IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭栄化学工業株式会社の特許一覧

特開2024-72840半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、半導体ナノ粒子複合体硬化膜および半導体ナノ粒子複合体の精製方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072840
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、半導体ナノ粒子複合体硬化膜および半導体ナノ粒子複合体の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/70 20060101AFI20240521BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20240521BHJP
   C09K 11/88 20060101ALI20240521BHJP
   C09K 11/56 20060101ALI20240521BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20240521BHJP
   C01B 25/08 20060101ALI20240521BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240521BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20240521BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20240521BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240521BHJP
【FI】
C09K11/70
C09K11/08 G
C09K11/88
C09K11/56
C09K11/02 Z
C01B25/08 Z
C08L101/00
C08K7/00
B82Y20/00
B82Y40/00
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024034593
(22)【出願日】2024-03-07
(62)【分割の表示】P 2021526071の分割
【原出願日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2019110306
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000186762
【氏名又は名称】昭栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城戸 信人
(72)【発明者】
【氏名】森山 喬史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 洋和
(57)【要約】
【課題】精製前後で高い蛍光量子効率(QY)を保つ半導体ナノ粒子複合体の提供すること。
【解決手段】半導体ナノ粒子の表面に、リガンドが配位した半導体ナノ粒子複合体であって、前記半導体ナノ粒子はInおよびPを含み、前記リガンドは下記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルを含み、前記メルカプト脂肪酸エステルのSP値は9.30以下であることを特徴とする半導体ナノ粒子複合体。一般式(1):HS-R-COOR(1)(一般式(1)中、Rは炭素数1~11の炭化水素基であり、Rは炭素数1~30の炭化水素基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ナノ粒子の表面に、リガンドが配位した半導体ナノ粒子複合体であって、前記半導体ナノ粒子はInおよびPを含み、前記リガンドは下記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルを含み、前記メルカプト脂肪酸エステルのSP値は9.30以下であることを特徴とする半導体ナノ粒子複合体。
一般式(1):
HS-R-COOR (1)
(一般式(1)中、Rは炭素数1~11の炭化水素基であり、Rは炭素数1~30の炭化水素基である。)
【請求項2】
前記一般式(1)においてRが炭素数1~11の炭化水素基であり且つRが炭素数1~20の炭化水素基であり、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルのSP値が9.30以下であり、前記リガンド全体に占める前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの含有率が40.0mol%以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項3】
前記一般式(1)においてRが炭素数1~11のアルキレン基であり且つRが炭素数1~20のアルキル基であることを特徴とする請求項2記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項4】
前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの分子量が400以下であることを特徴とする請求項2又は3記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項5】
前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの分子量が300以下であることを特徴とする請求項2又は3記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項6】
前記リガンドと前記半導体ナノ粒子の質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)が0.50以下であることを特徴とする請求項2~5いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項7】
前記リガンドと前記半導体ナノ粒子の質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)が0.40以下であることを特徴とする請求項2~5いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項8】
前記一般式(1)においてRが炭素数1~11の炭化水素基であり且つRが炭素数14~30の炭化水素基であり、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルのSP値が9.00以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項9】
大気中で180℃5時間の耐熱試験において、前記半導体ナノ粒子複合体の耐熱試験前の蛍光量子効率に対する耐熱試験後の蛍光量子効率の変化率((1-(耐熱試験後の蛍光量子効率/耐熱試験前の蛍光量子効率))×100)が、10%未満であることを特徴とする請求項8記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項10】
前記リガンド全体に占める前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの含有率が40.0mol%以上であることを特徴とする請求項8又は9記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項11】
前記一般式(1)においてRが炭素数1~11のアルキレン基であり且つRが炭素数14~30のアルキル基であることを特徴とする請求項8~10いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項12】
前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの分子量が300~450であることを特徴とする請求項8~11いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項13】
前記半導体ナノ粒子が、In及びPを主成分とするコアと、1層以上のシェルと、を有するコア/シェル型半導体ナノ粒子であることを特徴とする請求項1~12いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項14】
前記シェルの少なくとも1つがZnSeで形成されていることを特徴とする請求項13項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項15】
前記シェルが2層以上であり、前記シェルの最外層がZnSで形成されていることを特徴とする請求項13又は14記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項16】
前記シェルが、少なくとも、ZnSeで形成されており、前記コアの外側表面を覆う第一シェルと、ZnSで形成されており該第一シェルの外側表面を覆う第二シェルとからなることを特徴とする請求項13~15いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項17】
前記半導体ナノ粒子に配位するリガンドの平均のSP値が9.30以下であることを特徴とする請求項1~16いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項18】
前記リガンドがさらに脂肪族リガンドを含むことを特徴とする請求項1~17いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項19】
前記脂肪族リガンドが、脂肪族チオール、脂肪族カルボン酸及び脂肪族ホスフィンらなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項18記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項20】
前記リガンドに占める、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの含有量が50.0mol%以上であることを特徴とする請求項1~19いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項21】
前記リガンドに占める、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの含有量が60.0mol%以上であることを特徴とする請求項1~20いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項22】
前記半導体ナノ粒子複合体の精製前の蛍光量子効率に対する精製後の蛍光量子効率の変化率((1-(精製後の蛍光量子効率/精製前の蛍光量子効率))×100)が20%未満であることを特徴とする請求項1~21いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項23】
前記半導体ナノ粒子複合体の精製前の蛍光量子効率に対する精製後の蛍光量子効率の変化率((1-(精製後の蛍光量子効率/精製前の蛍光量子効率))×100)が10%未満であることを特徴とする請求項1~22いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項24】
前記半導体ナノ粒子複合体の精製後の蛍光量子効率が80%以上であることを特徴とする請求項1~23いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項25】
前記半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅が38nm以下であることを特徴とする請求項1~24いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項26】
請求項1~25いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体を、貧溶媒を用いて凝集させたのち、半導体ナノ粒子複合体を分離することを特徴とする精製方法。
【請求項27】
請求項1~25いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体が有機分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体分散液。
【請求項28】
請求項1~25いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体組成物であり、
前記分散媒はモノマー又はプレポリマーであることを特徴とする半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項29】
請求項1~25いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体が高分子マトリクス中に分散した半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ナノ粒子複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
量子閉じ込め効果が発現するほど微小な半導体ナノ粒子(量子ドット、QD)は、粒径に依存したバンドギャップを有する。光励起、電荷注入等の手段によって半導体ナノ粒子内に形成された励起子は、再結合によりバンドギャップに応じたエネルギーの光子を放出するため、半導体ナノ粒子の組成とその粒径を適切に選択することにより、所望の波長での発光を得ることができる。
【0003】
半導体ナノ粒子は、研究初期はCdやPbを含む元素を中心に検討が行われてきたが、CdやPbが特定有害物質使用制限などの規制対象物質であることから、近年では非Cd系、非Pb系の半導体ナノ粒子の研究がなされてきている。
【0004】
半導体ナノ粒子は、ディスプレイ用途、生体標識用途、太陽電池用途など、様々な用途への応用が試みられている。ディスプレイ用途としてはQDフィルム、QDパターニング、自発光型デバイス(QLED)などへの応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0308130号明細書
【特許文献2】特開2002-121549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体ナノ粒子および半導体ナノ粒子複合体は、分散媒に分散させることで分散液として調製され、各分野に応用される。特に、QDフィルム、QDパターニング、自発光型デバイス(QLED)などディスプレイ分野への応用に関しては、ヘキサンやオクタンを良溶媒(溶解度の大きい分散媒)とし、アセトンやエタノールを貧溶媒(溶解度の小さい分散媒)とする非極性の半導体ナノ粒子が最も汎用されている。このような非極性の半導体ナノ粒子は、特許文献1に挙げられるように、合成後に良溶媒に分散させたのち貧溶媒に沈殿させる操作を繰り返して精製が行われる。非極性の半導体ナノ粒子の精製工程において、非極性の半導体ナノ粒子の貧溶媒は極性溶媒であるため、水分等の影響で蛍光量子効率の低下が生じやすいという問題があった。
【0007】
半導体ナノ粒子にはCdSe系で知られるII-VI族系の半導体ナノ粒子や、InP系で知られるIII-V族系の半導体ナノ粒子が存在する。これらの半導体ナノ粒子は高い蛍光量子効率を得るために、前述した半導体ナノ粒子をコア粒子とし、このコア粒子の表面にシェルを構成することで、コアシェル構造を有する場合がある。シェルには量子閉じ込め効果の観点からZnSeやZnSなどのII-VI族系の半導体が主に使用されているため、コアがII-VI族系のコア粒子である場合は、コア粒子とシェルの形成元素の価数が共通しているためエピタキシャル成長がしやすく、均一なシェル形成が可能である。一方、コアがIII-V族系のコア粒子である場合は、コア粒子とシェルの形成元素の価数が異なるため、均一なシェルの形成が困難である。このことは半導体ナノ粒子の精製への耐性にも影響しており、前述したように、近年では非Cd系の半導体ナノ粒子の研究がなされてきている中で、III-V族系/II-VI族系のコア/シェル型半導体ナノ粒子はII-VI族系/II-VI族系のコア/シェル型半導体ナノ粒子と比較して精製への耐性が低く、精製後に蛍光量子効率が低下する問題があった。
【0008】
また、QDフィルム、およびQDパターニングなどの硬化膜を形成する際、前記分散液を硬化する硬化方法にはあらゆる硬化方法が用いられるが、硬化方法が熱硬化である場合は、半導体ナノ粒子複合体の分散液に熱が加わるため、半導体ナノ粒子及び半導体ナノ粒子複合体には耐熱性が必要とされる。よって、半導体ナノ粒子複合体には、精製への耐性に加え、高い耐熱性が要求される場合がある。
【0009】
そこで本発明は、上記の問題点を解決すべく、非極性有機溶媒への分散性を有しており、且つ、精製前後で高い蛍光量子効率(QY)を保つ半導体ナノ粒子複合体を提供することを第一の目的とする。また、本発明は、非極性有機溶媒への分散性を有しており、精製前後で高い蛍光量子効率(QY)を保っていることに加え、非極性有機溶媒への分散性が高い半導体ナノ粒子複合体を提供することを目的とする。また、本発明は、非極性有機溶媒への分散性を有しており、精製前後で高い蛍光量子効率(QY)を保っていることに加え、耐熱性が高い半導体ナノ粒子複合体を提供することを目的とする。また、本発明は、精製前後で高い蛍光量子効率(QY)を保っており、非極性有機溶媒への分散性が高く、且つ、耐熱性が高い半導体ナノ粒子複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明(1)は、半導体ナノ粒子の表面に、リガンドが配位した半導体ナノ粒子複合体であって、前記半導体ナノ粒子はInおよびPを含み、前記リガンドは下記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルを含み、前記メルカプト脂肪酸エステルのSP値は9.30以下であることを特徴とする半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0011】
一般式(1):
HS-R-COOR (1)
(一般式(1)中、Rは炭素数1~11の炭化水素基であり、Rは炭素数1~30の炭化水素基である。)
【0012】
また、本発明(2)は、前記一般式(1)においてRが炭素数1~11の炭化水素基であり且つRが炭素数1~20の炭化水素基であり、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルのSP値が9.30以下であり、前記リガンド全体に占める前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの含有率が40.0mol%以上であることを特徴とする(1)の半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0013】
また、本発明(3)は、前記一般式(1)においてRが炭素数1~11のアルキレン基であり且つRが炭素数1~20のアルキル基であることを特徴とする(2)の半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0014】
また、本発明(4)は、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの分子量が400以下であることを特徴とする(2)又は(3)の半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0015】
また、本発明(5)は、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの分子量が300以下であることを特徴とする(2)又は(3)の半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0016】
また、本発明(6)は、前記リガンドと前記半導体ナノ粒子の質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)が0.50以下であることを特徴とする(2)~(5)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0017】
また、本発明(7)は、前記リガンドと前記半導体ナノ粒子の質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)が0.40以下であることを特徴とする(2)~(6)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0018】
また、本発明(8)は、前記一般式(1)においてRが炭素数1~11の炭化水素基であり且つRが炭素数14~30の炭化水素基であり、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルのSP値が9.00以下であることを特徴とする(1)の半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0019】
また、本発明(9)は、大気中で180℃5時間の耐熱試験において、前記半導体ナノ粒子複合体の耐熱試験前の蛍光量子効率に対する耐熱試験後の蛍光量子効率の変化率((1-(耐熱試験後の蛍光量子効率/耐熱試験前の蛍光量子効率))×100)が、10%未満であることを特徴とする(8)の半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0020】
また、本発明(10)は、前記リガンド全体に占める前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの含有率が40.0mol%以上であることを特徴とする(8)又は(9)の半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0021】
また、本発明(11)は、前記一般式(1)においてRが炭素数1~11のアルキレン基であり且つRが炭素数14~30のアルキル基であることを特徴とする(8)~(10)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0022】
また、本発明(12)は、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの分子量が300~450であることを特徴とする(8)~(11)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0023】
また、本発明(13)は、前記半導体ナノ粒子が、In及びPを主成分とするコアと、1層以上のシェルと、を有するコア/シェル型半導体ナノ粒子であることを特徴とする(1)~(12)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0024】
また、本発明(14)は、前記シェルの少なくとも1つがZnSeで形成されていることを特徴とする(13)の半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0025】
また、本発明(15)は、前記シェルが2層以上であり、前記シェルの最外層がZnSで形成されていることを特徴とする(13)又は(14)の半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0026】
また、本発明(16)は、前記シェルが、少なくとも、ZnSeで形成されており、前記コアの外側表面を覆う第一シェルと、ZnSで形成されており該第一シェルの外側表面を覆う第二シェルとからなることを特徴とする(13)~(15)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0027】
また、本発明(17)は、前記半導体ナノ粒子に配位するリガンドの平均のSP値が9.3以下であることを特徴とする(1)~(16)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0028】
また、本発明(18)は、前記リガンドがさらに脂肪族リガンドを含むことを特徴とする(1)~(17)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0029】
また、本発明(19)は、前記脂肪族リガンドが、脂肪族チオール、脂肪族カルボン酸及び脂肪族ホスフィンらなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする(18)の半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0030】
また、本発明(20)は、前記リガンドに占める、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの含有量が50.0mol%以上であることを特徴とする(1)~(19)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0031】
また、本発明(21)は、前記リガンドに占める、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの含有量が60.0mol%以上であることを特徴とする(1)~(20)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0032】
また、本発明(22)は、前記半導体ナノ粒子複合体の精製前の蛍光量子効率に対する精製後の蛍光量子効率の変化率((1-(精製後の蛍光量子効率/精製前の蛍光量子効率))×100)が20%未満であることを特徴とする(1)~(21)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0033】
また、本発明(23)は、前記半導体ナノ粒子複合体の精製前の蛍光量子効率に対する精製後の蛍光量子効率の変化率((1-(精製後の蛍光量子効率/精製前の蛍光量子効率))×100)が10%未満であることを特徴とする(1)~(22)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0034】
また、本発明(24)は、前記半導体ナノ粒子複合体の精製後の蛍光量子効率が80%以上であることを特徴とする(1)~(23)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0035】
また、本発明(25)は、前記半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅が38nm以下であることを特徴とする(1)~(24)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0036】
また、本発明(26)は、(1)~(25)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を、貧溶媒を用いて凝集させたのち、半導体ナノ粒子複合体を分離することを特徴とする精製方法を提供するものである。
【0037】
また、本発明(27)は、(1)~(25)いずれかの半導体ナノ粒子複合体が有機分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体分散液を提供するものである。
【0038】
また、本発明(28)は、(1)~(25)いずれかの半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体組成物であり、
前記分散媒はモノマー又はプレポリマーであることを特徴とする半導体ナノ粒子複合体組成物を提供するものである。
【0039】
また、本発明(29)は、(1)~(25)いずれかの半導体ナノ粒子複合体が高分子マトリクス中に分散した半導体ナノ粒子複合体硬化膜を提供するものである。
【0040】
なお、本願において「~」で示す範囲は、その両端に示す数字を含んだ範囲とする。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、非極性有機溶媒への分散性を有しており、且つ、精製前後で高い蛍光量子効率(QY)を保つ半導体ナノ粒子複合体を提供することができる。また、本発明は、非極性有機溶媒への分散性を有しており、精製前後で高い蛍光量子効率(QY)を保っていることに加え、非極性有機溶媒への分散性が高い半導体ナノ粒子複合体を提供することができる。また、本発明は、非極性有機溶媒への分散性を有しており、精製前後で高い蛍光量子効率(QY)を保っていることに加え、耐熱性が高い半導体ナノ粒子複合体を提供することができる。また、本発明は、精製前後で高い蛍光量子効率(QY)を保っており、非極性有機溶媒への分散性が高く、且つ、耐熱性が高い半導体ナノ粒子複合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(半導体ナノ粒子複合体)
本発明は半導体ナノ粒子の表面にリガンドが配位した半導体ナノ粒子複合体に関する。本発明において、半導体ナノ粒子複合体とは、発光特性を有する半導体のナノ粒子複合体である。本発明の半導体ナノ粒子複合体は、340nm~480nmの光を吸収し、発光ピーク波長が400nm~750nmの光を発光する粒子である。
【0043】
本発明の半導体ナノ粒子複合体は、半導体ナノ粒子の表面に、リガンドが配位した半導体ナノ粒子複合体であって、前記半導体ナノ粒子はInおよびPを含み、前記リガンドは下記一般式(1):
HS-R-COOR (1)
(一般式(1)中、Rは炭素数1~11の炭化水素基であり、Rは炭素数1~30の炭化水素基である。)
で表されるメルカプト脂肪酸エステルを含み、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルのSP値は9.30以下であることを特徴とする半導体ナノ粒子複合体である。
【0044】
本発明の半導体ナノ粒子複合体は、半導体ナノ粒子と、該半導体ナノ粒子の表面に配位しているリガンドと、を有する。
【0045】
本発明の半導体ナノ粒子複合体は、精製前後において高い蛍光量子効率を維持することが可能である。つまり、本発明の半導体ナノ粒子複合体は、精製前の蛍光量子効率が高く且つ精製後も蛍光量子効率が高く、精製前後の蛍光量子効率の変化率が小さい。
【0046】
本発明の半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅(FWHM)は、精製前、精製後のいずれにおいても38nm以下であることが好ましく、さらには35nm以下であることが好ましい。特に、精製後の本発明の半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅が前記範囲であることで、半導体ナノ粒子複合体をディスプレイ等に応用した際に混色を低減することができる。
【0047】
本発明の半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率(QY)は、精製前、精製後のいずれにおいても80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。特に、精製後の本発明の半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が80%以上であることで、半導体ナノ粒子複合体を応用に用いる際、より効率よく色変換ができる。本発明において、半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率を、量子効率測定システムを用いて測定することができる。
【0048】
本発明において、半導体ナノ粒子複合体の光学特性を、量子効率測定システムを用いて測定することができる。半導体ナノ粒子複合体を分散液に分散させ、励起光を当て発光スペクトルを得る。ここで得られた発光スペクトルより再励起されて蛍光発光した分の再励起蛍光発光スペクトルを除いた再励起補正後の発光スペクトルより蛍光量子効率(QY)と半値幅(FWHM)を算出する。分散液は例えばノルマルヘキサン等が挙げられる。
【0049】
-半導体ナノ粒子-
本発明の半導体ナノ粒子複合体を構成する半導体ナノ粒子、すなわち、リガンドが配位する粒子は、III族元素およびV族元素を含有している。特に、発光特性と安全性の観点からは、半導体ナノ粒子は、InおよびPを含有することが好ましい。
【0050】
量子閉じ込め効果の観点から、半導体ナノ粒子としては、InおよびPを含有する半導体ナノ粒子をコア粒子として、1層以上のシェルを有しているコア/シェル型半導体ナノ粒子が好ましい。コア/シェル型半導体ナノ粒子としては、2層以上のシェルを有していることがさらに好ましい。シェルはZnおよびSeを含む組成のシェルを含んでいることが好ましく、シェルの少なくとも1つがZnSeで形成されていることが好ましい。コア/シェル型半導体ナノ粒子が、2層以上のシェルを有している場合、最外層はZnおよびSを含む組成のシェルであることが好ましく、ZnSで形成されていることがさらに好ましい。特に、前記シェルが、少なくとも、ZnSeで形成されており、前記コア粒子の外側表面を覆う第一シェルと、ZnSで形成されており該第一シェルの外側表面を覆う第二シェルである場合、蛍光量子効率を高くすることができる。
【0051】
本発明の効果を害さない限り、シェル中の組成が必ずしも量論組成である必要はなく、各シェル中にZn、Se、S以外の元素を含んでいてもよいし、シェル中でシェルを構成する元素の比率が変化する勾配型のシェルを1つ以上有していてもよい。
【0052】
ここで、本発明において、シェルがコアの少なくとも一部を覆っているかどうかや、シェル内部の元素分布は、例えば、透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分光法(TEM-EDX)を用いて組成分析解析することにより確認することができる。
【0053】
以下に半導体ナノ粒子の作製方法に関する例を開示する。
Inの前駆体、Pの前駆体、および必要に応じて添加物を溶媒中で混合し得られた前駆体混合液を加熱することで、半導体ナノ粒子のコアを形成することができる。
【0054】
溶媒としては配位性溶媒や非配位性溶媒が用いられる。溶媒の例としては、1-オクタデセン、ヘキサデカン、スクアラン、オレイルアミン、トリオクチルホスフィン、およびトリオクチルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0055】
Inの前駆体としては、前記Inを含む酢酸塩、カルボン酸塩、およびハロゲン化物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
Pの前駆体としては、前記Pを含む有機化合物やガスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前駆体がガスの場合には、前記ガス以外を含む前駆体混合液にガスを注入しながら反応させることでコアを形成することができる。
【0057】
半導体ナノ粒子は、本発明の効果を害さない限り、InおよびP以外の元素を1種またはそれ以上含んでいてもよく、その場合は前記元素の前駆体をコア形成時に添加すればよい。
【0058】
添加物としては、例えば、分散剤としてカルボン酸、アミン類、チオール類、ホスフィン類、ホスフィンオキシド類、ホスフィン酸類、およびホスホン酸類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。分散剤は溶媒を兼ねることもできる。
【0059】
半導体ナノ粒子のコアを形成後、必要に応じてハロゲン化物を加えることで、半導体ナノ粒子の発光特性を向上させることができる。
【0060】
ある実施形態では、In前駆体、および必要に応じて分散剤を溶媒中に添加した金属前駆体溶液を真空下で混合し、一旦100℃~300℃で6時間~24時間加熱した後、さらにP前駆体を添加して200℃~400℃で3分~60分加熱後、冷却する。さらにハロゲン前駆体を添加し、25℃~300℃、好ましくは100℃~300℃、より好ましくは150℃~280℃で加熱処理することで、コア粒子を含むコア粒子分散液を得ることができる。
【0061】
合成されたコア粒子分散液に、シェル形成前駆体を添加することにより、半導体ナノ粒子はコア-シェル構造をとり、蛍光量子効率(QY)および安定性を高めることができる。
【0062】
シェルを構成する元素はコア粒子の表面で合金やヘテロ構造、またはアモルファス構造等の構造を取っていると思われるが、一部は拡散によりコア粒子の内部に移動していることも考えられる。
【0063】
添加されたシェル形成元素は、主にコア粒子の表面付近に存在し、半導体ナノ粒子を外的因子から保護する役割を持っている。半導体ナノ粒子のコア-シェル構造はシェルがコアの少なくとも一部を覆っていることが好ましく、さらに好ましくはコア粒子の表面全体を均一に覆っていることが好ましい。
【0064】
ある実施形態では、前述したコア粒子分散液にZn前駆体とSe前駆体を添加後、150℃~300℃、好ましくは180℃~250℃で加熱し、その後Zn前駆体とS前駆体を添加し、200℃~400℃、好ましくは250℃~350℃で加熱する。これによりコア-シェル型の半導体ナノ粒子を得ることができる。
【0065】
ここで、特に限定するものではないが、Zn前駆体としては、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛およびミリスチン酸亜鉛等のカルボン酸塩や、塩化亜鉛および臭化亜鉛等のハロゲン化物、ジエチル亜鉛等の有機塩等を用いることができる。
【0066】
Se前駆体としては、トリブチルホスフィンセレニド、トリオクチルホスフィンセレニドおよびトリス(トリメチルシリル)ホスフィンセレニドなどのホスフィンセレニド類、ベンゼンセレノールおよびセレノシステインなどのセレノール類、およびセレン/オクタデセン溶液などを使用することができる。
【0067】
S前駆体としては、トリブチルホスフィンスルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィドおよびトリス(トリメチルシリル)ホスフィンスルフィドなどのホスフィンスルフィド類、オクタンチオール、ドデカンチオールおよびオクタデカンチオールなどのチオール類、および硫黄/オクタデセン溶液などを使用することができる。
【0068】
シェルの前駆体はあらかじめ混合し、一度で、あるいは複数回に分けて添加してもよいし、それぞれ別々に一度で、あるいは複数回に分けて添加してもよい。シェル前駆体を複数回に分けて添加する場合は、各シェル前駆体添加後にそれぞれ温度を変えて加熱してもよい。
【0069】
本発明において半導体ナノ粒子の作製方法は特に限定されず、上記に示した方法の他、従来行われている、ホットインジェクション法や、均一溶媒法、逆ミセル法、CVD法等による作製方法や、任意の方法を採用しても構わない。
【0070】
-リガンド-
本発明の半導体ナノ粒子複合体は、前記半導体ナノ粒子の表面にリガンドが配位したものである。ここで述べる配位とは、配位子が半導体ナノ粒子の表面に化学的に影響していることを表す。半導体ナノ粒子の表面に配位結合や他の任意の結合様式(例えば共有結合、イオン結合、水素結合等)で結合していてもよいし、あるいは半導体ナノ粒子の表面の少なくとも一部に配位子を有している場合には、必ずしも結合を形成していなくてもよい。
【0071】
本発明の半導体ナノ粒子複合体において、半導体ナノ粒子に配位しているリガンドは、下記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルを含む。
【0072】
一般式(1):
HS-R-COOR (1)
【0073】
一般式(1)中、Rは炭素数1~11の炭化水素基であり、Rは炭素数1~30の炭化水素基である。一般式(1)中、Rとしては、特に制限されず、アルキレン基が挙げられる。なお、アルキレン基は分岐構造を有していても構わない。また、一般式(1)中、Rとしては、特に制限されず、例えば、炭素数が1~20の炭化水素基、炭素数が14~30の炭化水素基、炭素数が14~20の炭化水素基が挙げられ、更に具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基は分岐構造を有していても構わない。一般式(1)中のR及びRが上記のものであることにより、半導体ナノ粒子複合体の精製前に対する精製後の蛍光量子効率の変化率が小さくなる。一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0074】
メルカプト脂肪酸エステルは特許文献2に開示されているように半導体ナノ粒子の極性溶媒への分散を可能にするリガンドとして用いられているが、本発明では、一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルが、半導体ナノ粒子に配位することで、非極性溶媒への分散性を保ち、初期蛍光量子効率が高く、且つ、精製前に対する精製後の蛍光量子効率の変化率を小さくすることができることを発明者らは見出した。
【0075】
さらに、本発明の半導体ナノ粒子複合体において、一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルのSP値は9.30以下である。メルカプト脂肪酸エステルのSP値が9.30以下であることで、高質量分率で半導体ナノ粒子を非極性溶媒に分散させることが可能となる。
【0076】
ここでリガンドのSP値は、Y-MB法により計算して決定することができる。
【0077】
本発明の半導体ナノ粒子複合体において、一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルは、Rが炭素数1~11のアルキレン基、Rが炭素数1~30のアルキル基であることが、非極性溶媒への分散性が優れる点で好ましい。
【0078】
本発明の半導体ナノ粒子複合体において、一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの分子量は、好ましくは450以下である。
【0079】
本発明の半導体ナノ粒子複合体において、リガンド全体に占める一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの含有率は、好ましくは40.0mol%以上、より好ましくは50.0mol%以上、さらに好ましくは60.mol%以上である。リガンド全体に占めるメルカプト脂肪酸エステルの含有率を上記範囲とすることで、半導体ナノ粒子複合体の精製前に対する精製後の蛍光量子効率の変化率を小さくする効果が高まる。
【0080】
本発明の半導体ナノ粒子複合体において、半導体ナノ粒子に配位するリガンドの平均のSP値が9.30以下であることが好ましい。リガンドのSP値をY-MB法を用いて構造式から算出することができる。
【0081】
半導体ナノ粒子に配位するリガンドが複数種の場合は、各リガンドのSP値にリガンドの体積分率を掛け合わせた後、足し合わせた全リガンドの平均SP値をリガンドのSP値とする。例えば半導体ナノ粒子にSP値AのリガンドがP体積%、SP値AというリガンドがP体積%、・・・と配位している場合、全リガンドの平均のSP値は以下の式(2)で表される。
全リガンドの平均のSP値=Σ(Ai×Pi/100) (2)
【0082】
本発明の半導体ナノ粒子複合体において、リガンドはさらに脂肪族リガンドを含むことが好ましい。脂肪族リガンドを含むことで、非極性分散媒へ分散性が高まる。なお、前記脂肪族リガンドは、脂肪族チオール、脂肪族カルボン酸、脂肪族ホスフィン、脂肪族ホスフィンオキシド、脂肪族アミンなどが挙げられるが、特に、半導体ナノ粒子との配位力の強さから脂肪族チオール、脂肪族カルボン酸、脂肪族ホスフィンらなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0083】
本発明の半導体ナノ粒子複合体は、上記構成を有することにより、非極性有機溶媒への分散性を有しており、且つ、精製前後で高い蛍光量子効率(QY)を保つことができる。
【0084】
本発明の第一の形態の半導体ナノ粒子複合体は、前記一般式(1)においてRが炭素数1~11の炭化水素基であり且つRが炭素数1~20の炭化水素基であり、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルのSP値は9.30以下であり、前記リガンド全体に占める前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの含有率が40.0mol%以上である。すなわち、本発明の第一の形態の半導体ナノ粒子複合体は、半導体ナノ粒子の表面に、リガンドが配位した半導体ナノ粒子複合体であって、前記半導体ナノ粒子はInおよびPを含み、前記リガンドは、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルのうち、Rが炭素数1~11の炭化水素基であり且つRが炭素数1~20の炭化水素基であるメルカプト脂肪酸エステル(以下、メルカプト脂肪酸エステル(1A)とも記載する。)を含み、前記メルカプト脂肪酸エステル(1A)のSP値は9.30以下であり、前記リガンド全体に占める前記メルカプト脂肪酸エステル(1A)の含有率が40.0mol%以上であることを特徴とする半導体ナノ粒子複合体である。
【0085】
本発明の第一の形態の半導体ナノ粒子複合体は、前記一般式(1)におけるRが炭素数1~11の炭化水素基であり且つRが炭素数1~20の炭化水素基であるメルカプト脂肪酸エステル(1A)を、リガンドとして含むことにより、非極性有機溶媒への分散性が高くなる。特に、メルカプト脂肪酸エステル(1A)は、Rが炭素数1~11のアルキレン基であり且つRは炭素数1~20のアルキル基であることにより、非極性溶媒への半導体ナノ粒子複合体の分散が容易となる。
【0086】
メルカプト脂肪酸エステル(1A)のRの炭素数は、1~11、好ましくは2~6であり、Rとしては、炭素数が1~11であれば、特に限定されるものではなく、例えば、直鎖状の基として、エチレン基、プロピレン基、ヘキシル基等が挙げられ、また、分岐状の基として、1,2-プロピレン基等も挙げられる。また、メルカプト脂肪酸エステル(1A)のRの炭素数は、1~20であり、Rとしては、炭素数が1~20であれば、特に限定されるものではなく、例えば、直鎖状の基として、メチル基、ヘキシル基、オクチル基、ステアリル基、パルミチル基、エイコサル基等が挙げられ、また、分岐状の基として、エチルヘキシル基、2-n-オクチルドデシル基等も挙げられる。メルカプト脂肪酸エステル(1A)としては、RおよびRが共に前述した炭素数を満たすものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、チオグリコール酸イソオクチル、3-メルカプトプロピオン酸トリデシル、6-メルカプトヘキサン酸エチルヘキシル、11-メルカプトウンデカン酸メチルが挙げられる。
【0087】
特に、本発明の第一の形態の半導体ナノ粒子複合体では、メルカプト脂肪酸エステル(1A)が、一般式(1)におけるRの炭素数が14~20であるメルカプト脂肪酸エステルであることにより、非極性溶媒への半導体ナノ粒子複合体の分散が高いことに加え、半導体ナノ粒子複合体の耐熱性が高くなる。
【0088】
メルカプト脂肪酸エステル(1A)のSP値は、9.30以下、好ましくは7.00~9.20である。メルカプト脂肪酸エステル(1A)のSP値が上記範囲にあることにより、非極性有機溶媒への半導体ナノ粒子複合体の分散性が高くなる。
【0089】
本発明の第一の形態の半導体ナノ粒子複合体において、リガンド全体に占めるメルカプト脂肪酸エステル(1A)の含有率は、40.0mol%以上、好ましくは50.0mol%以上、より好ましくは60.0mol%以上である。リガンド全体に占めるメルカプト脂肪酸エステル(1A)の含有率を、上記範囲をとすることで、精製前に対する精製後の半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率の変化率を小さくすることができる。
【0090】
メルカプト脂肪酸エステル(1A)の分子量は、400以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、80~300が特に好ましい。メルカプト脂肪酸エステル(1A)の分子量が上記範囲であることで、非極性溶媒へ半導体ナノ粒子複合体を高濃度で分散させることが可能となる。
【0091】
本発明の第一の形態の半導体ナノ粒子複合体において、半導体ナノ粒子に配位しているリガンドの平均のSP値は、9.30以下であることが好ましい。なお、本発明において、リガンドのSP値はY-MB法を用いて構造式から算出することができる(以下、同じ。)。
【0092】
半導体ナノ粒子に配位しているリガンドが複数種の場合は、各リガンドのSP値にリガンドの体積分率を掛け合わせた後、足し合わせた全リガンドの平均SP値をリガンドのSP値とする。例えば半導体ナノ粒子にSP値AのリガンドがP体積%、SP値AというリガンドがP体積%、・・・と配位している場合、全リガンドの平均のSP値は以下の式(2)で表される。
全リガンドの平均のSP値=Σ(Ai×Pi/100) (2)
【0093】
本発明の第一の形態の半導体ナノ粒子複合体において、リガンドと半導体ナノ粒子の質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)は、0.50以下であることが好ましく、0.40以下であることがさらに好ましい。リガンドと半導体ナノ粒子の質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)が上記範囲であることにより、非極性溶媒へ高濃度で半導体ナノ粒子複合体を分散させることが可能となる。
【0094】
本発明の第一の形態の半導体ナノ粒子複合体において、リガンドはさらに脂肪族リガンドを含むことが好ましい。リガンドが脂肪族リガンドを含むことで、非極性分散媒への半導体ナノ粒子複合体の分散性を高くすることができる。なお、脂肪族リガンドは、脂肪族チオール、脂肪族カルボン酸、脂肪族ホスフィン、脂肪族ホスフィンオキシド、脂肪族アミンなどが挙げられ、特に、半導体ナノ粒子との配位力の強さから脂肪族チオール、脂肪族カルボン酸及び脂肪族ホスフィンらなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0095】
本発明の第一の半導体ナノ粒子複合体は、上記構成を有することにより、非極性有機溶媒への分散性を有しており、精製前後で高い蛍光量子効率(QY)を保っていることに加え、非極性有機溶媒への分散性が高くなる。
【0096】
本発明の第二の形態の半導体ナノ粒子複合体は、前記一般式(1)においてRが炭素数1~11の炭化水素基であり且つRが炭素数14~30の炭化水素基であり、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルのSP値は9.00以下である。すなわち、本発明の第二の形態の半導体ナノ粒子複合体は、半導体ナノ粒子の表面に、リガンドが配位した半導体ナノ粒子複合体であって、前記半導体ナノ粒子はInおよびPを含み、前記リガンドは、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルのうち、Rが炭素数1~11の炭化水素基であり且つRが炭素数14~30の炭化水素基であるメルカプト脂肪酸エステル(以下、メルカプト脂肪酸エステル(1B)とも記載する。)を含み、前記メルカプト脂肪酸エステル(1B)のSP値は9.00以下であることを特徴とする半導体ナノ粒子複合体である。
【0097】
本発明の第二の形態の半導体ナノ粒子複合体は、前記一般式(1)におけるRが炭素数1~11の炭化水素基であり且つRが炭素数14~30の炭化水素基であるメルカプト脂肪酸エステル(1B)を、リガンドとして含むことにより、耐熱性が高くなる。特に、メルカプト脂肪酸エステル(1B)は、Rが炭素数1~11のアルキレン基であり且つRは炭素数14~30のアルキル基であることにより、半導体ナノ粒子複合体の耐熱性が高くなる。なお、メルカプト脂肪酸エステル(1B)のうち、Rは炭素数が14~20の範囲にあるものは、メルカプト脂肪酸エステル(1A)にも相当する。
【0098】
メルカプト脂肪酸エステル(1B)のRの炭素数は、1~11、好ましくは2~11であり、Rとしては、炭素数が1~11であれば、特に限定されるものではなく、例えば、エチレン基、プロピレン基、ヘキシル基等が挙げられる。また、メルカプト脂肪酸エステル(1B)のRの炭素数は、14~30であり、Rとしては、炭素数が14~30であれば、特に限定されるものではなく、例えば、直鎖状の基として、ステアリル基、パルミチル基、エイコサル基、オクタコサル基等が挙げられ、また、分岐状の基として、2-n-オクチルドデシル基等も挙げられる。メルカプト脂肪酸エステル(1B)としては、例えば、3-メルカプトプロピオン酸ステアリル、11-メルカプトウンデカン酸パルミチル、3-メルカプトプロピオン酸オクタコサル等が挙げられる。
【0099】
特に、本発明の第二の形態の半導体ナノ粒子複合体では、メルカプト脂肪酸エステル(1B)が、一般式(1)におけるRの炭素数が14~20であるメルカプト脂肪酸エステルであることにより、半導体ナノ粒子複合体の耐熱性が高くなることに加え、非極性溶媒への半導体ナノ粒子複合体の分散が高くなる。
【0100】
メルカプト脂肪酸エステル(1B)のSP値は、9.00以下、好ましくは7.00~8.60である。メルカプト脂肪酸エステル(1B)のSP値が上記範囲にあることにより、半導体ナノ粒子複合体の耐熱性が高くなる。
【0101】
本発明の第二の形態の半導体ナノ粒子複合体において、リガンド全体に占めるメルカプト脂肪酸エステル(1B)の含有率は、好ましくは40.0mol%以上、より好ましくは50.0mol%以上、特に好ましくは60.0mol%以上である。リガンド全体に占めるメルカプト脂肪酸エステル(1B)の含有率を、上記範囲とすることで、精製前に対する精製後の半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率の変化率を小さくすることができる。
【0102】
メルカプト脂肪酸エステル(1B)の分子量は、300~500であることが好ましく、350~450であることがより好ましい。メルカプト脂肪酸エステル(1B)の分子量が上記範囲にあることで、非極性溶媒へ半導体ナノ粒子複合体を高濃度で分散させることが可能となる。
【0103】
本発明の第二の形態の半導体ナノ粒子複合体において、半導体ナノ粒子に配位しているリガンドの平均のSP値は、9.30以下であることが好ましい。なお、本発明において、リガンドのSP値はY-MB法を用いて構造式から算出することができる。
【0104】
本発明の第二の形態の半導体ナノ粒子複合体において、リガンドはさらに脂肪族リガンドを含むことが好ましい。リガンドが脂肪族リガンドを含むことで、非極性分散媒への半導体ナノ粒子複合体の分散性を高くすることができる。なお、脂肪族リガンドは、脂肪族チオール、脂肪族カルボン酸、脂肪族ホスフィン、脂肪族ホスフィンオキシド、脂肪族アミンなどが挙げられ、特に、半導体ナノ粒子との配位力の強さから脂肪族チオール、脂肪族カルボン酸及び脂肪族ホスフィンらなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0105】
本発明の第二の形態の半導体ナノ粒子複合体は、大気中で180±5℃5時間の耐熱試験において、半導体ナノ粒子複合体の耐熱試験前の蛍光量子効率に対する耐熱試験後の蛍光量子効率の変化率((1-(耐熱試験後の蛍光量子効率/耐熱試験前の蛍光量子効率))×100)は、好ましくは10%未満、特に好ましくは5%未満である。
【0106】
本発明の第二の半導体ナノ粒子複合体は、上記構成を有することにより、非極性有機溶媒への分散性を有しており、精製前後で高い蛍光量子効率(QY)を保っていることに加え、耐熱性が高くなる。
【0107】
本発明の半導体ナノ粒子は前述した構成をとることで、精製前に対する精製後の半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率の変化率((1-(精製後の蛍光量子効率/精製前の蛍光量子効率))×100)を、20%未満、さらには10%未満に抑えることが可能である。
【0108】
本発明の半導体ナノ粒子複合体の精製に対する耐性(耐精製性)は、精製前の半導体ナノ粒子体の分散液と精製後の半導体ナノ粒子複合体の分散液について蛍光量子効率を測定することで算出できる。精製前、精製後の分散液中の半導体ナノ粒子の濃度を揃えて蛍光量子効率を測定し、精製前の蛍光量子効率を「QYa」、精製後の蛍光量子効率を「QYb」とすると精製前に対する精製後の蛍光量子効率の変化率は下記式(3)により算出できる。
{1-(QYb/QYa)}×100 (3)
なお、精製に対する耐性(耐精製性)は下記式(4)により算出できる。
(QYb/QYa)×100 (4)
【0109】
すなわち、精製前の蛍光量子効率に対する精製後の蛍光量子効率の変化率が10%未満であるということは、耐精製性が90%以上であることを示す。
【0110】
本発明の半導体ナノ粒子複合体の当該耐精製性が80%以上あることで、半導体ナノ粒子複合体の精製による蛍光量子効率の低下を抑えることができる。
【0111】
本発明の半導体ナノ粒子複合体の精製方法は、本発明の半導体ナノ粒子複合体を、貧溶媒を用いて凝集させたのち、半導体ナノ粒子複合体を分離する方法である。
【0112】
一実施形態において、アセトン等の極性転換溶媒を添加することによって半導体ナノ粒子複合体を分散液から析出させることができる。析出した半導体ナノ粒子複合体を濾過または遠心分離により回収することができ、一方、未反応の出発物質および他の不純物を含む上澄みは廃棄または再利用することができる。次いで析出した半導体ナノ粒子複合体はさらなる分散媒で洗浄し、再び分散することができる。この精製プロセスは、例えば、2~4回、または所望の純度に到達するまで、繰り返すことができる。
【0113】
本発明において、半導体ナノ粒子複合体の精製方法として、上記に示した方法の他、例えば、凝集、液液抽出、蒸留、電着、サイズ排除クロマトグラフィー及び/又は限外濾過や任意の方法を単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0114】
本発明の半導体ナノ粒子複合体は、精製後においても、本発明の半導体ナノ粒子複合体の構造を有することが好ましい。
【0115】
本発明の半導体ナノ粒子複合体の精製後の蛍光量子効率(QY)は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。精製後の半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が80%以上であることで、半導体ナノ粒子を応用に用いる際、より効率よく色変換ができる。
【0116】
(半導体ナノ粒子複合体分散液)
本発明の半導体ナノ粒子複合体は、有機分散媒に分散し、半導体ナノ粒子複合体分散液を形成することができる。本発明において、半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散している状態とは、半導体ナノ粒子複合体と分散媒とを混合させた場合に、半導体ナノ粒子複合体が沈殿しない状態、もしくは目視可能な濁り(曇り)として残留しない状態であることを表す。なお、半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散しているものを半導体ナノ粒子複合体分散液と表す。
【0117】
本発明の半導体ナノ粒子複合体分散液は、本発明の半導体ナノ粒子複合体が有機分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体分散液である。
【0118】
本発明の半導体ナノ粒子複合体分散液を構成する有機分散媒としては、半導体ナノ粒子複合体が分散する限り特に限定しないが、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、イソヘキサン、へプタン、オクタン、ヘキサデカンおよび石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルおよび酢酸ブチルなどのエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびミネラルスピリット等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2―ジクロロベンゼン等のハロゲン化アルキル、あるいはその混合溶媒などの有機溶媒が挙げられる。
【0119】
本発明の半導体ナノ粒子複合体が上述した構成をとることで、半導体ナノ粒子複合体を高質量分率で非極性分散媒に分散させることができ、その結果、半導体ナノ粒子複合体分散液中における半導体ナノ粒子の質量分率を、15質量%以上、さらには20質量%以上、さらには25質量%以上、さらには35質量%以上とすることができる。
【0120】
さらに、本発明において、本発明の半導体ナノ粒子複合体分散液の有機分散媒としてモノマーを選択することができる。モノマーは特に限定しないが、半導体ナノ粒子の応用先が幅広く選択できる(メタ)アクリルモノマーであることが好ましい。(メタ)アクリルモノマーは半導体ナノ粒子複合体分散液の応用に応じて、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3、5、5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エチルヘキシルジグリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n≒2)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールエトキシ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルりん酸、アクリロイルモルホリン、ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イロプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、およびN-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドなどの(メタ)アクリルモノマーから選択される。これらは単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。特にアクリルモノマーは半導体ナノ粒子複合体分散液の応用に応じて、ラウリル(メタ)アクリレート、および1、6-ヘキサジオールジ(メタ)アクリレートから選ばれる1種または2種以上の混合物であることが好ましい。
【0121】
なお、本発明の半導体ナノ粒子複合体分散液の有機分散媒として、プレポリマーを選択することができる。プレポリマーは特に限定しないが、アクリル樹脂プレポリマー、シリコーン樹脂プレポリマー、およびエポキシ樹脂プレポリマーが挙げられる。
【0122】
(半導体ナノ粒子複合体組成物)
本発明において、半導体ナノ粒子複合体分散液の分散媒としてモノマーまたはプレポリマーを選択し、半導体ナノ粒子複合体組成物を形成することができる。つまり、本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物は、本発明の半導体ナノ粒子複合体が、モノマー又はプレポリマーに分散した半導体ナノ粒子複合体組成物である。
【0123】
モノマーまたはプレポリマーは、特に限定しないが、エチレン性不飽和結合を含むラジカル重合性化合物、シロキサン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、およびフェノール誘導体などが挙げられる。
【0124】
さらに、本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物は、架橋剤を含有してもよい。架橋剤は半導体ナノ粒子複合体組成物中のモノマーの種類によって、多官能(メタ)アクリレート、多官能シラン化合物、多官能アミン、多官能カルボン酸、多官能チオール、多官能アルコール、および多官能イソシアネートなどから選択される。
【0125】
さらに、本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物は、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、イソヘキサン、へプタン、オクタンおよび石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびミネラルスピリット等の芳香族炭化水素類、およびジクロロメタンおよびクロロホルム等のハロゲン化アルキルなど、硬化に影響しない各種有機溶媒をさらに含むことができる。なお、上記の有機溶媒を、半導体ナノ粒子複合体組成物の希釈用としてだけでなく、有機分散媒としても用いることができる。すなわち、本発明の半導体ナノ粒子複合体を上記の有機溶媒に分散させて、半導体ナノ粒子複合体分散液とすることも可能である。
【0126】
また、本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物は、半導体ナノ粒子複合体組成物中のモノマーの種類によって、適切な開始剤や散乱剤、触媒、バインダー、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、および分散剤等を含んでもよい。
【0127】
さらに、半導体ナノ粒子複合体組成物、あるいは後述する半導体ナノ粒子複合体硬化膜の光学特性を向上するために、本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物は散乱剤を含んでもよい。散乱剤は酸化チタンや酸化亜鉛などの金属酸化物であり、これらの粒径は100nm~500nmであることが好ましい。散乱の効果の観点から、散乱剤の粒径は200nm~400nmであることがさらに好ましい。散乱剤が含まれることで、吸光度が2倍程度向上する。散乱剤の含有量は組成物に対して2質量%~30質量%であることが好ましく、組成物のパターン性の維持の観点から5質量%~20質量%であることがより好ましい。
【0128】
本発明の半導体ナノ粒子複合体の構成により、半導体ナノ粒子複合体組成物中の半導体ナノ粒子の質量分率を30質量%以上にすることができる。半導体ナノ粒子複合体組成物中の半導体ナノ粒子の質量分率を30質量%~95質量%とすることで、後述する硬化膜中にも高質量分率で半導体ナノ粒子複合体ならびに半導体ナノ粒子を分散させることができる。
【0129】
本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物は、10μmの膜にしたとき、前記膜の法線方向からの波長450nmの光に対する吸光度が1.0以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。これにより、バックライトの光を効率的に吸収できるため、後述の硬化膜の厚みを低減することができ、適用するデバイスを小型化することができる。
【0130】
(希釈組成物)
希釈組成物は、前述の本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物が有機溶媒で希釈されてなるものである。
【0131】
半導体ナノ粒子複合体組成物を希釈する有機溶媒は特に限定されるものではなく、例えば、脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、ベンゼン、トルエン、芳香族炭化水素類、ハロゲン化アルキルなどが挙げられる。
【0132】
(半導体ナノ粒子複合体硬化膜)
本発明において、半導体ナノ粒子複合体硬化膜とは半導体ナノ粒子複合体を含有した膜であり、硬化しているものを表す。半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、前述の半導体ナノ粒子複合体組成物または希釈組成物を膜状に硬化することで得ることができる。
【0133】
本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、本発明の半導体ナノ粒子複合体が高分子マトリクス中に分散した半導体ナノ粒子複合体硬化膜である。つまり、本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、半導体ナノ粒子と半導体ナノ粒子の表面に配位したリガンドと、高分子マトリクスを含んでいる。
【0134】
高分子マトリクスとしては特に限定はないが、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。なお、前述した半導体ナノ粒子複合体組成物を硬化させることで半導体ナノ粒子複合体硬化膜を得てもよい。半導体ナノ粒子複合体硬化膜は架橋剤をさらに含んでもよい。
【0135】
膜を硬化させる方法は特に限定されないが、熱処理、紫外線処理など膜を構成する組成物に適した硬化方法により硬化することができる。
【0136】
半導体ナノ粒子複合体硬化膜中に含まれる、半導体ナノ粒子と半導体ナノ粒子の表面に配位したリガンドは、前述した半導体ナノ粒子複合体を構成していることが好ましい。本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜中に含まれる半導体ナノ粒子複合体を前述したような構成にすることで、半導体ナノ粒子複合体をより高質量分率で硬化膜中に分散させることが可能である。
【0137】
さらに、本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜には、高い発光特性を有する半導体ナノ粒子複合体を含有しているため、発光特性が高い半導体ナノ粒子複合体硬化膜を提供できる。半導体ナノ粒子複合体硬化膜の蛍光量子効率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0138】
半導体ナノ粒子複合体硬化膜の厚みは、半導体ナノ粒子複合体硬化膜を適用するデバイスの小型化するために、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
【0139】
(半導体ナノ粒子複合体パターニング膜および表示素子)
半導体ナノ粒子複合体パターニング膜は、前述の半導体ナノ粒子複合体組成物または希釈組成物を膜状にパターン形成することで得ることができる。半導体ナノ粒子複合体組成物および希釈組成物をパターン形成する方法は特に限定されず、例えば、スピンコート、バーコート、インクジェット、スクリーン印刷、およびフォトリソグラフィ等が挙げられる。
【0140】
表示素子は、上記の半導体ナノ粒子複合体パターニング膜を用いるものである。例えば、半導体ナノ粒子複合体パターニング膜を波長変換層として用いることで、優れた蛍光量子効率を有する表示素子を提供することができる。
【0141】
本明細書に記載の構成および/または方法は例として示され、多数の変形形態が可能であるため、これらの具体例または実施例は限定の意味であると見なすべきではないことが理解されよう。本明細書に記載の特定の手順または方法は、多数の処理方法の1つを表しうる。したがって、説明および/または記載される種々の行為は、説明および/または記載される順序で行うことができ、または省略することもできる。同様に前述の方法の順序は変更可能である。
【0142】
本開示の主題は、本明細書に開示される種々の方法、システムおよび構成、並びにほかの特徴、機能、行為、および/または性質のあらゆる新規のかつ自明でない組み合わせおよび副次的組み合わせ、並びにそれらのあらゆる均等物を含む。
【実施例0143】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
[例1]
以下の方法に従って、半導体ナノ粒子複合体の作製を行った。
(コア粒子の作製)
酢酸インジウム(0.3mmol)とオレイン酸亜鉛(0.6mmol)を、オレイン酸(0.9mmol)と1-ドデカンチオール(0.1mmol)とオクタデセン(10mL)の混合物に加え、真空下(<20Pa)で約120℃に加熱し、1時間反応させた。真空下で反応させた混合物を25℃、窒素雰囲気下にして、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(0.2mmol)を加えたのち、約300℃に加熱し、10分間反応させた。反応液を25℃に冷却し、オクタン酸クロリド(1.1mmol)を注入し、約250℃で30分間加熱後、25℃に冷却して、InP系半導体ナノ粒子の分散液を得た。
【0145】
(シェル形成用の前駆体)
シェルの作製にあたって、まずは以下の前駆体の調製を行った。
(Zn前駆体溶液の調製)
40mmolのオレイン酸亜鉛と75mLのオクタデセンを混合し、真空化で110℃にて1時間加熱し、[Zn]=0.4MのZn前駆体を調製した。
(Se前駆体(セレン化トリオクチルホスフィン)の調製)
22mmolのセレン粉末と10mLのトリオクチルホスフィンを窒素中で混合し、全て溶けるまで撹拌して[Se]=2.2Mのセレン化トリオクチルホスフィンを得た。
(S前駆体(硫化トリオクチルホスフィン)の調製)
22mmolの硫黄粉末と10mLのトリオクチルホスフィンを窒素中で混合し、全て溶けるまで撹拌して[S]=2.2Mの硫化トリオクチルホスフィンを得た。
上記のようにして得られた各前駆体を用いて、前記InP系半導体ナノ粒子(コア)の表面に次のようにしてシェルの形成を行った。
(シェルの形成)
コアの分散液を200℃まで加熱した。250℃において6.0mLのZn前駆体溶液と2.0mLセレン化トリオクチルホスフィンに添加し、30分間反応させInP系半導体ナノ粒子の表面にZnSeシェルを形成した。さらに、4.0mLのZn前駆体溶液と1.8mLの硫化トリオクチルホスフィンを添加し、280℃に昇温して1時間反応させZnSシェルを形成した。反応溶液を室温まで冷却し、窒素雰囲気下で200mLの脱水アセトンを加えて、30分間撹拌した。この溶液を30分間静置し、カニュレーションによって上澄みを除去した。フラスコ内に残留した半導体ナノ粒子を含む有機相を、5mLのオクタデセンを用いて希釈した。
得られた半導体ナノ粒子を、STEM-EDSによって観察したところ、コア/シェル構造をしていることが確認された。
【0146】
(リガンド単体の作製)
(6-メルカプトヘキサン酸2-エチルへキシルの調整方法)
フラスコに5.9gの6-メルカプトヘキサン酸(40mmol)と6.2gの2-エチルヘキサノール(48mmol)、100mLのトルエンおよび0.2gの濃硫酸とを窒素雰囲気下で混合した。フラスコにディーンスターク装置を装着し、溶液を110℃で撹拌しながら、24時間反応した。反応溶液を室温まで冷却後、飽和重曹水、水、飽和食塩水を用いて順に洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムを用いて乾燥したのち、ろ過してエバポレーションで濃縮した。この濃縮物をヘキサンおよび酢酸エチルを展開溶媒とするカラムクロマトグラフィーによって精製して目的とするリガンド(6-メルカプトヘキサン酸2-エチルヘキシル)を得た。
【0147】
(11-メルカプトウンデカン酸メチルの調整方法)
フラスコに8.7gの11-メルカプトウンデカン酸(40mmol)と26.0gのメタノール(200mmol)、および0.2gの濃硫酸を窒素雰囲気下で混合した。溶液を65℃で加熱還流させながら撹拌し24時間反応した。反応溶液を室温まで冷却後クロロホルムに溶解し、飽和重曹水、水、飽和食塩水を用いて順に洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムを用いて乾燥したのち、ろ過してエバポレーションで濃縮し、目的とするリガンド(11-メルカプトウンデカン酸メチル)を得た。
【0148】
(3-メルカプトプロピオン酸へキシルの調整方法)
フラスコに4.2gの3-メルカプトプロピオン酸(40mmol)と19.7gの1-オクタコサノール(48mmol)、100mLのトルエンおよび0.2gの濃硫酸とを窒素雰囲気下で混合した。30mmHg以下に減圧し24時間反応した。反応溶液を室温まで冷却後トルエンに溶解し、飽和重曹水、水、飽和食塩水を用いて順に洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムを用いて乾燥したのち、有機相をろ過してエバポレーションで濃縮した。この濃縮物をヘキサンおよび酢酸エチルを展開溶媒とするカラムクロマトグラフィーによって精製して目的とするリガンド(3-メルカプトプロピオン酸オクタコサル)を得た。
【0149】
(11-メルカプトウンデカン酸パルミチルの調整方法)
フラスコに8.7gの11-メルカプトウンデカン酸(40mmol)と6.2gのパルミチルアルコール(48mmol)、および0.2gの濃硫酸を窒素雰囲気下で混合した。溶液を60℃で撹拌しながら、30mmHg以下に減圧し24時間反応した。反応溶液を室温まで冷却後トルエンに溶解し、飽和重曹水、水、飽和食塩水を用いて順に洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムを用いて乾燥したのち、有機相をろ過してエバポレーションで濃縮した。この濃縮物をヘキサンおよび酢酸エチルを展開溶媒とするカラムクロマトグラフィーによって精製して目的とするリガンド(11-メルカプトウンデカン酸パルミチル)を得た。
【0150】
(3-メルカプトプロピオン酸オクタコサルの調整方法)
フラスコに4.2gの3-メルカプトプロピオン酸(40mmol)と19.7gの1-オクタコサノール(48mmol)、および0.2gの濃硫酸を窒素雰囲気下で混合した。溶液を60℃で撹拌しながら、30mmHg以下に減圧し24時間反応した。反応溶液を室温まで冷却後トルエンに溶解し、飽和重曹水、水、飽和食塩水を用いて順に洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムを用いて乾燥したのち、有機相をろ過してエバポレーションで濃縮した。この濃縮物をヘキサンおよび酢酸エチルを展開溶媒とするカラムクロマトグラフィーによって精製して目的とするリガンド(3-メルカプトプロピオン酸オクタコサル)を得た。
【0151】
(半導体ナノ粒子複合体の作製)
フラスコに、精製した半導体ナノ粒子を質量比で10質量%となるように1-オクタデセンに分散させた半導体ナノ粒子1-オクタデセン分散液を調製した。調製した半導体ナノ粒子1-オクタデセン分散液10.0gをフラスコに収め、メルカプト脂肪酸エステルとしてチオグリコール酸イソオクチル(東京化成工業株式会社製)を1.8g、脂肪族リガンドとしてドデカンチオールを0.2g添加し、窒素雰囲気下で110℃、60分間攪拌し、25℃まで冷却することで、半導体ナノ粒子複合体を得た。前記半導体ナノ粒子複合体を含む反応溶液を遠沈管に移し、4000Gで20分間遠心分離すると、透明な1-オクタデセン相と半導体ナノ粒子複合体相に分離した。1-オクタデセン相を取り除き、残った半導体ナノ粒子複合体相を回収した。
【0152】
(蛍光量子効率測定)
半導体ナノ粒子複合体の光学特性は蛍光量子効率測定システム(大塚電子製、QE-2100)を用いて測定した。合成にて得られた半導体ナノ粒子複合体を分散媒に分散させた分散液に、450nmの単一光を励起光として当て発光スペクトルを得た。ここで得られた発光スペクトルより再励起されて蛍光発光した分の再励起蛍光発光スペクトルを除いた再励起補正後の発光スペクトルより蛍光量子効率(QY)と半値幅(FWHM)を算出した。分散媒はオクタデセンを用いた。
さらに、得られた半導体ナノ粒子複合体相にアセトン5.0mLを加え、分散液を作製した。得られた分散液に50mLのノルマルヘキサンを加え、4000Gで20分間遠心分離した。遠心分離後、透明な上澄みを取り除き、沈殿物を回収した。この操作を3回繰り返し、精製された半導体ナノ粒子複合体を得た。精製された半導体ナノ粒子複合体を分散媒に分散させ、450nmの単一光を励起光として当て発光スペクトルを得た。ここで得られた発光スペクトルより再励起されて蛍光発光した分の再励起蛍光発光スペクトルを除いた再励起補正後の発光スペクトルより蛍光量子効率(QY)を算出した。この時、精製前の半導体ナノ粒子複合体の分散液と吸光度を揃えて測定を行った。
精製前後の半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率から、耐精製性を算出した。
得られた蛍光量子効率、精製前後の変化率、耐精製性を表2に記載した。
・精製前後の変化率(%)=(1-(精製後の蛍光量子効率/精製前の蛍光量子効率))×100
・耐精製性(%)=(精製後の蛍光量子効率/精製前の蛍光量子効率)×100
【0153】
H-NMR測定)
精製された半導体ナノ粒子複合体について、半導体ナノ粒子に配位しているリガンドを、核磁気共鳴(NMR)装置(日本電子株式会社製JNM-LA400)を用いて分析した。すべての測定において溶媒には重クロロホルムを、化学シフトの内標準物質にはテトラメチルシランを使用し、1H-NMRを測定した。合成例1で得られた半導体ナノ粒子複合体からは0.8~1.6ppm付近にドデカンチオールのアルキル基に起因するシグナルと、3.5~4.0ppm付近にポリエチレングリコール骨格に起因するシグナルとがそれぞれ観測された。これらのシグナルの面積比から、各リガンドの存在比を算出した。各リガンドの存在比を基に、全リガンドの平均SP値と、全リガンドに対するメルカプト脂肪酸エステルの比率(mоl比)を、算出した。得られた結果を表1に記載した。
【0154】
(熱重量分析)
精製された半導体ナノ粒子複合体を示唆熱重量分析(DTA-TG)で550℃まで加熱後、10分保持し、降温した。分析後の残留質量を半導体ナノ粒子の質量とし、この値から半導体ナノ粒子複合体中に対する半導体ナノ粒子の質量比を確認した。
【0155】
(耐熱性試験)
精製後の半導体ナノ粒子複合体の分散液から溶媒を除去した後、半導体ナノ粒子複合体を恒温槽(ヤマト科学製、DN411H)に入れ、大気中180±5℃5時間の耐熱性試験を行った。次いで、耐熱性試験後の半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率を測定した。この時、耐熱性試験前の半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率の測定を行った。
耐熱性試験前後の半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率から、耐熱性試験前後の変化率を算出した。
得られた耐熱試験後の蛍光量子効率、耐熱試験前後の変化率を表2に記載した。
・耐熱試験前後の変化率(%)=(1-(耐熱試験後の蛍光量子効率/耐熱試験前の蛍光量子効率))×100
【0156】
(分散性試験)
前記質量比を参考に、半導体ナノ粒子複合体に、半導体ナノ粒子の濃度がそれぞれ15質量%、20質量%、30質量%、40質量%になるように有機分散媒を添加し、その時の分散状態を確認した。分散しているものには○を、沈殿、および濁りが観察されたものには×を表2に記載した。なお、分散媒にはノルマルヘキサンを用いた。
なお、分散性の評価は、半導体ナノ粒子の濃度が15質量%で分散している場合は、非極性有機溶媒への分散が可能であると、半導体ナノ粒子の濃度が20質量%でも分散している場合は、非極性有機溶媒への分散性が高いと判断される。
【0157】
[例2]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとして3-メルカプトプロピオン酸トリデシル(富士フィルム和光純薬株式会社製)を1.8g、脂肪族リガンドとしてトリオクチルホスフィンを0.2g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0158】
[例3]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとして6-メルカプトヘキサン酸2-エチルへキシルを1.6g、脂肪族リガンドとしてドデカンチオールを0.4g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0159】
[例4]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとして11-メルカプトウンデカン酸メチルを1.6g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を0.2g用いた以外は、実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0160】
[例5]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとして3-メルカプトプロピオン酸2-エチルへキシル(東京化成工業株式会社製)を1.5g、脂肪族リガンドとしてドデカンチオールを0.5g用いた以外は、実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0161】
[例6]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとしてチオグリコール酸2-エチルへキシル(東京化成工業株式会社製)を1.1g、脂肪族リガンドとしてドデカンチオールを0.9g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0162】
[例7]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとしてチオグリコール酸イソオクチルを1.8g、脂肪族リガンドとして6-メルカプトヘキサノールを0.2g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0163】
[例8]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとして3-メルカプトプロピオン酸へキシルを1.8g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を0.2g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0164】
[例9]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとして3-メルカプトプロピオン酸ステアリル(富士フィルム和光純薬株式会社製)を2.7g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を0.3g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0165】
[例10]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとして11-メルカプトウンデカン酸パルミチルを3.6g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を0.4g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0166】
[例11]
シェル形成反応において、ZnSeシェルを形成したのち、Zn前駆体溶液と硫化トリオクチルホスフィンを添加せずに室温に冷却した以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0167】
[例12]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとしてチオグリコール酸イソオクチルを1.3g、脂肪族リガンドの代わりとしてベンゼンチオールを0.7g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0168】
[例13]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとしてチオグリコール酸イソオクチルを0.9g、脂肪族リガンドとしてドデカンチオールを1.1g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0169】
[例14]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルを添加せず、脂肪族リガンドとしてドデカンチオールを2.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0170】
[例15]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとして3-メルカプトプロピオン酸エチル(東京化成工業株式会社製)を1.6g、脂肪族リガンドとしてドデカンチオールを0.4g用いて、窒素雰囲気下で110℃、60分間攪拌し、25℃まで冷却した。前記半導体ナノ粒子複合体を含む反応溶液を遠沈管に移し、4000Gで20分間遠心分離すると、透明なオクタデセン相と半導体ナノ粒子複合体相に分離した。半導体ナノ粒子複合体を回収し、蛍光量子収率はクロロホルム分散液として測定した。さらに、合成で得られた半導体ナノ粒子複合体にアセトン5.0mLを加え、分散液を作製した。得られた分散液に50mLのノルマルヘキサンを加え、4000Gで20分間遠心分離した。遠心分離後、透明な上澄みを取り除き、沈殿物を回収した。この操作を3回繰り返し、精製された半導体ナノ粒子複合体を得た。精製された半導体ナノ粒子複合体はクロロホルム分散液として蛍光量子収率を測定した。
【0171】
[例16]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとして3-メルカプトプロピオン酸オクタコサルを3.2g、脂肪族リガンドとしてドデカンチオールを0.8g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0172】
[例17]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとしてチオグリコール酸イソオクチルを0.7g、脂肪族リガンドとしてドデカンチオールを1.3g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0173】
[例18]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとして3-メルカプトプロピオン酸エイコサルを1.6g、脂肪族リガンドとしてドデカンチオールを0.4g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0174】
[例19]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとして3-メルカプトプロピオン酸テトラエイコサルを1.6g、脂肪族リガンドとしてドデカンチオールを0.4g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0175】
[例20]
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、メルカプト脂肪酸エステルとして3-メルカプトプロピオン酸2-n-オクチルドデシルを1.6g、脂肪族リガンドとしてドデカンチオールを0.4g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0176】
なお、表1~表2に示されている略号の意味は次の通りである。
MPAE :メルカプト脂肪酸エステル
QD :半導体ナノ粒子
DDT :ドデカンチオール
TOP :トリオクチルホスフィン
【0177】

【表1】
【0178】
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ナノ粒子の表面に、リガンドが配位した半導体ナノ粒子複合体であって、前記半導体ナノ粒子はInおよびPを含み、前記リガンドは下記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルを含み、前記メルカプト脂肪酸エステルのSP値は9.30以下であり、前記リガンド全体に占める前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの含有率が40.0mol%以上であることを特徴とする半導体ナノ粒子複合体。
一般式(1):
HS-R-COOR (1)
(一般式(1)中、Rは炭素数1~11の炭化水素基であり、Rは炭素数1~30の炭化水素基である。)
【請求項2】
前記一般式(1)においてRが炭素数1~11の炭化水素基であり且つRが炭素数14~30の炭化水素基であり、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルのSP値が9.00以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項3】
大気中で180℃5時間の耐熱試験において、前記半導体ナノ粒子複合体の耐熱試験前の蛍光量子効率に対する耐熱試験後の蛍光量子効率の変化率((1-(耐熱試験後の蛍光量子効率/耐熱試験前の蛍光量子効率))×100)が、10%未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項4】
前記一般式(1)においてRが炭素数1~11のアルキレン基であり且つRが炭素数14~30のアルキル基であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項5】
前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの分子量が300~450であることを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項6】
前記半導体ナノ粒子が、In及びPを主成分とするコアと、1層以上のシェルと、を有するコア/シェル型半導体ナノ粒子であることを特徴とする請求項1~いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項7】
前記シェルの少なくとも1つがZnSeで形成されていることを特徴とする請求項項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項8】
前記シェルが2層以上であり、前記シェルの最外層がZnSで形成されていることを特徴とする請求項6又は7記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項9】
前記シェルが、少なくとも、ZnSeで形成されており、前記コアの外側表面を覆う第一シェルと、ZnSで形成されており該第一シェルの外側表面を覆う第二シェルとからなることを特徴とする請求項6~8いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項10】
前記半導体ナノ粒子に配位するリガンドの平均のSP値が9.30以下であることを特徴とする請求項1~いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項11】
前記リガンドがさらに脂肪族リガンドを含むことを特徴とする請求項1~10いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項12】
前記脂肪族リガンドが、脂肪族チオール、脂肪族カルボン酸及び脂肪族ホスフィンらなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項11記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項13】
前記リガンドに占める、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの含有量が50.0mol%以上であることを特徴とする請求項1~12いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項14】
前記リガンドに占める、前記一般式(1)で表されるメルカプト脂肪酸エステルの含有量が60.0mol%以上であることを特徴とする請求項1~13いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項15】
前記半導体ナノ粒子複合体の精製前の蛍光量子効率に対する精製後の蛍光量子効率の変化率((1-(精製後の蛍光量子効率/精製前の蛍光量子効率))×100)が20%未満であることを特徴とする請求項1~14いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項16】
前記半導体ナノ粒子複合体の精製前の蛍光量子効率に対する精製後の蛍光量子効率の変化率((1-(精製後の蛍光量子効率/精製前の蛍光量子効率))×100)が10%未満であることを特徴とする請求項1~15いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項17】
前記半導体ナノ粒子複合体の精製後の蛍光量子効率が80%以上であることを特徴とする請求項1~16いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項18】
前記半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅が38nm以下であることを特徴とする請求項1~17いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項19】
請求項1~18いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体を、貧溶媒を用いて凝集させたのち、半導体ナノ粒子複合体を分離することを特徴とする精製方法。
【請求項20】
請求項1~19いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体が有機分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体分散液。
【請求項21】
請求項1~19いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体組成物であり、
前記分散媒はモノマー又はプレポリマーであることを特徴とする半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項22】
請求項1~19いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体が高分子マトリクス中に分散した半導体ナノ粒子複合体硬化膜。