却筒26が配置されている。複数の冷却筒26は、加熱箱体21に装着された複数の紡糸パック22に対応してそれぞれ設けられている。各紡糸パック22から紡出された複数のフィラメントFは、対応する冷却筒26の内部を上方から下方に向けて通過する。冷却箱体25には、ダクト(不図示)を介して冷却空気が圧送される。冷却箱体25内に圧送された冷却空気は、フィルターで形成された冷却筒26内に圧送される。これにより、冷却筒26の内部を通過するフィラメントFが冷却されて固化する。
【0026】
(紡糸巻取機)
各紡糸巻取機3は、図1に示すように、給油ガイド11、切断吸引装置13、延伸部5、交絡装置15、案内ローラ16、糸情報取得部17、巻取装置6及びカメラ31~35を主に有している。さらに、各紡糸巻取機3は、図2に示すように、巻取制御装置18を有している。
【0027】
給油ガイド11は、紡糸装置2の下方に複数配置されている。複数の給油ガイド11は、紡糸装置2の冷却箱体25に配置された複数の冷却筒26に対応してそれぞれ設けられている。各給油ガイド11は、複数のフィラメントFで構成される1本の糸Yに対応して設けられている。各給油ガイド11は、束状の複数のフィラメントFに対して油剤を付与する。各給油ガイド11の下方には、糸規制ガイド41が配置されている。換言すると、糸規制ガイド41は糸Yの走行方向(下方向)に関して給油ガイド11の下流側に配置されている。給油ガイド11においては、糸規制ガイド41によって糸道が規制された状態に糸Y(複数のフィラメントF)に対して油剤が付与される。
【0028】
切断吸引装置13は、糸Yを切断可能なカッタ13aと、カッタ13aによって切断された糸Yを吸引するアスピレータ13bと、を主に有している。カッタ13a及びアスピレータ13bは、複数の糸Yの配列方向(左右方向)に移動可能に構成されている。カッタ13a及びアスピレータ13bを左右方向に移動させることで、カッタ13aにより複数の糸Yを切断することができる。カッタ13aによる糸Yの切断位置は、糸Yの走行方向(下方向)に関して給油ガイド11と延伸部5の後述するゴデットローラ51との間である。また、カッタ13aにより切断された複数の糸Yは、アスピレータ13bにより吸引保持される。
【0029】
切断吸引装置13よりも下方には、糸規制ガイド42が配置されている。糸規制ガイド42は、糸Yの走行方向(下方向)に関して切断吸引装置13による糸Yの切断位置と延伸部5の後述するゴデットローラ51との間に配置されている。糸規制ガイド42は、複数の糸Yの配列方向に関する移動を規制する。
【0030】
延伸部5には、複数の給油ガイド11で油剤が付与された複数の糸Yが送られる。延伸部5は、2つのゴデットローラ51、52と、2つのセパレートローラ53、54と、を主に有している。ゴデットローラ52は、糸Yの走行方向に関してゴデットローラ51よりも下流側に位置している。ゴデットローラ51は、上方に配置されたセパレートローラ53と一対となっている。ゴデットローラ52は、下方に配置されたセパレートローラ54と一対となっている。ゴデットローラ51とゴデットローラ52との間には、糸規制ガイド43が配置されている。糸規制ガイド43は、複数の糸Yの配列方向に関する移動を規制する。
【0031】
2つのゴデットローラ51、52は、駆動モータ(不図示)によって駆動される駆動ローラである。2つのセパレートローラ53、54は、駆動モータ(不図示)によって駆動される駆動ローラである。ゴデットローラ51、52及びセパレートローラ53、54の回転軸は、互いに平行である。ゴデットローラ51、52及びセパレートローラ53、54は、その回転軸が前後方向と平行となる姿勢で配置されている。延伸部5に送られた複数の糸Yは、上流のゴデットローラ51及びセパレートローラ53に複数回巻き掛けられた後、下流のゴデットローラ52及びセパレートローラ54に複数回巻き掛けられる。
【0032】
上流のゴデットローラ51は、糸Yが延伸可能な温度(例えば90℃)に加熱されている。下流のゴデットローラ52は、延伸された糸Yを熱固定可能な温度(例えば120℃)に加熱されている。ゴデットローラ52は、上流のゴデットローラ51よりも速い回転速度で回転する。したがって、上流のゴデットローラ51で予備加熱された糸Yは、上流のゴデットローラ51と、下流のゴデットローラ52と、の間で延伸される。延伸された糸Yは、ゴデットローラ52により、熱固定される。延伸部5で延伸された複数の糸Yは、案内ローラ16に巻き掛けられる。
【0033】
糸Yの走行方向に関して延伸部5のゴデットローラ52よりも下流側には、糸規制ガイド44が配置されている。糸規制ガイド44は、複数の糸Yの配列方向に関する移動を規制する。
【0034】
交絡装置15は、延伸部5のゴデットローラ52と案内ローラ16との間に配置されている。交絡装置15は、糸Yの走行方向に関して糸規制ガイド44の下流側に配置されている。交絡装置15は、流体噴射ノズル(不図示)からエアを吹き出すことで糸Yの走行空間(不図示)に旋回流を発生させる。これにより、1本の糸Yを構成する複数のフィラメントFが旋回し、相互に絡み合う。その結果、糸Yに集束性が付与される。
【0035】
案内ローラ16は、駆動モータ(不図示)によって駆動される駆動ローラである。案内ローラ16は、その回転軸が前後方向と平行となる姿勢で配置されている。案内ローラ16には、延伸部5で延伸された複数の糸Yが巻き掛けられる。案内ローラ16は、複数の糸Yを巻取装置6に送る。
【0036】
糸情報取得部17は、糸Yの走行方向に関して案内ローラ16と巻取装置6との間に配置されている。糸情報取得部17は、案内ローラ16から送られる複数の糸Yの糸道における状態に関する情報をそれぞれ取得可能である。糸情報取得部17は、取得した情報を巻取制御装置18(図2参照)に送信する。本実施形態の糸情報取得部17は、複数の糸Yについて断糸の発生に関する情報をそれぞれ取得可能である。
【0037】
糸情報取得部17は、例えば、発光部及び受光部(共に不図示)をそれぞれ有する複数の反射式の光学センサによって構成されている。複数の光学センサは、案内ローラ16から送られる複数の糸Yに対応してそれぞれ設けられている。光学センサは、発光部(不図示)から糸Yの糸道に向かって光を発し、糸道を走行する糸Yによって反射された光を受光部(不図示)によって受光するように構成されている。よって、光学センサでは、糸道に糸Yがある場合と糸Yが無い場合とで、検出される光量が異なる。断糸が発生した場合には、検出される光量が、糸道に糸Yがないことを示す光量となる。糸情報取得部17は、断糸が発生した場合には、糸道に糸Yがないことを示す光量の情報を、断糸が発生した旨の断糸信号(本発明の「所定信号」に相当する)として出力する。
【0038】
なお、糸情報取得部17は、反射式の光学センサの代わりに透過式の光学センサを有していても良い。すなわち、発光部及び受光部(共に不図示)が、糸Yを左右方向に挟んで互いに向かい合うように配置されていても良い。
【0039】
巻取装置6には、案内ローラ16に巻き掛けられた複数の糸Yが送られる。巻取装置6は、本体フレーム61、ターレット62、2本のボビンホルダ63、複数の支点ガイド64、複数のトラバースガイド65、コンタクトローラ66等を主に有している。
【0040】
ターレット62は、本体フレーム61に支持されている。ターレット62は、円板状である。ターレット62は、前後方向に沿う回転軸を中心に回転可能である。ターレット62には、2本のボビンホルダ63が取り付けられている。
【0041】
2本のボビンホルダ63は、モータ(不図示)によってそれぞれ回転駆動される。2本のボビンホルダ63の回転軸は、互いに平行である。2本のボビンホルダ63は、その軸方向が前後方向と平行となる姿勢で配置されている。各ボビンホルダ63には、複数のボビンBがその軸方向に沿って装着される。各ボビンホルダ63が回転すると、そのボビンホルダ63に装着された複数のボビンBも、ボビンホルダ63と一体的に回転する。
【0042】
2本のボビンホルダ63を支持するターレット62が回転することにより、2本のボビンホルダ63の位置を、巻取位置(図1の上方の位置)と退避位置(図1の下方の位置)との間で切り換えることができる。つまり、ターレット62は、糸Yを巻取るボビンホルダ63を切り換えるものである。
【0043】
複数の支点ガイド64及び複数のトラバースガイド65は、いずれも本体フレーム61に取り付けられている。複数の支点ガイド64は、巻取位置に位置するボビンホルダ63の上方に配置されている。複数のトラバースガイド65は、複数の支点ガイド64の上方に配置されている。複数の支点ガイド64及び複数のトラバースガイド65は、複数のボビンBにそれぞれ対応して設けられている。各トラバースガイド65は、対応する支点ガイド64に掛けられた糸Yを綾振りする。
【0044】
案内ローラ16から送られた複数の糸Yは、複数の支点ガイド64にそれぞれ掛けられる。さらに、複数の糸Yが、複数のトラバースガイド65によって、対応する支点ガイド64を中心としてボビンBの軸方向に綾振りされながら、巻取位置のボビンホルダ63に装着された複数のボビンBにそれぞれ巻取られる。これにより、複数のボビンBに複数のパッケージPがそれぞれ形成されていく。また、糸巻取り中には、コンタクトローラ66が、パッケージPの外周面に接触して所定の接圧を付与しながら回転することで、パッケージPの形状が整えられる。
【0045】
巻取制御装置18は、CPUと、ROMと、RAM等を有する。巻取制御装置18は、切断吸引装置13等、紡糸巻取機3の各部を制御する(図2参照)。巻取制御装置18は、糸情報取得部17及びカメラ31~35(本発明の撮像装置)と電気的に接続されている。巻取制御装置18には、操作部37及び表示装置38が電気的に接続されている。操作部37は、例えばキーボード、マウス、タッチパネル等のうちの少なくとも1つを含んで構成される。表示装置38は、例えばディスプレイである。巻取制御装置18は、動画データ記憶部19を有している。また、巻取制御装置18は、統括制御装置4(図2参照)と電気的に接続され、統括制御装置4との通信を行う。
【0046】
5台のカメラ31~35は、紡糸装置2から紡糸巻取機3に至る糸道上における互いに異なる位置において、糸Yの動画をそれぞれ撮影可能である。カメラの設置台数は、5台に限定されるものではない。少なくとも2台のカメラが設置されていればよい。各カメラ31~35は、糸道において走行する複数の糸Yの動画を撮影可能である。本実施形態においては、カメラ31~35は、糸Yに加えて、紡糸巻取設備1の機器を撮影可能である。カメラ31~35は、糸Yのみを撮影可能であってもよい。また、カメラ31~35のうちの少なくとも1つが、糸Yに加えて、紡糸巻取設備1の機器を撮影可能であってもよい。
【0047】
カメラ31は、紡糸装置2の冷却箱体25の近傍に配置されている。カメラ31は、複数の糸Yに加えて、給油ガイド11及び糸規制ガイド41を撮影可能である。カメラ31は、この撮影箇所で生じる可能性がある、断糸、糸渡り、単糸渡り、単糸流れ、ガイド外れ、糸割れ、糸揺れ、糸振動、収束不良、油剤飛散、油滴、毛羽発生等の現象を撮影可能である。なお、「糸渡り」とは、複数の糸Yが並んで走行しているときに、一の糸Yが他の糸Yに何らかの原因(揺れ等)で接触し、一の糸Yが他の糸Yと絡み合って走行してしまう現象である。「単糸渡り」とは、一の糸Yを構成するフィラメントFが、他の糸Yに移って走行してしまう現象である。「単糸流れ」とは、糸Y内のフィラメントFが切れて、その糸Yから離脱してしまう現象である。
【0048】
カメラ32は、給油ガイド11と延伸部5との間に配置されている。カメラ32は、複数の糸Yに加えて、糸規制ガイド42を撮影可能である。カメラ32は、この撮影箇所で生じる可能性がある、断糸、糸渡り、ガイド外れ、糸揺れ、糸振動、収束不良、油剤飛散、油滴、毛羽発生等の現象を撮影可能である。
【0049】
カメラ33は、ゴデットローラ51とゴデットローラ52との間に配置されている。カメラ33は、複数の糸Yに加えて、糸規制ガイド43を撮影可能である。カメラ33は、この撮影箇所で生じる可能性がある、断糸、糸渡り、ガイド外れ、糸揺れ、糸振動、毛羽発生等の現象を撮影可能である。
【0050】
カメラ34は、交絡装置15の近傍に配置されている。カメラ34は、交絡装置15及び糸規制ガイド44を撮影可能である。カメラ34は、この撮影箇所で生じる可能性がある、断糸、糸渡り、ガイド外れ、糸揺れ、糸振動、毛羽発生、フィラメントの旋回不良等の現象を撮影可能である。
【0051】
カメラ35は、巻取装置6の近傍に配置されている。カメラ35は、巻取装置6を撮影可能である。カメラ35は、この撮影箇所で生じる可能性がある、断糸、糸渡り、ガイド外れ、糸揺れ、糸振動、毛羽発生、パッケージ形状変化、巻取装置の動作不良等の現象を撮影可能である。
【0052】
動画データ記憶部19は、カメラ31~35で撮影された動画の動画データを記憶可能である。動画データ記憶部19は、例えばハードディスクである。動画データ記憶部19は、通常記憶領域19aと退避領域19bと有している。通常記憶領域19aには、カメラ31~35で撮影された動画の動画データが逐次記憶される。通常記憶領域19aに記憶されている動画の容量が、通常記憶領域19aの容量に達した後は、通常記憶領域19aに記憶される動画データのうち、記憶されたタイミングが最も古い動画データが新たな動画データに置き換えられる。退避領域19bには、通常記憶領域19aに記憶されている動画データのうち、後述するデータ抽出処理によって抽出された動画データが記憶される。
【0053】
巻取制御装置18は、糸情報取得部17から複数の糸Yのうちの少なくとも1本の糸Yについて断糸が発生した旨の断糸信号を受信したときに、断糸の発生により必要となる断糸処理の実行を指示する指令信号を生成する指令信号生成処理を実行する。本実施形態においては、断糸処理として、切断吸引装置13により複数の糸Yの切断及び吸引を実行する。
【0054】
巻取制御装置18は、糸情報取得部17が取得した断糸の有無に関する情報に基づいて、動画データ記憶部19の通常記憶領域19aに記憶された動画データの中から一部の動画データを抽出するデータ抽出処理を実行する。巻取制御装置18は、データ抽出処理により抽出した動画データを動画データ記憶部19の退避領域19bに記憶する。より具体的には、巻取制御装置18は、糸情報取得部17からの断糸が発生した旨の断糸信号を受信したときに、データ抽出処理を実行する。本実施形態においては、巻取制御装置18は、指令信号生成処理を実行したことを契機に、データ抽出処理を実行する。
【0055】
データ抽出処理においては、動画データ記憶部19の通常記憶領域19aに記憶された動画データの中から、少なくとも断糸信号を受信した時刻よりも前の時刻を含んでおり、且つ、断糸信号を受信した時刻を基準とする所定範囲Rの時間に撮影された動画に対応する動画データを抽出する。ここで図3を参照しつつ、所定範囲Rについて説明する。断糸信号を受信した時刻を時刻T1とした場合、所定範囲Rは、時刻T1よりも時間Dta前の時刻T1-Dtaから、時刻T1よりも時間Dtb後の時刻T1+Dtbまでの間である。すなわち、所定範囲Rは、Dta+Dtbである。ここで、Dta>0である。また、Dtb≧0である。
【0056】
巻取制御装置18は、カメラ31~35で撮影された動画を表示装置38に表示する。巻取制御装置18は、データ抽出処理を実行したとき、データ抽出処理により抽出して動画データ記憶部19の退避領域19bに記憶した動画データにかかる動画を表示装置38に表示する。
【0057】
(巻取制御装置による制御フロー)
続いて、図4に示すフローチャートを参照しつつ、巻取制御装置18で行われる制御フローの一例について説明する。図4に示す処理は、巻取装置6で糸YをボビンBに巻き取る巻取処理が行われているときに実行される処理である。なお、巻取制御装置18は、巻取装置6で巻取処理が行われているか否かにかかわらず、継続してカメラ31~35による撮影処理を実行する。また、巻取制御装置18は、撮影処理で撮影された動画にかかる動画データを動画データ記憶部19の通常記憶領域19aに記憶する記憶処理を実行する。さらに、巻取制御装置18は、撮影処理で撮影された動画をリアルタイムで表示装置38に表示する。
【0058】
巻取装置6で巻取処理が開始されると、巻取制御装置18は、まず、複数の糸Yのうちの少なくとも1本の糸Yについて断糸が発生した旨の断糸信号を糸情報取得部17から受信したか否かを判断する(S1)。断糸信号を受信したと判断した場合には(S1:YES)、巻取制御装置18は、切断吸引装置13により複数の糸Yの切断を実行する断糸処理の実行を指示する指令信号を生成する(S2:指令信号生成処理)。一方、断糸信号を受信していないと判断した場合には(S1:NO)、上述のS2の処理を省略してS3進む。
【0059】
続いて、巻取制御装置18は、指令信号を生成したか否かを判断する(S3)。指令信号を生成したと判断した場合には(S3:YES)、巻取制御装置18は、記憶処理で動画データ記憶部19の通常記憶領域19aに記憶された動画データの中から一部のデータを抽出する(S4:データ抽出処理)。巻取制御装置18は、データ抽出処理において、動画データ記憶部19の通常記憶領域19aに記憶された動画データの中から、所定範囲R(図3参照)の時間に撮影された動画に対応する動画データを抽出する。そして、巻取制御装置18は、データ抽出処理で抽出した動画データを動画データ記憶部19の退避領域19bに記憶する。一方、指令信号を生成していないと判断した場合には(S3:NO)、S1に戻る。
【0060】
その後、巻取制御装置18は、退避領域19bに記憶した動画データにかかる動画を表示装置38に表示する(S5)。すなわち、このとき表示装置38に表示される動画は、カメラ31~35で撮影されたリアルタイムの動画から退避領域19bに記憶された動画データにかかる動画に切り替わる。
【0061】
なお、本実施形態においては、上述のように、断糸が発生した際に、自動的に退避領域19bに記憶された動画データにかかる動画が表示装置38に表示されるが、これには限定されない。巻取制御装置18は、操作部37を介して退避領域19bに記憶された動画データにかかる動画を表示装置38に表示させる旨の入力がなされた場合に、当該動画を表示装置38に表示するようにしてもよい。
【0062】
上述のように、断糸が発生した際に、表示装置38に退避領域19bに記憶された動画データにかかる動画が表示される。ここで、退避領域19bには、巻取制御装置18が断糸信号を受信した時刻T1の前後の所定範囲R(図3参照)の時間に撮影された動画にかかる動画データが記憶されている。すなわち、オペレータは、表示装置38に表示された動画により、断糸発生時の糸道上の複数個所(5台のカメラ31~35による撮影箇所)における糸Yの様子、及び、機器の様子を確認することができる。これによりオペレータは、紡糸装置2から紡糸巻取機3に至る糸道のどこで断糸が発生したかを確認することができる。
【0063】
(実施形態の特徴)
以上のように、本実施形態の紡糸巻取設備1は、紡糸装置2から紡出された糸Yを引取ってボビンBに巻き取る紡糸巻取機3を備えており、紡糸装置2から紡糸巻取機3に至る糸道上における互いに異なる位置において、糸Yの動画を撮影可能なカメラ31~35と、複数のカメラ31~35で撮影された動画の動画データを記憶する動画データ記憶部19と、糸道における糸Yの状態に関する情報を取得可能な糸情報取得部17と、巻取制御装置18と、を備えている。そして、巻取制御装置18は、糸情報取得部17から糸Yの状態に関する情報についての所定信号を受信したときに、動画データ記憶部19の通常記憶領域19aに記憶された動画データの中から、所定信号を受信した時刻を基準とする所定範囲Rの時間に撮影された動画に対応する動画データを抽出するデータ抽出処理を実行する。
【0064】
本構成によると、複数のカメラ31~35により、紡糸装置2から紡糸巻取機3に至る糸道上における複数箇所で糸Yの動画を撮影できる。よって、オペレータは、複数のカメラ31~35で撮影された動画により、糸道上の複数個所における糸Yの様子を確認できる。したがって、オペレータは、断糸が発生した際に、動画に基づいて糸道上の複数個所における糸Yの様子を確認し、断糸の発生要因の分析を行うことができる。例えば、オペレータは、動画に基づいて糸道上における断糸発生箇所を確認し、それに基づいて断糸の発生要因の分析を行うことができる。このように、本構成では、断糸の発生要因の分析のための情報として、複数のカメラ31~35で撮影された糸Yの動画を取得可能である。
【0065】
さらに、本構成では、糸道における糸Yの状態に応じて、動画データ記憶部19の通常記憶領域19aに記憶された動画データの中から一部の動画データを抽出することができる。これにより、通常記憶領域19aに記憶された動画データの中から、断糸の発生要因の分析のために必要な情報を抜き出すことができる。したがって、オペレータは、通常記憶領域19aに記憶された動画データにかかる動画の中から必要な動画を探す手間なく、情報を取得できる。
【0066】
さらに、本実施形態の紡糸巻取設備1では、糸情報取得部17は、断糸の発生に関する情報を取得可能である。そして、巻取制御装置18は、データ抽出処理において、断糸が発生した旨の所定信号である断糸信号を受信したときに、通常記憶領域19aに記憶された動画データの中から、少なくとも断糸信号を受信した時刻よりも前の時刻を含んでおり、且つ、断糸信号を受信した時刻を基準とする所定範囲Rの時間に撮影された動画に対応する動画データを抽出する。本構成では、断糸の発生に応じて動画データを抽出し、断糸が発生した際の糸の様子を確認することができる動画を取得できる。よって、断糸の発生要因の分析を確実に行うための情報を容易に取得することができる。
【0067】
また、本実施形態の紡糸巻取設備1は、複数の糸Yを切断して吸引可能な切断吸引装置13をさらに備えており、糸情報取得部17は、複数の糸Yについて断糸の発生に関する情報をそれぞれ取得可能である。巻取制御装置18は、糸情報取得部17から複数の糸Yのうちの少なくとも1本の糸Yについて断糸が発生した旨の信号を受信したときに、切断吸引装置13により複数の糸Yの切断及び吸引を実行する断糸処理の実行を指令する指令信号を生成する指令信号生成処理を実行する。また、巻取制御装置18は、指令信号生成処理を実行したことを契機に、データ抽出処理を実行する。本構成によると、切断吸引装置13により複数の糸Yを切断及び吸引する断糸処理の実行を指令する指令信号の生成を利用してデータ抽出処理を実行することから、糸情報取得部17から断糸が発生した旨の信号を受信したことを契機に、データ抽出処理を実行する場合に比べて、制御を簡略にすることができる。
【0068】
また、本実施形態の紡糸巻取設備1では、カメラ31~35は、紡糸巻取設備1の機器を撮影可能である。本構成によると、オペレータは、断糸が発生した際に、動画に基づいて糸Yの様子に加えて、機器の動きや機器における糸Yの様子を確認することができる。したがって、オペレータは、断糸の発生要因の分析をより確実に行うことができる。このように、本構成では、断糸の発生要因の分析のための情報として、機器の動画も取得可能である。
【0069】
加えて、本実施形態の紡糸巻取設備1は、カメラ31~35で撮影された動画を表示可能な表示装置38をさらに備えている。本構成では、オペレータは、表示装置38に表示された動画を確認して、断糸の発生要因の分析を行うことができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
上述の実施形態では、巻取制御装置18は、データ抽出処理において、動画データ記憶部19の通常記憶領域19aに記憶された動画データの中から一部の動画データを抽出し、その動画データを退避領域19bに記憶する場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、巻取制御装置18は、抽出した動画データを退避領域19bに記憶しなくてもよい。この場合例えば、巻取制御装置18は、データ抽出処理において動画データを抽出し、その動画データに対応する動画を表示装置38に表示するようにしてもよい。
【0072】
さらに、上述の実施形態においては、糸情報取得部17は、断糸の発生に関する情報を取得可能である場合について説明したが、これには限定されない。糸情報取得部17は、糸道における糸Yの状態に関する情報を取得可能であればよい。すなわち例えば、糸情報取得部17は、断糸の兆候に関する情報を取得可能であってもよい。
【0073】
具体的には、糸情報取得部17は、糸Yの張力の大きさに関する情報を取得可能であってもよい。ここで、糸Yの張力がある程度小さくなると糸揺れが生じ、糸Yの張力が小さくなるほど糸揺れは大きくなる。大きな糸揺れは、断糸の兆候となる。また、糸Yの張力の変化により、断糸が発生したことも検出可能である。
【0074】
この場合、巻取制御装置18は、データ抽出処理において、糸Yの張力の大きさが所定の閾値以下である所定信号を受信したとき、動画データ記憶部19の通常記憶領域19aに記憶された動画データの中から、該所定信号を受信した時刻から所定範囲の時間に撮影された動画に対応する動画データを動画データ記憶部19の通常記憶領域19aから抽出する。閾値は、糸Yの張力の大きさが、断糸が発生していないことを示す値である。
【0075】
本構成によると、糸情報取得部17が取得した糸Yの張力の大きさに関する情報により、断糸の兆候となる糸揺れが生じていることが分かる。そして、データ抽出処理において、断糸が発生する前に糸揺れが生じているときの動画に対応する動画データを抽出することができる。よって、断糸の兆候の分析を確実に行うための情報を容易に取得することができる。
【0076】
また、例えば、糸情報取得部17は、糸Yの静電気量に関する情報を取得可能であってもよい。ここで、糸揺れが大きいほど糸Yの静電気量は大きくなる。大きな糸揺れは、断糸の兆候となる。また、糸Yの静電気量の変化により、断糸が発生したことも検出可能である。
【0077】
この場合、巻取制御装置18は、データ抽出処理において、糸Yの静電気量が所定の閾値以上である所定信号を受信したとき、動画データ記憶部19の通常記憶領域19aに記憶された動画データの中から、該所定信号を受信した時刻から所定範囲の時間に撮影された動画に対応する動画データを動画データ記憶部19の通常記憶領域19aから抽出する。閾値は、糸Yの静電気量が、断糸が発生していないことを示す値である。
【0078】
本構成によると、糸情報取得部17が取得した糸Yの静電気量に関する情報により、断糸の兆候となる糸揺れが生じていることが分かる。そして、データ抽出処理において、断糸が発生する前に糸揺れが生じているときの動画に対応する動画データを抽出することができる。したがって、断糸の兆候の分析を確実に行うための情報を容易に取得することができる。
【0079】
加えて、上述の実施形態においては、巻取制御装置18が、断糸処理の実行を指令する指令信号を生成する指令信号生成処理を実行したことを契機に、データ抽出処理を実行する場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、巻取制御装置18は、糸情報取得部17から断糸が発生した旨の信号を受信したことを契機に、データ抽出処理を実行してもよい。
【0080】
さらに、上述の実施形態においては、巻取制御装置18に電気的に接続された表示装置38にカメラ31~35で撮影された動画を表示する場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、巻取制御装置18は、巻取制御装置18とLANやインターネットなどのネットワークを介して接続された端末(例えば、タブレット端末などのモバイル端末)のディプレイに動画を表示してもよい。
【0081】
また、上述の実施形態においては、巻取制御装置18が有する動画データ記憶部19にカメラ31~35で撮影された動画にかかる動画データを記憶する場合について説明したが、これには限定されない。巻取制御装置18は、例えばSDカード等の記録メディアやクラウドサーバ等に動画を記憶してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 紡糸巻取設備
2 紡糸装置
3 紡糸巻取機
13 切断吸引装置
17 糸情報取得部
18 巻取制御装置(制御部)
19 動画データ記憶部(記憶部)
19a 通常記憶領域(記憶部)
35 カメラ(撮像装置)
38 表示装置
B ボビン
Y 糸
図1
図2
図3
図4